地震部会(第4回) 議事要旨

1.日時

平成14年3月26日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 別館 大会議室

3.出席者

委員

 平澤部会長、石原
臨時委員
 入倉、大竹、長谷川、本藏、松浦、山下、堀内、加藤、八島、内池、海津
専門委員
 伊藤、梅田、大久保、笠原、金沢、清水、野津、浜野、平田、藤井

文部科学省

 須田地震調査研究課長、吉田学術調査官 他関係官

4.議事要旨

(1)地震予知のための新たな観測研究計画の実施状況等のレビューについて

 平澤部会長は、レビューの報告案について、前回の部会及び各委員から提出された意見を受けて最終案がまとまり部会に諮ることになった旨述べ、現在の状況について事務局に説明を求めた。
 事務局から、前回の部会及び各委員から提出された意見を受けて、3月1日に起草委員会が開催され検討を行ったこと、本日は前回からの改訂点を説明した上で、再度部会委員の意見を伺い、この案を最終の報告書としたいと考えていることを説明した。
 続いて、平澤部会長は、本藏起草委員会主査にレビュー報告案の概要について前回からの変更点を中心に説明を求め、同主査は、資料(1)及び資料(2)に基づき説明を行った。
 引き続き、質疑を行った。主な意見は、次のとおり。(○:委員、□:起草委員、△:事務局)

委員
 参考資料の論文リストの各項目間では重複がないようにしたのか。

起草委員
 アンケートで出されたものを尊重しているので重複はあり得る。複数機関からの回答もあるので、各項目内では重複がないようにしている。

委員
 前書きで地震予知推進本部の廃止のことが言及されているが、廃止されたのはいつか。今まで地震予知推進本部が廃止されたことがきちんとアナウンスされてこなかった。

事務局
 平成7年7月17日に地震予知推進本部が廃止となり、翌18日に地震防災対策特別措置法が施行、地震調査研究推進本部が発足した。

委員
 経緯を分かりやすく書く必要はあるか。

起草委員
 詳しく記述する必要はない。

委員
 5頁にある1946年南海道地震は、南海地震ではないか。

委員
 気象庁の報告では南海道地震となっているが固有名詞ではないので、どちらでもかまわない。

委員
 地震調査研究推進本部の「日本の地震活動」に合わせるべきである。どのように書かれているか。

事務局
 地震調査委員会で評価する場合、南海地震としている。「日本の地震活動」も南海地震である。

委員
 5頁5行目に括弧書きでアスペリティーとなっていて、アスペリティーを定義しているようになっている。多くの地震研究者がこう考えていることは前回の議論でも分かったが、個人的には37頁の用語集の記述の考え方の方が正しいと考えている。

起草委員
 現在のアスペリティー分布を出しているのは、実際上すべりの大きな領域の部分をアスペリティーと言っている。

委員
 すべり量から推定したものがアスペリティーであろう。起草委員会で2つの考え方があるということを理解しておいていただければこのままでかまわない。

起草委員
 用語集の方が正しい。本文も文脈からすればこれでいい。用語の使い方が揺れているが、研究の実態を反映しているので仕方がない。

委員
 丁寧に「これから推定されるアスペリティー」という書き方をすれば理論的につじつまが合う。修文については部会長一任でお願いしたい。

委員
 35頁今後の展望の3行目「見通しが付いた」というのは言い過ぎではないか。

起草委員
 このセンテンスの最初に書かれていることが実態である。歪みや変位については把握できるが確立した学説にはなっていない。研究のアプローチができつつあるので、その意味で見通しが付いたとした。

委員
 それはお互いの矛盾だけのつじつまを合わせて説明ができるということではないか。それと実際に応力蓄積がどう進行しているのかを把握するのにはギャップがある。

起草委員
 応力そのものを書くべきかという問題で言えばまだ道は遠いが、実際どこを見ればいいのかはほぼ分かった。まだそこまで行っていないのに見通しが付いたという言い方が言い過ぎであれば考える必要はあるが、起草委員会としては見通しが付いたと理解している。

委員
 つまり応力蓄積状態をどのように把握したらいいかについて見通しが付いただけ、ということが分かった。

起草委員
 見通しなので、今後どのように進めるべきかを36頁の第1パラグラフの下の方で述べている。非地震性すべりの時間変化や応力集中が発生する過程を解明するのが重要であるという認識が高まっているが、それを解明することについてはまだ限界がある。それをどう解明していくかについて、実験的理論研究とシミュレーションを進め、統合して応力蓄積過程の把握に持っていくという見通しは付いた。

委員
 この数年明確な成長を遂げた。しかしそれを予知に結び付いたような印象を与えてしまっては具合が悪い。慎重な表現をお願いしたい。

起草委員
 計画は、何を目指すかを指摘している。全過程を解明しようとすることが基本であり、我々はそれに向けて何をやってきたかという視点を抜かしては本質を見失う。何をやって、観測から何が分かって、今後どう発展させていくかという視点は必要である。

