震度が地震の規模や震源直上からの距離（震央距離）に比して著しく高くなる地域。震源の深さが深い地震（深発地震）の際に出現することが多い。原因は主に海洋プレート内を伝わってくる地震波の減衰が小さいためと考えられている。
沈み込む海洋プレートと直上の陸側プレートに挟まれた，くさび型状のマントルの領域。
岩盤等の物体内部に考えた仮想的な面を通して及ぼされる単位面積当たりの力。面に対して垂直な方向の力を垂直応力，面に平行な力をせん断応力とよぶ。地球科学が取り扱うほとんどの範囲では，応力は6つの独立な成分を持つ2階の対称テンソルとして記述できる。一般に，応力テンソルは対角化が可能であり，3つの固有値と固有ベクトルを，それぞれ主応力と主応力軸とよぶ．特に3つの主応力を，圧縮が大きい方から順に最大主応力，中間主応力，最小主応力とよぶ。最大主応力と最小主応力の差を差応力とよぶ。震源域のせん断応力が岩盤のせん断破壊強度に達したときに地震が発生すると考えられている。
色々な方向の複数の既存断層面上で滑り（地震）が発生すると考えたとき，実際に観測される複数の地震の発震機構解をもっともよく説明できる応力場を求める手法。
海底において，音波を用いた距離の測定により地殻変動（相対変位）を連続的に観測すること。
主として軽石やスコリアからなる円錐状の小丘。軽石・スコリアは火山砕屑物の一種で，多孔質で密度が小さく，軽石は白色などの明るい色，スコリアは黒色・暗褐色などの暗い色を示す粒子である。
噴火によって火口から噴出した高温の火山噴出物が，高温の火山ガスや取り込んだ空気とともに高速で火山体斜面を流下する現象。規模や流下物質の構成等によって，熱雲，軽石流（浮石流），スコリア流，火山灰流などとも呼ばれる。
マグマの動きや熱水の活動等に関連して，火山体の中やその周辺で発生する地震。火山が噴火する際だけでなく，噴火していない時にも発生する。
マグマの動きや熱水の活動等に関連して発生する地面の連続した震動。火山性地震とは異なり震動が数十秒から数分，時には何日間も継続する。
火山の噴出物の一種で直径2mm以下の細かい破片のこと。
土や岩石中の粒子間のすきま（間隙）に入り込んだ水などの流体の圧力。
移動体のこと。例えば、GNSS観測により得られた時系列データから移動する観測点の時々刻々の相対位置を高精度に求める解析手法をキネマティックGNSS解析、1観測点のみで移動体位置を求める方法をキネマティック精密単独測位解析という。
→ 断層運動の様式の項を参照。
被害を及ぼすような強い地震動（揺れ）のこと。
発生場所（震源）、メカニズム、マグニチュードがほぼ同じで、概ね一定の時間間隔で繰り返し発生している地震のこと。
本震や余震という区別がなく，ある期間に比較的狭い地域で集中的に発生する地震。
災害誘因を受けた際に生じる被害・損失の規模，様態を左右する地形・地盤などの自然環境や構造物・人間社会の脆弱性のこと。
災害をもたらす原因（加害力，外力）のこと。地震や火山噴火による災害は災害誘因である地震動，津波，火山灰や溶岩の噴出などの外力（ハザード）が災害素因に作用することで引き起こされる。
→ 応力の項を参照。
波動や粒子線が物体や微粒子と衝突して色々な方向に広がっていく現象。地震学では，地震波が不均質な地下構造を伝わる際に，均質な構造の場合とは異なり，エネルギーの一部が色々な方向に広がっていく現象のことを指す。
火山ごとに，可能性のある複数の噴火現象の時間的推移を網羅的に示した，噴火の推移を示す系統樹。示された複数の噴火推移のうち，どの道筋をたどるかの分かれ目を，事象分岐という。
地震及び火山噴火予知研究を行っている全国の大学，研究機関，行政機関等が，本計画で立案された研究を，連携と協力関係を強化して推進するために東京大学地震研究所に設置された組織。
南海トラフの地震・津波を常時観測監視するため，南海地震震源域及び東南海震源域に設置された地震・津波をリアルタイムで常時監視するシステム。DONETは英語名Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamisの略称。海底に設置された地震計や水圧計などの観測機器ネットワークによって，地殻変動，地震動，津波などを計測する。
2つの観測点で記録された地動の波形を処理することで，それらの間を伝わる波を抽出する手法。地震探査と違い，人工震源を使わずに地下構造を探査することができる。
主要な活断層で繰り返し発生する地震や海溝型地震を対象に，地震の規模や一定期間内に地震が発生する確率を予測したもの。
