[用語解説]

アウターライズ(地震)

海溝から沈み込もうとする海洋プレートがたわむことによって海溝軸近傍の外側(陸と反対側)に形成される高まりの付近(で発生する地震)。

アクロス

アクロス(ACROSS)は,Accurately Controlled, Routinely Operated Signal Systemの略。日本語では「精密制御定常信号システム」と呼ばれる。アクロスには,地震波(弾性波)を用いたものと電磁波を用いたものがある。前者の弾性波アクロスは偏心した錘(おもり)を精密に回転させることで,数ヘルツから数十ヘルツの周波数の振動を発生させる。観測点では,長時間のデータを足し合わせることにより,微弱な信号を検出する。この信号の伝わり方の時間変化を調べることにより,プレート境界の状態や断層の状態を監視しようというもの。

アスペリティ

プレート境界や断層面の固着が特に大きい領域のこと。この領域が地震時に滑ると,滑り量が周りよりも大きくなり,大振幅の地震波を放出する。アスペリティがどのように連動して滑るかによって地震の大きさが変化する。いろいろな大きさのアスペリティが混在する場合には,それらの相互作用が地震サイクルに大きく影響すると考えられている。

アセノスフェア

地球表面を覆う堅い層(リソスフェア)の下に存在する,上部マントル中の流動性に富む層のこと。

アレイ観測

地震計等の観測機器を比較的狭い範囲に数多く並べて行う観測。地震計アレイ観測では,多数の地震計の波形を重ね合わせることにより,ノイズが除去されて微弱な信号を検出したり,観測点ごとの地震波の到着時間差から地震波の到来方向を推定したりすることができる。

安山岩

二酸化ケイ素の含有率が52~63重量%である火山岩。この中で二酸化ケイ素が52~57重量%の火山岩を玄武岩質安山岩と呼ぶことがある。

安定滑り

短周期地震波を放射しないゆっくりとした滑りのこと。非地震性滑りとも呼ばれる。

異常震域

震度が地震の規模や震源直上からの距離(震央距離)に比して著しく高くなる地域。震源の深さが深い地震(深発地震)の際に出現することが多い。原因は主に海洋プレート内を伝わってくる地震波の減衰が小さいためと考えられている。

ウェッジマントル

沈み込む海洋プレートと直上の陸側プレートに挟まれた,くさび型状のマントルの領域。

衛星測位

人工衛星から発射される信号を用いておこなう位置の決定やその場所の時刻に関する情報の取得,またこれらに関連付けられた移動の経路等の情報を取得すること。

液状化(現象)

地下水を含む地盤が地震動で揺すられることにより急激に流動化すること(その現象)。

応力

岩盤等の物体内部に考えた仮想的な面を通して及ぼされる単位面積当たりの力。震源域の応力が岩盤の破壊強度より高くなったときに地震が発生すると考えられている。3次元の物質中の応力状態は互いに直交する3つの軸方向の圧縮と引っ張りで表すことができるが,この3つの軸を応力の主軸と呼ぶ。

海溝型地震

海溝付近で発生する地震。プレート境界地震,海洋プレート内地震,陸型プレート内のプレート境界から派生した断層で発生する地震を含む。

海底間音響測距観測

海底において,音波を用いた距離の測定により地殻変動(相対変位)を連続的に観測すること。

海底津波(圧力)計

海水位の上下変化を海底の水圧変化として捉え,津波(や上下変動)を検知するセンサー。

界面動電現象

固体と液体,または異なる液体と液体の間で相対的な運動があるとき,その境界面に沿って電位差が生じたり,逆に電位差をつくると相対運動が引き起こされたりする現象。

海洋性地殻

海洋性プレートの最浅部を構成する岩層。海洋性地殻の厚さは約6~10kmで,大陸地殻に比べて薄い。

ガウジ

断層運動にともなう破砕によって生じた細粒・未固結の物質からなる層。

火口

噴火口ともいい,地下のマグマや火山ガス,それらに運ばれた岩塊などが地表に噴出する(または過去に噴出した)場で,通常は円形に近いくぼ地である。

火砕流

 噴火によって火口から噴出した高温の火山噴出物が,高温の火山ガスや取り込んだ空気とともに高速で火山体斜面を流下する現象。規模や状況によって,熱雲,軽石流(浮石流),スコリア流,火山灰流などとも呼ばれる。

火山ガス

地下のマグマに溶けている揮発性成分が,圧力低下などにより発泡して地表に放出されたもの。火山ガスの主成分は水蒸気であり,その他に,二酸化炭素,二酸化硫黄,硫化水素,塩化水素,フッ化水素,水素などの成分が含まれる。

火山岩

マグマが地表及び地表近くで冷却して固まった岩石。一般には二酸化ケイ素が最も多く含まれる成分であり,その重量%によって玄武岩から流紋岩までに分類される。一般には細粒の鉱物とガラスの集合体からなり,噴出前に結晶化していた結晶(斑晶と呼ぶ)を含むことが多い。

火山性地震

マグマの動きや熱水の活動等に関連して,火山体の中やその周辺で発生する地震。火山が噴火する際だけでなく,噴火していないときも発生する。

火山灰

火山の噴出物の一種で直径2mm以下の細かい破片のこと。

火山灰雲

火山の噴火の際に,上昇気流によって温度が下がることにより形成される火山灰を大量に含んだ雲。

火山フロント

火山は,沈み込んだプレートの深さが100~150kmに達したところの直上の地表に,海溝軸にほぼ平行に分布する。この帯状の火山分布の,海溝に近い側の境界を結ぶライン。

火山性微動

マグマや熱水の移動等に関連して発生する地面の連続した震動。火山性地震とは異なり震動が数十秒から数分,時には何時間も継続する。マグマ溜りや火道内でのマグマや火山ガスの振動,マグマが亀裂の中を移動する際に起こす振動等が原因と考えられている。

火山防災マップ

各火山の災害誘因(大きな噴石,火砕流等)の影響が及ぶおそれのある範囲を視覚的にわかりやすく地図上に描画した火山ハザードマップに,防災上必要な情報(避難計画に基づく避難対象地域,避難先,避難経路,避難手段等に関する情報のほか,噴火警報等の解説,住民や一時滞在者等への情報伝達手段等)を付加して作成した地図のこと。

