4.まとめ

 本計画から本格的に指向している地殻活動予測システムの開発について、大きな一歩を踏み出した。シミュレーションに観測データを直接取り込むデータ同化手法の開発が行われ、東南海地震・南海地震の発生が再現されたほか、2003年十勝沖地震の余効滑りの観測からプレート境界面の摩擦特性が推定された。また、地震予知研究と火山噴火予知研究を連携させたことによる成果も得られつつある。例えば伊豆東部の地震活動と火山活動の相互作用が明らかとなり、マグマ貫入に伴う地震の地震活動の予測が実用化されようとしている。
 地殻活動や火山噴火予測システムを構築する上で不可欠な、地下で進行している諸過程を理解するための研究が進められた。地震断層において破壊時に強い地震波を出すアスペリティについては、プレート間の固着の強さが上盤の物性の違いを反映していることを示す観測事実が蓄積された。また、大きなアスペリティ内部に小さなアスペリティが階層的に存在するモデルが導入され、アスペリティ内部における複雑な小地震の起こり方に関する理解が深まった。内陸地震発生域では、地球電磁気学的研究により、跡津川断層域において表層から上部マントルに至るまでの水の分布や連結状態が推定された。強震動・津波予測の高精度化のために、より現実的な構造モデルや複雑な震源断層モデルを考慮し、スーパーコンピュータを利用して強震動や津波を再現する試みが進められた。
 三宅島火山について過去の噴火履歴が詳細に調べられ、それに基づき火山噴火シナリオが作成された。また、桜島火山におけるマグマ供給量の増加や火口直下での蓄積量の増加等、噴火に至るまでの詳細過程が明らかになりつつある。さらに、火口近傍の観測により噴火に先行する現象が捉えられ、噴火様式・規模の予測の手がかりが得られた。
 新たな観測技術の開発により、海底地殻変動観測において測定精度の向上を実現し、陸上の地殻変動データと統合してプレート運動を高精度で計測できる見通しが立った。また、高エネルギー宇宙線ミュオンを利用した観測技術が高度化された。
 平成21年度は「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」に従い順調に研究が進められ、5か年計画の初年度としての所期の成果が得られた(下図:成果の概要図)。

成果の概要図 地震及び火山噴火予知のための観測研究の平成21年度成果のまとめ

成果の概要図 地震及び火山噴火予知のための観測研究の平成21年度成果のまとめ

 地震及び火山噴火予知のための観測研究の全体像を描き、その主な成果を吹き出しで記述した。詳しくは、吹き出しに記載された頁と図番号を参照。

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