地震火山部会 次期研究計画検討委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成25年5月29日(水曜日)13時30分~17時35分

2.場所

文部科学省16階 16F特別会議室

3.議題

  1. 次期研究計画の検討について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員)平田、藤井
(臨時委員)井口、今給黎、小泉、末廣、関口、仙石、仲西、橋田
(専門委員)市原、加藤、田村、西村、保立、宮澤

文部科学省

寺田地震・防災研究課長,鈴木防災科学技術推進室長、澄川地震・防災研究課長補佐、重野地震火山専門官、森田科学官、吉本学術調査官、安藤前地震火山専門官

5.議事録

[委員の出欠状況・交代,事務局の異動など]

  • 委員の出欠について:全員出席。
  • 委員の交代について:宇平幸一臨時委員に代わり,気象庁の橋田俊彦地震火山部長が臨時委員に就任。
  • 事務局の異動について:迫田健吉前地震・防災研究課課長補佐に代わり,澄川雄課長補佐が着任。
  • 配布資料について確認。

[議事1.次期研究計画の検討について]

【末廣主査】  本日の議題は,次期研究計画の検討そのものでして,一応「その他」というのを設けてありますが,ほとんどの時間は最初の部分に費やすことになると思います。
【重野地震火山専門官】  関連の資料に関して少し御紹介させていただきます。1月17日に科学技術・学術審議会において「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について」(建議)がまとめられておりまして,この抜粋を参考資料4としております。参考資料5に,この第7期総会,分科会,部会,委員会等において,建議の指摘事項を踏まえて具体的方策を検討するための基本方針として「我が国の研究開発力の抜本的強化のための基本方針」をお配りしています。
 この基本方針は,1.「若手,女性,外国人の積極的登用」,2.「研究の質及び生産性の向上,新規性の高い研究の推進」,それから3.「世界最高水準の運営や人材育成システムを目指した改革」の三つで構成されております。例えば,4ページ目の2の(6)では,「国民の信頼と相互理解を基にした政策形成」として,丸1国民の科学技術リテラシーやリスクリテラシーと,研究者等の社会リテラシーの双方の向上。丸2リスクコミュニケーションを推進するための効果的な科学技術コミュニケーションの在り方の検討。丸3科学技術は不確実性ゆえに答えが必ずしも一つに定まらず,またリスクを伴う場合もあることなど,その本質と限界を理解することを重視した科学リテラシー及び科学教育の見直し。丸4「社会の中の,社会のための科学技術」という認識を徹底した上で,研究者が常に倫理的な判断と行動を為し,国民の信頼を得ることができるよう,倫理教育を充実するなど,不正行為や研究費の不正使用を排し,研究活動の公正を確保。などの項目でできております。
 当委員会につきましては,具体的な所掌が決まっており,直接の作業は発生しませんが,策定された研究計画を基に研究を今後進めていく上で関連しているところもありますので,ごく簡単ですが,紹介させていただきました。それから議事録についてですが,前回4月15日に開催した第4回目の議事録については,少し作業が遅れておりますが,本日までに準備ができませんでしたので,委員の皆様には,後日,確認のメールを差し上げますので,よろしくお願いします。
【末廣主査】  はい。今の議事録の話は,案文は回っているということですよね。
【重野地震火山専門官】  今,案文が回っているのは第4回ではなくて第3回です。なので,今,作業中です。
【末廣主査】  それでは,議事にこれから入りたいと思います。次期研究計画の検討でありますが,初めに,前回からの経過などについて,事務局から説明をお願いします。
【重野地震火山専門官】  それでは,第4回の次期計画検討委員会以降について御説明します。まず,4月15日に第4回の委員会がありましたが,基本的認識や今後の展望など冊子に盛り込むべきこと及び冊子の構成等について議題になりました。また,研究の基本的方針及び実施内容骨子案に関しても御議論いただき,こちらに関しては主査にお預かりいただきました。また,「予知・予測」という言葉の考え及び使い方に関しても議題に上がっております。その後,4月17日に,15日の前回の委員会で欠席だった西村委員・田村委員と情報共有を図り,同時に御意見を伺っております。これらを踏まえて,実施機関宛てに次期計画で実施予定の内容等のアンケートを行っております。また,測地学分科会,地震火山部会,次期計画検討委員会の委員宛てにも,次期計画で実施すべき内容があればコメントを頂くように依頼しております。これらに関しては一昨日が締め切り日でしたのですが,現在,集計作業をしております。また,人文・社会科学系の関連機関にも御意見を頂いており,こちらは6月19日が回答期限になっておりまして,まだ先になっております。それから,前回の議論を踏まえまして,資料1になりますが,現状についての基本的認識や今後の展望等について,加藤・西村両主査代理から御提出いただいております。前回からの経緯は以上になります。
【末廣主査】  はい,ありがとうございました。ただいまの重野専門官からの説明ですが,何か委員の方で補足したいことありますか。よろしいですか。それでは,その資料1でございますが,「一.現状認識と今後の方針(案)」について。前回は資料1から3に分けて出したと思いますが,皆様の御意見を反映させつつ,構成を含めて大幅に修正がありますので,加藤主査代理にその資料1に関して説明をお願いしたいと思います。
【加藤主査代理】  それでは,資料1について説明したいと思います。これは,前回の案から皆様の御意見を頂きまして,西村主査代理と私と,あと末廣主査にも何度か相談させていただいてまとめたものです。前回は,現在の現行建議の書き方を踏襲した同じような形式で書いてみましたが,いろいろ議論した結果,それから皆様の意見も参考にして,「一.現状認識と今後の方針(案)」という形でまとめました。これは,先週の末にメーリングリストにお送りしたものと同じものです。前回は文章の形式にしましたが,今後また皆様からの御意見を参考にして,また順番等も入れ替えがあるだろうと思いましたので,文章にせずに箇条書きにして示しています。
 最初ですが,「一.現状認識」として,一般的な,日本では地震や火山噴火による災害が多いという背景を簡単に記述して,その後すぐに,東北地方太平洋沖地震によってこれまでの計画をそのまま続けるのは適切ではないという,そういった考えについて述べています。その後,ページをめくっていただくと,(地震・噴火予知研究のこれまでの経緯)ということで,これまでの計画で,どういったことを,どういった考えに基づいて,どういったことをしてきたかを簡単にまとめています。その後,(今後につながる成果)として,今後,この計画が地震や火山噴火による災害を軽減することを目指すために,これまで得られた成果の中でどういったものが使えるか,どういったものが利用できるかについてをまとめています。
その後に「2.今後の方針」ということで,今後,どういった考えに基づいてこの研究計画を進めていくかについてまとめています。これは,東日本大震災,東北地方太平洋沖地震のときに,研究計画にどういった問題点があるかであるとか,外部評価で指摘されたこと,これに答えるように書いたつもりです。重要なことは,地震や火山噴火の発生を予知・予測するという研究は,これは当然大事である。それだけではなくて,これまで予知研究を進めたことによって,地震・火山に関する様々な知見が得られたわけで,今の現時点でもそれは防災・減災のための研究に利用されているわけです。そういったものをもっと意識的にやっていこうということを書いています。それから,低頻度大規模地震・火山噴火の研究をするためには,地球科学的な研究だけでは十分ではないですから,それから防災・減災に地震学・火山学の知見を生かすためにも,我々の知見だけでは十分ではないですから,関連研究分野との連携を重視するということが書かれています。そういったことに基づいて四つの柱,これはもう既に提示したものですが,「地震・火山現象の解明のための研究」,「地震発生・火山噴火予測のための研究」,「地震発生・火山噴火による災害誘因の予測のための研究」,「体制の整備」。この「体制の整備」という言葉については,御意見がありましたから,今後,変えるかもしれませんが,この四つの柱で研究を進めていくということを記述しています。
【末廣主査】  皆様方にはメールで先週末ですから,要するに数日前ということになるかと思います。皆さんお忙しい身でいらっしゃいますので,必ずしもゆっくり目を通す時間があったかどうか分かりませんので,ゆっくり時間をかけて議論を進めたいと思います。今から全くある意味フリーディスカッションなのですが,せっかく加藤委員の方から概略説明がありましたので,大きな流れのところは伝わったのではないかと思います。ですから,まずその辺りからスタートしようかと思います。まずは,並びですね。「現状認識と今後の方針」(案),1の「現状認識」,2の「今後の方針」のそれぞれの項目立て,更にその中のものの文章の流れといったものは,皆様のお考えに照らして,なるほど妥当だとお考えなのか。これはこうした方が良いのではないか,あるいは,こういう重要なポイント,指摘すべきポイントが抜けているのではないかと,少し大づかみなところからもし御意見があればお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。もししっかり読み直したいということでしたら,読むことも可能かと思います。読んだ方が良いですか。うなずいている人が数名。重野専門官,読んでくださる?
【重野地震火山専門官】  はい。それでは,事務局から読み上げます。
( 読み上げ ) 資料1 「一.現状認識と今後の方針(案)」を参照。
【末廣主査】  どうも,突然お願いして済みませんでした。ありがとうございました。というわけで,これが皆様にすんなりに腑(ふ)に落ちる流れになっているかどうか,という点からまずお伺いしたいと思いますが,いかがでしょう。
【関口臨時委員】  済みません,非常に形式的なことで申し訳ないのですが,2ページの(今後につながる成果)から3ページのところについてなのですけど,3ページで段落が小さいポチで3個ありますが,それは,この上の大きい丸の段落とどのようなつながりがあるのでしょうか。見て少し分からなかったので,教えてください。
【加藤主査代理】  済みません。この2ページの一番下の丸を少し具体的に説明したものがこの三つの中黒以下の文章だと考えてください。よろしいでしょうか。
【関口臨時委員】  分かりました。少し中身的にすんなりといかなかったもので,何だったのだろうなと。
【末廣主査】  最初のうちにとにかく大枠のところをやってしまいたいというか,議論をしっかりしておきたいと思います。いろいろ細かい点がおありになるだろうことは,容易に察することができますので,それもしっかりやりますが,まずはこの大きな構成ですね,これは5年前に出したものと構成の順序が違うわけですので,その点も含めてお伺いしたいと思います。
【橋田臨時委員】  感想のようなことも含めてお話をしたいと思います。前回と比較しまして,今回,「現状認識」と「今後の方針」と大きく二つに分けられた。前回,「方針」とかというのが何度も出てきて,流れがどうなっているかよく分からなかったということから言いますと,非常にすっきり理解をしやすいなというような印象は持っております。現状の認識,それから今後の方針も,「今後の方針」の中で,前回深く議論しました研究の内容について位置付けられている。全体が非常によく構成されているなという印象を持ちました。
 現状の認識のところについて,東日本大震災,それから外部評価,これまでの経緯,今後につながる成果と,こういう流れで来ているのですけど,最初には若干違和感を覚えました。それは,クロノロジーのように書かなくていいのかなという,その固定観念がありまして,これまでの経緯のようなものが先に書かれるのではないかとも思ったのです。だが,今,読み上げていただくのを聞いて,これだけ概略的に書かれると非常に良い流れになっているのではないかと逆に思いました。外部評価を踏まえて,40年以上にわたる計画の見直しが必要ということで,これまでの経緯に入っていくというのは,まあ良い流れかなと思うのです。しかし,問題は,これを膨らましたときに全体の流れがぼやけてくるのではないか。そこは概要のようなものでうまく流れを分かるようにしていく工夫が,この順番であっても必要なのではないかなというような印象を受けました。
 「2.今後の方針」は別としまして,その前の「1.現状認識」の中のこれまでの経緯と,それから今後につながる成果をざっと拝見させていただいた印象なのですが,(これまでの経緯)のところと(今後につながる成果),両方とも,地震と火山の記述のバランスが悪いなという印象を受けました。(これまでの経緯)を見ると,地震の方はいきなり,何とかしていないというように否定的に書いている。(これまでの経緯)だけを読むと,地震は全然なっていないなという印象を受けるのですね。一方で,火山は,最後にはいろいろ進んでいないとは書きつつも,それなりにやってきたな,ということがしっかり書かれているような気もします。そういう意味で,(これまでの経緯)の中の表現の問題かもしれませんが,第2パラグラフの丸で,例えば短期予知に成功していないと言っているが,現実にこれまで研究を通してあった成果のようなものを書いてほしいなというように思ったのです。他方で,(今後につながる成果)のところを見ますと地震のことを一生懸命書いてくれているのですが,火山が何と1パラグラフで3行しか書いてないみたいなところがございまして,そこはうまく配置して書いた方が良いのではないかなというようなことです。最後はやや細かい話になりましたが,全体の構成についての感想のようなことです。
【末廣主査】  はい,どうもありがとうございました。他にいかがでしょう。はい,どうぞ,井口委員。
【井口臨時委員】  「現状認識」の中の(地震・噴火予知研究のこれまでの経緯)のところに,地震予知研究と火山噴火予知研究が統合されたことが入らないのですかね。これ,今までのばらばらのものをそのまま書いているのですが,これまでの経緯だと統合されたことが当然入るべきだと思います。それから,そこのところで地震の方は,こういう計画,こうこうこうといって書いてあって,個別のことについてどうのこうのということは書いてないのです。火山の方だけ,要するに三宅島や新燃岳のことを書いてみたり,そういうことが書きたいのであれば,これはむしろ1ページ目の2011年の東北地方太平洋沖地震の後のところに火山噴火について書くべきだろうと思いますが,どうでしょうか。
【加藤主査代理】  一つだけ,統合についてですが,書く位置が悪かったのかもしれないですが,(今後につながる成果)の最後のところに書いてあります。位置が悪かったかもしれませんが……。
【井口臨時委員】  いやいや,だけど,要するに統合したのは現計画なので,つまり,(これまでの経緯)のところに統合したということがあってしかるべきだろうということなのですが。
【末廣主査】  はい,至極妥当な御指摘だと思いますが。それでは,これは改訂版に反映させるということで。あと,先ほどの橋田委員等の御発言にも関わると思いますが,地震と火山のバランスというのはもう少し上手に書くことは,多分,皆様のサポートがあればできると思います。それも多分これから鋭意分かりやすくすることは,バランスをとれるように変えるというのはよろしいかと思います。他に御指摘ありましょうか。
【平田委員】  少し各論的なことですが,まず1ページ目の東北地方太平洋沖地震のところで,問題点をまとめると言って四つにまとめられています。これは,見直しの建議の多分2ページ目の(超巨大地震を予測できなかった理由)というところのある意味まとめだと思うのですが,ここで議論したことで,もちろんここに書かれていることは見直し建議にも書かれてありますが,書かれてないことがあります。それは何かというと,その2ページの下から二,三行のところに,「このように,単純なアスペリティモデルにとらわれすぎていたこと」というのは,これがここにある特定のモデルに固執したということです。あと,「海溝軸付近のプレート境界に関する知見が不足していたこと」,つまり,これは観測網が海になかったということです。そのことがここには書かれていませんので,これはこの見直し建議をするときの認識では,確かにあったと私は理解していますので,是非書いていただきたいと思います。それを書く理由は,ここの(今後につながる成果)のところでは,海底の地殻変動の観測とかということが出ていますので,実際にはそれに基づいて研究が進行していましたので,最初のところでも書くべきだと思います。
 もう一つ申し上げるのは,(これまでの経緯)とか(今後につながる成果)のところで,例えば今の(今後につながる成果)で,2ページの下から2つ目の丸のところで,「地震の発生機構,断層モデル,地震波伝播過程等の研究が進展し」と書いてあり,これは事実かもしれません。しかし,地震発生機構の研究が進展したというのは少し余りにも一般的過ぎます。それで,この近年の地震の予知の研究の中で一番重要な科学的な成果は,プレート境界の固着と滑りの多様性が,観測的・理論的に解明されたということです。つまり,ゆっくり滑りであるとか低周波微動であるとかということが,日本の観測網によって発見されて,それが理論的に裏付けられて全世界の沈み込み帯の研究に大きな影響を与えたということです。これが当事者の評価でも書いてあるし,それから外部評価でもその点については高く評価されていることですので,それは一言で言えば,地震発生機構,断層モデルかもしれませんが,もう少し具体的に書いていただいた方がよろしいかと思います。
【田村専門委員】  すごく分かりやすくなって,意味がすごく通って,文章的にはすごくいいなというふうに全体的には思いました。全体の構造の中で少しよく分からないのですけれど,まず3ページの「2.今後の方針」の(A),(B),(C),(D)というのがありますよね。それが,まず見ると,(A)は実用科学として,(B)は低頻度,(C)が優先順位,(D)が歴史学なんかと連携するということだと思うのですが,それと次の4ページの(研究内容),(1),(2),(3),(4)というのとの対応関係がよく分からないということがあります。(1)については,歴史学や地震学と書いてあるので,前に書いてある(D)をやるのかなというふうに読めます。(2)については,予測というようなことを考えるのだというので,これは(B)をやるという,低頻度にも着目してやるということなのかなと思いながらも,中身は少し対応していないかなということです。(3)は,(A)と(C)を両方ともここに入れ込んでいるようにも見えます。いきなり(D)で体制というのは,(基本的考え方)に出てこなかったのだけど,急に出てきたというような感じがするということになります。これに基づいてその前のことを言うと,実はこの1ページの最初の課題のところで,(2011年東北地方太平洋沖地震)の先ほど御指摘のあった四つのポチなのですけど,上の三つというのは巨大地震に着目していなかったということと,歴史地震なんかと連携してなかったという(D)と(B)のことがこの1ポツ目,2ポツ目,3ポツ目で書かれていて,4ポツ目に(C)と(A)のことを書かれているのかなというような格好になります。要は,何が問題であったと仰って,それから基本的な考え方を示して,何をやりますという対応関係が明確についてないところが一番気になるところかなと思います。そこさえ整理すれば分かりやすくなるのではないでしょうかということです。
