海洋開発分科会(第61回) 議事録

1.日時

令和元年8月9日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 東館15F特別会議室

3.議題

  1. 地球深部探査船「ちきゅう」による国際深海科学掘削(IODP)第358次研究航海の実施結果について
  2. 海洋開発に係る最近の動向について
  3. 今年度の海洋開発分科会における評価の実施について
  4. 北極域研究推進プロジェクト(ArCS)終了後の後継施策に関する事前評価について(非公開)
  5. 第6期科学技術基本計画に向けた海洋開発分科会における検討の方向性について(骨子案)(非公開)
  6. その他

4.出席者

委員

藤井輝夫分科会長、中田分科会長代理、石田委員、榎本委員、沖野委員、川辺委員、河村委員、窪川委員、阪口委員、田中委員、谷委員、中川委員、廣川委員、藤井良広委員

文部科学省

生川研究開発局長、岡村大臣官房審議官、福井海洋地球課長、渡辺深海地球探査企画官、河野極域科学企画官 ほか

5.議事録

【藤井分科会長】  ただいまより、第61回科学技術・学術審議会海洋開発分科会を開会させていただきます。
 今日は、大変お暑いところ、お集りいただきましてありがとうございます。
 まず初めに、事務局のほうで人事異動がございましたので、ご報告をお願いいたします。
【事務局】  ご報告申し上げます。令和元年7月9日付で研究開発局長といたしまして生川浩史が着任しておりますが、到着が遅れておりますので、後ほどご挨拶をさせていただきます。
【藤井分科会長】  では、後ほど局長にはご挨拶していただくということで、先に進めていきたいと思います。まずは、配付資料の確認をお願いいたします。
【事務局】  本日は、ペーパーレスで進めさせていただきます。お手元のタブレット端末に議事次第のほか、資料1から5が表示されているかと思います。そのほか、参考資料につきましては、別のフォルダーの中に格納してございますので、適宜ご参照いただければと思います。もし端末に不都合等ございましたら、事務局にお申しつけください。このほか、席上に机上資料といたしまして資料3、左上に赤く「机上」と書いた資料、評価用紙になりますけれども、記入用紙を準備してございます。
 以上です。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。机上の別紙のご確認も、あわせてお願いいたします。
 今日は、実は議題が結構盛りだくさんでございまして、その他を含めて6個、1から5まで議題がございます。それから、議題4と5につきましては、審議の円滑な実施の観点から、海洋開発分科会運営規則第3条第3号に基づいて非公開という形にさせていただければと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、早速最初の議題からまいります。議題1、地球深部探査船「ちきゅう」による国際深海科学掘削(IODP)第358次研究航海の実施結果についてということで、これは海洋研究開発機構の倉本さんからお願いいたします。
【倉本部門長】  今御紹介にあずかりました海洋機構の倉本でございます。4月1日から研究プラットフォーム運用開発部門の部門長をしております。今年の1月に本計画に関しては中間報告をさせていただきまして、そのときは地球深部探査センター(CDEX)という名前でございましたけれども、引き続き、MarE3(マーレ)と呼びますが、この部門で「ちきゅう」の運用をさせていただいております。
 本日は、お時間をいただきまして、このIODP第358次航海の実施の結果についてご報告させていただきます。
 資料1の2枚目を御覧ください。本委員会も新しい委員がいらっしゃるということで、このIODP第358次航海の目的というところを最初の1枚で御紹介させていただきます。
 これは紀伊半島の沖合のフィリピン海プレートの沈み込むところ、南海トラフの巨大地震が発生しているところに直接掘り込んで、さまざまな試料やデータ、あるいはその周辺のデータをとることによって、人類で初めての巨大地震発生帯の直接的な研究をするという挑戦的な計画でございます。
 その中で、実施はこの「ちきゅう」を使いまして、2007年から断続的に行ってまいりまして、今回の358次航海というのは、このC0002地点の4回目の航海になりまして、この断面図にありますように、海底下おおよそ3,000メーター、水深が2,000メーターありますので、5,000メーターぐらいまで掘っておりまして、その同じ穴をさらに掘りまして、掘り増しをしてプレート境界、特にこの赤く線で表示しておりますけれども、上下のプレートがおそらく固着している巨大地震発生帯の一番浅いところに掘り込んで、試料を採取したり、データを直接観測するという計画でございました。
 左上のほうに、ちょっと小さい図ですけれども、速度構造の断面図がついております。この場所は3次元的な探査を行いまして、2回目の解析を行いましたけれども、それによって、このプレート境界の上に赤く着色されておりますが、高速度層と書いてありまして、いわゆる岩石的には少し硬くなったところ。おそらくプレート境界のひずみのエネルギーをこの部分で保持している場所であるというところであります。その上まで掘り進んでおりましたので、さらに掘り進んで、この実態を解明するというのがこの目的でございます。
 次のページを御覧ください。このC0002地点での掘削結果ということであります。昨年10月から始めまして、おおよそ半年間、この航海を連続的に行いました。台風、そして黒潮といった気象の要因は、今回に関しては全く害がなく、黒潮も大蛇行したままでございました。 そして、ここを安全に掘削を行ったわけですけれども、ここの場所は地質環境としては、いわゆる付加体と呼ばれるフィリピン海プレートの上に堆積した堆積物が陸側に付加されるところ。したがって、断層や褶曲によって複雑な構造を呈している場所であります。 そこを掘り込みまして、前回までに遭遇したトラブルといたしましては、地層がほぼ垂直に立っていることによって、孔内の崩壊が起こるということがございました。その対策をするということで、24時間連続的に監視をする、あるいは泥水比重あるいはその泥水に混ぜる物質の最適化をいたしまして、孔内を安定に保つということを今回行いました。
 さらに、非常にもろい穴ですので、早目に保護をするということで、今回、日本では初めて使いましたけれども、エクスパンタブルケーシングという方法で、細目の鉄管を入れて、中に設置してから太くする、広げるというものですが、それを使いまして、この穴を保護しながら掘削するという予定でやってまいりました。
 しかし、さまざまな問題がございまして、掘削時の問題というところに書いてありますけれども、ある程度穴はコントロールできていたわけですが、同じ穴に戻れないという現象がたびたび起こってしまいました。これはどういうことかというと、初め細目の穴で掘って、そして拡掘といいますけれども、穴を太くして、ケーシングを入れて、要するに鉄のパイプを入れて保護しながら掘っていくわけですが、同じ穴に戻ろう思っても、その穴にドリルビットが入っていかないという現象が起こってしまいました。
 また、もう一つの大きな原因は、掘削のスピードが上がらないと。昨年に比べて、前回までとほぼ同じような地層だと考えていますけれども、約10分の1のスピードでしか掘削ができないという現象が発生いたしました。
