地震部会(第18回) 議事要旨

1.日時

平成19年7月3日(火曜日) 10時~12時

2.場所

三田共用会議所 3階 第3特別会議室

3.出席者

委員

 石原、長谷川
臨時委員
 入倉、大竹、笠原、清水、平田、松浦、浦塚、堀、村上、濱田
専門委員
 梅田、金沢、金田、西澤、野津、松澤、山岡

文部科学省

 板谷大臣官房審議官(研究開発局担当)、土橋地震・防災研究課長、橋本地震調査管理官、加藤学術調査官、他関係官

オブザーバー

 小泉〔産業技術総合研究所〕

4.議事要旨

(1)観測研究計画推進委員会の活動報告

 資料2及び参考資料1、2に基づき、5月29日に開催された観測研究計画推進委員会(第15回)において、平成18年度年次報告(機関別)及び平成19年度実施計画について審議を行い、取りまとめを行ったことについて、事務局より報告を行った。

(2)「地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)」の外部評価報告について

 資料3に基づき、地震及び火山噴火予知研究計画に関する外部評価委員会における審議経過及び外部評価結果について事務局より説明があり、各委員より下記の通り質問等があった。

【大竹委員】
 予想以上に好意的、前向きな評価をいただいたと思う。関係各位のご努力の賜だと思う。外部評価報告書の4~5ページの「人材の育成については計画開始当時よりも後退した印象がある。」という記述があるが、具体的にどういうことを指しているのか。外部評価委員会全体として、基本的根本的問題は何だと認識しているのか、ご説明いただいきたい。

【長谷川部会長】
 この分野に参入してくる大学院生等の数が多くないという指摘があったのが、この表現になったのではないか。

【永田専門官】
 「人材の育成については計画開始当時よりも後退した印象がある。」という記述については、地震の専門家から評価の意見としていただいた内容を評価書とさせていただいている。委員に広く意見を求め、それに基づいて検討していただいた。具体的にどのような部分が後退したのかについては議論はなかったが、人材養成という観点において、このような問題が議論されたので、評価書に取り上げさせていただいた。人材養成のどこに問題があるかについては、外部評価委員会の中では、地震学火山学の人材養成においてどこに問題があるのかまでは議論されておらず、他の分野も含め地球惑星科学全体について、今後若手研究者の養成及び人材育成が非常に重要になってくるとのご意見があった。外部評価委員会に出席していただいた長谷川部会長や石原先生、平田先生からのご説明の中で、若手育成は重要だという指摘を踏まえ、重要性を評価委員の先生方にご認識いただいた。具体的な対策については、委員会の中では議論はなされなかった。

【大竹委員】
 この問題は将来を左右する根本的な問題であり、予算の仕組みとも密接に絡み合っており、深く分析をいただきたかった。新しい計画を策定する中で、願望を盛り込むだけではなく、具体的に掘り下げた提案をできるようにしなければならない。

【入倉委員】
 私もこの点については大きな問題だと考える。報告書の5ページ及び8ページに言及されている、大学院における教育、人材の養成・確保について読むと、大学院生の希望者数が多くないのではないか、という分析がされたのだと思う。適切な評価がされていると思った。次期の地震予知のための新たな観測研究計画を策定するときは、小中高大及び大学院教育において、この関連分野が魅力あるものにしなければならないと指摘されている。大学院にたくさんの学生が集まってきて、優秀な学生を採用するためには、学問分野として魅力的なだけではだめで、養成した学生をどこに出すのかまで考えなければならない。日本全体を考え、養成した人材はどこにでも出せる。地震予知の研究を通した人材が様々な分野で活躍するということを考えないと将来に繋がらない。

【長谷川部会長】
 外部評価委員会においても、この件については議論がされていたという印象。地震及び火山噴火予知に留まらず、固体地球物理に共通する課題だと考える。予知研究計画ではこの点どうすればいいのか、次期計画においてしかるべく考える必要がある。これからもご示唆をお願いしたい。

【金沢委員】
 学術的意義については高い評価をいただいている。実施体制については肯定的な意見のみのようだが、必ずしも法人化等を考えると適切な体制であるとは思えないが、外部評価委員会ではこの点についての議論はなかったか。

【永田専門官】
 測地学分科会のレビュー報告書に基づき、評価を行っていただいた。限られた情報の中で評価をしていただいたということもあるが、委員会で出た意見としてまとめており、実施体制についてはこれ以上のご意見はなかった。

【金沢委員】
 法人化を考えると、大学間の仕分けとか様々な問題がある。全国共同利用をどうするかという議論が進んでいる中で、例えば地震研をどうするかというようなご意見はどうか。そういうことに関係してくるのではないか。