【井口臨時委員】  よろしいですか。今,田村委員が言われたことに関連して,私もそこのところで一つよく分からなかったのは,(C)の「研究に優先度をつけて実施する」というところです。要するに,これは当たり前のことで,けれども,その前に(C)をあえてここのところに出してくる根拠がその前の文章にないのですよ。こんなものは当たり前ではないかと思うだけのことですね。
【田村専門委員】  用語論ではないですが,私はすごくこの優先度というのはいいなと思います。社会要請に応えて,研究したいことももちろん,研究しなければならないこと,研究したいことも優先度として挙げて,おまけに社会的要請というのも挙げて,その中で何をするかというのを決めますということかなというふうに受け取ったのです。文章の内容を熟読するとつながっているなというふうには思いましたが,井口委員の仰るとおり,少し見た感じでは分かりにくくなっています。
【井口臨時委員】  私が読んだ印象だと,要するにこれが少し浮いているような気がしました。それは(A)とか,特に(D)とかというようなところになってくると,その前にやはりこう考える根拠をずっと挙げて論理展開してきているのだが,これだけ少し浮いているような気がするのですよね。
【末廣主査】  はい,分かります。それで,田村委員が言われたような趣旨が,このままだと多分読み取れない,簡単には読めないという書き方になっているのだろうと思いますが,今の件に関して他に御意見ありますか。はい,平田委員。
【平田委員】  私も皆さんの意見に賛成なのです。ただ,前に書かれた最初の案に比べてここは良くなっているのは,田村委員が御指摘のとおり,心としては1ページの中で東北地方太平洋沖地震のときに問題になったことを,外部評価で指摘されたことを受けて今後の方針を決めたということになっていることです。一応,材料はそれなりにそろってきたので,もう少し整理すればいいかと思います。もう一つは,仰るとおり,ここの3ページのところで他とは違う表記法で(A),(B),(C),(D)と書いてあるのは少し異質という気もします。けれども,ここで考えをまとめて最終的に4ページ,5ページのところで計画を具体的に整理するという,そういう構造になりつつあるので,もう少し整理は必要だと思いますが,収束する方向には行っているという気がいたします。
【小泉臨時委員】  ほとんど田村委員に言われてしまったような気がするので,ポイントを絞って話をします。つまり全体として,私もこの文章は非常にいいかなというふうに思いました。しかし,仰られたように,最初の方で結局,東北地方太平洋沖地震の反省が四つ述べられていて,それから外部評価にこういうことが書かれていてというのを挙げた以上は,これに対応する言葉がないと多分説明ができないでしょうということだろうと思います。
それで,私が気になったのは,今,田村委員も仰いましたが,四つ目ですね,「行政機関と協力して地震や火山の研究成果を防災や減災に役立てることを十分に考慮した研究計画になっていなかった」ということに対する答えがよく見えていないということです。私は,歴史学とか防災学,社会科学へ成果を提供するからというのが答えになるのかなと思います。でも,(D)と(A)を別々に書いてあるので,これはうまく対応してないなという気がしました。
それと,また似たようなことですが,(外部評価)のところで,これが多分一番引っかかるというか,一番上ですね,「国民の命を守る実用科学としての地震・火山研究の推進」という,この実用科学という言葉をどう答えるかということなのです。今までのところ,社会学も歴史学も理学に入れさせていただくとすると,この研究計画は「地震・火山災害軽減のための理学的研究計画」というのが,最終的にそういう名前にするかどうかは別として,今のところ内容を表していると思うのですよね。理学と実用科学というのは結構難しいところがあって,あまり強調すると,「それ,違うよ。お前たちは理学のくせに,何,実用と言っているのだ」と言われる可能性もあります。そこのところの回答をうまく用意する必要があって,その部分がやはりまだできていないなと思います。ここをうまく回答しないと,つまり,(東北地方太平洋沖地震)とこの(外部評価)に対してこう答えました,ということを出せないと,なかなか今後の理解が難しいかなという気がしました。ほとんど田村委員が仰ったことをなぞっているだけですが,私はこういうふうに感じたということです。
【保立専門委員】  実用性とか実用科学という言葉についてどう考えるかというのは,大きいかと私も思いました。法学ですと実用法学というふうに言いますと,要するに法廷で使用する実用法学という形で言うわけであります。実用科学と言われる場合には,つまり地震の予知や減災のために直接な担当機関,つまり一般には行政が利用する科学の在り方と,できる限りそこまで学術を具体化していくという意味で使われるのだろうと一般的には思います。ですから,予測研究イコール実用科学というわけではないだろうと考えまして,そこら辺の整理がやはりなかなか難しい問題であると思いました。
学術的な用語としては,やはり基礎研究と応用研究,そして融合的ないし文理融合的ないし学際研究という形でまとめられて,地震の理学的な研究がそういう裾野を持っているという形で展開されるのがやはりオーソドックスなのではないかと思います。ですから,その全体の結果として実用科学ないし実用性を学術として支援し,担保するという形の構成になるのではないかと思います。より具体的に言いますと,予測研究というのは,やはり基礎研究を踏まえた応用研究になるのではないかと思います。防災研究は,学術行政的な言い方ですと,社会技術研究という言い方がありましたが,社会技術研究を支える社会科学全体との融合的な研究と防災研究は,やはり学際的・融合的研究ということになるのではないかと思います。
歴史学などは,それらの中心的諸学の専ら下支えの下の方の地下に存在する学問であります。これは資料を提供するとともに,この地震列島,火山列島における日本の歴史と文化を,より文化的・歴史的に国民に説明申し上げるというような下支えの下の方の役割だと思います。つまり,その中枢部の学術が実用性を持つということと,学術はやはり基礎研究が重要であって,どのような手順で社会に結び付いていくかということの議論の立て方というのが一番やはり難しいと思います。ですから,3ページ目の一番下の(基本的考え方)のところに確かに全て問題が出てきて,非常にはっきりしてきていると思いましたが,そこはやはり難しいのだろうなという感想を持ちました。
【末廣主査】  実用科学という言葉は外部評価の方から言われたことですが,真摯に捉えてと,前にはそんな言い方を工夫したときもあったと思います。この委員会ではそれを真摯に捉えてこの表現に取り込もうとしているわけですが,確かに重要なポイントですので,もう少し議論したいと思います。森田科学官。
【森田科学官】  お手元の資料の外部評価報告書,青い表紙のものです。今紹介された案の(外部評価)のポツで「国民の命を守る実用科学としての地震・火山研究の推進」うんぬんというような,そういう項目で書かれているのは4ページの二つ目の丸のところでまとめとして書かれております。「国民の命を守る実用科学としての地震・火山研究の推進」という,その中身は一体何かということは,7ページ目の「3.今後の計画の在り方に関する意見・提言」,(1)「地震及び火山噴火予知のための研究の考え方」の一つ目の丸,「過去数十年にわたり観測研究が継続されてきたにも関わらず,社会が期待する防災・減災への貢献に十分応えるための地震発生や火山噴火予測が未だ実現していないことは,今後の研究の進め方に大幅な見直しが必要であることを示している。地震発生や火山噴火予測実現までの道のりが遠いことを直視し,今後は,どのような観測データ,どのような実験的・理論的研究が必要であるかを整理し,どのような課題を解明すれば,予測ができる段階に近づけるかを明確にする必要がある」という記述があります。実用科学としての地震・火山の研究というのは,一つにはこういうふうに,やはり真剣に予知・予測をせよということが外部評価で言われていたと私は思います。
 それで,今回の案でも,先ほどから議論になっています「今後の方針」,(基本的考え方),3ページ目ですが,(A),(B),(C)とあって,やはり実用科学としての地震・火山の研究の推進というのは,この委員会あるいは測地学分科会で,これをどう解釈するかというのが一番やはりポイントだと思うのですよね。それで,多分これは加藤委員,西村委員の方で,こういった外部評価を受けて,この実用科学,ここの下の方にある「実用科学の要請を強く意識して」と書いてあるところが実用科学に対する答えだろうと思います。その答えは,やはりまず予測をするということです。「加えて,予知の防災・減災に対する貢献には限界があることから,最先端の科学的知見の中で,強震動や津波,火山噴出物などの災害を起こす現象の即時予測を含めた予測研究を推進し,貢献する」ということです。この二つが実用科学というふうにここで答えていると私は理解しておりました。
【末廣主査】  ここの今御指摘いただいたところと私も思いますが,今改めて読むと,日本語が何か少しすっと入らないなという感じはします。そういったことは追々直すとして,今,実用科学というのがキーワードとして議論になっていますが,他にいかがでしょうか。
【今給黎臨時委員】  科学の部分は,今の実用科学の議論,少し中座して申し訳なかったのですが,非常に重要なところだと思います。メーリングリストに1回投げたところで少しそれに関連したところがあるので,少し発言させていただきたいのです。今ちょうど皆さん,この外部評価の報告書を見ていただいたところで,私のメーリングリストで指摘したところもあるので確認していただきたいのです。要するに,計画の抜本的な見直しが必要であるという言い方は当然この外部評価はしているわけです。そこの中では単に計画の中身だけではなくて,組織,体制,運営方法などの改善というようなことがわざわざ繰り返して出てきているのですよね。ですから,研究の中身だけではなくて,それをいかに実用につなげるかというところのインターフェースの部分がやはり言われているのではないかと思います。今回の提示された案は,一応そのことについて意識されて,いわゆる実用科学という立場で,とにかく実際に防災・減災に貢献するところを研究の中身としてやるのだということは書いてあるのです。しかし,それを実現するための体制についてや運営方法については,「2.今後の方針」の中で,体制の整備のところで辛うじて「計画の進捗状況を把握して研究を効果的に推進する体制を構築する」と書いてあるところだけなのですよね。これがもう少し何か具体的なものはないのだろうかということです。これだけのページに対してこの1行だけなのかという,そういうようなところが少し気になったというのが私の意見でございます。
【末廣主査】  はい,ありがとうございます。ただいま今給黎委員の御発言に何か関連して御意見をお願いします。橋田委員。
【橋田臨時委員】  メーリングリストで,そもそも外部評価でどのようなことを言われているか,ということを少し議論されているので,私ももう一度,外部評価を読み込ませていただきました。その体制の問題とか研究の中身の問題ということ,それは大きい柱ではあるのですが,通常,こういうレビューを受けて,1ページの外部評価の七つのポツみたいなものもありますし,それ以外にも具体的に今後の在り方に関する意見・提言というものがなされているわけです。なので,真摯に丁寧に対応するということからいえば,ここに書かれている全てのことに対してどう対応するかという,ある意味,星取り表を一つ一つ作っていくという作業をするのが通常なのですが,そういうことはやられているかどうかというのはすごく気になりました。一つ一つ表を作って,これに対してどう対応するのだということを細かく全部詰めないと,それは丁寧な対応とは言わないのですが,もう既にやられているのだろうなと思っていたのですけど,やっているかどうか,よく分からなくなって……。
そのメーリングリストの議論を聞いてかえって不安になったのですが,例えば大所としての4ページで,ロードマップの提示みたいな話があります。ロードマップの提示に対して何を答えているのだろうかとか。,外部評価の報告書の7ページあたりから順番にいくと,何とかする必要があるとか,必要がある,検討すべきである,配慮すべきである,設定すべきである,進めるべきである,研究を推進する必要がある,いろいろと書かれている。真面目に読むと,一見,相反するようなことを言われているので,まとめる事務局も相当大変だったと思うのですが,それ一つ一つに対して,あるいは9ページに至っては実施体制の在り方,今,今給黎委員が仰ったのかもしれませんが,そういうことも含めて再構築する必要があるとある。そのことに対して我々何をやったのですかということが,なぜ表がないのだろうかとかえって不安になり,また,気になりました。それをやらずして,このレビューを受けて真面目に対応したとこの委員会は言えないのではないか,少しラジカルな言い方で申し訳ないのですが,そういうことでございます。
 それから,実用化に関して言えば,大局的には直接的に確度の高い予知をすることは難しいとありますが,そう言わないで,可能性がある限り一定の確度で予知を目指す研究を行うと言ってほしいのです。では実用化に一気に向かうのかという,その全体のかじ取りですね。先ほどの森田科学官が仰った,ここに集約されているという,今日の文章の3ページのところにあるのですが,いろいろこれまでの研究者の意見を聞いてみますと,結局,予知をやっても,実用化は難しいということです。当面難しいので,それを一生懸命やったら責任を自らに受けてしまうというような,そういう責任感を感じるととてもやれないみたいなことを仰る方もいらっしゃるのですよね。一方で,予知ということに対する要請,これはあるので,これは真面目に答えなければならないというのがある中で,実用化,実用化ということに非常に反発を持つ,良い意味で反発を持って気骨のある研究者もいるところを,どう参画していただくような書きぶりにするのか。書きぶりだけではなくて,そういう体制にしていくのかということが非常に重要なのではないかということです。何を言っているか段々分からなくなってしまいました。そういう意味で,研究者がどこまでできるのか。どこから先はある意味責任とりませんよという言い方は変なのですが,そこはもう応用科学としての部分とは少し,何ていうのでしょうかね,責任の分界というのでしょうか,責任の軽減というのでしょうか,何かそういうことをうまく書き込めるといいな,分かっていただくといいなというような印象を持っております。済みません,後半,もう一度,考え直してうまく言いたいと思います。
【平田委員】  外部評価に対するどのような対応をするかというのは,この次期検討委員会の所掌ではなくて,その上の外部評価を受けた地震火山部会です。地震火山部会ではその議論はしました。それで,イメージされている星取り表とは違うものかもしれませんが,そういう資料は出て,検討しております。この検討委員会がそれを引き受けてやるものではないと私は思っております。それが一つです。
 それから,実用科学については非常に強く指摘されておりますので,ここでも,次期の計画を立てる上で実用科学というのはこの委員会はどのようなスタンスでいくかということを決める必要があると思います。それで,外部評価の資料のところで,今,青い表紙の冊子の7ページを科学官が紹介されましたが,7ページの3の(1)の最初の丸ですよね。もう一つは,7ページの下から2番目の丸のところで,「学術的意義のある観測研究は科学的には重要であるが,本計画の本来の目的は,『国民の命を守る実用科学』の推進であること」であると。つまり,いわゆる地震・火山噴火予知の計画は,最終的にはこの実用科学の一部であるとここでは書かれているわけです。ですから,本当の意味では,「防災・減災に貢献する実用科学」とここにはっきり書かれてあるとおり,予知ができることだけが実用科学を目指しているわけではありません。ここでは,例え狭い意味の予知が実現できなくても,防災・減災に貢献する科学を目指せというのが,この外部評価が言っていることとも考えられます。
 もう一つは,そこで,今,加藤委員が説明された資料1の1ページ目で,東北地方太平洋沖地震のところのまとめで,「行政機関等と協力して地震や火山の研究成果を防災や減災に役立てることを十分に考慮した研究計画になっていなかった」という反省を踏まえて,次の計画は当然,出口として,行政機関等と協力してうんぬんというところは生かすべきだと思います。仰っているとおり,このことを実現する次の計画の項目は,5ページの(4)のところでもっと明確に書く必要があって,ここでは,今給黎委員が御発言されたように,計画の進捗状況を把握して研究を効率的に推進する体制を構築するということも当然必要です。もう一つ重要なことは,この1ページ目で反省したことで,行政機関等にこの研究の成果が着実にアウトプット,インプットされるというか,出口として連携できるということも必要だと私は思います。なので,実用化を意識するということである以上は,この体制の整備のところに,いわゆる防災関連の業務機関との連携というのを明確に書く必要があり,多分この(4)の具体のところには書いてあるのですが,この方針のところにももう少しはっきり書く必要があるのかなと思いました。
【末廣主査】  ありがとうございました。ですから,私はこれまでの皆様の議論を伺っていて思うのは,やはり今ここで策定しようとしている計画については,防災・減災を強く意識して見直すことが,外部評価に言われている実用科学としての存在意義を訴えるということにつながるということなのです。ここは非常に重要なポイントですので,そういう理解でいいのか,いや,そうではないのだという御意見があるのか,その辺り,確かめておきたいのですが,いかがでしょう。防災・減災,今,平田委員が読み上げた外部評価報告書にそのものが書いてあるのですが,それをしっかりと受け止めて,そういう方針でいくのだということがこの前段の資料1の中にきれいに読めるようにしたいということだと思うのですが,そういうことでよろしいですか。
【保立専門委員】  そういう意味での目的性と言いますか,研究内容の目的性が実用科学と呼ばれる主要な内容をなすことは,そのとおりだと思うのです。ただ,形態と言いますか,スタイルと言いますか,実用科学として社会的なり行政的に実用化できるような形態を学問の応用研究に与える,というスタイルの問題があると思うのです。その場合には,体制という場合にはやはりシミュレーションですとかコンピューターデータですとか,誰が見ても,行政が見ても,確実な成果を実用できるスタイルに科学の内容をしていくこと,これがある意味では重要なのではないかと私は思いました。
 ですから,実用科学ということの形態になりますが,私,歴史学ですので,この間,勉強して,『東日本大震災の科学』という東京大学出版会から出た本の勉強をしましたが,やはりコンピューターのシミュレーションとデータとGIS等々によって非常に見やすく全体がなっているわけです。これによって,直接に社会や行政が実用性を持てる形での提供のスタイルというのが,相当蓄積されてきているように感じました。そういう側面についても,地震学の方がここまで蓄積されてきたわけですから,言っていいのではないかと感じました。