 最後のところですけれども、予想をしていた以上に掘削が困難な地質構造のため、最終的には計画より浅い深度で掘削を終了いたしました。 左側の図を見ていただくと、2回曲がっておりますけれども、最初のPと一番下に書いてある3,058.5メートル、これは海底下で、水深まではおおよそ2,000メートルですから、5,000メートル強掘ったところまでが前回までの穴です。その上から、Q孔と申しまして、Sidetrackと申しますけれども、ケーシングに穴をあけて、横に掘進をします。その中で、三つまたになっていますけれども、これが同じ穴に戻れない現象が起こったために、何度もやり直したと。最終的にこのP孔の穴の周りが大きくなってしまったと判断して、そこの穴をセメントで埋め戻して、アバンダンし、その上約100メートルのところからもう一度掘り直すという作業を行いました。それが、RSTという番号がついていますけれども、このアルファベット順に掘ったわけです。
 同じような現象、それから機械のトラブル等々も起こりまして、最終的にはその黄色でハッチした部分でコアリングを行い、この穴を終了いたしました。
 次のページをお願いします。
 C0002地点で起こった原因の推定ですけれども、下のほうのQ孔ではどういうことが起こったかというと、まず1番のところでケーシングに穴をあけて、約90度方向にSidetrackしていく、要するに穴を横に掘り進むと。この絵ですと非常に広角に見えますけれども、おおよそ数度ぐらいです。2度から3度ぐらいの角度です。ですから、ドリルパイプはもちろん連続的に通るわけですけれども、90度方向を狙ったのは、地質構造を加味してなのですが、残念ながら90度方向に行かず140度方向、50度ぐらい南に振れてしまったと。さらに70度ぐらい戻るというふうに、ある意味uncontrollableになってしまったと。
 この原因としては、まだ確定はしていませんけれども、このSidetrackをしているときに孔内に設置するすべり台みたいな機械がありますが、その機械が曲がってしまった。あるいは、周りの地層自体が複雑になっていますので、真っすぐ掘ろうとしても、そこを蹴られてしまうということが起こったかと想像しています。
 また、このKick-offをしたところでかなり時間を食ってしまったので、掘削の振動等々もあり、20時間ぐらいここで余分に時間を費やしてしまったので、後からの想像ですけれども、周りの地層を壊してしまった可能性があると考えておりまして、それによって同じ穴に戻れなかったのではないかと考えております。
 また次のページをお願いします。
 その上のR孔ですけれども、RSTですが、ここでも同じようなことが多少起こっております。Kick-offをしたところは、正常にKick-offできまして、それから掘り進むのですけれども、残念ながら、機械のトラブル、Mud Motorの破損と6番目に書いておりますが、これは先端部で泥水の力を使って高回転させる機械なのですけれども、それが破損してしまったと。その原因も今調べている最中ですけれども、まだ結果は出ておりません。
 それから、Expandable Casingをセットして、それからホイップストックをセットして、Windowカットでカットしたところまではうまくいったんですけれども、その後、Expandable Casingをセットしたところで、そのケーシングを広げるところの機械が、今度は抜けなくなってしまいまして、最終的にそれをカットして、孔内に残すということが起こってしまいました。
 最終的にこの上の穴も、右側のイメージ図に描いてありますけれども、大きく全体が崩壊してしまうということが起こって、同じ穴に戻れないというふうになってしまったと考えております。
 そういった非常に難しい穴で、目的の深度まで達成できませんでしたけれども、科学の成果としてはどういうものが上がっているのかというと、直接的な科学の成果ではないですが、我々の行っている科学掘削としては最深、一番深い記録を達成しています。海底下3,262.5メートル。そこから、非常に短い2.5メートルのコア試料ですけれども、連続的な試料、LWD――掘削同時検層データ、それからカッティングスの採取に成功しております。
 主にカッティングスの試料を使って間隙率を測定しておりますけれども、海底下3,000メートル以深で連続的に間隙率が指数関数的に減衰する、がくっと下がってくるということがはっきりわかりまして、これは、おそらく最初の3次元地震探査データの解析で明らかになってきていた高速度層の一番浅い部分にどんどん近づいていることだと解釈しています。つまり、岩石はどんどん急激にかたくなり、ひずみのエネルギーをためる石に変わってきている、一番端っこの部分に到達したと考えております。
 それから、孔底付近の水平圧縮応力軸の方位がプレート沈み込み方向に直交するということを明らかにいたしました。この原因については、もちろん一番単純な最初の予測はプレート沈み込み方向、つまり北西、南東方向に水平圧縮応力軸があると考えていたんですけれども、それに直交するという結果になりました。これは新しい結果でして、原因については、今、研究者の間で議論されています。
 それから、補完的に、このライザー掘削が終わった後、C0024とC0025という2サイトで掘削を行っておりまして、最初の24という地点では、プレート沈み込みの最初の地点、つまり我々の最初に発見したスロー地震と高速すべりが同時に同じ断層帯で起こっているという場所を掘削いたしまして、その連続的なコア試料とLWDデータの取得に成功しております。また、25のほうでは、付加体の形成史を示す連続的な地質試料の採取に成功しております。
 次のページです。最後のスライドになりますけれども、この南海トラフの計画に関しては、本委員会で平成26年にこういうグリーンの報告書が出ておりまして、ここに書かれていることを、今このグリーンでハッチしたところにまた抜き書きしました。
 ここで言われていたことは、早期に巨大分岐断層/プレート境界断層接合部を掘り抜くことを目指すと。そのために超深度掘削は、連続する2会計年度内での完遂を目指すと。さまざまな理由により、それ以上かかると見込まれる場合は一旦休止することを含め、技術の進歩や社会情勢を鑑みて決定すると。掘削方法の選択に当たっては、計画案それぞれのリスクを徹底的に検証し、上記2項の方針を考慮しながら、できるだけ成功率の高い手段が選択されるよう、技術的合理性に基づいた判断を行うというふうに言われております。
 残念ながら、ステージ3と呼んでいるのが今回の大深度掘削部分ですけれども、技術的困難から予定深度までの掘削がかなわず、早期の完遂は難しい状況に至りました。今後、各方面の外部専門家による厳格なレビュー、助言を受け、詳細な技術検討を進めるということで、これは現在も進めているところでございます。
 引き続き、この技術レビューを進めた上で、今、我々が考えている今後の方向性ということですけれども、プレート境界、特に地震発生帯の掘れる場所というのは、世界の巨大地震発生帯の中でも南海トラフしかないというのが、初期の結論でありました。掘削で届くところはこの場所しかない。しかも、大深度、大水深での掘削は「ちきゅう」でしかできない、現在でもその状況は変わらないと。その物質あるいは現場での観測というのは、この巨大地震あるいは津波の発生メカニズムを理解するためにはマストで必要なことであると今も考えておりまして、それは、国民の安全で安心な社会の構築のためには必要なことだと考えております。
 つまり、その課題はやはり残されてしまったということで、少し戻ってしまった感じになりますけれども、この緑の冊子に書かれているように、もう一度技術を見直し、再チャレンジするということが求められているのではないかと考えておりまして、最後のところにちょっと書かせていただきましたけれども、今回の科学掘削を通じて得た科学・技術の知見をもとに、新たな地震調査研究の成果も取り入れ、段階的な科学目標の設定と着実な到達のための技術を再検討し、地球深部探査船「ちきゅう」による巨大分岐断層/プレート境界断層接合部を掘り抜くことを通じて、国民の安全で安心な社会構築のために貢献したいというふうに考えております。