火山礫

火山の噴出物の一種で直径2mm~64mmの火山岩片のこと。

活褶曲

第四紀後期(数十万年前~現在)に入ってからも活動を続けている褶曲のこと。おもに活断層の活動に伴う。

活断層

地質時代でいう第四紀後期(数十万年前~現在)に繰り返し地震を発生させ,地表近傍まで食い違い変位を生じさせてきた断層。今後も同様の地震を発生させると考えられる。

火道

地下のマグマ溜まりから地表へ至るまでのマグマの上昇経路のこと。

火道流モデル

火道内におけるマグマの流れをモデル化したもの。火道内を上昇するマグマの中で,圧力低下とともに生じる様々な現象(発泡・脱ガス・結晶化・破砕等)を考慮し,火道入口(地下のマグマ溜まり)の圧力,流量,マグマの組成等と,火道出口の噴出挙動の関係を考察する基本となるモデル。

カルデラ

 火山地域における大型の凹地のことで,通常は直径2km以上のもの。マグマ溜まり直上の岩盤が崩落することによって形成される場合が多い。

カロリーメータ

熱量計のこと。化学反応・物理変化にともなって出入りする熱量や熱容量の測定に用いられる器具。

間隙水圧

土や岩石中の粒子間のすきま(間隙)に入り込んだ水などの流体の圧力。間隙流体圧ともいう。

間隙率

多孔質物体の孔隙性を表すもので,物体中の固体部分を差し引いた容積の物体全容積に対する比のこと

完新世

地質年代区分で最も新しい時代のこと。約10,000年前から現在までを示す。氷期が終わった後の温暖な時代のため後氷期とも呼ばれる。

含水鉱物の脱水分解

水を結晶構造中に含む鉱物が温度・圧力の上昇により分解して鉱物内の水を放出する現象のこと。

岩石組織

岩石の構成鉱物,鉱物間を埋める固形物や気泡の大きさ,形,かみ合わさりかた,配列のこと。

岩屑なだれ

山体の一部が火山噴火や強震動等に伴って崩壊し,ふもとに向かって一気になだれ落ちる現象のこと。

基線長

GNSSや三辺測量などの測地観測で用いられる基準点間を結ぶ基線の距離。

輝度温度

固体は高温になると光を放射するが,ある波長の光の輝度(単位面積あたりの明るさ)と等しい輝度の黒体(光のエネルギーを完全に放射または吸収する物体)の温度。

機能的フラジリティ曲線

被害の発生確率を何らかの量の関数として表したもので,災害等に対する脆弱性の評価に用いる。

キネマティックGNSS解析

GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)は,GPS等の衛星を用いた測位システムの総称で,GNSS観測から観測点の時々刻々の位置を高精度に求める解析手法。

基盤地図情報

地理空間情報のうち,電子地図上における地理空間情報の位置を定めるための基準となる測量の基準点,海岸線,公共施設の境界線,行政区画その他の位置情報であって電磁的方式により記録されたもの。

基盤的火山観測網

防災科学技術研究所により運用されている全国の11火山に展開され,GPSや傾斜計,高感度及び広帯域地震計などの観測機器により構成されている観測網 (V-net)。

基盤的地震観測網

地震調査研究推進本部の「地震に関する基盤的調査観測計画」(平成9年8月)に基づく地震の観測網のことで,高感度地震計(防災科学技術研究所のHi-net),広帯域地震計(防災科学技術研究所のF-net),強震計(防災科学技術研究所のK-NETとKiK-net)等からなる。

球状圧力源

火山直下のマグマ溜まり等の圧力変化に伴う地殻変動を議論する際に用いられる最も単純な力源モデル。地下の球状の空洞の壁に作用する圧力変化による地表の変位や傾斜,ひずみが計算される。

強震動

被害を及ぼすような強い地震動(揺れ)のこと。

強震動生成域

断層面上で特に強い地震波(強震動)を発生させる領域。

距離減衰式

地震の揺れの強さと断層面からの距離との関係を式に表したもの。過去に発生した数多くの地震の観測データを統計的に処理して作成された経験的な式である。地震動予測式とも呼ばれる。

緊急地震速報

地震の発生直後に,震源に近い地震計で捕らえた観測データを直ちに解析し,各地での主要動の到着時刻や震度を予想し,可能な限り素早く知らせる情報のこと。

空振

空中を音波として伝わる振動のこと。耳に聞こえない低い周波数の音波をさす場合が多い。噴火に伴って火山ガスや噴煙が火口から大気中に放出される際に発生することがよく知られているが,地震,津波,雪崩等の発生時に放出されることもある。

空地避難

災害時の安全な避難と良質な住環境の確保のため,空地や公園等に避難すること。

矩形断層モデル

震源断層の断層面を矩形(=長方形)と仮定して地表の地殻変動等を計算するためのモデル。

苦鉄質マグマ

→マグマの項を参照。

クラスター

一般には集団や群れのことであるが,ここでは地震がある特定の場所に数多く集まっている状態,またはそのような地震の集合体のことを意味する。

クラック

岩石中の裂け目,ひび割れのこと。

繰り返し地震

ほぼ同じ場所(震源)で,概ね一定の時間間隔で繰り返し発生しているマグニチュードがほぼ一定の地震のこと。

群発地震

本震や余震という区別がなく,ある期間に比較的狭い地域で集中的に発生する地震。

傾斜計

地表面の勾配の変化を測定する計器。

珪長質マグマ

→マグマの項を参照。

減衰定数

地震波の振幅などの量が時間や伝播距離とともに減少していくとき,その減少の大きさを表わす数値。

玄武岩

マグマが地表及び地下の浅いところで冷却・固結して生じた,二酸化ケイ素の含有率が45~52重量%である火山岩。

コア

→ボーリング(コア)の項を参照。

光学センサー

主に可視光などの電磁波を検出するセンサーのこと。

広帯域地震観測網

地震等による地面の速い震動から非常にゆっくりとした震動まで,広い周波数範囲にわたって地震動を記録できる地震計により構成される地震観測網。防災科学技術研究所により運用されているF-net等がある。

航空レーザー測量

航空機から地上にレーザー光を照射し,反射されて戻ってくるレーザー光の時間から得られる航空機と地上までの距離と,GNSS測量機,慣性計測装置から得られる航空機の位置情報より,地上の標高や地形の形状を調べる測量方法。

