地震火山部会(第33回) 議事録

1.日時

令和元年5月21日(火曜日) 14時00分~16時12分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 部会長及び部会長代理の選任について(非公開)
  2. 議事運営等について(非公開)
  3. 今後の調査審議等について
  4. 「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の平成30年度年次報告について
  5. 「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の令和元年度年次計画について

4.出席者

委員

(委員)鈴木、平田
(臨時委員)井口、石川、市原、大湊、加藤、高橋、中川、仲西、原田、山元、矢来
(専門委員)大倉、篠原、寺川、橋本、松島、三宅、森岡

文部科学省

工藤地震・防災研究課長、村山防災科学技術推進室長、林地震調査管理官、大河原地震火山専門官、望月学術調査官

オブザーバー

吉本(山梨県富士山科学研究所)

5.議事録

[委員の出欠状況など]

・部会長選任までは、工藤地震・防災研究課長が議事を進行。
・委員、臨時委員及び専門委員の紹介。
・委員の出欠について:阪本専門委員、日野専門委員、三浦科学官がご欠席。
・山梨県富士山科学研究所の吉本充宏主幹研究員がオブザーバー参加。
・議題及び配布資料の確認。

[議事1.部会長及び部会長代理の選任について]

議事1において、地震火山部会長として平田委員が選任され、部会長代理として鈴木委員が指名された。

[議事2.議事運営等について]

議事2において、「科学技術・学術審議会測地学分科会運営規則」等に基づき地震火山部会を進めることが確認された。

〔以降、会議を公開。傍聴者入室〕

【平田部会長】  それでは、会議が公開になりましたところで、第10期科学技術・学術審議会測地学分科会地震火山部会の発足に当たり、工藤地震・防災研究課長から御挨拶を頂きたいと思います。
【工藤地震・防災研究課長】  平素より、文部科学省の科学技術・学術施策に御協力いただきまして、まことにありがとうございます。また、このたびは第10期の測地学分科会地震火山部会の委員をお引き受けいただいたことにつきましても御礼申し上げるとともに、このお足元の悪い中お集まりいただきまして、まことに感謝申し上げます。
 御承知のとおり、今年の1月には、今年度から5か年の新たな地震火山観測研究計画が科学技術・学術審議会で建議されました。この計画に基づきまして、地震火山に関する研究者の方々の内在的動機に基づく学術研究が、さらに推進されることを期待しております。
 また、これも御案内かと存じますが、地震調査研究推進本部が現在取りまとめの作業に入っております第3次の「総合的かつ基本的な施策」につきましても、こちらはどちらかというとトップダウンの施策の集合体になりますけれども、こういったことで行われている調査研究と相まって、この地震火山研究の分野がより一層発展していくことを望んでおります。
 また、平成28年度から行っております次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトにつきましても、多くの施策が着実に進展しております。今後、科学技術・学術行政全体で議論されていく、第6期の科学技術基本計画の議論が始まっていきますけれども、この中にこの分野の研究の進捗や発展というものを織り込んでいければと考えております。
 今後2年間にわたり、是非精力的な御審議を賜りますようお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。
【平田部会長】  工藤課長、どうもありがとうございました。
 それでは、私の方からも一言御挨拶させていただきます。ただいま工藤課長からも御挨拶がございましたように、今年の1月に新しい観測研究計画であります「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の推進について」が建議されました。この建議は第2次ということで、東日本大震災を受けた後のいろいろな議論の結果として、地震・火山噴火研究というものを、国民の生命を守る実用科学と位置付ける考えをさらに推進して、地震・火山噴火及びそれらによる災害を科学的に解明することによって、災害軽減に貢献することを目指しております。
 特にこの地震火山部会では、この計画に基づく観測研究が有効に進められ、また、本計画と地震調査研究推進本部が推進しております施策との連携ということを十分考慮して、その成果が効果的に社会に発信されるように、計画の推進、進捗状況の把握、研究成果の取りまとめ、発信方法などについて積極的に議論していきたいと思います。どうぞ皆様のお知恵を拝借したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、これも課長の御挨拶にございましたように、文部科学省が進めております次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトという計画のフォローアップも、測地学分科会地震火山部会で進めていきたいと考えております。
 このような課題に対応すべく、委員の皆様の御協力を頂きながら、本部会の円滑な運営に努めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

[議事3.今後の調査審議等について]

【平田部会長】  それでは、議事3「今後の調査審議等について」に移ります。まず前期、第9期の測地学分科会の審議状況について、事務局から御説明をお願いいたします。
【大河原地震火山専門官】  御説明いたします。資料3-1は、第9期の測地学分科会の概要及び構成となります。科学技術・学術審議会の下に測地学分科会がありまして、第9期も地震火山部会をその下に設けておりました。さらに第9期では、まさに今年の4月から動いております建議の計画を策定するために、地震火山部会の下に次期観測研究計画検討委員会というものを設けて議論をしておりました。第9期には測地学分科会は5回、地震火山部会は6回開催しておりまして、次期観測研究計画検討委員会も6回開催しております。
 一番下にありますけれども、第9期は、次期の地震火山観測研究計画の検討を行いまして、今年の1月30日に総会において、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の推進について」として取りまとめ、建議されたところでございます。
 それから資料3-2は、第9期の測地学分科会、地震火山部会、次期観測研究計画検討委員会のスケジュール及び議題の一覧となっております。詳細は省略いたします。
【平田部会長】  ありがとうございました。ただいまの御報告にございましたように、基本的には第9期と同じですが、第9期の重要な仕事は、新しい建議の計画を作るということでございましたが、今年度は計画されたものを実施していくということでございますので、そこをなるべく確実にやっていきたいと思っております。
 今の御説明について何か質問や御意見はございますか。それでは。
【大河原地震火山専門官】  それでは事務局から、続きまして、資料3-3と3-4について説明をいたします。
 資料3-3は、第10期、今期の測地学分科会の当面の審議事項について、というものになります。これは先週、5月13日に開催しました測地学分科会において決定した事項でございます。
 今期の当面の審議事項として、1つは「計画の進捗管理について」ということで、地震火山観測研究計画の目的達成のため、行政や社会のニーズを踏まえた計画の推進に努め、各年次の全体計画の立案、進捗状況の把握及び研究成果の取りまとめ等について、地震調査研究推進本部による施策との連携に留意しつつ検討すること、それからもう1つは「火山観測研究について」ということで、次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトに対するフォローアップを実施することを当面の審議事項にすることといたしました。
 それから、資料3-4は「測地学分科会における部会の設置について」ということで、これも先週の測地学分科会において決定したものになります。科学技術・学術審議会令第六条第1項及び測地学分科会運営規則第2条第1項に基づき、科学技術・学術審議会測地学分科会に地震火山部会を設置します。
 地震火山部会では、測地学及び政府機関における測地事業計画に関する事項のうち、地震及び火山に関する事項について調査審議する。具体的には「計画の進捗管理について」ということで、地震火山観測研究計画の目的達成のため、行政や社会のニーズを踏まえた計画の推進に努め、進捗状況の把握及び研究成果の取りまとめ等について検討すること、それから「火山観測研究について」ということで、次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトに対するフォローアップを実施すること、こういう事項について調査審議することとしております。
 もちろんこれだけではなく、機動的に審議すべき事項というものが出てくると思いますけれども、こういった事項について調査審議をしていただきたく、この地震火山部会を設置するという流れになっております。
【平田部会長】  ありがとうございました。今、事務局から御説明いたしましたように、この部会が何をするかということが今提案されておりますので、これについて御意見を頂きたいと思います。どうぞ。
【松島専門委員】  質問ですけれども、この目的の中に「行政や社会のニーズを踏まえた計画の推進に努め」ということがうたわれているんですけれども、このニーズを踏まえるのは誰がやるということでしょうか。
【平田部会長】  事務局、答えられますか。
【大河原地震火山専門官】  例えば、建議に基づく毎年の実施計画、資料5にも出てきますけれども、そうした計画を定める中でも当然行政や社会のニーズを踏まえたものが入っております。また、実際にこれらの成果を取りまとめるに当たって、どう発信していけば、よりニーズを踏まえたものになるかということも重要になってきますので、そうしたことをこの部会でも必要に応じて是非議論をしていただきながら、よりよい進め方、あるいはその成果の発信などの方策を考えていければと思っております。
【松島専門委員】  分かりました。ありがとうございます。
【平田部会長】  少し補足いたしますが、この5か年計画の中間、3年目ぐらいで自己点検というのをやりまして、この研究を実施しているグループが自分で自己点検をして、レビューをします。そのレビューについて、この研究を実施している以外の方に、我々がまとめたレビューについての御意見、外部評価を頂きます。
 同時にその次の計画を作るということを、その中間評価の後ぐらいから始めるわけですけれども、今回の計画を作るにあたっても、広く学協会の意見や、パブリックコメント等で一般の方の御意見も頂いており、そういった意見の中には、広く社会のニーズが何にあるかということがかなり明確に書かれているものもございますので、それを考慮して計画を進めていくことが必要かと思います。
 それともう一つ、この審議事項のところに「地震調査研究推進本部による施策との連携に留意」と書いてありますが、地震本部はまさに、社会の防災力を高めるということがそのミッションで、国の施策としてやるわけですから、そういうところでどういった基礎的な研究が必要かということも、今後発信されていく、我々のところも含めて学術のグループに求めることがあると思いますので、それをしっかりと我々としても受け止めて、研究を進めていきたいと思っております。そういったことを全部緩くまとめると、今のような書き方になると思っております。
 ありがとうございました。ほかに御意見はございますか。
【井口臨時委員】  2番目の次世代火山研究のフォローアップについてですが、これ自体は既にフォローアップの委員会を立ち上げられていて、毎年フォローアップをやられてきていると思うんですけれども、ここの部会でやるフォローアップというのは、それとは違う視点で実施するということでしょうか。
【大河原地震火山専門官】  はい。次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトでは、文部科学省の下に設置した評価会でフォローアップを実施していますけれども、ここに書いているフォローアップというのは、その評価会でのようなかっちりとしたフォローアップではなくもう少し広い意味で、火山の研究の進め方、その中で次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトをどうやって進めていくかという、より広い意味での御意見を頂く、適切にアドバイスなりをしていく、という趣旨で書いております。
【平田部会長】  よろしいですか。ちょっとだけ補足すると、このプロジェクトの実施者に対する一種の評価やアドバイスというものは、その評価委員会がしますが、建議された計画の中にも次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトとの関係が書いてあります。つまり、地震火山観測研究全体の中で、この総合プロジェクトがどういう位置にあって、その成果がどう還元されていくかということを、ここの部会でも議論していただきたいと思います。
 もう少し分かりやすく言うと、この観測研究計画で予算化されたことだけではなくて、次世代のプロジェクトの中で挙げられた成果についても、この部会の中で意義についても議論していただいて、方向性についてアドバイスをするということも可能かなと思っております。事務局、そういう認識でよろしいですか。
 火山の研究者は両方に関係している方が非常に多いと思いますので、是非違うものであると思わないでください。この総合プロジェクトは建議された計画の中にも位置付けられていますから、その全体をここで議論するということが重要ですので、例えば地震の研究者や社会科学の研究者も含めて議論していただきたいなと思っております。
 ほかに御意見ございますか。ここは結構重要で、2つのことが書いてある。1つは地震本部との関係、1つはこの次世代プロジェクトの関係ということで、それも含めてここで審議するということになります。もちろんそれぞれの役割やミッションは違いますので、ちゃんと区別をする必要はありますが、大きく考えたときには両方が関連しているということを是非意識して、議論していただきたいと思っております。
 それではほかに御意見がないようでしたら、今の事務局の提案のように、当面やるべきこととして、資料3-4の具体的な取組事項に沿って、今期では議論を進めていきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