 以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 ただいまの御説明につきましてご質問等がございますでしょうか。谷委員、お願いします。
【谷委員】  谷でございます。大変ご丁寧に説明していだきましてありがとうございました。ものすごくご苦労されたということを伺いました。
 その上でお伺いするのですけれども、平成26年のときに、うまくいかないときは別のやり方でやるというふうに決まっていたと思うのですね。私は、気になっていまして、といいますのは、1月22日にご報告をいただいたときに、目標地点が5,200メートルなのに、まだ3,000台でうろうろしている。あと一月ちょっとしかないのに。「大丈夫ですか」とお伺いしたら「何とかやってみせます」みたいなことをおっしゃっていて、私はそこで「平成26年のときにうまくいかないときは一旦とまって考えるという話になっていたけど、それはやらないの」と言ったら、「それはやりません」とおっしゃっていたんです。
 もうその時点で目標の達成が難しいことを想定されていたのではないのでしょうか。その辺の考えをお聞かせください。
【倉本部門長】  1月の時点では、最後の、要するに掘進率が上がらない、同じ穴に戻れないという現象がなかなか解決できなかったことなので、もう同じ穴に戻らないで掘ると。それから、市場にある一番強靭なツールを取り寄せましたので、そこで掘り込んでいくということで、到達できるだろうという判断で、この委員会では回答させていただきました。
 その後、その機械のトラブルに残念ながら見舞われてしまいまして、結果としてこうなったわけです。その時点では、5,200メートルというのが一つの大きな目標になっておりましたけれども、そこまでは時間的にも届かないかもしれないという見込みだったんですが、その上の4,700メートルというターゲットがもう一つありまして、そこは、この高速度層の真っただ中、つまり岩石としてひずみを本当にためている場所なのかどうかということだけは確かめられると。それでも大きな成果だというのが国際の研究者のコミュニティーからの合意でしたので、少なくともそこまでは到達できるという見込みで、その時点では回答させていただきました。
【谷委員】  では、将来の話についてお伺いしますけれども、今、市場で最もすばらしい機械を取り寄せてやってみて、そこに望みをかけたという御説明がございましたけれども、地層が立ってしまっているような掘削が難しい場所は、石油関係の企業では掘らないので、この先全部独自開発になると思いますが、どれぐらいの時間と努力が必要だとお考えですか。
【倉本部門長】  まず、この場所あるいはこの場所の近傍が適切なのかどうかということをもう一度検討しないといけないかと思っています。そこには非常に困難な問題がございまして、海底下およそ3,000から5,000メートル、水深入れるとさらに2,000メートルプラスですから、かつ地層が非常に薄くてかたくて、そして立っているという、いわゆる現在の反射法地震波探査の能力を超えてしまっていると考えています。ですから、見ようと思っても、実は音波を使ってのイメージングというのは非常に厳しいのだろうと思っています。
 ただ、それでも、むやみに掘るわけにもいかないので、もう一度、もう少し高精度の探査方法を試すということを今考えて、場所の適切性をもう一度検討させていただきたいと思っております。
 その上で、次回、もし掘削ができるチャンスがあれば、新しい穴として掘り進むことになると思います。この穴は、何度か横掘りをしていますので、さまざまな問題があることは認識しています。その問題は乗り越えられると思って今回やってきたわけですけれども、予想以上に穴の周辺のダメージが大きいということもありましたので、次回やる場合には、それを避けてやるということを検討させていただいてやると。時間としては、平成26年のときにも、一度、最初からやり直した場合の案を御紹介させていただいたのですけれども、今回、半年間の時間を組みましたが、これでノウハウは少しできたので、スピードアップはできる可能性はあるのですけれども、同様もしくはそれ以上の時間が必要かとは思っています。
【谷委員】  ありがとうございました。
【藤井分科会長】  ほかに。よろしいですか。沖野委員。
【沖野委員】  Sidetrackで得られたものは大きいというのは確かだと思うのですが、これは最後に本来のライザーの穴をあきらめてライザーレスをしますが、その辺、どういうふうに意思決定をして、こういう決断に至ったのかを説明してください。
【倉本部門長】  代替サイトの計画自身は、初期のこのプロジェクトの中に盛り込んでおりました。時間が非常に早く掘削が終わった場合は、それをやろうと考えておりました。今回に関しては、PQRSTまで行って、これ以上無理だということを判断して、残りの時間をこの代替サイトに費やすという判断をしたのが、1月末から2月だったと思いますけれども、その時点で残りの予算、許された時間を含めて3月31日までのオペレーションができると計算いたしましたので、そういう判断をさせていただいたということです。その科学的意義は、事前に議論されておりまして、新たに時間とあわせて、ずっとコアリングをしないで、スポットのコアリングだとかLWDといった細かい議論は、船上で同時に行い、陸上の研究者といわゆるテレビ会議みたいなことをしながら、最終的に決めたということです。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 今の議論を整理しますと、次回は、サイトの選定を詳細に検討し、道具立てとしては、ある意味、手持ちの道具立てでトライしてみると。現状は、そういった方針だという理解でよろしいですかね。
【倉本部門長】  はい。全く新しいサイトを見つけるというのはなかなか難しいとは思っております。この近傍が南海トラフ沿いの中で一番いいと思ってこれまで挑戦してまいりましたので、この穴が、周り10メートル先なのか、1キロ先なのか、もう少し確実に掘れるという確信がとれるまでは、少しいろいろな方法を試させていただきたいと思っています。その上で掘削を行いたいと思っております。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題にまいりたいと思います。次は、海洋開発に係る最近の動向についてということで、これは事務局より御説明をお願いします。
【事務局】  海洋地球課の鈴木でございます。私からは海洋開発に係る最近の動向について3点、時間も限られておりますので、簡単に御紹介させていただければと思います。
 資料の2-1を御覧いただければと思います。海洋科学技術に関連する政府方針をまとめております。具体的には、今年、いずれも6月21日に閣議決定されました経済財政運営と改革の基本方針2019、いわゆる骨太の方針というものでございますが、それと成長戦略フォローアップ、そして統合イノベーション戦略2019の3点から、海洋科学技術に関連する部分を抜粋したものでございます。
 まず骨太の方針でございます。SDGsを中心とした環境・地球規模課題への貢献としまして、気候変動・エネルギー、海洋プラスチックごみ対策等の分野での取組をリードするとされてございます。
 その下、科学技術・イノベーションの推進として、Society5.0の世界に先駆けた実現、世界で最もイノベーションに適した国へと我が国を変革する、そして、世界中から研究者の英知を結集するムーンショット型研究開発を早期に開始し、多年度にわたる取組を進めるとされております。
