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(0) 課題番号:1403
(1) 実施機関名:東京大学地震研究所
(2) 研究課題名:総合観測による沈み込み帯プレート境界におけるアスペリティの実態解明
(3) 最も関連の深い建議の項目
1. (2)ア.プレート境界域における歪・応力集中メカニズム
(4) その他関連する建議の項目
1. (1)イ.列島規模のプレート内の構造と変形
1. (2)エ.地震発生サイクル
1. (4)イ.地殻・上部マントルの物質・物性と摩擦・破壊構成則パラメータ
2. (2)エ.その他特定の地域
3. (1)新たな観測・実験技術の開発
(5) 平成15年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要
海域部総合観測:1995年以降、南海トラフ、三陸沖、日本海東縁、伊豆小笠原沖において観測を実施した。プレート境界域付近での不均質構造の解明を行ってきた。また、プレート境界からの反射波の振幅強度の空間分布を求めた。また、東大海洋研、海洋科学技術センター等の観測船の利用により、釧路沖、茨城沖、東海沖、南海トラフ、日向灘、南西諸島海域、日本海等においても、構造調査、地震活動マッピングが進んだ。三陸沖等については、さらに海底ケーブル観測、GPS/音響測位、海底圧力観測が進められた。
海陸境界域地震・地殻変動観測:2002年7月から、茨城沖日本海溝陸側斜面において、長期観測型海底地震計を用いた繰り返し観測を開始し、長期間にわたって、地震活動のモニタリングを行っている。2001年からは輪島半島から大和碓へかけての日本海で、長期広帯域海底地震計による地震観測を継続しており、プレート境界深部における不均質について解析を行っている。地殻変動観測では、大学におけるGPS稠密観測は繰り返し観測を行い、長期的なプレート境界に起因する変動あるいは中央構造線など大規模構造線、活断層沿いにおいて深部すべりによる地殻変動を観測し、その動きを明らかにした。
繰り返し地震:関東・甲信越地域では過去約20年間にわたるマグニチュード3以上の地震解析され、太平洋プレート、フィリピン海プレートの境界付近で発生する相似地震活動が抽出されている。また、日光・足尾地域の群発地震活動中にはバースト的活動が頻発していることが明らかとなった。
高精度絶対重力測定:1996〜2002年に御前崎において、年間数回の繰り返し絶対重力測定を実施してきた。この間の沈降は約5センチメートルで10マイクロガルの増加が期待されるのに対し、実測の絶対重力変化は0プラスマイナス3マイクロガルにすぎないというパラドクスを見出した。差分干渉SARについては、鬼首地震の解析などで実績を上げつつある。
陸域プレート境界総合探査:平成15年度までの“地震予知のための新たな観測研究計画”においては、自然地震観測・地殻構造探査・電磁気学的探査を密接な連携のもとに実施し、島弧スケールと地殻スケールの不均質構造の解明を行ってきた。この研究により、東海地域や四国・中国地方における研究観測では、沈み込むフィリピン海プレートからの明瞭な反射波が捉えられ、西南日本におけるプレート構造の実態が明らかになった。
精密地殻変動観測によるプレート境界動的特性の解明:震源域に近づくことと、気象などによる擾乱の影響を軽減することを目的とし、歪計・傾斜計の深部ボアホールでの観測が可能となるように開発が進められてきた。すでに800メートルを超えるボアホール内での観測が行われるようになり、データが蓄積されつつある。
(6) 本課題の平成16年度からの5ヶ年の到達目標と、それに対する平成16年度実施計画の位置付け
