海洋資源の有効活用に向けた検討委員会(第8回) 議事要旨

1.日時

平成22年8月4日(水曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省6階 6F1会議室

3.議題

  1. 海洋鉱物資源の開発に向けた取組について
  2. 資源探査センサーの現状
  3. 資源探査に求められるAUVの性能について
  4. その他

4.出席者

委員

浦辺、磯崎、浦、沖野、小池、鈴木、平、瀧澤、増田(代理:JOGMEC上田英之金属資源技術部長) の各委員

文部科学省

後藤 文部科学大臣政務官、藤木 研究開発局長、堀内 海洋地球課長、鈴木 海洋地球課長補佐

オブザーバー

谷 総合海洋政策本部事務局参事官

(発表者)
松浦 独立行政法人海洋研究開発機構海洋工学センタープログラムディレクター、吉田 同グループリーダー

5.議事要旨

後藤文部科学大臣政務官を迎えてのフリーディスカッション

【平委員】 我が国の周辺海域、排他的経済水域(EEZ)を含めた資源ポテンシャルの大きさなどについて新しい考え方も必要ではないか。例えば、沖縄トラフには直径2キロメートル、厚さ300メートル程度の熱水鉱床が数十個はあるのではないかと思っている。深さ方向への深い探査が大切。地球深部探査船「ちきゅう」で掘削するのが楽しみ。コバルトリッチクラストについては、コバルトリッチクラストを形成するレイヤーがどのように成長したか、海山がどのように移動してきたかなどの成因をベースにした探査、火山の開発が必要。メタンハイドレートの存在地域に泥火山がある。泥火山の中のメタンハイドレートの成分を調べると海水の1000倍以上の濃度のリチウムが入っていることが分かってきた。このような新しい資源探査の夢も目指して実施していけたらと思う。

【後藤政務官】 他の国々に先んじてポテンシャルマップを作成したいということで、成長戦略でも工程表でも、かなり細かく、自分の思いを含めて作らせてもらったところ。委員の先生方がそれぞれの分野で、総合力で、できるだけ早く、2,3年のうちにマップを作ってもらい実用化に向けて欲しい。

【浦委員】 走り回るロボットと、細かいところで写真を撮ったりサンプリングをしたりするロボットがチームになって、広さ方向、深さ方向といった海底の熱水鉱床の大きさについて探査する技術はもうできているのではないかと思う。先日の日本海における航海で、自律型無人探査機(AUV)「うらしま」とホバリング型ロボットを用いることによって、メタンハイドレート地帯の詳細な図を得られた。また、ポックマークというクレーターのような地形付近に群がる大量のベニズワイガニを発見した。メタンガスを食べるメタンバクテリアをカニが食べているようだ。このような詳細な計測は、遠隔操作型無人探査機(ROV)や船舶からは不可能で、AUVだからこそできること。AUVをもっとたくさん作る必要がある。また、競争的資金「海洋資源の利用促進に向けた基盤ツール開発プログラム」で開発したコバルトリッチクラスト厚さ計測計という音響装置を用いて探査したところ、コバルトリッチクラストの厚みを測ることができた。このような技術は世界初である。

【磯崎委員】 「ちきゅう」にしてもAUVにしても、技術の散逸が心配である。後継者をどのように育てていくかが課題。AUVについて予算をいただいたので、この機会に若手に新しいチャンスを与えてあげたい。

【小池委員】 海洋は陸とは違い、船、AUV、ROVといった様々なプラットフォームがワンセットで揃っていて、それが新しい技術を取り込みながら更新されなければ研究が進まない。継続した予算と人材育成をお願いしたい。

【谷参事官】 技術を売り込むことと人材を売り込むことはこれまでの日本の海洋系は強くなかったが、資源やAUVへの取組をきっかけに、海洋立国を成し遂げられれば良いと思う。大陸棚調査については各省の連携がうまくいった。資源についても同様に各省で連携して実施できればと思う。

【鈴木委員】 最近開かれていないが、海洋研究船委員会では新しい性能の船を作らなくてはならないということを平成19年に提示している。貧しくても、新しい研究船はどうしても必要ではないか。

