連動海溝型地震の履歴とメカニズム解明

課題番号:5006

(1)実施機関名:

独立行政法人産業技術総合研究所

(2)研究課題(または観測項目)名:

連動海溝型地震の履歴とメカニズム解明

(3)最も関連の深い建議の項目:

2.(1)オ.地震発生サイクルと長期地殻ひずみ

(4)その他関連する建議の項目:

(5)平成20年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 千島海溝では、500年間隔で発生すると言われている連動型地震の発生間隔が、津波堆積物の詳細な年代決定から100年から800年の間でばらつくことを明らかにした。
 日本海溝では、仙台・石巻平野で西暦869年の貞観地震の津波浸水域とそれを説明する波源モデルを構築して、津波シミュレーションを実施する共に、津波の発生間隔が約1000年であることを解明した。
 南海トラフでは、富士川では過去約1500年間に繰り返した泥層と泥炭層の繰り返しが、富士川河口断層帯及び南海トラフの地震に関連した地殻変動である可能性が高いことを明らかにした。また、浜名湖西方では、慶長地震以降の歴史地震に対比できる津波堆積物を見出した。さらに、志摩半島の志島低地でボーリングを実施し、過去約6000年間の津波堆積物を含む地層を採取した。紀伊半島の潮岬周辺の海岸線で旧汀線指標であるヤッコカンザシの調査を実施した結果、標高4m以下に4つの異なるレベルの群集を見出し、400 0600年間隔で大きく隆起していることが明らかになった。最近では1707年宝永地震にそのような隆起が生じたことが明らかになった。四国の足摺岬でも地震性隆起の履歴を示す可能性が高いヤッコカンザシを検出した。
 海外では、2004年スマトラ沖地震の北側延長部に位置するミャンマー西海岸で4段の海岸段丘が発達していることを明らかにし隆起カキ礁の年代から過去約3000年間に4回の隆起イベントが約900年間隔で発生していることが明らかにした。また、タイのプーケット北方で2004年のスマトラ沖地震以前の巨大津波による津波堆積物を発見した。スマトラ島本島の海岸平野での津波堆積物調査を実施し、連続性はよくないが津波堆積物である可能性が高い砂層を発見した。

(6)本課題の5ヶ年の到達目標:

・南海トラフ
 沿岸域において地形、地質の調査を行い、史料の情報などと併せ、過去に海域で発生した地震の時期とそれに伴うに伴う地殻変動や津波浸水域を解明する。特に連動型地震と考えられている宝永地震については、同じような連動型地震の発生履歴を解明すると共に、断層モデルを提案する。

・日本海溝
 日本海溝中部で明らかになった連動型地震(貞観地震)による津波の浸水履歴地図を公表するとともに、同海溝の北部及び南部でも発生する可能性があるかどうかを検証するため、沿岸域で津波堆積物及び地殻変動調査を実施し、連動型地震の履歴解明と断層モデルの構築を試みる。

・連動性評価と地殻変動サイクルの解明
 千島海溝において明らかになっている約500年間隔の連動型地震サイクルに伴う地殻変動サイクルを地形・地質調査によって明らかにする。その結果に基づいて、長期的な切迫性評価が可能かどうかを検討する。また、海外で知られている連動型巨大地震についても同様の調査を実施し、日本の連動型地震と比較する。

(7)本課題の5ヵ年計画の概要:

 南海トラフでは、地殻変動の解明と津波堆積物の調査研究を平成21年度から24年度にかけて駿河湾、東海地方、紀伊半島、四国地方で実施し、宝永地震と同じタイプの連動型地震の発生履歴を解明する。その後25年度を目処に宝永地震の断層モデルを提案する。
 日本海溝では、平成23年頃までに三陸海岸を中心とした地域で、その後25年度までに福島県以南の海岸線で津波堆積物などの調査を実施し、連動型地震の履歴解明と断層モデルの構築を試みる。さらに、千島海溝では、すでに明らかにされている500年間隔の連動型地震に関連した地震間地殻変動のパターンの変化を解明し、連動型地震の発生メカニズムを提案する。 

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

活断層・地震研究センター 海溝型地震履歴研究チーム
他機関との共同研究の有無:有

東京大学地震研究所、北海道大学、秋田大学、東北大学、新潟大学、防災科学技術研究所、名古屋大学、米国ペンシルヴァニア大学、インドネシア科学院、タイ 南部気象センター、Indian Institute of Technology、16名

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター
電話:029‐861‐3691
URL:http://unit.aist.go.jp/actfault‐eq/index.html

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成22年02月 --