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地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の実施状況等のレビューについて(報告)【要旨】

平成19年1月15日

 我が国の地震予知に関する観測研究は、平成15年7月に科学技術・学術審議会が建議した「地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の推進について」(以下、「第2次新計画」という。)により、平成16~20年度までの5か年計画として推進されている。
 世界有数の地震国である日本では、これまで多くの地震災害に見舞われており、昭和39年に当時の測地学審議会(現科学技術・学術審議会測地学分科会)が第1次地震予知計画として建議して以来、平成7年阪神・淡路大震災を契機とした計画当初からの全体的な見直しなども含め、5年ごとに計画の更新が行われている。
 本分科会では、次期計画の策定に向けて、第2次新計画に係る観測研究の実施状況、成果を把握するとともに、今後の課題について以下のとおり取りまとめた。

1 前書き

○ 地震予知は国民の生命を守るという観点からは究極の対策であり、地震予知のための研究は地震調査研究推進本部(以下、「推進本部」という。)の総合的かつ基本的な施策にも当面推進すべき施策の一つとして位置付けられた。
○ 第2次新計画では、プレート境界域における地震時の滑りと地震間の固着の他にゆっくりとした滑りが進行する様子を解明。地震予知の3要素のうち、位置と規模の予測について一定の見通しが得られた。
○ 地震発生時期に関しては、過去のデータに基づく長期予測の段階にあり、プレート境界の摩擦構成則に基づいて地震発生を予測する研究は緒に就いたばかり。内陸地震については、定量的な数値モデルの構築には至っていないなど地震予知研究の課題は多い。
○ 地震予知のための観測研究の成果は、推進本部の実施している地震発生長期評価、強震動評価の高度化を通じ、現時点においても社会の地震防災対策に貢献。

2 基本的考え方

○ 第2次新計画は、昭和40年度から実施された「地震予知計画」及び平成11年度から実施された「地震予知のための新たな観測研究計画」(第1次新計画)における基礎的研究の成果を積極的に評価し、新たな地震予知への展望を開くべく、平成16年度からの5か年計画として策定。
○ 第1次新計画を引き継ぎ、「地震発生に至る全過程を理解することにより、その最終段階で発現が予想される現象の理解を通して、信頼性の高い地震発生予測への道筋を開くことを現実の課題とすべきである」ことを基本。地震発生に至る全過程の理解のための研究と、それに基づく地殻活動予測シミュレーションモデルとモニタリングシステムの開発研究を推進。

3 近年発生した地震に関する重要な研究成果

(プレート境界の地震)

○ 2003年十勝沖地震、2005年宮城県沖の地震について、地震記録やGPSによる地殻変動記録の解析により、発生した地震とその後の変動を詳細に解明。プレート境界におけるアスペリティの繰り返し破壊を示すなど、アスペリティモデルの有効性を検証。
○ これらはともに、推進本部地震調査委員会の評価において、発生確率が高いと想定していた場所で起きた地震。アスペリティモデルは、この2003年十勝沖地震については想定された地震であること、2005年の宮城県沖の地震については、震源域の一部だけが破壊した地震であり、想定された地震ではないことを裏付ける重要な根拠を提供。

(内陸の地震)

○ 2004年新潟県中越地震を始めとする近年発生した内陸地殻内の地震に関して、地震発生直後からの集中的な観測により、震源断層の形状、滑り分布、断層周辺の地震波速度構造や比抵抗構造、活断層などの地質構造と震源断層の関係など、地震像の詳細を解明。

4 実施状況と成果

1.研究成果の概要

(地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進)

○ 2003年十勝沖地震発生から2004年の釧路沖の地震発生に至る過程で、ゆっくり滑りの伝播による応力変化の地震発生への影響を確認。アスペリティモデルを用いた数値シミュレーションによる理論的な予想と調和的。GPSや相似地震による、ゆっくり滑りのモニタリングでは、基盤的地震観測網と基盤的GPS観測網の整備が大きく貢献。
○ アスペリティモデルに基づく数値モデルにより、過去の巨大地震発生系列の特徴の再現に成功。地震間の固着・地震時の滑りと定常的なゆっくり滑りに加え、地震発生領域よりも深部のプレート境界での非定常的ゆっくり滑りの発見。これらの成果を利用した、プレート境界での滑り全般の定量的な数値モデル化への進展。
○ 基盤的地震観測網の整備による、東海から西南日本にかけての沈み込むフィリピン海プレート深部境界での短期的ゆっくり滑りと低周波微動・地震が同期して発生することを発見。これにより、測地学的手法以外の方法による、ゆっくり滑りの時空間的推移の高分解能把握を達成。
○ 2004年のインドネシア・スマトラ島沖大地震のような、複数のアスペリティの広域連動破壊による巨大地震が、我が国のプレート境界でも過去に発生したことを発見。時間的に通常の地震発生サイクルを超えた長いサイクルを考慮することの重要性を確認。
○ 内陸の地震発生に至る地殻活動については、地殻・マントル内の不均質な粘弾性・塑性変形により広域応力が震源断層へ集中するという地震発生モデルを提案。内陸の大地震発生に関する定量的数値モデル構築に向けて進展。

(地殻活動の予測シミュレーションとモニタリングのための観測研究の推進)

