平成20年度年次報告
課題番号:1601
東京工業大学
地殻比抵抗構造調査
1.(2)イ.内陸地震発生域の不均質構造と歪・応力集中機構
日本列島の主要活断層地域において広帯域MT(マグネトテルリック)・長周期MT(マグネトテルリック)観測を行うことにより、地震発生域及びその深部延長部における比抵抗構造を明らかにし、活断層域のアスペリティーの実態及び地震発生に関与する地殻流体の実態を解明することが主たる目標である。平成20 年度はその5年次目として位置づけている。
電磁気グループの全国共同観測として計画されている中部日本北部のひずみ集中域におけるMT(マグネトテルリック)観測に参加し、東工大グループが所有する広帯域MT(マグネトテルリック)機器を十分に活用しつつ、この地域の地殻比抵抗構造解明を目指す。また独自に、糸魚川―静岡構造線諏訪湖周辺などにおけるMT(マグネトテルリック)観測も実施する。さらに、国外の長大な横ずれ断層については、外部資金も活用しつつ、北アナトリア断層、スマトラ断層、アルパイン断層において、MTデータの取得、あるいはその解析を進める。
電磁気グループとして、中部日本のひずみ集中帯の北東延長に当たる山形県北部における広帯域MT観測、および2008年6月14日に発生した岩手宮城内陸地震の震源域周辺において広帯域MT観測を実施した。ひずみ集中域に対応すると思われる低比抵抗異常を解明することができた。
独自には、糸魚川静岡構造線断層帯の諏訪湖周辺において、断層の深部延長が南西に予測されたので、さらに深部延長の構造をより精密に解析するために、広帯域MT観測を10点で実施した。また、山崎断層においてAMT観測を実施した。
また、科研費を活用して、トルコ国北アナトリア断層のマルマラ海中のセグメント構造を解明するために、マルマラ海東部において、海底電磁気観測を7観測点で実施した。測線の南部の上部マントルに低比抵抗異常が検出され、今後詳細な3次元解析が必要になる。同じく、科研費を活用してインドネシア国スマトラ島北部において、スマトラ断層を横断する広帯域MT観測を実施した。スマトラ断層に対応する地殻中心部にひずみ集中域に対応する縦長の低比抵抗異常が検出された。また、NSF予算によって、ユタ大学、ニュージーランド地質核科学研究所と共同して、ニュージーランド国アルパイン断層の北部におけるマルボロ地域において観測されたデータの解析を進め、横ずれ断層の破砕帯に対応した低比抵抗異常をとらえた。
Ichihara, H.,R. Honda, T. Mogi, H. Hase, H. Kamiyama, Y. Yamaya and Y. Ogawa, Resistivity structure around focal area of the 2004 southern Rumoi‐Nanbu Earthquake (M6.1) , Earth Planets Space, 60, 883‐888, 2008.
内陸地震発生場の比抵抗構造に関して、以下に述べるいくつかの知見を得た。1つは、地震発生場では地殻内の流体の分布が不均質であることである。ついで、低比抵抗異常の上面が地震発生層の下面に対応することも種々のケーススタディーからほぼ普遍的に見出せた。さらに、巨大内陸地震の本震が低/高比抵抗境界の高比抵抗側で発生することについても、能登半島地震やトルコ国イズミット地震で明らかにすることができた。地殻内流体の存在が、ひずみの場と内陸地震発生に深く関連していることが示唆された。
本蔵義守(東京工業大学理工学研究科地球惑星科学専攻),
小川康雄(東京工業大学火山流体研究センター)
他機関との共同研究の有無:
全国電磁気共同研究グループとの共同研究(約10名)
トルコ国ボアジチ大学(S.B.Tank,
M.K.Tuncer, S.T. Kaya, E. Tolak)
インドネシア国バンドン工科大学(Nurhasan)
インドネシア国シアクアラ大学(D.Sugiyanto)
ユタ大学(P.E.
Wannamaker)
ニュージーランド地質核科学研究所(T.G.Caldwell)
URL:部署等名:東京工業大学火山流体研究センター
電話:03‐5734‐2639
e‐mail:oga@ksvo.titech.ac.jp
URL:http://www.ksvo.titech.ac.jp/~oga/KSVOEM/
研究開発局地震・防災研究課