 先ほど,迂遠(うえん)なことを申すようですが,実用法学という言葉について説明をいたしましたが,実用法学の基礎になるのはいわゆる法解釈学になるわけです。法解釈学が実用法学,つまり法廷における実務を支える形で基礎研究として存在しているわけですが,現在では法学においても,要するに全てコンピューター化して法解釈学と実用法学を非常にうまくつなげる方向に,どこでもなっているわけであります。そういう意味でのシステム的な体制という,コンピューターシステムの上での体制も非常に重要ではないかと思いましたので,少し脇からの意見ですが,申し上げました。
【末廣主査】  僕なんかとても思いつきもできないような内容の御意見を頂き,感謝いたします。
【平田委員】  今みたいな高尚な話ではなくて,非常に即物的なのですが,防災・減災に役に立てるような地震あるいは火山の知識というのは,実は太平洋プレートが何センチで動いてきて地震がどうやって起きるということではないのです。地面がどう揺れるか,津波がどのぐらいの高さでいつ来るか,何分後に来るのかとか,そういうことが結局,防災には非常に役に立つわけです。これまで地震予知研究計画,火山噴火予知研究計画というのは,火山は少し違いますが,特に地震の場合には,地震がいつどこで起きるかということを明確に予測する,そういうことを目指していたわけです。しかし,実際には,防災をするためには太平洋の沖合150キロメートル,深さ20キロメートルのところで岩石を破壊するのではなくて,東京が震度幾つで揺れるかと,そういうことが防災にやはり役に立つわけです。それを研究として充実するのがこの次期計画の(研究内容)の(3)というところで,「災害誘因の予測のための研究」という大きな柱にしたわけです。これは,アウトプットは,学術として災害要因,いわゆるハザードですね。ハザードの予測をするだけではなくて,その成果を防災関連の機関,行政機関も含めて,に提供できるような形で整理する,そこまでこの研究がやるということです。このときには,いわゆる地震予知の――地震だけ言いますけど,地震予知の実用化,3要素ができなくても,防災・減災には役に立つ知識があるのであるから,これについては実用科学の一部を担うことを目指すという,そういうことでこの(3)というのが立てられたわけです。これは,これまでの地震予知計画,それから新地震予知研究計画を含めて,明確にこのようにしたことはありませんので,これは大きく方向を変えたことになると私は思っております。つまり,(3)の項目を大きな柱立てにする理由は,縷々(るる)ここで東北地方太平洋沖地震の反省と外部評価で指摘されたことなどを踏まえて,この(3)が出てきているというふうに私は理解しております。実は,これがここでのコンセンサスになっていく必要があると思います。
【小泉臨時委員】  今の平田委員の意見には賛成なのですけれど,そうなったときに,それを地震予知と呼ぶというと,やはりそれは、地震学コミュニティ-内からかなり異論が出るだろうと私は思います。今ここで話すべきことではないかもしれませんが,いずれ(地震学コミュニティーとのすりあわせは)しなければいけないことです。平田委員自身が言われたように,今まで3要素(地震発生場所・規模・時間)を推定するのを「地震予知」だと言ってきたのに,それと違うことを「地震予知」と言うと地震学コミュニティーからかなり異論が出るでしょう。だから,そのことは頭の中に入れておく必要があると思います。
【末廣主査】  今日の議論は,まず,ここに書いてあるコンテンツに関して,最初はしっかりと漏れなきように皆様の思いのたけを語っていただいて,その後で,それならばこの計画の名前にふさわしいのはどのようなものかを伺おうと思っていますので,そのときにまたお願いします。
【井口臨時委員】  コメントです。多分,「国民の命を守る実用科学としての地震・火山研究の推進」というところですが,やはり火山噴火予知の研究においては,元々は国民の命を守る実用科学は,要するに噴火発生予測そのものが避難のために必要なのです。そのため,それ自体が国民の命を守る実用科学であったのです,過去。だから,それを継続してきているという認識です。私は,火山については。
【平田委員】  いや,地震だってそうです。地震だってそうですが,だけど,それだけではありません。つまり,地震の場合には,はっきり言って,予知できたり,できなかったりすることは将来もあるだろうと思います。だが,地震がいつ起きるかを,ある程度の確度で起きることが絶対にできないわけではないのか。それは努力することがあって,それは中心的な課題だが,それができなかったら何もできない,実用科学にならないというわけではないように,計画全体を幅広にしたいというのが私の意見です。
【井口臨時委員】  いや,それは私も賛成します。入れる,幅広にとるということは全く問題ではないのですが,そうであるべきだと思いますし,ただ本質は,要するに平田委員も言われたように,正に予測そのものをもって,国民の命を守るというのが趣旨であるということだと思います。
【平田委員】  そのとおりです。ですから,先ほど注意深く言ったのは,いわゆる地震予知の3要素と言って,「いわゆる」を付けましたから,それについては,今後もう少し別に主題的に議論した方が良いと思います。保立委員の御意見もあると思いますので,議論したいと思います。
【橋田臨時委員】  先ほど平田委員が仰っていた実用科学としての地震動とか,いろいろあるという話をしていました。気象庁の中でもいろいろ話をしていますと,先ほど,ゆっくり滑りとかが分かったことは,非常に重要なことだという話があって,それはそれで是非きちんと書き込んでいただきたいと思うのです。地震がどのように起こるかということを岩石実験やモデル実験を含めてやっていますと,何か動き出してきて,段々破壊,ゆっくり滑り,いろんなパターンがあると思います。破壊が段々スピードが進み,いわゆる地震が発生し,地震動が伝わり,津波も発生し,というような全体のプロセスの中で,私たちは,例えば緊急地震速報であれば,最初の立ち上がりを踏まえて早く情報を伝えようという努力をしてきたし,地震が起こった後に津波が起こることがあるので,それを踏まえて情報を出そうとしている。気象庁なんかそういうことをやってきているわけです。さらに,ゆっくり滑りとか前駆滑りというようなもの,不確実であるかもしれないが,何らかのシグナルを捉えて,何らかの情報を出そうとする努力をしている。そういう意味で,地震の準備段階から終了する――終了するって,どう言ったら分かるか難しいですけど,サイクルまで考えるといつ終わるか分かりませんが,そういう全プロセスを解明していただきたいわけです。そういう全プロセスの中で,具体的にどのような応用・実用化をすれば社会の役に立っていくか,ということを一つ一つ掘り出してきて実用化につなげていくことを今までもやってきたし,今後もそういうことをやるべきです。そのために,地震であれば地震現象全てを解明するための研究であり,それを使って,このときはこんなことを言えますね,このときはこういう技術をもう一歩絡ませれば,ITを絡ませれば緊急地震速報になりますねとか,そういうヒントになるようなところまでやっていただくだけでも,僕はすごい成果なのだろうと思うのです。そこを,一緒に情報を出して発信するところまでいろいろ実験していただいても結構だと思うのです。そこの辺りまで来ると,行政とどううまくつながっていくか,連携していくか,そういう減災・防災に役立つ出口のところまで,それから現象を解明する,地震の現象そのもの全体を解明することのそれぞれとの対比をしっかりとつける,というようなことをその都度やるべきで,研究の中でそういうことを絶えず意識して,何かやるような意見交換やメカニズムを織り込んでいく,ということが非常に重要なのではないか,というような印象を持っています。最後少し漠としましたけど,そういうことです。
【末廣主査】  はい,ありがとうございます。今の点はどうでしょう,西村委員,加藤委員,そうだと断言できますか。
【加藤主査代理】  今,橋田委員に言っていただいたことは非常に共感して,そう言っていただくと非常にありがたいと思っています。地震現象全体を理解するような研究から,その中から実用につながるものを見出していくことがこの研究の重要なところであると思っています。その中から実際に使えるものをどうやって見つけていくか,それをどうやって生成していくか,そのために行政機関等と連携することが必要,そのためのメカニズムが必要というのは,全くそのとおりであろうと思っています。
【西村主査代理】  全容を明らかにして,研究者から出てくるいろいろな成果の中を行政に反映するメカニズム,確かに学会とか研究交流ぐらいしかなかったと思うのです。そこのメカニズムを少し考えることによって,実用科学への進展が図れるのではないかという印象を受けました。ありがとうございます。
【井口臨時委員】  よろしいですか。「2.今後の方針」の(基本的考え方)の一番最初の「現状認識にあげられた課題をまとめると,」で,これはこれでいいのですが,ここの課題として挙げるところで,一つやはり僕が不足しているなと思うのは,やはり現象の理解が依然として不足している,という文章が必要なのではないでしょうか。それでないと,(研究内容)の(1)「地震・火山現象の解明のための研究」が,要するに何でやるのだということが分からないわけですよ。それは部分的には書いてあって,2ページの火山の一番最後の「2000年三宅島噴火の」うんぬんって書いてある最後に,これこれを「予測に成功するまでには火山噴火の理解は進んでいない」というように書いてあります。これは要するに,課題として,やはり依然として現象の理解は予測のためにまだ不足していることを,ここの(基本的考え方)の一番最初に挙げておかないと,課題の1番の「地震・火山現象の解明のための研究」は何でやるのかということに理解が得られないと思います。
【末廣主査】  大変重要な御指摘を頂きました。
【小泉臨時委員】  今のお話なのですけど,この前,私が話して,防災研究をされている方から,素因と誘因で我々(地震学者)は素因をやっているつもりだったけど,実は誘因だったという話をしたときに,どっちが多数決か勝負したら勝ちますよという話をされたと思うのですが……。
我々は災害の方から物を見てなかったのですね。つまり,自然現象の方から見て,そこから始めていって,その中で使えるものを災害軽減に使ってほしいという態度でした。やはりここへ入れる以上は素因の方から物を見ていくということを示していく必要があるのかなと思いました。つまり,プレートテクトニクスから話をしていて持っていって,だからこういうことに使えるという視点ではなくて,災害を軽減するためにはこういうものが必要で,その為に自然現象の解明が必要だと考えたり,自然現象の解明が十分できない場合はお手上げではなくて別のアプローチを考えるとか,そういうような頭の組み替えをしていかないといけないのではないかと思いました。それをどのように表現するかというのは大変難しいのです。例えば、私たちの産業技術総合研究所では,津波堆積物をやっていましたので,東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)後、津波堆積物の研究をやったら,他の研究は何も要らないのではないか,というようなコメントまで外部から頂いたのです。けれども,「いや,そうではない。津波堆積物が得られるのは非常に限られていて,そこからモデルを作る。その際、そのモデルが地震学の基本的な考え方に合うように作ると,今度はあらゆる地域の予測ができますよと。だから両方必要なのですよ。」という説明をしたのですよね。そういった考え方が,次の計画にはやはり求められるのではないかという気がします。それが入っているということが大事かなと。自然現象が分からないから使えないというのではなしに,この災害を軽減するためにはこの自然現象を解明しなくてはいけないというような書きぶりにしていくことが重要なのではないかというふうに思いました。
【末廣主査】  小泉委員からの御意見は,確かに今の文章を読むと徹底していない点があろうかと思いますので,それは直さなければいけないと私も思っていました。ただ,その前に,井口委員の,やはりそもそも科学が進展しないことには,という大前提があるということもまた事実でありますので,そこをきちんと上手に両方入れることかと思います。
【森田科学官】  それは,井口委員の科学的理解が進まないといろいろなことが進まないというのは,正にそのとおりで,それをするためにこの研究計画があることは共通認識だと思うのです。ただ,書き方としては,やはりその指摘点を解決するために,例えば今後の考え方の一つ目があると。それを解決するために,我々研究者から考えたら,やはり分かっていないことが多いから防災にも役に立たないのだ,だから現象解明の研究が必要なのだという説明の仕方の方が私は良いような気がするのですが,いかがでしょうか。
【井口臨時委員】  いや,それは僕はどっちでもいいとは思うのです。ただ,要するに,この一連の文章の結論というのは4ページの一番最後から5ページに書いてある,(1)から(4)をやるためにどのように論理立てしていくかという,そういう話ですよね,結局は。そのときに,まず(1)が出てきているわけですよ。そうすると,要するに(1)から説明していかないと,これは少しおかしいのではないかと思いました。
【末廣主査】  はい,しかと承りました。まだ御発言してない方も何人かいらっしゃいますけど,いかがでしょうか。
【宮澤専門委員】  他にということではないのですけれど,私が思いついたことは多くの委員の方が御指摘されてしまって,さらに口を出す隙もないぐらいでした。しかし,ずっと気にしていたことがあるのですが,(外部評価)の指摘事項の中で,先ほど議論になっていた実用科学という点がありますけれど,もう一点,中・長期的なロードマップの提示ということもあります。これに関して,これまでも委員会の中で議論に上がっていたと思いますが,今回のこの資料1を拝見しますと,明確に防災とか減災を目指した計画であると,それが更に行政等に研究成果として還元されるというように読めると思います。そういった意味で,現計画が目標としている地震予知あるいは火山噴火予知というその達成可能性が漠然とした目標に比べて,かなり明確な中・長期的なロードマップが提示されているというのがうかがえると思います。
 それで,「2.今後の方針」の中で,先ほども(A)から(D)までの点がありましたが,(C)の「研究に優先度をつけて実施すること」というのは,先ほど確か井口委員が御指摘されたと思いますが,当然,至極もっともなことなのです。その後の4ページの上から2行目から,「限られたモデルや方法論に固執せず,多様なデータ,手法,モデルを考慮して,…研究を進める」とありますが,実はこの内容と併せてよく考えると,相反してしまうような点が少し気になります。先ほど橋田委員も外部評価の内容について自己矛盾があると発言されましたが,この研究計画,観測研究計画の文章の中では,やはり自己矛盾があってはならないと思います。今指摘申し上げた(C)とその後の4ページの上から2行目から数行にかけての内容は,これは両方とも非常に重要なことなのです。まだ文章がこの後たくさん付け加わってくると思いますが,今のままですと,一見すると自己矛盾しているようにも読めてしまうので,少し文章の書き換え等の工夫が必要かと思いました。
【末廣主査】  何か御提案はありますか,こういうふうに書くべきだと。
【宮澤専門委員】  (C)に関してはプロジェクトを進める上では当然のことですので,あえて明記しなくてもいいというのが個人的な意見です。ただ,これを書くことによって,より明確に重要な課題等の観測研究計画を進めることができるのであれば残しておいた方が良いと思います。もしそうでなければ,例えば(C)の中の表現を少し変えてしまえばいいと思います。その具体例が出てこないのは,具体的な研究内容がまだこの委員会に上がってきていないためです。例えば,ある特定のテーマがあったとして,そのような研究について,今すぐに研究を始めないとデータが消えてしまうとか,失われてしまうようなものに関しては優先的に行うとか,そのような書き方であったら私はいいと思います。
【平田委員】  宮澤委員が仰っているように,外部評価はある意味ベクトルの異なる意見,つまり,180度は異なっていないかもしれないけれど,120度ぐらい異なっている意見がありますので,それは整理しないと必ずしも計画にはならない。だから,計画は仰るとおり,きちんと一つの方向を向いていなければいけません。ただし,本質的にこの研究は,理学の基礎研究から,散々言われている実用研究を目指すところまであって,非常に裾野というか,ピラミッドのようになって,下は広くて上にいくと非常にとんがってくる,ある目的に明確になっているわけです。井口委員が言われたみたいに,やはり我々の圧倒的に理解が足りないところがあるので,これは普通の基礎科学と同じで,底辺は広くしていろいろな可能性を広げなければいけないから,その「限られたモデルや方法論に固執せず」というところは,その下の部分はあります。けれども,下の部分だけで終わってしまったら,これは単なる基礎研究であるから,そこから幾つかあるベクトルのそろった方向に持っていくというところが重要なことなのです。そのために,実はロードマップというのが普通はあるのです。ただし,我々は要素技術が全てあるのであったならばロードマップを作りやすいし,このどれとどの要素技術がいつまでに解決できればという見通しがあればロードマップは作れるが,それは実は,ここが最大の弱点ではあるが,できにくいのです。ですから,明確に外部評価で御指摘いただいたように30年間のロードマップ作って,これをやりますと書けたら,これはもう二重丸ですけれど,そこができない。しかし,ぎりぎりというか,この4ページのところでは, 4ページの2つ目の丸ですね,「近い将来かならず発生する」うんぬんというところは,やはり東北地方太平洋沖地震の理解に基づいてそれを評価して,今後発生が予測される南海トラフを科学的に解明するということ,ここはかなり踏み込んで優先順位を付けたわけです。これだって,次に起きる地震は本当に南海トラフなのかということはそれほど明確ではありませんね。しかし,これは,防災・減災という観点から見たときに影響の大きいものについて,科学的な知識を総動員して整理することがやはりこの計画に求められている,という観点からここに書かれたことに私は賛成しますので,研究の本体の方にもやはりそういう考えがある。だから,ロードマップはできないが,ここで(C)で書かれている「研究に優先度をつけて実施する」というところは,やはり重要なことなので,表現を少し工夫する必要はあるかと思います。純粋に科学というか,学術の地震の理解,火山噴火の理解といったら,それは理解しやすいことを段々積み重ねていけばいい。だが,もう一つは,防災・減災という観点から見たときに,あるいは社会の中の科学といった観点からは,この研究で求められていることが何か,ということから研究課題が選択されることはあってしかるべきである。そのためには,東北地方太平洋沖地震の後に起きている現状を評価して理解して,南海トラフで起きることがどのようなことなのかを明確にするという,そういう研究をやるのだということをここに明確に書かれていることは重要なことだと思います。
【仙石臨時委員】  発言していなかったので,簡単にコメントします。3ページ目の,今,話もありました(C)の部分,「研究に優先度をつけて実施すること」ということなのですが,これは,その前に「現状認識にあげられた課題をまとめると」と書かれているので,対応する部分がその前にないので,これは書くことは構わないと思うのですけど,「まとめると」というのは(A),(B),(D)なのかなと。(C)は別途出てくるような項目なのではないかというふうに思いました。
