地震火山部会 次期研究計画検討委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成24年12月28日(金曜日)10時~13時

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 議事運営等について
  2. 次期研究計画の検討について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員)平田、藤井
(臨時委員)井口、今給黎、宇平、末廣、関口、仙石、仲西
(専門委員)市原、加藤、小泉、田村、西村、保立、宮澤

文部科学省

寺田地震・防災研究科長、鈴木防災科学技術推進室長、吉田地震調査管理官、迫田地震・防災研究課長補佐、安藤地震火山専門官、森田科学官、吉本学術調査官、他関係官

5.議事録

[寺田課長挨拶]

【寺田地震・防災研究課長】  本委員会は,平成21年度から5か年の計画として実施してきた地震及び火山噴火の予知のための観測研究計画を,自己評価または外部評価を受けて,その趣旨を踏まえた新しい計画として作っていただくための委員会です。
現行の計画については,東北地方太平洋沖地震の発生を受け,去る11月28日に,残りの期間分について観測研究計画を見直して,その計画の推進について関係大臣に建議されたところですが,特に,次期計画に向けた外部評価委員会からは各種の御指摘を受けています。このため,その提言を踏まえ,10月26日の測地学分科会では,次期研究計画の方針について審議し,11月12日の地震火山部会では,その基本的考え方について審議し,本委員会にその具体の検討を託す形になっています。つきましては,次期研究計画が,外部評価の指摘や社会からの期待を受けた計画として,優れた成果を出していく計画となるように,その骨子,各論を検討していただきたいと思っています。

[委員,事務局及び主査の紹介,委員の出欠状況]

  • 事務局より,委員について紹介された。全委員出席。

[末廣主査挨拶]

【末廣主査】  現在の私の所属は,世界26か国が参加している統合国際深海掘削計画の国際運営組織です。
平成21年度から推進されてきた現行計画は,予測システムの開発をより明瞭に指向した研究に重点を置いて進められてきたようですが,本委員会で今後検討する研究計画の内容についても,国内・海外含め大きく日々進歩しているという認識です。
しかし,東北地方太平洋沖地震の発生を受け,地震の活動または火山噴火の予知・予測情報を,どのように社会へ出せば国民の付託に応えられるのかということを,改めて考え直さざるを得ない段階にあります。そのような大変厳しい状況にありますが,それを学問の進歩とうまく整合させて新たな研究計画を形づくることができればよいと考えています。
外部評価委員会からは,現行計画を抜本的に見直し,観測研究への組織,体制,運営方法などを改善する必要があるという大変厳しい提言を頂いています。さらに,測地学分科会及び地震火山部会は,この提言を踏まえ,平成26年度からの5か年計画の方針及び基本的な考え方について審議し,本委員会の設置を決定したということです。よって,本委員会では,これらの方針や考え方を踏まえ,次期研究計画の骨子及び各論を検討し,原案を作成していきたいと考えています。しかしながら,時間的にタイトなスケジュールではあるが,それを言い訳にはできない。是非御協力いただきたい。

[主査代理の指名]

参考資料2の測地学分科会運営規則の第3条7により,末廣主査から加藤専門委員,西村専門委員を主査代理に指名した。

[1.議事運営について事務局から説明]

参考資料1及び2を用いて科学技術・学術審議会及び測地学分科会の概要について説明した。

[2.次期研究計画の検討について]

