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アメリカ合衆国の火山噴火予知の仕組みと体制

 スミソニアンのデータベースによると169の活火山が合衆国にある.合衆国地質調査所(USGS)の火山ハザードプログラムによって5つの火山観測所が維持され,70火山について対応してきた.スタンフォード法の下に,USGSが市民や行政に対して火山災害の警報発令に責任を負っている.USGSは公式に大学や地方自治体の援助を受けて観測所を維持している.現在,噴火の危険性のある合衆国火山の約半分は基本的な地震観測アレイのリアルタイム監視がおこなわれ,いくつかは近代的な装置や方法で十分に監視されている.しかし,多くの災害の危険性のある火山の監視観測は不十分であったり老朽化したり,いくつかの火山には基本的な監視観測さえ行われていない.
 これらの不十分な観測体制を鑑み,USGSハザードプログラムは,火山観測所と一緒に,火山早期警戒システム(NVEW; National Volcano Early Warning System)の計画を準備中である.ここではそれについて解説する.

文献: Ewert, J.W., Guffanti, M. and Murray, T.W. (2005) " An assessment of volcanic threat and monitoring capabilities in the United States: Framework for a National Volcano Early Warning System NVEWS." USGS Open-file report 2005-1164
図1.合衆国の火山観測所および協力組織の分布図.

【25年間の科学的技術的評価】
合衆国で5つの火山観測所と設置し長期監視の共同プログラムを実施してきた.また,国際開発局外国災害支援事務所の協力の元に外国の火山の危機に対応し監視協力を行った.
国内外の噴火で多くの科学的体験をした.また,緊急管理担当者に選挙区に影響を与えるような決断をさせるなど実質的な経験をした.
地質学的な詳細な調査を行うことによりアラスカ,ハワイ,カスケードの主な火山の噴火史に関して我々の知識をおおいに広げることができた.
航空機に対する浮遊火山灰災害,土壌や湖沼からの二酸化炭素脱ガス,遠方まで届く横殴りブラストなどの新たな現実的火山災害現象を確認した.また,火山泥流の破局的な側面も目の当たりにした.
噴火災害の広い理解とともに,様々な場所で異なるタイプの火山における火山の危機評価の能力を磨いた.
国内外の噴火で培った技術的進歩により新たな火山監視ツールスを持つことができた.また,テレメータ技術の進歩により,多量のデータをリアルタイムで遠隔地の火山から観測所に送ることができ解析・解釈できるようになった.

図2.火山早期警戒システム(NVEWS)の概念図

火山の脅威はハザード(火山がもたらす危険や破壊的な自然現象)と曝露(火山現象の危機に人や財産が曝されること)の組み合わせたものであるので,両者の評価を行う.
ハザード要因(火山タイプ0/1,過去の最大爆発度0〜3,過去500年間の主な爆発の有無0/1,噴火の頻度0〜4,完新世火砕流0/1,完新世泥流0/1,完新世溶岩流0/1,水蒸気爆発の可能性0/1,完新世津波0/1,セクター崩壊の可能性0/1,泥流発生可能性源の有無0/1,地震活動の有無0/1,地殻変動の有無0/1,噴気の有無0/1.)
曝露要因(30キロ以内の人口密度の対数0〜5.4,下流や下方にある人口密度の対数0〜5.1,歴史時代の犠牲者の有無0/1,避難経験の有無0/1,航空路の有無1〜5.15,発電所の有無0/1,交通基盤の有無0/1,新興開発地の有無0/1,有人島の主要部を占有0/1)
(ハザード要因の合計)イコールハザードスコア
(曝露要因の合計)イコール曝露スコア
ハザードスコアかける曝露スコアイコール相対的脅威スコア
5つの脅威グループに分ける(very high, high, moderate, low, very low).18のvery high火山にはセントヘレンズ,キラウエアが含まれる.37のhigh火山にはアラスカ,イエローストーン,マリアナなどの火山が含まれる.

図3.合衆国火山の脅威レベル.脅威ランキングは調査精度によって変わりうるものである.ここでは,どの火山が噴火しそうか等の予知のためではなく長期的な監視計画のために用いる.