工学的基盤

地震基盤より浅いS波速度300~700m/sの地層。

降水補正

ひずみ計や傾斜計のデータにおいて,雨による影響を除去すること。

後続波群

S波の後に到達する波のこと。

広帯域震源モデル

長周期から短周期に至る地震動を再現する震源モデルのこと。

国土数値情報

国土形成計画,国土利用計画の策定等の国土政策の推進に役立てるために,地形,土地利用,公共施設などの国土に関する基礎的な情報を整備したもの。位置や空間に関する様々な情報を,コンピュータを用いて重ね合わせ,情報の分析・解析をおこなったり,情報を視覚的に表示させるシステムであるGIS(Geographic Information System:地理情報システム)のデータなどに使用される。

災害素因

災害誘因を受けた際に生じる被害・損失の規模,様態を左右する地形・地盤などの自然環境や構造物・人間社会の脆弱性のこと。

災害誘因

災害をもたらす原因(加害力,外力)のこと。地震や火山噴火による災害は災害誘因である地震動,津波,火山灰や溶岩の噴出などの外力(ハザード)が災害素因に作用することで引き起こされる。

散乱

波動や粒子線が物体や微粒子と衝突して色々な方向に広がっていく現象。地震学では,地震波が不均質な地下構造を伝わる際に,均質な構造の場合とは異なり,エネルギーの一部が色々な方向に広がっていく現象のことを指す。

時間依存インバージョン

プレート境界固着等の物理量の空間分布が時間発展する様子を推定する解析手法。

自己浮上式海底地震計

船上からの音響信号により,海面に浮上する仕組みを有する海底設置型の地震計のこと。地震の活動度が相対的に高い領域(余震域)など,地震活動を継続的に把握する必要がある領域において,自己浮上式海底地震計を用いた観測が実施される。

自己浮上式海底水圧計

自己浮上式海底地震計と同様の機構により,一定期間の観測終了後に浮上させ,回収可能な水圧計のこと。オンラインではないが,沖合において津波や地殻変動の高精度な観測が可能である。

事象系統樹(噴火事象系統樹)・事象分岐

火山ごとに,可能性のある複数の噴火現象の時間的推移を網羅的に示した,噴火の推移を示す系統樹。示された複数の噴火推移のうち,どの道筋をたどるかの分かれ目を,事象分岐という。

地震応答特性

入力地震波に対する地盤や建物の振動特性のこと。

地震基盤

S波速度が3km/s秒程度以上の層で,地震波が地盤の影響を大きく受けない層の上面のこと。

地震空白域

過去に大きな地震が発生したが,その後長い期間地震が起きていない場所のこと。

地震性滑り

地震波を励起する急激な断層の滑りのこと。

地震探査

火薬やバイブロサイスなどの人工震源を用いて地震波を発生させ,これをいろいろな地点で観測して,地震波の伝播速度や減衰などを調べることにより地下の構造を明らかにする手法。構造探査の手法の一つ。

地震調査研究推進本部

行政施策に直結すべき地震に関する調査研究の責任体制を明らかにし,この調査研究を一元的に推進するため,地震防災対策特別措置法に基づき総理府に設置された政府の特別の機関。現在は,文部科学省に設置されている。

地震・津波観測監視システム(DONET)

南海トラフの地震・津波を常時観測監視するため,南海地震震源域及び東南海震源域に設置された地震・津波をリアルタイムで常時・監視するシステム。海底に設置された地震計や水圧計などの観測機器ネットワークによって,地殻変動,地震動,津波などを計測する。

地震動の即時予測

地震の発生直後に,地震の揺れを感知した地震計のデータを用いて,まだ揺れの到達していない場所での地震動を可能な限り素早く予測する技術のこと。

地震波干渉法

2つの観測点で記録された地動の波形を処理することで,それらの間を伝わる波を抽出する手法。地震探査と違い,人工震源を使わずに地下構造を探査することができる。

地震波低速度異常

岩石の物性の違いなどにより,地震波の速度が小さくなること。

地震発生サイクル

地震発生後,断層面の強度が回復するとともに,プレート運動などによる広域応力により再びひずみエネルギーが蓄積され,次の地震が発生するまでの一連の過程。

地震発生長期評価

主要な活断層で繰り返し発生する地震や海溝型地震を対象に,地震の規模や一定期間内に地震が発生する確率を予測したもの。

地震モーメント

地震の規模を表す最も基本的な量。地震断層の面積と滑り量及び剛性率(岩盤の変形のしにくさを表す物性値)の積で計算される。

自然電位

地表もしくは地中・海中に自然に存在する電位のこと。

地盤増幅度

その地点での,地表付近における地震の揺れやすさを示す値。

地盤モデル

地表から工学的基盤までの浅部地盤構造及び工学的基盤から地震基盤までの深部地盤構造を合わせたモデルのこと。

消磁

磁鉄鉱などの磁性鉱物を含む岩石の磁化(磁性の強さ)が低下,または失われること。特に,高温化による消磁のことを熱消磁という。マグマが地表へ近づくなどの原因により火山体内の温度が上昇することで,熱消磁が起こることがある。消磁領域の周辺では磁場(磁界)が変化する。

準静的滑り

→非地震性滑りの項を参照。

上部マントル

地球の最上部である地殻の下に存在する層で,主にかんらん岩からできている。深さ660kmに地震波不連続面があり,これより浅い部分。

シル

地層にマグマが貫入して固まった板状岩体のうち,地層面にほぼ平行に貫入したもの。

主圧力軸,主張力軸

→ 発震機構解の項を参照。

震源過程

地震は震源域において断層面が滑ることで生じるが,この滑りの時空間発展過程のこと。

震源断層モデル

断層面上における滑り量の分布や滑り方向を表すモデルのこと。

人口衛星レーザー測距(SLR)

地上基地局から人工衛星に向けて発射したレーザー・パルスが反射して戻ってくるまでの時間から,地上基地局と衛星間の距離を測定する。人工衛星にはコーナーキューブとよばれる,光がやってきた方向に反射する特殊な鏡が複数取り付けられ,1cm以上の精度の精密な測定が可能である。SLRはSatellite Laser Rangingの略。