【末廣主査】 それでは,議事の2番目,次期研究計画の検討についてに入りたいと思います。まずは経緯などについて事務局の方から説明をお願いします。
【安藤地震火山専門官】  それでは,本委員会設置までの経緯を御説明差し上げます。
 非常に複雑なので,分けて説明をします。まず,見直し計画について御説明します。大前提ですが,現行の計画は平成21年度からの5か年計画で始まっております。内容については,机上資料にもとじさせていただいておりますが,この計画については平成20年7月17日に関係大臣に建議をされています。この計画は平成25年度で終了になります。
 ただし,御存じのように,平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生を受けて計画の見直しを行いました。その計画書は本日配付した冊子で,先月11月28日に関係大臣に建議をしたものです。具体的な内容については,平成21年度からの計画書について総点検を行った上で,不足していた研究,すなわち超巨大地震に関連する研究計画を追加した形になっています。この見直し計画の審議の過程においては,2月と8月に科学技術・学術審議会の総会に審議経過報告という形で報告させていただいていますが,その都度,大きな作業として,意見公募,関連学協会への意見聴取,それから8月に科学技術・学術審議会の総会に報告したものを全て英訳し,海外の研究者の評価を実施しました。なお,頂いた意見の全文については,今日の会議資料では配布しませんが,委員の皆様には事前にメール等で御連絡させていただいたところです。本日は抜粋資料として参考資料3に準備させていただきました。
 それから,もう一つ次期計画にかかる経緯について説明します。平成21年度からの計画の3年目に当たる平成23年度に,測地学分科会では,自己点検評価を行っています。その資料は机上資料にとじていますが,内容については,3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震のことも含めてレビューされています。
 報告書は23年度末までのことをとりまとめていますが,その結果を踏まえて,次期研究計画に向けた外部評価を実施しています。この報告書についても机上資料にとじております。
 その中で特に大事なところは,3ページ目からの総評ですが,一番下のところから,4ページ目の中ほどまでになります。この部分にについて参考資料4として抜粋させていただいていますので,ここで読み上げさせていただきます。
(参考資料4の読み上げ)
 それで,この外部評価委員会からの指摘を受けて,それを踏まえた形で,10月26日の測地学分科会で次期計画の方針について審議・決定しています。それが資料2-1になりますが,これについても読み上げます。
(資料2-1の読み上げ)
 なお,その議論の際の主な委員からのコメントについては,資料2-2に箇条書きで配布させていただきました。
 さらにこの方針を受けまして,11月12日の地震火山部会では,次期計画の基本的考え方を審議して決定しています。それが資料3-1になります。これも読み上げさせていただきます。
(資料3-1の読み上げ)
 同様に,議論に関わる委員からの主なコメントについては資料3-2に取りまとめています。
 以上が,本委員会設置までの経緯です。
【末廣主査】  ありがとうございました。今の説明経緯について,委員の方々からの質問などあればお願いします。
【平田委員】  資料にはきちんと書いてありますが,今,御説明があった中で,理学だけではなくて,社会科学や工学分野の研究者との強い連携うんぬんという言葉が繰り返し出てきましたが,これは中ではもう少しちゃんと書いてあって,社会科学分野だけではなくて人文・社会科学分野ということです。本日はその専門の委員も御出席だと思いますが,周辺の分野ということでは,特に地震学あるいは火山学では非常に古い時代のことが重要ですので,人文・社会科学分野であるということを補足させていただきます。
【末廣主査】  ありがとうございました。
 外部評価報告書では,最終的に国民にどう還元するかという観点が強調されていますが,この御説明はやはり科学技術・学術審議会においての御説明だったと思います。ただし,この計画は文部科学省以外の省庁の機関も参画していますので,その辺の構造的な関係の概略を御説明いただけませんか。例えば,地震調査研究推進本部との関係についてはいかがでしょうか。
【寺田地震・防災研究課長】  机上に,平成24年9月6日に改訂された「新たな地震調査研究の推進について」の冊子が配布されています。こちらは地震調査研究推進本部の決定文書です。これに基づいて,文部科学省だけでなく関係機関が地震調査研究を推進しているのが現状です。
 地震調査研究推進本部との関係は,この資料の14ページの下,2の(2)のところに,『地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の推進について(建議)』との関係との見出しの部分で整理しています。地震調査研究推進本部はいろいろな具体的施策を実施していますが,その基礎となる研究を地震及び火山噴火予知のための観測研究計画が担っているという整理をしており,こちらの方の研究成果を取り入れて,全体として地震調査研究を推進するということになります。
【末廣主査】  研究の成果を取り入れて推進していくというのは具体的にどのように行われているのでしょうか。
【平田委員】  『地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の見直しについて(建議)』の17ページの一番下に地震調査研究推進本部との関係が記載されています。先ほど,課長が御説明されたのは,地震本部側から見た建議された計画になりますが,こちらの計画では,「本計画は,予知の実用化を目指す研究者の自由な発想に基づいた議論の上で策定され,地震予知研究,火山噴火予知研究を大学や関係機関が役割分担をしながら推進するための計画」であるのに対して,地震本部の策定した「新しい総合的かつ基本的な施策」は,今後10年間,国として進めるべき調査研究がトップダウン型の計画であるというふうに位置付けています。
そして,どのようにこの計画が地震本部の調査研究に生かされたかという例がその次に,「こちらの計画で基礎研究が行われて,その成果が地震本部のトップダウン型の研究を進める基礎になった」と書かれています。
更に最後には,「今後も引き続き,本計画に盛り込まれる実施内容が,「新しい総合的かつ基本的な施策」の策定に際して,十分に反映されることを期待する」と書かれていますが,実際に幾つかの項目については成果が取り入れられています。これらの成果については,自己点検及び外部評価報告書に,地震と火山が統合された成果として伊豆東部の地震活動の予測が挙げられています。これはいわゆる伊東沖の群発地震がマグマの活動によって駆動されているということが基礎研究として明らかになって,マグマの活動を監視する地殻変動の監視をすることによって群発地震を予測するという手法で,地震本部の調査に利用された上,更に気象庁の業務に活用された例として説明されています。
【末廣主査】  ありがとうございました。
 海上保安庁が行っている海底測地についても,サイエンスが上手に取り込まれた例ではないかと思いますが,そういった仕組みはあるということなのでしょうか。ただ,火山噴火予知の研究については地震調査研究推進本部のような組織がないので,少し異なるのでしょうか。
【藤井委員】  主査の御指摘のとおりで,いわゆる地震調査研究推進本部では,地震に関することのみを取り扱っています。ただし,「調査研究を実施する場合には火山研究にも配慮することとする」という一文が入っているだけで,噴火予知計画の成果が政府の政策の中に生かされるという仕組みはどこにもありません。気象庁の業務を通じて予知計画の成果が,例えば噴火警戒レベルの設定,あるいは噴火警報の発令という形で防災上は役立てられていますが,政府間の仕組みの中には取り入れられていないというのが現状です。
【宇平臨時委員】  補足します。とはいえ,やはり火山の方が地域防災には非常に貢献しています。それは火山の周辺の地域防災計画であったり,例えば新燃岳のように噴火シナリオを非常に短い時間の間に改訂しなければいけないというところがあったり,そこは研究者が関与して,地域の防災については相当コントリビューションしている。また,火山情報,噴火警戒レベル,研究者の知恵も借りながら運用しているところであって,防災情報という観点からしても貢献が高いというところであります。
【末廣主査】  ありがとうございます。
 この時間は,我々の今,与えられた任務を遂行していく上で,一体どういう境界条件の中でやっていかなければいけないのかということを少し皆さん同じ共通理解になるようにと思いまして,いわばクラリフィケーションタイムみたいなものですが,ほかにはよろしいですか。
【安藤地震火山専門官】  事務局から,もう一点追加で御説明させてください。参考資料5の「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について(中間まとめ)」についてですが,現在最終案については作業中なので,少し表現の変更はありますが,この分科会に非常に関連するところとして,4ページ目に地震及び防災に関する検証,復興,再生及び安全性への貢献という項目がございます。まず,先般の大地震を受けて,事前にその可能性うんぬんを国民に十分に伝えられなかったことが書かれており,これを踏まえて,自然科学のみならず,社会学,考古学,歴史学などの人文・社会科学も含めた研究体制,それから歴史資料を含めたあらゆる情報収集とともに,総合的かつ学際的に研究を推進する必要があるということがまとめられています。さらに,次の段落では「研究手法や研究体制の抜本的見直しを早急に行う必要がある。地震学や火山学などの現状を国民に対して丁寧に説明するとともに,科学的見地から,自然災害に対して適切な防災対策が取られるよう,助言を行う取組が必要」と受けており,最終案ではさらに,「それらを踏まえて新たな研究計画を策定すべきである」と結んでおり,このように科学技術・学術政策の在り方の観点からも提言しております。
【末廣主査】  参考資料5について追加の説明を頂きました。
【小泉専門委員】  新たな計画に対する提言のところで,社会科学というような言葉が書いてあって,成果の還元ということが書いてありますが,その役目は,地震本部の方にもありますよね。我々のこの計画見解に関するレビューはされていますが,1995年以来取り組まれてきた地震本部の施策に関しては,レビューなり評価なりはどのようにされているのでしょうか。
【寺田地震・防災研究課長】  地震本部で取りまとめている「新たな地震調査研究の推進について」は,平成21年4月21日に策定した際,自己評価または評価を行い,その結果に基づいて,平成21年度からの今後10年間の計画として取りまとめています。さらに,東日本大震災を受けて平成24年9月6日に改訂しています。ということで,基本的にはこちらの計画も適宜適切に見直しを図ってきています。
【保立専門委員】  社会科学または歴史学の立場から,先ほど主査がおっしゃった境界条件の観点について御紹介をします。
 実は私も869年の貞観地震の資料を読んでいましたが,研究が進んでいて,しかも地質と考古学の調査が行われているということについては知りませんでした。地震の直後に開かれた東京大学地震研究所の集会で初めて状況を知りました。単に国民とアカデミーの問題だけでなく,アカデミー内部,異なる分野相互の間で知られるべき情報が伝わっていないということについて大変大きなショックを受けました。東北地方の歴史の研究者はよく御存じだったので,もう少し時間があれば869年地震についても研究して,問題提起する方向にはあったわけですが,彼らは1000年の岩手・宮城地震の後の資料レスキューの仕事がかかっていましたし,まず慶長奥州津波の研究が中心になっていたわけです。
