〔用語集〕

アルカリ吸収法

 火山ガス観測法の一つで、火口周辺や山麓などにアルカリ溶液の入った容器を設置し、これに吸収される火山ガスを測定する。

移流拡散モデル

 火山ガスなど大気汚染物質などが、大気中でどのように輸送され拡散していくかを流体力学に基づいて計算する数値モデル。

海底基準点

 主にGPS-音響測距結合方式の海底地殻変動観測により決められる海底の位置基準点。

火映

 火口底の高温の溶岩や火山ガスなどによる発光が、火口上空の雲や噴煙などに赤く照り映えて見える現象。火山活動が活発な状態の時に現れる。

火砕流

 火山灰や火山弾、火山岩塊などが高温の火山ガスや取り込んだ空気と一団となって高速で火山斜面を流下する現象。過去には、火砕流によって大きな災害がしばしば引き起こされた。

確率差分法

 火山での全磁力観測値から、外部要因(電離層・磁気圏の電流、主磁場、及び海流)による変動を除去し火山起源の変動を抽出するために用いる手法。

火山性微動

 火山活動によって発生する震動のうち、火山性地震以外の震動を火山性微動と呼ぶ。火山性微動は、マグマや熱水、火山ガスなどの火山流体の移動や振動と密接な関係があると考えられている。

火山流体

 マグマ、火山ガス、熱水など、火山の活動に伴っている流体相全体を指す。火山性微動などの現象の一部はこのような流体の移動に伴って発生するものであると考えられている。

火道

 地下のマグマ溜りから地表へ至るまでのマグマの上昇経路のこと。火道でのマグマの脱ガスや上昇の仕方が噴火の様式を左右する。

カルデラ

 火山地域にある大きなくぼみを示す地形をいう。概ね直径2キロメートル以上はカルデラ、同じような地形で小規模なものは火口という。

空振

 噴火に伴って火山ガス等が火口から大気中に放出されるために発生する空気振動のこと。桜島や浅間山などで発生するブルカノ式噴火では、空振によって火口から10キロメートル以上も離れた家屋の窓ガラスが破壊されることがある。

空中赤外映像

 物質が温度に応じて赤外線を放射していることを利用して、放射されている赤外線の強さを航空機などから測定して求められた地表面温度分布を空中赤外映像という。

玄武岩質マグマ

 マグマのうち珪酸分が重量で45~54パーセントを占めるもので、一般に鉄やマグネシウム分にも富む。三宅島や伊豆大島の溶岩は玄武岩質マグマが固まったものである。

後続波解析

 地震波が震源から観測点まで伝わる際に、マグマ溜りや断層などの地下の不均質構造によって反射・散乱した地震波は初動よりも時間的に遅れて到着する。これらの反射・散乱波を利用して地下構造を詳しく調べる解析を後続波解析という。

時間領域電磁法探査

 電磁誘導を利用して地下の電気比抵抗を測定する手法の一つ。人工的に制御された信号を用い、測定点における磁場変化の波形が、どのようにずれるかを測定することで、地下の電気比抵抗分布を推定する。

地震の基盤的調査観測網

 政府の地震調査研究推進本部が策定した「地震に関する基盤的調査観測計画」等に基づき、防災科学技術研究所が整備した地震観測網のことである。(詳細は用語解説末尾参照)

実験観測

 課題を設定し、その解明のために、能動的な手法も含めて一定期間行う観測。

自動測距装置(APS)

 光波測距儀とセオドライトを組み合わせ、自動的に距離及び角度を測定し地殻変動を監視する装置。

水蒸気爆発

 水が加熱されて起こる爆発的な噴火のことで、水蒸気と粉々になった岩石が火口から激しく放出される。水蒸気爆発では噴出物にマグマは含まれないが、引き続いてマグマを含む噴火に移行することがある。

スコリア

 黒っぽく多孔質の不定形をした火山礫。軽石より重い。玄武岩質マグマなど珪酸分の比較的少ないマグマの噴火に伴って放出される。

ストロンボリ式噴火

 比較的粘性の低いマグマの間欠的爆発による噴火であり、火口からマグマのしぶきや赤熱した火山弾が爆発とともに空中に放出される。噴火に伴い火口の周囲に円錐形の火砕丘を生じる。諏訪之瀬島などでよく見られる噴火である。

ゼータ電位

 固体と液体が接触している面では、液体中の荷電粒子が固体表面に吸着するため電気的な分極が生じており、その分極の強さを表す量がゼータ電位である。地下水と岩石間のゼータ電位は、自然電位の大きさを決める一つの要因である。