[議事4.「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の平成30年度年次報告について]

【平田部会長】  それでは、議事の4番目に進みます。これがまさに建議された計画の進捗状況を理解するということでございますが、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の平成30年度年次報告についての審議をします。まず、事務局から御説明ください。
【大河原地震火山専門官】  平成30年度の年次報告に関しては、各実施機関の担当者の皆様に原案の作成及び取りまとめをしていただきました。どうもありがとうございます。これをまとめたものが資料4-1となります。本日は、各機関から実施内容のエッセンスについて抽出して御報告いただき、それを基に30年度の成果について御審議をいただきたいと思っております。
【平田部会長】  今日いる方は大体今までのことを知っている方がほとんどだと思いますが、そうでない方もいるので一言だけ申し上げると、平成31年度の4月から新しい計画が始まりましたが、その前までの5か年の計画についての取りまとめです。それで、この部会では毎年、年度の初めに今年度の計画を取りまとめ、それから年度の終わる頃に、計画について何をやりましたということをまとめて、議論して資料を作っていきます。
 2つの資料を作っていて、1つは機関別の資料ということで、課題ごとに、実際にやった人たちが実施状況を年度ごとにまとめていく。その全体をまとめた概要という形で、今年度、この計画全体として何が分かったか、どういう成果があったかをまとめたものをこの部会で議論していただいて、さらに測地学分科会の方でももう少し広い観点から議論していただくということをしています。
 それで、それぞれ各機関、すなわち大学、国立研究開発法人など業務機関から、機関ごとに複数の課題がございますので、その御説明をしていただきたいと思います。
 といってもたくさん課題があるので、全部を説明すると非常に時間が掛かるので、発表時間は少し限られていますが、大学が10分、その他の機関は5分でお話をしていただいて、各機関の発表の後に質疑をしたいと思います。また各機関の発表が全部終わった後に、全体に関する質疑、コメントを考えております。
 順番は、資料4-1の目次の順番でいきたいと思います。それから、山梨県の富士山科学研究所はオブザーバーの吉本主幹研究員、北海道立総合研究機構地質研究所については事務局から発表していただきます。
 それでは、まず大学から。
【加藤臨時委員】  それでは、大学の成果についてお話ししたいと思います。
 最初に、災害のハザード予測のための研究ということで、これは地理空間情報を活用した避難訓練システムの構築ということで、みずから訓練に参加することで、みずからが地理空間情報を生み出して、こういったシステムを通して、みずからの行動を俯瞰して、客観的に避難訓練の行動を評価する、そういった防災教育システムを開発しました。
 次は、これは動画になっておりまして、釧路市に津波が来たという想定での避難訓練です。実際に赤が人々の避難している動きで、こちらが津波のシミュレーション。この場合ですと避難が間に合わないことが後から分かるということです。これは実際訓練に参加した人々のGPSのログになっていまして、後ろに来るのは津波です。日本海溝沿いで起きた巨大地震による津波がやってくる。こういうふうに逃げていると間に合わないということが、こういったシステムを構築することによって客観的に評価できるというものになります。
 次は、海岸付近の過去100年間の土地利用の変化が、データコンパイルすることによって、より詳細に分かったと。これは災害の脆弱性というものが、時間とともにどう変わってきたかというのを調べたもので、上が陸前高田、下が石巻の例になりますけれども、1896年、1933年の三陸沖地震とか1960年のチリ地震の後は、人々は余り海岸線に住んでいないんですけれども、それ以降、大きな津波が襲ってこなかったがために、1960年代後半以降、海岸部の都市化が一気に進んで、そのタイミングで東北地方太平洋沖地震が発生して、大きな津波被害が生じてしまったということが、これは石巻の例ですけれども、こういうふうにデータコンパイルすることによって客観的に得られたということです。
 次は、研究分野横断型のリスク評価手法の構築というものを新たに行いました。これはある震源を仮定して、地震動を計算して、地盤の情報、不均質構造を入れて、構造の建物被害にも不確実性を入れて、損失も評価するということで、各フレームに不確実性があるんですけれども、各要素の不確実性を統一的に評価することによって、全体のリスク評価ができるシステムを開発した成果になります。これは高知市に実際に適用した例でして、これは木造家屋住居者1人当たりの死亡率ということで平均値、上がそのばらつきを示したものになります。
 次は災害誘因のハザード予測の一つであります即時推計手法について、これは1つトピックとして震源過程解析のものになります。GNSSの位相データから断層滑りを直接推定する手法というものを新たに開発しました。通常ですと、時系列に1回直してから、この時系列のオフセットを取って、どういった断層滑りがこの場で起きたかということを推定するわけですけれども、本手法では搬送波の位相情報を直接変異情報にオフセットに直して、この変異データをインバージョンすることによって、これは熊本地震の例ですけれども、日奈久断層や布田川断層沿いでの滑りの不均質の分布を即時的に推定する手法が新たに開発されました。
 次は地震の発生予測に関する成果になります。これはプレート境界の滑り速度変化と地震発生との比較というのを明らかにした研究例でありまして、東北地方の太平洋沖では小繰り返し地震という活動が過去から起きていることは分かっておりまして、それから求められる滑り速度のレートはゆっくりとした滑り速度なんですけれども、この灰色のものはその滑り速度に対応していまして、上に行くと滑りが早くなる。プレート境界の固着がちょっと緩んで、ずるっと滑るということを表しているんですけれども、そのタイミングで、ここの欄に書かれているのがM5以上の地震ですが、このように地震活動が活発化するように見える。特に2000年台後半以降はスリップレートが上がると、それに対して地震活動が活発化するときがあるということで、そんなにすごい増加ではないんですけれども、正の位相に比べて負の位相の地震の数というのは数倍上がる。すなわち滑り速度が増加する、すなわち固着が緩むことによって、地震の発生がしやすくなっているのではないかということが示されました。
 次は現象解明の成果になります。これは2016年の熊本地震になりますけど、こうやってInSARの解析や地震波を使った解析によりまして、少なくとも熊本地震の本震におきましては、最低3枚以上の断層面が必要だと。そういった断層面が同時に動くことによって、1つの地震を生じたということがクリアになりました。
 また、下の図になりますけれども、28時間前に起きた前震から本震に至る地震活動の時空間発展、断層面に沿って地震活動が起きている部分がだんだんと拡大していくという様子がクリアになりましたし、その最中に地殻のGNSSのデータを解析してみると、ゆっくりとした変動を示すような、ずるずるっとした変動も同時に起きているということが分かりました。
 次は現象解明の成果になりますけれども、2018年の北海道胆振東部地震について、こういった震源分布がよく分かったりと。これは臨時観測することによって、こちらでも同じように、複雑な断層面が同時に動いて1つの地震になったという例にもなりますし、強震のデータを使った震源過程のインバージョンもされていますし、あとは、例えばこの一つの大きな災害の事例として、液状化というのが取り上げられるわけですけれども、この札幌市における液状化の要因として、地下20mぐらいのところにある、N値がすごく低い、非常に弱い地盤が存在しているんじゃないかということが示されまして、これが地震動によって変形したことによって、液状化が中央付近で発生してしまったのではないかということが推察されております。
 次、これも現象解明ですけれども、東北地方太平洋沖地震に関連した成果ということで、地震の前に東北地方の沿岸付近というのはこの図に示しますように、長期にわたって沈降しておりました。この沈降している理由というのはよく分からなかったんですけれども、この課題によって一つのモデルが提案されております。それはこういったマントルウエッジのところに低粘層のレオロジーの物質を仮定することによって、固着域と地震地滑りを与えることによって、地震間の上下動の時間変化を計算しました。
 そうすると、2011年の地震が起きる直前の上下の速度というのは、この黒い点です。これは地震直前のデータなんですけど、こういう固着した状態で大きな地震が起きた直後というのはこういうプロファイルをしまして、火山フロントよりも海側では流域速度がプラスの状態で推移する。だんだん時間がたつと流域速度というのは低下してきて、例えば300年ぐらいたつと、もう流域速度はゼロぐらいになって、逆に沈降速度が速くなっていく。
 例えば巨大地震が発生してから600年後ぐらいになると、こちらに書いていますけど、そのプロファイルがちょうど地震前に観測されていた鉛直速度とのプロファイルとよく一致するということで、これはマントルの高温部の粘性によって、この陸側の上盤のウエッジのところのところが、後半に向かってより引きずり込まれやすくなって、沈降速度がより大きくなっているのではないかというモデルが提案されました。
