海洋開発分科会(第54回) 議事録

1.日時

平成29年8月4日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 平成30年度の海洋科学技術関連施策の事前評価について【非公開】
  2. その他

4.出席者

委員

浦辺分科会長、石田委員、宇都委員、浦委員、榎本委員、白山委員、瀧澤委員、谷委員、辻本委員、津田委員、中田委員、花輪委員、平田委員、藤井輝夫委員、藤井良広委員

文部科学省

大山大臣官房審議官、阿蘇海洋地球課長、小酒井極域科学企画官、満田海洋地球課課長補佐 他

5.議事録

【浦辺分科会長】  10時ちょっと前ですけれども、今日は結構議論することが多いので始めたいと思います。谷委員は少し遅れて来られるということでございます。これから第54回科学技術・学術審議会海洋開発分科会を開会します。今日はお暑いところをどうもありがとうございます。初めに、事務局に人事異動があったということで、御報告をお願いいたします。
【事務局】  御報告いたします。
 平成29年7月18日付で、海洋地球課長として阿蘇隆之が着任しました。
【阿蘇課長】  阿蘇でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【浦辺分科会長】  それでは、配付資料の確認をお願いします。
【事務局】  それでは、議事次第の4.資料というところを御覧いただきながら、資料の御確認をお願いできればと考えております。
 資料1として、本日行います平成30年度の海洋科学技術関連施策の事前評価について、それから、資料1の別紙として、事前評価を御記入いただく記入用紙でございます。資料2-1から2-3まで、本日事前評価をいただきます施策の事前評価票でございます。それから、参考資料1といたしまして、前回、7月に行いました分科会の議事録、参考資料2といたしまして、前回の分科会で御決定いただきました評価の実施について、参考3-1から3-3として、本日行います事前評価のそれぞれの施策の概要資料でございます。
 不足などがございましたら、お申し出いただければと思います。
【浦辺分科会長】  よろしいでしょうか。
 今日は、今、事務局から御紹介がありましたように議題は一つです。平成30年度の海洋科学技術関連施策の事前評価ということで、これは前回の分科会でもありましたように、ある一定額以上の予算が予測される計画、あるいは、この分科会でそれが適当と決めた計画のいずれかに該当する施策について、事前評価を行うということで、今日は三つ出てきております。
 本議題は平成30年度の概算要求の内容にもかかわるために、本日の議事は非公開とさせていただきます。それから、本日の資料と議事録については、概算要求資料の発表後に公開する予定でございます。
 これから事務局より説明をいただくわけでございますけれども、前回のこともあるので、簡単に私の理解を申し上げますと、今日は三つございまして、これから説明いただくわけですが、一つ目が内局予算で、二つ目が運営費交付金、JAMSTECの運営費交付金予算ということで、少し内容が違います。それで、一番上の資料はこの間ディスカッションしていただいた内局予算の部分です。
 それでは、詳しい説明を事務局よりお願いいたします。
【事務局】  それでは、まず資料1を御覧いただければと思います。平成30年度の海洋科学技術開発関連施策の事前評価について、本日行います事前評価についての流れについて記載をしたものでございます。
 本日、1.の対象施策というところを御覧いただければと思いますが、総額が10億円以上と見込まれる新規の拡充施策、又は、本分科会において評価することが適当と判断されたものについて、事前評価を行うこととしてございます。今回、事務局で検討させていただきまして、計3件の施策が該当することとなりましたので、それぞれについて評価をお願いしたいと存じます。
 評価の方法でございますが、この後、各施策につきましてヒアリングを実施いたします。それを踏まえまして、委員の皆様におかれましては、資料1別紙の事前評価記入用紙に御記入をお願いしたいと存じます。
 評価の様式につきましては、本日回収させていただきまして、事務局で総合評価案というものを作成させていただきます。総合評価案は、委員の皆様にメールでお諮りいたしまして、最終的には8月31日をめどに、分科会長了承の下、取りまとめを行いたいと存じます。
 本日のヒアリングにつきましては、説明時間は10分、質疑応答は12分、その後、評価の記入として8分、計30分、3施策について行いたいと存じます。
 また、お配りしております参考資料2の4.の留意事項というところに、評価に関する利益相反の考え方がございます。本日、海洋研究開発機構の実施する施策が評価の対象となっておりますので、恐縮でございますが、白山委員におかれましては、その評価には参画しないということにさせていただきたいと思います。
 また、本日は概算要求の内容にも関わりますもので、概算要求の内容は8月末をめどに取りまとめて公表する予定となっておりますので、本日の資料や説明内容の取扱いにつきましては、御注意いただければと存じます。
 説明は以上でございます。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、早速、第1番目の説明をお願いします。
【事務局】  それでは、先ほどの御説明にもございましたように、本日は三つの事項がございますけれども、まずそのうちの一つ目、内局予算について、事務局から御説明させていただきます。
 参考資料3-1、それから、事前評価票につきましては、資料2-1でございますけれども、説明は参考3-1のポンチ絵を使いまして、御説明させていただきます。
 海洋情報資源把握技術開発事業でございます。
 まず、施策の背景でございます。海洋状況把握(MDA)の基礎となります海洋情報の収集・取得に関する取組を強化し、海洋空間を有効利用するための情報資源として活用していくことが重要であると書いてございます。
 二つ目のマルでございます。海洋生態系や海洋環境等の情報は十分には観測・計測が行われていない。また、効率的に観測・計測するための技術が存在していないことがあるということ。
 それから、施策の背景の三つ目のマルでございますけれども、国連の持続可能な開発目標等におきまして、海洋酸性化、生物多様性、海洋ごみが今後解決すべき課題として取り上げられていること。
 四つ目のマルでございますが、BBNJに関する国際的な法制度について、国連の作業部会において議論が始まるところであり、科学的な観測データの収集は喫緊の課題となっていること。
 以上四つのことを背景としまして、既存プログラムで研究開発されたモニタリング技術とかセンサ技術等の成果も積極的に活用しながら、我が国の産学官の技術力を結集して、海洋情報をより効率かつ高精度に把握する革新的な技術を検討し、具体化するとともに、我が国の産業競争力の強化に貢献するということが、この施策の背景でございます。
 続きまして、施策の概要です。大学等が有する高度な技術や知見を幅広く活用し、海洋情報をより効率的かつ高精度にリアルタイムで把握する革新的な観測・計測技術を研究開発するということで、今後重要性が増す海洋観測を行う民間企業等の産業競争力強化にも貢献するものであると考えてございます。
 その下に対象となる観測・計測の例が書いてございますけれども、海洋酸性化・地球温暖化、生物多様性に係る事項、海洋ごみに係る事項等を想定してございます。
 次の技術的な現状でございますけれども、データの時空間密度が小さいこと、無人プラットフォームによる観測実績が少ない等々を現状として認識しております。
 また、研究開発の目標として、時空間密度を上げるため、連続的かつ効率的に観測・計測する機器の開発をすること。また、無人プラットフォームによる観測に向け、センサ機器の小型化・省電力化を図る。それから、効率を向上させるため、サンプルを自動分析する手法の開発をすることを、研究開発の目標として想定しているところでございます。
 最後、波及効果・将来像のところでございますけれども、この背景に対応するように、こうした技術開発を通じて我が国の海洋状況把握(MDA)に貢献すること。また、海洋探査機へセンサ搭載を促進し、海洋調査の加速化、それから、産業競争力の強化に資すること。また、国際的な海洋ガバナンスを構築するということを、将来像として想定しているところでございます。
 また、資料2-1が事前評価票になります。ここの3.の研究開発計画との関係が1ページ目、それから、2ページ目に課題の概要ということで、今ポンチ絵で簡単に御説明したことを記載してございます。4.の各観点からの評価につきましても、同様に詳しめに記載しているところでございます。
 4ページ目をお開きください。4ページ目の(3)効率性でございます。この部分はポンチ絵でカバーされてないところですので、御説明申し上げます。
 計画・実施体制についてです。公募による研究開発にあたっては、外部有識者から構成される外部評価委員会において計画・実施体制の妥当性を審査するとともに、その後も事業が適切に運営され、目的が達成されているかについて評価を行うこととしてございます。
 委託機関自身においても研究開発の手段やアプローチの妥当性について定期的に議論を行う予定であり、研究開発計画・実施体制、手段及びアプローチについて妥当性を評価することを想定しているところでございます。
 この内局予算につきましては、平成20年度から海洋資源事業新技術開発プログラム、また、平成25年度から海洋鉱物資源広域探査システム開発などを推進してまいりましたけれども、同様の実施体制、リスク管理などを盛り込んだ実施体制としたいと考えてございます。