【後藤政務官】 調査船の建造は一応念頭に置いてある。財政の部分については、積極的に成長戦略に基づいて、海洋水産資源管理の技術も念頭に置いた海全体の研究・技術開発の部分を文科省全体でお手伝いしたい。

(後藤政務官退室)

(1) 海洋鉱物資源の開発に向けた取組について

堀内課長及び増田委員(代理:上田部長)から、海洋鉱物資源探査技術の開発について説明。以下、主な議論。

【平委員】 メタン循環はいろいろな意味で非常に重要な意味を持っていると思うので、鉱物資源を中心とすることはもちろんだが、探査計画の中にメタンハイドレートや泥火山などの現象も読み込めるような形にしていただくと、幅が広がるのではないか。

【浦辺主査】 最初から限定的にやらないということは重要なことではないかと思う。

【小池委員】海底のいろいろな状態がどうなっているかということが分からないと、この資源の問題もあやふやなままで進んでいくことになるので、全体を把握することは大事。センサー、AUV、海上部分のものが同じスピードで開発が進まなければ、実際には動かないので注意して進めて欲しい。

【浦委員】 シップタイムの確保が課題。JAMSTECの持っている船は決まっているから、そこで運航できるAUVやROVの数は決まってしまう。どのように運用するかを含めた全体計画がないと進まないのではないかと思う。メタンハイドレートが存在するような所は、地形がそれほど複雑ではない。しかし海底熱水鉱床が存在するような所は地形が複雑であるから、この探査のためのプラットフォームは難しい仕様になるかもしれない。

(2) 資源探査センサーの現状

浦委員より、資料2に沿って報告。

(3) 資源探査に求められるAUVの性能について

吉田グループリーダーから資料3に沿って説明。

【小池委員】 日本海で撮ったカニの写真は、どれくらい時間をかけて撮ったものなのか。

【浦委員】 2時間。10cm/秒で走っている。ストロボチャージの時間と、メモリーをダウンロードする時間が改善されれば、もう少し速くなる。50cm/秒で走れれば、今の5倍の面積を2時間で撮影できる。

【小池委員】 1回の潜航でどの程度のエリアがカバーできるかは大事。どんどん細かい情報を撮ろうとすることに関する技術開発とAUVの性能のマッチングが効いてくると思うが。

【浦委員】 航行型の性能とホバリング型の性能を併せ持ったAUVの開発は無理だと思う。どのようなAUVを持ってどのようなフリート体制でいくかというJAMSTECの考え方が必要ではないか。

【浦辺主査】 少なくとも性能に関しては、あまり色々なものを有するものを作らない方が、かえって使ってもらいやすいのではないか。

【沖野委員】 ユーザー側としては、1つのものに何もかも詰めないで欲しいと強く思う。割と安いAUVがたくさんある方がありがたい。最低限でも高度がどのくらいで、比較的近傍で巡航するタイプと10メートル以下のホバリングのものといった分類がないと使いにくい。

【吉田グループリーダー】 おっしゃるとおりだと思っている。ただ、CCS(二酸化炭素回収貯留技術)事業の方でAUV開発の話が出ているので、その機能を入れないわけにはいかないのが悩み。CO2をどのように測り得るかについて、CO2研究者からは海底面近傍をゆっくり走ってみなければいけないと言われているところ。

【浦委員】 CCSのCO2センシングについては、高速で泳がず、そこで静定するまで待たなければならないなど制約がある。CCSのセンサー開発は非常に重要だが、航行型でもCO2のセンシングができないわけではなく、運用でカバーは可能。

【小池委員】 同じセンサーを使うということなのか。そうすると、そのセンサーの能力で動きが限定されてしまう可能性があるということなのか。

【平委員】 それはあり得ない。センサーの能力のためにAUVの性能を決めるというのは、本末転倒だと思う。センサーは運用等で変わっていくものなので、CCSにも役立つように作るが、CCSのための専用機ではない。現在、CCS関係のスペックをどうするかということはまだ煮詰まっていないので、まずは資源探査の方の性能をはっきりさせるというのが最初だと思う。

【吉田グループリーダー】 センサーにAUVの性能が引きずられているのではなく、海底面近傍を走ると言うことが問題だと思っている。起伏がある場合には厳しいという話。

【浦辺主査】 資料の表に記載されている「リアルタイム監視」とは何か。

【吉田グループリーダー】 ビークルがどこを走っているのかというデータを見たいという要望とセンサーそのものが動作しているのかを見たいという要望が多かったので掲載した。

