平成22年8月19日(木曜日)10時~12時
文部科学省6階 6F3会議室
浦辺、磯崎、浦、沖野、鈴木、平、増田 の各委員
堀内 海洋地球課長、鈴木 海洋地球課長補佐
鈴木 総合海洋政策本部事務局参事官 (発表者) 吉田 独立行政法人海洋研究開発機構海洋工学センターグループリーダー
吉田グループリーダーより資料1について説明。
以下、主な議論
【増田委員】 今回開発する自律型無人探査機(AUV)はどのような優位性や特徴があるのか。
【吉田グループリーダー】 前回委員会で議論したとおり、巡航型と作業型といった2つの異なる機能のものを一式として構成するところに特徴がある。既製品を購入して使うのではなく、機体とセンサーを一体のものとして考えて開発しなければならない。それぞれの機器では、巡航型はこれまで開発してきたセンサーの特徴を生かせるように設計する点が、作業型では海底面近傍まで近づき作業ができる点が特徴。
【浦委員】 巡航型と作業型には通信機能を搭載する予定なのか。巡航型には通信機能の記載がなく、作業型には記載があるが。
【吉田グループリーダー】 通信機能はどちらにも搭載予定である。巡航型には標準の通信機能を搭載するので、特記していないだけのこと。作業用にはビデオ撮影機能が搭載できるようにするので、撮影した映像の送信という特徴的な通信を行うという意味で特記した。
【浦委員】 先日の日経産業新聞にJAMSTECが深海調査用の電池を開発したことが載っていた。JAMSTECは電池に高いノウハウと、様々な特許を有している。この電池を今後どのように用いるのか。
【吉田グループリーダー】 報道された電池は、未だ実海域における試験が少なく、市販品と同等の信頼性が証明されていないため、今回開発予定の巡航型の動力源として使用する予定はない。作業型については、使用しながら改善できることが期待されるので、試作レベルという形で積極的に使っていきたい。
【浦辺主査】 動力系とセンサーの電源は、分離するのか。
【吉田グループリーダー】 主電池を二つに分けるということをしないということだけは決めているが、詳細については未定。
【増田委員】 巡航型に比べて作業型が小さいが、作業をさせるならば大型になるのではないか。着底して何か取ってくる機能は持たせる予定なのか。
【吉田グループリーダー】 作業型という言葉を用いたのは、は広い機能を有するべきであるという考えから。ハンドを持たせて何か採取するところまでできたら良いのではないかという思いがある。ただ、今回開発するAUVの主目的は直上で映像を取ることであり、複雑な地形の中で動くためには、機体は小さくあるべき。マニピュレーターはないが、サンプリングする実験も一応行っているところ。この先はサンプリング機能を付けるよう考慮していきたい。
【堀内課長】 マニュピュレーターは今回開発するAUVの仕様に含めるのか、含めないのか。
【吉田グループリーダー】 今回は含めない。
【堀内課長】 今回は見送るが、2機目のAUVが開発できるのであれば、そこでサンプリング機能が実現できるか再度検討する。遠隔操作型無人探査機(ROV)が使えることとなれば、ROVによるサンプリングも含めて検討していく方向で。
【浦辺主査】 作業型について、ユーザーの拡張領域が書かれていないが、設けることは可能か。
【吉田グループリーダー】 作業型については、試作レベルになるので、搭載したいものを相談してもらえれば、その都度搭載領域を作ることにしたい。作業型は流体抵抗を意識せずに済むため、浮力材の追加等で十分対応可能。
【浦辺主査】 作業型には拡張性が必要と考えるが、仕様に書けば良いのではないか。
【吉田グループリーダー】 巡航型が2トンで30リットルであるのに比例させると、作業型0.5トンでは数リットルという計算になる。それでも記載する必要はあるのか。
【浦委員】 巡航型は抵抗を小さくするため、フェアリングで覆った機体の内側にスペースを取る必要があるため、設計段階であらかじめペイロードの大きさを規定しておかなければならない。一方、作業型は浮力中立にさえなれば機体の外側にいくらでも取り付けることができる。
【平委員】 浅層の反射法探査が重要。ROVが音源を抱えて数百Hzの音波を出し、ハイドロフォンを抱えたAUVがしっかり測位しながら様々な方向から連続的に反射記録を測定することは可能か。
【吉田グループリーダー】 周波数によってサイズが変わってくるが、30リットルの容量に入る物であれば搭載可能。ただし、機体下側をオープンにしなければならないので検討する。