 議題一つ目の海洋情報資源把握技術開発につきまして、事務局からの説明は以上でございます。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございました。
 30分で話を聞いて質問して書き込むという大変に厳しい時間割になっておりますが、これに関して何か質問があれば。
 谷委員、どうぞ。その後に藤井委員、お願いします。
【谷委員】  ありがとうございます。2点お伺いしたいと思っております。
 課題名、海洋情報資源把握技術開発、この「資源」とは何を意味するのでしょうか。情報資源という意味でしょうか。情報資源だとしますとちょっとイメージが違うなという気がするんですが。「資源」はなくても意味は通るし、「資源」があるとミスリードのような気もします。それが1点目です。
 2点目、資料2-1の最後のページ、4ページの1パラの4行目、「JAMSTECが開発している海洋プラットフォームへの搭載を目指す」、これはこれに限定しているということでしょうか。それとも、そうではなくて、そういったものを含む海洋プラットフォームということでしょうか。JAMSTECの開発されているプラットフォームにターゲットを絞ったというふうに読めるんですが、そういうことでいいんでしょうか。
【浦辺分科会長】  では、お答えを。
【事務局】  ありがとうございます。
 この海洋情報資源把握技術開発の「資源」ということでございますが、これまで鉱物資源にフォーカスして事業を推進してきたところですけれども、今回、先ほど観測・計測対象の例という形で海洋酸性化・地球温暖化での生物的な反応の情報を取るということで、必ずしも鉱物資源に限定したものではなく、広い意味で資源として考えているところでございますけれども、こちらにつきましては、何か特定のものをイメージさせるという御指摘でございましょうか。
【谷委員】  「情報把握」というのは情報がどうなっているか把握するということですけれども、「情報資源の把握」と読んでしまいますと、例えばどこどこのデータセンターがこんな情報を持っていて、どこどこのデータセンターはこんな情報を持っていてということで、それぞれの情報としての資源がありますけれども、そういうものを把握するのかと。御説明の趣旨は私が思うに海洋現況把握だと思うんですね。海洋現況情報把握とか、そんな感じだと思うんですよ。「情報資源」は、私、昔情報をやっていたものですから、すごくミスリーディングな気がいたします。
【事務局】  ありがとうございました。
 種々のデータベースのアーカイブ化をするとか統合するようなイメージに捉えられてしまうのではないかという御指摘ですね。どうもありがとうございます。課題名につきましては、中で検討したいと思います。
 それから、二つ目でございます。資料2-1の4ページ目の上から4行目に「JAMSTECが開発している海洋プラットフォームへの開発機器の搭載を目指す」と書いてございますけれども、これはこれを含みということでございまして、前段の「また、これにより開発された成果の民間企業への技術移転や」というところで、必ずしもJAMSTECだけが開発するということを想定していることではなくて、民間企業への技術移転ということも想定してございます。
【谷委員】  御趣旨は了解いたしました。
【浦辺分科会長】  では、藤井委員、お願いします。
【藤井委員】  一つ目は確認、二つ目は同じ質問だったのでずが、確認なんですけれども、これはデータを取るところをやるという御提案だという理解でよろしいでしょうか。つまり、先ほど「情報資源」という議論もありましたけれども、情報を取得してきて、実際に何か使うにはそれをためておくなりそれを解釈するステップが必要になりますけれども、そこのところはひとまず置いておいて、まずは観測・計測するところをやるという理解でよろしいでしょうか。
【事務局】  ありがとうございます。
 タイトルで「情報」というところが特出しされておりまして、そこがあるからかもしれませんけれども、例えば観測データを使える、利用できる情報に変えるというところ、データベースを作ったりとかアーカイブ化したりとか、そこまでは想定しておりませんで、こちらにつきましては、ポンチ絵の施策の概要のところで書いてございますけれども、革新的な観測・計測技術の研究開発をするということを施策として想定しております。
【藤井委員】  前回もここのところは発言したような気もするんですけれども、リアルタイム性を重視するとすると、情報をためておかなくても、少なくとも情報を伝達する手段を考えておかなくてはいけないですよね。ここには「リアルタイムで」となっていますので、リアルタイムで把握するということになると、そこで取ってきた情報を伝達して、ある程度の範囲でまとめて、取得した情報は何を意味するのかということを見られるようにしておいた方がいいような気がするのですけれども、その辺りはいかがなんでしょうか。
【事務局】  ありがとうございます。
 まだ、施策をどこまでどうするか、予算の規模の問題と関係してまいりまして、どこまでをオープンにするのかというところも含めて検討する必要があります。ただ、少なくともこれまで要素技術開発を進めてきたところですので、そこのところは対象を広げながら開発を進めていきたい、継続していきたいと考えておりますけれども、データの蓄積・集積、あるいは、伝達するという、どこまでこの施策の中で実施できるかというのは、予算規模なども含めてまた検討していきたいと思っております。
【藤井委員】  データを取るところに重点があるというふうに理解すればよろしいですね。ありがとうございます。
【浦辺分科会長】  今の藤井委員の御質問に関連するんですが、前回の分科会では、例の基盤ツールの後継ではないですけれども、基本的枠組みとしてはそういうふうな枠組みの内局予算だという理解ですが。前回のときは年数億円程度という額だったわけですが、それに比べて額が大きくなるのか小さくなるのか、そこら辺の感覚はいかがですか。答えにくければあれですが。
【事務局】  ありがとうございます。
 前回御説明あるいは御議論させていただいたときから比べますと、厳しい状況になってきているというのが事務局の実感するところでございます。
【浦辺分科会長】  ありがとうございます。
 額的なものも考えないと、これを全部やるとすごいお金になってしまうので、そういうふうなこともちょっと頭に入れて皆さん記入していただければと思います。
 津田委員、何かありますか。
【津田委員】  これ5年ですよね。SDGsが2025年から30年で、BBNJが今後5年から10年ということを考えて、中目標とか背景にあるように、データを取って、それを生かすということが重要になってくると思うんですが、実際ここでやることは技術開発、生産開発、モニタリング手法の開発ということで、本当にこのタイムスケジュールの中で貢献できるのかというのが少し疑問に思いました。
 だから、ダイレクトにセンサ開発をこれからするという部分じゃなくて、SDGsとかBBNJに生かせるようなデータを取ると、それを生態系の解明とか交渉に生かすようなパーツも非常に重要なのではないかと思いました。これは海洋の重要なことを幾つも書いているのですばらしい計画だと私は思ったんですか、その目標を使って全部センサに持っていくというところに、若干の違和感を覚えたのが私の感想です。御検討いただければ幸いです。
【辻本委員】  辻本です。
 これを見させていただいて、具体的にはいろいろ考えられていると思いますが、ここにありますように、海洋の酸性化・生物多様性、海洋ごみなどの今後解決すべき課題ということで、こういう課題を解決する上でどういうデータが今具体的に不足していて、そういうものをどういうふうに収集すればいいのかと、そういうような原点のところがここにはあまり書かれていないので、そういうものを踏まえて革新的なセンサを開発、そういうことなんでしょうけれども、その辺りがこの資料だけではちょっと見えにくいということと、革新的な技術として具体的にどういうものを革新的と位置づけて開発されようとしているのか、一例があれば教えていただきたいのですが。
【事務局】  ありがとうございます。
 一つ例を挙げさせていただきますと、観測対象として海洋ごみというところでで、マイクロプラスチックのことになりますと、今言った海洋にネットを入れて、それを乾燥させて、それを一つひとつ人間の手で、ピンセットでつまんで、実際どれくらいそこに含まれているかといったような、非常に時間のかかる上に、さらに負担も多いといった状況にあるということを聞いてございます。
 一方、pHセンサとかDNAシーケンサーとかは、技術的な部分は既にできているところもあると聞いております。そちらについては、例えば小型化するとか、先ほど申し上げたとおり、プラットフォームに搭載する上で小型化、さらには省電力化といったところの技術開発を行っていただければ、より効率的な観測につながるのではないかと考えております。
 先ほど説明一通りいたしましたが、海洋ごみの方は、そういったとおり、今観測自体がかなり困難な状況になっておりますので、そちらについてもう少し簡易にデータ化する技術、観測技術などが早くできないかといったところで、少し例を挙げさせていただいたところでございます。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございます。