委員
 正しく発展させるためには、正しく総括し、正しく表現しなければならない。何も知らない人がこの文章を読んだら誇大宣伝と読むだろう。応力蓄積状態をどうやって把握したらいいかについて、かなり明解な見通しを持つことができるようになったのは大変な前進であった。そういうニュアンスで書くべきである。

委員
 「地震発生の予測に向けて」という言葉がなければ応力蓄積状況は固着の時空間変化になっていいことになり、そんなに言い過ぎではないということになる。

起草委員
 建議の準備過程における地殻活動を受けて、応力蓄積過程のどの部分がこの5年間で明確になったかをレビューした。手掛かりが得られ、大きな進歩があったというのが強調したいところ。

委員
 このまま素直に読むとかなりのところまでいった印象がある。手掛かりが得られた、程度でいいのではないか。

委員
 地震発生予測と言い出すと、定量的にどのくらいの時間で地震が起こるかに結び付けて応力蓄積状況を把握するのは難しいと思う。発生予測に向けて、と書かれているのだから用心深い表現が必要であろう。

起草委員
 その下を読めば具体的に書いてある。一般的に世間が考える地震予知を目指しているわけではない。

委員
 独り歩きするのを心配している。「地震発生の長期予測に向けて・・・」ではどうか。

委員
 長期予測よりも「建議に述べた地震発生予測に向けて」とか「本計画で考える地震発生予測に向けて」の方が正確な表現だろう。

委員
 この部分は修正するかどうかを含め部会長一任でお願いしたい。

委員
 35頁の「共同利用研究機関」を「全国共同利用研究所」に修正願いたい。

 平澤部会長は、以上の意見を踏まえて原案を修正するとともに、その他字句の誤りあるいは数字等の誤りについて指摘があれば事務局に申し出ることとし、修正に当たっては部会長に一任することで、この原案について了承をもとめ、これを地震部会の報告とすることを決定した。

(2)「地震予知のための新たな観測研究計画の実施状況等のレビュー」のポイントについて

 平澤部会長は、今回のレビューの報道発表のため、事務局が起草委員と相談の上、「地震予知のための新たな観測研究計画の実施状況等のレビュー」のポイント(資料(3))を作成したことを説明、内容について事務局に説明を求めた。
 平澤部会長は、事務局の説明に続き、質疑を行ったが、特に修文等の意見がなかったので、原案を報道発表資料とすることを諮り了承された。

(3)今後の日程について

 事務局から、このレビューについて、4月1日(月曜日)に平澤部会長出席の下記者等に対するレクチャーを行う予定であること、4月に火山のレビューとともに測地学分科会及び科学技術・学術審議会総会に報告することとなること、その後、外部の有識者から構成する外部評価委員会を設置し、外部評価を実施すること、その結果も踏まえ、次期計画の策定を始めることとなることを説明した。

(4)その他

 平澤部会長は、「地震予知のための新たな観測研究計画の実施状況等のレビュー」がまとまったことを踏まえ、各委員に感想を求めた。主な意見は、次のとおり。(○:委員)

委員
 地震予知がすぐにできるという幻想はよくないが、強震動や長期評価など、地震予知研究の積み重ねによって実用化し、地震学の成果に基づいた強震動予測の在り方がはっきりとして工学的研究にも役立っている。また、地震予知研究の成果を狭い意味でとらえず、社会還元を考えなければ社会の評価を得にくい。

委員
 業務的な地震観測研究は推進本部、建議はサイエンティフィクな計画となってきた。しかし、成果を社会に還元して災害の軽減に役立てるという観点からは、サイエンスプランは離れている。

委員
 研究成果が出され、気象庁としては、業務をやる上で助かった。気象庁は、地震調査研究推進本部の業務的な仕事と防災の仕事の間を綱渡りしているところもあるが、今後も努力していく。

委員
 国土地理院は、業務機関として自分たちに与えられたミッションをやっていくとともに、広義の地震予知を目指していく上で最初の出発点を失わないように努力していきたい。

委員
 国土地理院の研究成果は、このレビューでも大いに活躍しているわけで、ぜひ研究の方にも力を入れて欲しい。

委員
 海上保安庁としても、海域の観測は遅れているものの、業務機関の役割としてやっていく。

委員
 ナショナルプランである地震の調査研究において、産業技術総合研究所が位置付けられていることはありがたい。また、国際的な観点から日本の地震調査研究はどうあるべきかの見解を盛り込む必要がある。

委員
 防災科学技術研究所では、地殻深部の低周波微動の発見などの成果があった。今後も観測網の整備を進めていく必要がある。

お問合せ先

研究開発局地震調査研究課