【浦辺主査】 船はAUVの後ろをついて走る、あるいはすぐ近くにいて、AUVが動けば追尾することが必要だと考えているのか。

【吉田グループリーダー】 追尾ではないが、監視は必要だと考えている。

【浦辺主査】 どのくらいのことを考えているのか。

【吉田グループリーダー】 浅いところで広範囲になると、音響のコーンより外れてしまうと見つけられなくなるため、ある程度ついていかないといけないと考えている。JAMSTECの今の運用の仕方としては、ビークルを見失うということはやってはいけないので、監視はしなければいけないと思っている。

【浦辺主査】 そこが考え方の最大の違いだと思う。

【浦委員】 AUVの仕様を書くときに、10時間野放しにして、その後探しに行けばなんとかなるようなスペックになっているのか、いつも追尾していかなければ運航できないというのかが非常に重要。今後は、しばらくほったらかしにされて別の作業をするようなスペックを書くべき。高い信用性が必要だし、エマージェンシーの対策が必要だが、それらに対処できれば実際にそれで良い。リアルタイムモニタリングがなくても動けるようにしておかなければならない。それがスペックに書いてあるべき。

【吉田グループリーダー】 位置だけは監視すべきだと思う。諸外国のAUVも位置は見られるようにしている。位置は知っておくべきであり、後で音響による位置補正もできなくなるので必要。また、1.5年の工期では、100%ロストしないような高い信頼性を確保できない。

【浦委員・浦辺主査】 それは違うと思う。

【浦委員】 100%信頼性を担保できることはあり得ない。デザインコンセプトと運用のコンセプトで、それは仕様に書いておくべきであって、1.5年のうちにできるかできないかということもまた違うのではないか。

【平委員】 いろいろな回収の仕方や、緊急事態はあり得ることなので、それについては仕様の中でディスカッションして、運用はフレキシブルにやれることが良いと思う。一番良い運用の仕方は何かを議論していただきたい。

【磯崎委員】 シップタイムの問題と、将来複数のAUVを動かさなければならないので、追尾するわけにはいかないというのはどこかで踏ん切りをつけなければならない。どこで踏ん切りをつけるかはまた考えていきたい。 将来いろいろなセンサーを1つのAUVにつけかえてできると良いと思う。

【浦辺主査】 AUVの位置決めについて、どのようなシステムを考えているのか。

【吉田グループリーダー】 現在は通常のSSBL(スーパーショートベースライン)、DVL(ドップラー速度計)と慣性航法によるハイブリットによる位置決めの2つを使おうと考えている。LBL(ロングベースライン)については考えていない。

【浦辺主査】 そうすると、船が付いていなければいけないと思うが、どのぐらいの距離を仕様として考えているのか。

【吉田グループリーダー】 現時点では詰め切れていない。現在は通常通りと考えていただきたい。

【沖野委員】 位置は非常に大事。海底に近寄ってしまったら、位置がネックになってデータが生きないということになり得る。現在のSSBLと慣性のままだと、問題が非常に大きいのではないか。もう一段高いスペックにしなければほかのものと合わないと思う。「基盤ツール」で開発されている位置計測技術は実用化しないのか。

【浦辺主査】 「基盤ツール」で開発されている位置計測技術は基準局との位置計測。

【沖野委員】 基準局を導入するシステムを採用すれば、割合実現が近いのではないか。

【浦委員】 熱水地帯は、何十キロも離れたところに行くのではなく、せいぜい15、6海里のスクエアの中を走り回るだけで、そこまで遠くには行かない。10キロメートル四方の中であれば、せいぜい数キロ程度ずれるかもしれないくらいの技術は現状でもある。最高レベルの慣性航法装置を搭載していれば、5~6時間の航行で0.1海里程度の誤差で航行できる。

【平委員】 浦先生の言った「基盤ツール」で開発されている音響トランスポンダーを使った位置決めと、そのショートベースラインの両方使ってできるということか。

【吉田グループリーダー】 LBLにしようということがこの会議で決まれば、それでも良いと思う。浦先生の今のお話は、音響のマーカーをつけて、その周りということなので、その方法は可能ではあると思う。

