過去に行った調査(技術士資格の活用に関するもの)概要

参考資料7

 文部科学省が委託調査等により過去に行った以下の2つの調査について、技術士資格の活用や位置づけの議論の参考になると考えられる項目について抜粋して以下に示す。
※以下の2つの調査は、実施からある程度の時間が経過していることに注意が必要である。

 1. 民間企業等に在籍する技術士を対象とした調査(平成26年実施)

  • 調査の目的
    技術士に求められる資質能力や企業における技術士の活用状況、企業が技術士に期待していること、CPDの活用状況等に関する情報を収集することを目的としてアンケート調査を行った。
  • 調査(アンケート方式)の対象者
    ・全21部門の企業内技術士各1~3名(計25名)、40代~60代
    ・在籍企業の業種は
    (測量・)建設コンサルタント、造船業、電気・通信機器製造業、繊維・樹脂・医薬品製造業、火力発電設備製造業、総合建設業、建設エンジニアリング業、物流業、IT機器・サービス業、情報通信業 等
    ※公益社団法人日本技術士会に置かれる「企業内技術士交流会」の会員企業から10企業以上を調査対象とした。
  • 調査項目と結果
    「技術士の普及拡大・活用促進について」という題目で、以下の4つの質問が問われている。
    問1 勤務する企業における技術士資格の位置づけは。人材育成の観点から、社員に技術士資格の取得が奨励されているか。
    問2 勤務する企業において技術士が期待されていることは。資格取得により従事する業務やキャリアパスに変化が生じたか。
    問3 勤務する企業において、技術士資格を取得した従業員は、どのように評価されているか。
    問4 技術士資格を取得したことで給与、待遇面で優遇されたか。また、表彰や報奨金等何らかの支援があったか。

(部門により各問への回答の有無が異なるため、4問への回答を纏めて記載する。)

ヒアリング対象の
技術士の技術部門

技術士資格の位置付け、評価、業務内容への影響
勤務先企業において技術士資格を取得した社員に対して期待されていること

機械部門







  • 社員による論文の添削等、会社全体で取得支援を行っている。(問1)
  • リーダーの役割を果たせる人材になるよう期待される。(管理者に登用されやすくなり、責任の大きい業務を任されやすくなる。)(問2)
  • 事業部が違っても共通の評価指標として使用でき、受注機会も増える。(問3)
  • ある程度の能力を持っている技術者であると評価される。(問3)
  • 受験料の支給、合格報奨金があった。(問4)

船舶・海洋部門







  • 技術士資格が受注条件になっていないこともあり、部門を挙げて積極的な奨励はされてはいない。社内で、奨励されている他の部門もあった。(問1)
  • 日本の船舶・海洋分野においては、技術士資格に対して期待されているようなこともなく、従事する業務やキャリアパスにも変化はないと感じる。(問2)
  • 技術士資格を取得は人事評価の基準の一つに含まれている。(問3)
  • 社内技術士CPD大会や日本技術士会の講演会等の参加費や経費を拠出して頂いている。(問4)

航空・宇宙部門


  • JICA の業務等の受注活動に際して技術士の資格が評価ポイントになる。(問3)

電気電子部門













  • 技術系では権威のある資格として位置付けられている。(問1)
  • 現状技術士資格を必要とするのは、技術士が必須となっている物件の応札、契約、履行などのわずかなケースのみであり、技術士資格を業務に直接的に活かせる社員は極めて少ない。(問1)
  • 高い技術力を求められる業務に際して、事前に技術士を有しているかどうかの確認が行われることがある。(問1)
  • 社員に資格取得が奨励されているが、人材育成の観点とは言いがたい。(問1)
  • 公共系の部門では企業のメリットも大きいため、技術士資格の取得が奨励されている。(問1)
  • 会社として期待される項目として、プロジェクト・システムのエンジニアリング力向上、プロジェクトの取りまとめ能力向上、社内外におけるリーダーシップの発揮、若手社員の育成指導が挙げられる。(問2)
  • 業界動向や今後の技術展望等も理解した上で顧客と会話ができることが期待されている。(問2)
  • 高い技術力、問題解決能力を持ち、困難な仕事を遂行していくことを期待されている。(問2)
  • 資格取得時に報奨金が支給された。また、部門により受験料や登録料が支給されていた。(問4)