【平委員】 音波探査は必須だと思う。そうでなければ私の考えているような超巨大熱水鉱床の探査ができない。そんなに大きなトランスデューサは必要ないはず。
【吉田グループリーダー】 トランスデューサの搭載については、考慮させていただく。
【沖野委員】 位置精度をスペックに入れられないか。巡航型は高度10mを航行するとのことだが、急峻な地形の上を航行するときに対応可能か。
【吉田グループリーダー】 現行のAUVよりはきちんとトレースするつもりだが、海底面からの高度が低いところで障害物を避ける実体験が乏しく、スペックとして規定することは難しい。位置精度についても、ケース・バイ・ケースであるが、やろうとしていることはある。
【浦委員】 カルデラなどを探査するにあたり、どれだけの角度で上られるのかということが大事。東京大学生産技術研究所の保有するAUV「r2D4」は傾斜25度までの斜面を上られるが、30度の斜面を上られるのが望ましい。所定の場所に到達した際に自動で作業が出来ることを規定する必要がある。自動運航で、どこまでできるかという記述が欲しい。また、運動機能を組み合わせたときの全体のパフォーマンスの仕様が必要。自律型航行のコントロールシステムは三層構造になっている。たとえば「回転数をいくつにして3ノットで走る」のような下位のコントロール、「定めた測線に沿ってまっすぐ進み、外れたら戻る」のような中位のコントロール、「最初の測線から最後の測線まですべての調査が終わったら重りを捨てて浮上する」のような上位のコントロールがあって最上位のコントローラが全てを統括する。自律型のロボットであるか否かを決める、最上位のコントローラのパフォーマンスを仕様に規定しておく必要がある。
【浦辺主査】 当面は支援母船という「親」がAUVという「子」についていくが、親離れしたAUVがどのような調査をできるかが重要であり、浦委員の意見は是非仕様に反映すべき。
【磯崎委員】 新しいシステム、将来役に立つシステムを作りたい。特にオプション欄に入れるべき機能を幅広にいただきたい。
堀内課長より、進め方(案)の概要、論点について説明。
【平委員】 先程の議論で主張した、地下構造の話も含まれている。AUVが短時間しか探査できないのが問題。水中か海底で充電できる技術があるとうれしい。
【浦委員】 文部科学省の競争的資金「海洋資源の利用促進に向けた基盤ツール開発プログラム」にて、東大の巻さんが研究を行っている。作業型においてはエネルギー補給の問題は重要。ケーブルステーションとの協調や海底ケーブルネットワークの活用、自動化技術が重要となる。5年後には実現可能だと思う。
【平委員】 増田委員が言った、世界と異なる点ということも言えるのではないか。
【堀内課長】 今回の案は、今般の仕様について記載するもの。今後の議論については「今後検討すべき課題」に記載して欲しい。
【平委員】 今般の仕様に記載するのは困難と思われるので、今後の議論の中に方向性として出せば良いのではないか。
【浦委員】 「具体的には」の書きぶりについては、AUVの性能と同時に、それをどのような体制で展開していき、どのように現場で実証し、実績を積み研究開発にフィードバックしていくかも大事である。複数のAUVを用いることを考えると、フリートとしての性能も課題になる。単に1機のAUVの性能強化だけではいけない。展開技術が大事。
【堀内課長】「複数AUVの運用に関する技術や高性能なAUVによる技術」のような形で書き加える方向で検討する。
【平委員】 マル5は何を表すのか。
【堀内課長】 船から調べる方法もあるという意味。
【平委員】 船からの調査は音響だけとは限らないので、「支援母船による調査技術の高度化」のような書き方とすべき。
【磯崎委員】 支援母船というと、AUVやROVの支援というイメージになるので、一般的に調査船、研究船としてはどうか。
【浦辺主査】 支援母船も含めた1つの「パッケージ」として、お互いの機能を活かした調査の全体の「システム」に貢献できるような機能が必要というイメージではないか。
【増田委員】 探査方法について、広いところを調べる、有望なところを調べる、高精度に調べるという書き分けが必要だと思う。
【平委員】 以前の報告書(「海洋鉱物資源の探査に関する技術開発のあり方について(中間とりまとめ)」)で詳細に述べてあり、今回はその中の「精査」に近い議論をしているので、調査のやり方は引用するような形で良いのではないか。前段に書けばカバーできる。
平委員が机上配布資料に従って説明。