それから,4ページ目の(研究内容)のところでございますが,以前から,申し上げておりますが,これは研究計画なのか,観測研究計画なのかという話です。我々は,南海トラフの地震のメカニズム解明のために海底地殻変動は,これから観測網を広げなければいけないなと思っているわけでございます。「研究」だけだと,観測網の拡大のようなものがなかなか読めないと思っていて,そういったものが読めるような形にならないか。これは個人というよりは機関代表として申し上げたいことなのですが,そういったことを非常に強く感じました。例えば,3ページ目とかに海底地殻変動観測が実用化されて貢献が大きいということを書いていただいていて,我々としても今後も観測ネットワークを広げたい,というふうに思っておるのです。是非海底地殻変動観測なども読めるように書いていただきたいなと,こう思っております。
【末廣主査】  はい,ありがとうございました。少しまだ僕の理解が遅れているのかもしれないのですが,今,仙石委員の言われたネットワークの拡大で,今,全く何もないところに目をきちんと見張るシステムを作っていこうというようなことは,この計画の中に書き込んで何も問題ないというか,書かれるべき内容なのですか。少しその辺り,僕,まだ整理が十分ついてなくて,初歩的な質問で済みませんが。
【重野地震火山専門官】  書かれることに関して問題ないと思いますが。
【末廣主査】  ああ,そうですか。では,元気を出してしっかりと。
【平田委員】  何度も発言して申し訳ないのですが,井口委員が仰られた現象の理解が不足しているというのは全くそのとおりで,なぜ現象の理解が不足しているかというと,知恵が足りないからかもしれませんが,やはりデータが少ないということがあります。その最も良い例は,東北地方太平洋沖地震の海溝の近くでの地殻変動のデータが足りなかったということが,理解を十分できなかったという例であります。ですから,やはり今,仙石委員が仰られたように,今後のところにも入れるし,それから最初に発言しましたが,東北地方太平洋沖地震の場合に海溝のそばでのデータが足りなかった,観測ができなかったというようなことを書いていただく。日本は,海底での観測の技術が世界で非常に進んでいる,最も進んでいると言ってもいいぐらい進んでいるわけですから,そういうことはやはり書いていただく。(研究内容)の中にも,私も「以下の研究を実施する」というよりは,「観測研究」か「観測・研究」か,そこは少し議論があると思いますが,観測をするということが明確に読めるようにするべきだと思います。
観測にはやはり2種類ありまして,理解するための観測と,それから防災上の予測情報を出すための観測と,両方あります。それで,海底ケーブルは明らかに津波の警報を出すための役目もあるし,それからプレート境界で起きていることが何かということを理解することにも役に立ちます。Hi-netは,基盤的調査観測の中で地殻活動の現状把握というのが主要な目的ではありましたが,それによって世界で初めて,これも何度も言いますが,低周波微動や短期的スロースリップイベントが発見されました。このことは,それによって我々の理解が非常に前進したことが歴史的に示すように,新しい観測網が理解を進めることは明らかなことです。これは,今,私は良く知っているのは地震ですから,その二つの海底の地殻変動とHi-netのことだけを申し上げました。火山の観測についてもやはりデータが足りなくて観測網が不足しているというのは外部評価でも指摘されたことなのです。だから,これもやはり積極的にきちんと書いた方がよろしいのではないかと思います。
【小泉臨時委員】  この一つ前の発言で平田委員が言われましたが,ここの(外部評価)で出ている「研究計画の中・長期的なロードマップの提示」ですね。これについても,あまり後ろの方ではっきりとは書かれてない,という理由は言われたとおりなのですが,やはりそれを何とか出していかないといけない。ごく最近、私も上司に言われたことなのですけれど,「長期的に何を解決したら予測できるのだということをやらないで,ずるずると観測をやっていてどうなるのだ。」という趣旨のことを言われて,非常に答えに窮したのです。産業技術総合研究所だけの問題ではなくて,多分他のところも、観測を継続するために固定的な経費が必要なものですから,それの説明が常に求められているところだと思うのです。非常に困難で,ロードマップを書くと、今度はそのロードマップが足かせになることもあって大変だろうと思います。けれども,やはりロードマップは,少なくとも5年で書くのは無理にしても,「中・長期的」と書いてある以上は20年とか30年でもいいですから,それを何とか書くようにしないとやはりいけないのではないかというふうに思います。
【末廣主査】  そういったことは,例えば予知協議会では議論されているのですか。
【加藤主査代理】  20年,30年の長期的なロードマップというのは,やはりなかなか難しくて,5年間の重点的な研究目標というような議論はされていますが,明確なロードマップというのは,やはりなかなか作りにくいという意見が強いと思っています。
【橋田臨時委員】  ロードマップの話も出てきましたし,先ほど宮澤委員の方からこの研究,国民の命を守る実用科学の推進についての話もありました。本来,40年前と言いますか,この地震予知計画を立ち上げたときの歴史に,今日の記述の(これまでの経緯)にもありますが立ち返ってみますと,当時もやはり国家のプロジェクトとして,このレビューにも書いているように,国民の命を守る実用科学を目指したかったと思うのですね。当時は予知の3要素をターゲットにすれば比較的容易にできると思ったのかもしれませんが,やればやるほど難しいということが分かってきて,では基礎科学に閉じこもっていいのかと,いろいろ紆余(うよ)曲折しながらこの計画はやってきたのだと私自身は思っているのです。それをなおかつ,こういう形で国の研究計画という形で,個々の研究者の計画ではなくてやろうということは,本来の目的,本来目指してきたものと何ら変わっていない。本来,国として全力を挙げて取り組むべき事項が,国民の命を守るための地震と火山に関する実用科学であったのだろう,というように思うのです。そのとき,今の現状を見るとなかなか夢のあるものは出てきません。しかし,20年後,30年後にこんな出口を作りたい,ゴールを作ってみたいという,そういう特に若い人たちが考えるあるべき姿みたいなものを描き得るかどうかということがロードマップにつながっていくかどうかなのだと思うのです。今の実力はこうだから,観測をもっとやらなければなりませんとか,それはそれで分かるのですが,その出口として,こういうところで軽減に貢献したいのであると。火山であれば,平たく言えば噴火する前にきちんと逃がすことですよね。他にもあるかもしれませんが。地震であれば確かに津波とか地震動があるかもしれません。それがしっかりできるようにしたいのだという,そのためにここまで解明したいのだという,そういうものが本来ゴールとして先にあって,それを目指すために,戦略というか,計画としてこんな観測をしなければならないというものであると思います。40年前,50年前は恐らくそういう思いも持って各機関・研究者の方が集まって計画を立てられたのではなかろうか,と勝手に私なんかは思っています。ロードマップについて言えば,本来のこの計画の任務に立ち返って将来を描いていくべきです。後から見れば,例えば,今,我々が3要素なんて,そんな簡単に予知することなんかできないと言うかもしれません。しかし,そういう未来志向の目標をしっかり掲げるような努力を研究者の方でやっていただけるような計画としていただきたいと思います。
 と言いつつ,こういうことをやりますと,地震調査研究推進本部との関係がどうなのということに結局なってしまいます。ボトムアップということで計画を立てているのだけれど,結局は研究の成果としてこういうことをやりたいとなると何となく似てくるので,どうすればいいのかというのが一方では迷いであるのですが。
【末廣主査】  ロードマップが外部評価で言われたことであって,しかし,私の理解では,この検討委員会でロードマップを策定する任務までは与えられてない。つまり材料もないし,私個人に聞かれれば,それはとうとうと述べたいことがあるのですが,それは言わないで,だから,少しこの委員会ではしようがないなと思います。ですから,その代わり是非コミュニティーの方々は,この5年,どのような立ち位置にいたいのか,それを二,三十年を見据えてどのような立ち位置にいたいのか,ということはやってくれるのだろうと期待しております。
【平田委員】  現行計画の中に,これ,評判悪いのですが,評判悪いながら,ない知恵を絞って現行計画の平成20年7月17日の分の6ページと7ページには,ロードマップというのは横軸に一応時間軸が入ってないといけないのですが,それは入れてないです。だけど,目指すべきものは何かということは書きました。これは当時は――当時というか,このときは地震と火山,別々にやりましたが,散々聞かれました。目指すべき地震予知・火山噴火予知というのは何をするものなのかと。それで,到達点はどこで,現状はどこで,何をする,どのような方向で研究をするのだと。ここに書いてあることは,今から思うといろいろ問題があることは十分承知ですが,最低限度この程度の分量とこの程度の内容のことはやはり書く。主査が思っていることを書いていただけるとよろしいかと。これはもちろん,今日すぐできるわけではないが,中間まとめまでにはこの程度の,つまりロジックがこれで間違っているというのであれば,これを粉砕していただいて変える。あるいは,これで不足しているものについては足すというようなことはやって,このときには一応二段論法で,これも末廣主査には評判が悪いのですが,将来,地震予知・予測というのは総合予測システムを作るということです。その総合予測システムというのは何かというと,これはデータを同化して,それからモデルも研究によって更新されていって,新しいデータに基づいて地殻活動を予測する。地殻活動の実態は地殻変動が一番大きいですが,中小の地震活動を予測するということです。その中で最後に大きな地震がいつ起きるかということについては,実はこれは巧みにというか,避けて書いてあります。一番肝心なところが書いてないのですが,それでも,まずやるべきことは,大きな地殻変動の予測です。ここで言うと,最後は,地震がいつ,どこで,どの程度の規模で発生するかを予測するのだが,そのために地震発生サイクルのどこにいるかというものを,実データを使って地殻活動を予測するシステムをまず作る,というのが最初の目標であるというようなことが書いてある。これは非常に不十分なことがあるということも理解していますし,適当に逃げてうまく避けているところもありますが,このぐらいの勢いで一応検討していただいてやはり書かないといけません。これを社会科学の皆さんが見たときに,「こんなものはロードマップとは言わない」と言うかもしれませんが,こういう方向性は出す必要がある。このために,観測というのはシステムにデータを取り込むための予測のためのモニタリングをするという,そういう位置付けになっているつもりです。ですから,日本列島全体,プレート境界,日本海溝,南海トラフから日本海の方まで一様に観測データが必要であるということです。決して地震がたくさん起きているところだけに観測点があればいいというわけではないという,そういう理屈にしたつもりです。
 だから,これでは全然不十分かもしれませんけど,この程度は目標を書く。ここで明らかに不足しているのは,いわゆるシミュレーションによって予測できないものについての配慮が非常に足りなかったことは,今から思えば反省材料です。それと,火山の方とは,これは全然独立にこの部分は書いておりますから,ここはやはり火山のお考えとうまく整合するようにやる必要があるから,結構大変です。大変だから実はやってないのですが,優秀な人が集まって2週間ぐらい侃々諤々(かんかんがくがく)議論していただいて,地震と火山を含めた――どこかのところで地震と火山は独立というか,分けて書かざるを得ないかもしれませんが,根本的な考えのところはまとめる必要があろうかと思いますが,いかがでしょうか。
【末廣主査】  はい,ありがとうございました。それでは,過去の経緯というか,ここに書いてあることをおまとめになるに際しては,ボトムアップのプロセスはどのようであったのですか。何かワークショップか何かやって,そうだ,そうだということになったのでしょうか。
【平田委員】  これは基本的には深尾ドクトリンというか,阪神・淡路大震災の後に新計画を作ったときの皆さんの合意を,私を含めてこの起草委員の中心の人たちが整理してリライトしただけです。基本的にはこういう方向でコンセンサスがあったと理解しています。これについては,今,大変評価してくれる若者もいれば,こんなものは駄目だと言う人と,両方いますから,議論が必要だとは思います。
【橋田臨時委員】  私が言っているゴールというのとイメージが違っていまして,アウトカムとして何を目指すかということを書かないと,実用科学という関係等について述べたことにならないのです。平田委員の仰っているのは,理学としてのアウトプットを言っているにすぎないというように私自身は理解します。それを分かるように伝えるためには,社会との関係の中で何かをコメントしないと,それは実用科学ということに踏み出したことにならないのではないか,という懸念を持っているということです。
【末廣主査】  はい,ありがとうございました。
【平田委員】  少し一言。30秒。全く仰るとおりです。つまり,この段階では社会との関連ということについてこの程度の認識しかなかったということです。つまり,今の原案というか,この加藤委員がまとめられた資料1にある(3)がここにはなかったわけです。なかったから,これしか書けなかった。だけど,今度は(3)も含めた形できちんとやるので,今御指摘の点は全くそのとおりだと思います。
【田村専門委員】  今ちょうど話題が出ました(3)についてなのですけど,5ページの,この予測情報の利用方法に関する研究を,私どもなんかをイメージした人たちと一緒にやるというふうに書いてあるように読めるのですけど,予測情報というのだけですかね。これだけがターゲットだと非常に困難を感じますというのが一つです。というのは,私の理解では,皆様方,ターゲットを決められて,観測されて,いわゆる現象を解明されて,モデル化されて,手法を確立して,予測して,シミュレーションするというのが,私たちの,済みません,一般的な理解なのです。それ全般にわたって理解を求めていく必要があると思うのです。そこのところを一緒にやる。その中に最終的に全国民が目指す地震の予知ということも含めて。なので,もちろん予知と予測が整理されていないから余計に混乱するのだと思うのです。何かこれだけにターゲットして社会科学や人文の方たちと一緒にやるというのは少し荷が重いですし,それだと災害情報の人だけしか関われないようなイメージを持ってしまうので,もしその意図でなければ,少し書きぶりに御配慮いただければと思うところです。
 それに関連して言うと,3ページの(C)の研究に優先度ということで,割と議論になっているのは一般的な研究の優先度というふうにも聞こえるのです。けれども,先ほどの外部評価を見ていると,要は,学術的観点からの優先度ではなくて実用科学からの優先度を考えなさい,だから低頻度の東日本を見逃したのではないか,というような世間の御批判があるというような書き方なのです。この優先度を生かすのは,私,すごくいいと思うので,できたらその辺りも一般的な研究の優先度ではないところを読めるようにしていただくのが良いのかなと思います。
【末廣主査】  はい,ありがとうございました。今の御指摘のところは是非田村委員にいろいろインプットをお願いしたいところでございますので,よろしくお願いします。
【保立専門委員】  それに関係してですが,地震学が実用科学としての性格を持っていくということはそのとおりだと思うのです。先ほど橋田委員が仰ったように,やはり全てはできないわけですから,分担が必要だという形で仰ったように思うのですが,実用化を目指すということの責任は,やはり社会科学の側の方に相当あると認識するべきなのではないかと思います。応用研究の上に更に実用性を持っていくということです。応用研究としての予測研究をやった上で,さらに実用性を持っていくことだろうと思うのですけど,実用性を持っていくというレベルでは,やはり自然科学とほぼ対等なぐらいの形で社会科学が関わらないと実際上難しい。それで,行政に情報をそういう形で提供するというところまで展開するとすると,更にやはり計算機科学やそのシステム,情報化社会の中での全てを動員してということになるわけですよね。ですから,これはもうアカデミー全体の問題だというふうに,地震学の場合,居直って,「あなたたち,何やっているのだ」ということぐらいは言っていいというふうに私などは思うのです。ただ,現状では,社会科学の側は,やはりなかなか関わらないのではないかというのは大変心配であります。
【末廣主査】  やはりどうしてもコメント,御意見は地震の方が多いのですが,少し火山の方もバランスを考えると変えていかなければいけない部分があると思います。火山に関してこれは是非重要だというようなことを,今,既に御指摘頂いた以外でありましたらお願いいたしたいと思いますが。
【小泉臨時委員】  地震の話で,最初の「現状認識」のところで,1995年兵庫県南部地震と2011年東北地方太平洋沖地震が選ばれたというのは分かるのです。しかし,火山の方で2000年三宅島だけにされたというのは,理由というか,根拠というか,そういうものを少し,もう少し入れる必要はなかったのかとか,そういったことについて教えていただけたらいいかなと思いますが。
【西村主査代理】  基本的には最近のものの中で目立ったイベントを入れたというのが大きなところです。1980年ぐらいから火山活動活発で,幾つか成功例もあったり,あるいは手石海丘のように予知できない,もちろんあったと思いますが,最近のを選んだ。特に三宅島に関しては,直前の噴火発生,最初の発生の予測ができるという中で起きて,それがうまくいったと思っていたところが,その次の推移が分からなかったというイベントです。現在,火山噴火予知関係で大きな問題となっている推移をどう予測するか,規模とか様式をどう予測するかという典型例でしたので,三宅島を挙げました。
【小泉臨時委員】  霧島の新燃岳の噴火を入れようとは思われなかったのでしょうか?というのは,2000年のことを覚えている人は少ないのではないかということです。
【西村主査代理】  それは特に書いたときにはウエートを持って書いたわけではなくて,両方やはり様式,規模,推移,新燃岳も前兆現象は分かっていたのですが,噴火の発生次期は分からなかったとか,規模予測が分からなかったので……。
【小泉臨時委員】  いろいろ課題があったと……。
【西村主査代理】  ええ,課題が多かったというのは認識しております。
【小泉臨時委員】  私は、火山に関しては若干部外者で,やはり2011年,近いのがないと何かインパクトに欠けるかなと単純に思ったのです。避難規模が少なかったとか,そういうことを考えられたのかなと思いましたが,後ろに書いてあるからいいというふうな扱いになるということですね。
【西村主査代理】  はい。ウエートについては,また全体の文章を見ながら,どちらを先に書くかというのを考えたいと思います。
【田村専門委員】  それに関してすごく気になっているのは,この「大規模」という言葉と「巨大」という言葉が出てきて,何が大規模で,何が巨大……地震なのか,火山なのか,外力なのか,被害なのかが分からないのです。というのは,今,議論をお聞きしていると,雲仙普賢岳は社会科学的には多分絶対入ると思うのですけど,何で入れへんのやろうというのがすごく不思議な感じなのです。もしかしたら死者が少ないからなのかもしれないですけど,いわゆる大規模って,皆さん方が考える大規模な現象と,社会的に大規模なものは違うということの,例えばこれ,災害名で書いてないというのが一つ,若干,一般にどう言うかという何か補注が要るのかもしれないです。その辺りは何か説明が少し要るのかなと思います。済みません。
