3 新たな観測技術の開発

「新たな観測技術の開発」計画推進部会長 藤本博己
(東北大学大学院理学研究科)

 「新たな観測技術の開発」研究では、地震・火山噴火予知研究の推進のために、これまでとらえることが困難、または不可能であった地震及び火山噴火現象を見るための「道具」を開発することを目指している。観測・実験技術の開発研究は、地震や火山噴火の現象解明の研究や予測のための研究と共同で実施されることが多く、この部会と関連の深いものであっても、他の研究計画の中で実施されている技術開発は別に報告されている。ここでは、他部会で報告されない研究課題の成果を中心にまとめる。

(1)海底における観測技術の開発と高度化

 日本列島は海に囲まれており、プレートの沈み込みに伴う巨大地震は海域で発生する。また、プレートの沈み込みに伴い、伊豆諸島をはじめ多くの島嶼部にも活動的な火山が存在する。そのため、既に高密度・高精度な観測が行われている陸域の観測網に近い品質(観測精度と時空間分解能)で、海域においてもデータを取得する必要がある。つまり、陸域と同様に地殻変動の低周波数から地震動の高周波数までの広い周波数帯域で、高ダイナミックレンジの観測を高密度かつ高い時間分解能で実施する必要がある。特に、巨大地震発生の予測を目指した研究を行うためには、日本周辺のプレート境界における地震活動及びその固着状態を準リアルタイムで知ることが重要であり、そのためには、海域における地震活動及び地殻変動の実時間観測が不可欠である。上記のような研究上の需要があるにもかかわらず、海域の観測に必要な測器は、陸上の測器のように商業ベースでは開発されていない。地震及び火山噴火予知研究の推進のためには、海域での観測機器の開発から始める必要がある。

ア.海底地殻変動観測技術

 観測船やブイを用いた海底地殻変動観測を実施するともに、観測精度向上に関する研究を進めた。宮城県沖地震に備えて観測を継続していたおかげで、この海域の海底地殻変動観測は、2011年東北地方太平洋沖地震の滑り分布に決定的な制約を与える重要な成果をあげた。図1は、海上におけるGPS(汎地球衛星測位システム)測位と海中の音響測位を結合して海底の精密測位を繰り返す海底GPSと呼ばれる手法により観測が行われていた点を示すが、宮城県沖の海溝軸陸側約50kmの観測点GJT3で、地震前後の変位として、東へ29.5±0.5m、南へ11±0.5m、隆起3.9±1mの変位、その陸側のGJT4で約15mの水平変位を捉えた(Kido et al.、 2011;東北大学[課題番号:1217])。海上保安庁[課題番号:8006]は、宮城県沖と岩手県沖の4観測点で24mにおよぶ大きな地殻変動があったが、福島県沖ではその値が小さいことを捉えた(Sato et al.、 2011;海上保安庁[課題番号:8006])。東北大学では、GJT3におけるその後の観測で、東方向の大きな余効変動も捉えている(Osada et al.、 2011)。
 図2に示す宮城県沖の8つの観測点で海底圧力の連続観測データが得られ、この巨大地震の前震・本震時の変位と余効変動を時系列として捉えることに成功した(Hino et al.、 2011; Inazu et al.、2011; 東北大学[課題番号:1217])。図2のTJT1の観測点は海溝軸近くにあり、地震時に約5.1mの隆起を捉えており、海溝軸付近で数10mの滑りがあったことを示唆している(Ito et al.、 2011).
海底GPSは測位精度の向上が重要な課題であり、海中音速の水平勾配が時間変化すると測位誤差が生じるという問題である。そこで地震学で利用されている既存の方法を応用し、音速の空間分布と推定された走時残差を比較し、海中音速構造の不均質性及び時間変化がある程度検出可能であることを示した(図3; Eto et al.、 2011)。また海底ベンチマーク形状を固定してその重心位置の移動のみを求めるアルゴリズムを適用し、過去の全データを用いて再解析することにより、水平変位速度を5~10mm/yrで得られることを示した(Tadokoro et al.、 2011;名古屋大学[課題番号:1706]).海上保安庁[課題番号:8006]は、同様な手法により南海トラフ沿いの6点で水平変位速度を求めている。
 機動的な海底地殻変動観測を行うために、広帯域海底地震計(BBOBS)に絶対圧センサーを付加するシステム(BBOBS+AGP)を開発し、実海域観測を進めている。海底での傾斜変動を計測するため、レーザー光源の小型傾斜計の開発を進めるとともに、次世代型広帯域海底地震計(BBOBS-NX)の広帯域地震センサーのマスポジション出力から傾斜変動を検出するシステム(BBOBST)を開発した(東京大学地震研究所[課題番号:1431、 1432])。