赤外分光放射計(FT-IR)

 火山ガス中の成分によって赤外線の吸収波長が異なることを利用して、火山ガスの成分比を測定するために用いられる観測装置。

赤熱/赤熱現象

 物体が高温の状態にあるとき、熱した鉄のように赤く光ってみえることを、赤熱という。火山では、地下から高温の火山ガス等が噴出する際に、周辺の地表面が熱せられて赤く見える現象を赤熱現象と呼ぶ。

絶対重力/絶対重力計

 絶対重力とは、観測点における重力加速度を指す。絶対重力計は、真空中でコーナーキューブなどの反射鏡からなる物体を、投げ上げもしくは自由落下により重力場の中で鉛直運動させて、加速度を計測する。

全磁力

 地球磁場ベクトルの絶対値。磁場の観測量として、その長期的安定性が最も高い。磁気を帯びた鉱物の帯磁は、温度や応力によって変化するので、全磁力の変化は地下の温度、応力状態の変動を示唆する。

脱ガス過程

 マグマが地表に近づいた際に、圧力の低下のために、マグマ中に溶解していた水や炭酸ガスなどの成分(揮発性成分)がマグマから火山ガスなどとして分離する過程。揮発成分の分離する割合や仕組みは噴火機構などを左右する重要な要素である。

超臨界

 液体でも気体でもない状態で、圧力、温度が臨界点を超えた状態を超臨界という。水は221気圧以上、かつ、374℃以上の時に超臨界状態となる。

低周波地震

 地震波の低周波成分が卓越し、相対的に高周波成分が発達しない地震のこと。活火山ではしばしば低周波地震が観測され、マグマなどの火山流体の地下での移動や地表への噴出活動と密接に関連していると考えられている。

データロガー(ロガー)

 観測データを収録する装置のこと。火山噴火予知の観測研究では、主に、野外での地震、地温、地磁気などさまざまな観測データの現地収録に用いられている。

テフラ

 空中から降下し堆積した火山噴出物で、種々の大きさの火山砕屑物(火山岩塊、火山礫、火山灰)を指す。テフラは広く地表を覆って堆積するので、異なる場所で噴出物を対比する際の良い指標となる。

電子基準点

 国土地理院が全国に展開している、GPS衛星からの電波を受信する基準点のこと。受信アンテナ、受信機、テレメータ装置などが配備されている。

同位体

 たとえば酸素には質量数が16、17、18のものがあるように、同じ原子番号の元素で質量数の異なるもののことを指す。一般に起源の異なる物質の同位体比は大きく異なるため、マグマの起源や異物質の混入などを把握するために有力な指標となる。

トモグラフィー

 地下の2次元または3次元構造を求める手法。地震波速度や減衰構造の推定によく用いられる。医学の分野において、X線や超音波で身体の2次元断面を求めるための手法が、地球物理学に応用されたもの。

トレンチ調査

 地質調査法の一つで、地表から溝状に掘り込み、地表では観測できない地層を新たに露出させる手法。過去の断層活動の跡を調査する活断層のトレンチ調査が有名であるが、火山の噴火史を調査するために有力な方法。

熱水系

 マグマから分離上昇した火山ガスが地下で凝縮したり、地下水と接触したりして生じる熱水の生成過程、移動経路などを含むシステム全体のことを指す。

背斜構造

 水平に堆積した地層が、地殻変動で圧縮されて生じる、波を打ったような曲がった構造のうち、山になった部分の構造を示す。

ハザードマップ

 ある災害に対する危険な区域を示した地図。火山のハザードマップでは、火山岩塊、火山灰、火砕流、溶岩、泥流などの災害を引き起こす現象が波及すると予想される範囲などが図示される。

パン皮火山弾

 ガラス質の皮膜がひび割れて、表面がフランスパンのように見える火山弾を指す。噴火で飛来中に一旦固まった表面が、着地後に内部が発泡し膨張したために生じる構造である。ブルカノ式噴火によって放出される火山弾によく見られる。

ブーゲー異常

 地表面の凹凸を平坦にならし、標高0メートルの地点で測定したら得られるであろう重力値と、標準重力値(楕円体上の正規重力式)の差を、ブーゲー異常という。地上の重力値は、高度、周囲の地形などによる擾乱をうけるので、地下の密度構造の推定には各種補正が必要になる。

