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今後の我が国の核融合研究の在り方について(基本問題特別委員会核融合研究ワーキンググループ報告)

2003/01/08 答申等
科学技術・学術審議会 学術分科会・基本問題特別委員会 核融合研究ワーキング・グループ

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今後の我が国の核融合研究の在り方について(報告)

平成15年1月8日
科学技術・学術審議会  学術分科会
基本問題特別委員会  核融合研究ワーキング・グループ


目      次

はじめに

1. 審議の経過

2. 核融合研究の重点化とグランドデザイン
(1) 重点化の必要性について
(2) 核融合研究の新しいグランドデザインについて

3. 核融合研究計画の重点化の方策
(1) 既存の核融合研究計画の評価
(2) 重点化計画の策定
(3) 重点化のための具体的計画
1 トカマク国内重点化装置計画
2 核融合材料試験装置計画
3 レーザー高速点火計画
4 大型ヘリカル装置(LHD)計画
(4) 重点化計画の優先度について
(5) 既存装置の整理・統合について

4. 共同利用・共同研究の強化の方策
(1) 大学共同利用機関としての核融合科学研究所の在り方
(2) 法人化後の大学の役割
(3) 日本原子力研究所及び新法人の役割と共同研究の強化
(4) 共同利用・共同研究促進について

5. 重点化後の人材育成の在り方

6. まとめ


考資料
資料1   WGの委員名簿
資料2 審議の経過
資料3 我が国の核融合研究を支える種々の実験装置(コンピュータを含む)
資料4 既存の核融合研究計画の評価結果
資料5 重点化計画の評価結果
資料6 LHD研究の課題
資料7 用語解説


はじめに

  21世紀以降のエネルギー源は、我が国の安全及び経済に深く関わるとともに、地球規模の環境保全からの要請を満たすことが求められる。当面は化石燃料に依存することが可能であるが、長期的には核分裂、核融合、風力・太陽光発電等の再生可能エネルギー等の中から国策に基づき選択されるものと予想される。核融合エネルギーについては、安全性・環境適合性・資源量等の観点で優れた特性を潜在的に有しており、世界の主要国で活発な研究開発が行われてきた。我が国では、この核融合研究の重要な目標である科学的実証を目指して種々の方式による研究が大学、核融合科学研究所、日本原子力研究所等で進められ、既に多くの成果を挙げている。当該分野の研究が欧州、米国とともに世界のトップレベルにあることに加えて、プラズマ物理学、プラズマ応用学、計算機シミュレーション科学、宇宙・天体プラズマ学、超伝導工学、材料工学等の複数の領域で多彩な学術的成果を生みだす等、今後も我が国の科学技術と学術に大きく貢献することが可能な分野である。
  一方、国際プロジェクトとして進められている国際熱核融合実験炉(以下、「ITER」という。)計画については、建設に向けた政府間協議が始まり、核融合エネルギーの実現を目指す核融合炉開発としての大きな一歩を踏み出そうとしている。今後、長期に渡って物理と工学の統合を必要とする核融合研究を着実に進めるためには、その進行を制限する項目と課題(クリティカルパス)を定め、開発研究を進める必要がある。同時に、物理と工学の体系化とスモールサイエンス等へのスピンオフ(波及効果)が期待できる当該分野の学術研究としての重要性に鑑み、学際化の研究手法等を取り入れつつ、学術研究基盤の維持・整備と人材育成にあたらなければならない。我が国においては、前者は、日本原子力研究所が、後者は、大学、大学共同利用機関がその中核として研究の推進にあたってきた経緯にある。このように学術研究から開発型の研究にまたがる広い研究領域を包括する当該分野においては、研究の裾野の拡がりを考慮するとともに、学術発信を常に行い、先端科学技術としての当該分野を国策として牽引することが重要である。
  核融合研究ワーキング・グループ(以下、「WG」という。)では、我が国の核融合研究をさらに発展・強化させるべく、当該分野を構成するプラズマ物理学と炉工学研究分野を概括する審議を行い、これまで長年にわたり核融合研究を支えてきた複数の実験装置を整理・統合しつつ、炉工学分野と併せて重点化・効率化するための方策を検討した。重点化にあたっては、共同利用・共同研究をさらに強化することに加え、新たな可能性を目指した研究の創生、不断の人材育成等を活性化させること等が重要であり、その方策の検討が必要となる。このため、WGにおいては、次の4つを主要な点として、今後の我が国の核融合研究の在り方を審議した。

