火山部会(第21回) 議事録

1.日時

平成19年7月3日(火曜日) 14時~16時

2.場所

三田共用会議所 第3特別会議室

3.出席者

委員

(委員)石原、長谷川
(臨時委員)鍵山、清水、藤井、渡辺、浦塚、鵜川、村上、濵田
(専門委員)大島、巽、中田、西村、山岡

文部科学省

板谷大臣官房審議官(研究開発局担当)、土橋地震・防災研究課長、橋本地震調査管理官、永田地震火山専門官、加藤学術調査官、他関係官

オブザーバー

篠原〔産業技術総合研究所〕、宮嵜〔海上保安庁〕

4.議事録

(1)科学技術・学術審議会測地学分科会火山部会長及び火山部会長代理の選任について

 資料1に基づき、火山部会の委員が紹介された後、部会長の選出が行われ、石原委員が互選により選出された。また、部会長代理として長谷川委員が部会長より指名された。

 

(2)議事運営等について

 資料2-1~2-3に基づき事務局より説明後、本部会における公開の手続きについて、測地学分科会決定を準用することが決定された。

 続いて資料3-1~3-3及び参考資料1に基づき、第3期における火山部会の審議状況等について事務局より説明があった。

 

(3)「第7次火山噴火予知計画」の外部評価報告について

 資料4に基づき、地震及び火山噴火予知研究計画に関する外部評価委員会における審議経過及び外部評価結果について事務局より説明があり、各委員より下記の通り質問等があった。

【石原部会長】引き続き計画を推進するべきであるということ、地震と火山の連携をとるべきであるということなどが報告書で言われており、全体的に高い評価をいただいた。レビュー結果を基に外部評価委員会委員と測地学分科会の委員が意見交換を行い、この報告書をまとめていただいた。

【鍵山委員】9ページに「他の研究プロジェクトとの関連などについて十分な説明が必要である」と書かれているが、具体的にどういうことか。

【永田専門官】予知研究で実施されている研究と、科研費等他の経費を獲得して行われている研究や他の火山で行われている研究等と、関連性がある研究については連携してやっていくということが求められているが、その部分について十分行われていないのではないかという意見であった。レビュー報告書に基づいた外部評価であり、レビュー報告書で実施されている研究について、そのような印象が持たれたのだと思う。個別具体的な研究について言及されたものではない。

 

(4)次期計画の策定について

 資料5~7に基づき、平成19年6月28日に開催された測地学分科会において、次期計画の建議(案)を策定していくことが決定されたことについて、事務局より報告があった。続いて参考資料2に基づき、5月に開催された第5回火山噴火予知研究シンポジウムについて藤井委員より報告があり、その後意見交換を行った。

 主な意見は以下のとおり。

【清水委員】シンポジウムの結論としては、次期火山噴火予知研究計画は第7次の延長では無理だということだった。研究資源的にも財政的にも抜本的な見直しが必要である。今まで噴火予知研究がうまくいっているように見えたのは、経験則の成り立つ範囲のみであり、三宅島の例をみても明らかなように、定量的なモデルに基づかないと今後の発展は難しい。地震予知も一度見直しを行ったが、火山噴火予知もここで基本に戻って、素過程も含めて研究面では基礎研究を重点的にやる。今まで噴火予知研究に参入していなかった物質科学分野の研究者の協力が得られるように次期計画はする必要があるというのがシンポジウムの結論だった。私も個人的には次の計画はその通りやっていくべきだと思う。

【石原部会長】人材を含め研究資源はこのままでは難しいということか。

【清水委員】抜本的な見直しが必要。一番いいのは推本のような組織ができるのがいいが、当面は今ある資源を再分配する必要がある。火山を幾つか絞って重点的に観測研究することが必要ではないか。

【濱田委員】第6次の予知研究を見ると、経験的な噴火予知から物理的モデルに基づく火山噴火予知への移行を高らかに謳っていたと思うが、難しいということで第7次計画ではトーンが変わっている。地震部会でもデータ同化とシミュレーションについての議論がなされていたが、火山は素過程が分かっていないので、その研究が重要ではないか。現状では40火山で観測が行われているが、資源が限られているので選択と集中が必要。気象庁では地震分野と火山分野の連携はできている。有珠山や三宅島の噴火の際には、観測データの9割を地震分野で処理を行っていた。現在の基盤観測網で、マグマ噴火がある場合は全く観測が引っかからないということはないと判断しており、連携は既にある程度できていると思う。