【西村主査代理】  大規模か小規模か中規模というのは,多分,地震の方も含めて科学的に大きいかどうかという評価法がありますので,それを基に我々は書いています。ですから,雲仙岳はよく出されますが,大きくない。ですが,表面は,近くにいると災害が起きるということがありますので,それが……。
【田村専門委員】  それは実学的要請からいくとめちゃくちゃ高い……あ,分からない。いや,藤井先生,お願いします。私ではないです。済みません。
【藤井委員】  いや,別に私が実学的に説明できるとは思わないけど,大規模って,ここの中で一貫して言っている規模は現象の規模なのですよね,災害ではなくて。それで,いつもメディアなんかで書かれる大規模噴火と呼ばれるものと,我々が認識している非常に小規模と,学術的に正確に言うと乖離(かいり)をどんどん広げることになるのですが,それの解決策はよく分かりません。これが実用科学を目指すべきということを言われている以上,どこかで災害との絡みはきちんとした方が良いかもしれない。ただ,我々がまだ経験してない巨大ということ,あるいは大規模というのはあるのですよね。歴史的にというか,地質学的にはもう明らかに認識されていて,我々が巨大と呼ぶときには日本中がもう灰に埋もれてしまって,何百万人かが即死して,1億人が飢え死にするかという,そういう事態が既に数千年前にも起こっているわけですね。そういうものを巨大と呼んでいるので,そうすると雲仙岳はどう考えても小規模になってしまうということです。
【田村専門委員】  小規模ですか。
【藤井委員】  だけど,その食い違いの点はきちんと整理をする必要はあるだろうと思います。
【末廣主査】  私も整理は必要だと思います。これ,やはり全体を読み通して,さっき重野専門官に読んでいただきましたが,立場が少し,ピュアなサイエンティストになってみたり,国民目線で語ってみたりと,少しいろいろ混乱を招く面がまだ残っているなと感じました。だから,その点は重々気を付けなければいけないと思いますし,また,要するに国民がどう受け止めるかというのも多分非常に重要な視点です。地震屋としての経験談ですが,カリフォルニアでマグニチュード5.幾つという地震が起きれば大騒ぎして,もう上を下へと大騒ぎになるわけです。ですが,日本の方からすれば,「何,マグニチュード5でおたおたしているのだ」というようなことになります。また,アメリカの国内でも,東海岸でマグニチュード3が起きればもう大変,ホワイトハウスがもう避難したとかしないとか,そういう話になって,新聞の一面を飾るわけです。しかし,西海岸の人からすれば,「何やっているのだ,彼らは」ということになるわけで,やはりどのように受け止められるかという視点は重要なのだろうと私も思います。余計なことを言いました。
それで,火山の話をもう少し続けていただきたいのですが,例えば富士山に関してはどこかで言及するのでしょうかね。
【西村主査代理】  ここの「現状認識と今後の方針」には入っていませんが,実際に考えている研究計画の中に噴火シナリオの試作という形では富士山を取り上げようという方向で動いています。ただ,建議の文書に出す方向は入ってないです。噴火シナリオの作成までは少し難しいかもしれないので,試作を5年目の最終年度ぐらいに取り組もうという方向で動いています。
【市原専門委員】  富士山に関わらずなのですけれど,前,見直し建議のときにも少し話が出たと思うのですが,地震による火山への影響とかというのは特に注目して書く必要はないでしょうか。
【田村専門委員】  ここに入っているのですよね。(3)の下のところに入れるのでしたよね,何か。前はそういう話だったのですが。
【加藤主査代理】  地震による火山への影響というのは研究計画の中には入っていますが,実施内容の方には入っていますが,この前書き部分のところではそれほど明確には書いてないかもしれないです。
【末廣主査】  今の御意見は,しっかり書いた方が良いのではという御意見ですか。
【市原専門委員】  そうですね。東北地方太平洋沖地震の後に,科学的にきちんと分かっていることではないのですけれど,今後何十年かの間に火山活動が活発にならないとは言えない状況を認識して,次の計画が始まるかどうかって随分変わる感じ……。
【末廣主査】  是非専門の方にお伺いしたいのですけど,例えばインドネシアなんかは明らかに海溝型の地震と内陸の火山は連動するケースが多いのですよね。
【井口臨時委員】  いや,藤井先生はやたらとそういうふうにいつも仰っているのですが,あのときこうだ,こうだと言っても,私はそうはそんなに思っていないです。ただし,幾つかの火山については明らかに,要するに海溝型の地震が起こってから1日か2日で噴火しているのもあるのですよ。事例は少ないのですが,藤井先生が仰られるよりはるかに事例は少ないのですが,あります。
【藤井委員】  少し弁解をしますが,海溝型地震が起こると必ず起こると言っているわけではなくて,海溝型の今までにいろんな人たちが関連性があると言っている事例を見ると,マグニチュード9の地震が起こったときには噴火があったということはある。東北地方太平洋沖地震の日本の場合に桜島が活発化したのをそうみなすかどうかは別ですが,それ以外は何も今のところないですよね。だから,これが最初の例外になるかもしれないけど,大きな地震があるとたくさん噴火するというわけではないです。それから,大きな規模が出るというわけではなくて,一例しかないというものもあるし,あるいは比較的マグニチュード9でも低い方がたくさんの噴火例があるというようなこともあって,事は簡単ではないのですね。それと,実験ができないので,何となく理論的には説明がつくという点で今のところ関連性があると言っているにすぎなくて,あとは時間との関連だけです。それから,私がしきりに主張していると言いましたが,私は事実関係を述べているだけで,主張しているわけではないですよ。
【末廣主査】  はい,説明ありがとうございました。もし市原委員,何かここを上手に書いてほしいということがあれば,御自身でワンセンテンスでも書いていただいて西村委員に送っていただければいいと思いますが。
【平田委員】  少し今,考えて,考えた末,一応提案したいのですが,今までは理学の研究だったので,地震の名前は気象庁の言っている地震そのものの名前です。だから,「兵庫県南部地震」とか「東北地方太平洋沖地震」と。だけども,世間というか,新聞は必ず「東日本大震災」,「阪神・淡路大震災」。そう書くと,私のところに記者が「記事でこう書いたのですけど,いいですか」と言ったら,必ず私は「東北地方太平洋沖地震」と「兵庫県南部地震」と赤で直して返すのだけど,それでもやはり……。それは,理学として見れば正しいからずっとそうしますが,今までの議論では,これは社会にどう発信するかとか,社会との関係でやる以上,もう宗旨変えをこれはしようかと思っています。少なくとも「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)」とか,どっちを先にしてどっちを括弧にするか,それは本当に最後に書く人に任せます。けれども,そういうことぐらいの配慮は少しやはりした方が良くて,保立先生はもっと過激なことを仰っていますから,それでは生ぬるいと言うかもしれません。でも,我々の今までの考えでは地震の名前を書くのだと,断層が破壊したそこを書くといったけれど,もう少し社会現象としての地震を配慮する必要があります。だから,少なくとも最初の基本認識とか何かそういうところは,世の中で言っているから災害の名前としての地震というべきかと思います。現にここでは「6千人」だとか「2万人」という言葉を出している以上,これは災害としての意識があるわけですから,それを少し提案したいと思います。
【末廣主査】  橋田委員。
【橋田臨時委員】  気象庁は現象として地震の名称をつけておりますが,その使用について特にこだわっていません。文脈に応じて使い分けていただければいいということです。いろいろ気象庁に配慮いただいて,これまでも御考慮いただいているかもしれませんが,我々も両方使っています。地震発生当初,災害名が決まる前にやはり共通の言い方が欲しいというニーズが大きいので,とりあえず名前を付けているようなところもあって,災害名と現象名はそれぞれの文脈で我々も使い分けております。なので,御自由にと言いますか,適正に使っていただければいいと思います。
【末廣主査】  はい。平田委員から首尾一貫性を持たせるためにも呼び名のことは再検討していいのではないかという御意見でしたが,皆さん御賛同いただけますか。はい,ありがとうございます。
 大分時間が進行したので,ここで一息つこうかと思いますが,4時まで休憩いたしましょう。休憩の後,新しく赴任された澄川さんに一言頂いて,それで再開したいと思います。よろしくお願いします。
( 休憩 )
【末廣主査】  では,ただいまより委員会の方を再開いたします。先ほど申し上げましたように,新しい課長補佐,澄川さんに一言お願いいたします。
【澄川地震・防災研究課長補佐】  4月22日日付けで地震・防災研究課の総括補佐ということで着任いたしました澄川と申します。ご存じかもしれませんが,迫田の後任ということで着任しております。私自身は,学生時代から,役所入ってから,実は地震という分野は今回が初めてでして,ここに来て今ようやく,1か月かそれくらい,急ごしらえで勉強させていただいているようなところなのですが,今後,引き続きよろしくお願いいたします。特に今回勉強して,結構,地震の研究とかでも,速報とかはすごく役に立っています。それと同時に,特に今回の議題になっている予知はかなり根が深いという,非常に難しい,社会の多分,期待と現実のところのギャップというか,今議論されていることだと思うのですが,非常に期待が高いのは事実なのです。そういうところで今後議論いただければと,私も勉強させていただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
【末廣主査】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。それでは,引き続き,議論を続けていただきたいと思いますが,いかがでしょう。大体今日のところは出尽くした感があるのでしょうか。
【関口臨時委員】  また一番最初の質問に戻って申し訳ないのですけど,2ページから3ページにかけて,3ページのポチポチという3段落は,2ページの一番下の具体的な例だというふうに御説明いただきました。どうも私の理解が悪いのが,「地震現象の学術的理解が進み」うんぬんかんぬん,「役立てられた」という例だと思うのですが,これ,読んだ感じ,そんな印象は受けなかったので,これでいいのでしょうかということなのですよね。何か単に観測してこういうふうになったのが分かりました,で,役に立つでしょうというのがダッダッダッと書いてあって,何か学術的理解というまで深まったことを反映した例ではないような気がしたのですけどね。少し細かいところで気にし過ぎという話もあるかと思いますが,少し説明していただければありがたいのですけど。
【加藤主査代理】  例えば,学術的な理解で言えば,海底地殻変動の観測によって,プレート境界で地震時にどこが滑ったであるとか,地震の後に非地震的にどのように滑ったとか,地震の前も含めていいと思います。あと,現在,固着しているところでどのようにひずみが蓄積しているか,それはどのような現象が起こったか。最近起こった現象は将来また繰り返すことがあるでしょうから,そういった意味でより詳細な地震像を明確にすることは,次の地震,また別の地域でもいいと思いますが,その地震がどういったものになるかを予測する上で役に立つと思います。それから,現にどれだけひずみが蓄積されているか,そのひずみの蓄積がどういった空間的な分布をしているかというのは,地震発生ポテンシャルの評価に役に立つと素直に思うのです。今,海底地殻変動だけに限って説明しましたが,他についてもそうだと思います。これは単に,もちろん観測事実も重要ですが,それを解釈するための地震学の基礎がなければ理解できないというか,解釈できないものだと思いますが,それでよろしいですか。
【関口臨時委員】  はい。多分,言葉の印象が違うだけなのだと思うのです。けれども,「地震現象の学術的理解」と言うと,何かすごい理解をして,モデルか何かが分かって,これに基づいてこんなことが分かるようになったので,防災・減災に役立てるという印象を少し持ってしまいました。そこまではいかない普通の理解と言うと変ですが,それでこういうことが分かりますよ,ということですね。それであれば了解いたしました。
【末廣主査】  東北地方太平洋沖地震に関して言えば,あんな浅いところがどうして滑ったのかは,もう最新の成果まで聞けば相当分かってしまったという感じを持ちますが。
【橋田臨時委員】  個別の具体の議論に入ったので,この件に関して少しコメント,それから質問をしたいと思うのです。今,正に関口委員が仰っていたように,2ページの最後の行を読みますと,「地震現象の学術的理解が進み」,これは関口委員と同じような印象を持ったのです。「その成果は,防災・減災に役立てられてきた」,私から言うと,「役立っています?本当に」と,こう言いたくなるということなのです。例えば,第1パラグラフがよく分からないのですが,東日本大震災の震源がどうずれたとか分かった,それと防災・減災,どう関係しているのですか。全く分からないと,あえて厳しい言い方をするということもできるのではないかと思います。なので,これは私,時制の問題として,文章で「その成果は,防災・減災に役立てられるような展望が開けつつある」とか,そういう言い方をしてくれるなら,まだ一国民としては許してあげたいなという気分に駆られるという,そういうことなのだと思うのですね。この中に,そういう展望がある中に含まれるのは,関口委員の印象と同じような印象を私も持っているのですけど,先ほど平田委員が仰ったようなスロースリップのような話こそ,正にこの「地震現象の学術的理解が進み」とかということになるのではなかろうかと。これがたまたま過去5年という今の計画だけを指しているのか,これまでの長年にわたる予知研究の成果を書こうとしているのか,それによって書きぶりは違うのです。また,例えば,気象庁の立場で言うと,ゆっくり滑りというような現象がある意味解明まだ途上ではあるのですが,そういう現象があるからこそ,予知の可能性があるものだと思って一生懸命監視しているわけです。それはある意味,減災につなげようとしているものがあるので,そういったことを書いていただくのもいいのではないかというような印象があります。
 なお,個別具体的に質問したいのは,次の3ページの最初のポツの4行目ですか,「特に,近年実用化された海底地殻変動観測の貢献は大きく」,どんな貢献をしたかというのは何となくイメージでは分かるのです。だが,むしろ近年実用化された何とかは今後すごい貢献が期待されるというのだったら,まだ分かるような気はするのです。確かに,この海底地殻変動による成果はあったのは間違いないと思いますが,これ,すごく書きぶり――ごめんなさい,研究に携わっている方,申し訳ないのですけど,少し書き過ぎではないかという印象は持っております。私の印象だけですので,具体的にどんな世界があるかを教えていただくとありがたいと思います。
【今給黎臨時委員】  東北地方太平洋沖地震の後に地殻変動,それから特に海底地殻変動のデータを使ってこのプレート境界の滑りの状態を解明するということはかなり精力的に行われました。特に地震直後,ここが滑った後,更に滑り残りがあって,宮城沖でM7の上クラスぐらいの地震がまた更に起きるかもしれないというようなこともいろいろと懸念されて,そういうようなところは一生懸命観測し,解析することはやったわけですね。それで,そのときに海底地殻変動のデータが加わったことによって,プレート境界でいうと浅い側の方の滑りが非常に大きかったことや,その後の余効的な滑りにおいて,それよりもプレート境界でいうと深い側の方の滑りが大きかったこと,その相補的な関係があることなどがいろいろ分かったということです。それで,特にいわゆる滑り残りと言われたようなところも余効滑りでどんどん滑っているというようなことが分かったなんていうことは,非常にそのリスクを理解する,地震調査委員会で評価をする上では非常に役立ったというふうに私は理解しているのですね。ただ,さらに言うと,細かいところまで言ってしまうと,海底地殻変動のデータを見ると,ある1点の観測データはそれよりも更に滑り過ぎて,フォワードスリット部分がプレートの収束速度よりも大きいぐらいに見えているというようなものがあったりします。すると,実は我々はまだ理解してないことがあるのかもしれないということまで思わせるぐらい,いろんなことが見えているというのは非常にあるので,貢献が大きかったことは事実です。それから,今後解明しなければいけないことにおいても,こういうような観測の評価が期待されていると書いてあるここの文章は,私にはそれほど違和感はないという気がいたします。平田先生,もし何かあれば。
【平田委員】  私の立場としては,まず,橋田委員がそのように誤解されたこの書き方自体,大変まずいので,これを書いた人には意見はあります。だけど,これを書いた人の心は,ここの3ページの3つの点は,ここは明らかに2ページの最後にある「学術的理解が進み,防災・減災に役立てられてきた」です。ここは御指摘のとおり,過去形ではなくて展望が開けつつあるというのが一番良いと思います。ここは単なる学術ではなくて,防災・減災に役に立つということが非常に重要なことです。この三つを選んだのは私はいいと思うのですが,この最初のポチは,基本的にマグニチュード9のプレート境界の地震が起きて,プレート境界で数十メートルですね,最大80メートル?今,80メートルぐらいが最大です。これは,例えばスマトラの地震のときでも分からないことです。これまでマグニチュード9の地震があったということは,それで,ものすごい津波が起きたということも経験はしています。しかし,日本のようにGPS,GNSS等が配置されているところは世界中になくて,更にそれでも不足していて,海上保安庁と東北大学の海底地殻変動があったために明確に分かって,海底が30メートルから50メートル動いたなんていうのも,これも初めて分かったことです。これは,次に南海トラフで起きる地震を,内閣府中央防災会議が想定をされているときの重要な根拠になっています。そんなに30メートルも40メートルもプレート境界が動くなんていうことは,これまでの常識では考えられないことですから,津波が発生する非常に重要な根拠になっているので,その想定が正しければ,これは防災に非常に役に立ちます。ただし,内閣府中央防災会議の想定されたことが現実に起きているわけではないので,過去形ではなく,展望が開かれつつあるということは重要なことで,これは,社会に貢献するという観点からはこの研究は重要です。それで,スロースリップとか低周波微動が発見されて,これが東海の地震の予知の理解に貢献するということは御指摘のとおりですので,それはここに加えてもいいかもしれません。けれども,これは学術の成果として,これまでの研究の成果でプレートの境界の固着と滑りの多様性が理解できた,というところでまとめておけばいいと思います。