【永田専門官】
 全共については学術分科会で議論されているが審議途中であるということや、外部評価委員会に附置研所属の先生がいらっしゃらなかったということもあり、外部評価委員会では、全共の議論はなされなかった。

【土橋課長】
 資料5に学術分科会研究環境基盤部会で全国共同利用の議論について記述がある。外部評価委員会はレビュー報告書に基づいて行っており、全ての全国共同利用研究所の議論をするものではなく、学術分科会と議論が並行的に行われていたため、外部評価委員会では議論がなされなかったのだと思う。建議を立てる段階では、このことについても踏まえながら議論していただきたいと思う。

【入倉委員】
 本年2月まで研究環境基盤部会委員だった。その議論が直接的には外部評価報告書に触れられてはいないが、評価の背景にはもちろんあると思う。地震予知のための研究を大学の運営費で行うという問題、大型の設備要求が通らない現状がある。全国共同利用の経費等は特別教育研究経費から捻出されている。しかし、特別教育研究経費は競争的な性格を持っているのに、固定的なものに使われていると批判がある。法人化により、各法人が個性をもって運営していかなければならない中、みんなで一つのことをするというのは、研究としては大事だが法人化の精神には反する。地震予知計画においても、予算の在り方がどうあるべきかも含めて議論が必要だと思う。特別教育研究経費の枠組みだけではだめだと思う。

【長谷川部会長】
 次期計画の策定に当たっては、検討すべき課題だと考える。

(3)次期計画の策定について

 資料4~6に基づき、平成19年6月28日に開催された測地学分科会において、次期計画の建議(案)を策定していくことが決定されたことについて、事務局より報告があった。続いて参考資料3に基づき、6月に開催された次期地震予知研究計画検討シンポジウムについて平田委員より報告があり、その後意見交換を行った。
  主な意見は以下のとおり。

【松浦委員】
 2次計画からシミュレーションとモデリングを組み合わせて予測に結びつけることが行われているが、シミュレーションとデータの同化までは行っていない。総合予測システムの構築を目指して3次計画は策定するべき。シミュレーションについては、列島全域を地震予知コミュニティで共有できるプロトタイプが2次計画中にできるのではないか。それを基にしてスタートすべきである。しかしまだまだやることはある。シミュレーターに入力する観測データは長期の安定性が必要。世界的に地震活動予測の標準化のテストをしようとしており、カタログチェックが必要となるが、日本のカタログは短期的には質はよいが長期の安定性はない。取ったデータを全て使えるようにするなど、研究の基盤である観測体制の整備等、やることはたくさんある。構造モデルのシミュレーションのプロトタイプを共有すること、カタログの不備を整備すること、海域については、海底の地殻変動観測を進めることが東南海の予測には重要であること等、10年位を見越して全体的に調和のとれた計画になるような視点が必要。2次計画では観測が発見的な部分に留まっており、シミュレーションに入力するまでにはなっていない。計画はできると分かっていることだけでなく、萌芽的な部分も含まれる余地を残しておき、社会的要請に応えるようにやっていけば若手も育つのではないか。

【西澤委員】
 海底の地殻変動から、地震予知を目指しており、シミュレーションに貢献できるデータ収集のため、宮城県沖では陸上の基盤観測に近いような集中的観測を行い、地震のサイクルを観測できるように考えている。その次には東南海・南海に貢献するよう、海底調査により、データを長期的に頻度多くとり、シミュレーションに使っていただくという計画を立てている。

【金沢委員】
 海底地殻変動については、観測密度が重要であり、技術開発も必要。次期計画においては海底地殻変動に重点を置くべきだと思うが、シミュレーションのデータ同化は簡単にはいかないのではないか。観測データをシミュレーションに使うというところまで行ってないのではないか。

【松浦委員】
 固体地球分野でのデータベースは気象データ等に比べほど遠く、モデルの逐次改訂を行っている状態である。このまま観測を続けていても予測には結びつかない。気象庁も大学も全ての機関が協力してバーチャルな地震庁を作り、シミュレーターのコミュニティモデルを柱として、地域や構造や手法等多くの研究グループが独自の改良を加えていくという計画にしなければならない。