【沖野委員】 成因や組成に関する科学的成果に関する記載が多いが、構造や広がりについての記載も合った方が良いのでは。構造や広がりというのは、要は循環経路がどこまで広がっているかということ。資源量は濃度との関係になるが、純粋にどの範囲でどのように水が流れてくるかを知ることは科学的成果となるのではないか。
【平委員】 「様々なタイプ」という記述に含まれるのかもしれないが、構造や形態という意味でのタイプ、母岩との関係や地質的背景によるタイプ等ある。もう少しスペシフィックに書いてほしい。
【鈴木委員】 反射法の探査の話がほとんどであるが、化学や重力などの様々なセンサーについても同様に「海洋鉱物資源の探査に関する技術開発は順調に進捗」と言えるのか。どこかに触れられていないとおかしいのではないか。
【浦辺主査】 新しいセンサーによって様々な新しいことが分かる。反映できると良いのではないか。
【堀内課長】 マル2や3ページ目の4ポツ(2)などでセンサー開発を平行してしっかりやるという記載をしている。先ほどのAUVの仕様についての議論でのセンサーを搭載する容量等、「基盤ツール」を意識した記載となっているが、基本的方針を確認する上でより強調する方が良いのであれば書き加えたい。
【鈴木委員】 他のセンサー開発についても順調という記述に含まれているのであれば、「基盤ツール」の開発も順調であると今一度書いた方が良いと思う。海中で実際にどのように探査できるのかはまだまだはっきりしていないとしても、「基盤ツール」の開発をきちんとおこなって行けば、AUVに搭載するセンサーがどのようなものか、特定されてくるはずだと思う。
【磯崎委員】 「さらに、当該実証を通じて探査技術の高度化のみならず」とさらっと書いてあるが、我々エンジニアの方から見ると探査技術の高度化そのものが立派な大きな成果である。探査技術をこのようにして、国内でこのようなAUVを開発して、総合的なものとして探査技術を高度化するということについて、もうちょっとインパクトがあってもよいのではないか。
【浦辺主査】 様々なセンサーの開発によって今まで得ることのできなかったデータを得ることができること、AUVというプラットフォームとの組み合わせは世界的に見ても新しい試みであることは、強調されるべき。そういった新しい取組の中で、海の底で活発に起こっている現象を捉えることができる、新しい科学的な知識の成果に直結しているというニュアンスで書いても良いのではないか。技術と科学の新しい目で見ると新しいものが見えて来る。
【増田委員】 「探査技術の高度化のみならず」と言って次に話が変わって「科学的な成果」と書いてある。 (1)、(2)、(3)、(4)は科学的な成果だろうと見るとまた鉱床の話になる。例えば、地球の成因がわかるとかといった科学的成果というのが出て来るのを期待しながら読んでしまうが、探査技術に近い話になっている。その点に違和感を覚える。
【浦辺主査】 鉱床の成因や、元素の濃集の成因をもたらした様々なプロセスへの理解といったものが非常に進んでいくということ。
【平委員】 成因やプロセスの理解は、サイエンスそのものである。いきなり科学的な成果と書くとわざわざ書かなくても成因論につながる成因論とか具体的なことを書いた方がいいかもしれない。
【堀内課長】 当初は書かなくても良いと思ったが、文部科学省の仕事として学術的成果が基本的なところにあるべきだと考えた。増田委員御指摘のとおり、もう少し一般的な視点で成果を期待できるという記述の方が、プロジェクトへの理解、支持、研究者への広がりに寄与するものだと思う。
【浦辺委員】 省庁連携という立場では何か意見はあるか。
【鈴木参事官】 海洋資源の開発・普及は成長戦略においても位置づけられており、観点の違いこそあれ、各省全体でやらなければならないと思う。連携を強めていきたい。
【鈴木参事官】 (1)~(3)は、AUV開発の一般論なのか、今回のAUVについてなのか。
【堀内課長】 今般のAUVのみ。一般論については、今後のラインナップ、あと何機AUVを整備できそうか等も踏まえて、今後の議論と考えている。今回は、1機目のAUVを出来るだけ最大限有効利用していくためにどうしたらよいかということをまず決めていきたい、ということで書いている。
【浦委員】 今の堀内課長の説明についてはよくわかっているが、日本の海中観測技術における位置づけを示してほしい。海外から買うのでなく、日本の基幹的な水中あるいは海中観測技術を発展させるものであり、国力を高める出発点であるという位置づけをもう少し打ち出して欲しい。海底熱水鉱床やコバルトリッチクラストの開発は、世界的にも始まったばかりであり、日本がリーダーを取っていけるような技術開発ができる。その嚆矢であるという考え方を全面に出して欲しい。