 そろそろ時間的に記入の時間に入りつつありますが、お手元の紙に書いていただく。それから、最終的には、先ほど事務局からありましたように、8月の末ぐらいに集約してこの委員会の評価結果のイメージを作るということになっております。今日が最後のインプットではありませんけれども、まず今日これをやって、まとめてというふうに進めて……。追加の説明等はしていただいて、そのほかの委員は記入していただくというふうにしたいと思います。
 では、瀧澤委員、お願いします。
【瀧澤委員】  瀧澤です。
 今書きながら思ったんですけれども、実施体制というのは今日説明ありましたでしょうか。具体的には公募をかけてやりたい研究者の方がやるのか、それとも何かもう決まった実施体制みたいなものがあるんでしょうか。
【事務局】  ありがとうございます。
 参考資料3-1にあるのですけれども、資料2-1の事前評価票の4ージ目に実施体制の御説明がございます。(3)の効率性のところです。「公募による研究開発にあたっては、外部有識者から構成される外部評価委員会の行う評価」ということで、まず公募をすること、あるいは、客観的な御評価をいただくこと、また、これまでの事業でも御説明があったんですけれども、採択課題につきましては、フィージビリティスタディなどを実施してまいりました。また、同様のところで、我々自身も網羅的に、先ほど御説明したように革新的な技術全てを把握しているわけではございませんので、こうした公募を通じて我々の意図に合致するような、新しい技術開発の課題を抽出していくことができたらと考えております。
【浦辺分科会長】  これについて、最終的に事務局で総合評価というのを取り入れることになっていますが、今日のコメントの中に評価は例えばAであるとかBであるとかいうことも書いておいた方がいいでしょうか。それぞれの項目で例えばこうした方がいいということがいっぱい出てくると思うんですけれども、全体的に1については必要だとか、その辺のことは……。
【事務局】  ありがとうございます。
 5.の総合評価のところに、実施の可否の別とその理由、中間評価・事後評価の実施時期、今後研究開発を進める上での注意点など書いてございます。そこで、A、B、Cというような段階的なところまでは想定しておりませんので、実施の可否、あるいは、事務局として非常に助かりますのは、今後こうした事業を実施していく上での注意点、留意すべきことなど、先ほど津田先生からもこういったことについて検討をすべしという御意見を頂戴しましたけれども、こういった公募するのに当たっての御意見を頂戴できますと非常に助かります。
【浦辺分科会長】  これについては、先ほど藤井委員の御発言にもありましたように、前回こうしたらいい、ああしたらいいというような様々な意見が皆さんから出されました。例えば、藤井委員ですと、データをまとめた後それをきちんと、ここで言う「資源化する」というか、「価値化」という方が言葉として適当かもしれませんけれども、情報の価値化を進めるための方策もやれとかいろいろな御意見がありました。浦委員の方からは、無人化、自律化、自動化というふうなことがキーワードであるとか様々な御指摘がありましたので、そういうところは、今回の議事録も出ておりますので、それはぜひ事務局としても考えていただいた上で、今日更にコメントをいただくというふうにしていただければありがたいと思います。
 そろそろよろしいですか。まだかかりますね。
 では、もうちょっと時間を、2、3分とらせていただきます。
 そろそろよろしいでしょうか。
 それでは、続いて2番目、北極域研究船の建造について、事前評価をお願いしたいと思います。
 本施策は、先ほど事務局から御説明がありましたように、白山委員については評価に参画しないということでございますが、そのほかの方で利益相反があるので参加しないという方はおられますか。特におられませんね。
 それでは、利益相反の問題があるので白山委員については評価には参画しないということで、海洋研究開発機構よりこの点について御説明をお願いいたします。
【河野センター長】  それでは、北極域研究船の建造につきまして、御説明いたします。海洋研究開発機構の河野と申します。お手元の参考資料3-2、分厚いですけれども、最初の8ページほどを使って概要を説明いたします。
 まず、最初に北極海観測の重要性についてでございますが、北極域は地球温暖化に対して極めて敏感に応答しておりまして、その環境変化は予測を上回る速さで進行しております。
 例えば、そのページの下、左側の図を見ていただきますと、北極点付近の結氷期の気温の平均値が書いてありますが、1990年以降急速に上昇していることが分かるかと思います。また、その隣は夏の氷の面積の推移をあらわしておりますが、2000年以降急速に減少しておりますし、数年に一回夏季海氷面積の最小値を更新したということが報道などでも発表されております。
 このような北極域の環境や気候の変化は、例えば我が国を含む全球気候変動にも影響を及ぼしておりますし、さらには生態系の変化、あるいは、北極海航路の利活用の拡大とそれに伴います生活や社会活動への影響など、様々な課題に対して大きな影響を及ぼしています。
 また、北極域の環境変動は、海洋酸性化の進行、あるいは、海洋(水産)生物の移動など、この後他の海域で生じるかもしれないことを先取りしている可能性もございます。さらに、北極域航路の利活用や資源開発の可能性など、国際的にルールを作っていかなければいけないような状況も挙げられておりまして、政策面でも重視されていて、我が国では北極政策を策定してきたところでございます。
 次のページで、そのような状況にあって我が国の北極海観測の現状はどうかと申しますと、海洋研究開発機構で運用しております「みらい」が北極域の観測研究を担当しております。
 右下の写真ですが、ポーラークラスと言います。極域航行船の資格で言いますと、一番下のクラス、PC7の砕氷船です。氷を割れませんが、薄い氷があるところでは運航ができるという船です。98年以降これまでに14回の北極航海を実施しておりまして、間もなく15回目が開始されるということです。
 左上の図が、「みらい」がもっとも北までのルートで、北緯79度11分というのが記録でございまして、これより北には、我が国では今のところアクセスする能力がないということになっております。
 また、右側は昨年の航海で、真ん中にあるホープ岬を北上していって観測を実施する予定でしたが、あまり厚くない氷ですが、阻まれまして、ハロー岬沖を迂回するということをとらざるを得なかったということです。
 このような状況でありますが、これまで「みらい」によりまして、北極域による低気圧活動の活発化であるとか、あるいは海氷減少が周り回って我が国に豪雪をもたらすというような影響、あるいは生態系に関しましては、海氷融解に伴ってかえって活発化するというような結果であるとか、反対に酸性化の進行によって炭酸カルシウム殻が実際に生物においては溶けているような現象が起きているということを確認したりしております。
 次のページにまいりまして、このような結果を踏まえて、今後どのような研究を推進すべきかを検討したものがこちらのページになります。上段はどちらかと言えば理系の研究、理学系の研究ということになります。詳細は省略させていただきますが、この段階によって広がる結氷・融解域における様々な現象を解明していくという研究、あるいは、夏季海氷減少のメカニズムについて、更なる詳細な研究というものが提案されております。
 また、中段はどちらかと言えば工学的な研究ですが、北極海航路の活用に資するための海氷予測の高度化。これには海氷の観測が必須であります。それから、氷海航行がこれから増えていくことが予測されますが、その建造技術の高度化、また、それに資する船体挙動の研究ということで、船舶工学的な研究が必須になっていくだろうということが言われております。
 下段は、これまで日本ではあまり行われていなかったもので、海底下にアクセスできるようになりますので、北極古海洋研究とか北極域のテクトニクスの解明に係る研究も更に活発になっていくのではないかということが言われております。
 次のページにいきますと、北極海というのは基本的にデータの空白域で、海氷が融解してアクセスできるようになってきましたので、北極海を横断するような線を設定して、海面から海底まで、水温、塩分のみならず様々な化学成分を精密に観測するという機運が高まってきております。1990年代にワールド・オーシャン・サーキュレーション・ステーリング(WORST)の研究計画がございましたけれども、御存じの方はそれの北極版だと理解していただければ結構だと思います。
 例えば、ここにあります黄色い測線が提案されていますけれども、現在「みらい」は、真ん中にあります赤い点までしか行けません。ということで、文部科学省では、平成28年度に北極域研究船検討会を開催しまして、これらの現状を踏まえ、更なる研究推進のためには砕氷機能を有する研究船が必要であるという結論に至りました。そして、平成29年度にJAMSTECでその詳細の調査検討を行っているところでございます。
 次のページにその検討の方針が書かれております。JAMSTECにおける北極域研究船に係る調査検討としましては、我が国初の砕氷機能付きの研究船となることから、概念設計のみならず、法規制、運用体制まで含めて網羅的に調査検討を実施していきます。
 調査検討にあたっては、我々だけではなく、有識者にも御協力いただく体制を構築しております。
 また、機能設備の検討にあたっては、理学・工学のみならず、人材育成などを含む広い観点から検討をしております。
 この資料19ページ目に詳細を書いておりますけれども、文部科学省による検討結果を踏まえて、観測環境・運用条件等の調査、それから、北極域研究船の機能・設備、研究船の運航及びヘリコプターの運用、北極域研究船の運航・維持費用に係る検討の4項目について、調査を実施しております。