伸縮計

地面の2点間の伸び縮みをはかる装置。

深発地震

地下深いところで発生する地震で,明確な定義はないが,およそ200km以深で発生する地震のことをいう。

深部低周波微動

プレート境界の固着域の下端付近で発生する低周波(数Hz)成分に富んだ地震波が長い時間にわたって放出される現象のこと。

水蒸気噴火

マグマなどの熱によって火山体内部または地表付近の水が気化されて体積が膨張することで,水蒸気が急激に噴出する現象のこと。噴火口付近の岩石が砕け,火山岩塊や細粒火山灰が飛散する。

数値予報モデル

数値予報とは,物理学の方程式によりある物理量の時間変化をコンピュータで計算して将来を予測することであり,この計算に用いる物理・化学モデルを数値予報モデルという。

ストロンボリ式噴火

→ 噴火様式の項を参照。

滑り欠損

プレート境界の変位を考えた時,プレートの収束運動から期待される量から,実際に生じているずれの大きさを減じた量。欠損が大きいとはプレート間が固着していることを意味する。

ステレオ画像

景色や物などを2つの視点から撮った画像を左右に並べたもの。特別なめがねの利用などにより立体的に見える。

スメクタイト

膨潤性(水を含むことにより膨張しやすい性質)をもつ粘土鉱物の総称。

スラブ

海洋プレートがマントル中に沈み込んだ部分。

スラブ内地震

海溝などから沈み込んだ海洋性プレート内で発生する地震のこと。

(地震活動の)静穏化

活動が以前の活動よりも相対的に低下している現象。

静岩圧

地層は岩石によってできており,地下のある地点においてそれより浅部にある岩石の総重量によって生じる圧力をいう。深度が増加するほど静岩圧は上昇する。

正孔

電子が不足しているために正の電荷を持っているように見える領域。正孔が移動すると電子の移動と逆向きの電流が流れる。

脆性-塑性遷移領域

脆性とは,固体が外力を受けたときに,あまり非弾性変形しないうちに破壊する性質のことである。塑性は,固体が外力を受けたときに,外力が限界値に達すると,力がほぼ一定のまま変形が進行し,力を除いても変形したままで元に戻らない性質のことである。岩石は低温下では脆性的で地震が発生しやすく,高温下では塑性を示し地震は発生しないが,この両者の境界の領域をいう。

セグメント

断層で地震が起こる場合には,断層全体が一度に動くとは限らず,幾つかの区分に分かれた振る舞いをすることがある。このように,まとまった振る舞いをする区分をセグメントと呼び,それらの境界のことをセグメント境界という。

石基ガラス

マグマは一般には結晶と液体部分から構成され,地表で冷却された場合にその液体部分は,急冷されるために細粒の結晶と結晶化しなかったガラスの集合体となる。この集合体を石基と呼ぶ。空中で急冷された軽石や火山灰の場合,石基がほぼガラスから構成されることが多く,この場合にはガラス組成は噴火時のマグマの液体部分の化学組成を示すことになり,火山灰の対比などに利用される。

絶対応力

応力の絶対値のこと。地震のデータからは,応力変化の推定は比較的容易だが,絶対応力の推定は難しい。

絶対重力

測定地点での重力の絶対値。絶対重力計で測定される。

全球数値気象モデル

地球大気全体を一定の格子間隔に分け,大気の状態を表す物理量の方程式を組み込んで,大気の状態を予測するモデルのこと。

先行現象

地震や火山噴火の発生前に震源域や火山の周辺で発生するさまざまな異常現象。土地の隆起・沈降,地震活動の変化,電磁気異常,地下水の変化などがある。前兆現象と呼ばれることもある。

全国地震カタログ

国内で発生した地震の発生時刻,場所及び規模(マグニチュード)を記したリスト。

全磁力

ある場所における地球磁場の大きさ。磁場の観測量として,その長期的安定性が最も高い。磁気を帯びた鉱物の磁化(磁性の強さ)は,温度や応力によって変化するので,全磁力の変化は地下の温度,応力状態の変動を示唆する。

前震

本震の近傍で本震発生前に起きる地震のこと。

せん断強度

ある面に沿って両側部分を互いにずれさせるような作用に耐える限界の強度のこと。

浅部地盤

深さとして地表から工学的基盤までの地盤。

相似地震

地震波形が良く似ている地震群のこと。ほぼ同じ断層面で同じような滑りが起きた場合に発生すると考えられる。

走時データ

地震波が震源からある観測点に到達するまでに要した時間のデータのこと。

速度応答

地表面の揺れによって,高層建造物等がどのように応答するかを揺れの速度で表したもの。

遡上高

海岸から進入してきた津波等が,陸上を這(は)い上がった最高地点の高さのこと。平常時の潮位を基準にして測られる。漂流物などの痕跡から確認することができる。

ダイク

岩脈ともいい,地層や岩石の割れ目にマグマが鉛直方向に貫入し固まったもの。

帯磁

磁気を帯びること。マグマが冷却し固結するときに,当時の地球磁場の方向に帯磁し,一度帯磁した岩石は地球磁場がその後変化したとしても初めの帯磁の方向が保存されることから,岩石の帯磁方向を調査することによって過去の地球磁場の方向の調査が可能となる。

対流圏遅延

地表から高度約12kmまでの領域(対流圏)に存在する水蒸気により,電波の到達時間が遅延すること。GNSS観測の誤差要因である対流圏遅延量を天頂方向の量に換算したものを天頂湿潤大気遅延量という。

脱ガス

マグマの中に溶け込んでいる,または,気泡として存在している火山ガス成分が,マグマの外に放出される現象のこと。

地殻変動

地震などの断層運動や火山活動などの地下の活動によって地表に生じた変位やひずみ,傾斜の変化。

地殻流体

地殻の内部に含まれる水やマグマ等の流体。

地下構造モデル

地震波(P波,S波)速度や密度,減衰など構造パラメータの空間分布を記述したモデルのこと。

地質柱状図

地層の層序,層厚,岩層,含有化石等を長柱状に示した図。

地電位

→自然電位の項を参照。

地表地震断層

地震時に連続的に現れる地表のずれのこと。

地表踏査

野外調査によって地形や地表に露出している地層・破砕帯や岩質,岩の割れ目,岩石の構成物,形態,風化度,地下水などの状況を観察すること。

チャート

主に石英からなり,放散虫の化石を多く含む岩石で,堆積岩の一種である。

中央海嶺玄武岩

マントル対流の上昇域にあたる中央海嶺で,海底に噴出した苦鉄質マグマが固まって生じた玄武岩で,海洋底を形成する。

(地震の)長期予測

地震の発生時期を数十年の単位で予測すること。

長周期地震動

規模の大きな地震が発生した場合に生じる,ゆっくりとした揺れのこと。高層ビルは固有周期が長く長周期地震動により影響を受けやすい。

長周期微動

活火山でしばしば発現する,周期が概ね数秒よりも長い震動のこと。

超低周波地震

短周期成分がほとんど含まれず長周期成分が卓越する地震波を放射する地震のこと。ゆっくり滑りや火山活動にともなって生じる。

地理空間情報(G空間情報)