 これはやはり学術世界,大学とアカデミーの総力をやっぱり上げるべき課題であるというように考えますので,歴史学,人文・社会科学の立場からできることは,要請を受け,協力をしたいと考えているということです。本当にアカデミー全体の大変な重点課題であるというふうに位置付けるべきであると思います。
 講演や小学校での授業において,私はプレートテクトニクスと地震が断層によって起こるという学説を紹介する機会がありました。それで感じますのは,地震の発生のメカニズムや周期性が誰にでも分かる形で明らかになっているということです。この列島においては,それはいわゆるダーウィン革命と同じような自然観の変革につながるだろうと思います。これをやはりそういう視野で教育から研究から全てに貫いていくことが必要であると考えます。特にヨーロッパやアメリカと比べて文理融合の研究が極めて遅れていると考えていて,この分野での文理融合が文理融合全般の進展にとっても試金石と位置付けられるのではないかと思います。
 歴史,人文・社会科学で私が承知している限りでは,一つは内閣府で災害教訓の継承に関わる委員会が形成されているはずです。それから,文部科学省で,3.11の後,全国で歴史資料,地震資料のレスキューの動きが文化庁を中心に推進されています。歴史の学会では,全国各地に14ほど歴史資料ネットワークが形成されて,地震の研究や地震資料の保全等に取り組んでいるというところです。
【末廣主査】  どうもありがとうございました。正にただいまの御発言いただいたようなことをしっかり議論していくことが重要だと思います。
【田村専門委員】  10月26日に出された外部評価の3ページの上から2パラグラフ目に,東日本大震災が予測できなかった理由として,歴史地震の研究の軽視,プレート境界浅部における固着状態の過小評価うんぬんと書かれてあり,外部評価報告書では,これが原因だと書かれてあると理解しました。
 それに対して,11月28日の見直し計画には,見直しの方向性として書かれていますが,外部評価報告書で指摘された問題点が,どのように反映されているのかよく分からなかったのですが,もし,今後の話し合いに非常に大事なのであれば,その点について教えていただきたいと思います。
【安藤地震火山専門官】  それでは,説明を補足させていただきます。先ほど私の方から,話が非常に複雑だということを申し上げ,見直し計画に関わる経緯と次期計画に関わる経緯について別々に説明させていただきました。まず,青色の報告書については,次期計画に向けた外部評価を取りまとめた報告書になります。一方,白色の報告書は,平成21年度からの5か年計画の見直した計画書になります。
【田村専門委員】  各々の経緯は理解しているつもりですが,青の報告書の内容については,白の計画書には特に勘案されていないという理解でよろしいでしょうか。
【寺田地震・防災研究課長】  見直し計画では,超巨大地震に関する部分について,平成25年度までの残りの期間中にどのように取り組むべきかを盛り込んでいます。ただ平成25年度までの計画で全てが終わるわけではないので,平成26年度からの次期計画の中でも,どういう形で取り組んでいくのかについては,真剣に検討していただく必要があると思います。
【田村専門委員】  どうして,このようなことを発言させていただくかというと,白い計画書の中身として,超巨大地震をターゲットにしたということは理解できますが,具体的にどうしていくかについては非常に分かりづらかったので質問させていただいた次第です。
【平田委員】  地震火山部会から少し説明します。見直し計画については,五つの大きな柱から構成されています。そのうち5番目の柱が,超巨大地震に関する内容で25ページから記載されていますが,その中身は更に三つの柱に分けられています。
(1)は,超巨大地震がどうして起きたかということを理解する研究,(2)は,超巨大地震とそれに付随する現象を正に予測するにはどうしたらいいかという研究,(3)は,そのために必要な技術開発はどうしたらいいかという研究となっています。もちろん現行計画の残り期間は一年余りですから,それを全部やるわけにはいかないけれども,次期計画につながるように着手することが重要です。
 具体的には,(1)については,外部評価で御指摘いただいた「我々の計器によって観測されたのはたった数十年から長く見ても百年程度であるから,それをもっとさかのぼって理解する必要がある」ということに対して,23ページの超巨大地震の発生サイクルの解明というところに書かれてあります。ここには,地震計や測地の観測だけでなく,古地震や地質学的な研究をより重視するということが書いてあります。もちろんそういう考えはこれまでにもありましたが,これが非常に重要であるということを明記したということです。
 もう一つ重要なのは,プレート境界部浅部における固着状態の過小評価とかいうことがあります。これはこれまでのプレート境界でマグニチュード8程度の地震の起きるメカニズムをいわゆるアスペリティモデルというものを使って説明して理解しようとしていたことがありますが,それについては,5の前のところに既にアスペリティモデルの実態解明という既存の計画があるんですが,それを全面的に検討して,いわゆる単純化されたアスペリティモデル以外のモデルについても十分検討する必要があるということでこの計画に盛り込みました。
 結果的には,課長から説明されたように,この見直し計画と外部評価とは形式的には違うものですが,作業は同時並行的にやりましたので,当然ここで指摘されていることは見直し計画の中にも反映されていると理解しております。
【田村専門委員】  ありがとうございました。それでよく分かりました。多分,その次に知りたいこととして,例えば,皆様方の研究の力を100とすると,新しい課題が出てきた場合,100が150になればすばらしいのですが,なかなかそうもいかないと思うので,今の御説明であれば,戦略的に次期の2年でこの巨大地震の辺りを解明して,全体にどう戦略的に資源を割り振っていくかということを決めていくというような感じで理解すればよろしいのでしょうか。
【平田委員】  そうです。
【田村専門委員】  ありがとうございます。理解しました。
【末廣主査】  ありがとうございました。
 それでは,次に,次期計画の検討の進め方,スケジュールについて事務局から説明をお願いします。
【安藤地震火山専門官】  では,議論の進め方等について御説明します。まず本委員会では,平成26年度からの5か年計画について策定いただきます。過去の例を参考にすると,26年度からの5か年計画であれば,通常,平成25年度の夏頃をめどに計画を取りまとめ,科学技術・学術審議会総会へ報告することになります。ただし,今回については,次期計画策定のための委員会の1回目が本日ということで,過去の例と比べて約三から四か月遅れている状況です。ついては,最終ゴールについても平成25年度夏よりも遅れる可能性があります。
 一方で,11月28日に見直し計画が関係大臣に建議されていますが,これに係る検討は,平成23年の秋ぐらいから具体的な検討が始まっており,その内容については次期計画も見据えて検討していますので,本日が1回目の委員会とはいえ,具体な検討開始は1年前に遡って始まっているという状況です。
 また,本日,委員限りの非公開資料として,地震・火山噴火予知研究協議会で議論いただいた結果が配布されています。こちらについては,後ほど関係した委員から説明があると思いますので,よろしくお願いいたします。以上です。
【末廣主査】  ただいま,事務局から,通常のスケジュールと異なることが説明されましたが,例え,三,四か月遅れても,我々としては,粛々と最終的な科学技術・学術審議会総会への報告を目指すというスタンスでよろしいのでしょうか。
【安藤地震火山専門官】  はい。測地学分科会,地震火山部会では,その方向で決定されていますので,粛々と作業をしていただくということになります。現時点で,夏までの取りまとめを諦めているわけではございませんが,かなり厳しい状況にあるということだけ御承知いただければと思います。
【森田科学官】  科学官の立場から申し上げますと,研究には予算が必要なので,あまり取りまとめ時期が遅れると研究の継続が非常に危うくなる恐れがあります。
【末廣主査】  かなり重大な発言がありましたけれども,建議そのものが概算要求というわけではありませんよね。
【森田科学官】  建議=概算要求ではありませんが,建議を基にして共同研究を全国でやっていくという考え方なので,共同利用・共同研究拠点である東京大学はこの建議を基に予算要求いたします。
【末廣主査】  この建議を期にまた一つ境界条件があるようですが,ただし,三,四か月遅れになっていることを慌てる必要はないと私は思いますが。
【森田科学官】  済みません,決して議論を早めてほしいということを申し上げているわけではありません。議論は尽くすべきだと思います。
【末廣主査】  科研費では地震予知・火山噴火予知研究の項目はあるのでしょうか。
【森田科学官】  科研費には地震予知・火山噴火予知の項目はございません。基本的に今までずっと続けてきた経費というのは,大学における特別経費という,非常に長期的に経費を頂けるような仕組みです。これは地震とか火山という研究が観測の継続とか,共同研究をずっと続けることによってようやく成果が出てくるものであるという考え方に基づいています。
【末廣主査】  ありがとうございました。
 それでは早速,第1回目から正に次期研究計画の検討の議論に入ります。先ほど少し御紹介がありましたが,地震・火山噴火予知研究協議会で,いわばアカデミア研究の最前線にいる人たちの考えた材料が,本日,委員の皆様に配付されています。この研究はボトムアップの性格の強い計画だと私も理解しておりますので,まずそこのところを言わばたたき台のような形でお話をしていただければと思いますが,よろしいでしょうか。それをどう取り入れるかはこの委員会で考えますが,とにかく今,研究現場最前線で頑張っている人たちが何を考えているかという材料について御説明を頂ければと思います。
【加藤専門委員】  それでは,私から説明させていただきます。まず,地震・火山噴火予知研究協議会はどういうものかを簡単に説明します。これは地震・火山研究の共同利用・共同研究拠点である地震研究所の中に設置してある機関でして,大学で地震・火山噴火予知研究をやっている人々が集まって研究計画と研究の予算配分などを最終的に決定しているようなところです。ただし,本委員会にも参加いただいている,気象庁や国土地理院など大学法人以外の機関の方にも議論には参加していただいています。
 地震・火山噴火予知研究協議会では,今後の地震・火山噴火予知の研究についてどういった研究が重要であろうかについて議論を進めてきましたが,その結果を示したものがこの資料になります。この協議会は地震火山研究の理学研究者だけで構成されているので,もちろん多くの方の意見は取り入れてはいますが,内容については至らない点もあるかと思います。本委員会ではその辺りについて議論をしていただければと思います。それから,地震・火山噴火予知研究協議会での議論の進め方については,地震予知の研究のワーキンググループと火山噴火予知の研究のワーキンググループとに分かれて議論を進めています。もちろんその都度,全体でも集まって議論していますが,本日の説明のうち,火山分野については西村委員から行います。
 まず,1ページ目には各研究項目の目次を記載しています。2ページ目以降は,その目次に至った考え方を記載しています。なお,これは理学研究者向けに書いたものなので,少々分かりにくい表現などもあるかと思いますが,御了承ください。
 地震予知の研究は,地震発生の予測を行うことによって災害軽減をするというのが最終的な目標の研究計画です。以前は,地震の前兆現象を捕捉することによって地震の予知を目指すという研究を進めてきたわけですが,前兆現象というのはそう簡単にとれるものではないということがだんだん分かってきて,やや行き詰まり感が出てきたときに,兵庫県南部地震が発生しました。その結果,研究の方針をやや変えて,地震の前兆現象を捕捉して直前予知を目指すというだけではなく,地震の発生機構をきちんと理解して,それに基づいて地震発生のモデルを作って,それに観測データを取り込んで地震の予測を目指そうという研究計画になりました。