化学部門




  • 資格取得の奨励には事業所ごとの温度差がある。(問1)
  • 技術者に対して、開発改善を通じた収益向上が期待されている。(問2)
  • 社長表彰と報奨金、取得の経費(受験料・登録料)が支給された。(問4)

繊維部門




  • 全社的には認知度低く、積極的な取得奨励は無い。(問1)
  • 社内認知度が低いため会社から具体的に期待されていることは無い。(問2)
  • 取得のためのセミナー受講の費用支援、取得時の報奨金あり。(問4)

金属部門




  • 取得が奨励されておりl、受講講習会も実施されている。(問1)
  • 入札に関する部門ではリーダーとして期待されている。(問2)
  • 合格時に報奨金の支援はあった。(問4)

資源工学部門





  • 建設コンサルタント業務を行う上での必須の資格である。(問1)
  • 管理技術者等資格要件の必要な業務対応を行うこと、その分野の専門家として、技術力を生かした技術提案を行うこと、技術提案を自ら行って、顧客の課題を解決することが期待されている。(問2)
  • 一般職には資格手当が毎月支給される。(管理職にはない。)(問4)

建設部門











  • 土木技術者としては取得すべき資格として位置付けている。(問1)
  • 取得を強く奨励されており、HPへ資格取得に役立つ情報が掲載されたり、指導員がつけられるなどしている。(問1)
  • 業務、プロジェクトの指導的立場での活躍を期待されている。(問2)
  • 取得することで担当できる業務が広がり、技術者として信頼される。(問2)
  • 論理的思考能力と文章力の向上を期待する。(問2)
  • 技術系の職位(室長、部長)への昇格の条件の一つである。(問3)
  • 技術士資格の取得有無は自己研鑽に対する意欲の有無と判断される。(問3)
  • 課題解決能力がある技術者であるので、評価は一様に高い。(問3)
  • 取得が当たり前の風土をつくるため、優遇はないが、受験費用は合否問わず支給される。(問4)

上下水道部門







  • 建設コンサルタント会社における一人前の技術者として必要な資格である(問1)
  • 管理職には必須の資格である。(問1)
  • 管理技術者として実務にあたること、自分で仕事を作れる技術者となることを期待されている。(問2)
  • 技術士資格を取得により一人前の技術者としてのスタートラインに立った技術者として評価を受ける。(問3)
  • 給与・待遇面等の優遇はない。(問4)

衛生工学部門




  • 若手として取得すべき資格は業務関連の必須の資格が他に多くあり、技術士は博士号と並ぶキャリアの最終資格と位置付けられている。(問1)
  • 社内でのキャリアパスとは直接繋がらないと感ずる。(問2)

農業部門






  • 業務に直結する資格であり、技術士資格の取得は必須である。(問1)
  • 資格取得支援プログラムがあり、技術士試験受験者に対して過去問の提供、指導する担当公使の配置、添削、模擬面接等が行われる。(問1)
  • 管理職になるための条件である。(問2)
  • 評価の一項目として「技術士」取得がある程度だが、取得しなければ人材評価でも加点が下がる。(問3)

森林部門






  • 持っていないと業務ができない。(問1)
  • 会社から取得を奨励されており、会社による講習や指導がある。(問1)
  • 特に管理技術者として、技術面における優位性を活かして業務を受注することや後進の指導を期待されている。(問2)
  • 資格取得により報奨金が支給される。(問4)

水産部門






  • コンサルタントとして独り立ちできる証として扱われている。(問1)
  • 業務受託のための道具(看板)としても重視されている。(問1)
  • 技術士資格の取得は、人材育成の面から最優先課題として推奨されている。(問1)
  • 人事評価において高評価につながる場合が多い(問3)
  • 取得により一時的な報奨金、毎月の資格手当が規定されている。(問4)