物理化学モデル

 経験則に基づいて作られるモデルとは異なり、現象が発生する機構について、物理学や化学の法則に基づいて作られるモデルのことで、時には決定論的モデルと呼ぶこともある。

物理検層

 掘削孔内にゾンデと呼ばれる計測器を降下させながら地表から孔底まで連続的に音波速度、密度や電気伝導度などの物理的な性質を調べる作業。最近では孔内表面の詳細な影像を取得し、亀裂の状態なども調査される。

ブルカノ式噴火

 やや粘性の高いマグマによる爆発的な噴火であり、噴煙高度が10キロメートル近くに達することもある。爆発によって1メートル径のものが数キロメートルも飛ばされることがある。火山弾はパン皮状のものが多く、火口庭にあった古い岩塊も放出される。桜島や浅間山などでしばしば発生する。

プルトン

 地殻の深部にマグマが貫入して生じた巨大な火成岩体。

噴火ポテンシャル

 中長期的観点から噴火の可能性(切迫性、規模など)を定量的に表現する指標。

ボーリング

 地表からの掘削により柱状試料を採取する手法で、トレンチ調査に比べはるかに長い活動時期の地質試料を入手することができる。ただし、掘削に当たっては櫓を組んだり、大量の水を必要とするなど大掛かりな作業が必要となる。

マグマ

 岩石物質の高温溶融体で地表付近にあるものを溶岩ともいう。マグマが地下で結晶化したり、地殻物質を溶かしこんで多様な組成のマグマができる(分化という)。マグマが上昇すると、マグマの中に溶解していた揮発性成分が気泡となり発泡する。火道での気泡の離脱(脱ガス)の仕方により噴火の激しさが変化する。

マグマ供給系

 地下深部から火口までマグマが供給されるマグマ溜りや火道を含むシステム全体のことを指す。

マグマ溜り

 火山活動の源であるマグマが蓄積されているところで、火山やカルデラの直下にあると考えられているが、その正確な形状や内部構造は分かっていない。

マントルウエッジ

 陸側プレートとそれに対して斜め下に沈み込む海洋プレート(スラブと呼ばれる)の間に挟まれたくさび状のマントル部分をマントルウェッジという。

メルト包有物

 火山岩の鉱物中に閉じ込められたガラス状の物質で、地下で成長中の鉱物にマグマが取り込まれたものと考えられる。メルト包有物の性質からそれが取り込まれた当時の地下マグマの状態を読み取ることができる。

溶岩ドーム

 噴出した溶岩の粘性が小さい場合は溶岩流となって斜面を流れ下るが、溶岩の粘性が大きい場合は火口上にドーム状に盛り上がって溶岩の小山を形成する。溶岩円頂丘ともいう。しばしば成長中に溶岩の一部が崩れて火砕流を発生する。

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)

 地図作成、災害状況把握、資源探査等を主目的とし、2006年1月に打ち上げられた国産衛星。地殻変動検出に適するLバンド(波長23.6センチメートル)のSARセンサーおよび2種の光学系センサーを搭載する。

リモートセンシング

 遠隔観測手法の総称。様々な波長の電波や光を用いて、対象物の地形、温度、物質などを測定する。人工衛星や航空機から測定することによって広い範囲を速く測定できる。

レーザープロファイラー

 航空機等からレーザー光を地表に照射し、その反射光から地形を精密に測定する技術。航空機の位置をGPS等で高精度で決定することにより、地表の高さを10センチメートル程度の精度で測定することができる。樹木の隙間からの反射光により地面の高さを測定できる利点がある。

レシーバー関数解析

 地震波が地下構造の不連続面を通過するときに違う種類の地震波に変換する性質を利用して、地下構造を詳しく調べる解析手法。

AFMT探査

 MT探査(Magnetotellurics)のひとつで、可聴周波数(Audio-Frequency)帯域の電磁と磁場を測定することで地下の電気比抵抗分布を推定する手法。通常のMT探査に比べて、浅部の電気比抵抗を詳しく測定するのに適している。(MT参照)

ASTER

 可視から熱赤外までの14バンドと立体視センサーを有する国産高性能光学センサー(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer)の略。地形や地質、高温域までの温度分布、二酸化硫黄ガスの分布を15~90メートルの空間分解能で抽出することができる。

A型地震

 火山体やその周辺のやや深部(1~10キロメートル)で発生するP波やS波の相が比較的明瞭な火山性地震。

B型地震

 火道内部やその近傍の山体浅部(1キロメートル以浅)に発生する火山性地震。P波、S波の相が明瞭ではなく、地震波形の包絡線は紡錘形をしていることが多い。火山活動の活発化にともなって多発することが多い。