位置情報とそれに関連付けられたデータからなる情報のこと。

津波浸水想定

津波があった場合に想定される浸水の区域及び水深。

津波堆積物

津波によって運ばれた砂や礫などが堆積したもの。これを調べることにより,過去の津波の発生年代や浸水規模を推定することができる。

津波の即時予測

地震の発生直後に,沿岸部に到達する津波の高さを可能な限り素早く予測する技術。

デイサイト

→マグマ(珪長質マグマ)の項を参照。

データ同化

複雑な現象の高精度予測のために,数値シミュレーションの結果として得られる物理量が観測データをなるべく再現できるように,適切な初期値や境界値,各種パラメータを推定する手法。

デコルマ

水平断層のこと。

テフラ

火山灰・軽石・スコリア・火砕流堆積物・火砕サージ堆積物などの総称。

電気伝導度

物質の電気の伝わりやすさを表す物性値。電気伝導率,導電率ともいう。

電磁探査

電磁波を利用して,電気伝導度など地下の電気的性質を調査すること。地下構造探査の手法の一つ。

天頂湿潤大気遅延量

→対流圏遅延の項を参照。

電離層全電子数

電離層(圏)の電子密度の総数を表す量のこと。単位面積を持つ鉛直の仮想的な柱状領域内の電子の総数を表す。TEC(Total Electron Content)とも呼ばれる。

同位体

同じ原子番号で質量数(=原子核中の陽子と中性子の個数の和)が異なる元素を指す。例えば酸素には,質量数が16,17,18のものがある。一般に起源の異なる物質の同位体比は大きく異なるため,マグマの起源や異物質の混入などを把握するために有力な指標となる。

撓曲

地下に伏在する活断層のせん断面が地表まで達せず,地表面や地表付近の地層が緩やかに撓んだ変形を生じること。撓曲は逆断層に多いが,正断層が伏在している場合にも形成される。

統計的モデル

過去の多数の観測データに基づき,ある現象の発生確率等を記述したモデルのこと。

土石流

表土,砂,礫などが水と一体となって流下する現象。火山噴火によって不安定に堆積した噴出物が崩壊し,土石流となることもある。

トモグラフィ

多数の観測点の地震波形記録等から地下の2次元または3次元構造を推定する手法。地震波速度や減衰構造の推定によく用いられる。医学の分野において,X線や超音波で体の2次元断面を求めるための手法が,地球物理学に応用されたもの。

トレース

地下の震源断層の平面を地表まで延長したときの出現位置を示したもの。断層が垂直に設定されている場合は断層の真上に重なり,断層が傾いている場合は断層面の延長と地表面の交線に現れる。

トレンチ調査

地質調査法の一つで,地表から溝状に掘り込み,地表では観測できない地層を新たに露出させる手法。過去の断層運動の跡を調査する活断層や火山の噴火史を調査するために有力な方法。

内部減衰

岩石の非弾性変形のために地震波のエネルギーが熱へと変換し,地震波のエネルギーが減衰すること。

内陸地震

陸側プレート内の地殻で発生する地震。

難透水層

地下水を通しにくいか,または通さない地層(不透水層)のこと。

日本海溝海底地震津波観測網(S-net)

地震計と津波計が一体となった観測装置を光海底ケーブルで接続した観測網で,防災科学技術研究所が日本海溝沿いの海底に設置したもの。24時間連続で観測データをリアルタイムに取得できる。観測装置は150カ所,ケーブル総延長は約5,700kmである。

熱水系

マグマから分離上昇した高温の火山ガスが地下で凝縮したり,地下水と接触したりして生じる熱水が分布する領域,移動経路などを指す。

粘性

せん断応力による流動に対する物質の内部抵抗のこと。

粘弾性変形

加えられた力の大きさに変形が比例する弾性的性質と力が加えられた時間とともに変形が進行する粘性的性質を併せもつ性質が粘弾性である。地下深部の高温下の岩石は粘弾性的性質をもつと考えられ,この性質による変形のこと。

背弧拡大域

大陸が伸張し,海洋底拡大が進行する領域のこと。日本海などがある。

曝露性

地震や津波といったハザードにどれくらいさらされるのかということ。

ハザード評価

地震時の揺れの強さや津波高や火山噴火などの自然現象と,その発生確率のこと。

ハザードマップ

ある災害に対する危険な区域を示した地図。火山のハザードマップでは,噴石,火山灰,火砕流,溶岩,泥流などの災害を引き起こす現象が波及すると予想される範囲などが図示される。

発震機構解

地震波の放射パターンなどから求められる共役な二つの断層面の走向,傾斜,滑り角を指す。断層に働いていた力の方向を知る手がかりとなる。地震の発震機構解が断層型で表せるとき,その震源は大きさが等しくたがいに直交する圧縮力と伸張力の組み合わせによって表わせる。このうち圧縮力の方向を主圧力軸,伸張力の方向を主張力軸という。

波動場

地震波等の波の状況を時間と空間座標を用いて表現すること。

反射強度

地震波や光などの波動がある面に入射した際の反射波の強さ。

反射法探査

地表の近くで人工的に発生させた振動(弾性波)が下方に進行し,速度と密度が変化する地下境界面で反射して,再び地表へ戻ってきたところを受振器(地震計)で捉え,収録された記録を処理・解析することにより,地下構造を解明する手法。