 その次のページでございますが、その中から浮かび上がってきた北極域研究船の主要目等のイメージが書かれております。主要要件といたしまして、「みらい」で現在実施しているレベルの高精度・多項目の観測が可能であること。それから、貴重な極域航行船として、船体のモニタリング機能、あるいは、船員などの教育機能を有すること。それから、十分なラボスペース、優れたネットワーク等の研究・分析環境を有すること。また、海氷域における必要十分な砕氷・耐氷性能を有すること。また、ROV、AUVをはじめとする大型の観測機器の運用が容易にできること。これらが機能になります。
 また、十分な定点保持機能や効率的な推進システム、低燃費・省エネ等の工夫を施しまして、単に北極海のみならず、その周辺海域においても十分な観測能力を発揮できるようなコンセプトとしております。また、安全確保や海氷観測のためにヘリコプターを使うわけですが、これにつきましては、保有するのではなく、必要なときに都度チャーターするような体制ということで、運用する設備を有するというコンセプトにしております。
 これらを実現するために、全長約120m、幅22m、高さ15m、喫水8m程度のサイズの船で、砕氷能力としましては、平坦な1年氷で厚さ1.2mのものを3ノットで砕氷しながら進んでいけるもの。先ほどのポーラークラスで言いますと4相当、多年氷が一部混在する海域で通年航行可能というレベルであります。乗員については、人材育成も考えまして90名程度、これは乗組員も含んでおります。建造費ですが、見積りとしては約338億円。運用経費としては、現在のあらあらな概算によりますと約28億円相当になるのではないかと見込んでおります。
 次のページに検討スケジュールの想定が書いてあります。平成30年度に基本設計に着手いたしますと足かけ5年で、平成34年に完成し、海上公試にこぎ着けるというような計画でございます。
 最後の8ページ目に設備の想定の詳細が記載されております。これは逐一やりませんけれども、研究設備や船体設備、観測機器については、例えば現在の「みらい」にあるような、対応が広範にわたる観測が可能な観測船としての機能を有した上に、氷厚計あるいは船体モニタリングを可能とするような極海観測設備をつけ加えまして、さらにはヘリコプターの運用、そして、無人機などを運用できるような設備を有する観測船にするというのが全体のイメージでございます。
 以上です。
【浦辺分科会長】  どうも説明ありがとうございました。
 何かございますでしょうか。
 谷委員。
【谷委員】  ありがとうございます。
 ヘリコプターについて教えてください。ヘリコプターを使って移送するというのは、どういうものを、どういう場所で、どういうふうに移送するというイメージをお持ちなんでしょうか。もちろん表面の氷況を見るためにヘリコプターは非常に有効であるということは承知していますけれども、それは無人機がいらなくなってしまうということで、有人のヘリコプターを持っていないといけないという理由がよく分からない。南極だと輸送するというのがあるんですけれども、北極は一体どこに必要であるというのを、具体的にどういうことを検討されているんでしょうか。
【河野センター長】  例えばですけれども、EM氷厚計などは、ちょっとサイズが大きくて、ドローンで何とかという形にはならないというのが一つと、それから北極船を氷の中で基地としまして、周辺の氷状を観測したいという場合については、人を含めて運べる可能性がある。それから、ちょっとルートを今調整中なので詳しく申し上げられませんけれども、安全確保の面からも、氷の中に進入していくときにはヘリコプターが1台ないと安心ができないということがございます。
【浦辺分科会長】  花輪先生。
【花輪委員】  花輪です。
 質問の内容は、運用形態は既に議論されて、大体こういう形で運用するというお考えだったんでしょうか。運航費、運営費が年間数十億円かかるということを既に見積もっておられるようですけれども、ミッションオリエンテッドでこうやります、それから、公募型ではこうやります、海外ヘリもお貸しします、それから、北極域にとどまらず周辺海域でも活躍できるようにこんなふうに考えていますと、もしもそういう運用の形態がもう議論されているんでしたら、教えてください。
【河野センター長】  公募で運用するかどうか等につきましては、現在検討中ですので、ここでこういうふうにやるという確固たる方針があるわけではございませんが、運航費を見積もるにあたりましては、現在の「みらい」の運航を計算しまして、北極域の運用65日、その他赤道や南極大陸の方にも行く、概ね215日程度の運用をした場合という前提をつけて、油代とかもある年のものを参考にして算出しています。
【浦辺分科会長】  では、中川委員。
【中川委員】  その場合に、「みらい」と比べてこれが増えているのかどうか。要はこれが起こることによって、ほかのJAMSTECが運用されている調査船等に影響が出るのかどうか、その辺を教えてください。
【河野センター長】  運航費の見積額は「みらい」よりは若干多いです。
【浦辺分科会長】  それでは、藤井委員、それから、津田委員の順で。
【藤井委員】  二つありまして。
 今のお話に関連するんですけれども、要するにフリート全体との関係でどうなってくるのかというのがちょっと分からなかったのと、これはもともと極域なのでAUV等々を使って展開するという議論もあったと思うんですが、それとの関係はどういうふうに、例えばAUVについてはどういうものを想定していますでしょうか。
【河野センター長】  後者については私たちでお答えできるんですが、AUVについて確固としたもの、これを皆さんのために運航していくんだというものはまだございませんが、汎用的なもの、あるいは実績のあるものを共有して、氷の下の観測を目指すという方針にしております。
 それから、比較的簡便なものについては、この後少し説明があると思いますけれども、研究開発の延長で効率化が図れるものを計画しております。
 その他は、この後ニーズ調査をしまして、もし必要であればAUVの複数台展開を視野に入れた設備を整えていくということで、今回の予算の中に大規模なAUVそのものを買うお金というのは含まれておりません。
 フリート全体については、この船が……。
【浦辺分科会長】  先ほどの「みらい」との関係がどうなるかという御質問にもなってくるんですけれども、どういう考え方になるのかと。
【事務局】  JAMSTECの立場を申しますと、何かの代替ということではなく、北極政策を実現するために必要な船舶ということで、とりあえず理解をしていただければと思います。
【浦辺分科会長】  では、津田委員。
【事務局】  先に事務局から補足させていただきますけれども、事前評価票の7ページ目に、先ほどプレゼンの中にもありましたけれども、今回の研究船につきましては、北極域に特化した船というだけでなくて、北極以外の海洋の研究観測にも対応できる研究船にしたいと考えてございます。建造後の運航につきましては、現行の「みらい」の運用を含めて、全体としてどう運航するかについては、検討を進めていきたいとは考えております。
 以上です。
【浦辺分科会長】  それでは、藤井良広委員。
【藤井良広委員】 資料のところで、連続砕氷能力1.2m、3ノットという点ですが、もう既に民間で通年型の砕氷LNG船が開発されています。それを見ると砕氷能力が2.1となっています。また操業も通年です。もちろんこれから温暖化が進んで氷が薄くなるのかもしれないですけれども、(国の研究船の能力として)これぐらいでいいんでしょうかという気がします。その辺、技術的にはどうなのでしょうか。
【河野センター長】  確かに議論はされておりました。補足資料の23ページを見ていただきますと、上の左側の写真が「みらい」の現状ですけれども、今、実際左側みたいに薄い氷が一面にあれば何とかなるんですけれども、右側のようにちょっとバンドがあるだけで排除しなきゃいけないという状況で、こういったプラスアルファのところということを想定していまして、そのために左の下にあるように一応越えられるところが必要になるということで、議論の結果1.2mというところが、上を目指せば、目指すところとトレードオフで、ほかの観測ができなくなってくるので、1.2mが妥当だろうというのが我々の調査の結果の結論です。
 北極のことを考えればもっと大きな船でということもあり得るんでしょうが、燃費その他も全て考慮しますと、ここが一番よろしいところというのが判断です。
【浦辺分科会長】  ほかにございますか。
 それでは、石田委員。
【石田委員】  石田です。
 5ページに書いてある「機能設備の検討については、理学・工学のみならず、人材育成など広い観点からの検討」というのが、ちょっと意味が分からなかったので説明していただきたいなと。特に今までよりも強化しているのか、それとも、今までのことをやるのかということなんですか。
【河野センター長】  人材育成のうち、若手の研究者の育成であるとか、そういったことについては今までと同様です。それを実施するためにはある程度の研究員の手が必要です。 新たな観点としては、極域航行船ですので、例えば船員の養成などについて、現在日本の船で船員を養成するためのコースを作ることができなくて、そういったことにも北極船を使っていけるのではないか、そういうことを考慮しています。
【浦辺分科会長】  谷委員。
【谷委員】  ありがとうございます。谷でございます。少し気になったので、追加の質問をさせてください。
