4.まとめ

 「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の3年度目にあたる平成28年度には,地震や火山噴火による災害を考える上で重要な地震として,2016年熊本地震が発生した。平成28年4月14日から始まった一連の地震活動とそれに伴う震災の発生に関わる調査研究を,地震直後の合同観測の記録等を活用して行った。地震による火山活動への影響が懸念された阿蘇山の火山観測・監視設備も甚大な被害を受けたが,本計画に関わる研究機関を中心に迅速な復旧が行われ,2016年熊本地震による影響については不明であるものの同年10月8日の爆発的噴火の先行現象を捉える事ができた。また,平成28年4月1日には三重県南東沖でM6.5の地震が発生した。この地震自体は被害を及ぼさなかったが,震源は昭和の東南海地震・南海地震の震源域に近く,また巨大地震の発生が懸念されている南海トラフで近年久しく発生してなかったプレート境界付近の地震であった。このような事情から南海トラフ巨大地震に関する研究の一環として,詳細な研究が現在進められている。災害誘因に関しての理解を深めるためには,災害誘因発生後や発生中の現状把握力の向上と継続的なデータの収集が不可欠である。また災害軽減に資するための観測システムとして,地震発生後の津波検知などのための海域観測網や,火山衛星監視システムなどの整備・維持も不可欠である。
 本研究計画は,前計画では不足していた工学や人文・社会科学分野の研究者の参加による学際的研究の推進が特徴である。上記の2016年熊本地震に関するシンポジウムを開催し,一般市民及び行政向けのセッションを行うなど,研究成果の社会発信も行われた。また桜島火山噴火による避難シミュレーションなど,地方自治体の避難計画作成に資する学際的研究も進められた。歴史地震に関するデータベースの構築や,南海トラフ巨大地震のリスク評価に関する研究なども着実に進められた。引き続き,本計画に参加する研究者間の連携を強化し,地震や火山噴火による災害の軽減に貢献できる観測・調査・研究を推進していかなければならない。

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