 それから,この3ページ目の二つ目のポチは,これは海底ケーブルによって津波が実際に沖合で観測されて,これをリアルタイムで津波警報に活かされる仕組みができるのであれば,これは非常に実用化できるということです。これは,しかも事後的にこういう研究をしているわけですから,過去形ではなくて,やはり展望が開かれつつあるということです。この学術的な成果が正に政策的に,東北沖に海底地殻変動・津波地震観測網を作る契機にもなったわけですから,これは防災に役に……,やはりこれは建設途中ですから,展望が開かれつつあるということになると思います。
 三つ目のGPSを使って地震規模の即時予測ということは,いわゆる緊急地震速報で有限の断層のものについてどうやるかということを気象庁が今検討されています。それの一つの手法として,国土地理院と気象庁と大学とでこういう研究が進んで,防災に役に立ちつつあるということです。これもやはり,将来的にこれが実用化されれば研究の成果が役に立ったということで,この三つが出てきたと思います。それなので,私としては,少し書き方をもう少し整理する必要はあると思いますが,他の研究と比べて地震の学術的な成果が防災・減災に役に立たせるという,そういう観点からここで三つ例を挙げたのは適切だと思います。ただ,御指摘のとおりのことを読んで思いますから,書き方をもう少し工夫する必要はあるかと思います。
【末廣主査】  はい,ありがとうございます。休憩前から細かいところに入っていたのですが,他にありましたらどうぞ。はい,仲西委員。
【仲西臨時委員】  幾つかあるのですけれど,先ほど休憩前に皆さんの発言を聞いていて,話題になっていたことから先に申し上げます。少し私自身分からなくなってしまったのは,やはり「研究に優先度をつけて実施すること」というのと「中・長期的なロードマップの提示」というところです。私は一番最初,今日来る前は,優先順位というのは,ここの4ページ目に書かれているような東北地方太平洋沖地震であるとか南海トラフということに関係する研究,そういう研究は優先順位が高いのだというふうに認識していたのです。けれども,少しお話を聞いているうちに段々よく分からなくなってきたのです。これは,この前に,骨子案の修正案の項目に南海トラフ巨大地震を入れる,入れないという話もあったと思うのです。そのときに私,メーリングリストにも提案をしたのですが,この優先順位をつけて実施することは,必ずしも骨子案の方には今まで東北地方太平洋沖地震以外は見えないなというふうに思っていました。かといって,南海トラフ地震を骨子に入れるのは反対だったのです。それで,いろいろお話を聞いていて思ったのですが,この南海トラフとか東北地方太平洋沖地震というのは優先順位はもちろん高いと思うのです。けれども,先ほど田村委員が仰っていたみたいに,研究の柱である(3)自体がやはり優先順位の高いものなのではないかというふうに,少し今更ながら私の中では少し整理できて,それで,一つは,それは成果としてすぐレビューをする段階でも一つの柱として出せるのでいいと思うのです。もう一つ,今まで優先順位だと思っていた東北地方太平洋沖の地震とか南海トラフの地震とか,他にも例えば首都直下とか先ほどお話に出た富士山とか,幾つかあるかもしれないのですけど,そういうものはこの計画の中では幾つもの柱の中に入っています。ですので,メーリングリストでも提案したように,もし御議論いただければうれしいのです。まとめるときに,骨子の項目ごとに今まではまとめられていたものを,例えば優先順位はこうであるというのをここで示したものに関して,現象ごとにというか,地震ごとに,地震あるいは火山ごとにまとめていくというのはどうでしょうか。それは逆に仕事を増やすだけだから良くないという意見もあるかもしれないので,ただ,それは非常にアウトプットとして分かりやすいのではないかというふうに思ったので,それは一つ提案させていただきます。
 あと,少し細かいところなのですけれど,2ページ目の(今後につながる成果)のところで,今この前のお話にも出てきた「その成果は,防災・減災に役立てられてきた」というところの一つ上のところも,「津波の予測が可能になった」というふうに書かれているのです。これを読んだときに,やはり私は,つながる成果と言いつつも,できているみたいな書き方になっている印象を受けたので,細かいことなのですけれど,ここはもう少し控えめなというか,そういう書き方にしたらいいのかなと思いました。
 それからもう一つ,これも細かいことなのですけど,2.の「今後の方針」の(B)の「低頻度大規模現象について取り組むこと」という課題ですが,ここに「ついて取り組むこと」ではなくて,「ついても取り組むこと」というふうにしていただいた方が良いかなというふうに思います。
それから,今言ったところの次の丸の1行上の「研究を実施する」というのも,書き方の問題ですけど,次の(研究内容)のところも「研究を実施する」と書いてあります。ここは研究を実施するというか,基本的考え方を,何て書いたらいいか少しアイデアはないのですけど,考え方を述べているところなので,書き方をもう少し変えた方が良いのかなというふうに思いました。
【末廣主査】  はい,ありがとうございました。少しごめんなさい,たくさん言われたので頭が真っ白になりました。最初は何でしたか。
【仲西臨時委員】  私も忘れてしまいました。最初は,優先順位のところです。優先順位は,何とか地震,何とか地震だけではなくて……。
【末廣主査】  あ,そうそう,そうですね。
【仲西臨時委員】  柱の(3)。
【末廣主査】  もう少し具体的にという。私の理解では,この委員会にそこまでのオーソリティーはないのではないかという印象を持ちますが,いかがでしょう。
【平田委員】  書いた人に聞くのが……。いいですか。オーソリティーはあるかどうか分からないのですが,基本的な考え方と研究の内容というのを起草した後に,それを具体的にどう実施するかについては,これまでは割とナイーブに,それぞれの項目についてやりたい機関とかやりたいグループとかに手を挙げてもらってやっていました。これをもっと戦略的にやる仕組み自体が必要だと思います。例えばここの(1),(2),(3),(4)というような研究の内容を実施するときに,必ずしも(1)は(1),(2)は(2),(3)は(3),(4)は(4)でやるわけではなくて,それらを統合したような複数の大きなプロジェクトが実施されて,それは具体的に何とか山とか何とか地震とかというふうになるかもしれません。だから,それは,これを実施する体制のところで議論していただく必要があることで,だから,そういう体制を担保するような体制を整備することを,ここに基本的に掲げるというのでいいのではないかと思います。ただ,非常に象徴的なこととして,理学的な発想でどのような順番で研究をするということと,社会的な要請あるいは社会の中でどのような役割があって,解決すべき課題が何かというような,そういう観点はきちんと述べる必要があります。それの例として,東北地方太平洋沖地震あるいは東日本大震災,南海トラフ地震とか,あるいは何とか山というのを少し書くことは必要かなと思います。具体的に何とか山,何とか山,何とか山を重点的にやるなんていうことをここの(基本的考え方)で書くことはないのではないかと思います。
【末廣主査】  あと,言葉遣い,それから全体の流れの中の段落として使うべき,例えばさっきの「研究を実施する」というようなことは別のところではないかというような御指摘は,まことにそのとおりだと思います。多々そういった点は他にもあると思いますので,それは皆様のさらなる御指摘を頂きながら直していきたいと思いますが,他に。はい,藤井委員。
【藤井委員】  戻るかもしれませんが,今出てきた(C)の「研究に優先度をつけて実施する」という,これ,(A)から(D)まで目新しいやり方をやったのは分かるのですが,この(C)というのはやはり少し特殊です。なので,この三つの(A),(B),(D),どなたかもさっき言われたと思いますが,これはこれでいいかもしれないが,「研究に優先度をつけて実施する」というのは,むしろ「地震や火山噴火の発生を予測する研究を実施する際に優先度をつけてやる」というふうな書き方をすべきで,少し余りに違うような感じを受けます。それがまず第1点。
 それから,細かなところなのですが,「今後の方針」の中で「予測」という言葉が非常にあちこちに出てくるのですね。例えば丸で言うと3番目のところですかね,「大地震震源域の即時予測」って書いてあるのです。これは他のところで言うと,3ページ目の方で言うと「超巨大地震の規模を短時間で正確に評価できる」と書いてあって,「予測」の意味が,評価だったり,それから本当の予測だったりします。あるいは,4ページ目の(研究内容)の上二つ目のところで「東北地方太平洋沖地震の発生機構の理解やその影響を評価し,今後発生が予測される」と,これは「想定される」とした方がまだいいように思います。この辺りは少し整理しないと,予知と予測と,それから一般的な用語の予測というのが何か混乱して分かりにくいような気がします。
【末廣主査】  はい,ありがとうございます。予知・予測の話は,またこの後も議論いたしますが,御指摘の点はしっかりと咀嚼(そしゃく)して反映させたいと思います。(A),(B),(C),(D)の並びが,(A),(B),(D)と(C)ではないかという御指摘は仙石委員からも頂きましたし,小泉委員からもありました。私もそれは納得のいく御意見と認識いたします。
 他に何か重要なポイントがあれば,今御指摘頂きたいのですが,なければ,今日余すところあと1時間なのですが,今日,今までいろいろ御指摘頂いた点を過不足なく,この後,これを文章にしなければいけない人たちの耳にしっかり入れたいと思います。皆さんにももちろん手伝っていただくわけですが,以前にも申しましたように,主査代理が「是非ここを書いてください」とお願いしたら,是非レスポンスしていただきたいのです。まずは,今日のこれまでの御議論いただいたところの取りまとめを,森田科学官が快諾してくれましたので少しお願いします。
【森田科学官】  今までの議論を伺っていますと,細かな表現だとか書き方とかというのは御指摘のとおりに従って書ければいい,書き換えるという方向で進めばいいだろうと思います。一番,多分今日のこの資料1の中で少し手を入れなければいけないところというのが,「今後の方針」の(基本的考え方)の最初の丸のところだろう。これは今の構造ですと,課題を挙げて,その課題の中でも実用科学という言葉について少し解説を加えて,それをこうする。すぐその次に,この5年間ですることを書いてあるというような構造になっていて,そこが少し分かりにくいのだろうと思います。ですから,多分改訂するとしたら,最初の丸は今と同じように課題として考えられるところを挙げて整理する。そのときに,例えば(A),(B)で,実施するときには(D)の視点。(D)といっても,研究の優先度というのはやはり社会の要請等を考慮した優先順位というような書き方なのだろう。
 その次に,そのように課題を整理して,その課題を解決するためにというセンテンスというか,項目を一つ挙げるのが良いのではないかと思います。そのときには,課題を解決するためにというのは,長期的視点に立って我々研究者コミュニティーからしたらどのようなことが必要かということです。そこに具体的に,例えば先ほど井口委員が言われたように,現象理解はまだまだ足りないから,現象理解をすべきである。それから,観測網の整備も必要であろう。それから,その研究をするにしても,ここで繰り返しになるかもしれませんけど,優先度をつけて実施すべきだろう。これは比較的長期的視点に立ったときにどのように考えるかということを述べる。その次に,当面何をするかということで,今あるこの二つ目の丸以降のことに結び付けていくという書き方にすれば,少し,一層読みやすくなるのではないかというような気がしたのですけど,いかがでしょうか。
【末廣主査】  今少し,もういきなり肝のところだけお話しになりましたが,私のこれまで伺った感じでは,この委員会のコンセンサスとしては,現在の全体的な構成はこれでいいと思います。ただし,言葉遣い,それから例示の仕方,その他事実の指摘のやり方などなど,幾つも改善の余地はある。それはたくさんの方から御意見頂きまして,それはおかしいのではないかという指摘は,ほぼなかったように私は記憶しておるので,多分,皆さんの発言はほぼ全部反映するような形で,これを改訂しなければいけないのだろうという認識です。その中で,今,森田科学官が言われたのは,少し口の説明では,やはりすっと分からないと思うので,ここを分かりやすくすると。
【森田科学官】  ここを分かりやすくするのですけれど,今は課題を挙げるということをやって,それで,5年間何をするというところにすぐ飛んでいるから非常に分かりにくいのであろうと思います。だから,課題を挙げる。次に,その課題を解決するために長期的視点に立つと何をすべきかということを答える。そして,この5年間では何をするというふうに,一つそういう項目を作れば全体として流れが分かりやすくなるのではないかと思うのです。だから……。
【田村専門委員】  いいのではないですか。
【平田委員】  はい,賛成。
【田村専門委員】  新たに一つ,1章起こさなければ……。
【森田科学官】  1章というか,丸一つ。
【末廣主査】  丸一つ。
【田村専門委員】  丸一つでできますか。
【末廣主査】  それはさっきのロードマップの話にもつながりますね。
【田村専門委員】  できるかな。丸一つで?
【藤井委員】  それが大きい。
【田村専門委員】  できるのですか。へえ。そうなのですか。どうやって……。
【末廣主査】  いや,少しみんなでここは助け合わないといけないので,何か。
【橋田臨時委員】  済みません,議論を蒸し返すようで。少し森田科学官の議論を皆さん考えている間に一つだけ済みません。個別に意見を言っていただいたものをそれぞれ反映するということでいいと思うのですが,やはり私,幾つか気になることがございます。仲西委員が先ほど言いました……少しいいですか,個別のことに対して少しだけコメントして。
 (今後につながる成果)の2番目の丸のところで,「地震による強震動・津波の予測が可能になった」は言い過ぎではないかというように仰っていたように思うのですが,そうでしょうか。もしそれを言い過ぎだと言われるのだったら,今度は気象庁の立場なのですけど,緊急地震速報,確かにいろいろありました。津波も,東日本大震災,いろいろ過小評価もあったのですけど,その予測が可能になったからこそ気象庁は警報を出しているわけです。これを言い過ぎと言われてしまうと,少し私,立場としては困るなという気がするのですね。それは,先ほどの私がアジって海底地震地殻変動について言ったのと同じなのですけど,自分が関わることというのは大体大きく物が見えているというものがあって,どうしてもそういうことがあるかもしれません。けれども,社会的相場観として,現実に緊急地震速報や津波の予報警報がなされているということを考えると,予測が可能になった,「一定程度の」とかいうことを入れてもいいのかもしれませんが,そんな印象は受けます。なので,あんまりこれは書き過ぎとは私は思いません。
 それから,やはり地殻変動のところについては,私は誤解というよりは認識の相場観の問題なのではないかと思うのです。何を防災,何を減災かと考えるということで,あることが分かったことと,それをもって多大な対策が打たれるというようなところになったときに,減災・防災に役立っているというのは,ある程度一定の対策がなされていることにつながらないと意味がないような気がします。それが,一定の対策がどの程度なのかにもよるのですが,やはり研究面においてはそれなりの貢献は大きかったのかもしれませんけど,何となくもやもやするなと。それは,私の住んでいる空間が一定程度限られているので,相場観や認識に偏りがあるのかもしれませんが,そういう印象はあります。
【末廣主査】  その2番目のところは,ですから,役立てられてきたのではなくて,展望が見えたという,そういう言い方ならばいいのですか。
【橋田臨時委員】  展望が見えたというのはいいということと,個別具体的なところまであんまり強くやはり言えないですけど,「貢献は大きく」というのが,学術的理解に対する貢献が大きいと読むならば,それはそれでいいのかもしれないのですが,そういう印象です。
【末廣主査】  はい,ありがとうございます。研究者の方はしっかり気象庁に使ってもらえる情報を出して,「本当に貢献大きいね」と言われるように頑張りましょう。その前の「津波の予測が可能になった」というのは,これは余りにも簡単な文章で,合っているとも合っていないとも,どうにでも言えてしまう感じなのですが,ここは,もう少し説明できますよね。
【加藤主査代理】  はい。多分,「地震による強震動・津波の予測が可能になった」ということだけでもすごいことだと思うのですが,それは予知研究に関わらず,これまでの地震学研究の成果が利用されていると思っています。更に改善することができるのは確かですし,そのための研究も行うわけですから,その辺も含めて文章は変えたいと思います。
【末廣主査】  よろしいでしょうか。それでは,森田科学官のこういうふうにまとめたらいいのではないかという点と,そんなの簡単にできないのではないかという御懸念と,それから,今まで橋田委員が御発言中考えていただいたことを併せて何か御意見があればお願いします。もちろん,後でメーリングリストでやるのでもよろしいのですが,ただ,多分コンセンサスとして,ここのところの趣旨は何となく分かるが,少し分かりにくいねというところは,皆さん一致しているのではないかと思います。
【寺田地震・防災研究課長】  済みません,1点だけ。1ページの東日本大震災というか,東北地方太平洋沖地震の黒ポツ四つあるうちの四つ目のポツなのですが,「防災や減災に役立てることを十分に考慮した研究計画になっていなかった」という反省をどのようにするかというところの具体的なところがよく分かりません。使ってもらえるだろうと思ってやりますというのか,「こういうものが出てきますから,準備しておいてくださいね」と言って研究を進めるのかという,その研究を進める立場というのをどのように変えていくのかというところがよく見えないのです。そこのところはどのように皆さんお考えになるかというところだけを少しだけでも議論していただけると。
【末廣主査】  そうですね。小泉委員からも指摘があったところだと思いますが,では,少し時間をとりましょう。一方的に「君たち,これ使ってね」というわけには多分いかないところに来ているのだろうと思います。はい,今給黎委員。
【今給黎臨時委員】  これ,今,課長から御発言があったのは非常に重いと思うのです。かねてから私なんかも思っているのは,この建議に,この予知計画に基づいてやってきた研究というのは,やはり地震調査研究推進本部が評価とかそういうところに使って初めて行政の方へつながっていくという部分があるのだと思うのですね。
さっきの,一つ事例としてちょうど出たばかりところで思ったのです。この「地震による強震動・津波の予測が可能になった」という,この強震動・津波は,正に地震調査委員会の下にある強震動部会とか津波部会,新しくできたものとか,それから地震の長期評価をやるまずその直前会議,長期評価部会の仕事とか,そういうものが全て,やはり研究の積み重ねがあったものが使われて,そのような実際に政府がやる地震の評価につながってきた。それが防災・減災の……,正に地震調査研究推進本部の役割は防災・減災ということでうたっているわけなので,そこへどのようにその出口が,この研究の成果がいくのかというところは,今までは確かに使ってもらえるだろうというようなところでやってきていた。お互い,地震調査研究推進本部の方の総合基本施策の方にも,こういう計画運営に基づいて研究結果を取り入れてやりますとは書いてあるのだが,その心構えが書いてあるだけであって,実際の仕組みは具体的にはないわけですね。だから,そこはやはり,本当はそういうところは直接にアウトプット,インプットの関係が出るような仕組みというのを意識した方が良い。もちろん,ここの計画の中にエクスプリシットという,何かそういうような具体的な組織名を,こういう組織を作って,こんなようなやり方でやりますとまだ書けないかもしれないが,少なくともそういうことを意識した文章がここには要るのではないかと思います。これ,今,全体の,今後の方針案のところでは地震調査研究推進本部の名前はエクスプリシットと出てないのだが,どこかではやはりエクスプリシットに出るべきではないかと私は思います。地震ではですよ。