1.   研究評価による研究者コミュニティの意見集約に基づき、重点化・効率化のための具 体的な計画を提言する。
2.   大学、核融合科学研究所、日本原子力研究所等の各研究機関の法人としての自律性と自主性を尊重し、計画の実行にあたっての諸条件の整備に努め、為しうることの検討結果を提言に活かすこと。
3.   新しい国内の研究体制の推進と研究計画の策定にあたっては、研究者コミュニティの総意の下に、重点化すべき研究計画を定めるとともに、その中核となる国内装置については、共同研究重点化装置と位置づけ、国際協力による大型装置での研究と併せて、実施しようとする機関と研究者コミュニティによる共同(利用)研究を一層推進すること。
4.   平成14年5月29日開催の総合科学技術会議で決定され、平成14年5月31日に閣議了解された「ITER計画について」の中で、「国内の核融合研究については、重点化、効率化を図りつつ、ITER計画と有機的に連携する体制を構築すること。この際、核融合研究開発を支える人材の育成、各種プラズマ閉じ込め方式の研究や中性子による放射化の少ない材料等の開発等に配慮すること。」が、留意事項として指摘されていること。

1.審議の経過

  今後の我が国の核融合研究の在り方について審議するため、学術分科会・基本問題特別委員会の下にWGが設置され、当該研究分野を代表する研究者により研究の重点化・効率化についての審議が集中的に行われた。
  WGの委員名簿及び審議の経過は、別紙のとおりである(資料1、2)。WGでは、第10回(3月25日)に議論の整理、第12回(平成14年7月29日)に論点整理を行い、第18回(平成15年1月8日)に本報告書を取りまとめた。

2.核融合研究の重点化とグランドデザイン

  WGでは、我が国の核融合研究を長期的に俯瞰しつつ、重点化すべき研究計画と国内共同利用・共同研究体制についての意見が取りまとめた。

(1) 重点化の必要性について
  ITER計画によって、核融合エネルギーの実現を目指す研究に大きな一歩を踏み出すにあたっては、研究基盤の充実とさらなる研究の発展を可能にするために国内の核融合研究について、今後の研究の重点を明確にする必要がある。研究の重点化にあたって考慮すべき点は以下の4点に集約される。
 
1. ITERへの寄与の明確化と国際的競争力の強化
2. 核融合炉の可能性を広げる研究の充実
3. 学術的な普遍化を目指す研究の充実
4. 人材育成(学生教育並びに若手研究者の研鑽)の充実
  この観点に立って当該分野の研究を迅速かつ効果的・効率的に進めるために
 
a.   既存装置の整理・統合と、研究者コミュニティに開かれた新たな研究の展開を可能にする共同研究重点化装置の導入
b.   共同利用・共同研究と連携協力研究の促進
c.   新たな可能性への挑戦を目指した研究の創生
  に重点を置くことが必要である。


(2) 核融合研究の新しいグランドデザインについて
  核融合炉の実現を目指す研究においては、ITERに代表される「開発研究」と、それを支える「学術研究とそれに基づく人材育成体制」とを包含する総合的研究の推進が重要とされる。前者は、特定の技術開発目標を一定期間に達成するための目的直結型の研究開発であるのに対して、後者、特にこれを担う大学等の学術研究は、研究者の自由な発想に基づいている。
  従って、核融合エネルギーの実現を目指す核融合研究を
 
ITERとの有機的連携を図りつつ推進すべき核融合炉を目指した開発研究
学理の探求に基づく当該研究分野の学問的体系化を目指す学術研究
という2つの側面を併せ持つ総合的な研究として捉え、国の定める核融合研究開発基本計画と整合性を取りつつ展開することが必要である。ここに、核融合炉の実現を目指す研究を、開発研究と学術研究の間で構成される階層構造として捉えたグランドデザインを図1に示す。この図は、核融合研究は異なる階層間の連携を図りつつ、体系的・組織的に推進する必要があることを端的に示しており、ITERを含む核融合炉の実用化に向けて、各階層からの寄与,特に共同研究重点化装置による研究を積極的に進めていくことが重要である。