【磯崎委員】 資源戦略は国家安全保障に関するものなので、日本の技術をしっかり構築する重要なものであるという、メッセージがあると良い。
【浦辺主査】 成長戦略の中で取り上げられたのも、浦委員、磯崎委員御指摘の観点があるのだろう。このような技術は世界初であり、資源のポテンシャル評価や、様々な海底で起こっている現象を見ることができ、分野開拓の意味合いが強い。もう少しそのような点での記述があってもよいのではないか。
【堀内課長】 日本がこういった資源を探査する技術でリーダーシップを発揮するという考え方は、3ポツの議論に総合的に探査技術を完成させるという目標があるので、ここに明記するとどうか。
【浦辺主査】 3ポツに移すこととする。AUVの自律性というのは、非常にきちんと書かれているので、その後の「支援母船1隻で複数のAUVによる調査を行う」については、もう少しシステマティックな「いろいろな機能の違いを組み合わせた」のような記述を入れるべきではないか。
【浦委員】 複数のAUVが同じ種類なのか異なる種類なのかについては、今回整備する航行型とホバリング型の2種類の他にもいろいろな種類がある。一つのものがあればいいというわけではなくて、いろいろな性能を持った、いろいろなミッションに対応したAUVを開発する第一歩の記述であるから、AUVの各種機能という解釈ではいけない。
【浦辺主査】 (2)には、「基盤ツール」のセンサーについてどのように反映すれば良いか。
【鈴木委員】 「試験的に搭載できる」について、「実機搭載」でないと遅いと思う。
【浦辺主査】 開発されているセンサーを十分活かせるプラットフォームの機能が重要。
【沖野委員】 (3)について、前半と後半が合っていないと思う。このような機能とこのような機能が必要で、それを早期に実現するためには同時にこの2種類がいると解釈すべきところ、エリアがたくさんあるからと読めてしまう。着底に近い形で作業や撮影のできるものを同時に早期に実現しなければならない、という形だとよいが、つい下北沖に重点を置いたように読めてしまう。
【浦辺主査】 前回、pHを測定するためにものすごく海底に近づく必要がある等、様々な制約が話されたが、そのような制約は巡航型と作業型の2つを開発することによってのみカバーできるということだと思う。
【堀内課長】 探査する場所がいろいろあるという記述はやめて、機能がいろいろ必要、という書き方に変更する。
【浦辺主査】 「当該実証の対象海域を拡大することが適当と考えられるが今後詳細な計画を検討することが必要である」という文章があるが、理解が難しいかもしれない。
【堀内課長】 AUV1つだと対象が限られる。どれくらいの数、機器を整備できるかという情報がなければ、具体的なスケジュールには言及できない。10年くらいの間に賦存量を調べるという目標があり、前段は技術開発、後段は総合的に完成させた上で量を稼ぐという中身。水中充電技術など、さらに必要と思われる技術は検討を加えてみても良いと思う。
【平委員】 「当該実証」の書きぶりを修正して欲しい。
【浦委員】 示されているのは文科省としての新たな10年計画と理解しているが、スピード感がないように思う。技術を調査、発展のために並行的につなげないと、要素技術が全て揃わないと次に進めないというのではうまくいかない。前期・後期でなく作りながらどんどん観測・フィードバックすることが必要で、最初の5年で新たなものを発見するくらいの意欲が欲しい。
【堀内課長】 時間をどのくらいでやるかを削除して、具体的計画を作ることを今後の課題として残す方が良いか。
【鈴木委員】 技術開発を進めながら有望な海域を探査する、くらいの表現が可能ではないか。具体的な探査もやるという意気込みの入った文章になるのではないか。
【平委員】 時間についての記述が何もないのは危険。10年の中でしっかりやっていくことは明記する必要がある。中身の「前期」「後期」はいらない。
【鈴木参事官】 文科省の計画を別個考えるのではなく、海洋エネルギー・鉱物資源開発計画等にある10年後の商業化という目標等、国の方針に資するものとして、有機的に連携しながら進めていくことを示すのも一案と考える。
【堀内課長】 10年は残して、前期・後期は削除し、今後議論いただくこととしたい。
・浦辺主査より、これまでの議論について総括。
・鈴木補佐より、今後の予定について連絡。
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