経営工学部門


  • 会社としての位置付け、奨励ともに無い。前職では資格取得による報奨金や取得のための教育があった。

情報工学部門







  • 技術士資格に対する明確な位置づけはない。(問1)
  • 在籍する所属部門においては、技術人材育成の観点や、商談入札条件に技術士資格の保有が求められる場合があり、社員に取得が奨励されている。(問1)
  • 技術士資格(電気電子、機械)を持つ社員について監理技術者、照査技術者として業務貢献を期待されている。(問2)
  • 受験に係る費用破壊者により負担された。(問4)

応用理学部門



  • 多くの分野の技術士取得が奨励されている。(問1)
  • 業務の主任技術者や、技術的なライン職になりやすい。(問2)

生物工学部門







  • 学位と同格に位置付けられており、資格取得の奨励がされている。(問1)
  • 専門分野における最高クラスの技術的能力を備えると共に、技術士の要件である問題解決力、技術的マネジメント力、コミュニケーション力、リーダーシップ、技術者倫理等について他の技術者を啓蒙、指導育成する存在であるべきと期待される。(問2)
  • 業務やキャリアパスに直接は関係しないが、技術士としての本人の意識とそれに基づく行動の結果として間接的にキャリアパスに影響する。(問2)

環境部門




  • 社内の技術士会等で取得が奨励されている。(問1)
  • 技術を活用して事業拡大を推進する人材として期待されている。(問2)
  • 報奨金が支給される(問4)

原子力・放射線部門










  • 原子力事業を行っている企業として、技術力の向上はもとより、公益確保、資質向上の観点から原子力に関わる技術者は全員が目指すべき資格という位置付け。(問1)
  • 全ての新入社員には一次試験の受験を必須としている。(問1)
  • 高い技術力を持った技術者の証であると共に、公益確保、資質向上の観点から、他の社員の手本となり、さらには技術士を社内に増やすことで、企業クオリティの向上が期待されている。(問2)
  • 技術士取得者は、社内制度により、システムや製品における計画、設計段階でのデザインレビューを行う専門担当に任命され、業務の幅が広がると共に、高い信頼を得る立場となる。(問3)
  • 報奨金と表彰状があり、受験費用は会社負担。(問4)

総合技術監理部門






  • 高度な建設コンサルタント業務を遂行する上で当然保有する技術資格である。(問1)
  • 人材育成の観点からも会社も資格取得を奨励し、手当支給や資格取得支援の講習会、模擬面接などを実施している。(問1)
  • 管理技術者としての業務管理のほか、プロポーザルなどの受注場面でも必須の資格である。(問2)
  • 監理技術者をおき、建設コンサルタントとしての社業を営むためにも欠かせない。(問3)

 (回答の傾向)
問1について、資格の取得奨励については、公共事業系部門では企業のメリットも大きいため技術士資格の取得が奨励されているという回答があった。
問2について、技術士資格を取得した社員に対して業務管理者としての役割が期待されていることが多い。また、公共事業系以外について、技術士資格を保有していることの業務への影響については、ない、あるいは、ほとんどないという回答が多い一方、建設分野の業務においては業務を行う上での必須資格となっている。
問3について、人事評価では考慮されないという回答がある一方、責任の大きい業務を任される等、間接的に影響があるという回答が複数ある。
一部の部門では、受注機会が増える、業務の幅が広がると共に高い信頼を得る立場となる等、業務へのポジティブな影響をうかがわせる回答があった。


2. 関係技術者団体、技術士会の各部会等に行ったヒアリング調査(平成19年実施)