 次は、地震の最後ですけれども、日記史料に基づいて、有感地震の日数が初めて分かりました。これは安政東海・南海の地震が起きた後の地震活動。この上の方が四国、西南日本の方ですけれども、だんだん時間とともに地震活動は低下していくんですが、ちょうどこの安政東海・南海の地震が起きてから1年弱たったときに、地震活動が西南日本全体で活発化している時期がどうもあるということが、初めて明らかになりました。
【大湊臨時委員】  続いて、火山に関するトピックの中で、重要と思われるものを3つ選んで御紹介いたします。
 最初は桜島における避難シミュレーションですけれども、これは実際に噴火が起こったときに、火山灰が降る可能性がある地域はこれぐらいあって、そこにいる住民の方は80万人ほどいるんですけれども、これがそのまま全部逃げようとすると、50時間以上掛かるということになって、これではなかなか計画も立てられないということになるんですけれども、様々な情報の出方の条件であるとか、住民の方々の意向等を踏まえた上で、いろいろ現実に近いようなシミュレーションをやってみると、例えば避難勧告が出た時点では実際に逃げる必要があるのは、風の向きを仮定すると、80万人のうち実際必要なのが13万人で、4時間あれば逃げられるとか、あるいは事前に避難準備情報を出しておけば、それなりに準備をするので、避難勧告が出た時点で、さらに2時間早く逃げられる。こういう、より実際に使えるような避難プランを立てることに使える情報が得られたという結果です。
 次も同じ桜島ですけれども、桜島では様々な探査、調査等をやられていまして、この前の期の調査を通じて、地下の構造が大分分かってきたということを上の図は示しています。
 それから前の期の重要な項目の中で、噴火事象系統樹というものを作って、その中の分岐の条件を定量的に判断することはできないかという課題があったわけですけれども、その一例が桜島でやられているというのを下の図が示しています。マグマの貫入レートという観測量を調べると、それに応じてどういう噴火につながっていくかという事例が得られたということで、ある観測をすることによって、定量的にその後の推移が分かるということを示すことができた重要な事例ということで紹介いたしました。
 次です。前期、火山では火口の周辺で観測することで、噴火に先行するような情報、信号は得られないかということで、観測網を設けていたわけですけれども、その中で、前の期の間に幾つかの事例があって、その幾つかの事例によって、噴火の前に例えば山が膨張するであるとか、地震の数が増えるであるとかという事例が幾つか得られて、これで事前に情報を発する可能性が、原理的にはあるということが示される事例が得られたということで、重要だと思っております。
 ただ、これらの例ですと、先行時間が5分や10分ということで、実際逃げる時間を考慮すると、まだこの情報だけでは十分でないので、さらなる研究が重要だということも分かったという結果になっています。
【平田部会長】  ありがとうございました。短く何か質問はございますか。
 それでは、全体が終わった後に少し議論をしたいと思います。
 では次に移りたいと思います。情報通信研究機構の説明をよろしくお願いします。
【中川臨時委員】  情報通信研究機構の中川でございます。よろしくお願いします。我々の研究所は、先端リモートセンシング技術による地震及び火山の災害把握技術の開発ということで進めさせていただいております。
 レーダーを航空機に搭載いたしまして、上空から地表面の状態を観測するというところで、周波数はXバンドを使っておりまして、この一番のメリットは、昼夜及び天候の影響を受けずに地表面の状態を観測することができるというものです。我々はこれまで、航空機登載の合成開口レーダー、Pi-SAR2というものを開発・運用してまいりました。こちらの地表面の分解能が30cmというところで、右下にありますが、そのデータを使って、土砂崩れの崩壊場所の自動抽出等の解析等を行っております。
 航空機登載のSARと衛星SARの違いは、まず我々の航空機SARは、周波数にもXバンドを使っているというところもございますが、分解能が非常に細かい。あとは偏波観測ができるというところ。あとは即応性というところで、航空機は民間の航空機をリースしておりまして、特に予約等が入ってない場合は、観測をすると決めてから、大体24時間以内には観測ができるというところでございます。
 これは、我々の研究開発のスケジュールでございますが、我々は第4期の中期計画で進めさせていただいておりまして、2020年までまずは進めているというところでございます。
 次は、実際に災害が起きた際に、どのような判断をして、飛んで、データを取得して、データ配信するというところの災害対応マニュアルです。緊急SARの観測スキームに我々は参加させていただいておりまして、その参画に当たりまして、このようなマニュアルを作って対応させていただいております。
 熊本地震が起きました際に、このようなフライトパスで観測し、データ配信を行いました。
 これは、新燃岳の噴火のときで、下の方が実際の火口の様子でございまして、このときは実際に可視で見ますと、噴火している、噴煙が出ているところで、通常の可視のカメラ等では火口の状態が全然見られませんが、マイクロ波、電波を使って観測することができるというところでございます。
 これまで観測しましたデータは、データ検索・公開システムというものを構築しておりまして、そちらで、研究目的に限ってですが、共同研究等を締結させていただいた方に、この配信システムを使ってデータを配布しております。
 先ほど言いましたPi-SAR2という分解能が30センチのレーダーを開発して、運用を行っておりますが、昨年の5月以降運用をストップしております。それは次世代の航空機SAR(Pi-SAR X3)という、地表面の分解能が15センチの合成開口レーダーをただいま開発しておりまして、その際にコストを削減するというところで、Pi-SAR2で使っておりました一部機材を転用しております関係で、現在は運用ができない期間となってございます。
 下に線表が引いてございますが、当初の予定では今年度末ぐらいに試験観測をして、翌年から運用と予定しておりましたが、機体改修が少し遅れておりまして、来年度7月、8月ぐらいまで、少しずれ込むということになってございます。
【平田部会長】  ありがとうございました。ただいまの御説明について、簡単な御質問ございますか。
 それでは次に、防災科学技術研究所、よろしくお願いします。
【高橋臨時委員】  それでは、防災科学技術研究所、3001番から3005番、全部で5つの課題について御説明したいと思います。
 一番初めは、3001番、巨大地震による潜在的ハザードの把握に関する研究ということで、これは目的としては、いろんな世の中にある情報から地震の発生のポテンシャルを評価した上で、室内実験を組み合わせてシミュレーションを通して、最終的に巨大地震の実態解明に資するということです。そういうことでそこの一番上のところに、応力分布モデル・巨大地震発生シナリオと模擬観測記録生成と書いてありますが、全体としては、そこに書いてあるような流れでやっています。
 左側に、沈み込みの遅れ速度分布とか、あるいは応力場の主軸分布とありますが、そういうものを使って、ひずみエネルギーの増加域、ここに書いてある赤い部分になりますけれども、地震活動が活発化するところはどこか、そういうポテンシャル評価をするわけです。
 それからその下に岩石実験の例が出ていますが、この例では、スケールの依存性がどうもありそうだということが分かってきて、こういうものを組み合わせて大規模なシミュレーションに持ってくる。地震と津波の固液混合層のシミュレーションを通して、最終的には地震発生シナリオとその記録を作るというところで社会実装の方に持っていくという全体の計画になっております。
 2番目は、基盤地震観測等データのモニタリングによる地殻活動の理解と予測技術の開発ということで、これまで防災科研では、低周波微動とかスローイベントの観測とか解析を通して、何が起こっているかということを検証してまいりました。
 左側、幾つかスロー地震が観測されているところがありますが、紀伊半島の熊野灘の沖合のところ、あとは東北地方太平洋沖地震のあたり、それから、これは防災科研もS-netのデータを昨年の10月から公開するようになりまして、そういうことでも大分検知が始まっているところになります。
 そのようなスロー地震、あるいは地震も含めてですけれども、どこで何が起こっているかをモニタリングしながら、その中から、右の上の方になりますけれども、地震波速度構造の時間変化だったり、その地域の特徴的な構造を抽出して、最終的にはシミュレーションに持っていって検証しようということを実施しております。
 3番目は噴火予測システムの開発に関する研究というところで、火山活動の把握と災害軽減のための観測、予測、対策技術を投入して、その戦略を確立するということが全体の目的になっていますが、いろんな多項目の観測とポテンシャル評価を踏まえた対策情報発信の提案ということさせていただきました。
 火山の下でマグマだまりの中からだんだん噴出していくときに、どんなパラメータが時系列で変わっていくかということ把握するために、多項目の観測データによる火山現象、それから災害過程のための研究ということやってきております。
 それに加えて下側に、これまでも先ほどお話がありましたけれども、これは熊本地震のときの例ですが、InSARの解析の技術を使って、リモートセンシングの技術をやる。それから、ARTSというものを開発して、航空機からいろんな赤外線のデータ、赤外データとかそういうものを見て、空間的に噴火や災害のポテンシャルの評価のためのモニタリング、あるいはモデリングをするということになります。そういうものを通して、最終的にリスクコミュニケーションに関するところに持っていって、住民の皆さんの避難等というところに持っていくということをやってまいりました。