非地震性滑り

→ゆっくり滑りの項を参照。

ひずみ

岩盤(プレート)などが変形する際の,変形の大きさをひずみという。単位長さ当たりの変位で定義される。

ひずみ集中帯

測地観測や地形から推定された地殻ひずみが大きい領域。

非弾性変形

物体に外力が作用すると変形するが,外力を除去した場合に可逆的に原形に復帰する変形は弾性変形であるが,可逆的でない場合をいう。

比抵抗

単位断面積,単位長さ当たりの電気抵抗値。電気伝導度の逆数。

非定常地殻変動

プレート境界面での固着によって陸側プレートが引きずりこまれることによる定常的な地殻変動とは異なる地殻変動のこと。

表層地盤

地表面近くに堆積した地層のこと。

表面波探査

起振機(人工震源)により,地面を上下にゆすって人工的な小さな地震を発生させ,地表面に設置された検出器によって,表面波の伝わる速度を測定する。地面をゆする際に周波数を変化させることによって,周波数毎に表面波が伝わる深度が決定されるという性質を利用して深度毎の地震波速度を探査する方法。

不均質地盤構造

基盤層以浅の物性定数が,空間的に均質でない状態(構造)。例えば,組成の違いや空隙率の分布状態,流体の含有などによって,物性定数が変化する。応力場も不均一になり,特定の場所に応力集中が生じる可能性がある。

輻射伝達理論

地震波などの散乱の問題をエネルギーの伝播に着目して取り扱う理論のこと。

プリニー式(噴火)

→噴火様式の項を参照。

ブルカノ式(噴火)

→噴火様式の項を参照。

プレート

→プレート境界の項を参照。

プレート間滑り

2つのプレートの境界での滑りのこと。地震時による滑りや地震波を放出しないゆっくりした滑りなどもある。

プレート境界

地球表面は,地殻と十分に冷却して固くなっている最上部マントルとを合わせた,厚さ100km程度の複数の固い岩石の層で覆われている。この岩石層がプレートとよばれ,それらの境界がプレート境界である。プレート境界においてはしばしば大きな地震が発生する。

ブロック断層モデル

ある地域を断層を境界とする多数のブロックに分割し,地殻変動などをブロックの運動で近似するモデル。

噴煙柱(モデル)

火口から噴出した火砕物と火山ガスの混合物が,大気を取り込み浮力を得て,大気中を上昇するものを噴煙柱という。噴煙柱の生成過程や,噴煙柱に含まれる物質の輸送過程を,数式や物理法則に基づいて模擬的に記述したものを噴煙柱モデルという。火山灰の量や分布を評価するために噴煙柱モデルが用いられる。

(噴火の)準備過程

火山噴火は,火口から溶岩や火山ガスが急激に地表に放出される現象である。噴火に至るまでには,地下深部で発生したマグマが,長い時間をかけてマントルや地殻内を上昇し,地殻浅部にマグマ溜まりとして蓄積される。さらに,内部の圧力が高まる等の理由で,マグマが地表へ移動できる条件が整い噴火に至る。このような噴火に至る前の一連のプロセスを準備過程と呼ぶ。

噴火警戒レベル

気象庁が各火山の活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と防災機関や住民等の「とるべき防災対応」を5段階に区分して気象庁から発表される指標のこと。レベルが低いほうから,レベル1(活火山であることに留意),レベル2(火口周辺規制),レベル3(入山規制),レベル4(避難準備),レベル5(避難)となっている。

噴火速報

気象庁が常時観測している50火山を対象に噴火の発生事実を迅速に発表する情報。

噴火様式

噴火時にマグマが地表に噴出する場合,噴火の様子はマグマの性質や破砕の程度などによって異なり,いくつかのタイプに識別される。その異なる噴火の様子を噴火様式という。

・ストロンボリ式噴火
比較的粘性の低いマグマによる間欠的な小噴火。火口からは数分~数十分間隔でマグマのしぶき,半ば固結した溶岩片,火山弾などが吹き上げられる。

・ブルカノ式噴火
やや粘性の高いマグマによる爆発的な噴火で継続時間は短い。噴煙高度が10km近くに達することもある。爆発によって1m径の岩塊が数kmも飛ばされることがある。火山弾はパン皮状のものが多く,火口底にあった古い岩塊も放出される。火砕流も同時に発生することがある。桜島や浅間山などでしばしば発生する。

・プリニー式噴火
比較的粘性の高いマグマによる爆発的な噴火。一般的にブルカノ式噴火よりも規模が大きく,継続時間が長い。大量の軽石や火山灰が火口から空高く噴出され,噴煙柱を形成する。噴煙高度は20kmから30kmにまで達することがある。しばしば規模の大きい火砕流が発生する。やや規模の小さい噴火を準プリニー式噴火と呼ぶ。

噴気

高温の火山ガスや水蒸気が放出されていること。

噴砂

地震による強震動に伴って砂が地下水とともに噴出する現象のこと。

噴出物層序

層序とは,地層の重なっている順序のこと。この場合は火山噴火による噴出物が地表に堆積し重なっている順序のことを指す。それを解析することにより,噴火の様式や規模の変化を明らかにすることができる。

噴石

火山の噴火の際に噴出される,溶岩または火山体を構成する溶岩塊や火山礫のことで気象庁が用いている。その大きさや形状等によって,火山岩塊や火山礫,火山弾などに区分される。気象庁は,風の影響を受けずに弾道を描いて飛散する「大きな噴石」と風に乗って遠くまで運ばれる「小さな噴石」を使い分けている。

分子動力学シミュレーション

原子・分子の動きをコンピュータの中で再現するために使われるシミュレーションのこと。

偏光

進行方向と平行な単一の面内で,進行方向と垂直な一方向のみに振動する波に分かれる現象を指す。

変質作用

岩石が熱水溶液と反応して変化すること。普通は地表あるいは地殻の比較的浅いところで起こる。

放射性炭素年代測定

生物遺体中の放射性炭素14C濃度が,生物の死後,時間とともに減少することを利用した年代測定法。現在から数万年前までの間の年代測定法として広く利用される。

放熱率

まわりに熱を放散する効率。

ボーリング(コア)

ボーリング掘削により柱状試料を採取する手法で,トレンチ調査に比べ深い深度まで地質試料を入手することができ,より長い期間の地質現象を探ることが出来る。ボーリングにより採取されたサンプルのこと。