4つの要求される監視レベルを設定し,脅威グループのvery highhighについてはレベル4,moderatelowvery lowはそれぞれレベル3,2,1と設定.
要求監視レベル4では「十分なリアルタイム監視(well monitored in real-time)」を実施する.これは,細かい変化をリアルタイムで追跡し,進行中の火山活動に関してモデルを開発・試験・適応することを目指すもの.
地震(火口から20キロメートル以内に12〜20点.3成分と広帯域による観測網.空振計,加速計,可能ならボアホール使用),地殻変動(GPS,傾斜計,可能なら体積歪計をもちいた地表連続観測点.時空間変化を追跡),火山ガス(エアボオーンの繰り返し観測かガスの測定キャンペーン.連続測定器の配置),水文(山体斜面での土壌湿度,放出噴気などのリアルタイム監視.泥流検出のためのAFMシステム),リモートセンシング(衛星情報;毎日の多チャンネル高解像度熱赤外画像,繰り返し多チャンネル高解像度可視画像)
要求監視レベル3は「基礎的なリアルタイム監視(basic real-time monitoring)」で,噴火目と噴火中の変化をリアルタイムに捉え,追跡し,何が起こっているか基礎的理解をするためのもの.
地震(火口から20キロメートル以内に3〜4観測点網と少なくとも合計6点),地殻変動(ルーチン化された連続観測.GPSか傾斜計の少なくとも6つの連続観測点.LIDAR画像の活用),火山ガス(エアボーンの連続観測かガス放出のキャンペーン観測(年か月単位),および1〜2のテレメータ連続検出器),水文(連続検出器,井戸水位,泥流流下モデル化のためのLIDARによるDEM),リモートセンシング(ASTER級の多チャンネル熱赤外画像など)
要求監視レベル2は準リアルタイムの活動把握と追跡によって異常を認識するために「変化把握のための限定的監視(Limited monitoring for change detection)」を実施する.
地震(火山から10キロメートル以内1〜2つの観測点と広域観測網),地殻変動(2つ以上の基線調査,InSARによる年変化,火山近傍に少なくとも3つのGPSか傾斜計の連続観測点)
要求監視レベル1は「最低限の監視(minimal monitoring)」
地震(広域観測網に火山が含まれる.火山から50キロメートル以内に少なくとも1つの観測点),リモートセンシング(ランドサット級,気象機関による噴煙のルーチンスキャン)

合衆国における現状観測体制レベル
要求監視レベル L4 L3 L2 L1 L0
Very high(Nイコール18 17パーセント 33パーセント 39パーセント 11パーセント 0パーセント
High(Nイコール37 0パーセント 54パーセント 22パーセント 11パーセント 13パーセント
Moderate(Nイコール48 0パーセント 11パーセント 29パーセント 27パーセント 33パーセント
Low(Nイコール34 0パーセント 6パーセント 9パーセント 32パーセント 53パーセント
Very low(Nイコール32 0パーセント 0パーセント 0パーセント 69パーセント 31パーセント

【監視優先対象火山(Highest Priority Targets)】
監視体制の見直しを優先するターゲットは
現在噴火している(セントヘレンズ,アナタハン,キラウエア)と噴火の危険性がある(マウナロア,スパー)5つの火山である.
また,不十分な監視体制の脅威火山は13(キャスケードの9火山とアラスカの4火山).
さらに,高い航空航路脅威スコアを持ち,噴火の前兆や開始を捉えるための地上リアルタイム観測装置のないアラスカとマリアナの19火山.

【NVEWS体制とIT】
早期火山警戒システム(NVEWS)はUSGSハザードプログラムとCUSVO(Consortium of U.S. Volcano Observatories)の共同観測体制で実現される.最近のITを使って,多くの場所でリアルタイムにデータを取得し,その解析ツールスを用いることができる.CUSVO ITワーキンググループにデータ解析と管理ツールを開発する.
現在の不十分な観測機材は次の10年で整備されるべきである.新たな資本と経費の見直しが必要.
NVEWSで必要な機材の一部はNSFのEarthscopeプログラムのPOB(Plate Boundary Observatory)と適合しており,このプログラムによって設置し重複を避ける.
伝送システムとしてVSATの利用や新たなシステムの開発が必要.
観測体制整備前に起こる噴火に対応するために観測器機の在庫が必要.
火山観測データすべてを保管アクセスするためのデータセンターを設置する必要.
24x7火山監視事務所(National Volcano Watch Office)の設置.NVEWSは装置能力を高めると同時に,火山活動に関する権威ある情報を与え警告・予報能力を高める.火山監視事務所の義務は火山観測所とネットワークで情報を分かち合うことである.