 次は3004番、基盤的地震・火山観測網の整備・維持及び超大容量の地震・火山観測データの効率的流通システムの構築ということで、皆さん御存じのとおり、防災科研では、陸海統合地震津波火山観測網、我々はMOWLASと呼んでいますが、そういう全体の体制を整えてきました。左側の図、先ほどお話にも出てきましたが、北海道胆振東部地震のときの震源決定ですとか、そういうところに防災科研の方から情報提供しています。
 S-netが大々的に入ってきましたので、陸と海と両方合わせた解析をして、基本的には観測点の補正項に適切な値を入れることによって、海側の検知能力が大分上がってきたということが分かるようになってきました。S-net、あるいはDONETについては津波も観測できますので、それも観測され次第情報提供しております。
 それから、こういうデータを通して、DD法を使った震源のカタログや、地下構造の3次元構造、こういうものもホームページを通して公開するようになりました。皆さんの方でも使っていただいているかと思います。
 最後に、火山活動把握のためのリモートセンシング観測・解析技術に関する研究ということで、これは先ほどの火山のところもありましたが、それと連携した形になりますが、どちらかというとここではセンサーの開発というところに主眼が置かれています。そこに書いてあるのは地上設置型のレーダー干渉計、あるいは衛星搭載型のSAR、そういうものを使ったリモートセンシングの技術に関して研究を進めております。
 右側の図、これも先ほどお話ししましたが、航空機の搭載型の光学センサーの開発を実施してきて、先ほどARTSのお話をさせていただきましたが、そういうデータがきちんと取れるような体制が整ったということになります。
【平田部会長】  ありがとうございました。ただいまの防災科研の御説明に質問ございますか。
 それでは次、JAMSTECですかね。
【仲西臨時委員】  はい。海洋研究開発機構です。
 掘削技術を活用したという課題と、海域地震発生帯研究開発の2つです。1つ目の課題の主要な成果として、沈み込み帯プレート境界断層研究について紹介します。図1ですけれども、熊野灘南海トラフ浅部での孔内検層などから地層内の応力状態が、浅部で正断層場、深部で横ずれ場であるということを推定しました。
 昨年度は、図2になりますけれども、熊野灘で行った地震探査データの再解析により、プレート境界上盤のひずみ蓄積域に高速度帯を確認したほか、図3になりますけれども、掘削パラメータから岩盤の強度を推定し、熊野海盆南部のC2という孔の周辺では、プレート境界上盤の強度が大きいことが分かりました。また、図4になりますけれども、東北掘削の成果として、現場の物理条件を再現する実験によるプレート境界の摩擦及び力学的モデルを構築しました。
 次、2つ目の課題に移りますけれども、2つ目の課題の主要な成果としては、プレート沈み込みに伴う地殻変動観測のための長期孔内観測システムの設置が挙げられます。前計画の期間中にDONET2を完成し、防災科研に運用移管を行うとともに、下の図に示す3点の新たな多項目孔内観測システムを設置し、DONETへ接続しました。詳細な位置や時期はこの図に示すとおりです。
 これらのシステムを活用することにより、2016年4月1日に起きた三重県南東沖地震は、この後の話にも出てきますけれど、プレート境界地震であるということが明らかになりました。特にDONETの水圧計が、この地震に伴う鉛直方向の海底地殻変動を観測できることを示したほか、こちらは昨年度の成果ですが、左下、水圧計の設置現場で精密計測を実施し、現場校正する技術の開発及び検証を行い、連続リアルタイム海底地殻変動技術の開発、展開としての技術開発を進めたところでございます。
 また2点、地図に示しているC2とC10の約6年間の孔内での間隙水圧の連続観測データを解析したところ、期間中に8回のゆっくり滑りが観測されました。これらのゆっくり滑りによって、海洋プレートの沈み込みによって発生するひずみの30から55%に相当するひずみが解放されていることが分かりまして、これは全計画期間中の最大の成果の一つだと思っております。昨年度は広域でのゆっくり滑りの検出に向け、最初に紹介した長期孔内観測システムを地図中の黄色の三角地点に構築したほか、オレンジの三角の地点には、海底地殻変動観測点の構築を開始しました。
 さらに昨年度は、これらのゆっくり滑りのモニタリングと、先ほど言った4月1日の三重県南東沖地震の統合的理解を進めたところです。これまで御紹介した観測システムと構造調査の成果によって、そこの図に示してあるように、プレート境界と分岐断層が示されている断面がありますけれど、三重県南東沖地震はプレート境界地震であるということが明らかにされましたが、孔内間隙水圧データから、これまでに観測されたことがなかった地震発生帯、浅部でのゆっくり滑りが、非地震時でも繰り返し発生しているということが、前計画中に先ほどのように発見されました。
 特にその振る舞いを、定性的ではありますが、右下に示したようなプレート境界のモデル設定をして、巨大地震のサイクルの中にM6の地震が発生するようなシミュレーションをすることによって、南海トラフ巨大地震の現在の準備状況というものについて知見を得ました。結論としては、そのサイクルの中のちょうど真ん中あたりに相当するということです。
 次は、日本海溝の方に話を移しますけれども、左上は、変位速度場の空間勾配変化によるプレート間固着モニタリング手法を開発したというものです。それとともに、東北地震前のゆっくり滑りの伝搬を捉えたという成果です。
 それからその下半分に行きますけれども、滑りの多様性と相互作用に大きく影響する摩擦速度と、非線形粘弾性応答の両方を考慮した数値シミュレーションにより、東北地方太平洋沖地震後の余効変動を非常によく説明するモデルを構築したという成果です。これによって予測性能の向上が期待される成果が得られたことになります。
 さらに右上ですけれども、港の利用などで問題となっている東北地震後の余効変動による沿岸での上下変動の再現と、その後の推移予測も実施しました。
 次、千島海溝から日本海溝のアウターライズ地震断層については、構造調査と地震観測からの実態把握を進めています。構造調査の結果が真ん中に示されていますが、千島海溝と日本海溝で、アウターライズ地震断層の発達に伴い、海底面付近からマントルに至るまでの構造が変質しているイメージが捉えられております。その変質度合いは、地形のでこぼこぐあいと同様、日本海溝の方が顕著であるということが分かりました。それから右下ですけれども、正断層型の地震も北緯30度付近では深さ40キロ付近まで発生しているということも新たに分かりました。
【平田部会長】  ありがとうございました。それでは、ただいまのJAMSTECの御報告、よろしいですか。
 その次が産総研ですね。お願いいたします。
【山元臨時委員】  産総研です。課題が9つあるので、簡単に順番に説明します。
 産総研では2014年より、津波堆積物データベースというのをウエブ公開しておりまして、これまで整備した範囲を書いております。こういう形でデータベース公開をやっております。
 これはもっと前からやっている活断層データベースの整備で、断層ごとのデータをどんどん毎年足して公開している、そういう作業を続けているという紹介です。
 これは火山の方なんですけれども、日本の各活火山について、噴火履歴、実績図として火山地質図を出版しておりまして、昨年度は八丈島を出版しました。あと、富士山は2016年に、これは50年ぶりの改定で大幅に変えました。この成果が昨年度から、山梨県さんと静岡県さんの方の実際の富士火山のハザードマップの改定というところで、基本的にこの火山地質図のデータが使われております。
 これは先ほどのデータベースに収録しているものですけれども、海溝型巨大地震の履歴ということで、それに伴う実際の津波堆積物をいろいろなところで検出しておりまして、調査した実績を書いている図になります。こういうものをデータベースに収録しています。
 次はやったものですので飛ばします。
 これは産総研の方で火山性流体を検出するためのMulti-GASシステムというのを開発して、ようやくちゃんと連続観測ができるようになったというものです。このブルーの丸がそうです。今までは飛び飛びのデータだったんですけれども、例えばこれは霧島で、そのようにずっと連続するデータが取れるようになったことによって、実際ほかの地殻変動などと比較できるデータがようやく取れるようになりました。これはよく取れた例ですけれども、2018年4月19日、霧島硫黄山の噴火に先行して、地殻変動と連動するような形で化学組成の顕著な変化が見えているという例です。
 これは産総研で東南海地震に伴う地下水の変動連続観測をずっとやっているという御紹介になります。
 これは微小地震を使った地殻内の応力場の構造というのを出したというものです。左の方、関東周辺ですが、微小地震を使うと、意外と地殻内の応力の正断層、横ずれとかいろいろありますけど、応力のパターンがどうも非常に多様性があるというのが顕著になっている図です。
 これはもうちょっと広い対象で、数年前に出した東南アジア近辺のデータをウエブで公開したり、データベースのバージョンアップを続けているという紹介になります。
【平田部会長】  ありがとうございました。質問したいことはいろいろあるけれども、ともかく全部行っちゃいましょう。
 それでは次は、国土地理院、お願いします。
【矢来臨時委員】  国土地理院です。13課題プラスアルファありますので、この赤で示した課題について紹介させていただきます。
 まず6001の課題、内陸の地殻活動の発生・準備過程の解明でございます。この課題は、測地学的手法を用いて、内陸の地震発生域の詳細な地殻変動把握と、震源断層モデル手法の高度化等を目標としております。平成30年度は、この左側の北海道胆振東部地震について、GNSS観測とSAR観測で得られた地殻変動を基に、震源断層モデルを推定しております。上端の深さが約16kmと、一般的な内陸地震に比べて深いということが特徴的であったと思います。