 北極、赤道とか南極あたりのコースを回るということですけれども、砕氷能力を持たせて赤道に行くというのは無駄な投資だと思うんですね。資料2-2の7ページの観測能力・観測機器と書いてあるところの二つ目のパラグラフのところに、「必要に応じ北極域以外にも対応できる、また、運航にあたっては、海洋機構が保有する船舶の運航体制全体に留意する」と書いてございますけれども、例えば赤道に行くというのは海洋機構が持っているほかの船でできるはずで、砕氷機能を持たせた船をわざわざ赤道に導入するというのは無駄遣いだと思います。
 ですから、砕氷機能を持たせるならもっと、北極が大事だといって始めているわけですから、北極に注力する。そのかわり、ポーラークラスの船や、例えば、横長の資料で活躍しているほかの国のほかの船をどうなのか見てみると、そうすると砕氷能力はあるんですけれども、北極をやるための船ということからすると、PC2とか3が要るんじゃないですか。
【河野センター長】  まず、毎年必ず赤道に行くために造っているわけではなく、全体を見たときに、赤道に行くようなことがあったときに耐えるものということを考えております。
 無駄な投資の意味、ちょっと分かりませんが、船型を工夫することによって燃費的にはそんなにひどく不利な状況にならないような船型を考え、もしそれが燃費だということであれば、無駄というようなレベルのものにはならないと思っています。
 あとは……。
【谷委員】  ポーラークラスは……。
【河野センター長】  ポーラークラスですね。24ページを見ていただくと、最近北極をターゲットとした観測船ですと、必ずしもポーラークラスが高くてがんがん行くというようなものはなく、かつ、24ページの上の段が比較的新しいもので、下の段が古いものですけれども、そういうものはなくて、例えばKronprins Haakonなんかは南極に行くのを想定されているものですので……、あ、違う、Attenboroughとか、そういうものについては南極に行くのを想定されているので、北極で使うことがメインであればPC2とか3の方がむしろ課題があるというのが議論での結論でした。
【浦辺分科会長】  造船屋さんの浦さん。
【浦委員】  今の解氷というか砕氷機能を設計的に考えることによって燃費の向上ができるということをおっしゃっていましたが、現状、日本の国内でそういう研究をしているところはございません。ですから、そういう設計は一体誰ができるんでしょうか。どういうふうにお考えになってそういう船ができると思っていらっしゃるんでしょうか。
【河野センター長】  ちょっと実名は上げられないですが、議論の場ではそういう方向の検討をするということをおっしゃっているところがあって、実績その他を考えてそうだろうなと思っています。
【浦委員】  本当でしょうか。
【河野センター長】  はい。できるかどうかの証明は私にはできませんけれども、そういうことをおっしゃっているところがあって、それなりの研究をそこではなさっているということは……。
【浦委員】  船型設計というのは非常に難しい分野で、特に海氷というか氷がどういうふうに船底を流れていくかとかいうデザインは、日本の中でこれまでやったのはK社と隣に座っている国研しかありません。そこもこのところ研究はほとんどしていないというのが実情だと思います。K社についてはやってないと思います、研究施設は閉鎖しているのではないでしょうか。隣に座っている宇都さん……。
【宇都委員】  某社さんは、今まで南極観測船の「しらせ」等を建造されておりますし、施設も稼働しています。
【浦委員】  そうですか。
【宇都委員】  はい。今ちょうど大規模改修中でございますが、来年度から稼働させるということで、継続的に試験研究を実施していますので、そこは私どもも期待しています。
【浦委員】  私は非常に不安に思っています。
【浦辺分科会長】  津田委員。
【津田委員】  申し訳ないんですけれども、私やっぱりこの北極船が本当に必要な船だと思えません。右肩上がりでどんどん予算が増えているときだったら、ぜひ日本も砕氷船を持って、北極研究をどんどん推進すべきと思いますけれども、いろいろ厳しい中でこれからの海洋の研究や技術開発を考えたときに、北極にこれから重きを置くというのはやっぱり私は納得ができない。
 例えばどういう研究があるかという、テーマ例というふうに出てきますよね。例じゃなくて、もし出すなら、この船ができたらこんなにすばらしいことができるという柱みたいなものを出してもらって、みんながそこに夢を感じられるような形で。これは例で、どこの海域をとったってこのぐらいの例は書けるような気がするんですよ。船を造ると30年とか40年使うわけで、本当に40年間分の領収書が書ける、みんなが納得できるというふうには思えない。非常に極端に言えば、北極研究には平朝彦がいないと僕は思います。だから、そういう強いものを感じない。全体のフリートの関係というのを皆さん言っていますけれども、それが圧迫する可能性を非常に危惧します。
【浦辺分科会長】  大変厳しい御指摘がありましたけれども、もう一つ、例えば、砕氷船を周辺の国から傭船して、砕氷船に先導してもらって航海をするということが普通だと思うんですが、今回のオペレーションは自分で割りながら観測もしながらというアイデアなのでしょうか。
【河野センター長】  そういうアイデアですが、砕氷船にエスコートしてもらって北海域を輸送のために航行するというのは非常に頻繁に聞く話ですが、エスコートしてもらいつつ、自分で自由に観測をするというのが、そんなに通常の例とは必ずしも思いません。それから、砕氷船を保有して北極に行ける国であればそういう運用も可能で、確かに極域の、北極の沿岸国はそういう体制を敷いているような例がありますけれども、我が国の場合はそういうのはできない。
【浦辺分科会長】  もちろん日本には砕氷船がないので、それはできないでしょうけれども、沿岸国の砕氷船を借りて、例えばIODPでも、掘削したときは2台砕氷船を借りて、定点保持をしながら掘削をしましたよね。その場合には砕氷能力はない船でやったわけですけれども、今回は耐氷ではなく砕氷を持たせなければならないのは、そういうふうなオペレーションが不可能であるとか、コスト的によくないとか、そういうことがあったんでしょうか。
【河野センター長】  初期の議論では、基本的にそれだとこちらの自由度が非常に狭くて、研究計画をきちんと組めないというのが大きな障害であるということを研究者が言っています。IODPは何年もかかって計画して買ったんですよね。実際、我々も傭船したことがありますけれども、我々のためにだけ全船を傭船するということはコスト的にも難しくて、結局のところ誰かの研究計画に便乗することを研究者は多くしていて、その中で優先順位がどうしても高くないということを、最初の議論のときに皆さん話していました。
【浦辺分科会長】  それでは、そろそろ質問も尽きたようですので、これから記入をしていただくようにお願いします。
(事前評価票に記入)
【浦辺分科会長】  それでは、そろそろよろしいでしょうか。まだお書きになっている方もありますが。よろしいですか。
 それでは、最後の三つ目の説明に移っていただきたいと思います。これについても、白山委員以外には利益相反の方はいらっしゃらないということでよろしいですね。
 それでは、説明をよろしくお願いします。
【川口技術担当役】  それでは、海洋オープンイノベーションの共創(海洋ロボティックス)について、海洋研究開発機構の川口から、資料3-3を使って説明させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、海洋オープンイノベーション共創の趣旨でございますが、海洋研究開発機構は、船とかブイやケーブル等々を用いまして多様な調査・観測を行っているところでございます。その中で、特に近年海中及び海洋の観測の無人化の実現を目指して、AUV、ASV等の海洋ロボットを用いた観測技術の開発に、多方面の観測分野において取り組んでいるところでございます。
 今、観測の主流となりつつあります海洋ロボットにおきましては、我々が目的としています観測以外にも、その周辺に多様なこれを使いたいというニーズ、マーケットが形成される可能性が高いと考えているところでございます。そこで、我々が行っていく観測用の海洋ロボットの開発に合わせまして、その中で開発していくニーズのアウトリーチやアウトカムというようなものを見据えて、我々の開発を社会のニーズにも対応できるような技術開発として取り組んでいくということで、オープンイノベーションというキーワードに応えていきたいとに考えております。
 具体的には、今、海洋研究開発機構等では超深海の探査技術開発、「次世代深海探査技術」と言っておりますが、そういうようなところでまず一つ、超深海で使うAUVの開発を目指していくと。前のお話にもございましたが、海氷下で使えるAUVプラットフォームの開発等々の検討も始まっているところです。
 また、第2期でブイを使って行っています定点観測、将来的にはこういうものの省力化でしたり自動化等々を目指した洋上の観測網の構築、観測法の構築ということも考えているところでございます。
 また、いろいろ民間との共同で海底の広域高速マッピングのニーズがあるということも分かってきておりまして、1ページ目のスライドの四つの柱、超深海、海氷下、熱帯域観測、そして、広域高速マッピングを、次世代の海洋観測ロボティクスのキーテクノロジーとして、この四つの柱に横串を刺せるような技術開発を、赤い色をつけています、広域高速マッピングの取組の枠組みを使ってしていきたいと考えておりまして、これを次世代海洋観測ロボティクスとして今回御説明させていただくということであります。