【長谷川部会長】
 委員の先生方によって認識が異なっていると思う。次期計画でどう盛り込んでいくか、議論をよろしくお願いしたい。

【平田委員】
 5年前も同じような議論があった。2次計画策定時に、「2.(3)地殻活動情報総合データベースの構築」の中に「データ同化」を記述する案もあったが、最終的にはデータベースのモデル逐次改訂という形になった。少なくとも本日議論されたというので進歩したと感じた。モデル及び必要なデータを取る体制が整備されたということで、例えば国土地理院のGEONETはかなりルーチン的にとられているし、基礎的な研究としてデータを取り込む体制もできてきて、次期計画検討シンポジウムでもデータ同化について取り組んでいくべきと意見があった。地震予知研究は推本がやっている基盤的観測と密接に連携しており、 Hi-net、GEONETと大学の基盤観測網がうまく連携している。データ同化するプラットフォームをコミュニティモデルで作ってモニタリングするというご意見は、予知計画というより推本の国としての調査としてやるべきものが含まれているのではないか。推本で全体としてやることと学術研究としての地震予知研究でやることとの役割分担は議論すべきである。重要な観点だと思う。

【入倉委員】
 モニタリングとシミュレーションの同化についてはいろいろな時間スケールで議論されるべきで短期的なものは精度が上がり、長期的には精度が下がる。いろいろなモニタリングとシミュレーションの比較がなされている。松浦委員が言われた長期的なことが中心で、今までの計画と整合性がとれないグループから違和感があるかもしれず、総合的にいろんなスケールで提案することによって地震予知計画全体をモニタリングとシミュレーションの同化として位置づけられるのではないか。IPCCで議論されたことの固体地球分野でどのようにできるかと考えるということで新たな課題がでてくるのではないかと思う。

【松浦委員】
 今うまくいっているシミュレーターは地球シミュレーターでプロトタイプはできている。今後10年さらに頑張れば、日本海溝の東北沖については中期予測はできるのではないかと思っている。次期計画中には無理かもしれないが10年後にはできていると思う。南海トラフも10年でできると考えている研究者もいる。現在のシミュレーターは既にGEONETやF-netのデータも使っている。

【長谷川部会長】
 心強いお話。できるとしたら、東北沖であると私も考える。しかし10年ではできないと考える研究者も多いのではないか。何があればできるのかについても検討し、それに沿って進めるのがいいのではないか。

【金田委員】
 松浦委員に賛成。データ同化とモニタリングとシミュレーションの関係をどうするかという問題だが、各機関の、各分野の研究者がいろいろなシミュレーションの結果を出す。それを共通のデータを使ってデータ同化の判断しなければ、データ同化の仕方が悪いのかどこが悪いのか分からないということになる。基本はプロトタイプ的なものをベースに置いて、各機関の得意とするところは精緻化したモデルを加えるということをしないと、各機関によってレベルが違うのでは、どこまで進んだか評価ができない。今のままで日本海溝ができるかというと難しい。外部評価報告書にも書いてあったが、海底の観測をどのように生かすか、海溝型地震については、データを観測して取り込まないと、10年のスケールでできるのは難しいのではないか。

【松澤委員】
 松浦委員のご意見に関連して、シミュレーションについては2点問題があって、地震活動をどう取り込んでいくかが研究の段階。過去のデータに関して均一なカタログを作ることが、今おっしゃったこととどのように関係があるのかがわからないので教えていただきたい。

【松浦委員】
 デクラスターをしないでETASで活動度を定量化する必要があるが、ETASはマグニチュードに敏感になる。時空間ETASはカタログが不備だと解が不安定になる。処理が均一でないといけない。既存のカタログではできない。相似地震でひずみのある時点での分布が分かるなどの方法もあろう。シミュレーションでは初期条件がわからない。だからこそ逐次解析をする。相似地震の解析で、例えば東北日本のエリアである時点の応力場の不均一な状態を提示できれば、それをスタートにするなどできる。

【松澤委員】
 今の状態で欠けているのは、海溝の情報がリピーターの地震活動でできていないし、GPS観測も無理で、海底地殻変動観測、あるいは海底傾斜計等が重要なのではないか。

【梅田委員】
 外部評価報告書から研究と社会との関わりが十分でないという印象を受けたが、前回の部会でも議論されたが、各機関も個人も努力していると聞いた。組織的に政府が後押しをしてほしいという話だった。次期計画では是非取り上げてほしい。前回文部科学省が懇談会を立ち上げたと伺ったので、その説明をお願いしたい。また、先ほど設備がつかないという話があったが、我々が研究を遂行するために地域社会を味方に付ける努力が必要である。