 その結果として研究成果は非常に上がるようになったのですが,地震を理解するという方向にシフトし過ぎたため,地震の予知・予測によって災害軽減をするという最終目標をやや忘れがちだった点があったかもしれません。したがって,ここで考えなければいけないのは,やはり最終目標は,地震の予知・予測によって災害軽減に役立てるということ,これをもう一度再確認しなければいけないと思っています。
 もう一つの観点として,地震による災害軽減に資する研究は,地震そのものの予知・予測だけではなくて,津波や強震動,それらの予測をすることも非常に災害軽減につながりますし,あと,地震が起こった後に地震の性質を速やかに推定して,それによって津波や強震動の即時予測をする,そういった研究も災害軽減に非常に役に立つはずです。そういった考え方を取り入れた研究計画にしなければいけないというようなことを考えてこの研究計画を作っています。
 それから,もう一つ考慮すべきことは,東北の地震であったように,低頻度だけども非常に被害が起こるような大規模な地震,こういった研究がやや手薄であったということ。ただし,我々の研究者のグループは,地震の場合は,地球物理の研究者が多く,せいぜい百年ぐらいのデータである地球物理的な観測データに基づいた研究が主流でしたが,それでは低頻度で大規模な地震のデータは非常に限られるわけです。低頻度で大規模な地震についての研究をするためには,地質・地形学の研究や歴史学の研究などをより大規模に取り入れなければいけない。これまでもそういった観点はあったのですが,もっと充実させなければいけないと考えています。
 あとは,地震の予測について,現時点で比較的実用的と言えるものは,長期評価であると思います。ある領域において,どの程度の地震が,今後何年間に何%発生するという確率で表現するわけですが,これをより高精度化するような研究は災害軽減に直ちに役立つ実用的な研究なので,その研究も強化しなければいけないと思います。現在の長期評価というのは,過去の地震発生の履歴に基づいて経験的,統計的にやっているだけで,最近の地球物理学データはあまり用いられていません。また,最近の震源物理の理解もそれほど利用されていない。そういったものを利用するような研究はできるはずなので,長期評価を高精度化するような研究が重要であると考えています。それから,より災害軽減に役に立つのは,やはり中・短期的な予知なので,その研究についても続けていく。そのような考え方でこの研究計画を提案しています。
 今申し上げたことが,具体的にどの項目に対応するかというと,地震の予知・予測だけに頼らず,津波や強震動の予測を目指すという研究は,3「強震動と津波の事前予測・即時推定手法の高度化」になります。低頻度・大規模災害について地質・地形学や歴史学等を考慮した研究は,1.2「史料と地質データに基づく地震シナリオの構築」になります。長期評価に関しては1.1.1「予測のための標準モデル構築と長期予測の信頼性向上」になります。これらが特に重視した点で,主な変更点になります。
 それから,これまでの研究計画で不十分であった点として,実施体制の問題があったと思います。各々の研究者は,自分自身の研究の研究成果を上げることに一生懸命で,結果的に研究成果は上がっていたわけですが,非常に多くの参加者による成果をまとめて,災害軽減に役立てようという観点がやや弱かったのではないかと考えています。このため,このように項目立てした研究について各々独自に行うだけではなく,これらを有機的に結びつけて本来の目的につなげるような機能を持つように,実施体制を見直し,司令部機能的なものを整備するということを強く考えています。
 また,今申し上げた連携強化とも関係しますが,研究成果をお互いに利用できるような体制にするため,データベースをしっかり充実させて,この研究計画に参加している研究者だけが使うだけではなく,他分野の研究者や海外の研究者にも使っていただく観点も重要かと考えています。それによって,他分野や海外との交流も活発化するし,研究を加速することができるのではないかと考えています。
【西村専門委員】  火山と地震は,発生場の観点では非常に異なりますが,地震が起きる場所,火山噴火が起きる場所については,非常に共通点が多いということや,お互いに相互作用を及ぼしているということがいろいろ分かってきているので,そういう観点では,地震や火山噴火の研究は,いろいろなところで,一緒に行われています。しかしながら,具体的な地震発生あるいは噴火発生の研究の観点では,ある程度分けて研究を実施してきました。
 火山噴火の研究については,1.4「火山活動のモニタリングと時空間発展の予測」と1.5「噴火シナリオの高度化」,それから2.2「火山現象の定量化とモデル化」に記載しています。1の項目では,比較的予測手法が具体的に構築できるような研究が記載されていて,2の項目では,1の項目をより高度化するような形で研究を進めるという形で記載しています。
 1.4については,例えば地震あるいは地殻変動を観測することで,マグマ活動による圧力源やダイクの貫入位置などを把握できるのですが,その精度を上げたり,あるいは噴煙現象を把握して次の時間発展を求めたりということをより高度化していく研究を進めるということを考えました。
 それから,1.5については,例えば,一つの個別の火山,あるいはある特徴のある火山についての噴火活動の全体像をきちんと把握しようという試みです。噴火は1回の事象で終わるのではなくて次々と新しい現象が起こりますので,その一連の活動について全体像を調べる。また,噴火活動が変化するときに,どのような観測データがあるのかということを条件化したり,あるいは確率を予測したりということを客観的に科学的に調べていくというような方策を探るというテーマになります。
 2については,更に2.2.1「マグマ噴火を主体とする火山」,2.2.2「熱水系が卓越する火山」,それから,2.2.3「低頻度大規模噴火」という三つの項目を立てて,先ほど言った1.4,1.5の例えば火山噴火の様式が変わるとき,あるいは規模が大きく変化するようなときの条件を個別に研究して,噴火シナリオの高度化に資するデータを上げていくという位置付けで考えています。
 2.2.3については,これまであまり予知計画では扱っていませんでしたが,やはり大きな噴火は社会的な影響も大きいということで,これについても次期の計画から立ち上げて,まずどういうようなものがあるか,そして,観測データとしてどのような特徴が出てくるかということを中心に調べることを始めようということで挙げています。
 それから,地震と火山は相互作用があるという観点から,地震と火山が密接に直接連携して行う研究項目として,2.3.3「内陸地震と火山噴火」として,地震が起きた場合の火山への影響,あるいは火山噴火が起きたときの内陸地震への影響という形で発生場についての研究を進めていきたいと考えております。【末廣主査】  ありがとうございました。
【森田科学官】  詳細については,両委員から説明されましたが,少し大局的に説明を差し上げたいと思います。
 先ほど安藤専門官から,参考資料5『東北地方太平洋沖地震を踏まえた今後の科学技術政策の在り方について』の4ページで,地震研究の抜本的見直しというところを紹介しました。それで,先ほど保立委員からも,抜本的に見直すには社会全体がこういった方向に動かなければいけない,これはもう地震火山分野だけでの問題はなく,社会全体の問題であろうということを御指摘いただきました。私も正にそのとおりだと思います。
 こういった文章が出てきた背景には,恐らく同じ資料の39ページ,科学技術に対する国民意識変化に対する調査結果を反映した内容と思われます。つまり,震災前には,「科学者の話は信用できると思うか」という質問に対して,「信頼できる」あるいは「どちらかというと信頼できる」と答えた者が震災前には7割を超えていたのが,震災後には6割台まで低下し,非常に危機的なことであるということ。一方で,震災後の地震や火山,自然災害に対する国民の期待については,42ページを見ていただくと,依然として3番目くらいに「自然災害の予知・被害の軽減」が挙がっていて,震災前よりかえって期待が上がっている結果となっています。
 それで,4ページの地震研究の抜本的見直しというところですが,これはここで議論する学術研究だけで解決できる問題では決してないと私は思います。先ほど主査の方から地震調査本部の施策と予知研究の関係について質問がありましたが,この研究計画は学術の非常に基盤的なところを担っていて,それと同時に,地震調査研究推進本部の施策とする調査研究,更に中央防災会議で行う防災計画,それら全体が見直されてこそ,抜本的見直しになるのだと思います。
 しかしながら,この委員会に課せられたタスクというのは,基本的には基盤的なところをどう見直して,それをどのように施策につなげ,そして,防災計画につなげていくかという点にあります。それで,加藤委員,西村委員から紹介いただいた研究計画と外部評価委員からの提言,あるいは測地分科会での方針を見比べてみると,命を守る実用科学としての地震火山研究といわれますが,基礎研究が守れる命というのは恐らく全てではないであろうと思います。基礎科学,あるいは学術研究が果たすべき範囲で人の命を守るには,どうしたらよいかという観点で研究計画を考えるべきであろうと思います。
 それから,次期計画については,やはり中長期的なロードマップで考えなければいけないと言われたとき,両委員から説明もありましたが,基本的に予知・予測という研究分野は,まだまだ学術的に成熟しておらず,この先も随分時間がかかる研究だと思います。今後,この分野の研究を進めるためには,やはり現象の理解をして予知・予測のモデルに取り組む方向が必要だろうと考えます。
 そういう意味で,飽くまで予測を中心に据えるけれども,2番目には,その予測の基になる原理原則を理解し,3番目として,社会の要請を踏まえた研究や社会の関わりの改善,あるいはハザードの評価という観点から,今,我々が得ている知見を社会に生かすという意味で,強震動,津波とか,あるいは噴火でも火山ハザードというものが挙げられていて,こういったものを学術的に高度化することによって,防災官庁や施策に反映させるというような考え方で組み立てられていると理解しました。
【末廣主査】  ありがとうございました。
【小泉専門委員】  かなり詳細な説明があったので,地震分野の次期計画案の作成に参加した者として,逆に大ざっぱな説明をさせてください。
 計画案の1は,現状の実力でどれぐらい実際に予測できるかということをやろうとしている所と思ってください。どうしても理学者なので,地震予測のための課題がたくさんあると,そちらが気になって,実際に地震予測することに取り組めなかったという反省がありました。したがって,現在までに得られている知見と手法で地震予測をやってみて,それを検証しようというのが1です。地震の予知や予測,火山もそうですが,一般の方に過大評価や過小評価されていますので,1の研究を通して実力を知っていただいた上で,国民に評価していただくということを考えています。
 計画案の2に関しては,当然,課題があるので,それを研究するだけではなく,次の5年間の研究を経た後には,1(実際の予測)に持っていけるようなものを目指す,そういう意識を持ってこの骨子を組立てました。
【末廣主査】  どうもありがとうございました。
 確認ですが,説明していただいた内容は,基本的に大学の研究者がやることに限定されて書かれているという理解でよろしいでしょうか。
【加藤専門委員】  このたたき台は,地震・火山噴火予知研究協議会で検討した内容ですが,そのワーキンググループには,大学の研究者だけではなく,実施機関の研究者にも参加していただいていますので,おおよその方向ではコンセンサスが得られていると思います。
【末廣主査】  あまりこの問題を深く議論するつもりはありませんが,基本的に大学の研究者たちができる範囲で考えたのか,それとも,業務官庁の方が組織的に乗り込んできてバックアップしてくれないと実現できそうもないことまで触れているのか,その辺はどうなのでしょうか。