 GPS及び測地学的手法による地殻変動観測と地震観測から、沈み込み型のプレート境界におけるプレート間カップリングは、定常的な滑り、固着、及び地震時の滑りのほかに、ゆっくりとした非地震性の完結的な滑りや地震後のゆっくりとした滑りなどの様々な形態があることが分かってきた。これらにより、アスペリティに応力が集中し、地震に至るというアスペリティモデルが考えられている。地震予知研究の最終目標である地震発生予測モデル構築のためには、アスペリティに歪・応力がどのように蓄積・集中しているかを明らかにする必要がある。そのためには、地震発生に至る準備過程から直前過程に渡る観測研究が必要である。また、この歪・応力蓄積・集中過程は、構造的不均質性に起因すると考えられる。従って、プレート境界地震発生域において、構造的不均質を明らかにする必要がある。本観測研究計画は、プレート境界を対象とし、海域から海陸境界部、陸域において、構造的不均質とプレート運動や地殻変形・流動、地震破壊等を地震・電磁気・GPS・重力観測を密接な連携のもとで行い、アスペリティの実態の解明をめざす。平成16年度は、宮城沖や紀伊半島付近などのプレート境界付近の構造的不均質を明らかにする観測研究を実施する。また、プレート境界における歪・応力蓄積・集中過程を明らかにするために、陸上の地震計ネットワーク、長期観測型海底地震計、GPS、傾斜計、歪計などによるモニタリングを開始する。
(7) 平成16年度実施計画の概要:本観測研究計画は大きく次の4つの観測研究項目からなっている。
1. 海域部総合観測
2. 海陸境界域地震・地殻変動観測
3. 陸域プレート境界総合観測
4. 精密地殻変動観測によるプレート境界動的特性の解明
以下、それぞれについて説明する。
1. 海域部総合観測
 宮城沖における制御震源構造探査実験:宮城沖の宮城沖地震の想定震源域付近で、全国の大学・機関と連携し、大容量エアガン・発破と海底地震計70台程度を用いた大規模構造探査実験を実施し、プレート境界の構造の空間的変化を明らかにする。解析においては、プレート境界域の大局的な構造をできるだけ高分解能で求めるほか、プレート境界からの反射波について、波形解析等高度な解析を行う。本観測は、宮城沖地震に関するパイロット的重点観測研究調査と密接な連携のもとに実施する。
2. 海陸境界域地震・地殻変動観測
2-1. 長期観測型海底地震計、広帯域海底地震計等による繰り返し地震観測、GPS/音響測位計、海底圧力計等による海底地殻変動観測を行い、陸上のテレメータデータとあわせることにより、海溝から陸域にかけてのプレート境界不均質及びプレート境界付近地殻活動を求める。茨城沖、日向灘、南海トラフ、日本海を実施対象地域とする。
2-2. 陸上の既設テレメータ地震観測網等の高度化と再配置を行ない、海底における地震・地殻変動の繰り返し観測と連携し、東南海地震、南海地震の震源域から定常的すべり域に至るプレート間カップリングの解明を進める。
2-3. 太平洋プレート沈み込み域、フィリピン海沈み込み域において、1981年以降20年以上にわたって蓄積された地震波形データから、繰り返し同一の場所で発生する地震群を抽出し、海域沈み込みプレート境界や内陸地域の非定常すべりを検出する。さらに、大地震を起こしうる大アスペリティとの関連性を調べ、その周辺の非定常すべりの時空間変化の検出を行う。
2-4. サブダクションゾーン陸側最先端である、えりも岬、石廊崎、御前崎、潮岬、室戸岬などにおいて、高精度絶対重力測定を、高頻度で繰り返す。地殻変動データとして、国土地理院のGPS観測を補う意味で、自ら差分干渉SAR解析をおこなう。また、解析の開発も進める。
3. 陸域プレート境界総合観測
3-1. 大都市大災害軽減化特別プロジェクトの一環として紀伊半島で大規模人工地震探査が行われる。この探査のショットを利用して、紀伊半島に別測線を設定し、沈み込むフィリピン海プレートの構造を調べる。特に、紀伊半島南部に東西の測線を設定し(測線長30-40キロメートル、観測点50-100)、プレートからの反射波を捉えることによって、巨大地震破壊域の陸側延長部にプレート構造とその不均質性を調べる。
