1.はじめに

 科学技術・学術審議会において建議された「地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の推進について」及び「第7次火山噴火予知計画の推進について」のもと、平成16年度から地震と火山の二つの計画が進められた。両計画が平成20年度をもって終了することを受け、それに先立つ平成19年1月に科学技術・学術審議会測地学分科会から、「地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の実施状況等のレビューについて」及び「第7次火山噴火予知計画の実施状況等のレビューについて」が報告された。この報告を踏まえて、同年6月に「地震及び火山噴火予知研究計画に関する外部評価報告書」が取りまとめられ、両計画に基づく研究について一層の連携を図ることとされた。この評価を受け、同年8月の科学技術・学術審議会測地学分科会地震部会/火山部会合同会議において、二つの計画を統合する方向で検討することが決定され、次期計画検討委員会を設置した。ここで次期計画の建議案の策定を始め、意見公募を経て、平成20年7月には「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」(以下、「地震火山噴火予知観測研究計画」という。)が科学技術・学術審議会において建議された。

 地震火山噴火予知観測研究計画では、計画を推進するために、科学技術・学術審議会測地学分科会地震火山部会の下に、計画実施機関の委員で構成する観測研究計画推進委員会を平成21年5月に設置し、年度ごとに観測研究成果報告の取りまとめを行うこととした。

 本報告は、地震火山噴火予知観測研究計画の平成22年度の成果の概要を取りまとめたものである。第2章では当該年度の代表的な成果を報告することとしているが、本報告では第2章を「平成22年度に発生した大地震及び火山噴火に関する成果」とし、東北地方太平洋沖地震と霧島山(新燃岳)噴火を取りまとめた。とくに平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では、平成23年度にはいってからの研究成果も可能な限り収集し、平成23年7月現在の報告として取りまとめた。

なお、本計画の実施機関は以下の通りである。

  • 国立大学法人等:北海道大学、弘前大学、東北大学、秋田大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、鳥取大学、高知大学、九州大学、鹿児島大学、立命館大学、東海大学
  • 独立行政法人:情報通信研究機構、防災科学技術研究所、海洋研究開発機構、産業技術総合研究所
  • 政府機関:国土地理院、気象庁、海上保安庁

「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の推進について」における観測研究計画

地震予知に関する研究計画は昭和40年から、火山噴火予知に関する研究計画は昭和49年から、それぞれの予知計画として推進されてきた。しかし、地震及び火山噴火は同じ地球科学的背景を持った自然現象であり、これまでの研究の進展により、地震と火山とが密接に関連する地殻及びマントルの諸過程を統一的に理解する研究の道が開かれてきた。

平成21年度から始まった地震火山噴火予知観測研究計画では、地震及び火山噴火の「予測システムの開発」をより明確に志向した研究に重点を置くこととし、以下の4項目を柱として推進する。

(1)  地震・火山現象予測のための観測研究の推進

(2)  地震・火山現象解明のための観測研究の推進

(3)  新たな観測技術の開発

(4)  計画推進のための体制の強化

 上記項目のうち「(1)地震・火山現象予測のための観測研究の推進」は、地殻やマントルで進行している諸過程を把握し、予測シミュレーションモデルへのデータ同化に基づく地殻活動の予測及び噴火シナリオに基づく火山活動の予測に関する研究を行うものであり、次のような中項目に分けられている。

1)    地震・火山現象のモニタリングシステムの高度化

2)    地震・火山現象に関する予測システムの構築

3)    地震・火山現象に関するデータベースの構築

 また、「(2)地震・火山現象解明のための観測研究の推進」は、「(1)地震・火山現象予測のための観測研究」を行うために、地殻やマントルで進行している諸過程の正しい理解とそのモデル化のための観測研究を行うものであり、次のような中項目に分けられている。

1)    日本列島及び周辺域の長期・広域の地震・火山現象

2)    地震・火山噴火に至る準備過程

3)    地震発生先行・破壊過程と火山噴火過程

4)    地震発生・火山噴火素過程

 また、「(3)新たな観測技術の開発」は、地震・火山現象に関する現象理解や予測の高度化を進めるために、新たな観測技術の開発や既存技術の高度化を行うものであり、次のような中項目に分けられている。

1)    海底における観測技術の開発と高度化

2)    宇宙技術等の利用の高度化

3)    観測技術の継続的高度化

 「(4)計画推進のための体制の強化」は、計画全体を組織的に推進する体制の整備や、基礎的な観測体制の強化を図るものである。計画の目標達成に向けて、定期的な進捗状況の把握、実施計画及び研究成果の取りまとめ、研究の評価を実施することを目的として、平成21年度から科学技術・学術審議会測地学分科会地震火山部会に観測研究計画推進委員会が設置された。観測研究計画推進委員会では、国立大学法人等、独立行政法人、政府機関の組織がそれぞれの機能に応じた役割分担と密接な協力連携を行い、本報告書も同委員会により編集されている。

本報告書について

 地震火山噴火予知観測研究計画は、国立大学法人等、独立行政法人、政府機関の192題の実施計画(個別課題)により推進されている。平成22年度の個別課題の成果は、「平成22年度年次報告 機関別」に取りまとめられている。この各機関の個別課題の成果をもとに、計画の項目別に成果を取りまとめたものが、本報告書「平成22年度年次報告 成果の概要」である。

 本報告書では、学術的成果を、難解な学術用語をなるべく避け、平易な文章で表現することを心がけて作成した。しかし、専門用語を使用しなければ概要説明する上で冗長となることがあり、その場合には用語解説の頁で用語を解説した。

 また、参考資料編に[項目別の成果]を添付した。これは研究者が計画の項目別に学術報告として成果を取りまとめたもの(*)である。成果が詳細に報告されているので参考にされたい。

 

(*)東京大学地震研究所には、地震火山噴火予知観測研究計画で立案された研究を推進する目的で地震・火山噴火予知研究協議会が設置され、この研究計画に参加している全国の大学が連携し、研究機関と協力しながら研究を推進している。また、科学技術・学術審議会測地学分科会地震火山部会観測研究計画推進委員会は大学、研究機関、行政機関が連携して計画の推進を図っている。地震・火山噴火予知研究協議会には、地震火山噴火予知観測研究計画に書かれた項目に区分し、項目毎に効率的かつ調和的に研究を推進するために、12の計画推進部会が設置されている。参考資料編の[項目別の成果]は、この計画推進部会長が項目別に平成21年度の学術的成果を取りまとめたものである。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成24年05月 --