【平委員】 両方あった方が良い。外側でも良いのでトランスポンダーのネットワークを作って、もしくは通信して自分で位置決めもすることもできるということか。

【吉田グループリーダー】 LBLを使ってしまえばそれで良いと思う。

【浦委員】 今回のような熱水に限ってやるのであれば、そんなに遠くに行くわけではないので、中央火口丘の頂上にトランスポンダーを1個置いて居れば大丈夫だと思う。運用の問題ではないか。SSBLの子機、親機にしても、JAMSTECには十分に技術があるので、ハイドロフォンを3個か4個つければ良いのでロボットにとっては問題ないと思う。

【吉田グループリーダー】 多少は大きくなるが。

【浦委員】 多少で、1トンも2トンも大きくならない。

【平委員】 必要な能力だと思う。

【浦辺主査】 AUVの必要性は、位置精度というのが今後非常に重要になってくるので、音響灯台のようなものは使えなければならない。 母船がなくても何かできるというのは必要条件だと思う。 センサー側の要求として、動力系の電源とセンサーの電源を分離してほしい、電磁探査センサーはモーターからなるべく離れたところに搭載したい、等がある。 標準搭載の中で、カメラもついてサイドスキャンソナーもついてというのはあまりあり得ないことかと思うが。

【吉田グループリーダー】 これは、どれか1基という意味である。

【浦辺主査】 航行型のものを作るとなると、搭載機器が決まってくると思うが、もう少し仕様欄を分ければ分かりやすかったのではないか。

【小池委員】 標準搭載というのは、この中の1つということか。

【吉田グループリーダー】 CTD(塩分濃度、温度、深度計)は常時だが、サイドスキャンソナーとマルチビームソナーはそれぞれ個別。

【小池委員】 カメラは常時か。

【吉田グループリーダー】 カメラはどちらかといえばホバリング型の話になる。巡航型であれば不要だと思う。

【浦辺主査】 2トンの機器にはマルチビームソナーとサイドスキャンソナーは絶対載らないと思う。もう少し分けてあった方が良い。

【平委員】 要するに、巡航型とホバリング型の両方が必要だということだと思う。

【浦辺主査】 両方作れるのであれば、作れる方が良いが、両方作れる予算はあるのか。

【堀内課長】 予算の範囲内で必要なものを措置していただくのをお任せしている形になっている。

【磯崎委員】 理屈はそうだが、まずは巡航型を作るのが先ではないか。

【浦委員】 要するに、何のためにロボットを作るかが大事。現状だと、航行型AUVで調査しても、実際に確認をするのはROVになってしまう。ROVが1年後に確認に行っても仕方がない。ホバリング型ですぐに確認すればよいので、航行型とホバリング型のAUVがペアになっていないといけない。航行型が1台あって、ホバリング型は5,6台あればもっといい。自分は研究者一人に1台のAUVが必要だと思っており、ホバリングがその手段だと思う。

【平委員】 ホバリング型があって、いろいろ写真を撮ってこそ、初めて音響画像などの意味が出てくるということか。

【浦委員】 そのとおり。音響画像の意味を解釈できるから役に立つ。

【浦辺主査】 ホバリング型は安い。

【浦委員】 例えば「ツナサンド」は学生たちが作っているが、お金を払っているのは6000万円。ただし、信頼性は100%ではない。

【吉田グループリーダー】 2機作るためには、もう1機はある程度信頼性の低い手作り型にしなければ、予算的には収まらない。信頼性の高い完成品を2機作るのは無理。

【平委員】 非常に強い要望として2機作れというのであれば、この委員会できちんと言っていただければやる所存である。

【浦辺主査】 やはり機能を混ぜこぜにしないことは非常に明快。

(4)その他

鈴木海洋地球課長補佐より、今後の予定について説明。

【浦辺主査】 今日議論になったものが8月19日には仕様書になって出てくるという理解で良いか。

【堀内課長】 今のご指摘事項も踏まえて再検討して、お示しした上で、議論いただく予定。

【磯崎委員】 もう少し詳細に今日の議論をまとめて発表する。

【小池委員】 ここで強い希望が出たので、2機を前提に考えるのか。

【浦辺主査】 2機分でお願いしたい。

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