イ.海底地震観測技術

 水深6000m以深の超深海域での海底地震観測を可能にするために、超深海用海底地震計(UDOBS)の試作を行った。鋸山地殻変動観測所の観測壕内において水晶発振式加速度センサーの試験観測を行い、ノイズレベルがこれまでのサーボ式加速度計よりも、約10倍低いことが確認された。このセンサーを用いることにより、微小地震を対象とした高感度観測、加速度計の特性を活かした広帯域観測が行えることとなる(東京大学地震研究所[課題番号:1432])。

ウ.海底実時間システム

 東南海地震に備えて、熊野灘における地震・津波観測監視システム(DONET)の観測点の構築を完了し、その観測データを用いた各種のモニタリングの研究を開始するとともに、南海地震の震源域の和歌山県西方沖に展開する新たな地震津波観測監視システム(DONET2)の構築に向けた調査等を開始した(海洋研究開発機構[課題番号:4005])。昨年度、「ひずみ集中帯」委託研究により新潟県粟島の南方の日本海に設置したインライン式の次世代ケーブル式海底観測システムについて、その安定した運用を確認するとともに、データ伝送に関する技術開発研究を行った(Kanazawa et al.、 2011)。また、高精度水圧計を観測ノードに実装するための検討を行った(東京大学地震研究所[課題番号:1433])。

(2)宇宙技術等の利用の高度化

 GPSや衛星搭載合成開口レーダー(SAR)等の人工衛星を利用した観測技術は、地震及び火山活動の観測手段として重要な役割を果たしてきており、その解析技術の一層の高度化を図ることにより、様々な地震や火山活動をより高い精度で把握することが可能になる。その他の衛星や航空機を利用したリモートセンシング技術の高度化を含めて、以下のような研究を進めた。