【加藤専門委員】  このたたき台の項目全てについて,大学の研究者で実施する人がいないという項目はないと思います。
【末廣主査】  それでは,本委員会ではこれは一つの資料として受け取りますが,恐らく委員の方々も十分に目を通す時間がなかったと思いますし,難しい言葉がたくさんあるので,例えば一般市民の方に説明する資料としても通じないだろうと心配します。本日は細部についてまでの議論はしませんが,今後の計画策定に反映すべき大きな観点から,是非御発言をお願いします。
【宮澤専門委員】  先ほど,主査から,「地震予知とか火山噴火予知に関して科研費に項目はないですよね」という質問があって,森田科学官から「ありません」という回答がありましたが,私の記憶では,今年度の科研費に応募した際にはあったように記憶しています。それで,今,確認してみたところ,固体地球惑星物理学の細目で,「地震発生予測・火山噴火予測」というキーワードが3番目に入っていました。それに関連して,この計画では「予知」と「予測」との違いなどについて議論しなければいけないと思いますが,そのことについて共通認識として明確にしておきたいと思います。
【森田科学官】  申し訳ありません。細目はないけれどキーワードにあるということですね。訂正させてください。
 それで,私が言いたかったことは,基本的にボトムアップであっても,一つの目的に向かってこの研究計画は進めるということで,そのためには,長期的な研究計画を立て,そして,研究者の組織を創り,推進していくということです。長期的な研究計画は正にここで議論する研究計画になります。これは例えば個々の個人の研究者が,これは予測に役に立つだろうということを本当に個人的な科学的好奇心で推進しても,なかなか個々の研究同士が結びつかず,全体計画としてもそのような成果が出ません。この研究計画は,組織的にそういったものをまとめて大きな目標を進めるというふうに作られているものだと私は認識しておりますが,部会長,それでよろしいでしょうか。
【平田委員】  科学官が発言されたとおりだと思います。少し補足させていただきますと,まず大学の予算の仕組みとして,大学運営費があって,そのほかに,文部科学省,今ではJSPSからの科研費があります。その違いは,科研費の申請のホームページにはっきり書いてありますが,科研費というのは,いわゆるキュリオシティドリブンという,知的好奇心に基づいてやる研究で,科学としてはおもしろいかどうかという観点が基準になります。もちろん審査についてもそれに基づいているので,申請する側も,これは科学としておもしろいかどうか,独創性があるかどうか,新規性があるかどうかということが最も重要なことです。
 一方で,この予知計画の中で多くの部分参加している大学の研究者が所属機関を通して配分される経費としては,大学運営費の中の特別経費があります。これは大学が組織として進める研究になります。組織として進めるというのは,一つの大学の組織が進めるという観点ももちろんありますが,例えば地震研究所の場合には,地震火山の共同利用・共同研究拠点として進めるという観点があります。その実態は,現在ここで議論されている,建議された研究計画の内容が,地震・火山の共同利用・共同研究拠点の中の非常に大きな部分を占めていますので,研究計画を作るということについては,研究者の自由な意思によって議論をした末で,科学として必要なもの,それから,社会が科学に対してどういうことを期待しているかということを考慮した上で,科学計画を作り,それに基づいて推進することになります。
 そういう意味では,ボトムアップの計画ではありますが,一度その計画ができた段階では,5か年の中あるいはもっと長い30年のうちの5か年として位置付けられる計画において,参加している各研究者は,自分がどこに位置付けられているのか,最終目標にどのように貢献するのかという観点が,その研究を評価する基準になります。ですから,もともとは科学者の知的好奇心に基づいて検討されていますが,ある段階では,課題解決型の研究に移行します。そういう意味では,同じ用語を使って同じような研究テーマをしていたとしても,科研費の場合には,個人単位の研究なので,途中で研究方針を変えることもできるし,知的好奇心が変わればテーマそのものを自由に変えることができますが,本計画ではそういう変更はできない課題解決型の研究であるということは明確に区別する必要があると思います。
 ですから,私の理解では,科研費の申請をする場合に,きちんと予知・予測をやるのであれば,これは建議された計画の中で位置付けられていなければ,この計画に基づいてやるべきと書いていなければ,もし私が審査員であれば不採用とします。つまり,この研究計画の中ではっきり位置付けられているものについて,重複して提案されていては意味がないということです。しかし,この計画については,みんなの議論によって決められていますが,不十分な点はたくさんあるわけです。もし,現時点ではとてもできそうもない計画だということで却下された場合にも,信念に基づいてやりたいという研究者がいれば,その計画は評価されます。今の説明では非常に分かりにくいとは思いますが,一応明確に区別されています。
【末廣主査】  非常に分かりにくいですね。
【藤井委員】  恐らく,この予知計画は,経緯から理解していないと分かりにくいと思います。もともと測地学審議会において,地震予知計画と火山噴火予知計画が発足しました。もともとの発想は,先ほどから部会長が言っているように,ボトムアップ,研究者の自由な発想に基づいて計画を立てるわけですが,最終的に計画を作り上げた段階で国の計画として実施することになります。つまり,かつては機関に対して作られた実施計画であって,個人に対して作られた計画ではありません。策定された計画に対して責任を持って果たすために,まず参画機関を決めて実施をしていました。それが年次計画によってだんだん増えてきたことは事実ですが,基本的には機関が責任を持って年次計画を実行するという形になっています。
 地震調査研究推進本部との違いは,飽くまでもこの計画は研究者の個々の発想に基づいて計画を作るということであって,トップダウンで計画が実施されるわけではないということです。だから,一旦計画を立てたら,あとはそれに集中して実施するという使命を受けての計画なので,科研費とは明らかに違う施策となります。
【末廣主査】  ありがとうございました。
【宇平臨時委員】  このたたき台で,官庁では唯一,気象庁と出てきますが,急にデータや研究者の質が上がるわけではないので,研究計画を拝見すると,今までにやれたところについて優先順位をつけて再構成されていると思います。だけど,今まで理学者中心のクローズドシステムでやってきたわけで,それが社会に対して防災上の貢献をしたいと宣言した途端に,それはオープンシステムになるわけです。つまり,研究者が,これは社会に役立つだろうと言っても,受けとめられないものも受けとめられるものもあるわけです。だから,これは社会からのフィードバックが絶対必要なシステムであって,今後の体制をどうしていくか,あるいはこの研究が実効的に有効になるかについては,そのような社会からのフィードバックシステムをいかにうまく取り入れられるかというところにかかっていると思います。
 気象庁としても,このように書かれるということは,気象庁業務がそこまで進歩してきたのだと肯定的に受けとめたいと思います。だけども,受け止められない研究成果もあるので,研究サイドに対しては,気象庁として評価もするし注文も付ける,そういう仕組みを是非取り入れていただきたいと思います。
【末廣主査】  ありがとうございます。大変貴重な御意見だと思います。
【今給黎臨時委員】  国土地理院です。今回のたたき台を拝見して,研究の方については非常によく書かれていると思いますが,観測データに対しては,当然そこにあるという感じで書かれている気がします。特に測地学的なデータについて申し上げると,例えば全国の水準測量については,かつては5年間隔で全国を一回りするというような話がありました。これは過去の地震予知の計画で,地震の予知のためには,これぐらいの観測頻度が必要というような話があって,はじめてそのような事業が組まれてきたという経緯があります。ただし,現在は例えば地震本部の方の基盤観測の観測網としてGNSS,GPSの観測網ができて,これらのデータをオープンに使っていただいており,もちろん研究にも使われていて,大いに役立っているわけです。
 しかしながら,予知・予測のために,どこまでの観測データが必要かということについて,やはりこちらの計画の中である程度議論して位置付けていただかないと,国土地理院としても根拠がなければやらなくなってしまう恐れがあります。例えば水準測量でも,仮にGEONETで地殻変動については監視できるということになれば,水準測量は不要という話が出ないとも限りません。現在のたたき台については,どれくらいのものが必要だからどの程度のものが欲しいという議論の部分が見えていないと思います。なので,観測データを取っている機関に対して,そのような議論をきちんとしていただくことが大事であると思います。観測データの提供についてもきちんと議論していただき,この計画の中できちんと位置付けていただきたいと思います。
【加藤専門委員】  補足ですが,このたたき台を書いたときには,基盤観測網等のこれまで行ってきた様々な観測データを活用することは,当然,前提にして研究計画を考えています。現在,書かれてあるのは,どういう考え方でどういった研究をするかということのみなので,どういった観測が必要かについては,今後議論して追記すべきと思っています。
【仲西臨時委員】  特にこのたたき台に限った話ではなく,観測研究計画の見直しの項目立てについても同じですが,外部評価の指摘にもあったように,人文・社会科学との連携について,一連の流れが見えるような項目立てが理想だと考えています。つまり,次期の計画では,やはり地震の発生予測を研究して,その成果から津波,地震波伝播を予測して,更に被害予測,避難予測もしてというように,項目立てを整理していただきたいと思います。
 例えば,手前みそになりますが,JAMSTECでは,南海連動評価プロジェクトを受託研究で行っています。その中では,具体的に地域研究会を作って,自治体の方と情報共有したり,勉強会をしたりしています。ですから,たたき台でいえば,1の項目の中に続けて3「津波・強震動の予測」を入れるなど,計画がつながって見えるように検討すべきであると思います。
 それから,国際協力,国際共同研究に関しては,例えばJICA,JSTのSATREPSのような,既に進行している研究があるので,それらをうまく利用するようなことも念頭に置くべきと感じています。
【加藤専門委員】  避難の予測や強震動や津波の予測については,ある種の研究は地震調査研究推進本部の方でもやられていますので,こちらの計画でやるべき研究はどこまでなのか十分考えて,重複する部分が大きくならないようにすべきと思っています。
 それから,社会との関係ですが,これまでも大学では各々個別にアウトリーチ活動などを実施してきましたが,もう少し大学全体で組織的に情報収集をしすべきであると考えています。
【宇平臨時委員】  確かに,こういう基礎的な研究が災害予防あるいは避難計画にまで一連の形でつながればすごいと思います。それが実現されれば,社会が変わることになるかもしれませんが,そうなると,各関係防災機関あるいは自治体,住民まで,やっぱりステークホルダーがものすごく増えてきます。だから,本当にどこまで整理するかというのは非常に重要な話だと思います。それを実行した方が日本は変わるかもしれませんが,今すぐには無理ではないかと思います。