地震の規模を表す最も基本的な量。地震断層の面積と滑り量及び剛性率（岩盤の変形のしにくさを表す物性値）の積で計算される。
磁鉄鉱などの磁性鉱物を含む岩石の磁化（磁性の強さ）が低下，または失われること。特に，高温化による消磁のことを熱消磁という。マグマが地表へ近づくなどの原因により火山体内の温度が上昇することで，熱消磁が起こることがある。消磁領域の周辺では磁場（磁界）が変化する。
地震計によって常時観測される地面のわずかな揺れのこと。常時微動を測定することにより，建物や地盤の揺れやすさの特徴を調べることができる。
蛇紋石を主成分とする岩石で，通常多少の磁鉄鉱・クロム鉄鉱等を含む。肉眼で黒～暗緑色を呈している。かんらん岩が水と反応してできる。具体的には，約600°C以下の温度条件で，かんらん岩に含まれているマグネシウムに富むカンラン石や輝石が蛇紋石に変化してできる。
断層面上における滑り量の分布や滑り方向、破壊の伝播様式を表すモデルのこと。
火薬やバイブロサイスなどの人工震源を用いて地震波を発生させ，これをいろいろな地点で観測して，地震波の伝播速度や減衰などを調べることにより地下の構造を明らかにする手法。構造探査の手法のひとつ。
プレート境界の固着域の下端付近で発生する低周波（数Hz）成分に富んだ地震波が長い時間にわたって放出される現象のこと。
マグマなどの熱によって火山体内部または地表付近の水が気化されて体積が膨張することで，水蒸気が急激に噴出する現象のこと。噴火口付近の岩石が砕け，火山岩塊や細粒火山灰が飛散する。
プレート境界におけるプレート間の相対変位を考えた時，プレートの収束運動から期待される量から，実際に生じているずれの大きさを減じた量。欠損が大きいとはプレート間が固着していることを意味する。
海洋プレートがマントル中に沈み込んだ部分。
地震活動や火山活動が以前の活動よりも相対的に低下している現象。
→ 断層運動の様式の項を参照。
液体の中から固体が分離して出てくること。
地震や火山噴火の発生前に震源域や火山の周辺で発生するさまざまな異常現象。土地の隆起・沈降，地震活動の変化，電磁気異常，地下水の変化などがある。前兆現象と呼ばれることもある。
本震の近傍で本震発生前に起きる地震のこと。
観測された地震波形が良く似ている地震群のこと。ほぼ同じ断層面で同じような滑りが起きた場合に発生すると考えられる。
岩脈ともいい，地層や岩石の割れ目にマグマが鉛直方向に貫入し固まったもの。
マグマの中に溶け込んでいる，または，気泡として存在している火山ガス成分が，マグマの外に放出される現象のこと。
断層がずれ動くことを断層運動と呼ぶが、地殻内部にかかる力の状態は複雑で，その状況によって様々な型が存在する。 断層面が傾いている場合，両側の岩盤のうち，断層面より浅い側を上盤，深い側を下盤と言う。断層面を境として両側のブロックが上下方向に相対運動するタイプを「縦ずれ断層」と呼び，「縦ずれ断層」のうち，上盤側がずり下がるタイプを「正断層」，のし上がるタイプを「逆断層」と呼ぶ。両側のブロックが水平方向に相対運動するタイプを，「横ずれ断層」と呼ぶ。実際の断層運動の殆どは，縦ずれ断層と横ずれ断層の重ね合わせである。
地震などの断層運動や火山活動などの地下の活動によって地表に生じた変位やひずみ，傾斜の変化。
規模の大きな地震が発生した場合に生じる，ゆっくりとした揺れのこと。高層ビルは固有周期が長く長周期地震動により影響を受けやすい。
固有周期が1～2秒から7～8秒程度の揺れが生じる高層ビル内における，地震時の人の行動の困難さの程度や，家具や什器の移動・転倒などの被害の程度から4つの段階に区分した揺れの大きさの指標。観測された長周期地震動階級は，気象庁ホームページで試行的に提供されている。
月や太陽などの他の天体の引力により生じる海水面の昇降（海洋潮汐）や地球の変形（固体潮汐）。
津波によって運ばれた砂や礫などが堆積したもの。これらの調査により，過去の津波の発生年代や浸水規模を推定することができる。
噴火によって噴煙や火砕流として噴出した火山砕屑物が、地表に堆積した物。
電離層（圏）の電子密度の総数を表す量のこと。単位面積を持つ鉛直の仮想的な柱状領域内の電子の総数を表す。TEC（Total Electron Content）とも呼ばれる。
多数の観測点の地震波形記録等から地下の2次元または3次元構造を推定する手法。地震波速度や減衰構造の推定によく用いられる。医学の分野において，X線や超音波で体の2次元断面を求めるための手法が，地球物理学に応用されたもの。
断層面を横切る方向に細長い溝を掘り、断層を観察して断層のずれ方や地層の年代を測定し、断層の動いた年代や周囲の環境を調べる調査。