 また、全ての科学技術イノベーションに影響する最先端の基盤的技術であるAI、バイオテクノロジー、量子技術の研究開発を戦略的に進めるとされております。また、国及び国民の安全・安心に関する重要な技術分野への予算や人材等に重点化を図るとされておるところでございます。
 続きまして、新たな海洋立国への挑戦の項目でございます。海洋の安全保障、海洋産業利用の促進、海洋環境の維持・保全、科学的知見の充実など総合的な海洋政策を省庁横断的に推進し、AI・自動化技術等を活用した海洋監視体制の強化に取り組む。海事産業の競争力強化に官民を挙げて取り組む。北極域研究船に関する取組等を推進し、北極海航路の利活用にも役立てるなどと記載されてございます。
 その下、海洋エネルギー・鉱物資源の開発・商業化に向けて官民で取り組むほか、安全保障の項目では、海洋監視・海洋調査体制等の強化や海洋状況把握による能力向上等による総合的な海洋の安全保障の実現などが盛り込まれてございます。
 また、その下、防災・減災について、気候変動等の影響等を踏まえて、体制整備に努めつつ、ハード・ソフト両面において防災・減災対策、国土強靱化の取組を進めるとされてございます。
 続きまして3ページ目、成長戦略フォローアップでございます。こちらにも、メタンハイドレート等の海洋資源の取組や海洋プラスチックごみに関する取組のほか、こちらのページ、一番下にございますけれども、戦略的な研究開発の推進の一つのメニューとしまして、北極海航路の持続的利用への取組、北極域研究推進プロジェクト(ArCS)の後継プロジェクトに関する検討や北極域研究船に関する取組など地球規模課題に対処する研究開発、北極科学大臣会合の2020年日本開催などの国際協力を総合的に推進すると盛り込まれてございます。
 その次のページ、統合イノベーション戦略でございます。まず総論におきまして、地球環境の持続可能性への懸念として、地球温暖化などの現状認識が示されております。
 その下、Society5.0に向けたデータ連携基盤の整備として、さまざまな分野が書かれてございますが、その中にも、防災、地球環境、海洋などの各分野について、分野間データ連携基盤との相互運用性を確保するなどとされております。
 その下、第Ⅱ部第5章では、特に取組を強化すべき主要分野ということで、環境エネルギーと安全・安心の二つが掲げられております。
 (4)環境エネルギーでは、地球観測の事項において、2018年10月~11月に、第15回GEO本会合を我が国で開催することや、効果的な温室効果ガスの観測の拡充とその維持を図ること等が盛り込まれておるところでございます。
 次のページ、(5)安全・安心におきましては、重要な技術分野として、ページ中ほど、(ウ)自然災害への対応等に資する技術が挙げられておりまして、具体的には、自然災害等の予測・被害予測を迅速かつ正確に行い、自然災害等の防止や災害による被害を最小限に抑える技術。こちら、例えば、海中ロボット等による海洋調査技術、海溝型大地震等の状況を把握するセンシング技術、また海底観測網関連技術等が挙げられているところでございます。
 また、この下、(7)のその他の重要分野として、その一つで海洋分野というのが挙げられてございます。具体的には、次のページをおめくりいただきまして、②海洋分野とされているところの、まず1パラ目でございますが、マイクロプラスチックを含む海洋プラスチックごみの分布実態や影響把握、将来予測の実施等の調査研究の推進を重要施策として継続的に取り組むことが必要。また2パラ目、海洋データに関して、社会実装を見据えた利用分野の拡大。3パラ目、こちら後半でございますが、我が国のEEZの利用の進展には不可欠な海洋情報を取得する手段として、SIP第2期の革新的深海資源調査技術における海洋資源調査技術の開発・実証の取組を進め、複数機運用技術、深海底ターミナル技術などを含むAUVの技術開発をはじめ、USV、海底ケーブルなど最新の海洋観測技術を開発するとされてございます。
 4パラ目は、一部、先ほどの成長戦略の繰り返しになりますけれども、北極に関する動きが活発化する中で北極科学大臣会合への貢献、北極域における環境変動が地球全体へ及ぼす影響の大きさを認識し、北極域研究船に関する取組の推進、AUV等を用いた北極域観測に関する研究開発や北極海航路の運航支援システムの構築に向けた研究開発に取り組む。そして最後、5パラ目に海洋エネルギーの技術開発等に取り組むと、多岐にわたる取組が記載されてございます。
 これらの政府方針を踏まえまして、文部科学省としても、関係府省と連携しまして、海洋科学技術のさらなる推進に努めてまいります。
 続きまして、資料2-2に基づきまして、第3期海洋基本計画のフォローアップの仕組みについて御紹介させていただければと思います。こちらを御説明する趣旨としましては、本分科会において今年1月に改定をいただきました海洋科学技術に係る研究開発計画のフォローアップにつきましては、第3期海洋基本計画のフォローアップ等に基づいて実施するとされている、そのなった方針ということでございますので、その海洋基本計画のフォローアップの仕組みについて簡単に御紹介をさせていただくものでございます。
 まず1ポツ、フォローアップの概略でございますけれども、昨年策定されました第3期海洋基本計画におきましては、実効性を担保するために実施府省名を明記するとともに、指標を用いまして工程管理し、PDCAサイクルの活用を図ることとなってございます。
 これを踏まえまして、具体のプロセスとしましては、少し文章だとわかりにくいかと思いますので、次のページをおめくりいただきまして、右上に「別添」とされている体系図を御覧いただければと思いますけれども、第3期海洋基本計画がございまして、そこに位置づけられた施策について、そのまとまり、施策群というものを単位としまして、目標や指標の決定がなされております。それが①です。
 その①を踏まえまして、各施策群の今後の工程について、②工程表として、毎年秋ごろに工程表が作成されると。続きまして、その下、③、各施策群の当該年度の進捗については個別施策評価書というのが毎年度夏ごろに作成をされるものでございます。
 そして、それらの結果につきましては、④、下の緑色の箱にございますけれども、総合海洋政策本部参与会議において報告をされまして、必要に応じて、総合海洋政策本部長、すなわち総理大臣への意見書へ反映されるとともに、今後は右の青い箱にございますように、施策の実施状況等については、海洋状況及び海洋に関して講じた施策、いわゆる年次報告に反映されるという流れでございます。
 これら、①から⑤の具体のものにつきましては、こちら、参考資料5から9に添付しておりますので、また時間がある際に御覧いただければと思います。
 以上、第3期海洋基本計画のフォローアップの仕組みでございます。
 続きまして、資料2-3でございます。今年6月に取りまとめられました総合海洋政策本部参与会議意見書につきまして、その概要について御紹介をいたします。
 御承知のとおり、総合海洋政策本部においては、参与会議が置かれまして、海洋に関する施策に係る重要事項について審議をしまして、本部長である総理大臣に意見を述べるとされてございます。昨年から今年にかけまして、参与会議において三つのテーマでPTが設置をされまして、その議論をまとめたものがこの意見書でございます。
 一つ目がMDA(海洋状況把握)の取組を活用した国境離島の状況把握等ということで、具体的には、海洋状況表示システムを活用したさらなる情報の可視化などが提言されてございます。