本震,余震

比較的大きな地震が発生すると,その近くで最初の地震より小さな地震が直後から続発する。この最初の大きな地震のことを本震,その後に続発する地震を余震という。

マイクロプレート

それ自体としては運動の原動力をもたない小さなプレート。大きなプレートの境界の力学の調整機能を果たす。

マグニチュード(M)

地震の規模の指標。

マグマ

岩石物質の高温溶融体。噴火によってマグマが地表に出たものを溶岩という。マグマが地殻内で結晶化したり,地殻物質を溶かしこんだりして,多様な組成のマグマができることを,マグマの分化という。それにより,二酸化ケイ素含有量の少ない組成のマグマから,より二酸化ケイ素含有量に富む組成のマグマが生成されていく。マグマの分化によって,一般に粘性が大きくなる。

・苦鉄質マグマ
二酸化ケイ素の含有量の少ないマグマ。玄武岩組成のマグマが相当する。

・珪長質マグマ
二酸化ケイ素含有量の多いマグマで,通常はデイサイトや流紋岩組成のマグマを指す。

マグマ貫入

地下のマグマが岩盤に割れ目をつくりながら移動する現象。

マグマ供給系・マグマシステム

マントルから地表までのマグマの生成,分化,移動などの経路。構造的な経路も含むが,火山活動を支配する物質科学的な過程全般に対して用いられることが多い。

マグマ水蒸気噴火

水蒸気噴火とマグマ噴火の中間的な噴火で,噴出物中にマグマ物質が含まれるものをいう。

マグマ溜まり

火山活動の源であるマグマが蓄積されているところ。その存在位置,形状,内部構造,内容物の特性などの情報は,噴火現象の理解に欠かせないが,それらが明らかになっていない火山も多い。

マグマ噴火

噴出物のほとんどがマグマ物質からなる噴火のことで,ストロンブリ式噴火,プリニー式噴火,溶岩流ノ噴火などがこれにあたる。

摩擦構成則

岩石の破壊強度や断層面上の摩擦を滑り変位や滑り速度などの関数として記述したもの。

摩擦特性

速度依存性やすべり量依存性などの摩擦の性質。とくに,地震性滑りになりやすい摩擦の性質と非地震性滑りになりやすい摩擦の性質は重要。

摩擦パラメータ

岩石の破壊強度や断層面上の摩擦を滑り変位や滑り速度などの関数として記述する際に用いるパラメータのこと。

マントル対流

マントルを構成する物質(岩石)は固体であるが,温度が高いために流動する。マントル内に温度差があるため,マントルは長い時間をかけて,ゆっくりと対流運動を起こしていると考えられている。

ミューオン

宇宙線が大気中の原子核と反応して生成される二次宇宙線の一つで,地上に絶え間なく降り注いでいる素粒子。

鳴動

地震のときに起こる地面の振動と音。鳴動は地震波動の一部が空中音波となって放出されるときに起こる。

メルト包有物

マグマ中で斑晶が晶出する際に, 斑晶中に周囲の液体(メルト)が捕獲されたもの。結晶ができた当時のメルトの組成を記録している貴重な情報源である。

モホ面

モホロビチッチ不連続面の略称。地球の地殻とマントルとの境界であり,そこでは地震波速度が不連続となっている。

モーメントテンソル解

地震モーメントを力が働く面と力の働く向きに数値的に表した解のこと。

モーメントマグニチュード(Mw)

地震モーメントの大きさから一意に算出されるマグニチュード。比較的短い周期の地震波から簡便に決定できるマグニチュードは,大規模な地震でその値が飽和してしまうという問題があった。この問題を解消するために導入された。

モンテカルロシミュレーション

乱数を用いたシミュレーションを多数回行うことによって,確率的な物理現象などの問題の解を近似的に求める計算手法のこと。

誘発地震

大地震の震源域から離れていても,大地震によって誘発されて発生する地震。

湯だまり

火山の火口内にできる池や湖のうち,水温が高いものを指す。火口に流れ込んだ雨水が,火口底から噴き出す高温の火山ガスによって温められたり,火口底から温泉水が湧き出すことによって形成される。「湯だまり」の名称は,特に阿蘇山中岳の火口湖に対して使われることが多く,同様のものは地域によって湯釜や湯沼と呼ばれることがある。

ゆっくり滑り

地震波を放射しない,断層面やプレート境界面でのゆっくりとした滑り。ここでは,継続時間が数か月以上のものを長期的ゆっくりすべり,それ以下のものを短期的ゆっくりすべりと呼ぶ。スロースリップ,スロースリップイベント(SSE)ともいう。

溶岩

地表に出たマグマのこと。流れ出たマグマが固まったものを溶岩と呼ぶこともある。

溶岩ドーム

粘性の高い溶岩が火口の周囲に作る高まりのことで,(厚さ)/(広がり)が概ね1/8より大きいものを溶岩流と区別していう。

余効滑り

地震の後に震源域あるいはその周囲の断層面で発生するゆっくり滑り。

余効変動

地震の後に震源域あるいはその周囲で生じる長期間に及ぶ地殻変動の総称。代表的な例としては,断層面上で発生する余効滑りや,マントルの粘弾性緩和による変形などが挙げられる。

余震

→本震,余震の項を参照。

ライダー

LIDAR (Light Detection and Rangingの略)。遠方の大気や物体にレーザー光を照射してその物理的な特性を計測する装置や技術。

陸域観測技術衛星2号(だいち2号)

災害状況把握,国土管理,資源管理等を目的とし,2014年に打ち上げられた国産衛星。地殻変動検出のための合成開口レーダ(SAR)を搭載する。

リーディング大学院

国際的に卓越した教育研究資源を土台に,大学の叡智を結集して,博士課程前期・後期が一貫した学位プログラムにより,世界に通用する質の保証された博士課程教育をする大学院。

リスク・コミュニケーション

社会を取り巻くリスクに関する正確な情報を,行政,専門家,企業,市民などの利害関係者間で共有し,相互に意思疎通を図ること。

リソスフェア

地球の地殻とマントル最上部の固い岩盤を併せた部分の総称。地球表層部を占め,ブロックに分かれて水平移動しているプレートに相当する。岩石圏ともいう。

リモートセンシング

遠隔観測手法の総称。様々な波長の電波や光を用いて,対象物の形状,温度,物質などを測定する。人工衛星や航空機から測定することによって広い範囲を迅速に測定できる。

粒子軌跡

地震動の軌跡を可視化して表示したもの。

粒子フィルター

現象を確率的に表現する際に,確率に対応する数の粒子を発生させて,それぞれの時空間発展を計算する手法。

領域移流拡散モデル(RATM)