地震計と津波計が一体となった観測装置を光海底ケーブルで接続した観測網で，防災科学技術研究所が日本海溝沿いの海底に設置したもの。24時間連続で観測データをリアルタイムに取得できる。観測装置は150カ所，ケーブル総延長は約5,700kmである。
力を加えるとその速度に応じた速度で流動し，力を除くと静止するような物質の力学的性質を粘性と呼ぶ。粘性率はそのような変形に対する抵抗の大きさ表す物性値で，通常，流体内部に働く単位面積あたりに働く力（応力）と流体の変形速度の比で定義される。
加えられた力に応じて変形し力を除くと原形に戻る弾性的性質と，加えられている力に応じた速度で時間とともに変形が進行する粘性的性質を併せもつ性質。
地震時の断層運動を断層面の向き（走向，傾斜角）と相対すべりの向き（すべり角）によって表現したもののことをいう．震源域の応力場を知る手がかりとなる観測データである．地震波の放射パターンなどから求められる。
断層面やプレート境界面で発生する、地震波を出さない、ゆっくりとした滑り。
岩盤（プレート）などが変形する際の，変形の大きさをひずみといい、単位長さ当たりの変位で定義される。また変形前後の面積の変化の割合を面積ひずみという。
測地観測や地形から推定された地殻ひずみが大きい領域。
物体に外力が作用すると変形するが，外力を除去した場合に可逆的に原形に復帰する変形は弾性変形であるが，可逆的でない場合のことをいう。
海溝やトラフにおいて海洋プレートが沈み込むときに，海洋底にたまっていた堆積物がはぎとられて陸側へ押しつけられていくが，この作用を付加作用といい，その結果，陸側斜面先端部につけ加えられた多くの逆断層で積み重なったプリズム状の断面をもつ堆積体のこと。
→ プレート境界の項を参照。
地球表面は，地殻と十分に冷却して固くなっている最上部マントルとを合わせた，厚さ100km程度の複数の固い岩石の層で覆われている。この岩石層がプレートとよばれ，隣り合う2つのプレートの境界がプレート境界である。プレート境界においてはしばしば大きな地震が発生する。
ある地域を断層を境界とする多数のブロックに分割し，地殻変動などをブロックの運動で近似するモデル。
噴火時にマグマが地表に噴出する場合，噴火の様子はマグマの性質や破砕の程度などによって異なり，いくつかのタイプに識別される。その異なる噴火の様子を噴火様式という。
・ストロンボリ式噴火
比較的粘性の低いマグマによる間欠的な小噴火。火口からは数分～数十分間隔でマグマのしぶき，半ば固結した溶岩片，火山弾などが吹き上げられる。
・ブルカノ式噴火
やや粘性の高いマグマによる爆発的な噴火で継続時間は短い。噴煙高度が10km近くに達することもある。爆発によって1m径の岩塊（火山弾）が数kmも飛ばされることがある。火山弾には，新しいマグマが冷え固まったものと，火口底にあった古い岩塊が含まれる。火砕流も同時に発生することがある。桜島や浅間山などでしばしば発生する。
・プリニー式噴火
比較的粘性の高いマグマによる爆発的な噴火。一般的にブルカノ式噴火よりも規模が大きく，継続時間が長い。大量の軽石や火山灰が火口から空高く噴出され，噴煙柱を形成する。噴煙高度は20kmから30kmにまで達することがある。しばしば規模の大きい火砕流が発生する。やや規模の小さい噴火を準プリニー式噴火と呼ぶ。
光は電磁波と呼ばれる横波であり，進行方向に対して垂直な面内で電場と磁場が互いに垂直な向きで振動しながら伝播する。通常は，その垂直面内でいろいろな方向に振動する多数の波が集まっているが，レーザー光は完全に一方向にのみ振動しており，これを直線偏光と呼ぶ。レーザー光が粒子によって散乱される光は，散乱体の粒子の形状によって，入射するレーザー光よりも直線偏光状態が弱くなる場合がある。その程度を示す指標が偏光解消度である。火山灰などの非球形粒子は偏光解消度が高い。
掘削により柱状試料を採取する手法で，トレンチ調査に比べ深い深度まで地質試料を入手することができ，より長い期間の地質現象を探ることが出来る。ボーリングコアとは，ボーリングにより採取されたサンプルのこと。
比較的大きな地震が発生すると，その近くで最初の地震より小さな地震が直後から続発する。この最初の大きな地震のことを本震，その後に続発する地震を余震という。
岩石物質の高温溶融体。噴火によってマグマが地表に出たものを溶岩という。マグマが地殻内で結晶化したり，地殻物質を溶かしこんだりして，多様な組成のマグマができることを，マグマの分化という。それにより，二酸化ケイ素含有量の少ない組成のマグマから，より二酸化ケイ素含有量に富む組成のマグマが生成されていく。マグマの分化によって，一般に粘性が大きくなる。