 2点目が北極政策ということで、研究開発、国際協力、持続的な利用という3本の政策の柱を踏まえた議論がなされております。具体的には、先ほどの成長戦略等と内容がかぶりますので、省略させていただければと思います。
 3点目、海洋プラスチックごみ対策ということで、ごみの海洋流出にストップをかける国際連携の主導と国際協力の推進・強化や、新素材の研究開発や普及等イノベーションを通じた産業の育成、そして政策推進の基盤となる科学的知見の充実と問題の見える化などについて提言がされてございます。
 このような形でまとめられた意見書につきましては、今年6月18日に開催された総合海洋政策本部会合の中で総理に手交されてございます。本体につきましては、参考資料8としてつけておりますが、説明は省略させていただければと思います。
 以上、駆け足で恐縮でございましたが、海洋開発に係る最近の動向について、3点ご報告をさせていただきました。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。
 ただいまの御説明について、質問等ございますでしょうか。よろしいですか。三つ挙げていただいていまして、政府内のいろいろな戦略、それからフォローアップ関係ですかね。それと、第3期基本計画のフォローアップと、それから海本部の最後が意見書ということでございますが、よろしいですか。こういった形で、さまざまなところで海洋関係の政策について、ある種の方向性が打ち出されているというところかと思います。
 それでは、よろしければ、次の議題に進ませていただきます。議題3でありますが、今年度の海洋開発分科会における評価の実施についてということであります。こちらは新事項ということになります。事務局より御説明をお願いいたします。
【事務局】  それでは、資料3、70分の19ページとなっておりますところに基づきまして、分科会における今年度の研究開発課題の評価、実施方針についてまとめた資料でございますが、こちらを御説明いたします。
 分科会長からも御説明がありましたとおり、この後、委員の皆様にご意見等をいただいた上で分科会として本日決定したいと考えてございます。
 参考までに、本資料と同様の内容につきまして、昨年及び一昨年も同様の資料でこの分科会にお諮りしておりまして、基本的には内容はほぼ変わってございませんので、簡単に御説明させていただきます。
 1ポツ、評価の区分でございます。評価には事前評価、中間評価、事後評価の三つございます。
 このうち(1)事前評価でございますが、こちらは海洋科学技術等に関する研究開発課題のうち、以下のいずれかに該当するもの。①といたしまして、総額、例えば5年計画であれば5年間分の額が10億円以上を要することが見込まれる新規・拡充課題。②といたしまして、分科会において評価することが適当と判断されたもの。これらにつきまして事前評価を行うということになってございます。
 (2)中間評価につきましては、事前評価を実施した課題のうち、中間評価実施時期に当たるものについて、(3)事後評価につきましては、事前評価を実施した課題のうち、事後評価実施時期に当たるものについて実施するということになってございます。
 2ポツの評価対象課題でございます。(1)の事前評価でございますが、今年度につきましては、令和2年度新規予算要求課題のうち、1の(1)に該当するものといたしまして、北極域研究加速プロジェクト(仮称)となってございます。こちらの事前評価を予定してございまして、この後、議題4といたしまして、ご審議いただく予定になってございます。
 中間評価、事後評価につきましては、今年度は特に該当なしということでございます。
 3ポツの評価方法でございます。まず(1)の事前評価でございますが、本分科会におきまして、必要性、有効性、効率性の観点から、事前評価票といたしまして、別添様式1がこの資料の後ろのほうについてございます。この評価票に記載の各項目に基づき評価を実施するということとなってございます。
 中間評価、事後評価につきましても、同様の評価票というものを別添様式2から3につけてございまして、こちらに基づいて評価するということになってございます。
 4ポツの留意事項でございますが、利益相反等々に当たる場合については、評価に加わらないものとするということ等を書かせていただいてございます。
 ページを一つめくっていただきまして、6ポツで、本日実施する予定でございますところの海洋科学技術関連施策の事前評価の実施方法及びスケジュールでございます。
 本日、この分科会において施策提案者――文科省でございますが、こちらより御説明したものについてヒアリングを実施し、それを踏まえて、委員の皆様からご意見を集める予定になってございます。それを取りまとめまして、総合評価としてまとめるということを考えてございます。
 (2)のスケジュールでございます。本日、8月9日と書いてございますところにございますとおり、委員の皆様からいただいた意見を集約したものを評価案として、私ども事務局でまとめます。それをおよそ1週間後の盆明けぐらいをめどに事務局の評価案をまとめますので、そちらをメールで委員の先生方に送付する予定にしてございます。
 それにつきまして、委員の先生方から、修正意見等をいただいたものにつきまして、再度分科会長と相談いたしまして、分科会長了解のもとに8月23日ごろを目途に評価結果を取りまとめるというように考えてございます。
 非常に簡単ではございますが、評価の実施方法等について御説明させていただきました。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。
 ただいまの御説明につきまして、ご質問等ございますでしょうか。
 これは事前評価、中間評価、事後評価ということで、おおむね総額10億円以上を要することが見込まれる場合には、この評価に載せるというふうなものでありますが、このやり方でよろしければ、この会としての決議というふうにさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
【藤井分科会長】  どうもありがとうございます。それでは、この案で当分科会としては決定ということにさせていただきます。
 ただいま生川局長がご到着のようですので、一言ご挨拶をお願いします。
【生川局長】  遅参してまいりまして申しわけございません。7月9日付で研究開発局長に着任をいたしました生川でございます。委員の先生方におかれましては、日ごろより海洋分野の研究開発にご理解を賜り、また、本日は大変お忙しい中、ご出席をいただきましてほんとうにありがとうございます。
 御承知のとおり、第3期の海洋基本計画では、海洋状況把握の能力強化のほか、Society5.0社会への実現や持続可能な開発目標のゴール達成に向けた貢献、北極政策の重要性が盛り込まれたところでございます。中でも、北極政策については、今年6月の総合海洋政策本部において、総理より北極海の利活用を推し進めるべく北極域研究船をはじめとした研究開発を一層加速させていく旨、発言があったところでございます。
 文部科学省といたしましては、本日の議題にもございますとおり、北極域研究推進プロジェクト(ArCS)の後継プロジェクトの検討を進めるとともに、北極域研究船に関する取組についても進めてまいりたいと考えているところでございます。
 さらに2020年11月に我が国において、アジアで初となります第3回目の北極科学大臣会合を開催することを予定いたしておりまして、共催するアイスランドと緊密な連携のもと、会合の成功に向けて準備を進めているというところでございます。
 また、本日は、前回に引き続き、次期科学技術基本計画の策定に向けて、委員の皆様方にご議論をいただくということになってございます。