降下火砕物(火山灰・火山礫)の移流(風等による移動)や拡散を考慮することによりこれらの予測を即時的に行うモデルのこと。

レーザー測距

光波を用いて距離を測定すること。

レオロジーモデル

物質の変形や流動について,単位面積あたりに働く力(応力)と変形の大きさや変形速度の関係を表すモデル。

レシーバ関数(解析)

一つの観測点において異なる成分で記録された地震波形を処理した関数。「レシーバ関数解析」とは,直達P波とPs変換波(境界面でP波からS波に変わる波)等の到達時刻差を用いて,波の変換が起こるような面(例えばプレート境界面)の深さを推定する手法。

連携大学院

学外の高度な研究水準をもつ国立試験研究所等の施設・設備や人的資源を活用して大学院教育を行う教育研究方法の一つ。

連成シミュレーション手法

複数の異なる現象をお互いの影響を考慮してシミュレーションする手法。個々の現象を別々にシミュレーションするより精度良く現象をモデル化できる。

b値

地震の規模別頻度を横軸としてマグニチュード,縦軸として地震の発生数の対数をプロットした際の傾きのこと。通常は0.7~1.0程度である。

CSEP

Collaboratory for the Study of Earthquake Predictabilityの略。客観的かつ透明性のある地震予測検証実験を実行できる研究基盤環境を作り,その過程において地震の予測可能性を探るための国際研究計画。

ETASモデル

Epidemic Type Aftershock Sequenceの略。すべての地震が余震を持つと考え,地震活動を数個のパラメータで定量化する統計的地震活動モデル。

GEONET

GNSS連続観測システム(GNSS Earth Observation Network System)の略称で,国土地理院が運用している。日本全国約1300点の観測点(電子基準点等)とデータ管理・解析処理を行うGEONET中央局からなり,地殻変動監視と測量の基準点の役割を持つ。

GIS

地理情報システム(Geographic Information System)の略語。地理的位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し,視覚的に表示し,時間や空間の面から分析できる技術である。

GNSS

全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)の略称。位置や時刻同期を目的とした電波を発射する人工衛星群,地上の支援システム及び電波の受信装置の総称。利用者は,受信機で電波を受信することで自分の3次元的な地球上の位置や正確な時刻を計測することができる。アメリカ合衆国が構築したGPSは現在最も実用的なGNSSであるが,他にもロシアのGLONASSや,ヨーロッパ連合(EU)のGalileoなどのシステムがある。

GNSS-音響測距結合方式

海底における地殻変動を観測するための手法の一つ。海上の船舶やブイの位置をGNSSによって精密に決定し,それらと海底に設置された基準点(観測点)との距離を,海中音波を用いて測定することにより,海底の基準点の位置を推定する。

GPS-音響測距結合方式

→GNSS-音響測距結合方式の項を参照。

ISC

International Seismological Centre。 国際地震センター。所在地はイギリス。世界中の地震データ等を収集し,管理している組織。

Mw

→モーメントマグニチュードの項を参照。

P波

Primary wave(第一波)またはPressure wave(圧力波)の略。進行方向に平行に振動する弾性波。固体・液体・気体を伝わることができる。

PSI(Persistent Scatterer Interferometry)

反射波の位相が安定した建物等の散乱体を含む画素のみを用いて解析を行い,それらの変動を計測する方法。標準的なInSARよりも高い精度で変動を計測できる。PS-InSARとも呼ぶ。

REGMOS

GNSS火山変動リモート観測装置(Remote GNSS Monitoring System)の略称で,活動的な火山において電子基準点を補間して詳細な地殻変動を捉えるために設置された装置。電力や通信手段の無い地域でも,太陽電池パネル・衛星携帯電話などを組み合わせた自律的な観測が可能である。

S波

Secondary wave(第二波)またはShear wave(ねじれ波,たわみ波もしくはせん断波)の略。進行方向と直交に振動する弾性波。固体のみを伝わることができる。

SAR

Synthetic Aperture Radar(合成開口レーダー)の略。人工衛星や航空機などに搭載されたアンテナを移動させることにより大型アンテナと同等の高い分解能を実現したレーダーシステム。SAR干渉解析(Interferometric SAR,InSAR)は,同じ場所を撮影した時期の異なる2 回の画像の差をとる(干渉させる)ことにより地表面の変動を詳細にとらえる手法である。

S波異方性

媒質をS波が伝わる際に,方向によって伝播速度が異なること。地殻内部において微小なクラックや鉱物の配列等により,その中を通過するS波には,伝播方向による速度の違いがおこる。

S-P時刻

ある観測点におけるS波の到達時刻とP波の到達時刻の差。

VEI

火山爆発指数(Volcanic Explosivity Index)の略。火山灰や火山礫(れき)などの火砕物の量や噴煙高度及び噴火挙動の特徴から決められる噴火の規模と爆発性の指標。最小は0で最大は8。

VHF(電波)

30~300 MHzまでの周波数の電磁波のこと。VHFは,Very High Frequencyの略。

VLBI

超長基線電波干渉計(Very Long Baseline Inteferometer)の略。クエーサー(準恒星状天体)から放射される宇宙電波を数千km離れた複数の観測点で同時に受信し,その到達時間差から観測点間の距離や位置関係を測定する。

Vp/Vs

P波とS波の伝播速度の比。岩石の種類や流体が含まれるかどうかによって値が変わる。

XバンドMPレーダー

従来よりも短波長のXバンド(波長約3㎝)を用いた高分解能なレーダー。さらに,水平偏波と垂直偏波の2種類の電波を同時に送信・受信するマルチパラメータ(MP)方式によって精度のよい観測が実現される。

WOVOdat

国際火山観測機構 (WOVO) のデータベースのこと。世界各地の火山観測所が持つ火山観測データを共通フォーマットで収集し,様々な用途に利用しやすくしたもの。登録されているデータは,観測施設の位置や観測装置などの観測点情報,地震,地殻変動,火山ガス,温度,噴火などの観測情報がある。


お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)