【藤井委員】地震との連携が気象庁において行われているのは知っている。シンポジウムで言われた連携とは、例えば地震調査研究推進本部との連携などが考えられていて、高精度高感度の観測点の整備が火山の周辺では遅れおり、まだ不十分な面があるのでもう少し整備した方がいいのではないか。またそのデータを火山で活用することによってもっと火山研究の成果が上がるであろう、という指摘があった。そういう点でもっと地震調査研究と連携がとられていい。現在の火山噴火予知研究の事業費等リソースが少ない中でカバーすることにもなると思うが、選択と集中ということについて、シンポジウムではマスメディアの方から、地方の火山の麓で住民が安全・安心に暮らすためには、そこにホームドクターが欲しいという趣旨のことを言っていた。そこから人がいなくなるということに、住民は不安を覚えている。社会の火山噴火予知に対するイメージと、我々が不十分な状態にあってそれを解決するために研究に専念すべきだという議論と、ある程度不十分であっても安全・安心を供給するために現地に根付いた研究者が必要だという議論があって、それぞれ矛盾する。そういう要望があることを我々は承知すべきである。学術的に成熟していないので学問に専念するということは、火山噴火予知研究では割り切れないと思う。

【石原部会長】気象庁も現地は縮小する傾向で、困るという意見は聞いている。資源の面からは集中も必要である。

【渡辺委員】私も2面あると思う。観測について言えば、最低限の可能性のある火山については核になるものが必要だと思う。今までの予知計画はある程度見通しを広く持って、それぞれの機関の自主性に任せていたと感じる。今後は重点的に研究面で展開するものを鮮明にしてもいいと思う。

【巽委員】重点的に達成したい目標があったとき、基礎研究の推進が重要だという話があったが、それをどこに位置づけるか、どこに人的資源を配置するのか系統的に考えなければ自由な基礎研究だけでは国民負担に対する説明がつかない局面もある。物質科学についてはどういう役割を果たすべきか計画の中にどのように位置づけるか明記すべきだと思う。

【渡辺委員】選択と集中に関しては、先立つものがなければ実行はされないだろう。

【石原部会長】噴火予知研究シンポジウムでも発言したが、富士山の集中構造探査や火山の集中総合観測と火山体構造探査等、マンパワーに応じて集中的に調査研究を行った火山では、火山に対する理解が進んだと考えている。今後の一つのスタイルだと思っている。

【村上委員】地震と火山の連携について、国土地理院の観測網は地震と火山を分けず、全国に等密度で設置している。現象としては同じ地殻活動を見ているが、火山の現象の場合には地震調査委員会等に報告しないことがあり、仕分けが行われているのを不思議に思うことがある。地震・火山の連携は当然と思う。また、火山に限っても、自らの研究では、地殻変動のデータを主に見ているが、物質科学の研究者との交流が重要であると実感する。建議が部門間の連携を促進するものであって欲しい。

【中田委員】火山学会のどれくらいが火山噴火予知研究計画に携わっているかと考えると、1割行かない。地震学会についていえば、2~3割が地震予知研究に従事しており、物質科学は7割いる。つまり、火山噴火予知研究は物質科学をうまく取り入れていないということ。地震予知のシンポジウムでも、物質科学をこれから取り入れていく必要があると言われていた。物質が何であるか分からないと解析ができず、例えば内陸地震のひずみ集中帯の柔らかいものが何か分かっていないが、物質科学の知見があれば分かるかもしれないというようなことがある。物質科学と火山噴火予知、地震予知の連携は重要だし、内陸地震ということでは、地震と火山の連携が非常に重要である。次期計画に物質科学を入れて大きな柱を組み立てるというより、長期的な噴火予測、シミュレーション等物質科学的解釈が効果的なものについて取り入れるのが良いという方向は、多くの人が理解していると思う。今取り立てて物質科学について言及しなくてもいいのではないか。

【石原部会長】火山噴火予知研究を推進するのに、地球物理だけでなく化学や岩石学の分野も取り入れてきたことで研究の進展が得られたと思う。今後資源が限られる中で、他分野も意識すべきということだと思う。

【藤井委員】物質科学というのは既に入っているが、予知計画の経費として措置されていない。観測に要する旅費しかないので、火山学的な研究に関しては、物質科学が最初の頃から強調されているが、それは別経費の成果を投入しているだけ。ある時期に物質科学と集中的にやるということであれば、それなりの投資をしなければ結局変わらない。今までの予知計画で題目を並べるのは火山学に役に立つなら物質科学も含め全てすべきだが、それにどう配分するかまで考えないと本当の計画にならないのではないか。今まではボランティア的に参加する事も含めているのでこうなっているが、計画を作るときにはどのくらいのリソースがあってどう投下し何を達成するのかまで作るべきだと思う。

【石原部会長】限られたリソースということで、今の制度では新しい設備がつかないという問題もある。次の建議に向けて、どのように観測を考えればいいのか。

【中田委員】外部評価において、国家的体制作りについてと経費の使い方について考えなければならないということが言われている。建議の中で共同させた形でできるのか。

【藤井委員】今までそうやってきて、結局うまくいっていない。総花的になっており、達成度を出せと言われても出しようがない。次期計画については、ここまでリソースがあればここまでできる、なければここまでしかできないというところまで、研究者も書くべきかもしれないと思う。