【土橋課長】
 研究開発局長の私的懇談会ということで、防災教育支援に関する懇談会を4月に立ち上げた。主査は京都大学防災研究所の林先生にお願いしている。文部科学省の成果普及事業に関わっていただいている名古屋大学の福和先生や東北大学今村先生、学校現場で防災教育に関わっている先生、メディアの方に入っていただいて、7月末に中間まとめを行い、来年度の概算要求に反映したいと考えている。現在内容については議論しているところなのでポイントを申し上げる。今までの防災教育は点で行われており、いくつかの地域で熱心な先生を中心にやってきているが、全国的な広がりが必要であるということ、教育委員会と地方公共団体の防災担当者との連携が十分ではない、防災教育に関わる人材等について、予算を取って対応していきたい。地震・防災分野で社会との関わりということは、本部会でも次期計画に盛り込んでいただきたいと考えている。地震調査研究推進本部においては次期総合基本施策の議論が始まり、社会との関わりが重要な論点になっている。5年10年後を考えると東南海・南海の切迫性も増してきているので、社会に発信できる地震研究が大事だと考える。

【長谷川部会長】
 本部会、推本それぞれが連携して社会に発信していくことが必要だと思う。

【平田委員】
 新地震予知計画は二つの方向で進めてきた。一つは地震予知実現のため全体像のモデルを作ってシミュレーションしたりデータ同化したりし、社会に予測に役立つようやってきて成果を上げてきた。同時に、プレート境界のアスペリティモデルや滑りのいろいろな実態など学術的な新しい発見もあった。それは新計画のここ10年間の成果ではなく40年間の研究の成果である。地震予知は二つの側面があり、一つは地震予知という実学的な、成果がでなければならないものと同時に、学術的インパクトのある面で、両方を研究機関がやってきた。さらに長期にわたって人材養成もやってきた。これは非常に重要な観点で、シミュレーションを作ってモデリングやデータ同化を行うということとアスペリティの実態を物理的化学的に解明するという両方の観点が研究には必要。現在参画している研究機関以外に幅広く研究者の参画を求める必要がある。広く人材を集め、育成した人材が様々な分野で活躍するということにもなると思う。ここ数年でプレート境界について新しい発見があった。内陸地震について何が分かりつつあるのかというと、プレート境界におけるアスペリティモデルに匹敵するものがもうすぐできると思う。そのためには広範な研究者の参画を作る仕組みが必要で、今までの地震予知計画の体制もそうなっていたが、さらに明確にする。それは推本が全体として進めている調査研究とは異なる。内陸地震の発生メカニズムの理解のためには火山研究者との連携が重要だと思う。最初から計画として一緒にやるという観点もあるし、次の計画では議論すべき点だと考える。

【山岡委員】
 本計画は外から見ると、学術的に地震予測して災害軽減に役立てるために学術的に何をすべきかをきちんと研究者コミュニティとして実施しているという意義付けがあると思う。その中で現実的になってきたものは推本施策としてなされており、そこを通じて社会に役立っているということで、本計画及び地震研究は社会に貢献している。現在の計画の基礎研究を進め新しいものを取り込みながら地震発生予測に役立てるという基本路線は、変えるべきではない。その中でシンポジウムでもシミュレーションを通じた予測に対する意欲が高まってきている。それを組織的にやるかどうかは、推本との仕分けの問題等もあるが、さらに一層シミュレーション、モニタリング、データ同化に重点をおくという観点で次期計画を見て、研究者コミュニティがそういう方向で研究を進めるというのがいいのではないか。

【松浦委員】
 シミュレーターにとっても素過程は重要で、地震の発生には幅があり、今はマクロで扱っているが、ミクロにどうなっているか解明してもらうことはシミュレーターの構造に必須で、全て一つのストーリーになる。

【山岡委員】
 シミュレーションを研究者全体に見えるようにすることによって問題意識を高めることを目指せばいいのではないか。

【野津委員】
 外部評価で人材養成のことが指摘されているのに、次期計画に関する主な意見にはあまり反映されておらず、いくらいい研究をしても若手がいなければ限界があるので、この問題をきちんと議論しなければならない。現場で感じるのは、修士課程までは学生は来るが博士課程まで来る学生が減少している。構造的にどう考えればいいのか、学会等と解析した上で解決策を盛り込んでいただきたい。

【長谷川部会長】
 地震予知研究計画に閉じた問題ではない。いろいろなレベルで議論されていると思うが、即効の解決策はなかなかない。育成した人材をどういうところに出すかというのは長期的に影響がある。

【入倉委員】
 魅力的な学問にすることは当然。自分の研究に閉じこもって後継者を細々と確保していくというスタイルか、地震予知研究というのは幅広いものである、そして様々な分野で活躍できるような人材を育てながら研究を進めていくかどういう形をとるか、ということを言った。魅力ある学問にするのは前提だが、そのために何が必要かと考えると、地球惑星科学という狭い分野だけを教えるのではだめだろう。シミュレーションの話も幅広い知識、学問体系が必要であり、地震予知に必要な学問体系は何かを考えながら、そこで学んだ人は地震学だけでなく様々な分野で活躍できるというプランを立てることだと思う。博士課程に学生が増えても行くところがないと学生が見ていると良く聞く。魅力あるという学問だけでなく、そこも考えないと人材育成は難しい。また、松浦委員の言うことを実現するためには、これまでの教育体系でいいのかということも考えなければならないと思う。