 右が新潟のひずみ集中帯についてですけれども、GNSSの繰り返し観測を行っております。東北地方太平洋沖地震後からの観測になっておりますけれども、左上の2011年から12年度の1年間では、東西の伸びが顕著だったんですけれども、その2つ下、最新の2017年から18年では、かなり短縮傾向が見えてきているということになります。このひずみ集中帯の東西短縮ですけれども、過去の大地震の粘弾性変形が関係しているのではないかということで、これを見積もった結果を示しています。これを見ますと、パラメータにも依存するのですけれども、ひずみ集中帯の主成因と考えることは難しいことが分かったということであります。
 次、これも6001の課題ですけれども、何といってもこの前建議の期間では熊本地震を外すわけにはいかないと思います。熊本地震についてGNSS観測と干渉SARの観測で、詳細に地殻変動を把握して、詳細な震源断層モデルを構築したというものです。その概要はこれまでいろんなところで報告されていますので割愛しますけれども、この地震については余効変動が顕著であったということであります。
 下に3つ図がありますけれども、左がGNSS観測による水平と上下の変動、真ん中がSARで捉えられた準東西方向の成分で、その右側が準上下方向の成分であります。干渉SARということで非常に詳細に空間分布が分かるんですけれども、特徴的な点としては、この地震では布田川断層で大きく滑ったんですけれども、布田川断層のところで、余効変動では変異の食い違いが見られないというところが特徴であります。
 GNSS観測では時系列のデータが得られますので、それを見ますと、余効変動は地震直後の60日程度は急激に変化していたんですけれども、その後はゆっくりとした変動に移って、現在も継続しているということであります。この余効変動から、継続する地殻変動で粘性緩和であると考えて、水平の二層構造のモデルを検討した結果、小さくて見づらいんですけれども、右下にあるような弾性層が25kmで、その下の粘弾性層、粘性率が2×1018 Pa・sという構造が推定されたということであります。
 次、ここからは6005番のGNSS観測、GEONETであります。GEONETで地殻変動モニタリングを着実に実施したということであります。ここの図に挙げておりますような東北地方太平洋沖地震後の余効変動でありますとか、その下にある北海道胆振東部地震や、先ほどの熊本地震による地殻変動を検出したということ、また右上にありますような、ここに例を挙げておりますけれども、霧島山、箱根山のような火山活動に伴う地殻変動を観測して、その変動を詳細に把握したということであります。これらのモニタリング結果は、ホームページでの公開でありますとか、地震調査委員会や火山噴火予知連絡会に報告して、評価に活用されております。
 このGEONETですけれども、皆さんに使っていただいているF3解というものは非常に精度が高いものではあるんですけれども、実はもう解析戦略が10年ほど前に策定されたものであります。その後、解析ソフトウエアのバージョンアップやGPS以外のGNSS衛星が運用開始されたということもありまして、これらに対応した新たな解析戦略を検討しております。第5世代解析ストラテジと呼んでおりますけれども、一番特徴的なのはマルチGNSS解析を行うということであるかと思います。
 次は6008の宇宙測地技術による地殻変動監視であります。干渉SARについては、これまでも様々なところで紹介がありますけれども、左上に挙げたような様々な地震活動や火山活動による地殻変動を把握して、地震予知連絡会や地震調査委員会、噴火予知連絡会に迅速に提供して、様々な評価や噴火警戒レベルの検討等に活用されてきているところであります。平成30年では胆振東部地震について、地震直後に緊急観測が行われたデータを解析して、地震当日夕方に解析結果を公表するという、その迅速性も向上してきているところであります。
 また、その干渉SARについては、右上のように、これは箱根山大涌谷の火山活動の例を示しておりますけれども、大涌谷の直径200m程度という狭い範囲での変動を検出して、その時間変化を詳細把握することができております。従来の地上の観測設備では検出することが難しいような極小規模な変動域の変化を検出した初のケースでありまして、最近で言いますと、霧島山硫黄山の噴火に伴う変動などはその例に当たるかと思います。
 次は、6012のGNSS観測・解析技術の高度化であります。こちらはまず、右側から説明しいたしますけれども、GEONETのデータをリアルタイムに解析して、震源断層モデルを推計するというシステムを、平成28年度から試験運用を開始しております。これは右下にあります熊本地震が初の例になりますけれども、熊本地震ではこのシステムで、リアルタイムに地殻変動を把握することができたと。震源断層モデルについては準リアルタイムで推定しているんですけれども、その結果は気象庁のCMT解と一致する結果が得られております。
 このシステムは1つ課題がありまして、解析が非常に重いという課題がございます。それを解決するものとして、左側のPPPのリアルタイム解析システムの開発を今進めているところであります。電子基準点のデータをPPPでリアルタイム解析するという検討を行ってきているんですけれども、安定的に高精度なリアルタイム解析ができることが明らかになったというところで、現在、他機関のGNSS観測点についても定常的な解析を行えるよう、システムを拡張しているところであります。
 次、SAR観測・解析技術の高度化でありますけれども、この課題では、干渉SAR時系列解析技術の高度化を行っております。誤差要因が幾つかあるんですけれども、そのうち植生については、植生の影響を低減する手法として、位相最適化処理というものを開発しました。これによりますと、従来の手法に比べて100倍以上の計測点を検出することができまして、この例で言いますと、立山の弥陀ヶ原の解析結果を示しておりますが、非常にクリアに変動域を抽出することができております。
 また、誤差要因として左下の電離層の影響がございます。これについては周波数分割法というのを開発しました。誤差を低減する前というのは、非常に大きな誤差が載っているんですけれども、その右側の図にありますように、誤差を低減することができまして、余効変動のような非常に微小な変動を抽出することができるようになったということであります。これらの開発した技術について、GUIのソフトウエアで効率的に使うことができるように開発を行いました。
 次、地震予知連絡会です。地震予知連絡会は建議の中でこのような役割を担うということをうたわれております。平成30年度においても着実に実施したということであります。
【平田部会長】  ありがとうございました。
 次は気象庁ですか。
【原田臨時委員】  気象庁でございます。十数個課題があるうち、今回は7つの課題について紹介させていただきます。
 まず7003番は、火山における地殻変動観測でございますが、GNSS観測などから伊豆大島全体の地殻変動として、長期にわたって継続している膨張と、それから周期1, 2年程度の膨張・収縮の繰り返しが引き続き見られているところでございます。
 また、火山の傾斜観測において課題となっていました降水及び融雪の影響変化の除去について、タンクモデルを適用して、降水補正や融雪補正を組み込みました結果、データの中長期的なSN比が向上したというものでございます。
 また、衛星SARのALOS-2のデータを用いた解析によって、国内の活火山周辺の地殻変動検出を試み、空間スケール数十m程度の変動を検出できることを示したものです。また、伊豆大島での可搬型重力計の絶対重力点における継続的な検定データの解析により、三原山で継続している重力増加、これが局所的な沈降で説明できることが分かったというものです。
 それから一番下、マグマだまり内の気泡の上昇による地殻変動のモデル化を行いまして、体積増加量と膨張の持続時間が、おおむね観測と同程度の値に再現されたということを示しています。
 7005番は、火山における全磁力観測に関係するものですが、草津白根山において全磁力観測を行いまして、2014年と18年の火山性地震活動や湯釜の膨張を示す地殻変動に対応した小規模な熱消磁と見られる全磁力変化が観測されたというものです。また右側ですが、2018年、本白根山の噴火後に自然電位観測を行いました結果、鏡池北火砕丘の周縁部などで局所的に電位の高い領域が見られたというものを示しています。
 7006番は、地震活動・地殻変動監視における高度化に関する研究ですが、左が中国地方のGNSSデータを用いて、南海トラフ沿いの長期的スロースリップの客観的な時空間分布を得る手法を開発したというものです。これによって2000年から2002年の紀伊水道の長期的スロースリップ、また2017年から18年の志摩半島付近の小規模な長期的スロースリップを検出しております。
 右側の方、SARのALOS-1のデータを用いた時系列観測によりまして、御前崎、潮岬、室戸岬、足摺岬周辺の定常的な地殻変動検出を行い、面的に詳細でスムーズな地殻変動分布が得られたという結果でございます。
 同じく7006番ですが、左側、三陸沖から房総沖における地震発生シミュレーションを行ったというものです。地震の発生履歴を完全には再現できてはいませんが、過去にあった続発的地震発生パターンが再現できたという結果です。それから右側、深部低周波地震の領域浅部側に顕著な低いpの値のp値帯が分布して、深部低周波地震の活動度が特に高い領域において、長期的スロースリップに関連したp値の時間的変化を得たというものでございます。
