課題番号1008
北海道大学
Lバンド航空機SARによる革新的火山観測手法の開発
4.(2)ウ.観測・解析技術の開発
3.(4)地震・火山噴火の災害誘因の即時予測手法の高度化
合成開口レーダ(SAR)は,全天候性,広域性,非接触性,計算機親和性など,火山観測に適した多くの長所を有している.衛星搭載SARによる観測は,すでに標準的な火山モニタリング手法となっており,これまで多くの成果が上がっている.最近でも,わが国の「だいち」(ALOS/PALSAR)を利用した研究により,2011年東北地方太平洋沖地震時に発生した大規模な東西伸張に伴う東北地方の火山地域の沈降現象が世界に先駆けて発見された.また,2011年霧島新燃岳の噴火に先立つ火山帯の膨張なども把握され,地震・火山現象の解明に有用な科学的成果が上がっている.しかし,衛星プラットフォームは,固定された軌道上を一定の周期で周回するため,定期的な広域モニタリングには適しているが,火山モニタリングの重要な要件である,観測の即時性や多方向観測性には,制約が大きい.
一方,航空機搭載SARは,ほぼ自由に高度や照射方向を設定でき,即時対応にも適応性が高いことから,衛星型にない多くの長所を有している.高周波のマイクロ波を用いた航空機SARは新燃岳噴火に利用され,火口内の状況変化など噴火予知に役立つデータを提供した.しかしながら,技術的に未解決な部分も多く,火山観測に広く応用されるには未だ至っていない.
本研究では,近年の技術進展が目覚ましい航空機搭載型のLバンドSARを火山観測に応用するため,宇宙航空研究開発機構と共同して,革新的な観測・解析手法の開発を目標とする
<振幅・偏波解析による定量的火山モニタリング>:
宇宙航空研究開発機構の航空機SARシステムであるPiSAR-L2の高解像度散乱振幅および偏波に関する時系列データの数値的較にもとづく火山活動関連情報の定量的抽出手法を開発する.
<リピートパス干渉法の実現へのチャレンジ>:
PiSAR-L2に装備済みの高精度GPS-INS航路追跡装置を利用した,航空機リピートパス干渉による地殻変動解析手法の開発をめざす.
<地殻変動モデル化手法の高度化>:
マグマ移動,火山性地震,地滑りなどが重畳する複雑な変動場を効果的にモデル化する手法を開発する
本研究では,実際に桜島および霧島火山群において,Pi-SAR-L2による航空機SAR観測を実施し,取得したデータに基きながら,高度な火山観測手法の確立を目指す.以下に,実施年度ごとの研究計画を示す.
なお,研究期間中に他の火山が顕著な活動を示した場合は,関係機関と調整の上,それまでの達成成果,予算執行状況等を勘案しながら,活動中の火山に観測対象を変更することも考慮する.
Pi-SAR-LおよびPi-SAR-L2のアーカイブデータを利用した,定量的時系列解析手法開発のための予備的検討
北海道大学(村上亮,古屋正人)
東京大学地震研究所(青木陽介)
京都大学防災研究所(高田陽一郎)
防災科学技術研究所(小澤拓)
他機関との共同研究の有無:有
宇宙航空研究開発機構 代表者:島田政信
部署等名:北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター
電話: 011-706-3591
e-mail:isv-web@mail.sci.hokudai.ac.jp
URL: http://www.sci.hokudai.ac.jp/isv/
氏名: 村上 亮
所属: 北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成26年07月 --