 次のページ、2ページ目のスライドに移らせていただきます。具体的にどういうことかと言いますと、政策の要望として上に二つほど丸書きで書いてございますが、今国立研究開発法人、もしくは大学等々では、先進的な知識集約型産業を産業界と共同で生み出すプラットフォームになってくださいというようなことを言われています。また、このような社会的要請を受けて、研究能力や技術基盤を含めたイノベーション創出力を増強して、その価値を見える化しなさい、民間投資の拡大を図りなさいというようなことも言われているところでございます。これと海洋をリンクするというのが今後必要なのではないかということで、下に挙げているところでございますが、海洋オープンイノベーションプラットフォームの構築として、海洋ロボティクスの展開ということがあります。
 前の説明とかぶるところですが、ここで考えておりますのは、例えば超深海で海中ロボットを使って行っていこうとしているというものです。JAMSTECが目指しています環境変動、地球内部ダイナミクスの研究等々にひもづけまして、深海底における効率的なマッピングを実現することを目指していますが、そういうところでは複数機のAUVを一度に運用していくというようなことが重要なことであるというふうに思います。
 海氷下の観測につきましても、氷下、直上、直下の観測、それから、4000m級の海氷下の深部の観測、中層の観測、そういうようなものを限られた時間で効率的にやるためには、これもまた複数のAUVを運用していくことが必要になってくると思っております。
 熱帯域の観測につきましても、ブイネットワークの代わりとなるような観測網の構築ということですので、これも複数機の展開というようなことを考えています。
 さらに、今我々が取り組んでおります社会が期待する技術として、シェルのオーシャンディカバリーエックスプライズに挑戦していくことでございますが、これは海底の広域を効率的にマッピングするというお題をいただきまして、そこに民間と共同で今いろいろ実施の計画を進めているところでありますが、ここでも複数機のロボットの並行運用、さらには完全に人が介在しない無人のシステムの展開ということも求められていることでございます。
 また、次世代海洋資源調査技術(SIP)でございますが、これも鉱物資源の効率的な調査のためにAUVが複数機でブイの作業をしております。
 このように海中ロボットのトレンドといたしまして、いろいろな観測を効率的にこなすという目的の中で、複数の海中ロボットを並行運用していくというのが不可欠になっています。我々もこれに目をつけまして、横串を通すというところに複数機を無人で運用する技術というものを登用できるような形で実行していけたらということを考えているところでございます。
 具体的には、こういう複数のロボットを遠隔で協調的に管制するような技術、管制ができる技術ということでございますが、そういうようなもの。それから、展開・回収を自動もしくは無人でできるような技術。これは海底でのドッキングなどですが、そういうようなところの技術を共通の技術として確立することで、それぞれ目的を絞って開発している個別のAUV間に必要になってくる技術の共通部分を、一つの開発でいろいろなところに使っていけるように、もしくは、システム間の共用を進めることができるかなと考えているところでございます。
 3ページ目にまいりますが、そのようなことをいたしまして、今この広域高速マッピング、赤色で書いている部分におきましては、今年度というか来年の夏ぐらいまでは、我々このエックスプライズという民間のコンペティションに、海洋研究開発機構のみならず、ほかの国立研究開発機関、大学、それから民間企業等々とチームを組んで進めているところでございますが、来年の夏にはこのコンペティションが終了いたしますので、そのチームを更に発展的に強化いたしまして、複数機の運用に関する技術開発を進めていきたいと。ここで開発技術が成功すれば、それが超深海、海氷下、熱帯域、こういうところの我々の研究開発のニーズを踏まえ、技術の一部として発展させていくというふうにも考えているところでございます。
 4ページ目を見ていただきますと、将来海洋ロボティクスがどういうところに使われていくのかということをイメージとして書いてみたわけですが、当然、我々、民間の一番上にあります海洋調査をしているところでございますとか、さらにもうちょっと効果的な資源探査であったり、先ほどございましたが、民間主体のところで、レジャーに実際使ったりというような小型カメラの応用。それから、漁業の資源のマッピングと、それから、こういうところで活躍する自動の観測技術というようなものが、海運等の自動化ロボットにも応用していけるのではないかということで、非常に大きなニーズが当然あると思っておりまして、こういうところとの知識・情報の共有を図ることで、最初に挙げている海洋のオープンイノベーションの共創を、海洋ロボティクスというキーワードで実現していきたいと考えているところでございます。
 以上で御説明を終わります。
【浦辺分科会長】  どうも説明ありがとうございました。
 これに関して。榎本委員。
【榎本委員】  最近はよく把握してないんですけれども、数年前かもしれないですが、北極海の海洋観測というところではポーラーチャレンジみたいな形で、無支援で横断するようなプログラム、国際的な競争が生まれるかと思うんですけれども、それとは全く違う性質のもの、あるいは、そういったところの関係がありましたら御説明をお願いします。
【川口技術担当役】  榎本委員がおっしゃったポーラーチャレンジのことでありますが、あれはグライダーに特化した仕様に合ったルール設定で、今からグライダーに着手することはなく、それでも本当に向こうに行く船、グライダーができたとしたら、位置をどうやって測っていくのか非常にあやふやなことになると思うので、そこに参入するのではなくて、本当に科学的な価値があるところでとろうということで、できれば位置をきちんと把握できるということを中心に開発を進めると。
【榎本委員】  ありがとうございました。
【浦辺分科会長】  ほかに。浦さん。
【浦委員】  浦でございます。私は自律型ロボットの研究をしているんですが、そっちの方向に進んでいくことは私としては本望なことなのでございますが、一つ懸念事項がございまして。
 まず、JAMSTECさんは、実はここの会合で今から7、8年前に、浦辺さんが座長のときにAUV開発というもの、今、「じんべい」と「ゆめいるか」と「おとひめ」ですかね、これらについて外に出て進んでいったんですが、2013年にできたということが新聞報道されて、その後ようやく今年になって運用できるような形に、それも「じんべい」だけですかね、というようなプロセスをたどっていっているわけです。このことは、2013年にすぐ使えるようになるかと思うとそうでもなくて、開発システムにJAMSTECのこれまでの開発のやり方に私は危惧を抱いているわけです。
 そこを踏襲しないで、違うようなやり方、ここで言っている「オープンイノベーション」にするということですけれども、組織的な取組、つまりどういうふうに開発に取り組んでいくかということを、これまでと同じようにではなくて、具体的には要素技術開発は、観測してなんぼのものですから、一体どういうふうなロードマップで今の労作ができているのか。全体像として作り上げられるもののイメージというのは何となく分かっているんですけれども、ロードマップが具体的に、利用するというんですか、観測するところまでがどうなっているのかということをぜひもう少し明確にしていただきたいなと。
 それから、もう一点、このプログラムは、事前評価票によりますと4年計画ですかね、1年短いというのはどういうようなお考えでこのようになっているんでしょうか。
【川口技術担当役】  ありがとうございます。
 最初の質問でございますが、今お話にございました「じんべい」「おとひめ」「ゆめいるか」に関しましては、特に5年で開発を進めているところでありまして、当時の海中ロボット関係の開発の方向性というのは、ちゃんと一つの海中ロボットが一つの仕事をしていくというふうになっていたと思っております。今、ここで最初の課題に挙げています超深海とか海氷下、熱帯域、こういうようなもの。今まで我々が培ってきたAUV、培ってきている海中ロボットもちゃんと使えてきているんだという皆さんの認識の下に、次に海中ロボットを使ってちゃんとした観測を広域にやっていくときに何が必要なのか、そういうことを考えたときに複数のものが必要になってくると思っています。一つの問題を解決するのに一つの海中ロボットで全てやっていくというのはなかなか難しいと思っています。
 また、我々が複数の海中ロボット造っている中で、使っているソフトウエアとの互換性だったり透明性だったり、そういうものを我々の中に知識としてまとめていくことができていないということがありまして、そういうところをちゃんとクリアにしてこれを進めていくことが、我々にとっても開発の状況あるいは信頼性を上げられるというところにつながると思いますし、そういうものを我々以外のところでも共有していくことができるのではないかと考えております。
【浦辺分科会長】  藤井輝夫委員。
【川口技術担当役】  もう一つ、2番目の質問にお答えをさせていただきたいと思います。
 実はJAMSTECの海洋オープンイノベーションの共創というプログラムは、本年29年度から始まっておりまして、昨年度からは海中ロボットではなく極限環境生物系のプログラムの課題として立ち上がっているところです。今年度発表させていただいているところは、2年度目から追加させていただきたいということで、一応、線表上は4年というふうに今やらせていただいているということになっております。