3-2. 宮城沖で行われる海底地震観測と連携して、東北日本弧陸域部に観測点を展開し、太平洋プレートの陸域延長部の構造を明らかにする。測線をほぼ東西に設定し(測線長50-70キロメートル程度、観測点数 50-70)海域における人工地震を観測する。特に、プレート境界からの反射波に着目した解析を実施し同地域下のプレート構造の解明を目指す。
3-3. 紀伊半島に京大防災研を中心として約20点程度のGPS観測点を設置し、GEONETデータをあわせて逆解析することによりプレート面上のすべり特性・固着域分布を推定する。大地震の初期破壊または前兆的すべりは断層深部から開始することが多いことが知られているため、この領域のすべりの時空間特性を明らかにすることは地震発生予測において重要な知見とある。
3-4. 静岡県中西部及び愛知県東部の地域に約80点程度のGPS観測網を構築する。GEONET観測網とあわせ、数キロメートル程度の基線間隔が得られ、沈み込むフィリピン海プレート面上のすべり・固着の空間分布を高い空間分解能で推定することが可能となる。もし、現在進行中の浜名湖直下のスロースリップが今後も継続するとすれば、本観測によりすべり・固着分布の時間変化を明らかにする。
4. 精密地殻変動観測によるプレート境界動的特性の解明
 歪・傾斜の連続観測は横坑では10年以上、ボアホール観測でも7年以上の実績があり、10-9あるいはそれ以上の高分解能のデータが蓄積されている。これらの歪・傾斜データを現在国土地理院が展開しているGEONETなどのデータと併合解析することにより、スローイベントの検出しその特性を明らかにする。
(8) 実施機関の参加者氏名または部署等名:
他機関との共同研究の有無
1. 海域部総合観測
地震研究所 金沢敏彦・塩原肇・篠原雅尚・望月公廣・山田知朗
他機関との共同研究の有無:有
北海道大学大学院理学研究科(2名)、東北大学大学院理学研究科(2名)、千葉大学理学部(1名)、九州大学大学院理学研究院(1名)。
2. 海陸境界域地震・地殻変動観測
2-1. 地震、海底測地観測:地震研究所 金沢敏彦・塩原肇・篠原雅尚・望月公廣・山田知朗
他機関との共同研究の有無:有
東北大学大学院理学研究科(2名)
2-2. 既設テレメータ等の高度化:地震研究所 酒井慎一・卜部卓・佃為成・金沢敏彦・萩原弘子
他機関との共同研究の有無:無
2-3. 繰り返し地震:地震研究所 五十嵐俊博
他機関との共同研究の有無:無
2-4. 高精度絶対重力観測:地震研究所 大久保修平
他機関との共同研究の有無:無
3. 陸域プレート境界総合観測
3-1. 紀伊半島における人工地震観測:地震研究所 岩崎貴哉・平田直・飯高隆・蔵下英司
他機関との共同研究の有無:現在、名古屋大学、京都大学及びその他の機関との共同研究を検討中。
3-2. 宮城沖海底地震探査の陸上観測:地震研究所 岩崎貴哉・平田直・飯高隆・蔵下英司
他機関との共同研究の有無:現在、東北大学との共同研究を検討中。
3-3. 紀伊半島南部における地殻変動観測:地震研究所 加藤照之
他機関との共同研究の有無:有(京大防災研、約3名)
3-4. 東海地震想定震源域における地殻変動観測:地震研究所 加藤照之
他機関との共同研究の有無:有(GPS大学連合、約10名)
4. 精密地殻変動観測によるプレート境界動的特性の解明:
地震研究所 中尾茂・佐野 修
他機関との共同研究の有無:無
(9) 問い合わせ先
 部署等名:地震予知研究推進センター
 電話:03-5841-5712
 e-mail:
 URL:http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/index-j.html


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