 7008番は緊急地震速報の高度化に関するものですけれども、気象庁では平成29年度末にPLUM法を緊急地震速報に導入しました。このPLUM法を導入することで、巨大地震発生時の予測震度の精度向上が見込まれます。引き続きp波の情報を活用した迅速性の向上、それから減衰構造の導入による予測精度の向上、またさらに、地盤増幅特性の高度化による長周期微振動への対応といったようなことを進めていく計画でございます。
 7009番は津波に関するものですが、津波地震対策として、津波地震や海底地滑りによる津波の評価を行いました。また2016年から気象庁の一元化震源決定処理に用いている自動震源決定手法の改良を行いました。また、震源過程解析の自動化というのが右下にございますが、比較した22地震のうち8割でUSGSの解と整合的な解が得られたという結果でございます。
 7010番は、大規模噴火時の火山現象の即時把握等によるものですけれども、XバンドMPレーダーやKuバンド高速スキャンレーダーによる桜島噴火の解析を行いました結果、噴煙内部の二重偏波パラメータの変化傾向を得たというものでございます。
 また、2015年から17年の気象庁メソ解析の3時間ごとの気象場を入力値に用いて、富士山の宝永噴火や桜島の大正噴火を想定した降灰シミュレーションを行いました。それにより、予想最大降灰量分布や降灰確率を試算したという結果でございます。
 最後になりますが、7001番、津波の予測手法の高度化に関するものです。沖合で観測された津波波形の逆解析に基づく即時予測システムを開発しまして、tFISHという名前で、平成30年度末から気象庁における津波警報への活用を開始したところでございます。引き続き、即時予測手法の改良や予測結果評価手法の改善を進めてまいります。
【平田部会長】  ありがとうございました。
 それでは次に、海上保安庁。
【石川臨時委員】  海上保安庁はごらんの6課題になります。
 最初に、8001の海底地殻変動観測ですけれども、昨年度の成果といたしましては、南海トラフ、日本海溝において観測を継続しております。南海トラフについては、左側の図が最近4年間の地殻変動の図ということになります。特に昨年度に関しましては、2017年末頃のデータから、紀伊水道沖の観測点において浅部のスロースリップに起因すると考えられる非定常地殻変動を観測しております。
 右側が日本海溝沿いの結果ですけれども、こちらについても最近4年間の変動速度という形でお示ししております。マントルの粘弾性効果の影響を含んだ余効変動が現在も継続しております。また、時間とともに少しずつ速度が変わってきておりまして、大局的には速度は鈍化傾向にあります。
 次は、この5年間の成果の一部ですけれども、まず南海トラフ沿いにつきましては、プレート境界の滑り欠損レートを推定しまして、ここでは例として3つほどモデルを書いておりますけれども、このような形で海底地殻変動観測の結果から、プレート境界の固着状態の不均質性があるといったようなことが分かるようになってきました。
 右側の日本海溝沿いについてですけれども、こちらもこの計画期間中の2014年に、その時点までの観測データというところで、一旦論文にまとめております。
 下の観測技術の高度化ですけれども、観測技術の高度化のための研究開発はずっと継続しておりまして、本計画期間中には観測時間短縮のための機器改良を行った結果、年間の観測頻度が年2、3回だったところが、最近は最大8回程度にまで向上しております。また、海中の水温の空間傾斜を補正する手法等の開発によって、測位結果のばらつきが減少しておりまして、こういった測位の高度化の取組によって、先ほどお示ししたような、紀伊水道沖のスロースリップのような微小な現象も捉えられるようになってきております。
 次は、8003の海域火山観測ですけれども、左上の地図に書いております南西諸島と南方諸島における海域の火山について、航空機による定期巡回監視観測を行っております。前の計画の最終年に当たります2013年に西之島で噴火活動がありましたけれども、本計画期間中も噴火活動が継続していたということもあって、航空機による監視観測を継続しておりました。
 ここでは計画期間中の写真を幾つか例として挙げております。現在、活動は鎮静化しておりますが、定期的に航空機による目視観測は実施しているという状況になっております。
 最後のページ、これは4課題まとめてですけれども、SLRやGPSによる宇宙測地技術による地殻変動観測であるとか、験潮、あるいは測量船による海底地形調査というところで、こちらは顕著な研究成果というわけではないですけれども、基盤的な観測として、こういった基礎データを蓄積しているという状況になっております。右下は例として最近作った豊後水道の海底地形図ということになっております。
【平田部会長】  ありがとうございました。次は文科省から。
【大河原地震火山専門官】  続きまして、北海道立総合研究機構の成果について、事務局から説明いたします。道総研では9101番、日本海沿岸域における過去最大級津波の復元ということで、奥尻島及び北海道本島の檜山沿岸の広い範囲で、西暦1741年及び12世紀頃の2つの津波堆積物を発見しました。この津波は1993年の奥尻の津波を超える規模であったと推定されます。
 この研究では、これら2つの津波の浸水実態を高精度で復元するため、津波シミュレーションと津波堆積物調査の両面から検討を進め、信頼度の高いシミュレーションモデルを構築しました。1741年の津波は渡島大島の山体崩壊起源とされています。崩壊前の山体の復元及び崩壊堆積物の判読から崩壊土量を見積もり、二層流モデルを用いて地滑りの再現計算を行った結果、ここにあるようなパラメータのときに最も調和的な結果となりました。これを波源として津波浸水計算を実施しました。一方、12世紀頃の津波は地震性と推定し、国の断層モデルの一つを選定して、断層長及び滑り量をここにあるように設定して、津波浸水計算を実施しました。
 こちらが浸水計算の結果になります。この計算結果は北海道防災会議における浸水想定見直しの検討に使用されました。また、浸水実績図としてWebGISで公開し、地元市町村での活用を図っています。
 続きまして、9102番、地球科学的総合調査による火山のモニタリングと熱水系のモデル化です。北海道内の特に活動的な5火山、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳において、引き続き地球物理学的、地球化学的なモニタリングを行い、火山活動の変化を把握しました。
 例として、雌阿寒岳の温泉水や樽前山の噴気の地球化学的観測結果を示しています。今後も継続的にモニタリングを行っていきます。十勝岳では熱水流動系について検討し、周辺の温泉で認められる温泉成分の変化の原因を明らかにしました。今後も観測を継続していくことで、こうした変化から火山活動の変化を検知できる可能性があります。
 十勝岳ですけれども、平成26から28年度に地球科学的な総合調査を行い、山体内部の構造や熱水流動系のモデルを構築しました。MT探査では、火口域の地下4km以深と地下0.5~2kmの深さに低比抵抗域が認められました。深い方はマグマ性熱水の分布域と考えられ、火山活動の活発化に伴って浅部に上昇し、山腹の温泉で成分や温度の変化を引き起こしています。一方浅い方は、これを含むいろいろな調査結果を踏まえますと、南北に延びる熱水系が分布している可能性があると言えます。
【平田部会長】  ありがとうございました。
 それでは引き続きまして、山梨県富士山科学研究所、吉本さん、お願いします。
【吉本オブザーバー】  富士山科学研究所の吉本です。富士山科学研究所では、9201番、9202番の2課題あります。
 9201番では富士山における地下水観測を行っております。火山噴火の予測のための地下水観測を行っているわけですけれども、地下水の観測だけでなく、その地下水がどこからどのように流れてくるかを調べるために、涵養標高を調べたり、それから富士山の麓のボーリングデータを収集して、地下水のパスを考えるということをしております。
 富士山では他機関からいろいろと観測をしていただいておりますが、富士山研では、地下水と、それから昨年度から重力観測をするための整備を行っております。富士山研内に作った測定室で、昨年度は国土地理院さんに絶対重力計の観測を行ってもらい、今年度からここで連続観測を行うべく、計画を進めているところです。
 次に9202番で、富士山の噴火事象系統樹の高精度化のための基礎研究といたしまして、噴火履歴の構築のための研究を推進しております。主にトレンチ調査、ボーリング調査を含めて、産総研で作られた富士山の火山地質図で明らかになっていない部分に関して研究を進めております。左の図では主に今回の計画でトレンチ調査を行った地点が書かれておりますけれども、このような地点での成果というのは、ハザードマップの改定に向けた基礎情報として使われております。
 さらに東大海洋研と共同で富士山の周りにある富士五湖のコアを採取し、そこから得られたコア資料から、富士山の噴火履歴を推定するという調査も行っております。これは本栖湖で得られた7mのコア資料のデータですけれども、約8,000年間分のコアが採取されまして、これまで陸上でカウントされていなかった、非常に小さな規模の噴火を検出することができました。
【平田部会長】  ありがとうございました。これまで御発表いただいた各機関からの研究成果について、御意見、あるいは質問がございましたら御発言ください。
 膨大な作業ですので、細部にわたって詳しく議論することはここではできないですが、今日は全体をざっとやりましたけれども、今の研究成果をまとめたものをこの部会として作っていくことが必要です。それについてはその次に議論するんですが、その前にその素材として、今挙げられた顕著な成果について、もし御質問などがございましたら是非御発言ください。