委員の先生方におかれましては、今後とも、本分科会において、我が国がとるべき海洋施策について活発にご議論をいただきたいと思います。
 また、私は以前海洋地球課長をやらせていただいたことがございまして、この分科会を担当させていただいたことがございます。またここに戻ってくることができてすごく光栄に存じております。ぜひご指導いただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
【藤井分科会長】  ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議題のほうに戻らせていただきまして、議題3まで行きましたので、次は議題4ということで、令和2年度の海洋科学技術関連施策として、この北極域研究推進プロジェクト(ArCS)のポストArCSに関する事前評価に移りたいと思います。
 これは新規事業ということですので、利益相反というのが生じないものというふうに考えますが、よろしゅうございますか。
 それで、これも概算要求の内容にもかかわりますので、先ほど申しましたように非公開に致しますので、傍聴者の方々におかれましても、ご退席をお願いいたします。


―――傍聴者退席


 よろしいでしょうか。それでは、海洋地球課より御説明をお願いいたします。
【事務局】  それでは、お手元の資料70分の36ページを御覧いただければと思います。北極域研究加速プロジェクト(仮称)の概要でございます。
 1番としまして、課題実施期間及び評価時期でございます。令和2年度スタートで、令和6年度まで5年間を予定してございます。中間評価は令和4年度、事業開始から3年目でございます。事後評価については令和7年度でございます。
 また、課題の概要・目的のところでございますけれども、本事業につきましては、持続可能な社会の実現に向けて、北極の急激な環境変化が我が国を含む人間社会に与える影響を評価し、社会実装を目指すとともに、北極における国際的なルール形成のための法政策的な対応の基礎となる科学的知見を国内外のステークホルダーに提供する。このために、北極域の環境変化の実態把握とプロセス解明、気象気候予測の高度化・精緻化などの先進的な研究を推進するというものでございます。
 予算額については、現在、概算要求作業中でございますので、調整中ということになります。
 次のページを御覧いただきたいと思います。事前評価票でございます。今課題については、北極域研究加速プロジェクト(仮称)とつけてございます。今年度まで行っておる北極域研究推進プロジェクトを引き継ぐような形でのプロジェクトと考えてございます。
 3番の課題概要でございます。研究開発計画との関係。本年1月に改正されました研究開発計画の大目標の中では、北極域をテーマとした内容を期待してございますが、大目標の下から2行目のところに、これまでの我が国の国益に資する国際協力の推進等の観点を踏まえ、研究開発、国際協力、持続的な利用の3点を重点的に推進するとうたわれてございます。
 また、中目標につきましては、北極域は、北極海航路の利活用も相まって国際的な関心が高まっており、その取組の強化ということでございます。
 重点取組としまして、海洋の現状、将来の状況、気候変動への影響等を解明するということで、北極をめぐる諸課題につきまして、国際共同研究等の推進、最先端の北極域観測技術の開発を進めるというものでございます。
 また、指標にアウトカムとアウトプットがございます。アウトカムにつきましては、記載のとおりでございますが、アウトプットのところでございます。国際共同研究の実施状況について、課題数、研究参画者数、拠点数、研究成果発表報道数、査読つき論文発表数。次の丸でございますけれども、得られたデータ、科学的知見の集積状況、国内外の関係機関への提供実績。また、国際的な枠組みへの日本人研究者の参画状況。大きい枠組みとしては、こういった形での評価をいただくということでございます。
 また次のページをおめくりいただきたいと思います。課題の概要でございます。いろいろ書いてございますが、中ほどに3点ポツがございます。これは、平成30年10月にドイツで開催された第2回北極科学大臣会合での共同宣言というところでございますが、観測の強化、データ利用の促進、研究基盤の相互利用。全球的・地域的な環境変動の理解。環境変化がもたらす社会への影響(脆弱性及び回復力)。そういったものが、国際的な合意になっているというところでございます。
 また、以降には昨今の政府方針等を記載しておりますが、既に御説明がありましたとおりでございますので、説明は割愛させていただきたいと思います。
 また、下段のところに、今回の加速プロジェクトの目的等を記載してございます。目的については、先ほどと同じ内容でございますので省略させていただきまして、次のページの冒頭に、戦略目標と重点課題というのがございます。戦略目標を4点置いてございます。時間の関係で読み上げるのは省略いたしますけれども、戦略目標4点と、縦と横の関係でしたら、重点課題としてやや横串というところでの課題が2点ございます。人材育成と研究力強化。2点目としまして、戦略的な情報発信。4つの目標、課題を実施し、それを重点課題として人材育成、研究力強化、横串で支えるという枠組みで新規プロジェクトを考えてございます。
 以降、4番目、各観点からの評価、必要性等でございますが、この内容は文章で書いてございますので、ページを下っていきまして、70分の43を御覧いただければと思います。
 これは、ポンチ絵で少しわかりやすく記載したものでございますけれども、背景としまして、これまでArCSプロジェクトを実施してございます。また、局長からも説明がございました来年度、ASM3――北極科学大臣会合を我が国でアジア初となる会議を開催するということで、国際社会へのさらなる貢献が求められている。それと、政府の提言等では、先ほど申しました研究開発、国際協力、持続的な利用の3本柱を重点的に推進する。それを受けまして、5年間の新規研究プロジェクトを開始するというものでございます。
 目的については、同様でございますので割愛させていただきまして、4点のところでございますけれども、先進的な観測、観測システムを活用した北極環境変化の実態把握の強化。予測の高度化ということで、我が国にも影響を与えうる気象または気候、そういったものの予測の高度化・精緻化を目指す。3点目、社会への影響評価ということで、北極域における自然環境の変化が社会に与える影響評価を本格化するというもの。4つ目の目標でございますが、ここは新しい、これまでにない対応でございます社会実装。これまでの観測または予測等を最終的には社会への実装を目指すのだというところで、社会実装の試行・法政策的対応というところが新たな取組としてございます。また、法政策的対応につきましては、今後の国際ルール形成への貢献というところも目指しているところでございます。
 その下のところに重点課題ということで、先ほど申しました人材育成と研究力強化、戦略的情報発信といった形での支援を目指しているということでございます。
 期待される効果としまして、北極域の持続的な利用、社会の経済発展や安全・安心、国際ルール形成等への貢献による社会的実装へのアプローチ。北極の諸課題解決に貢献する優れた人材の確保と人的ネットワーク形成による我が国の研究力強化。北極をめぐる我が国の国際的プレゼンスの向上とともに社会・経済・科学技術へ貢献というところでこのプロジェクトを最終的に実施したいというところでございます。
 また、次のページ、プロジェクト運営体制のイメージ、70分の44のところでございますが、運営体制としまして、運営委員会の下に推進本部を置き、その推進本部は各戦略目標をマネージするという形でございます。重点課題につきましても、それぞれ統括責任者を置きまして、それぞれの取組を進めていくというところでございます。
 また、次のページ、3番目の北極政策実現を目指したプロジェクトゴール等ということで、これまでのArCS事業と今度の新たなプロジェクトの関係について、簡単に整理したものでございます。
 これまで進めてきた国際共同研究は、個別テーマ目標から社会ニーズに基づく課題解決ということで、四つの戦略目標に統合してございます。最終的なゴールとしましては、例えば、天気予報の高精度化、北極氷海航路シミュレーションの提供等、また、ブラックカーボンの影響解明等、またそういった集まったデータについては、ADSという仕組みで公開し、国際社会に貢献するということでございます。
 また、これまでのプロジェクトで国際観測拠点が10拠点整備されてございますけれども、それを新たに発展していくという形での強化を考えてございます。
 また、若手研究者の海外派遣ということで、これまで多くの若手研究者の派遣が実施されてきましたけれども、これについても引き続き、増員を図り若手を積極的に海外に派遣する。
 また、北極関連会合専門家派遣につきましても、今後は戦略的情報発信、国際会議のみならず、日本の情報発信を進めていく。また、来年度のASM3で、日本の成果または国際貢献を目指し日本のプレゼンス向上というところでございます。
 また以降のページについては、研究成果の社会への貢献というのがございますので、ご覧いただければと思います。
 また次のページ、北極に関する主要政策等、これは簡単にまとめてあるものでございますけれども、国際合意を受けた共同宣言等については、今後、北極圏のみならず非北極圏、または先住民、地域社会における科学協力ということも強化していくことが必要だと思っております。
 本事業につきましては、こういった仕組みでプロジェクトを検討してございますので、先生方の視点からご評価いただければと思っております。簡単でございますが、以上でございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。
 ただいまの御説明につきまして、ご質問等ございますでしょうか。
【川辺委員】  川辺でございます。御説明どうもありがとうございました。1点教えていただきたいのですけれども、70分の43ページの目的に「持続可能な社会の実現に向けて」というのがありますが、「影響を評価し、社会実装を目指すとともに」というふうに続きますけれども、何の社会実装を目指されるのかというのがよくわからなかったのです。影響評価して、評価結果、技術、そういうものも社会実装かなと思いますが、法政策的な対応ということになるのかなと思うのですね。この文章のつながりがよくわからなかったので、教えていただければと思います。
【事務局】  ご指摘ありがとうございます。今回、社会実装というところで整理させていただきましたが、これまで先進的な観測、例えば衛星での海氷状況とか観測船の観測結果、そういったものが、観測だけで終わっているというところでは非常にもったいないのではないか。ArCSでも、まだ完成まではいっていませんけれども、例えば、北極海航路の海氷データが航路を検討するときに使われる。そういったところが、今後、北極海航路に必要なのではないか。企業ニーズがあれば、データ公開を含めて実装されていく。その先鞭をつけるという意味で社会実装の試行。影響評価というのもございますけれども、それぞれ今回のプロジェクト、四つの戦略目標がございますが、例えば1番でしたら先進的な観測、2番でしたら天候予測、または社会の影響評価といったところでも、それぞれが社会実装を目指す、試行するとしてございます。
 また表現ぶりについては、誤解がないように文章については検討したいと思います。以上でございます。
【川辺委員】  ありがとうございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。これは、私も実は今気がつきましたが、やはり何を社会実装するのか。この戦略目標自体の④の書きぶりも何を社会実装するのか。何をというのが、もう少しわかるような形に書けるといいのかなと思いました。これはまだ変えられるのであれば、検討していただいたほうがいいのかなと思います。
【事務局】  はい。ありがとうございます。
【藤井分科会長】  では、次の委員の方、お願いします。
【見延委員】  北大の見延です。今の御説明ですと、各戦略目標が社会実装を目指すというお話になっているのですが、この戦略目標4のところに社会実装の試行というのが書かれていて、各目標が目指すというのとは少々違うようになっているのではないかと。それから、その社会実装というのは、ニーズがないといけないわけですが、この中で、例えば1番にはあまりニーズはないのではないかと思うのですね。予測には