図4.観測データの流れ図.上は観測所や観測所以外からのデータが火山データセンターのデータサーバーに一元化され,観測所やNEWSのスタッフがデータにアクセスできる.また,広域の地震(ANSS)やGPSネットワークとのデータ流通とともに,火山のデータも一般の研究者や一般がアクセスすることができる.

【NVEWSの機能】
火山活動の観測データからより現実的な噴火予報(リアルタイム地図等の提供)
流通する観測データから作成されるピアレビューされた科学論文.
危険火山における突発的噴火の最小限化.
監視対象火山での噴火時リアルタイム危険度の分析結果や緊急情報の発信.爆発的大噴火の5分前に連邦航空局(FAA)への通知.
複数場所で科学者がリアルタイムで火山監視のデータを取得・解析できるようなハード・ソフトウエアやネットワーク構築.
火山監視事務所を通して,アメリカ全土や地球規模で噴火に関する権威付けされた情報発信
様々な種類のNVEWSデータを蓄える全国火山データセンターの設置
全監視火山をカバーした日報を載せたNVEWSウェブサイト
官庁や研究機関をまたぐ火山監視資源の共有

【その他】
実行計画を練るためのNVEWS協議会をCUSVOの下に作る.NSFプロジェクトとの協定がEarthscope委員会(科学教育委員会,施設執行委員会,Earthscope/POB常置委員会,POBマグマシステムサイト選定委員会など)を通じて行う.CUSVOのメンバーがこれらの委員会に入っている.
火山プロセスの研究はUSGSとアカデミックコミュニティーによって行われる.物理化学プロセスへの研究のない監視は機械的パターン認識であり,火山の複雑な現象に十分に迫ることはできない.1980年のセントヘレンズの噴火以降25年間の研究と経験によって,十分な観測体制であれば,噴火の数時間から数日前に十分に予報できるところまで達した.次のゴールは噴火のスタイルと規模の十分な予報である.観測所とデータの豊富な肉付けすることと革新的総合研究に観測データを用いることを妨げる障壁を取り除くことによってNEWSはこれに答えることができる.
知識基礎を増やすために,競争的でピアレビューされたプログラムを提案し,NVEWS活動と共同か補完する研究グループに研究費を与える.NSFには火山学に特化したプログラムがなく,火山監視や災害評価プログラムはNSFの対象から外れている.USGSのハザードプログラムが唯一その支援が可能であるのでNVEWS資金の10〜15パーセントを外部資金プログラムに当てる.
USGSハザードチームは本提案による実行状況をレビューし調査するためのワーショップを開催する.

【経費】
火山ハザードプログラムの年間予算(FY2006)は,5観測所の運営,130名の雇用を含んで,年間約19百万ドル(約21億円).



海外状況調査における基本的な調査項目(アメリカ合衆国)

1. 観測体制について
 
1 観測実施機関名:米国地質調査所
2 実施機関の設置形態:内務省機関
3 実施機関の観測状況や役割分担:5つの火山観測所を基盤とし,米国内の活火山を中心とする観測監視.
4 実施機関の組織体制及び人員・構成・配置状況
Volcano Hazard Team 全体で約130名:アラスカ火山観測所25,カスケード火山観測所49,ロングバレー火山観測所17,イエローストーン火山観測所(3?),ハワイ火山観測所24
5 観測対象火山
スパー,リダウト,オーガスティン,セントヘレンズ,ロングバレー,イエローストーン,キラウエア,アナタハンなど米国の全活火山(172個)を対象にしている.また,火山ハザードチームは海外の火山噴火監視を援助している(フィリピン,パプアニュギニア,カムチャツカ,中米,エクアドルなど).

