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イタリアの火山監視・研究体制(暫定版)

体制の概要
 イタリアの火山監視・研究体制は1999年に大変革が行われた.それまでのイタリアの火山監視・研究は,長い歴史を持つヴェスヴィオ火山観測所(Osservatorio Vesuviano)と学術会議のもとにあった国立地球物理学研究所,流体地球科学研究所(パレルモ),国際火山研究所(カターニア),地球年代学・同位体地球科学研究所(ピサ)の4研究機関が担当していたが,互いに独立で競合関係にあった.しかも,それぞれの研究所に所長と他の研究所長からなる評議会があり,互いに重複していた.研究上も多くの分野で重複が見られた.研究上の競争関係はある種の緊張状態を生み,必ずしも否定されるべきものではないが,1991年から1992年にかけてのエトナ噴火にともなう溶岩流制御作戦の際に,研究所間の競争意識のために防災活動が必ずしも円滑に行われなかったという評価がなされ,統合が計画されたという.統合して一つの国立研究機関となれば,どの火山で災害が発生しても,同一組織であることから,迅速かつ統一の取れた研究者の派遣が可能となり,研究上の重複も解消できると考えられたようである.
 このような経緯から,5研究機関が1999年に統合され,国立研究機構Instituto Nazionale di Geofisica e Vulcanologia (INGV)となった.INGVはいまやヨーロッパ最大の地球科学関連の研究機関で,研究分野は地球物理学,地震学,火山学である.ミラノ,ボローニャ,ピサ,ローマ,ナポリ,グラッタミナルダ,パレルモ,カターニアの8支所がある.また,INGV傘下にGruppo Nazionale di Vulcanologia (GNV国立火山学連絡会議)とGruppo Nazionale di Defence Terremoti (GNDT国立地震防災連絡会議)があり,大学所属の研究者を含めた研究者連合を構成している.なお,INGV支所の観測所の研究者は大学の教員を兼任することも多い.
 イタリアの自然災害研究は従来から地震研究よりも火山研究に重点がおかれている.活火山の観測はINGV参加の研究所・観測所が行うが,それらは地域ごとに担当がある.直接火山監視にかかわっているのは,ナポリ,カターニア,パレルモの各支所である.ナポリ支所はヴェスヴィオ火山観測所をかかえ,Campi Flegrei, Vesuvio, Ischia,Lipari, Panarea, Vulcano, Stromboliの各火山を担当,カターニア支所はEtnaを,Pantelleriaについてはナポリ,カターニア,パレルモ支所が担当している.最近ではこれに加えて,ローマ郊外にあらたな活火山Colli Albaniが認定されたが,この担当は不明.

研究予算
  Instituto Nazionale di Geofisica e Vulcanologia (INGV)は自然災害の担当官庁であるDipartimento di Protezione Civile (DCP)との契約に基づいて,自然災害の監視観測および研究を行う.したがって,INGVは独自の予算に加えて,DCPからも予算を受け取る.火山観測網などの維持,更新に関しての費用はDCP予算からまかなっているらしいが,独自予算からの配分額については未調査.
 DCPがINGVに配分した予算は2004〜2006年の3年間について言えば,総額63,000,000ユーロ(78億円)で,この期間の1年あたりの配分は次のような内訳であった.
  1. 監視観測網の維持費:12,000,000ユーロ(約15億円)
  2. 監視観測設備の更新:3,000,000ユーロ(約4億円)
  3. 地震およびストロンボリ,パナリア地域の火山活動の研究費:6,000,000ユーロ(約8億円)

 火山研究に関する学術的な研究予算についてはGruppo Nazionale di Vulcanologia (GNV)が配分する.予算配分はINGV傘下の研究機関,研究者で構成される研究グループからの応募に対して行われる.研究グループはごく少数の研究者からなるものもあるが,多くは10ないし20名程度の複数の研究機関に所属する研究者からなる.

研究予算と研究計画
 応募に先立ちGNVによる3年次基本計画(変革直後の第1期は,2000〜2003の4年計画であった)が公表され,この計画にしたがって研究グループが応募することになる.形式上はわが国における科学研究費特定領域の計画研究に似ている.応募に当たっては計画調書はイタリア語ではなく,すべて英語で書くことを要求される.また,計画調書には外国旅費を十分積算し,国際学会,国際調査に若手研究者や学生を派遣し,外国の火山で訓練を積むと同時に,研究成果を積極的に国際学会で公表するための費用を盛り込むことを推奨している.最近,多くの国際学会に多数の若手イタリア人研究者・学生の参加が目立つのは,この推奨のせいであるらしい.
 なお,この応募に当たって,観測機器を申請することはできるが,後年度負担を伴うような観測ネットワークなどの申請はできない.
 GNVが公表する火山研究の基本計画の一例として,第二次GNV基本計画2004〜2006の例を挙げる.この計画の主要目的はイタリアの活火山や火山ガスを含む土壌ガスの発散がみられる地域におけるハザードとリスクをより精度高く評価を行えるようになることにあると明記されている.このために,イタリアの各火山のハザードマップやリスクマップの改善に役立つ研究に焦点をおいた計画の提出を推奨している.
 計画は以下の11火山地域のいずれかに研究の焦点を置くことを要請される.
  1: Colli Albani
  2: Canpi Flegrei
  3: Iscia
  4: Vesuvio
  5: Vulcano
  6: Etna
  7: Pantelleria
  8: Stromboli
  9: Panarea
  10: Lipari
  11: Submerged volcanoes in the Sicily Channel