、確かにおっしゃったように北極航路に使うとかいう予測、ニーズがあるとは思いますけれども。
 ですから、ここの戦略目標の中のバランスと社会実装、本当にできるのかというのが、4番の中に全部入っているというのがよくわからないところになっているのではないかなと感じました。
【事務局】  ご指摘いただいた点を含めて、この社会実装の、例えば、それぞれの課題に重点的に予算を配分するとか、プラスアルファで予算を配分するとか、また社会実装の枠組みで予算を獲得し交付するとか、どういう形がベストかなというのを考えてございますので、いただいたご意見を踏まえて見直しを図りたいと思います。
【藤井分科会長】  見延委員、お願いします。
【見延委員】  もう一つは、重点課題2のところにある北極環境情報プラットフォームというものが、どういうもので、目的が何で、情報のプラットフォームを提供するということなので、ユーザーがいると思うのですが、ユーザーが国内なのか、それとも世界なのか。世界であれば、既にあるプラットフォームとどう差別化を図るのかということはどのようにお考えなのでしょうか。
【事務局】  ありがとうございます。情報プラットフォームの中核をなすものは、実はADS、これまでデータ集積してございましたデータベースが中心になります。そのデータベースを研究データの保管というだけではなくて、プラットフォーム化して、さまざまな用途に使える形での強化を図っていくという意味で、この情報プラットフォームと名づけまして、国内のみならず、国際的にも開かれたプラットフォーム化を目指すというところで考えております。
【見延委員】  国際的にもということは、やはり競合があるので、その中でどういうふうに日本のプラットフォームをアピールできるのか。漠然としているとあまり使い物にならないとみなされても、かなりこういうのをつくるのは労力がかかると思うので、その辺、設計をどうぞよろしくお願いいたします。
【事務局】  承知いたしました。
【藤井分科会長】  河村委員、お願いします。
【河村委員】  私は、この4月からこの分科会に加わらせていただいたので、よく理解していないところはあるとは思うのですけれども、そもそもこの北極圏で持続可能な利用という部分は何を利用しようとしているのか。先ほど航路という話がありましたけれども、それ以外に一体何があるのか、私にはわからないので教えていただきたいです。
【事務局】  ありがとうございます。
 先生がまさにおっしゃいましたように、近年、北極の氷が溶けてきているということもあり、まず一つはシベリア周りの航路の利用について、実際にどのような可能性があるのかということを調べてきてございます。また、北極域の環境変動は、実は日本あたりの中緯度にまで影響を及ぼしていることが分かっており、そういった気象予報や天気予報の高度化にも通じるのではないかと考えているところです。
 さらに申し上げますと、先ほど社会実装というお話がございましたけれども、GRENEやArCSを行ってきまして、それらで得られた研究成果を社会実装していくということが今回の大きな課題かなと思っています。
 そういった観点で、どういうところが社会実装ということを申し上げれば、この70分の45ページの一番右側のピンク色で書いておりますように、北極のデータを利用した天気予報の高精度化。あとは、北極航路に関しては、氷の観測、厚さの観測、氷の面積の変化などについて、国交省がやろうとしている北極海氷予測システムのほうに生かしていくなど、研究成果を実装していくことが、本プログラムの大きな目的なのではないかなと思っています。
 見延先生がご指摘のとおり、今回、四つの戦略目標がございまして、観測というものは継続が重要であり、後の空白域を埋めていくということで先進的な観測。また、そのデータを利用して、予測の高度化を行い、先ほど申し上げましたような航路の海氷予測システムなどに生かす。こういった観測、予測の高度化の研究成果を社会実装に生かすということで、左からも観測高度化の成果を社会の影響評価や社会実装に生かす。こういう流れで、社会実装のところを特に今後強調していく必要があるかと思っているところでございます。
【藤井分科会長】  では藤井良広委員、お願いします。
【藤井(良)委員】  今の点ですが、これまでもそうですけれども、観測、予測、この分野の国際的な協調というのが、どこの国にとっても共有の成果ということですが、先ほどから議論になっている実装のところになってくると、実際には競争もあるし取引もある。実際に既に起きておりますね。西回りですか、既に航路は動いていますし。その場合のルール化というのは、北極評議会での議論とは別に、それは一つの大きな共通のものでしょうけれども、個々のビジネスケースあるいはアメリカなりカナダなり、ロシアも含めて個別でやるビジネスにどう日本企業が参加するかというのが、既に起きております。もちろんここは研究ベースなので、そういったビジネスベースで話を直にやる必要はないかもしれないですが、ベースになる国際ルール化、あるいは国際協調というものは、研究も実装の段階でもつながっております。そこのところを政府として、国際的ルールという言葉だけで表現するのは、非常に弱いというか、実装の部分はそんなに甘くはないと思います。もう少し我が国の国際的な戦略が全体的に見えてこないと、後手に回るリスクがあるのではないか。もう少し明確な方向感というものを国際的なもの、あるいはバイオを含めて、あるいは官民連携というもので、実はこういうステップを目指しているのだというものを、この会でなくてもいいですけれども、政府として見せてくれないかなと、あるいは取り組んでもらえないかな、と私は個人的に思います。実際は政府として取り組んでおられて、しかし、それはあまり外部には言わなくてもいいということでやっておられるなら、それでいいのですけれども、その辺りはどのような感じでしょうか。
【事務局】  ありがとうございます。資料としましては、70分の47ページを御覧いただければ思いますが、まさに藤井先生がおっしゃったように、北極の重要性を踏まえ、2015年に北極政策というものができました。そして、北極評議会というものに、日本はオブザーバーで参加しているところですけれども、この北極政策を受けて、日本としても、先ほど申し上げました北極海航路の話など、積極的に関与していこうということで、これは文科省ではなく、総合海洋政策本部のほうで取り組んでいるところでございます。
 そこでは、国交省の海洋本部を中心に、官民連携で北極海航路を利用していこうという話でありますとか、水産庁関係では資源保護の観点から北極域の公海における漁業を禁止するという話でありますとか、外務省が安全保障の観点で絡んでいたりといった状況です。
 北極政策には三つのポイントがありまして、研究開発と国際協力と持続的な利用。先ほど、北極評議会に日本がオブザーバーで参加していると申し上げましたが、これは我が国の研究開発力が高く評価されたことも関係しているのではないかということもあり、研究開発で貢献しつつ、北極に官民、特に民間企業が参入していけるような動きを主に総合海洋政策本部が旗を振ってやっているところでございます。
 さらに、先ほどデータの話もございましたが、昨年10月に北極科学大臣会合が開催され、データの共用あるいは提供ということが議論されています。各国とすみ分けを行いながら、また、協力していきながらデータを提供していくということで、ほんとうに政府全体でも北極の利用というのはすごく議論されてきていまして、その重要な一翼を文科省も担っているということかと思います。
【田中委員】  日本郵船の田中でございます。私も今年度から参加させていただいています。
 今の藤井(良)委員の観点に少々近いのですが、参与会議のところで研究開発国際協力、特に国際協力のところですが、こういうのを念頭に置いてやりましょうというところで、その後に四つやることが書いてあって、その下に二つの重点課題となっていますけれども、この中に「国際的な人的ネットワーク」とあります。ここの重点課題の中に、これはお願いになるのかもしれないですけれども、その国際協力をしながら、こういう上の四つの物事を進めるには、いずれにしても現場は向こうですから、国際協力しないと進まないのが多いとは思うんですけれども、それを念頭に置いてやるというふうな、何かしらの文言が入らないものかなと思っています。
 というのは、先ほどの藤井(良)委員の意見と一緒なのですけれども、社会実装だとか船が通るルールだとかになると、いずれにしても一国では決められないことで、国際の場で話し合うしかないので、その前のいろいろなケースで、今、分科会長さんがおっしゃいましたけれども、いろいろな研究開発の場でも、国際協力的なプロジェクトというのは、私はその後すごく効いてくると思っています。ですので、そういう研究開発の段階から国際貢献と国際協力を念頭に、いろいろなプロジェクトを進めていただければと思います。
【事務局】  ありがとうございます。少々記載が良くなくて大変申しわけございませんが、それぞれの研究については、現行のArCSからほとんど北極圏の国との共同研究という形になっておりますので、そういった意味では、全て国際的に研究しているというふうに思います。
 また、二つの重点課題のところも、申し訳ございません、国際というのがあまりにも全体にあり過ぎて書いておりませんでしたので、多少弱く見えてしまうかもしれませんが、まさにこの人材育成についてもできるだけ多くの若手研究者に北極に行っていただいたり、国際的な著名な方を招聘したりとか、情報発信も含めて、国際的に連携していきながらデータ提供を行っていくということを想定しております。
 4番目の社会実装、法政策対応のところも、先ほど申し上げました漁業の条約のようなものに日本として、ルールづくりにどのようにして携わっていけるのかといったことも検討していくということですので、もう少しその辺が分かるように記述を修正させて頂きたいと思います。
【藤井分科会長】  窪川委員、お願いします。
【窪川委員】  窪川です。手短に申し上げますと、まず、やはり今の時期ですので、SDGsとの関連、そこにいかに貢献しているかということを記載する必要があるのではないかと思います。
 それから、もう一つが、人材育成のところでして、今、御説明にもありましたが、国際的に著名な北極研究者を日本から輩出というのはわかるのですが、そのためにはおそらく科学研究に対するプロジェクトもしっかりサポートしなくてはならず、どうやったら若手を育成できるかというところが見えていない中、それがArCSによって何らかの実績等々があって、そこを発展させるというような意味であれば、非常に通るのですが、そこが見にくいという感じがしました。
【事務局】  ありがとうございます。SDGsとの関係については重要ですので、検証したいと思います。
 人材育成のところは、北極の研究を行ってもらうために若手研究者を海外に派遣し、海外の著名な方を日本に呼ぶということですが、とにかく若いうちに海外で経験することが非常に重要なのではないかと個人的に思っており、特に力を入れていきたいというのがこの部分です。
【藤井分科会長】  よろしいでしょうか。では、阪口委員。
【阪口委員】  戦略目標の社会への影響評価のところなのですけれども、北極の自然環境が社会に与える影響もありますけれども、人間社会が北極に与える影響もありますよね。ここは、戦略目標の4でも読めるし、1でも読めるんですけれども、そのフィードバックというか、双方向の影響評価をきちんと把握するというようにうたったほうが、人間活動は無視するよという話にも読めてしまいますし、それから北極航路を開くという人間活動が北極そのものにどう影響を与えるのかとかいうことも、持続可能性を追求するのでしたら絶対重要なファクターだと思いますので、ぜひその影響評価のところは双方向の影響評価をしっかりと行うという方向で考えていただけるとよろしいかと思いますが、いかがでしょうか。
【事務局】  ありがとうございます。例えば、グリーンランドやシベリアなどの現地にいる研究者が、自分の研究をやりつつ、原住民の方とも交流しつつ、自分の研究成果を原住民の方に理解してもらったり、時には手伝ってもらったり、そういう関係がまさに今できつつあります。