【田村専門委員】  社会科学の立場から,いわゆる外部評価を受けての皆様方の認識についての私の理解は,社会への丁寧な説明及び社会要請を踏まえた研究ということですが,もしかすると,基本的に研究成果のアウトプットのみを社会にうまく還元する仕組みができればいいというふうにお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが,恐らく現在求められているのは,どういう過程で行われているかということについても発信をして理解をしていただくということが必要ではないかと思っています。関心のない方に全てのものを理解させようというのは,基本的にどんな力をもってしても無理なので,どちらかというと,関心をもってふっと見たときに,「何となく分かるよね」というふうに思っていただくレベルにする努力が必要ではないでしょうか。
 そのような観点で,このたたき台について申し上げますと,まず計画の構造自体がよく分かりません。一つ目はまず研究の目的ということで,最初に予知・予測を目指しているという一文がありましたが,恐らく,予知・予測を目指しているだけでは駄目だろうというのが世間の感覚なのですが,予知・予測が必要・期待されているというお話もありましたので,まずそこを書いていただいて構いませんが,その目標を達成するにはということで,下に幾つかの下位の目標が必要ではないでしょうか。例えばこれまで世界に高く評価されている研究の継続みたいなものも必要でしょうし,東日本を踏まえて新たに解明すべき課題も必要でしょう。あと,他の研究分野との連携も必要,それから,もちろん社会への発信も必要というように,目的をまず上に明確に立てていただいて,それを実現するためにこの研究計画がどう位置付けられているかという研究計画構造にしていただくと,一般の方には,例えばプレート境界だとかそういった難しい言葉は分からなくても,全体の構造が理解できるのではないかと思います。
 現在のたたき台で理解できるのは2の項目だけです。恐らく,2の項目について頑張って読み解くと,観測して,定量化して,モデル化するというふうに書いてあるのかなと理解します。ただ,「観測」については2.4のところにしか出てきていないので,これは飽くまで憶測です。多分,観測をされたデータを基に定量化して,モデル化する。当たり前だろうと皆様方はおっしゃるかもしれませんが,専門外の私にはそのように理解できます。
 ただ,2.1と2.2は同じような地震現象と火山現象の定量モデル化というふうに書かれているのですが,ではどうして2.3では「発生場」というような言葉が出てくるのか,どうして「定量化」という言葉が使われていないのかと,一般的には理解ができません。なので,2番は何となく分かりますが,1番については構造が全く理解できないので,恐らく多くの人は目次しか読まないと思います。1番の計画の中身の構造は恐らく全く勘案されていないと思いますので,是非この計画がどういうものなのかということが分かるように修正していただきたいと思います。
 それから,3,4,5,6については,構造がかなりぐちゃっとしている感じで,特に3番はいきなり出てきた印象が強く,この計画における位置付けがよく分かりません。それから,4番と6番は,体制のことについて書かれていると思いますが,研究基盤の整備と体制整備の関わりがよく分かりません。4と6は一緒に語るべきではないでしょうか。そうすると結果として,5番が最後になりますが,これについてはかなり添え物的な感じがしてしまいます。実は全体一個一個を分かってもらうためにどうするか考えた方が良いのですが,ここでいう「分かってもらう」というのは,一人一人の国民であれば理想ですが,ある程度の関心をもっていただいた人に分かってもらうためにはどうするかということで,それについては,一つ一つについて検討されて,もちろんまとめて書かれるのはよいかと思いますが,そういうふうに修正していただけると非常にありがたいと思います。要するに,研究計画の構造を一般の人に分かりやすくしていただければ,あとは逆に国民の期待のところに専門家には60%の方が期待していただいているので,そこで十分賄えるのではないでしょうか。
【末廣主査】  ありがとうございます。大変貴重な観点の御意見だと思います。何か計画を立てたとき,何かをやるとき,研究者というのは,いかにすばらしい成果が出たかということを説明しますが,それでは駄目で,やる前からきちっと説明するということの重要性は強調し過ぎることがないことだと思います。その辺は皆さんお分かりだと思いますが,やっぱり理解してもらいながら進めていく必要があると思います。自らやっている研究については,常にきちんと説明ができないと駄目だと思います。
先ほど,今給黎委員からデータのお話がありましたが,実際にデータを取得する過程については,もちろん大学の研究者も関わっていることと思いますが,なかなかだんだん難しい状況であるのだろうと思います。現実に大々的にデータをとってくる機関が,地震本部の下に基盤ネットワークを維持している機関があるわけですから,そういったところの連携が大事だということは火を見るより明らかで,「データをどこからもらっているの?」と聞かれたら,「こういうところから提供されている」という話になって,「それは本当に必要なデータなのか。それとも,不要なデータもあるのか。」というような観点も多々出てくると思います。
 恐らくそういったことにも答えられるようにならないと,横の連携がとれているような形にはなり得ないと思います。幸いにしてこの委員会にはそういった実施機関の人たちも全部入っていますので,よく話を詰めて,そういったところをしっかり書き込んでいくのが良いのだろうと思いますが,いかがでしょうか。
【小泉専門委員】  それに関係して発言します。末廣主査が,「この研究結果は大学だけのものか」と質問されたときに,「大学は全部に参加する」と加藤委員は回答されたと思いますが,そうではなくて,この計画は今発言されたように,オールジャパンで参加する計画だと思いますが,そういう意味で発言されたと理解してよろしいですよね。
【末廣主査】  ですから,今ここに研究所の代表の形で参加されている方たちを巻き込んでの計画になると考えていますが,現実に今年何をやるのかやらないのかについては,別途各々の機関で各々の監督省庁と調整して作っていくわけなので,そういったところとの齟齬がないように考えていかなければいけないことに関して,恐らくこの委員会はそこまでの拘束力は持たないのだろうなと思っての発言です。
【小泉専門委員】  すみません,先ほどのやりとりが僕には少し理解できなかったのです。加藤委員,どういうつもりで答えられたのでしょうか。全部大学がやりますという言い方に僕には聞こえてしまったのですが。
【加藤専門委員】  いや,そういう発言はしていません。この研究計画はもちろん,小泉委員にも参加していただきましたけれども,大学の研究者だけではなくて,多くの研究機関の方が参加して,研究を練り上げた,研究計画を策定したものです。当然,基盤観測網等のデータ等を使えることも前提にしていますので,データだけでなく,研究内容自体も,大学以外の機関も参加することによって,より充実した研究計画になると考えています。
【小泉専門委員】  ありがとうございます。それだけ確認したかっただけです。
【末廣主査】  だから,それは優等生の回答で,つまり,そういったことが本当に実現できる内容に持っていけるかどうかは,ある意味,ここの委員会がどのぐらい頑張るかにかかっているだろうなと私は思います。
【小泉専門委員】  分かりました。
【藤井委員】  もともとの予知計画は,大学だけの計画ではなくて,ほかの省庁も含めた計画案になります。だから,地質調査所(現在の産業技術総合研究所)や海上保安庁も含めて,この計画を作るときに,大学と同じように一機関として持ち寄って計画を作る。この計画に基づいてそれぞれの省庁において協議しながら,予算化をして研究を遂行するというのがこれまでやってきたやり方です。ですから,先ほど主査が最初に大学中心のと言われたことは,本当は正確ではありません。なので,全機関が加わって策定している,いわばナショナルプロジェクトであるという理解で,それを実現するためにこの計画を策定するということだけは誤解をなさらないようにお願いします。
【末廣主査】  地震調査研究推進本部ができる以前は,事務局側にいたこともあって,その辺の機微についてだんだん思い出してきました。ただ,地震調査研究推進本部が設置されたために構造が分かりにくくなった感じがありますね。
【寺田地震・防災研究課長】  先ほど藤井委員や平田委員が言われたことは事実ですが,その途中の平成13年に,研究機関の独法化が行われて,そこについてはその独法が果たすべき目標が大臣から指示をされるという形になっています。そうすると,先ほどから平田委員が言われているみたいに,ボトムアップの研究であるという話が本当に成立しているのかどうか,悩ましい部分がございます。
 独法の研究者は全て自由な意思は全くないのかと言われるとそうではないはずですが,そこのところについては今の計画の形と若干変えて工夫をして書かないと,よく分からない計画に見えてしまいます。少なくとも指揮命令系統から考えると,そういうふうに見える計画になっているということを頭に置いて検討いただければと思います。
【藤井委員】  確かに独法化したことによりそうなっていますが,それは国立大学法人も同じ状況です。法人化したことによって,実は各大学が大臣との間の交渉によって,中期目標・中期計画を決めてやるわけで,ここにはかつてのように国立大学の機関が文科省との協議の下に一括して取り組んでいたという事態とは随分変わっていることは確かです。だから,非常に複雑な機構の中で,かつてやってきた仕組みをそのまま維持しようとしていて,文字どおりに法的体制の中では非常にゆがんだ状態であると思います。
 特に地震に関しては地震調査研究推進本部があるから,たとえ予知計画がなくなっても地震予知の調査研究は続くかもしれませんが,火山噴火予知に関しては,最初に申し上げたようにそういう体制がありませんので,予知計画がなくなった途端に,国として何かをやるということがほとんどできなくなってしまう,あとは科研費による個人研究以外にはあり得ないという事態になるということだけは理解をしていただきたいと思います。
【末廣主査】  恐らく先ほど藤井委員が発言されたように,この委員会で策定する計画は,ある種,ナショナルプロジェクトとして理解されるようなものであると思いますし,5年たった暁には,どの部分が達成できたのかと問われ,その回答をもって評価されるということだと思います。
【平田委員】  課長のおっしゃったことはそのとおりで,反論はありません。厳密に言うとそのとおりですが,ここにいる多くの方に分かりやすく説明するためには,現在,地震の研究は簡単に言うと3種類あるということです。一つは地震本部が主導している研究開発。それから,この建議された計画に基づく研究。さらには,科研費や大学の運営費交付金の中の個人に配分された資金で行う研究。これらが制度的に違うということはきちんと理解する必要があります。
 一方で,私の理解では,科学の発展というのはやはり研究者がきちんと本気でやる研究が非常に重要で,もちろんみんな本気でやっているわけですが,その中で特に地震や火山の分野は,長期にわたって継続的に研究者のモチベーションを維持するということが非常に重要な研究です。ですから,それはいろいろな仕組みを作ってやっていく必要があるのですが,その中で,この建議に基づいた研究計画を行ってきていることは,結果的に,この40年近く日本の固体地球物理をリードしてきて,その結果として世界からも評価されているのだと思います。
 それにもかかわらず,一般の方が考えている地震予知の実現にはまだ至っていないという点が,非常に重要なところで,目標としては,予知・予測をするという,非常に難しいけれども社会に役に立つ研究をして,それを担保するためには,それに関係している研究者あるいは業務機関の皆様が一生懸命やる気になるような仕組みを作るということが重要です。
 そのためにみんなが知恵を出しているわけで,狭い意味のサイエンティスト,科学者だけではなくて,人文・社会科学や工学などいろいろな研究者の知恵,あるいは情報を利用して,さらに業務官庁や自治体などの意見も取り入れてこの計画を作っていくということが基本になると思います。このことについては,どなたも恐らく異論はないと思います。