図1核融合研究の階層構造
図1  核融合研究の階層構造

3.核融合研究計画の重点化の方策

(1) 既存の核融合研究計画の評価
  研究の現状を評価し、今後の計画を審議するためには、設置形態に応じた評価基準による科学技術・学術的な評価が必要であり、この評価は、外部に対する発信の機能も併せ持っている。WGでは、新しい核融合研究路線の展開を図るため、既存の研究計画について研究者コミュニティによる核融合研究の意義・位置づけの審議を実施し、固有の装置にとらわれることなく、分野横断的な学問的評価を行った。
  図2に現在の我が国の主たる研究の拠点を示す。資料3に示したとおり、複数の既存の実験装置(コンピュータを含む)についての評価結果を“成果と評価”として資料4に示す。ここでは個々の実験装置を縦糸と位置づけ、研究分野を横糸とする2元的な評価を行っている。いずれの計画についても、これまでの研究に対して高い評価が与えられているが、その完成度とこれからの研究計画についてはさまざまな角度からの意見が出された。WGではこれらを総合して、各研究計画・対象装置ごとに研究実績と今後の計画について、グランドデザインの中での位置づけを行い、その結果を“今後の展開”として資料4にまとめた。

図2我が国の核融合研究拠点
図2  我が国の核融合研究拠点

(2) 重点化計画の策定
  既存の研究計画の評価結果を受けて、WGでは、今後10年から20年にわたる我が国の核融合研究を推進するための重点化すべき計画の策定に向けて、複数の提案について審議を行った。その結果を資料5に示す。重点化計画の審議にあたっては、ITERが建設されることを前提として国内研究基盤の整備・推進を図ること、及び、今後30年程度で核融合原型炉を実現するための課題の解決に必要な研究計画を策定することの2点を条件とした。その結果、重点化すべき課題は、トカマク、炉工学、レーザー分野に絞り込まれ、これに既存の研究計画の研究評価の結果からヘリカル(LHD)を加えて、4つの重点化の柱が策定された。

