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(0) 課題番号:1805
(1) 実施機関名:京都大学防災研究所
(2) 研究課題名:半制御実験による震源核形成過程の解明
(3) 最も関連の深い建議の項目
1.(2)ウ.地震発生直前の物理・化学過程
(4) その他関連する建議の項目
1.(2)ア. プレート境界域における歪・応力集中機構
1.(2)イ. 内陸地震発生域の不均質構造と歪・応力集中機構
(5) 平成15年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要
 南アフリカWestern Deep Levels鉱山の地下約2600メートル、東西南北約200メートルかける200メートルの領域に設置した9つの3成分加速度計と4つの3成分歪計(石井式)から成る観測網からのデータの解析により、以下の成果が得られた。
 震源距離約100メートルマグニチュード2の地震が発生し、地震前2週間に数十個の前震が記録された。震源域において発生をはさんで約4ヶ月間に観測された約300個の地震を用いて、マグニチュード2の地震後に、b値が大きくなり、応力降下量やエネルギーインデックスは小さくなったことを見いだした。これらは、震源域におけるせん断応力の減少を示していると考えられる。さらに前震活動の解析から、マグニチュード2の地震発生前に前震の発生数が加速度的に増加し、発生直前の数日の間に、エネルギーインデックスが低下したことが示唆された。これらの観測結果は、マグニチュード2の地震の発生直前に、震源域において、既に応力緩和が始まっていた可能性を示している。マグニチュード2の震源は、一番近い歪計からでも約100メートル(断層サイズの4倍)と「遠く」、歪は15分間隔12ビットサンプリングでしか記録されていなかったため、地震波形データの解析から推定された、マグニチュード2の地震の直前の変化は検出できなかった。
 マグニチュード3級の地震が発生する可能性の高い断層が存在するBambanani鉱山の地下約2.4キロメートルにおけるフィールドで、25ヘルツ24ビットサンプリングによる歪計1点による試験的な観測を開始した。2002年2月に発生したマグニチュード3については、データ通信のトラブルにより地震直前および地震時は欠測であったが、震源距離約100メートルマグニチュード2.5(暫定)にともなう歪変化が捉えられた。地震時のじゅうのまいなすよんじょうの程度の歪ステップや余効変動など、マグニチュード2を越える地震について、前後の歪変化が初めて完全に捉えられたが、地震発生直前には他の地震による変動が重なっており、コサイスミックなステップと同一のセンスを持つ顕著な異常変化は今のところ見いだされていない。
 平成14年度から、新たにMponeng鉱山、Tau Tona鉱山で地震計・歪計・変位計のアレイからなる観測網の展開を始め、マグニチュード3クラスの発生を待ちかまえているところである。
(6) 本課題の平成16年度からの5ヶ年の到達目標と、それに対する平成16年度実施計画の位置付け
 震源核形成過程は、理論的・実験的に存在することが確認されている地震の直前過程の核心部分であり、それが実際に観測可能かどうかということが、短期的な予知の実現へ向けて解明すべき最重要課題であると考えられる。しかし、通常の自然地震を対象にする限り、大地震は滅多に発生しない。また、中小地震の震源から至近距離で観測することことは難しい。
 地震の発生過程の解明のためには、実験室で地震を再現することが重要である。岩石資料を用いた摩擦実験により、地震断層の摩擦特性が推定されてきた。しかし、岩石資料で発生する破壊と自然地震のスケールの違いは大変大きく、室内実験の結果を自然地震に外挿することの正当性が問題となる。
 南アフリカ金鉱山では、採鉱による応力集中のため、坑道から至近距離で地震が発生する。しかも採鉱計画により、発生場所が予測可能である。マグニチュード3クラスの地震の至近距離で捉え、震源核形成過程を解明する。また、南アフリカの金鉱山のスケールは、実験室とフィールドの中間であり、それらのスケールギャップを埋めるという重要な意味も持っている。
 観測の技術的な面に関して、南アフリカで最初に計器を設置したWestern Deep Levels鉱山の観測では、歪計は分解能が12ビットで1分サンプリングであったが、今回は24ビット25ヘルツで記録することにより、微小な変化をもとらえることが可能であると期待される。また、多種類・複数のセンサーで記録されたデータを解析することにより、震源域で何が起こっているかを明らかにできるものと考えられる。
 平成16年度には、マグニチュード3クラスの地震の震源核形成過程が捉えられるものと期待される。
(7) 平成16年度実施計画の概要
 平成16年は、既設の観測網の観測を継続しデータ解析を行うとともに、新たなサイトを一カ所開拓する予定である。このように、複数の鉱山で複数の坑道沿いに多数のセンサーを設置するのは、これまでの経験を生かして冗長性のある観測システムを構築するためである。
(8) 実施機関の参加者氏名または部署等名
 飯尾・Mori・川方・柳谷
 他機関との共同研究の有無:
 立命館大・東大地震研・東大理学部・東北大・産総研・名大・東濃地震科学研究所・金沢大・神戸学院大・ISSInternationalLtd・GroundWork・Mponeng鉱山・Tau Tona鉱山・Bambanani鉱山など約60名。
(9) 問い合わせ先
 部署等名:防災研究所附属地震予知研究センター
 電話:0774-38-4200
 e-mail:
 URL:http://www.rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp/


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