 火山については,それの受け皿が今のところは直はないので,ひょっとしたら気象庁が直接になるかもしれません。そこは更に議論が必要かと思います。
【末廣主査】  はい,ありがとうございました。そうですね,火山に関しては,そもそもここの文章は,火山の研究者から見て納得いく文なのかというのもあるかと思いますが。
【井口臨時委員】  よろしいですか。その文で言えば,これ,東北地方太平洋沖地震の項のところに,問題点として火山の方も全部ひっくるめられています。東北地方太平洋沖地震が起こったのは火山も悪かったと言う,それでもいいのですが,これは少し違うのではないかと思います。全体としての問題点ということですね,この四つのポチという意味は。だから,これは東北地方太平洋沖地震のところにひとまとめにされては困るのだろうというふうに思います。
 それから,今の行政機関等のところは,やはり国だけの,対国の機関だけではなくて,やはり火山の問題としては地方の行政組織という問題もかなり大きいので,そこのところをどう取り組んでいくか,という研究課題も必要なのではないかと私は思います。国だけではなくてですね。要するに地域ということですね。具体的な地域防災,具体的に住民を救うのは地域防災計画ですから,要するに地域防災計画の中にどれだけ予知の成果というのを組み込んでもらえるかというのが私はポイントではないかなと思います。国の施策だけではないと思いますが,もちろん,地域防災計画は上から順番におりてくるのを待っていますから,国の施策が反映されるというのは間違いないのですが,やはり地域の観点というのはものすごく重要だと思います。
【末廣主査】  ここの書きぶりはよろしいのですか。場所は悪いとして。
【井口臨時委員】  書きぶりはいいと思います。
【末廣主査】  「防災や減災に役立てることを十分に考慮した研究計画になっていなかった」と。
【井口臨時委員】  なってないですよね,以前は。
【橋田臨時委員】  考えがまとまらないので,まずは紹介をさせていただきたいと思うのですが,例えば気象庁も地道な技術開発を行い,その成果を具体的に警報や情報にして役立ててもらおうと思ってやるわけです。けれど,そのときに大体いつもやるのはどのようなことをやるかというと,これ,一般の民間企業における製品を作ってどう利用していただくかとも似ているような話なのですが,幅広く関係者に参画をしていただくことです。関係者とは,行政関係機関あるいは専門家の方もいらっしゃいますし,報道関係機関の方もいらっしゃいますし,そういういわゆるステークホルダーの方たちと十分丁寧な対話と言いますか,意見を頂くということです。「気象庁はこんなことを考えているのですけど,どうでしょうか」というようことをやりながら,具体的に情報を新しく作っていく。作り過ぎて複雑になっているようなところもあるのですけど,それはともかくも,そういう出口を見据えた上でのユーザーとの意見交換の場,平たく言えばそういうことなのでしょうが,そういうものを持ちながら現実に仕事を進めていくというようなことはやっています。それをやらないで気象庁が一方的にこれが良い,これが良いと決めて,では今度,「新しい情報を発表します」とやったら,もう大概デッドロック状態に陥ってうまくいかないというようなことが気象庁においてはあるという例を踏まえるならば,それは何をやっても同じだと思うのです。実用化という,先ほど実用化のところでゴールやアウトカムはどうなのですかという話もしました。こういうように活かしたいというときは,研究を計画する段階から幅広いユーザーとなる方,応用していただく方との対話と言いますか,そういうものを定期的あるいは随時に設けていくような仕組みがないと,個々の研究成果を,防災や減災に役立てることを十分考慮した計画にはならないのだろうと思います。
 そういうものと同時に,この計画自体をどう進めるかにも,策定自体をどう進めるかにもよるのですが,やはり国民から幅広く意見を頂くという行為をしていかなければ,国民の皆さんの相場観が分からないまま独りよがりの研究をしてしまうことになるのだと思います。そういうことを計画策定の中に,あるいは具体的に研究を実施する上でプロジェクトごとに,そういうことをやっていくという仕組みをどう入れていくかということを考えていく必要があるのではないか。その一つとして,先ほど今給黎委員が仰った地震調査研究推進本部もそうかもしれませんが,地震調査研究推進本部を通してしまうと,通してもいいのですが,エンドユーザーが見えない。エンドユーザー,何ていうのですか,具体的に実用化後に利用・活用していただく人の意見をどれだけ効果的に聞くことができるかという意味で,一定の限界もあるのではなかろうかという印象は持ちますですね。例えば,工場で製品を作っている人が営業の人に聞いたからといって,営業の人が聞くよりは,店頭に行って製品がどう売れているか,製品を買う人の意見を直接聞く方がより一層良いヒントが与えられるかもしれない。このような意味で,そういうアプローチも,地震調査研究推進本部だけを出口とすることでいいかどうかというのは,良い実用化,応用を目指すという意味では若干どうかなと思う部分もありますですね。そこは役割分担でそうしている,というように決めてしまえばそうなのだとは思いますが,そんな印象は持ちます。
【平田委員】  寺田課長から問題提起されたので,あえて発言しますが,現行計画の建議ですね,平成20年のこの白いものの36ページを見ていただくと,現在の計画と地震調査研究推進本部との関係は一応この段階から整理しました。それで,どう整理したかというと,地震調査研究推進本部というのは「総合的かつ基本的な施策」というものを作って,それに基づいて調査観測研究を実施されているわけです。それに対して,この36ページの一番下のところに「『新しい総合的かつ基本的な施策』の策定に際して,十分に反映されることを期待する」とある。何が反映されるかというと,この本計画ですが,としてあって,ここを「期待する」というふうに書くのがこのときのある意味限界でした。これに対して宮澤委員は度々いろんなところで「期待されるというのは弱過ぎる」と言って,私もそう思ったのだが,現状というか,この実力からいうと期待するしかできなかったのですね。ですが,ここは検討の要があるので,課長がせっかくそう言っていただいたのですから,この場で議論するのか,あるいは測地学分科会で議論するか,あるいは地震調査研究推進本部の政策委員会で議論していただくかは分からないと思います。しかし,現在の総合基本施策の中には測地学分科会の建議した内容の成果を利用する,とか何かそういうことは書いてあります。その中には火山についても配慮する,というようなことも書いてありますが,そこはここで議論するだけではなくて,地震調査研究推進本部とこの測地学分科会とである程度議論を深めて最終的にはしていく必要があると思います。私としては,明らかに政策誘導型,トップダウンの地震調査研究推進本部の調査研究と測地学分科会が今やっているようなボトムアップの仕組みの両方が必要で,それが最終的に防災・減災の施策に活かされるべきだと思いますので,ここは十分整理する必要があります。
 もう一つ重要なのは,地震予知連絡会というのが地震の場合にもありまして,そこの役割をきちんとはっきりさせる必要があって,この委員会でそれをやる必要があるかどうかは少し分かりませんが,きちんと議論をして整理する必要があります。同じことは火山噴火予知連絡会についても必要だと思いますので,この構成の中に書くべきところは,この4のところの計画の推進の体制のところにきちんと書くことで,基本方針のところにそこまで細かいことを書く必要はないかもしれません。それをあらかじめスコープの中に入れられるように,基本方針の中には緩く書いておく必要があるかと思います。
【藤井委員】  少し補足ですが,今,平田委員の方から,地震調査研究推進本部の方で地震予知計画に関しては利用すると書かれてあって,火山に関しても配慮すると書いてあると言いましたが,それは事実ではなくて,予知計画そのものを全く認識はしてないです。地震と火山は関連する現象であるので,調査研究に当たっては火山についても配慮すると書いてあるだけで,予知計画に対しては何の認識もないというふうに,今の地震調査研究推進本部はそういう立場にありますから,平田委員の発言の一部は誤りです。
【小泉臨時委員】  出口に関しては,以前の委員会で森田科学官が作られた絵があったと思うのですね。では,あの絵についてその後どうなったのかということを御説明いただけたらいいのかなと。何でここでもう一度その話が出てくるのかって。あそこで非常に整理されたと僕は理解していたのですが。
【森田科学官】  私に急に振られて,そこに来るとは思わなかったのですが,ごめんなさい。その出口についてというところ,私は,やはり予知研究の成果というのは,一部,地震調査研究推進本部の施策に役に立てられたらいいな,期待するというスタンスで建議が書かれているわけですから,それを一つは目標にするというのは,次の研究計画でも一つの方向であると思います。それから,一般国民について,あるいは行政機関についてというところに矢印を打ってありました。これはご存じのように,今,橋田委員が仰られたところがあるのですが,研究者の中には,具体的に名前を挙げていいかどうか分からないのですけど,井口委員のように自治体と非常にリンクして防災にまで関わっている委員の方がおられるわけですよね。研究者がおられる。これ,やはり研究計画というのは非常にいろんな種類の人間がいて,多様な中で全体としてこちらの方に持っていく。そういったことをする研究者もいて,また,非常に基礎的なところでそういった研究者に情報を与える研究者もいます。そういった全体の研究計画の中で,最終的に先ほど橋田委員が危惧されていましたように,地方自治体のニーズをくみ上げる人がいて,その研究計画の中でどこが足りないかということを言っていただいて,研究計画が作られていくというのが,この研究計画の姿なのだろうと私は理解しております。絵に対する説明にはなってないですが,橋田委員に対する答えにはなっているかと思うのですけど,いかがですか。ごめんなさい。これ,また不規則発言になるから,1回,議長に返さないといけないですね。
【末廣主査】  いや,ですから,少しこの体制というか,どのようにつないでいくかということは,「期待する」というのは期待できないみたいに思われてしまうわけで,やはりしっかりしたフォーマルな関係が築かれてないとしたら,それはゆゆしきことだと私は思います。しかし,この委員会がそれをこうすべきだと言うわけにもいかないし,それを実施できないし,つまり,地震調査研究推進本部に命令できるのは誰なのかというような話だと思うのですが,そこを5年前にはクリアできなかったということですね。
【平田委員】  できなかったです。
【末廣主査】  何でできないのかよく分かりませんが,5年前できなかったことが,ここで新たにできるあれがあるのですか,課長。
【寺田地震・防災研究課長】  私,地震調査研究推進本部との関係を整理するという形で質問したつもりはなくて,この4番目のポツに対して,この研究計画は一体どのような立場で臨むのですか,ということをどこかで必ず議論した結果として出さないといかんのではないのかと思ってお話をしました。だから,同じように期待する,「何が出てくるか分かりませんが,使ってください」というのか,「こういうものを出しますから,お待ちください」というのか,どちらの立場で研究計画を作るのですか,というところをしっかりとしないといけません。何か何とかに配慮するだとか,考慮してとかというものというのは,結局,最終的にはやりたいことだけやっていましたという形に終わらないのか,という懸念だけを持ってお話ししています。だから,そこのところを行政機関,それは気象庁かもしれませんし,中央政府かもしれませんし,地震調査研究推進本部かもしれません,そういうところの意見を聞いた上で作るというのであるならば,研究計画の中にそれを書き込めばいいだけの話です。そこのところをどのような形で,ここのところをどのように変えましたという形で御説明するかということを,皆さんどのようにお考えですかということを問いかけているだけです。
【末廣主査】  ですから,私が今までの皆さんの御意見を聞いている限りでは,双方向の関係が築かれないといけないと思います。明らかにこの計画でやったことが具体的に減災・防災に役立たなければ,もう何のためにこの計画をやっているか分からないという認識を新たにしてステップを踏もうということです。そこは受け止め手が地震調査研究推進本部なのか,火山噴火予知連絡会なのか,地震予知連絡会なのか,はたまた国民なのか,それは少し私には今分かりませんが,そこはしっかりと相手を見据えて実際の実施案のところを書いていくのだと思います。よろしいでしょうか。宮澤委員。
【宮澤専門委員】  私は,前から現行計画に関しても,先ほど平田委員が言われたように,その成果が地震調査研究推進本部の施策等に反映されることを期待するだけでは不十分だと申し上げてきました。私自身,地震調査研究推進本部の地震調査委員会の委員を務めている立場でありながら,発言するのは非常に難しいと思っていますが,少なくとも現在議論している次期計画については,もちろん,地震調査研究推進本部の施策等にこの次期計画の研究成果が反映されることを期待する以上のことは望みたいと思います。それ以外にも,この研究成果の出口として,研究の内容自体,例えばそれぞれの地域における防災研究機関等との共同研究というものも体制の中で位置付けてしまえば,直接,例えば地震調査研究推進本部とか,あるいは内閣府の中央防災会議等を通さずとも,十分に研究成果というのは活用できるのではないかと思います。それは体制のところで書けばいいのであります。別に地震調査研究推進本部や,あるいは中央防災会議をないがしろにするということではもちろんありません。地震調査研究推進本部とか中央防災会議は国全体の立場として見ないといけませんが,もう少し個々の非常にローカルな,地域で見たときには,別のやり方として直接,社会防災とか減災等に役立つような研究というものができるので,それを計画に盛り込むことはできると思います。。
【森田科学官】  済みません,少し私,先ほどの発言,言葉が足りなかったと思うのです。今,宮澤委員が御指摘されたように,多分この研究計画の中に参加している方はそれぞれ行政機関の委員になったり,あるいは,私だったら火山噴火予知連絡会の委員だったり,あるいは伊豆東部火山群の地域防災会議の委員だったりしているわけですね。そういったところでやはり地域の要望なり何なりというのはくみ上げて,自分の研究計画にやはり反映させているわけです。そういったことを通して,実際に社会,研究成果を防災・減災に役立てることについては考慮した研究計画になるように努力しているはずなのです。しかし,こういったことは非常に地道で目立たないので,なかなか何をしたということが書けないというのが実態ではないかというふうに理解しております。
【平田委員】  私もそのとおりで,実はここにいる人たちは,地震調査研究推進本部であるとか,予知連絡会であるとかの委員とかなりダブっているので,内容的には相互に何をやっているかよく理解した上でそれぞれ計画を立てたり実施しています。だが,制度的に,測地学分科会の研究計画及びその成果が地震調査研究推進本部の調査研究に活かされるのは,正に期待するとかそういうレベルであって,担保されていません。もっと言うなら,測地学分科会に地震調査研究推進本部の調査委員長であるとか,政策委員長が役職指定で参加はしてないし,逆に,地震調査研究推進本部の委員に測地学分科会の,実態的にはほとんど同じなのですが,役職としては参加していないのですね。それは,その組織ができた歴史があるので,難しいことは重々理解してはいますが,やはり最後のぎりぎりのところでは,もう随分こういう体制が続いている以上はあるところで議論をしていただいてはっきりさせる必要があると思います。それと,宮澤委員が仰ったように,実質のレベルで地域の行政機関等に貢献するということは重要なことなので,それはもちろんやっていく必要はあると思いますけど,その両方が必要ではないかと思いました。
【今給黎臨時委員】  少し駄目押しをさせていただきます。メーリングリストで書いたときのいわゆる体制や運営方法の抜本的な見直しという言葉が出てきたのは,私は外部評価委員会も傍聴させていただいて議論を聞いていて思ったのです。要するに,外部評価の先生方の物の見方,これは予知計画と言いますか,およそ研究計画に対する批評・批判の部分であるとともに,地震調査研究推進本部ができて以降のやはり国としての地震調査研究への批判でもある部分があったわけですね。ですから,今,平田委員の方からお話があったように,いろいろ経緯はあるが,今までこういう状態で来ているのに対して,やはり体制,運営方法に関する抜本的な見直しというのは,正にそこの部分を避けて通れないようなところまで来ているからこそ,ああいうようなところが外部評価報告書の方で先に出てくるのではないかなと,そういうことを強く思っているのですよね。そういう意味で,ただ,法律に基づいてやっている以上は,やはり地震調査研究推進本部の存在というのは非常に重くて,国の施策としてやっているということが,やはりそれは非常に重いものだと私は理解,私は役所の人間ですから,そういうふうに思うのですね。ですから,そこのところをやはり研究者が自分の研究からボトムアップで入っていくから,そこの体制のことについてまではあまり意識されないのかもしれません。やはり出ていって,一定の負い目を持って世の中に対してそれが影響力を持つというのは,そういうような法律に基づいた行政の組織があってこそ,そういう影響力を持ち得るのかなという,そこがやはり出口として一番いいのではないかと思います。
ずっといわゆる再検討委員会であるとか外部評価委員会レビュー,それからこの次期計画の委員会を通して言われているところを見てきた中で思い至ったところなのですよね。そういう意味で,私は先ほど課長から発言があったのは非常に重いと申し上げたのは,課長のお立場は両方の組織にやはりにらみの利く立場でいらっしゃるので,やはりそこは,今日,平田委員の方から言われたように,地震調査研究推進本部の方はここにはいない。それから,地震・防災研究課の方だって結局縦割りになっていて,測地学分科会の担当と地震調査研究推進本部の御担当は別で,結局,地震調査研究推進本部の担当の方は,ぱっと見た限り,今日事務局側の席に座っていらっしゃらない。だけど,課長だけはきちんといらしているというところからいうと,やはりそこの認識があってこそ御発言されたのだと思って,私はそこを期待して,少しかえって課長にはね返るようなことを申し上げているのですが。
【末廣主査】  はい,ありがとうございます。これは私の見るところ,この委員会で提言はできて,少なくとも議事録に今日これだけ重要な議論が出たということは書けるので是非記録にとどめておきたいと思います。しかし,ここでは残念ながら多分決められることではないが,今給黎委員の言われたポイントは多分重要で,お互い委員を兼ねていても,あるいはリエゾンとして出席していようが何だろうが,そんなのはもう多分何の役にも立……それは失礼ですね。あんまり効力を発揮しないで,やはり責任が生じるような立場で参画してないと多分駄目です。なので,その組織を作れるのは別のところだと思いますので,それは是非,今日そういう議論があったということで検討していただきたいと思います。他に。はい,どうぞ。