【保立専門委員】  今日の委員会での皆様のお話を聞いて,歴史学も実用科学にならなければいけないということを強く感じました。そして,実用科学として考えた場合には,歴史学では何ができるかということであります。私,岩波の新書を書きましたが,例えばその中で,734年の河内大和地震の震度分布図を作成しようとしたわけです。華厳経には,釈迦が地震を静める能力があるということになっていますので,これを静めるために東大寺の大仏が作られたということなのです。この震度分布図を関係の人々または小学生から含めて全員が見ることができる必要があると私は思いますけれども,そういうものが実用科学に,ある種歴史学として接近するということだと思いますが,実際これはなかなか難しい。つまり,考古学と地質データと文献資料を調整統合してやらなければいけないので,これは実際なかなか難しいということを実感いたしました。
 私の所属しております史料編纂所は,地震研による地震資料の収集・編纂に協力してきました。これは仕事なので,資料を集め,御報告することは私どもの義務だと思っています。今,資料編纂所でも地震資料の新たな収集と研究の概算要求を出そうとしています。ただ,その中でも課題にはして,難しいけれども文献史学の側から考えざるを得ないのは,今申しました考古資料との統合になります。
 このためには,小規模なものではあっても,第1には研究組織が必要であります。歴史地震を自然科学と考古学と文献史学で解いていくという場合に,やっぱり考古学と自然科学の間の調整といいますか,通訳のようなことは文献史学ができるかもしれません。ただ,やはり遺跡に残る地震遺構の評価は大変困難で,長期的な蓄積が必要なことは御存知だろうと思います。
 それから,第2番目には,狭い意味での地震資料のみではなく,地震の記憶や災害史の資料の収集が必要であるということです。宇佐美先生がやられて,地震資料には相当な蓄積があります。これは相当なものだというふうに歴史学の方でも認識しております。ただ,ともかく宇佐美先生のやられた仕事は,地震発生の事実と震度を明らかにする資料に集中しておりまして,これだけだと歴史学としてはどうかということであります。災害史資料全体が欲しいですし,それを国民に伝えたいということになります。そうしますと,特に室町時代から江戸期にかけて膨大な資料がありまして,特に室町時代については直接に地震の周期性などにも関わるような新しい論点を提供できる可能性があると感じます。
 もう一つの困難は国際交流であります。中国史の研究者と話しておりますと,大量の地震資料があります。実は,2015年に中国で国際歴史学会がありまして,日本学術会議史学委員会の下で準備委員会が地震の分科会を作る方向で動いていますが,これは私どもだけでは本当に分からない,東アジアの地震ということになりますので,この点は3番目の困難というように考えております。
 状況の報告ということで,主査のおっしゃった境界条件ということになりますけれども,一応申し上げました。
【末廣主査】  ありがとうございます。
【仙石臨時委員】  研究方針について一言だけ申し上げます。これまで社会科学や工学分野の研究者との強い連携を取る必要があるという形で測地学分科会の方針が出ていますが,そういったものが研究計画の中にやはり項目立てとして見える形でもう少し入った方が良いのではないかと思いました。
 これまでやはり理学の立場からできることをやって,その先にそれが防災・減災につながるというふうな形で考えているような,そういった旧来の発想をやはりこのままだと感じてしまいます。もう少し項目立てを変えて,防災・減災のために何ができるかという,理学の先に防災・減災があるのではなく,逆に防災・減災のために何をしなければいけないかというような思想過程が分かるようなもの,例えば社会科学と連携など,そういったものをもう少し盛り込んだほうが良いのではないかと思いました。
【末廣主査】  ありがとうございます。
【加藤専門委員】  防災・減災に関係する連携ですけれども,このたたき台の3番目の強震動と津波の事前予測・即時推定手法の高度化というところは,これは工学研究者との連携を非常に強く意識して考え出した項目です。細分化されていないので,小さい項目と見えるかもしれませんが,これまでの理学研究者,地震火山研究者というのは,恐らく自分の興味で研究し,こういうものが出たから防災・減災に使ってくださいというようなやり方だったと思います。ただし,今後,我々はどういった研究をすれば社会に役に立つのかという点をきちんと考えて,そこから他分野との連携を始め,研究をしなければいけないと考えています。そして,そのための項目が3番と考えています。
【末廣主査】  ありがとうございます。
【市原専門委員】  私もまだ経験が浅いため,先ほどから議論になっているいろいろな境界条件についてよく理解できていませんが,やはりこういうところの資料に,周辺の状況,例えば工学の分野ではどういうプロジェクトが動いていて,地震調査研究推進本部では,どういう受託研究が行われていて,科研費では目立った研究としてどういうものがあって,他分野ではどういうものがあるというようなことをきちんと評価して,その結果,これが足りないから理学でこれをやりますというようなものが必要ではないかと思いました。
 先ほど平田先生の方から科研費との違いの議論のときに,科研費の申請書の中で,予知研究ではこれができていないから,これが足りないから申請するという内容が書かれていなければ,私が審査員であれば落としますとの発言がありましたがけれども,正にそういう状況だからこそ,この計画を建議する意義が今あるのではないかという印象を受けています。
【末廣主査】  ありがとうございます。
【宇平臨時委員】  地震調査研究推進本部とこの研究計画の役割分担も議論になるところですが,例えば社会にこれを還元したとき,地震本部の総合部会で結構広範な取組がされているときに,この研究計画は直接社会に何を発信するのかという点について,まだまだ整理がされていないような気がします。また火山の方は,地震本部が存在しないだけで,受け皿は気象庁や内閣府や各自治体と決まっているわけです。そういう意味では社会に対する成果の出し方は火山の方が比較的目に見える形で行われていますが,地震の場合は,構造が複雑なために理解しにくいかと思います。
【末廣主査】  ありがとうございます。
【関口臨時委員】  少し重複になりますが,防災科研の立場から一言申し上げます。地震分野における基盤観測網のデータですが,これに限らず観測網の重要性の観点を,是非追記していただきたいと思います。非常に努力をしないと観測網はできないものなので,特にその辺の重要性は,しっかり書いていただきたいと思います。
【末廣主査】  ありがとうございます。僕自身,観測で仕事をしてきた人間ですので,そこは見落としがないようにしたいと思います。
 境界条件という言葉を使いましたが,少しは我々の立ち位置が皆さん各々理解できたのではないかと思います。また,本日議論の種とした資料を説明してくださった加藤委員,西村委員,ありがとうございました。皆さんの貴重な意見を聞くことができまして,ある意味そういったことを総合的に勘案しながら,ナショナルプランに持っていけるよう今後検討していきたいと,皆さんの協力を仰ぎたいと思います。
 それで,本日議論にもなりましたけれども,異なる省庁に横断して存在しているいろいろな組織が最終的にこのプランで一緒にやりますよというふうになっていくためには,やはりいろいろな調整が必要であると私は痛感します。この会議の場の議論をただただ繰り返しても,なかなかそういったことの実現は簡単にはいかないと思います。
 というわけで一つ提案ですけれども,今日配付された資料を御覧になって,それぞれの機関の方が機関としてどのようにお考えになるか,持ち帰っていただいて,意見を後ほど伺いたいと思います。そういったプロセスを経ないと,机上の空論みたいなことになってしまう心配もどうしても出てきてしまいますので,いかがでしょうか。
【今給黎臨時委員】  確認ですが,機関に持ち帰ってということは,この「非公開」と書かれている資料を持ち帰って,関係者に見せて議論してよろしいということでしょうか。
【森田科学官】  少し整理させてください。今回非公開資料として提示されたのは,飽くまで研究者サイドが自発的に作成した,たたき台であって,骨子案を作るのはこの委員会ではないでしょうか。したがって,本日頂いた意見を,少し反映し,整理したものを,例えば次の委員会に正式に資料として提出し,それについて,各機関に意見を聞くのが良いのではないでしょうか。
【末廣主査】  個人的には,せっかくここまでのたたき台があるので,と思いましたが,もちろんこのままでは足りていないことは明らかです。現にそういう発言もありました。ですから,もしかしたら全面書き直しなのかもしれませんが,そもそもこの非公開資料は持ち帰ってはいけないのでしょうか。
【森田科学官】  いえ,持ち帰っていただいて構いません。私としては,今回初めて提示されたわけなので,更にいろいろと意見を頂くと,今度は整理が非常に大変ではないかと感じています。ですから,本日の意見ぐらいは反映した案を例えばメールで各委員に提示し,この委員会としてのたたき台を一回作っていただき,それを各機関に聴取するというのではいかがでしょうか。
【末廣主査】  手続論はよく分かりませんが,この委員会として決定できればよろしいかと思います。皆様いかがでしょうか。もちろん,今後のスケジュールにも関わってきますが...。
【森田科学官】  ですから,年明け早々ぐらいには委員の皆様にリバイス版を共有していただき,御意見を頂くというのではいかがでしょうか。
【末廣主査】  個人的には,リバイスする前に,このたたき台で一度各実施機関に調査をした方が,貴重な御意見を頂けるのではないかと思います。
【平田委員】  本日非公開資料として提示された案は,大学法人を中心として,ほかの研究者や関係者等の意見を聞きながら取りまとめた,たたき台(案)で,それを基にしてこの委員会で骨子及び原案を策定していくということです。だから,本日,頂いた御指摘,例えば観測について強調するべき等の意見を反映させた上で,次回の委員会で,対向案として提示してはいかがでしょうか。現時点ではある意味ブレーンストーミングを一回やる必要があるので,様々な意見の御提案があって,それを主査と事務局で整理していただき議論を進める方が良いので,本日の資料については重要な関係者には見ていただいて,各機関で御検討いただくのがよろしいのではないでしょうか。
【末廣主査】  分かりました。それでは,本日の非公開資料については,各委員で持ち帰って各々の機関において見せていただいて,いろいろと意見を募ってください。
【今給黎臨時委員】  あえて質問した趣旨を申し上げますと,もともと地震・火山噴火予知研究協議会でこのような議論をしていることは,我々も重々承知しているのですが,森田科学官がおっしゃったように,この委員会が議論する正式な場なので,委員会から提示された資料と地震・火山噴火予知研究協議会から提示された資料とではやはり全然重みが違うと思います。つまり,機関に持ち帰って議論する際,そのような取り扱いができるかどうかお聞きしたかったということです。その後,森田科学官から御発言がありましたが,今日の議論の内容が少し記載された一枚があるとありがたいと思いました。
【末廣主査】  今のロジックは非常によく分かります。
 議事録はきっと時間がかかりますよね。
【寺田地震・防災研究課長】  かかります。
【末廣主査】  このたたき台に,カバーレターを主査の名前で付けることは不可能ではないと思います。今給黎委員の言われるとおり,これは別に右から左に地震・火山噴火予知研究協議会のテキストをお渡しするのではなくて,飽くまでこの委員会で議論をしましたし,そういったことを踏まえてのものであるというカバーレターを一枚つけることは,やぶさかでございませんので,それをつけて,照会いただければと思います。できる限り,今日明日で御諮りしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