 以上です。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、お待たせしました、藤井輝夫委員。
【藤井輝夫委員】  エックスプライズはうちの研究所も関係しているんですけれども、これは純粋にJAMSTECの御提案ということで、コメントさせていただきます。
 二つありまして、一つは、今の議論をお伺いした範囲では、複数のロボットを展開するんだけれども、これはどちらかというと空間的なカバレッジをそれで増やしましょうというアイデアに聞こえます。しかしながら複数同時展開というのはそれだけではなく、機能的に補える場合もありますし、耐故障性とかいろいろな観点でのアイデアが出てき得るので、もう少し広げた方がいいんじゃないかなというのが1点です。
 それから、もう一つは、オープンイノベーションというのがよくつかめなかったので、どういう仕組みがオープンイノベーションなのかをもうちょっと御説明いただきたい。
 以上2点です。
【川口技術担当役】  ありがとうございます。
 最初のコメントとしていただきました点につきましては、我々としましても、ここで説明するときには、ほかの研究課題等の関係もございまして、空間のカバレッジの話を中心に御紹介させていただいているところですが、もちろんいろいろなことに使っていけると思いますので、そういうところも意識して進めていけたらと思っているところでございます。
 あとは何でしたっけ。
【藤井輝夫委員】  オープンイノベーションの仕組みについて。
【川口技術担当役】  すみません。複数の国研と大学、それから民間との間で一つの目標に向かってエックスプライズを進めているところでございますが、特にエックスプライズに参加していただいている民間さんは、エックスプライズをやることで自分たちの技術力とか知見を深めて、それを新しいところに応用していきたいと思っているんだと理解しています。チームの皆さんとお話をさせていただいても、そういうところを考えていらっしゃる。
 特に、深いところだけではなく、浅いところ、もしくは脆弱なところなどには非常に関心をお持ちだと。あと、陸域の例えば田んぼですとかダムですとか、そういうようなところというのは、水中ロボットが活躍できる部分としてマーケットを視野に入れているといったところもございまして、そういうようなところが開発していくのに全て一から開発するのではなくて、異分野や異業種間で技術の共有化を図ることで新たなコミュニティが広がっていくのではないかと思っております。
【藤井輝夫委員】  お伺いした範囲だと通常の共同研究で共同プロジェクトという感じなんですけれども、今はオープンイノベーションプラットフォームを構築するという御提案なので、このプラットフォームがどういうものか。これがあると、今おっしゃったものがどうしてうまくいくようになるのか、その辺の御説明が必要なのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
【川口技術担当役】  今考えているのは、海中ロボットのハードウエアの研究開発ですけれども、ソフトウエアを検討するにあたっては、どこかの階層で合わせこんでいくというようなことを課題としていかなければいけないのではないかと思っています。例えば一番簡単な話は、通信のレベルの供用化とかいうのは最低限必要ですが、さらにその下にあるアプリケーションに係る部分のところを修繕、もしくは応用するですとか、そういうシステムのところまで早くやっていくというのが最終的にあるんだと思うんですけれども、その辺を上の方から、簡単な方から攻めていって、どこまでそこを追い込めたかというのを検討していきたいというふうに思っています。
【浦辺分科会長】  ほかによろしいですか。藤井良広委員。
【藤井良広委員】  今の御説明、大体分かったのですけれども、1の観測の話でお聞きします。これも観測ということでなっていますから、1の観測データも当然、今言われた実用化という形で使っていけるはずですので、1の中の一部にこのロボティクスも入ってくるというように読めるようにするのか。あるいは、こちらの方にも一般的な公的な観測データの民間利用みたいなことを盛り込んだ方がいいような気もするのですがどうでしょうか。これは全然別の話でもなくて、そこのところ(実用化)でつながっているわけですよね。それが両方に読めるようにした方がいいような気がいたしますけれども、どうでしょうか。
【川口技術担当役】  ありがとうございます。
 1枚目のスライドのブルーのところは、まさにおっしるとおりのところでございまして、オープンイノベーション等々というところと、それぞれの観測のためのプラットフォームの開発というところがございます。そういう意味で、この説明の中では青く色を塗っておりまして、この部分はほかの施策とも密接に関係して進めていくところになりますけれども、そんな形で整理をさせていただいているところでございます。
【浦辺分科会長】  谷委員。
【谷委員】  無人複数機というのがキーワードになっているとお見受けしました。それで、3ページ目に遠隔協調管制システムという単語が出てきますが、これはいろいろなメーカーが造ったいろいろなものを遠隔協調管制するということなんでしょうか。つまり、オートノマスじゃなくて、ノーコンでやるというようなオートノマスではないものを造っているということですか。
【川口技術担当役】  まずは、いろいろなところが造ったいろいろな個別のシステム間の協調性を高めるというのが本筋でございます。オートノマスかどうかというのはケース・バイ・ケースだと思われますが、もちろんロボット間が自分たちでコミュニケーションをして何か問題を解決していくということも将来的には入ってくる。そういうのを使うためのプラットフォーム技術だと思います。
【谷委員】  さっき藤井先生がおっしゃった複数機の運用で、エリアを分けるのではなくて機能を上げるということになると、AUV同士で話さなきゃいかんということになるので、それは遠隔協調管制とは違った世界なんです。それは今の計画には含まれていないんですね。
【川口技術担当役】  実際に複数の海中で違う目的を持って同調して作業をしていくというのはなかなか実現できていないというふうに思っています。仮にこういうようなシステムを実働しようとした場合も、複数のシステムは多分一つの目的を持って一遍に開発されるというような形になってしまうと思っていまして、例えば海底の撮影と海底のマッピングみたいなものは違うわけですけれども、そういうようなところを別々の目的を持って海底のマッピングしていくものとして開発されたもの。こちらは海底の撮影を目的として開発されたもの。そういうようなもの、全く違うところでやっているものの中でも、お互いコミュニケーションができて、そこの間で協調、連携がとれて問題を解決していくということを最終的には目指していきたいと思っています。
【谷委員】  時間もないのでやめときます。
 実際にSIP、複数のAUVの展開というのをやっております。それもAUV同士が話しているわけではなくて、ただアクションが違う。AUV同士は話してないんですけれども、理想的にはオートノマスですから、例えば地底を測ったAUVから「ここに何かあるよ」と通信があると、そこに異なる観測機器が行って、あるいはカメラが行ってというような、AUV同士が話をして、本船は上でずっと監視をしていないというのが本当のAUVだと思うんですね。
 現状のAUVは、本船に乗っている人とか本船自体の指揮管理とかということで、非常に無駄遣いがある。ですから、次世代というときにはもっとオートノマスのしくみがあって、そうなるには遠隔じゃなくてAUV同士がお互いに通信するというところに行かないといけない。この文章だけ見ますと、とにかく母船がそばにいて協調させるという感じなんですけれども、AUVが協調するというふうな開発になるんじゃないかなと思うんですが、そこはどうお感じですか。
【川口技術担当役】  今、谷委員がおっしゃったような今後あるべき形を考えて、次に進んでいきたいというように思っております。
【浦辺分科会長】  浦委員。
【浦委員】  谷さんの御意見もいろいろ考えるところがありますけれども、世の中、ロボットに対する期待というのが、日本はロボット社会にしようということがあって、非常にインテリジェンスなロボットに期待が高まっているんですけれども、現実を見たときに幾つかのロボットメーカーやなんかが、実際に使われるロボットというのは単純で安くて壊れない、これが使われるもので、研究者が研究するものは非常に高度で賢くて何でもできるということで、これは会社の人から言わせると「そんなものは売れません」ですぐに終わってしまうんですね。ですから、ロボットメーカー、大手何社さんかありますが、そういう人たちと大学のロボット研究をしている人はあまり仲よく交流ができません。
 今の議論を聞いていると、結局、後からというか、データを必要としているユーザーの方々と、楽しいAUVを開発するという工学的な研究者、ここのバランスをJAMSTECがどうとるかということが非常に重要です。ですから、谷さんがおっしゃっているような理想をやって開発すれば、何十億円もするロボットシステムが出来上がって器用に動くかもしれませんけれども、誰も使わないということになるのが現実だと思います。しかし、工学的な研究としてはそちらも非常に大事なことなので、それでバランスをとってやっていくことが重要だと思って、それはJAMSTECさんのリーダーシップ、いわゆるユーザーの方々がたくさんいらっしゃいますし、前にも座っていらっしゃるようですから、そういった人のバランスをとったことを考えるということがとても大事であって、そっちの方向ばかり進むということは私は必ずしも賛成しないところでございます。