ア.宇宙測地技術

 GEONETのGPS測位ルーチン解析において、桜島周辺、新燃岳周辺等に見られている特徴的な誤差は、地形に起因する気象擾乱(山岳波)の影響によって生じており、高分解能数値気象モデルを用いることにより、その誤差を再現できることがわかった(石本ほか、2011)。またGPS統合解析技術に関して、昨年度に試作した電離層遅延補正モデルの推定手法を見直し、グリッド内挿を用いた推定手法を構築した(畑中ほか、2011)。各機関のGPS観測点のデータにGPS統合解析手法を適用することにより、GEONETのルーチン解との整合性の高い座標解が得られることがわかった(図4、国土地理院[課題番号:6017])。
 平成22年度に開発を進めたリアルタイムGPS時系列データから永久変位を自動的に検出する手法を、2011年東北地方太平洋沖地震時の国土地理院GEONET1秒サンプリングGPSデータに対して適用し、精度評価を行った.その結果、日座標値との比較から水平成分において10cm程度の精度で変位量が推定できており、推定日座標値による変位には余効変動や余震等による地震時変動が別途含まれていることを考慮すると、リアルタイム処理で推定された変位量はほぼ正確に地震時変位を捉えていると考えられる.更に推定された地震時変動場を説明する断層面を逐次(20秒毎)推定し、地震規模を迅速に把握する手法を開発し、地震発生後から275秒でMwが8.7に到達することを把握可能なことが分かった(図5、Ohta et al.、 2011).また本震だけではなく、本震発生後の余震(茨城県沖地震、Mw.7.7)についても変位量を自動推定することに成功した(東北大学[課題番号:1218])。
 気象庁のメソスケールGPV気象モデルを用いて、関東地方及び東海・伊豆地域のGEONET観測点を、1日以内に準リアルタイムで大気伝播遅延補正を行った場合について、測位精度の評価を行った(防災科学技術研究所[課題番号:3019])。
 SARの解析については、東北地方太平洋沖地震に関して、GPSデータとの統合解析手法を適用することにより、精度が低い速報的な軌道情報(RARR)を用いたSAR干渉処理においても、正確かつ迅速に地殻変動を検出した。SARデータのみの解析では不正確な軌道情報を起因とする長波長ノイズが重畳しているが、GPSデータを組み込んだ統合解析により長波長成分が補正されて地震に伴う地殻変動を適切に抽出することができている(Kobayashi et al.、 2011)。数値気象モデルを用いた大気位相遅延誤差の低減処理を霧島山(新燃岳)の地殻変動解析に適用しその有効性を示した(Tobita et al.、2010;国土地理院[課題番号:6018])。
 通常の解析モードと比べて広範囲を撮像できるScanSARモードのSAR画像を用いた干渉解析に成功し、2010年ハイチ地震にともなう地殻変動を、ALOS衛星からのScanSAR画像を用いて高い空間分解能で抽出するのに成功した(Hashimoto et al.、 2011)。また、ピクセルオフセット法を用いて、干渉解析では不可能な大変形の抽出に関する研究も引き続き進展した(Furuya and Yasuda、 2011; Liu et al.、 2012;東京大学地震研究所[課題番号:1434])。
 東北地方太平洋沖地震に関するSAR解析において、火山帯の付近でおおよそ20km以下の空間波長の局所的な沈降が見られた。火山下に存在するマグマだまりのような柔らかい物質が、周りの岩石と比べてより大きく伸長したためにこの沈降が生じたと解釈すると、観測結果と調和的な地殻変動分布を再現できる。新燃岳・霧島山の火山活動に関して、SAR解析により2011年3月以降の地殻変動を調査し、新燃岳周辺の浅い領域に収縮源が存在していることを示唆する結果が得られた(防災科学技術研究所[課題番号:3017])。

イ.リモートセンシング技術

 火山噴火の際には、火口近傍での観測は重要であるが、観測者の安全確保のため実施は困難であった。この問題を解決する目的で、産業用小型無人ヘリコプターを用いて観測装置の設置作業を行うシステムの高度化とそれを用いた観測を進めている(Kaneko et al.、 2011)。平成23年度は、無人ヘリコプターを用いて、5月に霧島・新燃岳において地震計・GPS観測装置の設置、11月に桜島及び霧島山(新燃岳)において再設置を行った。なお、観測装置が台風などの強風で吹き倒される事例が相次いだため、風に強い形状の観測機器を再開発した。5月及び11月に霧島山(新燃岳)にて空中磁気測量を行い、ドーム形成に伴う磁化変化をとらえることに成功した(東京大学地震研究所[課題番号:1435])。
 MODISとMTSATの衛星赤外画像を用いて東アジアの主要147活火山の準リアルタイム観測を行っているが、今後の主要テーマの1つは、2015年度にJAXAが打ち上げを予定している気候変動観測衛星GCOM-C1を用いた衛星観測システムの高度化である.本年度は、これに搭載予定の250m分解能の赤外チャンネルを用いた噴火状況の解析について、模擬データ解析等の検討を進め、火砕流の有無を識別できる可能性があることを確認した(東京大学地震研究所[課題番号:1436])。
 航空機搭載型放射伝達スペクトルスキャナ(ARTS)による火山活動のリモートセンシングを進めており、観測データの解析とともに、マグマの物性に関連するSiO2含量の推定技術の開発、及び観測機会を拡大するためにARTSを小型化する技術開発に着手した(防災科学技術研究所[課題番号:3018])。
 気象レーダーによる新燃岳の爆発的噴火時の噴煙エコー頂高度の解析結果は、ひまわり7号(MTSAT-2)で撮られた火山灰雲の流向とよく対応することがわかった。新燃岳の降灰予報全39事例について、降灰分布との比較検証を行い、降灰予測に用いている初期値(噴煙柱モデル)で火山灰の粒度分布や拡散比率を適切に設定することに加え、気象レーダーの噴煙エコー頂高度の解析結果を適用することにより、予想降灰量の再現性が向上することを確認した(気象庁[課題番号:7022])。

