沈み込み帯のマグマ発生と地殻変動のダイナミクス

課題番号:1603

(1)実施機関名:

東京工業大学大学院理工学研究科

(2)研究課題(または観測項目)名:

沈み込み帯のマグマ発生と地殻変動のダイナミクス

(3)最も関連の深い建議の項目:

2 地震・火山現象解明のための観測研究の推進
(1)日本列島及び周辺域の長期・広域の地震・火山現象
イ.上部マントルとマグマの発生場

(4)その他関連する建議の項目:

2(1)ア 列島及び周辺域のプレート運動、広域応力場、
2(4)ア 岩石の変形・破壊の物理的・化学的素過程
2(4)イ 地殻・上部マントルの物性の環境依存性

(5)平成20年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 新規研究であるが、分担者の一人(清水)は、現行(第2次)計画における「地震発生の素過程」研究の一環として、固体圧式のピストンシリンダー型変形試験機を用いてモホ面付近の高温高圧条件における精密な差応力測定する方法を確立し、変形実験を行ない、蛇紋岩の脱水反応に伴う急激なレオロジー変化を明らかにした。さらに高圧のマントル領域 (封圧 2 GPa、 地下60km 相当) における岩石力学物性を調べるため、新たな変形実験装置を設計製作した。

(6)本課題の5ヶ年の到達目標:

 沈み込むプレートは、一般に著しい熱的および物質的な不均質を地球内部に持ち込み、その結果として地震や火山活動を引き起こす。これらの活動は、地質学的時間スケールにおける、広域変成作用、造山運動、大陸地殻の消長、地球内部の熱・物質の大循環など、地球の変動現象および進化と密接に関わる。本研究は、これら一連の現象の起こる場として沈み込み帯をとらえ、プレートの沈み込みと諸現象をつなぐ具体的メカニズムを明らかにすることを目的とする。そのために、以下の理論的、観測的、実験的な基礎研究を行う。(1)地殻変動を、測地データ、反射法地震探査データ、地質構造、地表変形データなどから多角的に捉え、変位の食い違い理論に基づく数値シミュレーションによるモデル化やインバージョン解析を通して、歪・応力状態およびテクトニクスとの関連性の推定を行う、(2)火成活動の実体を、日本列島に分布する岩石と熱水の調査、サンプリング、文献調査、分析によって物質科学的に捉え、沈み込み帯の温度場、流れ場、物質輸送のカップリング数値モデルと比較対照することによって、火成作用のメカニズムを明らかにする、(3)含水マントルおよび地殻物質の高温高圧変形実験を行い、H2O流体が沈み込むスラブやウェッジマントルの地震学的特性に及ぼす影響を明らかにするとともに、スラブ起源流体の発生・浸透過程を制約する、(4)(1)から(3)を合わせて、沈み込み帯の温度構造、流動・変形、物質循環に関する統合モデルを構築する。

(7)本課題の5ヵ年計画の概要:

平成21年度においては、概ね上記計画の準備(数値モデルのデザイン、野外調査・サンプリング、実験装置の開発・テスト)を行う。以下の計画を実施予定である

地殻変動:地表変形データおよび既存反射法地震探査データの再解析によって、東北日本における鮮新世以降の島弧リソスフェアの変形領域と、中新世におけるリソスフェア伸張領域とが、どの様に対応するかを検討する。弾性ー粘弾性多層構造媒質中のモーメントテンソルによる歪み場および応力場の導出を解析的に行い、その結果を利用してプレートの沈み込みによりどのような応力場が島弧内に形成されるのか数値シミュレーションにより明らかにすると共に、インバージョン解析の理論的研究も進める。

火成活動:東北日本の新生代火山の調査、岩石試料採取、西南日本の中生代‐新生代火成活動の調査、岩石および熱水試料採取と化学分析、年代決定を行う。沈み込み帯の温度場、流れ場、物質輸送のカップリング数値モデルの構築に向けて、素過程を理論的に洗い出す。

変形実験:1GPa までの圧力で含水マントルを構成する蛇紋岩の脱水変形実験を行ない、スラブ内地震のメカニズムを調べる。東京大学に新たに開発した固体圧式変形試験機によって、さらに広い圧力領域 (~2GPa、 地下60 km 相当) で実験ができるようにするため、各種キャリブレーションテストを行なう。

平成22年度以降においては、以下の研究を実施予定である(平成21年8月に、研究者の移動があり、これに伴って平成22年度以降の計画に変更が予定されているため、『平成22年度以降』として一括記載する)。

地殻変動:地表変形データおよび既存反射法地震探査データの再解析によって、東北日本における鮮新世以降の上部地殻の短縮量と、中新世における上部 地殻の伸張量とを推定することを試みる.また,これらの結果と,島弧の広域的な隆起・沈降データおよびシミュレーション・インバージョン解析とを比較し,島弧リソスフェアの変形仮定を考察する.

火成活動:火山岩および地下水・温泉・熱水系の調査・サンプリングに基づき、日本列島全域をカバーする空間規模で、沈み込むプレート由来(スラブ流体)の量と組成を、化学組成あるいは同位体システマティクス(特に、Pb,Nd,Srの5同位体比)に基づいて制約し、テクトニックセッティングとスラブ流体の起源の関係性を明らかにする。流体量の制約と、数値シミュレーションを合わせて、沈み込み帯のマグマ生成過程の定量的モデル化を行う。これらのマグマ生成場は、過去の東アジア一帯のテクトニクスとその歴史を強く反映する。中生代以降の火成・変成作用の時空分布・成因を、年代測定、化学・同位体分析によって解明し、対流の数値モデルと合わせることにより、東アジアのテクトニクス発達史と、現在のセッティングの関係性を明らかにする。

変形実験:固体圧式変形試験機(東京大学・理)によって、蛇紋岩の高温高圧変形実験を2GPa (地下60km相当) までの条件で行ない, 沈み込むスラブにおける脱水反応・流体発生時の地震発生過程を明らかにする。また含水ウェッジマントルの脆性‐延性転移挙動を明らかにし、スロー地震がカンラン岩の蛇紋岩化に起因するという説を検証する。

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

岩森光、および研究員・学生(東京工業大学)

池田安隆、清水以知子、および研究員・学生(東京大学大学院理学系研究科)

深畑幸俊(京都大学防災研究所)

他機関との共同研究の有無:あり
共同研究機関:東京大学地震研究所、静岡大学、広島大学、産業技術総合研究所、JAMSTEC

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先
 

部署等名: 東京工業大学院理工学研究科地球惑星科学専攻

電話:   03-5734-2339

e-mail:

URL:   http://www.geo.titech.ac.jp/index.php

 

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成22年02月 --