【中田委員】外部評価に、予算がなくてできないのはけしからんと書いてあるが、次期も同じ事になるだけだと思う。今までのやり方では基本的には体制的予算的措置ができないのだから、考え方を変えなければならない。研究面でできることを書いてもいいが、分かりやすいのは、地震予知との連携を全面に出し、経費的な連携も念頭に置いたものを作るという方法がある。

【土橋課長】できることできないことをはっきりさせなければならないと思う。測地学分科会の所掌事務は測地事業に係る事項である。火山噴火予知計画において、何ができるのか、日本全体でどういうことになるのかを顕在化させるのが良いのではないか。5年後10年後の監視体制や日本の火山学がどうなる可能性があるのか等、問題点に対して何をすべきかが明確になる方が良いと考える。

【石原部会長】計画には、夢を書くことはできないのできちんと内容を考えなければならない。第7次から基礎研究について言及されているが、そこから整理をしていかなければならないと考えている。

【清水委員】現状の最低限の観測も今のままでは厳しい。問題点をはっきりさせて今後5年間10年間の問題を書くのも必要だが、観測を安定的に継続できる方策がないと難しいと思う。

【鍵山委員】研究を集中してやっていくというのは、当然だと思う。火山噴火予知の計画の中で考えなければいけないのは、ある部分に資源を集中するということは、納税者にはサービスの低下となる。どこまで基盤部分でサービスを提供できるかを担保した上で資源を集中し研究を進めていくこととなる。気象庁や国土地理院等基盤を担っている機関のサービスを見極めた上で大学等研究機関の目指すべきところを決めるようやっていかないと、現状を知らない人が計画を作っていると納税者から思われてしまう。

【山岡委員】シンポジウムを聞いていて、防災部分と火山噴火予知研究が混然としている印象。地震分野は地震予知研究そのものは研究に集中しており、それを実際に社会に生かすのは強震動予測とか全国を概観した地震動予測地図等で行う意識が高いと思う。火山分野は、火山噴火予知のための研究をどうすべきかという議論と防災の議論を整理しなければならないのではないかと思った。防災には科学技術の裏付けが必要なので、対応させつつ整理が必要。

【清水委員】基盤的観測の体制について、地震は推本が基盤的観測網の整備を進めており、火山は火山噴火予知研究計画の中に監視観測が位置づけられている。基盤観測網ができれば、緊急性の高い火山に対応できるし、データが流通し周辺の研究者や若手研究者も参入しやすくなる。基盤をしっかりすることを真剣に考える必要がある。

【長谷川部会長代理】10年前の第7次地震予知計画のときの議論と現在の火山噴火予知計画の議論が同じようであると感じる。地震予知研究計画は、その後「地震予知のための新たな観測研究計画」となったが、それ以前と比べ変更になった点は、推本が設置され、そこで何が必要か議論の上、基盤観測網が構築された。基盤観測網の目的は4つあり、地殻活動の現状把握、評価能力の向上の目的が第一だった。地下で何が起きているか分からない状態をなくそうとした。先ほど山岡委員が言われた問題は、基礎研究の推進と現状把握能力の保持の両方を火山噴火予知研究が担っているからであって、それを整理することが必要である。地震の場合は大きな地震が起きたため、それまでの地震予知研究計画を評価した上で、「新たな観測研究計画」に移行した。火山の場合は状況は違うが、問題をどう整理した上で、どうしたら解決できるのか考えたとき、地震と一緒にやることも必要ではないかと思った。そのために地震予知のための観測研究と共同してできることがあれば、そちらに参画している研究者と一緒に、できることを考えるべきなのではないかと思う。

【西村委員】我々が経験したこともない大噴火などの発生や多様な火山現象の理解には、基盤観測網を整備し、きちんとデータを取ることによって、新しい知見を得ることができる。何を目的として観測研究をするのかを明確にする必要があると思う。

 

(5)その他

 参考資料3に基づき、濱田委員より気象庁における噴火時等の避難体制に対応した火山情報の改善について報告があった。

 主な意見は以下のとおり。

【鍵山委員】天気予報は、晴れ・雨等の予報に追加して大雨注意報や濃霧注意報等がある。それと比較してみると、火山情報はなぜ分かりにくいのかと考えてみた場合、噴石注意報や溶岩流注意報・火山灰注意報等を、ある程度の予報にプラスして出すと、分かりやすいのではないか。「レベル」では何が起きるのかが分かりにくいのではないか。

【濱田委員】これだけ情報が氾濫する世の中では、情報はなるべくシンプルな方がいいのではないかと考えている。気象庁の緊急地震速報の普及活動の反応を見ると、地震予知と混同している人が多くいる。そういう状況を踏まえると、情報はシンプルな方がいいと考える。

【石原部会長】レビューの段階では火山情報の改善については議論されなかったが、計画を策定する段階では、情報の高度化ということで、議論されるのではないかと思う。次回も今回の議論を踏まえ、必要に応じて地震部会と合同で開催するなど、引き続き検討したいと思う。

 

 

(以上)

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研究開発局地震・防災研究課

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