(3)観測技術の継続的高度化

 地震及び火山観測においては、地下の状態を把握する新たな観測技術を開発して、研究の推進に役立てることと同時に、従来の観測手法の継続的な高度化も必要である。特に、これまで電源や通信事情が悪くて観測ができなかった、山間地・離島・火口近傍等の場所でデータを効率よく取得する技術の開発も必要である。このような課題に対して、以下のような研究を進めた。

ア.地下状態モニタリング技術

 宇宙空間から地上に降りそそぐ高エネルギー粒子ミュオンによる火山体内部の観測を進めている(Tanaka et al.、 2011; Okubo et al.、 2012)。今年度は、従来よりも大きなサイズの物体をより短い時間で透視するためにカロリメータ方式センサーを開発し、有珠山(明治新山)にて試験観測を実施した(図7).新方式ではミュオン検出器を2層から4層に増やすことにより、バックグランド・ノイズの大幅な低減を実現し、密度画像を得るまでの観測時間が大幅に短縮された。明治新山の仰角110± 55mrad(70% confidence level)の角度領域において、観測時間を12時間、24時間及び10日間と変えた場合の観測結果を図8に示す。同じ精度を得るのに要する時間は、従来の約1/3に短縮されている。なお、本測定では本来2.35平米に設計されている検出器をスペックダウンして1.21平米で行っているため、約60%の性能しか出ていない。本来の仕様で密度測定を行えば、同じ精度が従来方式の6倍速で達成できる見込みである(東京大学地震研究所[課題番号:1438])。
 微弱なプレート境界からの反射信号の長期監視を目的とする地震計アレイによる豊橋アクロスの観測データ解析手法の高度化に向けて、中部地方のHi-net等の定常観測網約150点の連続地震波形データの収集を開始し、自動で前処理するシステムの開発を進めている。火山を対象とした噴火準備過程の能動的モニタリングを来年度から開始するために、予備の震源装置等を桜島火山へ移設する作業を行った(名古屋大学[課題番号:1707])。

イ.地震活動や噴火活動の活発な地域における観測技術

 高精度を保ちつつ、可搬性にも重点を置いた小型絶対重力計の開発を進めている。東北地方太平洋沖地震に伴う重力変化を観測するため、江刺観測施設の絶対重力値を継続的に測定した。地殻変動では地震時に沈降が観測されているが、重力値は地震後に約12マクロガル低下し、その後回復傾向にある。余震による地面振動が大きいデータを除去することにより、1ugal以下の分解能で重力値を決定できている(図9、東京大学地震研究所[課題番号:1439])。
 火山地域などの悪条件下においての各種観測データの伝送方式の開発を目指して、平成22年度に引き続き、携帯電話カードの定額料金プランを用いた地震データ転送、プリペイド式携帯電話端末を用いたGPS観測網のテレメータ化、低消費電力の小型小電力無線機を用いた無線LAN装置の開発などのデータ伝送実験を行った。携帯電話データ通信サービスエリア内であれば3ch 100Hzの地震データの他GPSや傾斜計などの低サンプリングデータを観測拠点に簡便にリアルタイム伝送をすることができるようになり、現在霧島新燃岳噴火に伴う観測や東日本地区各地で非常に順調に動作している.東日本大震災の経験から、携帯基地局が停止しない限り、大災害が起きても、形態電話の回線輻輳によるデータ欠落は実際の運用ではほとんど問題にならないが、今後、スマートフォンの増加による回線容量不足には注意する必要がある(九州大学[課題番号:2207])。
 危険なため人が容易に近づけない活動的な火山火口近傍における機動的観測を行うために、火山フィールドで不整地走行を行い、搭載したセンサーのデータをリアルタイムで基地局に転送する無線操縦ロボット『ほむら』の開発を目指しており、その実用化に向けて、現在までに製作されている試作機の駆動系、特にモーターと電源を高性能化すること、更に実際の火山フィールドでの試験により改良点を明らかにすることを進めている(京都大学[課題番号:2913])。
 富士山のるGPS火山変動リモート観測装置を更新し、リモート監視が可能になり、火山内部の挙動を把握することが可能となった(国土地理院[課題番号:6019])。
ウ.大深度ボアホール計測技術高精度で安定であるレーザー技術を利用した大深度ボアホールの高温環境下で使用できるレーザー干渉式広帯域地震計測・傾斜計測法の開発(新谷、2010)を進めている。光ファイバーで高温試験装置の干渉計に光を導入し、常温から300℃の範囲での動作状態を測定し、290℃までは正常に干渉信号が得られ、干渉計部分の高温動作が確認された。鋸山観測所の坑内で既存のSTS1型広帯域地震計と雑音レベルを比較した。その結果ほぼ同等であることが確認された。遠地地震波形や潮汐信号も整合し、広帯域地震計として十分な性能であることが確認された(東京大学地震研究所[課題番号:1440])。
 また、地下深部の高温環境下で安定動作する、地震計、傾斜計、強震計の開発を進めており、23年度は、岩手県八幡平市の試験井において、試作地震計の試験観測を開始した(防災科学技術研究所[課題番号:3020])。