 急に言われても難しいかもしれませんが、大学やそのほかの機関で、特に「災害の軽減に貢献するため」ということを意識して、比較的、災害のハザードと、それからハザードに基づいて被害の対応とか、どういう被害が出るかというところに重点を置くのがこの計画で、今目指しているところですので、例えば避難訓練の様子などを可視化したものが報告されていますし、それからハザードそのものについても、地震のハザード、津波のハザード、それから火山のハザードについても研究の成果が挙げられていると思います。では、ここのところで特にいいですか。
 そうしましたら続いて、この成果の概要を作っていく必要がございますので、それについて事務局の方から御説明ください。
【大河原地震火山専門官】  説明いたします。先ほど平田部会長からも発言がありましたけれども、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」については、毎年、年次報告(成果の概要)というものを作っております。もう皆さん既に御存じかと思いますけれども、こういった黄緑色の冊子を毎年作っております。これの平成30年度の報告の作成方針について、資料4-2で説明をいたします。
 「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の平成30年度年次報告(成果の概要)を以下の方針で作成するということで、これは毎年のものですけれども、特に平成30年度は最終年度ですので、本計画の実施期間全体、すなわち平成26~30年度の成果についてもまとめる必要があると考えております。
 そういったことを踏まえまして、この(2)構成というところを事務局の案として作っております。まず【成果の概要】というまとめの部分に当たるところですが、1つは「5年間の研究成果の概観」という項目を設けてはどうかと考えております。これは本計画の実施期間に得られた成果を概観して報告するというものでして、これまで分からなかった部分のうち、この5年間でどこまで解明されたかといった進捗を把握できるような内容とする、と書いておりますけれども、委員の皆さんにメールでもお送りしておりますが、机上配付の参考資料としまして、平成25年度の成果の概要の中で5年間の研究成果について記載した部分を皆様にお配りしております。
 これは個々の研究課題の成果の詳細に立ち入って説明しているというよりは、これまで分からなかったもののうち、この5年間でどういった点がどこまで解明されたかといった進捗が把握できるような書かれ方をしているものになります。今回ここで挙げました、5年間の研究成果の概観についてまとめるというのも、大体このようなイメージのものを想定しているところでございます。
 これが5年間の研究成果の概観というところでございますけれども、それ以外には、平成30年度の成果の概要、それから、まとめ、用語解説、実施機関、研究課題一覧ということで、これは平成29年度のものと同様の内容を想定しております。
 それから、成果の概要の後ろの方には毎年参考資料ということで、この成果の概要を作成するに当たって、各部会にそれぞれまとめていただいている報告がありますけれども、この項目別概要というのも付けると。この項目別概要についても平成30年度の成果を中心に報告するけれども、その中で5年間の研究成果についても適宜言及するという形でまとめていただくことを考えております。
 取りまとめの方法ですけれども、毎年と同じですが、例年ご協力を頂いておりまして、取りまとめ委員を2名程度、地震火山部会の中から選出いたしまして、あとは地震・火山噴火予知研究協議会に文章などの作成には多大な御協力を毎年頂いておりますけれども、そういった皆様の御協力を頂いて作成をしたいと考えております。この取りまとめ委員につきましては、まだ事務局の方でもあたっておりませんけれども、皆様の中からできれば御協力いただきたいということで、近いうちに個別に御相談をさせていただきたいと思っているところでございます。
 日程につきましては、今日作成方針を決定しまして、それから実際に作成に入りまして、その後草稿がまとまりましたら、改めて地震火山部会で内容を確認、審議いただくということを想定しております。
【平田部会長】  ありがとうございました。今、事務局の方から方針が出て、資料の4-2にまとめられているような形で、成果の概要というのを作っていくということです。今の方針の説明について御質問ありますか。
 方針については、特によろしいかなと思います。まず年度ごとに報告の概要を作るということが、この部会の重要な役目ですので、是非進めていきたいと思います。同時に、30年度は5か年計画の最終年度ということもありますので、5か年をまとめた形で、この観測研究計画が全体としてどういう成果があったかということも、是非まとめていく必要があるかなと思っております。
 それで、そういう方針でやるとして、具体的にどういう構成にするかということで、目次のようなものがその構成ということで書いてありますが、事務局の提案は、「はじめに」が最初にあって、最後にまとめがあるのですが、中は2部構成になっていて、5年間の研究成果と30年度の研究成果の概要が別な章立てになるというのが、一応今の御提案ですね。これは前の……。
【大河原地震火山専門官】  平成25年度にまとめたときにそういう形でした。25年度の場合、まず「はじめに」があって、最初にこの5年間の研究成果というものが6ページ分ありまして、その次に平成25年の成果の概要ということで、25年の成果をまとめたものが12ページほどありまして、その後、まとめ、用語解説、それから参考資料となっております。
【平田部会長】  書き方を少し工夫する必要が多分あると思うので、30年度の成果の概要というのは、その5年の記載に対して少し細かいというか、具体的なことが書いてあるようなことになるんでしょうね。ですが内容は基本的に何かダブるような感じがします。30年度だけというわけにはやっぱりいかないと思いますので。5年の研究成果は絶対に必要なんですけれども。特に御意見はございますか。今の提案は、章を2つに分けてやるということです。特段の御反対がなければ、基本的にはこういう方向でやると。
 それで、これまでもそうなんですけれども、実際にドラフトを用意していただく必要があるので、この部会の中から2名の委員の方にお願いして、作っていっていただきたいと思っております。それでその2名の方は、もちろん委員としての御見識に基づいてドラフトを作るんですけれども、基本的にはこれは、研究を進めている人たちの自己点検、自己評価ですから、この研究を実施している人たちの成果をまとめるということで、重要なデータは、きょう全体を御説明いただいた機関別の研究成果というのがデータベース化されておりますので、それを見ていただくということがあります。
 もう一つは、今年の3月に成果報告シンポジウムをやっておりますので、その中で議論されたようなことも当然入っているし、それから日頃地震・火山噴火予知研究協議会で議論していただいているようなことも含めて、成果を取りまとめていただくということがあると思います。場合によってはその取りまとめの方から、また内容をよく知っている方にいろいろと作業を依頼するということも含めて、取りまとめをその2名の方にお願いすることになると思いますが、私の理解はそういうことでよろしいですね。
 もう少し、今の方針でよろしいかということをまず御議論いただきたいと思います。特に御反対がなければ。
 それで、この「機関別」の方は、それでもかなり専門的なところがあるんですが、成果の概要の方は、基本的には科学のリテラシーのある人なら読めば分かるぐらいに、地震や火山の専門家でない人が読んでも分かるぐらいまで内容を分かりやすく書いていただく必要があるので、それなりに大変だと思いますけれども、今後この部会でやっていく重要な仕事でございますので、皆様の御協力をお願いしたいと思います。
 では特段反対がないので、この資料4-2の方針と、それから構成に基づいて進めたいと思います。
【加藤臨時委員】  すみません、確認です。これまでは常に地震と火山の2名の方の御努力でやられたと思うんですけど、災害関係の方が入ってこられているので、災害情報とかそちら側の方々の意見とかは特にないですか。災害の関連の人がいた方が、より編集が楽だとかということはないですか。事務局に伺いたいんですが。特段聞いていないでしょうか。
【平田部会長】  それはちょっと私も思ったので、もう一人ぐらいいてもいいかなと思います。
【大河原地震火山専門官】  人数自体は2名でなくても問題ありません。多ければその分分担していけるということもありますので。
【平田部会長】  ただ余り多くすると、船頭が多くなるとよくないので、あくまでその取りまとめをお願いする人ということなので、専門の方に作業を依頼するということも含めて、その方にお願いしたいと思いますので、とりあえずは2名ということにして、必要があれば、災害、人文社会科学的な観点から取りまとめをする方についても、一部お願いするということにしましょう。それは具体的には部会長と事務局で選定するというのでいいんですか。
【大河原地震火山専門官】  はい。ここにいらっしゃる皆様とも御相談になるのですけれども、それを踏まえて部会長と相談して、最終的に決めさせていきたいと思います。
【平田部会長】  我こそはという方がいれば、もちろんお願いしたいので、ここで御発言いただければ。あるいは他薦でもいいですけど。今そう言われても困るでしょうから、そうすると、私、部会長と事務局で少し検討させていただいてお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 では、これで議題4、成果の概要を作成する方針等が決まりました。ありがとうございます。