【市原専門委員】  以前この話が出たときに,地震と火山で随分体制が違って,火山は火山で分かりにくいということと,先ほどから話が出ています,火山の方が地域ともつながりが深いということがあります。これについて,非常に分かりやすく整理されていると皆さん認識されている森田科学官のダイヤグラムを,火山用のも一つ作っていただければ,いろんな違いもはっきりしますし,私とかあまりよく分かっていない人間にも分かりやすいと思うのですが,改めてお願いしたいと思います。
【末廣主査】  それは,我々の理解を進めるために? 外部に説明するために?
【市原専門委員】  いや,多分,あの図は外部にもまた出ていくのではないかと思うのですけれど,どうなのでしょう。あの図を使うときに,火山の方が全然ないのはいろんなところで誤解も生むでしょうし,議論がややこしくなるのではないかと思ったのです。
【末廣主査】  私の理解は,ここの中の理解を助ける図で,それにしても火山を火山として……何か,森田科学官,提案ある?
【森田科学官】  ごめんなさい。火山はうるさい委員の方が何人かおられますので,よく相談しながら作成したいと思います。(笑)
【末廣主査】  はい,ありがとうございます。少し重要なポイントだったので時間を使いましたが,この辺で,私の理解では重要なポイントはかなり議論いただけたのではないかと思います。しかも,大体のコンセンサスもあるのではないかと思いまして,それで,加藤委員,西村委員,是非ここは確かめておきたいというのはありますか?大体今日のところは。
【加藤主査代理】  大体。
【末廣主査】  いいですか。
【西村主査代理】  はい。
【末廣主査】  はい,ありがとうございました。
 それでは,とりあえずこの議論はここで一旦閉めにしまして,また何か上がってきたらメーリングリストを使っていただくということです。基本的には,この後,この箇条書きが文章に変わっていくということで,また皆さんの御意見,また実際に文章を書いていただく作業に加わっていただきたいと思います。残った時間ですが,この計画をどうタイトル付けるかという問題がありまして,先ほどどなたか仰いましたが,予知だ,予測だ,評価だって,何が何だかというお話もありました。それで,その辺の御意見を伺いたいと思うのですが,その前に,もしよろしければ,少し別の立場でこれを見てこられてきた保立委員に,メーリングリストにも流れましたが,ここで改めて簡単にお話しいただけると幸いです。
【保立専門委員】  前回,前々回ですか,意見を言いましたが,部外の者からの意見だったわけですが,いろんな意見を頂いて,その後,勉強し直しました。まず最初に申し上げたいのは,田村先生がメールで指摘されましたように,自然現象としての地震・噴火などはあくまでも災害の誘因であって,災害の素因は土木・建築などに伴う社会化した自然の脆弱(ぜいじゃく)性にあるということであります。これもメーリングリストに書いたものでありますが,社会にとって必要なのは,災害を軽減し,それを特に人命に関わらないようなものにする。そのために必要なレベルでの災害の予知であるということが一番大きいように思います。この災害予知の基本的な責任はやはり一般には行政にあるのではないかと。もちろん,その方向を調整し,決定するという意味では,政治に最後に強い責任が掛かるわけですでも,それでも災害素因の軽減に継続的な責任を持つ行政の位置は重いというふうに思います。それは狭い意味での防災行政のみに関わる問題ではないわけでありまして,これは行政全体に掛かかってくると。災害素因に関わらない形でこの国土を管理していくという意味では行政全体に掛かってくると。地殻災害を予知し,人命を最優先し,社会の持続的な発展の条件を守るという原則は行政の全ての基礎にあると。非常に重大だというふうに思います。ここで言う災害の予知ですが,これは災害の予知情報を社会的に発信し,更に必要にして可能な場合は注意報を発し,あるいは警報を発するということまで含むと考えております。
 メーリングリストでは図を配りましたが,こういう図でございますが,橋田委員が笑っておられますが,とにかく考えてみたということであります。やはり行政のみが多種多様な災害発生の時期,地域,強度によって災害の素因がどのように発現するかという状況を察知する条件を持っていますし,注意報や警報の社会的影響を認識できるわけであります。やはり災害予知の中心,災害警報の中心として機能されることが要請されるわけでありまして,もちろん,そのためには現在の防災行政の体制ではなく,従来,問題提起がありましたように,十分な専門性を持ったいわゆる地震火山庁が必要だというふうに勉強いたしました。こういう災害予知を中心にこの図を描いてみたわけでありますが,左側がこれを学術的に支える自然現象としての地震・噴火の科学的な予知であります。事柄の性格からいって,減災のためには社会自身の中に生きた防災力のようなもの,そしてその前提となる社会的な予知の能力が絶対的に必要となると。これは社会にとっては災害に対する自衛と自己保存の問題でありまして,それを学術や行政に委任することはある種自殺行為になるわけであります。社会はやはり災害素因を正確に認識するための社会的な予知能力を必要としていまして,政治と行政の責任はその上に展開すると。
 ここでの問題の中心は学術的な予知ですが,まず科学的な予知については,自然科学的な予測研究が位置すると思います。これは,やはり私は応用研究であるというように位置付けるべきで,地震学・火山学の基礎研究はこの応用研究とは異なるものとして社会的に保障されなければならないと。同時に,地震学・火山学の場合は,この応用研究の実用性を基礎研究の方向を定める上での重要な条件にするということだろうと思います。この間,むしろこれは,こういう言葉で言われているかどうかは別にして明らかなことだと思いますが,この間,強調されているのは,地震学の科学的予知を災害の軽減に結び付けるためには,国土計画ですとか工学ですとか行政学ですとか社会学だとか,いわゆる社会技術に関わる諸学と地震学の共同的な関係が極めて重要であるということでありまして,この図で言えば,これらの諸学が地震学との共同を意識して防災研究を旺盛に展開する必要があるというように思います。私は歴史学ですが,そういう立場から言いますと,やはり地震学・火山学は自然科学ですから,この防災研究の分野は重要な境界領域,いわゆる学際領域の研究分野として,是非,社会科学の側でイニシアチブをとるべき分野だというように私は思います。何しろ地震学・火山学の側は世界的にもトップレベルの分野であるわけですから,それを支えることは日本の学術世界にとっては,いわゆる分流後の試金石となるという形で位置付けるべきものだと思います。
 特にこの図の関係で強調しておきたいのは,防災研究が要するに社会的な予知のトップに座るということでありまして,防災研究は科学的予知の状況をにらみながら,社会的予知の先端に自分を位置付けなければならないということだと思います。何か学術の状況を見ておりますと,法学,経済学などはそういう意識を十分持ってないように思いまして,今日の議論を聞いていましてもこの点が最大の問題であるように思いました。いずれにしましても,学術は地震学・火山学の全体に位置する予測研究と,それから防災研究の双方に責任を持って,それを通じて全体として災害予知の体制を支えていかなければいけないということでありまして,これは学術全体の責任だと思います。阪神大震災後,学術会議などで広く防災の議論が行われて,その中で地震火山庁が必要であるということで,私は尾池さんの著書でこういう議論を知りましたが,この議論を再び起こす必要があるのではないかと思います。それがないと,やはりなかなか災害の行政的予知を行う十分な専門性と機動的な体制が保障できないのではないかというふうに思います。
 最後ですけど,ここで使用している地震の「予知」という言葉ですが,地殻災害の発生は,あらかじめ予測するということだけではなくて,あらかじめ災害の発生を認知していると言いますか,広い意味での予知ということです。災害について考え,備えようとしているという,そういうニュアンスを持った言葉だろうと思います。特にこういう図を前提にいたしますと,この広い意味での予知という言葉を使用することが重要だと私は思います。要するに,端的にいえば,こういう科学的予知と社会的予知と行政的な災害予知と,この三つの予知によって,その相乗する力によって災害を減少させ,軽減化を図るということになると思います。地震学だけではとても無理な話だろうと私は思います。
 ただ,注意が必要なのは,この前申し上げたことですが,地震学会で一般的な「予知」という言葉の使用方法とは,これは異なっていることでありまして,地震学会では「予知」というと,あのブループリントに出てくるように3要素をいうことになっております。これはやはり予知イコール警報という形で,予知という言葉を非常に狭くとった用語法である,ということができると思います。これは率直に言って,やはり部外者には分かりにくいのではないかと。予知と予測の言葉の違いというのを説明してから話が始まる,ということではどうかというふうに思います。もちろん,内容としては正しい面を持っていることは前も申し上げたとおりでありますが,私,茂木さんの本を読みまして,それから日本地震学会の地震予知検討委員会の『地震予知の科学』を読みまして,やはり見事に議論がとにかく必要だということは言われている,という強い印象を持ちました。そういう意味では,地震学の側のこれまでの見解が正当なことは明らかだと思いますし,「予測」という言葉を研究者としては使いやすいのも当然だと思うのです。ただ,現状では,学術の世界のみではなく,政治,経済,行政,社会の各局面で災害予知,こういうシステムの中で用語法を明瞭にすることが必要になっています。やはり,予知,予測,注意報,警報,警告などの言葉を位置付けて,必ずしも地震学の伝統的な用語法にこだわらずにやっていいのではないかというふうに,今給黎委員から意見も頂いて,その後ずっと考えていたのですが,少し長くなって済みませんでした。
【末廣主査】  はい,ありがとうございました。という非常に包括的・総合的な保立委員の御説明を頂きました。これを今ここで議論しましょうという話ではございません。今,我々がそういった見方もあるのだということ,つまり,ある意味,皆さんの専門の中でしか使われていない用語が外に出ていったときに,どのように解釈されるかというような問題もあるのだということを踏まえて,もうあまり時間がないので,残りはメーリングリストか,また次回の会合かになるかと思います。 
それで,この計画を一体どのように呼ぶのが良いのでしょうかね,というざっくばらんなところなのですが,もし何かすばらしい提案があればお伺いしておきたいのです。少なくともメーリングリストというか,私,これは是非聞きたいのですが,ここで,予知・予測を定義したところで,多分何のインパクトというか,ここで意図したように受け止めてもらえる保証はどこにも多分ないと思います。ただ重要なことは,この研究計画の中身で一体具体的に何をやろうとしているのかが,分かるようになっていないといけないなと。だから,予測をしますとか,予知をしますとか書いてあったときに,「これでは何をやりたいのだか分からないね」と言われてしまうわけですから,そういうことはないようにするべきなのだろうと思います。そのときにだから,予知に統一するのか,予測に統一するのかというようなことは,あまり時間かけて議論しても少し不毛なのかなと私自身は思っているのです。それも踏まえて,そもそもタイトルに予知・予測を入れるか,予知・予測だけではなくて,減災だ,防災だという視点をしっかり入れていきましょうということですから,それをどう表現するかという問題もあろうかと思います。少しもう段々頭が飽和してきていると思いますので,フリートーキングな感じで,御意見があれば言っていただきたいと思います。どうでもいいと思っているわけではなくて,難しいなと思っていらっしゃるのかしら。何か一つぐらい提案があってもいいような気がする……。
【橋田臨時委員】  誰も言わない場合はとりあえず。今,保立委員からお話があった点というのは,予知計画が立ち上がった原点に帰ったときにやはり社会的要請というのが非常に強かった部分があるので,そういう要請を踏まえた研究であるということをやはり明確に示していく必要があると思います。私は予知という言葉を使っていいのではないかというふうに思っていて,それはやはり一般の国民の皆さんとかいろいろ話を聞くと期待する部分があるわけで,副題ぐらいで使う方が相場観としていいかなという印象もあるのです。災害を軽減するとか,国民の命を守るでもいいのですけど,そういうための地震・火山の研究なのだろうというように思っていて,そのときに予知という言葉が,地震であれば,地震が起こる準備から始まって,滑りが始まり,狭い意味での地震が起こり,地震動・津波,さらに余効変動が起こって,ありとあらゆるところを解明しながら軽減につなげていくのだという,そういう要請に応えるものでなければならないのではないか。だからこそ,国家のプロジェクトとしてやろうとしているという話なのではないかというように思います。なので,予知という言葉はどこかに,副題でもいいから残していく方が良いのではないか。それが,研究者側が考えるよりはるかに一般の人が願っていることなのではないかと。50年前の原点は正にそれをやろうとしたのではなかろうかと私自身は思っております。少し答えになってないかもしれない。
【末廣主査】  ありがとうございました。時間があまりないのですが,あと数分。ここで議論が尽きるとは思えないので,また継続ですけど。何か結局,今日の資料1を1行でまとめろと言われたら,私だったらですよ,私だったら,「地震・火山災害の科学的予知研究」なのかなと思いますが。はい,田村委員。
【田村専門委員】  私,そういう御意図かどうかはよく分からないですけど,今お聞きして思うのは,一般的に観測研究計画と聞くと観測が中心というか,大きな部分で,実際にはもしかすると予算の大きな部分かもしれないですけど,それはすごく一つ,観測ばかりして,というような言葉に実は聞こえてしまっているのは事実です。そのため予知というよりも,私は何かそちらの方が気になります。予知は残していただいた方が。まだそこに着手するだけのパラダイムシフトは起きてないというふうに思います。
【末廣主査】  今ここであまりやるのは無理かな。それでは,是非皆さん,今日,保立委員のお話も聞いていただいたし,方針に関してしっかり突っ込んだ議論もありましたので,それを踏まえて,一体これを何と呼んだらいいかということをメーリングリストでも流していただければと思います。それでは,この後の進め方について事務局の方にお願いしたいと思いますので,提案ください。
【重野地震火山専門官】  はい。それでは,今後の作業の進め方についてですが,先ほどもありましたが,実施機関からのアンケート調査について,現在,集計しております。集計が終わり次第,基本的内容や具体的な計画の実施内容に関して作文,本日やられた方ではない方の作業も作成する必要があります。それから,併せて,今日の議題になった方も,今後,並行して作業を進める必要があります。集計作業等に関しては,事務局から主査あるいは主査代理に少し相談させていただきながら,委員の先生方にも,先ほど主査の方からもありましたが,適宜振っていただいてお願いすることかあるかもしれません。これらの作業をできれば6月中,遅くても7月の初めにはまとめという形で原案として取りまとめる必要があると考えておりますので,よろしくお願いします。
【末廣主査】  はい。という進め方の提案ですが,よろしいでしょうか。はい,どうぞ。
【今給黎臨時委員】  確認です。機関ごとに一応アンケートが来て,研究課題等を提出したわけですが,そのときに,前回の委員会のところまでで一応ジャンル分けされていたものに従って提案項目を一応整理した格好でお出ししています。今のお話では,これからそれを整理してというお話だったのですが,そうすると,項目自体はもうこれから変わらないということなのでしょうか。少しそこら辺,要するに,まだ今日のこの議論からいうと,正にこれ,いろいろとまだいじるところが残っているというような雰囲気も残っているのです。そうすると,それはまた作業が折り返し来るということも想定されているということですか。
【重野地震火山専門官】  項目番号とかの変更に関してはどうなるか分からないのですが,研究内容に関してはとりあえずまとめて,できる範囲でとりあえず並行して準備は進めます。作業的なスケジュールもありまして,できるところからやっていきます。一部,ひょっとすると手戻りになるところがあるかもしれませんが,まだ少し作業集計中なので,どうなるか分か……。
【平田委員】  いや,だから,私の理解では,いわゆる内容の骨子というのがあって,目次みたいのがあって,大項目,中項目,小項目と今出ていますけど,あれは飽くまで作業上の現時点の整理です。なぜなら,この基本的な方針とかというのは今議論しているわけですから,それによって具体的な内容は修正されることは当然期待――期待というか,予想されるので,今給黎委員の御心配のようにこれで固定されることはあり得ないと私は思うのです。だから,むしろ具体の提案を聞くということと,ここの全体で今,基本方針の議論をして,一段高いレベルでもう一回,たたき台の研究計画の骨子がより良くなっていくだろうということです。例えば少し見ても,小項目があるところとないところがありますよね。今までは割と形式的にやっており,今の方針では必ずしも大項目,中項目,小項目まである必要はないという方針でやっているけど,それは議論によって変わるかもしれないし,アとかイとかウとかという振り出し方も議論によって多少は変わることもある。ただ,大きな1,2,3,4という柱ぐらいは,幾ら何でもそれを変えてしまうと,また全部最初から議論しないといけないから,それは変わらないとは思いますが,重要なことについては議論して変えていくべきではないかと思います。そのために一生懸命議論している。一方,後ろが決まっているからどんどん作業しなければいけないという事務局のあれはあるので,それはどんどん形式的には整理していくが,それで決まったわけではありません。最後にこの委員会で決めていただいたものを地震火山部会でも議論をしますし,それから測地学分科会でも議論すると思いますので,そういうのが私の理解です。
【末廣主査】  よろしいですね。
【今給黎臨時委員】  はい。

[議事2.その他]

【末廣主査】  あとは,そうしますと,残されたその他ですが,何かお持ちの方いらっしゃいますか。いらっしゃらなければ,事務局からお願いします。
【重野地震火山専門官】  はい。今後の予定ですが,次回の委員会については6月13日を予定しております。詳細に関しては別途御連絡させていただきます。
【末廣主査】  はい,どうもありがとうございました。今日,いろいろ大変内容の濃い指摘があったと思いますので,しっかりと咀嚼(そしゃく)して文章に変えていきたいと思います。また,重ねてお願いですが,皆さんは書く側でもありますので,是非書く方への貢献も,名指しでいきますので,よろしくお願いいたします。それでは,本日,どうもありがとうございました。次回またよろしくお願いします。

以上

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