これまでの課題と今後の展望

 地震及び火山噴火現象を見るための「道具」を開発する研究は着実に成果を出しており、海底地殻変動観測や海底実時間システム、宇宙測地技術、リモートセンシング技術、データ伝送技術など、成果の多くは地震・火山噴火予知研究推進のためのモニタリング等に貢献しつつあり、2011年3月の東北地方太平洋沖地震に伴う地震活動や地殻変動の観測、新燃岳の噴火活動のモニタリング等において重要な成果を出した。今後はモニタリング等の観測を行いつつ、観測システムや解析手法の高度化を進めることが重要と思われる。
 海底におけるケーブル式の津波観測や海底地殻変動観測の重要性が再認識され、ケーブル式の大規模海底観測プロジェクトや、海底GPS方式と海底圧力観測による地殻変動観測の多点展開が予定されている。画期的なことであり、成果を出して今後の進展に結びつけることが必要である。海底GPS方式の地殻変動観測は、沈み込み帯のプレート境界の固着状態を把握する鍵となる重要な観測になってきたが、陸上のGPS観測と比べると、繰り返し測位精度が1桁程度低く、観測も年間に1~3回程度であるという問題がある。今後測位精度の向上や連続観測に向けた研究を進めるとともに、計画されている多点観測や将来の海底地殻変動観測網に向けて、観測の効率化とシップタイムの確保が重要な課題である。
 GPSによる陸上の地殻変動観測の高度化は着実に進んでおり、今後、リアルタイム解析の進展により、巨大地震の即時解析と津波警報の高度化に貢献すると期待される。SARによる地殻変動観測の高度化も進んでいるが、ScanSARに関する研究と、ALOS-2の運用に向けて準備を進めることが課題であろう。
 ミュオンによる火山体内部の観測は新しい観測手法であり、まだ観測できる山体の大きさに限界はあるが期待は大きい。今後観測を進めつつ、重力測定など関連する観測とも合わせて、観測システムの高度化と観測結果の検証を進めることが重要であろう。各種のリモートセンシングや、無線操縦のヘリやロボットと無線通信システムなど、噴火活動のモニタリングに向けた観測システムの高度化が進められており、桜島の噴火活動のモニタリングや将来おきる大きな噴火活動への備えとして重要である。
 光技術は高精度の計測システムの開発に重要な技術であり、高温の地下掘削孔内で長期観測できる唯一のシステムとして注目されており、それを応用した絶対重力計、レーザー干渉式広帯域地震計・傾斜計の開発は、長期的にサポートしていくことが必要である。

参考文献

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