【浦辺分科会長】  今日出てきた津田委員とか藤井良広委員のコメントにもありましたけれども、日本で一番必要とされているのは、SDGsとかBBNJなんかでも期間内に実際にデータが出てくることは必要なことだと思います。ところが、今日の課題の1の海洋情報も、額的な制限もあって少し要素技術の開発的かな。そこではJAMSTECのプラットフォームに載っけてやることが想定されているということ。
 そうなると、「オープンイノベーション」と書いてあるのも、タイトルが余りにも内容と違っているので分かりませんけれども、この中でやるべきことは、こういうもので要素技術の開発をずっと続けるのではなくて、JAMSTECとしてその要望に応えて計測をする、データを取ると、そこへ行くということがどこに出てこないと、いつまでも機械を造り続けて、AUVも造り続けて、複数同時展開もやり続けるけれども、それが一体どこに使われるのかちょっと分かりにくいところがあります。
 オープンイノベーションは、メーカーさんとイノベーションするのか、それを使うユーザーさんとイノベーションする、つまりユーザーの言うことを聞いて、こういうものが必要だからこういうものを造るという意味で使われているのか、メーカーさんが「こういうものを造ってほしい」、「じゃ、予算要求して造りましょう」というのか、そこら辺のことがすごく分かりにくくなっているんですが。この海洋ロボティクスでのオープンイノベーションの相手は一体どういうものを考えておられるのかというのをお聞きしたいですね。
【川口技術担当役】  ありがとうございます。
 まさにその部分は2ページ目のスライドで、シェルの方で提案されているような、海底を広域高速にマッピングしてくださいという一つのそういう技術が実際あるということを考えておりますし、SIPの方でも複数機能によって違う観測の仕方を開発し、いろいろな使い方があるかとは思いますが、そういうものも使っていくというのは、研究開発を越えて民間のところからそういうものをやっていくんだというような位置づけであると理解していまして、そういうふうなものと我々のニーズで合わせられるところはオープンにして、そこのところの開発を一緒に努めていくというようなことです。
【浦辺分科会長】  SIPではAUVの複数運用ということですけれども、これはユーザーの海洋調査産業の方が実際に使えるようにということで、安価であるとか、様々なセンサが運べるとか、機能から、要するに後ろから考えて造ってきているので、ユーザーがちゃんと目に見えた形でやっていて、目的も非常にはっきりしていると思うんですね。ところが、ここではそれも書いてないし、例えば超深海とか海氷下の観測というのは、ユーザーは恐らくJAMSTECさんだけだし、社会的なニーズとかマーケットがあるとはちょっと思えないので、この言葉遣いがマッチしてないように思うんですね。
 実際に何かをする目的のときに、それがオープンイノベーションの対象であるならば、そこら辺が出てこないと、こういうものを造ることが非常に効率的という話にはなかなかならないのではないかと思うんですが。まあ難しいところですね。
 浦委員、どうぞ。
【浦委員】  今、浦辺会長がおっしゃったことは、2ページの三つをターゲットにしていて、それを新しいシステムでやるんですよということで包括的に考えるのがいいんじゃないかと。あまりぎちぎち責め込むのは、SIPではないですから、と思います。そうじゃないと、工学的な面白みがなくなって、具体的なターゲットがはっきりしていてそれをやると言うのでしたら、じゃ開発は民間に投げてしまえばいいんじゃないかというふうになると。研究開発をするJAMSTECの技術部隊としては、それをやられてしまうと、そればっかりやるとこれの発展していく道がなくなってしまうと思いますね。あまりそこを責めつけない方がいいと思います。
【浦辺分科会長】  はい、分かりました。
 ほかによろしいですか。中田委員。
【中田委員】  よく分かってなくて聞くんですけれども、例えば今いろいろあるロボットが共通的に運用できるような仕組み、そういうものまで含めて考えておられるということでいいんでしょうか。
【川口技術担当役】  はい、そういうふうに思っております。
【浦辺分科会長】  それでは、藤井輝夫委員。
【藤井輝夫委員】 ソフトウエアとか通信とか、そういうロボットを運用するベースになる部分を共通化して、それがプラットフォームというふうにおっしゃっているものなのか、事業を進める仕組みとして民間企業とか外の人が入ってこられるような、ある種のそういう体制を組むと、それをうたったものをおっしゃっているのか。このオープンイノベーションプラットフォームというものがどういうものなのかというのが、今のところ漠然としています。
 前者のほうは技術的な意味でのオープンプラットフォームということだと思うんですけれども、後者はどちらかというと事業を推進する体制というか、組織建てというんでしょうかね、だと思うんですけれども、その辺をはっきりしていただいた方がよろしいんじゃないかと思います。
【川口技術担当役】  ありがとうございます。
 2ページ目のスライドの一番上の欄のところに文字として書いてあって、「先進的な知識集約型産業を産業界と共同で生み出すプラットフォーム」というところが、お題としてのオープンイノベーションの計画というふうに思っています。そういう意味で、我々が必要だからこういうようなもの、複数のものに使えるようなものを皆さんと一緒に造っていくという内容ですし、逆に、基本は民間さんとの、我々は先のことをやっているということではなくて、民間さんのニーズも踏まえた上で、一緒に実施できるところはどこでしょうかというところを探してやっていく。今は我々としては複数ロボットの協調を実現できるようなソフトウエアを中心とした部分を攻めていけば、そういうところに可能性があるんじゃないかと思っているところです。
【浦辺分科会長】  よろしいですか。
 では、藤井良広委員。
【藤井良広委員】  つまり、今の御説明ですと、2ページの社会が期待する技術の間をつないだ両矢印がありますよね。これが大前提ですよね。ここですよね。
【川口技術担当役】  はい。
【藤井良広委員】  でしたら、もうちょっとそこを強調した表現にした方がいいのではないでしょうか。そこに持っていく研究、あるいは、観測データから実用化の間をつなぐ上での課題とか要点みたいなものをもう少し明確にする。そうした指摘は、何ページでしたか、どこかに書いていますよね。しかし、余りにも飛んでいるような気がします。4ページですね。4ページはこういう形に展開していけばいいという記述があります。ですけれども、その考えがここでは、やや飛んでいるような感じがいたします。
 それから、もう一つ、なぜロボットかというところです。自走していろいろな装置を兼ね備えて長期に活動、ということですけれども、同時に今のSDGsの中で議論していくと、持続可能性の議論と、海底にロボットがいろいろな形で活用されていくと、それ自体がいずれ廃棄物にもなり得ます。本来こういうものを開発するならば、これが今の海洋ごみとかいうものの解決にも資するというところも押さえておいた方がいいのではないでしょうか。海洋調査についての、この4ページにはごみの話がないのですが、そういう面への展開ということもまさにオープンイノベーションのような、まさに海洋の問題は大きな課題だと思います。ロボットがそのまま走っていって帰って来ないというのが、どこかでありましたから、ぜひそういうところも押さえたサステーナブルなオープンイノベーションという視点があればいいような気がします。
【浦辺分科会長】  多分それはあれだと思いますが。
 拝見しておりますと、まだお書きになっておられる方がおられますけれども、大体皆さん終わりかけているのかなと思いますので、事前評価を終わりたいと思います。
 記入いただいた評価に関しては事務局で取りまとめて、総合評価案はまた後でやるということで。
 一応マイクを事務局にお返ししたいと思います。
【事務局】  どうもありがとうございました。
 先ほど分科会長から御説明がございましたとおり、評価案につきましては、後ほど皆様にお送りさせていただきます。本日御記入いただきました評価票につきましては、記入後に回収いたしますので、机の上に置いたまま御退席をお願いいたします。
 次回の海洋開発分科会につきましては、9月の上旬から中旬をめどに開催させていただきたいと思います。追ってご連絡をさせていただきますので、皆様、委員の皆様におかれましては、ご確認をよろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。
【浦辺分科会長】  どうもありがとうございます。
 今日何かまだどうしても書き足りなかったということがございましたら、例えばメールでいつまでに出せば。今週中といっても今日は金曜日ですから、この週末ぐらいまでに出していただくということで。
【事務局】  それでは、来週の水曜日ぐらいまでにお願いできればと思います。
【浦辺分科会長】  では、一応そういうことで、もしまだ足りないことがあれば、来週水曜日までは考慮してくださるということです。
 今日は活発な議論をどうもありがとうございました。では、これで海洋開発分科会を終了したいと思います。どうもありがとうございました。


お問合せ先

文部科学省研究開発局海洋地球課

(文部科学省研究開発局海洋地球課)