そういった現場レベルでの、現地人との交流というのは非常に重要ですので、そのように修正したいと思います。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。大分時間を押していますので、お二人で手短にそれぞれお願いいたします。
【中川委員】  中川です。第3期海洋基本計画ではMDAがあったかと思います、おそらくADSが先にあって、多分MDAが後から出てきたと思うのですが、今回、このポストArCSでは、やはりMDAとの関係について、ある程度、データや情報プラットフォームのところで述べるべきではないのかなと思うのですが。
【事務局】  ありがとうございます。すぐに修正させていただきたいと思います。MDAという難しい言葉ですけれども、私の理解では、使えるあらゆる観測データを各省とか研究機関が協力して集めて、海を中心とした地球の状況を把握していくということだと思いますので、もちろんこのADSのデータもMDAということをうたっていきたいなと思います。ありがとうございます。
【藤井分科会長】  では、谷委員。
【谷委員】  谷です。全体に“加速プロジェクト”に見えない。第2世代に行くのでしたら、社会実装をもっと考えないといけない。このままだとArCS2にしか過ぎないと私は思うのです。
 例えば評価。もう北極はかなり切羽詰まっているという意識がございまして、その北極を何とか救ってあげるために、あるいは新しい地球を探すために政策を動かす必要があるかと思うのですが、そのためには例えば、大臣会合でこの成果を何行書き込めたかみたいなのが指標になるのではないでしょうか。つまり、政策を直接動かすような情報を出していくときに、そこはアウトプットなりアウトカムに持っていかないといけないだろうと。目的のところも目的になっていないと思うのです。目的は何かと。その目的に向かって政策をしっかりとつくり、必要があれば法律をつくりましょうというのがあって、そのためにしっかりとデータをそろえましょうという流れだと思うのです。ですから、これは目的になってないですし、世の中を変えるぞというメッセージにもなっていないような気がするのです。
 それと、もう一つ細かいことを申し上げますけれども、左から二つ目の「予測の高度化」の部分ですが、これをここでやるのでしょうか。北極だけの気候というのはあり得なく、全球でやるしかないので、そうなるとやっている人も、全球モデルでやらないといけないので、北極の世界にとどまらないですよね。航路の話については以前からある話ですので、これとは合わないと思うのです。この「予測の高度化」というのが何でここにあるのか、よくわからないです。「氷の」というならわかりますけれども、気候、気象となると全然違う世界になると思います。
 それから、観測ですけれども、これはとにかく先進的かどうかは置いておいて、特にバイオロジカルのデータなどはほとんど無いも同然ですから、持ってないと物が言えないし、あれば日本はもっと強く物が言えるというところがあるかと思いますので、これは強化すべきだと思うのですが、いずれにしても、それを大臣会合なり何なりでメッセージとして載せられるような研究を行っていくのだという意識でやっていかないと、結局しっかりとした成果も出せずに期間終了ということになると思われますので、「弱いな」と感じました。以上です。
【事務局】  ありがとうございます。谷先生の言葉はものすごい応援ということで受けとめさせていただきたいと思います。
 予測の高度化については、確かに、北極は中緯度にも影響を与えるとされていますので、これは全球のことであり、決して北極域だけではないということはおっしゃるとおりでございます。
 もう一点の加速プロジェクトに見えないというご指摘につきましては、この社会実装というところがこれまでなかったところですので、そこは、一歩進んだところとして気持ちのあらわれと受けとめていただければと思います。
 いずれにせよ、先生のような思いで進めていかないと、本当に実装という部分は難しいと思いますので、頑張っていきたいなと思っています。大変ありがとうございます。
【藤井分科会長】  ありがとうございます。次の議題の関係もありますので、このあたりでご質問等はおしまいにしたいと思いますが、これは事前評価ということですので、お手元の「机上」と赤で書かれている資料3別紙に、ここまでの説明を踏まえて、それぞれの項目について、今後の研究開発を進める上での注意点等々をご記入いただければと思います。
 少し記入していただく時間を設けようかなと思っていたのですが、時間もありませんので、この後の議論を少しお聞きいただきながら記入を進めていただくということでよろしいでしょうか。では、議題としては、次に進めさせていただければと思います。
 それでは、次の議題でありますが、議題5ということで、第6期科学技術基本計画に向けた海洋開発分科会における検討の方向性についてということで、これも事務局から御説明をお願いいたします。


-非公開-


大変活発なご議論をありがとうございました。本日の議題はこれで全て終了であります。一つ、先ほどご記入いただいた事前評価記入用紙を机上にお残しいただければと思います。事務局のほうで回収させていただくことになってございます。次回の分科会は、先ほども言いました10月1日の14時から16時ということでございます。
本日の分科会の議論としてはこれで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。


―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局海洋地球課