【山岡委員】
 博士課程を出てポスドクにしかなれない、ということを修士課程のうちから見てしまうと入倉先生のおっしゃるとおりであり、深刻だと思う。きちんと対策をたてるべきだと思う。

【長谷川部会長】
 研究者になるためにはポスドクにならないとなれないという大きなハードルができてしまった。しかし期限付きポスドクは、異動が多く不安定な状態が目の前にあるから研究の道をあきらめるという実例を知っている。いろんなレベルの問題があるが、どういう形で計画に組み込んでいくのか非常に難しいと思うが、御協力をお願いしたい。

【板谷審議官】
 地震も火山噴火も建議というスタイルは長期に続いており、沈滞している印象がある。新しいことをどんどん取り込むという姿勢で次期計画についてご議論いただきたい。例えば地震と火山とばらばらにやっていくのではなく固体地球物理という視点でやるなど考えられる。第3次科学技術基本計画で国家基幹技術があり、海洋地球観測探査システムが位置づけられているが、これは海洋と宇宙分野の観測を一緒にやっていこうというもの。動き出しているのは主として環境の分野であるが、幅広い視点が入ることによって多元的な最先端の科学技術のシステム作りをしようとしている。広い視点でこの分野について考えていただきたい。そういうことが幅広い分野を学べることなどにより学生の獲得にもつながるのではないか。社会一般には幅広い見方をできる人材が求められている。研究者の道、研究を社会に生かす道等選択肢の幅が広がるのではないかと思う。以上のことを踏まえ、議論をお願いしたい。

【長谷川部会長】
 この分野が沈滞しているとは思わない。外部評価は学生の参入が減少しているという印象をみんなが持っているというメッセージなのだと思う。40年の研究の成果がやっとここで急激に進展した。これから参入する学生にアピールしきれていない。ここ数年で、アピールできるまでようやく到達したと思っている。多くの人に魅力を感じていただけるよう、こういうことを念頭に置いて計画の議論をしていただければと思う。

【入倉委員】
 個別の機関が個別の研究をするだけでは全体が見えない。総合モデルのシナリオを書いて、一つにまとめ上げるのが計画ではないか。その中で個別の問題はここに位置づけられると、外部から見て分かるようになっているのではないかと思う。部会長のおっしゃるとおり明るい見通しができるようになってきたと思う。さらに学問の幅を広げる努力が人材育成につながるのではないかと思う。

【濱野委員】
 今までの議論では、1次2次と計画を推進して、基本的な考えとしては、これを継続する方向になると思う。新計画になって、内部的には大きな変化があったが、それが外部に伝わっているかどうかは疑問。3次では、基本的な考え方は引き継ぐことになると思うが、何をやっているか広報が足りないのではないかと思う。また、地殻活動シミュレーターを作るのが出発点だったが、3次ではこれまでの方針を見直すということも必要ではないかと思う。

【大竹委員】
 基本的な考え方についてはこのままでよいと思う。今日くらい予測について触れられたのは画期的であった。その中で、基礎的な調査研究の重要性を忘れてはいけない。シミュレーションを推進する枠ができると必然的に基礎研究の重要性が明らかになる。データ同化については、もう一つ海底地震観測がある。日本では、主に防災を目的として活断層の調査を進めてきたが、学術的に必要な調査は必ず日本で行われてきている。こういうことからも基礎的な研究所の重要性が分かる。

【笠原委員】
 シミュレーションについて、実際の地震現象の時間スケールの長さを検討する必要がある。そうしないと5年という計画でこれだけすると言っても、想定できなかったことが起きた時の説明はどうするのか。シミュレーションやデータ同化は、直前のプロセスの中の時間の追いかけができる現在の観測データとシミュレーションの同化は意味があるが、長期的なデータではうまくいかないということがあり、長いスタンスでものを見ないと、今のシミュレーターの向上だけがメインになってしまう危険性がある。

【長谷川部会長】
 時間をかけてモデルを共有したい。予測できると勘違いしてはいけない。どこまで現在はできているか。今後議論をしたいと思う。次回も今回の議論を踏まえ、必要に応じて火山部会と合同で開催するなど、引き続き検討したいと思う。

以上

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)