さらに,新たに付け加えられた地域によらないテーマとして
  12: Deffused degassing in Italyがある.
いずれの地域における研究も以下の点を含むことが要求される.
  1. それぞれの火山の噴火史と現在の状況の把握
  2. 噴火前兆現象の研究と,将来の噴火可能性の確率評価
  3. 噴火シナリオとそれによる火山災害の評価
  4. 脆弱性の評価と災害軽減の方策
この計画に参加し,研究費を獲得するためには,研究成果として「実用的deliverable」であることが要求される.
 GNVによる3年次基本計画に対する実行計画は研究者によるピアレビューにより審査され,最終的な採択決定は評価委員会によって行われる.審査によって,小改訂のみで採択,改訂後採択,却下に3分類される.改訂後採択の区分には複数計画の統合化指示も含まれる.採択された計画については,初年度は決定額に応じて交付申請を提出,次年度以降は実績報告書に加えて毎年の実行計画を提出する.この点はわが国の科研費システムとほぼ同じ.評価委員会は実績報告書に基づいた評価を毎年行う.
 評価委員会は組織改革後の最初の計画である2000〜2003計画の場合,GNV議長のGasparini, ETHのGiardini, Iceland Nordic Volcanological Observatory Sigvaldasson, Univ. Leeds Wilsonからなる国際的なものであった.今後も同様の体制がとられるものと予想される.
 この期間の19の採択された計画の実施状況,成果については既に評価委員会による評価が行われれ,A:大変優れた計画であり,また非常に優れた成果をあげた,B:優れた計画であり,初期の目的を達した,C:計画としては良いが,成果には不十分な点もある,D:平凡な計画で,大幅な改善が必要の4段階の評価をうけ,総評,配分額とともに公開されている.Cランク,Dランクの評価を受けた研究はそれぞれ2件である.なお,評価結果は本来英語であるが,最終的にはイタリア語に翻訳されてスポンサーであるDCPに報告されるらしい.

 次ページにこの19のプロジェクトの課題と予算を添付する.

  研究テーマ 研究ユニット数 研究者数 研究費(ユーロ) 研究費(千円)
1 Diffuse gas emissions in volcanic areas. Geochemical and structural features, and physical models of the process. Development of monitoring techniques. 6 14 325 45,500
2 Development of an integrated spectroscopic system for remote and continuous monitoring of volcanic gas 4 7 465 65,100
3 Technological innovation and automation in the integrated applications of electromagnetic and potential field methods in active volcanic areas 不明 18 405 56,700
4 Chemical and isotopic characteristics of gases and ground waters at Vesvio, Campi Flegrei, Ischia E Vulcano: Evaluation of the volcnic risk 3 5 128 17,920
5 Multidisciplinary investigarion on the mass and energy budgets in the Italian active volcanoes 9 28 457 63,980
6 Study and constraints on intermediate storage, magma uprise and conduits through modelling of strain fields, velocity and attenuation tomography at Mt.Etna 8 17 434 60,760
7 Hazard of Stromboli volcano 9 13 520 72,800
8 Explosive eruptions of Italian active volcanoes-eruptive scenarios, hazard and risk maps: Vesuvio, Vulcano, Lipari 7 7 465 65,100
9 Eruptive scenarios from physical modeling and experimental volcanology 16 不明 930 130,200
10 Study of pyroclastic deposits of Mt.Etna finalized to the reconstruction of the major esplosive eruptions, evaluation of their hazard and environmental impact. 3 5 181 25,340
11 Identification and interpretation of the pre-eruptive seismic patterns for the worldwide effusive and explosive volcanoes 4 7 151 21,140
12 GIS system for a thematic cartography in volcanic areas. 1 3 103 14,420
13 Development and application of remote sensing methods for the monitoring of active Italian volcanoes 15 15 780 109,200
14 Integrated seismic methods applied to the investigation of the active volcano structure: an application to the Campi Flegrei caldera 9 3 439 61,460
15 The submarine portions of Italian volcanoes-Their survey and assessment of potential volcanic hazard 8 10 620 86,800
16 Volcanic hazards assessment and zonation at the resurgent Phlegrean Fields caldera and their effects on man and emvironment 14 18 873 122,220
17 Simulation of eruptive scenarios at Phlegrean Fields based on field, laboratory, and numerical studies, and implications for volcanic hazard 7 9 380 53,200
18 Gas hazard at Colli Albani Volcano 3 20 124 17,360
19 Elaboration of a risk scenario for civil protection purpose in case of a submarine eruption to the east of Panarea island 3 15 41 5,740
  合計 129 214 7,821 1,094,940

イタリアの火山

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