・苦鉄質マグマ
二酸化ケイ素含有量の少ないマグマ。玄武岩組成のマグマが相当する。
・珪長質マグマ
二酸化ケイ素含有量の多いマグマで，通常はデイサイトや流紋岩組成のマグマを指す。
地下のマグマが岩盤に割れ目をつくりながら移動する現象。
火山活動の源であるマグマが蓄積されているところ。その存在位置，形状，内部構造，内容物の特性などの情報は，噴火現象の理解に欠かせないが，現状では，よく研究されている少数の火山に限り，それらのごく一部が明らかにされているのみである。
噴出物のほとんどがマグマ物質からなる噴火のことで，ストロンボリ式噴火，プリニー式噴火，溶岩流の噴火などがこれにあたる。
岩石の破壊強度や断層面上の摩擦強度を滑り量や滑り速度などの関数として記述したもの。
摩擦構成則で用いられる媒介変数で，これらが摩擦強度の速度依存性などの摩擦の特性を表す。
マグマ中で斑晶が晶出する際に， 斑晶中に周囲の流体（メルト）が捕獲されたもの。結晶ができた当時のメルトの組成を記録している貴重な情報源である。
→ ひずみの項を参照。
モホロビチッチ不連続面の略称。地球の地殻とマントルとの境界であり，そこでは地震波速度が不連続となっている。
断層面やプレート境界面で発生する非地震性すべりの一種で、非定常なゆっくりとした滑り。ここでは，継続時間が数か月以上のものを長期的ゆっくりすべり，それ以下のものを短期的ゆっくりすべりと呼ぶ。スロースリップ，スロースリップイベント（SSE）ともいう。
地震の後に震源域あるいはその周囲の断層面で発生するゆっくり滑り。
地震の後に震源域あるいはその周囲で生じる長期間に及ぶ地殻変動の総称。代表的な例としては，断層面上で発生する余効滑りや，マントルの粘弾性応力緩和による変形などが挙げられる。
→ 本震，余震の項を参照。
物質の変形や流動について，単位面積あたりに働く力（応力）と変形の大きさや変形速度の関係の様子を表したモデル。
一つの観測点において異なる成分で記録された地震波形を処理した関数。「レシーバ関数解析」とは，直達P波とPs変換波（境界面でP波からS波に変わる波）等の到達時刻差を用いて，波の変換が起こるような面（例えばプレート境界面）の深さを推定する手法。
地震の規模別頻度を横軸としてマグニチュード，縦軸として地震の発生数の対数をプロットした際の傾きのこと。通常は0.7～1.0程度である。
Digital Elevation Model の略。地表面を等間隔の正方形に区切り，それぞれの正方形の中心点の標高値の数値データ。
全球測位衛星システム（Global Navigation Satellite System）の略称。位置や時刻同期を目的とした電波を発射する人工衛星群，地上の支援システム及び電波の受信装置の総称。利用者は，受信機で電波を受信することで自分の3次元的な地球上の位置や正確な時刻を計測することができる。アメリカ合衆国が構築したGPSは現在最も実用的なGNSSであるが，他にもロシアのGLONASSや，ヨーロッパ連合（EU）のGalileoなどのシステムがある。
12～18GHzの周波数帯域を用い、1分以内で高頻度かつ3次元の観測ができるレーダーのこと。
Light Detection and Rangingの略。遠方の大気や物体にレーザー光を照射してその物理的な特性を計測する装置や技術。
地震モーメントの大きさから一意に算出されるマグニチュード。比較的短い周期の地震波から簡便に決定できるマグニチュードは，大規模な地震でその値が飽和してしまうという問題があった。この問題を解消するために導入された。
窒素，ヘリウム，アルゴンの三成分を三角グラフにより表現した図のこと。
Primary wave（第一波）またはPressure wave（圧力波）の略。進行方向に平行に振動する弾性波。固体・液体・気体を伝わることができる。
Secondary wave（第二波）またはShear wave（ねじれ波，たわみ波もしくはせん断波）の略。進行方向と直交に振動する弾性波。固体のみを伝わることができる。
Synthetic Aperture Radar（合成開口レーダー）の略。人工衛星や航空機などに搭載されたアンテナを高速で移動させることにより大型アンテナと同等の高い分解能を実現したレーダーシステム。干渉SAR解析は，同じ場所を撮影した時期の異なる2回の画像の差をとる（干渉させる）ことにより地表面の変動を詳細にとらえる手法である。
研究開発局地震・防災研究課