[議事5.「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の令和元年度年次計画について]

【平田部会長】   それでは次に、5番目の議題に移ります。「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の令和元年度年次計画について議論いたします。今年度から新しい研究計画が始まりまして、それについて具体的にどういった研究課題があるかということが提案されて、事務局の方で既に取りまとめてございますので、まず事務局から御説明ください。
【大河原地震火山専門官】  説明いたします。資料5が「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の、今年からの5か年の研究課題の一覧ということになります。
 1ページから3ページは、実施機関順に並べているものになります。それから4ページから6ページは、この研究計画を部会別に分けて並べているものになります。部会別といいますのは、史料・考古部会、地震(現象解明)部会、地震(長期予測)部会、地震(中短期予測)部会、火山部会、災害誘因評価・即時予測部会、防災リテラシー部会、観測研究基盤部会という部会が立っておりますので、それぞれに並べ替えたものが4ページから6ページになります。詳細は省略いたしますが、このような形で研究計画が進められる予定になっております。
【平田部会長】  ありがとうございました。これも御存じの方はよくお分かりと思いますが、若干補足しますと、この5か年の研究計画は、この計画を策定するときに、具体的にこういう研究をするんだということを御提案いただいて、それをまとめて1つの大きな研究計画を作りました。ですから基は、それぞれ具体的な個別の研究課題というのがあります。その研究課題というのが、今このマトリックスになっている、百幾つか、たくさんの課題がございます。それで、このたくさんの課題はそれぞれ実施する機関が特定されていまして、この建議の計画のところにどの機関がやるかということが明示されていますが、その機関の中でさらに幾つかのグループに分けられていて、誰がやるかということもこの表でまとまって、担当者名も書いてあります。
 それぞれが5か年、この課題で研究するということを宣言して、それで年度ごとに、どういう成果が挙がったかを報告していただき、さらに今部会と大河原さんが言いましたけれども、研究を進めている地震・火山噴火予知研究協議会の中に、計画を推進する部会というのが具体的にありまして、建議の計画の項目ごとに幾つかグループに分かれて、そこで実際に連携を取りながら研究を進めていただくということです。ですから最小の単位はここにある表ですので、これが重要です。
 それで、これは原理的にはこの建議の計画の全ての項目、この大項目、中項目、小項目と言っていますが、ア・イ・ウというところまで、全て誰かが必ず責任を持ってやるという仕組みになっていて、ないものはないはずですけれども、万が一ないものがあった場合には、それは公募してやっていただく研究機関を探す必要がございます。
 これは5か年計画の発足、これで始めますよということを宣言したわけですが、もちろん研究の進展に伴って、ある課題はもう終わってしまったからやめますとか、あるいは新しい研究をする必要があるということがあれば、これはこの5か年の途中でも提案を受け付けて、新しい課題を作っていくということもやります。もちろん毎年やるわけではなくて、前期の場合には1回途中でやりました。
 ですので、そんなに毎年この項目が変わるということはありませんが、大きな出来事、地学的な出来事があったりとか、あるいは現象が発見されたりすると、変わるかもしれません。一応5年間の計画全体を作りましたので、これを個別の課題ごとにちゃんとやっていただくということが重要でございますので、今日はこういうことで進めるという、この表を皆様にお見せして、委員の皆さんに、1つは御自分の機関の課題についてもう一回御確認いただくということと、全体計画が、誰がどういういうふうにしているかというということがこれで明らかになることが重要です。
 私の方から追加の御説明をいたしましたが、何か御意見やコメントがある方。どうぞ。
【三宅専門委員】  すみません、3の(1)のイの津波の事前予測ですが、谷岡先生の課題がこちらでも黒丸になるようにというお願いをずっとしておりまして、御反映いただけましたら幸いです。今どなたも黒丸の方がいらっしゃらない状態になっております。
【平田部会長】  北大の谷岡さんのHKD05を黒にする。
【三宅専門委員】  はい。お願いいたします。
【平田部会長】  では、これは何かの間違いということですので、事務局で直すのと、あとは予知協議会の方もデータベースを修正してください。これは何か、加藤さん、知っている?
【加藤臨時委員】  覚えていないので申し訳ないですが、たしか谷岡元戦略室長と話したときに、白丸が付いていればいいのでは、必ずしも黒でなくて白でもいいんじゃないかという議論をした記憶は残っているのですが。
【平田部会長】  だから意識的に必ずしも黒がなくて白でもいいというのであれば、それでもいいけれども、それはむしろこの地震火山部会で議論して、是非この課題を黒にした方がいいという意見が強ければ、ここですればいいんじゃないかなと思います。もちろんこれはボトムアップの研究ですから、研究者が自発的な意思でやるということは重視されますが、一方で全体をうまく調整するというのもこの研究の特徴ですので、黒にしてもいいかなと。災害誘因評価・即時予測部会に関連した方は、三宅さんですか。では、部会からのそういう御意見があるので、黒にしましょう。
【大河原地震火山専門官】  分かりました。
【平田部会長】  黒がいっぱいある課題もあるので、必ずしも完全に統一はされてないですが、黒が一個もないというのはちょっと、という気はします。
 ほかに御意見ございますか。あとは少し余計なことですが、1つは、この研究計画では(第2次)ということで、前回を踏襲した形にはなっていますが、前回から変わったことも少しあります。参考資料1を見ていただいて、1つは、柱立てが1つ増えたということ。この計画を作るときの柱立ての中で、丸4 地震・火山噴火に対する防災リテラシーの向上のための研究、というのがあります。これが柱立てとして1つ増えたという認識です。
 それからもう一つは、この柱立てではなくて、横串というか、縦串というか、柱を横断したような形で研究をするということが、この計画ではっきりと強調されています。それは何かというと、総合的な研究というのが、このポンチ絵の丸4 の左側に書いてありまして、南海トラフ沿いの巨大地震、首都直下地震、千島海溝沿いの巨大地震、桜島大規模火山噴火、それから高リスク小規模火山噴火という、この総合的な研究の5つは、丸1 から丸5 まで全部の分野を横断したような形で総合的にやるという課題です。
 それから、それとは別に、重点的な研究という概念を作っています。これはこの柱立ての項目の中で、特に重点的にやるものが必要であるということで、ポイントの2行目のところに書いてあるような重点的な研究として、地震発生の新たな長期予測、地殻活動モニタリングに基づく地震発生予測、火山活動推移モデルの構築による火山噴火予測の研究を重点的に推進すると書いてあるわけです。
 別に重点にしたからお金がたくさんあるとかそういうことではないとは思いますけれども、まとめをするときには、こういう重点的なものとしてどういう成果が上がったか、それから総合的な研究としてどういう成果が上がったかということは、きっちりこの部会としてもウオッチしていく必要がございますので、課題ごと、分野ごと横断したようなものも御注意ください。その横断したものという課題も、さっきの表の中にはあるんですよね。
【大河原地震火山専門官】  この表で言いますと、5-(2)総合研究という欄が一番右にありますけれども、これのア、イ、ウ、エ、オがそれぞれ総合的な研究の5つの地震火山事象に対応しています。
【平田部会長】  だからこれは分野の区分としてはこういうものになっていますけど、これは全体を統合したような形で、対象というか、地震の種類とか火山噴火の種類を少し限定して、こういうことをやっております。若干補足をいたしましたが、こういうような方針で進めてまいります。これはここで御了承いただけばよいですね。
 では、この表にまとまったもので、今期の研究を進めていくということでやりたいと思いますが、御異議ございませんね。それでは、地震火山部会として、この令和元年度の研究計画についてお認めいただきました。ありがとうございました。
 それではこれでよろしいですか。これで用意したものは全部でございます。
 最後に何か御発言のある方は。
【石川臨時委員】  すみません。今の表で、総合研究グループの話が出たところで気付いたんですけれども、我々も総合研究グループ、例えば海底地殻変動観測を南海トラフというところで登録したはずなんですけれども、この表では丸が打っていなくて、実際そういう目で見ると、5の(2)の総合研究グループのところに丸がついているのが大学だけで、国研、行政機関については一個も丸が付いてないので、おそらくこれは反映漏れではないかと。
 実際これについては、大学と行政機関等の登録プロセスに違いがあって、大学の皆さんは結構早い段階から、どの総合研究グループに属するかというのを付けていたはずですけれども、我々行政機関や国研は、システムに入力するところの最終段階で入れたので、おそらくそれが反映されてないと思いますので、確認しておいてください。
【大河原地震火山専門官】  確認いたします。
【平田部会長】  重要な御指摘ありがとうございました。そうしたら事務的にもう一回確認して、それから各機関はもう一度、自分の機関が提案している課題がちゃんとこの表に反映されているかを御確認いただく必要がやはりあると思いますので、それでもし落ちているものがあれば事務局の方に言ってください。
【大河原地震火山専門官】  資料5は、部会長と最終的に確認いたしまして、修正したものをもって確定とさせていただきたいと思います。
【平田部会長】  よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議論はこれまでといたします。本日の会議の議事録については、測地学分科会運営規則第5条の1及び第7条により、部会長の人事等に係る部分を非公開としたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【平田部会長】  御了解いただいたので、部会長の人事等に係る部分は非公開といたします。
 それでは最後に、日程等を事務局からお願いいたします。
【大河原地震火山専門官】  本日はどうもありがとうございました。次回の部会開催につきましては、改めて日程調整をさせていただき、御連絡をさせていただきます。
【平田部会長】  それではこれで終わりです。ありがとうございました。

―― 了 ―― 

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