[3.その他]

【末廣主査】  それでは次の議題に移ります。事務局から説明をお願いします。
【安藤地震火山専門官】  今後の審議日程について御説明します。次回は1月10日を予定しております。詳細は追って御連絡しますが,一応午後いっぱいを考えておりますので,よろしくお願いします。
 それから,議論をスムーズに行うために,メーリングリストを作成しております。御活用いただければと思います。
【今給黎臨時委員】  1月31日で科学技術・学術審議会の期が変わりますので委員の委嘱期間が切れます。以前伺った時には,1月の期末あるいは2月の期初めに骨子あるいは中間報告をしなければとも伺った記憶があります。
 今,次回の会議開催日だけ御提示がありましたが,1月中にあと何回ぐらい委員会を開催されるのか,見通しをお聞かせいただければと思います。
【安藤地震火山専門官】  失礼いたしました。ただいま,今給黎委員からも御発言がありましたが,現在は,第6期科学技術・学術審議会となっておりますが,1月末で任期が終了となります。通常は2月から第7期となりますが,政権の交代により,現時点では,第7期の開始が遅れるかもしれないという状況になっております。
 それで,本委員会で策定する計画のゴールは,本日の会議の最初の方でも御説明しましたが,平成25年の夏を目指しています。第6期が終了する直前ではありますが,本委員会についての必要性を説明し,科学技術・学術審議会の事務局及び省内の幹部には納得を頂いているところです。
 それで,本委員会での検討経過や結果は,部会,分科会,総会という順に報告する必要があります。したがって,第6期の期間中であれば,報告することが可能ですが,多くても2回程度の委員会での議論しか経ていませんので,報告すべき内容が特段ありません。このため,第6期の総会には骨子や中間まとめの報告はしません。
 さらに,第7期の最初の総会は,期初めの会議なので,それが開催されない限り分科会,部会,委員会の開催はできません。また,最初の総会においても,まだ分科会長すら決定していませんので,測地学分科会としての報告はできません。第7期においても,次期計画について継続して審議,検討することはもちろんなのですが,手続上そのような形を取らざるを得ないため,非常に悩ましい状況になっています。
 ですから,第6期のうち,次の開催は1月10日だと申し上げましたけれども,さらにもう1回,1月中に開催できるかどうかについては現時点で未定です。御理解いただけましたでしょうか。
【今給黎臨時委員】  分かりました。非常に大変だということがよく分かりました。
【安藤地震火山専門官】  おっしゃるとおりです。非常に大変です。いろいろと御迷惑をお掛けしますが,どうぞよろしくお願いいたします。
【末廣主査】  ありがとうございました。それでは,これで本日の審議を終了させていただきたいと思います。長時間の御議論いただきありがとうございました。
皆様,良いお年をお迎えください。

―― 了 ――

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