○ 予測シミュレーションモデルの研究では、現実に近い摩擦・破壊構成則とプレート境界面形状を考慮した巨大地震発生サイクルのシミュレーションが実現。他に、ゆっくり滑りの原因や地震発生領域よりも深部で発生する前駆的滑りを説明するモデル、及びプレート沈み込みに伴う応力場形成に関するモデル等で成果。
○ 高感度地震観測網について、気象庁、防災科学技術研究所及び大学等のデータの一元化やデータ流通体制が確立。これにより、観測データのほぼ全てが全国どこからでも実時間で利用できるデータベース及びデータ利用システムを整備。歪集中帯における合同観測のような、大学等による研究的な機動観測の高度化。
○ 東海地域では、気象庁等の歪等の観測網による非地震性滑りの即時的監視能力が高度化。短期的ゆっくり滑りを、ほぼ実時間で検出するなど、その活動推移の把握が実現。

(新たな観測・実験技術の開発)

○ GPSと音響測距を組み合わせた海底測位により地殻変動検出を実現。

2.現段階における予知研究の到達度

○ 地震発生直前に警報を出せるような精度で行う地震の予知(直前予知)は、一定の場合に可能と考えられる想定東海地震を除き、現時点では、プレート境界地震と内陸地震とを問わず、一般には困難。
○ 第2次新計画では、プレート境界地震の地震像と発生予測のための基本原理についての知見が蓄積され、過去のプレート境界巨大地震の発生系列の特徴を再現できる物理モデルを作り得る段階に到達。しかし、物理モデルに基づく地殻活動の将来予測では、研究が緒に就いたばかりであり、また、内陸地震については、その発生機構のモデル化を開始した段階。

3.研究成果の社会への貢献

○ プレート境界での地震時の滑り分布と地震間の固着や滑りに関する知見に基づくアスペリティモデルなどの本計画の研究成果は、推進本部における地震発生可能性の長期評価や調査観測計画の立案に活用されているほか、自治体での防災対策策定などに貢献。

4.研究成果の関連学界への貢献

○ アスペリティモデルは、プレートの沈み込み等に関する地球科学関連分野の研究に大きく貢献。
○ 低周波地震・微動と非定常ゆっくり滑りの研究は、沈み込み帯のプレート間固着と滑りに関する世界の研究を先導。

5.計画を推進するための体制

○ 地震部会の下に本計画の実施機関によって構成される観測研究計画推進委員会を設け、計画の進捗状況の把握、達成度の評価等が行われ、関係機関の間の協力・連携が促進。
○ 大学においては、地震予知研究協議会と火山噴火予知研究協議会が統合され、大学間の協力・連携が強化。地震予知研究と火山噴火予知研究との連携が強化。

5 今後の展望

(プレート境界地震)

○ プレート境界地震の発生予測には、(1)アスペリティの実体と相互作用(アスペリティの空間スケールとプレート間固着を支配する要因、幾つかのアスペリティの連動性等)、(2)非地震性滑りの時間変化(規模や発生間隔が大地震の前にどのように変化するか等)、(3)中小の地震活動とプレート間滑りの関係(プレート間の固着・滑りによる地殻内の応力変化とプレート内の地震活動の関係等)の解明が急務。

(内陸地震)

○ 我が国の内陸地震は、プレート境界の地震に比べて小規模、繰り返し間隔が長く、明瞭な弱面が存在しないため、応力集中過程の理解が困難。(1)歪集中帯の成因の解明と定量的なモデル化(歪速度の大きな領域の実体解明、広域応力の数値モデル化等)、(2)地殻内流体(地殻内流体の実体解明と変形機構のモデル化等)の解明が急務。

(地震発生確率の高い地域での研究)

○ 地震発生の可能性の評価を検証するためには、地震発生サイクル全体のデータが必要であり、特に、直前過程の観測データが不可欠。したがって、地震発生確率の高いと評価された地震(特に宮城県沖地震)については、直前過程の解明を目指した研究の強化が必要。

(前駆的滑りの検知)

○ 直前予知のためには、前駆的滑りを含めてプレート境界の固着状態の変化を検知する方法について、技術開発を更に進めることが必要。また、同時に陸上における地殻変動観測のみならず、海域における地殻変動観測の充実と高度化を図ることが必要。

(予測シミュレーションの推進)

○ 総合的地震発生予測システムの構築に向けて、予測シミュレーションのモデルパラメータや初期条件等を精度良く決定する手法、また、シミュレーションによる予測と観測とを比較することによりモデルを逐次的に修正するための手法を開発することが必要。

(モニタリングとデータベースの構築)

○ モニタリングによって得られた地殻活動のデータを予測シュミレーションモデルに同化する手法の開発や、実時間で得られる膨大な量の観測データと過去に蓄積された観測データを統合して予測に利用できるシステムを開発することが必要。

(国立大学法人の連携強化と観測体制整備)

○ 国立大学は法人化されたが、これまでと同様、各大学及び観測・研究機関の連携・協力は必須。したがって、関係大学で組織する地震・火山噴火予知研究協議会の機能の継続、発展に期待。また、大学の観測設備の機能維持・拡充のために老朽化した設備の更新を図ることが必要。

(推進本部の施策の中での位置づけ)

○ 今後とも、地震予知のための研究が、地震防災に必要な地震調査研究の中に適切に位置付けられることを期待。

6 まとめ

○ 第2次新計画では、「地震予知研究」を前兆現象に依拠した経験的な地震予知の実用化ではなく、地震発生に至る地殻活動の理解、モデル化、モニタリングを総合化したものとして、「総合予測システム」を構築し、「地震がいつ、どこで、どの程度の規模で発生するか」を定量的に予測することを目標。
○ さらに、来るべき地震の場所と規模の他、対象とする地点の揺れ方などの地震像を評価し、発生時期の予測精度を徐々に向上させることで防災対策等への社会貢献を行いつつ地震予知の実現に着実に近付くとした。
○ 今回のレビューからも成果は着実に上がっており、今後もこうした方針で進めるべきである。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

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