2. 火山噴火予知のための予算について
 
1 関係各機関の予算額:年間約20万ドル(約23億円)
2 予算配分決定機関とその仕組:米国政府予算

3. 当該国における火山噴火予知に対するスタンスや考え方について
   物理化学プロセスへの研究を伴わない,火山監視は機械的パターンの認識作業であり,火山の複雑な現象に十分に迫ることはできない.

4. 当該国における火山噴火予知に関する仕組について
   合衆国地質調査所(USGS)の火山ハザードプログラムによって5つの火山観測所が維持され,70火山の活動について対応している.スタンフォード法の下に,USGSが市民や行政に対して火山災害の警報発令の責任を負っている.USGSの観測所は公式に大学や地方自治体の援助を受けて維持されている.現在,噴火の危険性のある合衆国火山の約半分は基本的な地震観測アレイのリアルタイム監視がおこなわれ,いくつかは近代的な装置や方法で監視されている.
 アラスカ火山観測所はアラスカ大学(GI-UAF),アラスカ州地質地球物理調査所(ADGGS)と連携.ハワイ火山観測所はハワイ大学と連携.キャスケード火山観測所はワシントン大学の地球物理プログラムと連携.イエローストーン火山観測所はユタ大学,イエローストーン国立公園と連携.ロングバレー火山観測所はメンロパークに置かれている.

5. 火山及び火山噴火予知に関する教育・研究について
 
1 教育を行う機関(大学等)の状況 (調査不能)
2 研究を行う機関(大学等)の状況 (調査不能)
3 教育及び研究のための当該国内における連携・協力の状況
 火山プロセスの研究はUSGSと大学などのアカデミックコミュニティーによって行われており.1980年のセントヘレンズの噴火以降25年間の研究と経験によって,十分な観測体制であれば,噴火の数時間から数日前に十分に予報できるところまで達した.次のゴールは噴火のスタイルと規模の十分な予報である.観測所とデータの豊富な肉付けすることと革新的総合研究に観測データを用いることを妨げる障壁を取り除くことによって新たに計画しているNEWSはこれに答えることができる.知識基礎を増やすために,競争的でピアレビューされたプログラムを提案し,NVEWS活動と共同か補完する研究グループに研究費を与える.USGSのNVEWS資金の10〜15パーセントを外部資金プログラムに当てる予定である.
4 教育及び研究に関する予算額
 NSFのEarthscopeプログラムのPOB(Plate Boundary Observatory)が走っているが,NSFには火山学に特化したプログラムがなく,火山監視や災害評価プログラムはNSFの対象から外れている.

6. 噴火時における防災体制について
 
1 対応機関や役割分担
 USGSが災害警報発令の責任を負っている.大学や州地質調査所がUSGSと連携して観測監視に当たる.研究に際しても共同作業が実施される.
2 ハザードマップの作成の状況
 ハワイ,セントヘレンズ,ロングバレー,フッド,クレーターレイク,シャスタ,スリーシスター,ニューベリー,ジェファーソンなど主要火山のハザードマップが作成されている.
4 警報発令などの情報発信の方法
 VAACからリアルタイム火山灰情報が提供され,連邦航空局(FAA)への通知される.
5 避難勧告などの責任体制.(未調査)

7. 当該国の国際協力体制について
 
1 観測体制
 ロシア,中南米などでは共同観測を行っている他,アジアを含んだ(特に発展途上国)の噴火に際しては,USGSが火山災害支援プログラム(キャスケード火山観測所を拠点)によりチームを派遣し,災害軽減のための監視観測を行う.これまでに支援を行った火山の分布図を図2に示す.
2 研究協力体制(未調査)

(添付資料)
アメリカ合衆国の火山噴火予知の仕組みと体制(国家火山早期警戒システムNVEWS)

図1:ハワイのハザードマップはUSGSによって1974年に初めて作られ,1987に更新.溶岩流被害に対して9つの区分(過去に溶岩で覆われた面積率で区分している).火山灰や地割れなどの災害は記述していないが最も高い区域で可能性が高いとしている.

図2:USGS火山災害支援プログラム(VDSP)でこれまでに派遣された火山の分布図

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