COSPEC

 相関スペクトロメータ(Correlation Spectrometer)の略。特定の波長の紫外線が二酸化硫黄によって吸収される性質を利用して、火山ガス中の二酸化硫黄濃度を光学的に遠隔測定し、その放出量を求める装置。

DOAS

 Differential Optical Absorption Spectrometerの略。COSPECに代わって、火山ガス中の二酸化硫黄ガス放出量を測定するために最近開発された小型計量型の装置の一般的な名称。

EPMA

 鉱物やガラスなどの微小部分の化学分析が可能な装置。X線マイクロアナライザーのこと。

GEONET

 国土地理院が全国に展開しているGPS連続観測網。平成18年時点での観測点(電子基準点)数は1,231点。1秒毎のGPS観測データがほぼ全ての観測点からリアルタイムでつくば市にある中央局に送信されている。定常的に3時間毎および24時間毎の各点の座標値を計算している。

GIS

 地理情報システム(Geographic Information System)の略。地理的位置に関する情報を持ったデータを総合的に管理・加工して視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術のこと。

GPS

 汎地球測位システム(Global Positioning System)の略。地上高約20,000キロメートルの高度を航行するGPS衛星からの電波を地上で受信し、3次元的位置と時刻を正確に計測するシステム。地殻変動計測には干渉測位と呼ばれる搬送波位相を用いた相対測位法が用いられる。

GPS-音響測距結合方式

 海底の地殻変動を観測するための手法の一つ。海上の船舶やブイの位置をGPSによって精密に決定し、それらと海底に設置された基点との間の距離を海中音波を用いて測定することにより、間接的に基点の変動を推定する。

JERS-1

 日本が1992年に打ち上げた地球資源衛星(日本語名称は「ふよう1号」)。周波数1.275MHz(メガヘルツ)のLバンドのマイクロ波によるSARを搭載している。1998年10月に運用を終了した。

MODIS

 NASA(ナサ)のTerra及びAqua衛星に搭載されている0.4~14マイクロメートルの範囲に36バンド(分解能250メートル~1キロメートル)をもつ光学センサー(Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer)の略。エアロゾル、土地被覆、植生、噴火、海面温度等の観測に利用され、2衛星に搭載されているため、同一地点を昼と夜一日1~2回の高頻度で観測することができる。

MSS

 多重スペクトル走査計(Multi-Spectral Scanner)の略。航空機等に搭載し、進行方向と直角方向に走査を行い、対象物から反射、放射される可視光域や赤外域の電磁波を複数の波長帯域に分けて同時観測する。リモートセンシングで対象物の温度や物性などを推定するために用いる装置。

MT

 Magneto Telluric法の略。火山周辺などの地表で磁場と電場の変動を同時に測定し、両者の直交成分の比から、地下の電気比抵抗構造を推定する方法。火山活動に伴うマグマや熱水の存在領域やその変化をとらえるのに適している。

RADARSAT

 カナダが1995年に打ち上げた地球観測衛星。周波数5.3GHz(ギガヘルツ)のCバンドのマイクロ波によるSARを搭載している。

SAR

 合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar)の略。人工衛星や航空機などに搭載されたレーダーの移動により大型アンテナと同等の高い分解能を実現したレーダーシステム。2時期のデータを干渉させる干渉SAR法は地表面の変位を面的にとらえる手法として注目されている。

【参考:地震の基盤的調査観測網の関連用語】

Hi-net

 防災科学技術研究所が日本全国約800か所に整備した高感度地震観測網。深さ100メートル程度の縦孔の底部に、固有周期約1秒の3成分高感度速度型地震計が設置され、連続データのリアルタイム収集が行われている。

F-net

 防災科学技術研究所が日本全国約70か所に整備した広帯域地震観測網。奥行き50メートル程度の横坑の最奥部に、固有周期約120秒または360秒の3成分広帯域速度型地震計、及び3成分速度型強震計が設置されており、連続データのリアルタイム収集が行われている。

K-NET

 防災科学技術研究所が日本全国約1,000か所に整備した強震観測網。地表に設置された3成分加速度型強震計は、計測震度計としての機能も有しており、イベント波形データの収集が行われている。

KiK-net

 防災科学技術研究所が日本全国約700か所に整備した強震観測網。Hi-netに併設される形で、深さ100メートル程度の縦孔の底部と地表の両方に、3成分加速度型強震計が設置され、イベント波形データの収集が行われている。

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)