  • 調査の目的
     機械部門から原子力・放射線部門まで幅広い分野の技術者が取得可能である技術士制度について、現行制度の課題の抽出及び改善の方向性の分析のため調査を行った。
  • 調査の対象
     1.技術士を活用する側が認識している課題を把握するため、技術士部門ごとの業界の技術者団体(企業や関係技術者協会、官公庁、関係学会等)へ聞き取り調査を行った。(計24団体)
     2.日本技術士会の支部及び部会
  • 調査項目と結果
     1.関係技術者団体等へのヒアリングで収集した意見等
    【技術士の活用促進について】
  • .技術士はPR不足(技術士会の会員の増加が必要)
    ・建設以外での技術士の位置づけの明記、部門の活用のPRが必要。(例えば、経営工学部門のプロジェクトマネジメントの有用性など)
    ・自治体での認知度アップのため、技術士による社会へのPR(提案等)、発注者が技術士を評価し活用する仕組みの整備、発注者支援としての顧問制度等での活用(顧問弁護士のような)が有効ではないか。
    ・地質技術者の社会資本整備貢献度(コスト構造改革、リスク削減等)の発注者への提言・発注者との研究・発表会等による存在感のPR
  • 各企業等での活用
    ・各企業のニーズによる技術士の活動実態が見えにくく、実態をPRすることが活用促進につながるのではないか。
    ・当協会の傘下企業は中小企業が多いが、ニーズに上がってこない。大企業出身者に多い資格ではないか。
    ・産業界での実務経験を持っていることが創業相談に役立つケースがあり、技術士の必要性は感じている。
    ・初歩的な相談も多いため、技術士の専門分野も大切であるが、同時に技術周辺の知識も大切で、人・もの・金についても助言できる技術士が望まれる。
  • 他資格との共有化、国等の施策への対応等
    ・業務独占資格としての専門資格取得者が増えて行く現状を考えると、資格管轄官庁同士の資格の活用共有化が必要と思われる。
    ・ゼネコンにおいては、技術レベルの評価、信用度等に有効である。
    ・設計ミスへの対応として第三者評価を検討されており、技術士の活用が考えられる。
    ・工事の監理技術者として一級施工管理技士を基本に他の資格も認めている。高難度の技術士である必要はない。技術士資格を目指す必要性が少ない。

    【企業内での処遇等】
    ・企業によって異なるが、一般的には、必要性が低いため、業務成績・昇進に直結していない場合が多い。
    ・資格が業務と連動している場合には、処遇制度(手当て等)に反映されているケースがある。
    ・技術士を含め資格取得者には一時金を支給している企業は比較的多い。

    2.日本技術士会の支部・部会へのアンケートにより収集した意見等
    【活用促進について】
    (公的活用)
    ・各省庁、県市町村へ技術士資格活用のアピール。特に公共性が高く、高度な能力を必要とするものについては技術士が是非関与すべき。
    ・高度なプロジェクト等に総合技術監理部門技術士の活用を図るよう制度化されるとよい。
    (企業内での理解の増進)
    ・昨今の企業の不祥事は、企業にとってひとたび発生するとその損失は大きく存在にかかわる状況にあるため、これからは、各企業はその防衛に注意を払うものと考えられ、技術士の役割が期待されるようになると思う。
    ・各企業が自社内に保有する技術士を意識するようになれば、取引先にも技術士を求める気運は生まれると思われる。
    (活用の場の拡大)
    ・独立技術士には技術者倫理、公益性確保、中立性をキーワードに公的業務への促進を公的機関に働きかける。
    ・中小企業支援や防災・減災への協力・提言など活用場面は多い。逆に、そうした場面に技術士が有効に活用されるよう、体制整備や仕組みつくりが必要になる。
    ・ベンチャー企業へのコンサルティングなどは独立技術士の活躍の場として有望であると思われる。そのためには、技術だけでなく、経理、マーケティング、監理力などが必要。こういった面を補強する技術者研修プログラムを整備、総合技術監理をこのような方向に活用していくことも検討の価値ある。
    (社会的評価の向上)
    ・技術士の社会的評価が広がれば、活用も進むと思われる。知名度の低さが、活用促進を妨げている。

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科学技術・学術政策局 人材政策課

(科学技術・学術政策局 人材政策課)