(3) 重点化のための具体的計画
1 トカマク国内重点化装置計画
  核融合エネルギーの早期実現に向けて、トカマク方式の改良(高ベータ定常運転の実現による経済性向上等)を我が国独自に進めるとともに、ITER計画での主導権の確保と、数百名規模での人材養成によるITER計画との有機的連携を図るために、国内のトカマク装置を重点化することが必要である。本装置は、臨界プラズマクラスのプラズマ性能をもった超伝導装置とし、プラズマアスペクト比、断面形状制御性、帰還制御性において、機動性と自由度を最大限確保できるものとし、原型炉で必要な高ベータ(βN=3.5-5.5)非誘導電流駆動プラズマを、100秒程度以上保持することを目指すものである。計画の実施にあたっては、設置主体である日本原子力研究所/新法人と研究者コミュニティが研究計画を共同企画・立案しつつ実施することが重要であり、JT-60をトカマク国内共同研究の中核的役割を担う装置として位置づけて、トカマク国内重点化装置の建設開始まで運転を継続し共同研究を推進するとともに、ITERの動向を踏まえつつトカマク国内重点化装置への転換を図る必要がある。
2 核融合材料試験装置計画
  同じく核融合エネルギーの早期実現に必要な材料・ブランケット開発は、プラズマ閉じ込め方式の如何にかかわらず必須の課題である。特に、今後、実用化までの核融合炉用の第一壁候補構造材料の開発及びその材料が核融合炉環境下で中性子照射に耐えることを確認し、その特性データを取得するためには、IEA(国際エネルギー機関)の国際協力による核融合材料照射試験装置(IFMIF)計画が不可欠である。この計画は、効率的な材料開発に必要とされる学術研究にも大きな貢献が期待される。従って、IFMIFの重要システム要素について工学的な実証を行い、建設に必要な工学設計を完成することを目的とする工学実証・工学設計活動(EVEDA)に速やかに着手する必要がある。計画の実施にあたっては、日本原子力研究所/新法人と核融合科学研究所・大学が連携協力しつつ実施することが重要である。
3 レーザー高速点火計画
  レーザー高速点火計画FIREXは、最先端のレーザー技術と極限状態の科学を応用して、磁場核融合方式と質的に異なる方式により、核融合エネルギー実現の可能性を切り拓くものである。我が国独自の高速点火方式レーザー核融合の原理実証を目的とするFIREX第1期計画は、世界最高出力の超高強度レーザーにより核融合点火温度(0.5?1億度)への加熱を行うものである。この計画は、核融合炉の可能性を拡げるばかりでなく、我が国の学術基盤の強化とレーザー技術に関する知的財産権の確保に貢献するものである。さらには、その成果により、点火・燃焼の実現を目指す第2期計画に発展させるか否かの判断を行うことも可能となる。FIREX計画を研究者コミュニティ全体の計画とするために、大学共同利用機関との連携等の方策を検討することが望ましい。
4 大型ヘリカル装置(LHD)計画
  上記の3つの重点化計画を推進する場合、大学共同利用機関である核融合科学研究所において推進されているLHD計画が、当該分野の学術研究の発展に果たす重要な役割にも注目しなければならない。LHDは、我が国で発案されたヘリオトロン磁場配位を採用することにより、無電流環状プラズマによる核融合炉を目指して造られた磁場閉じ込め装置である。LHDを共同研究重点化装置として活用することによって、今後も、炉心プラズマに外挿できるパラメータ下における環状プラズマの総合的理解、ITERへの寄与、新しい閉じ込め配位研究のための装置との連携等を目標に、LHDを用いた学術研究を継続して進めることが必要である。LHDの研究目的を資料6に示す。

  今後も長期にわたる核融合研究を推進するためには、学術研究から開発型の研究にまたがる広い研究領域を包括する必要がある。そのためには、我が国の核融合研究の裾野の広がりを考慮しつつ、学術発信を続け先端技術を牽引することが重要である。その実現のためには、上記の3つの重点化計画と、現有の研究資源であるLHDでの研究を共同利用・共同研究のための重点化計画として位置づけ、活用することが重要である。

(4) 重点化計画の優先度について
  以上の審議結果を踏まえ、WGは、既存のLHDを除く重点化すべき上記3つの研究の柱に対して、次のとおりの方策を提言する。
1 核融合エネルギーの早期実現を目指し原型炉に向けた重要な課題の解決を図る上で、ITER計画との連携を図りつつ、無衝突プラズマ領域における高ベータ定常運転の研究を推進するため、国内のトカマク重点化装置を優先する必要がある。
2 材料・ブランケット開発は、プラズマ閉じ込め方式によらず必須の課題であり、その中核であるIFMIF計画は核融合開発研究に不可欠である。従って、その工学実証・工学設計活動(EVEDA)に速やかに着手する必要がある。そのために、国内実施体制を急いで確立する必要がある。
3 我が国独自の計画として高速点火方式レーザー核融合の原理実証計画第1期を開始することは、磁場核融合と異なる原理に基づく核融合炉の可能性を拡げるばかりでなく、我が国の学術基盤の強化と知的財産権の確保のために必要である。

(5) 既存装置の整理・統合について
  以上のとおり、重点化のための審議結果と既存装置についての評価結果を踏まえ、これらについての今後の在り方をまとめると、以下のとおりである。
1 重点化計画の基盤となるJT-60とGEKKO-XIIに関しては、次期計画の開始時まで運転を続け、装置建設に合わせて計画を完了させる必要のあること。
2 LHDについては、現有資源として高性能プラズマの生成による環状プラズマの普遍的性質の探求を進めITERを含む環状プラズマへの学問的寄与を明確にするという所期の目的達成のために研究を継続する必要のあること。
3 重点化の柱となるJT-60、GEKKO-XII、LHD以外の装置に関しては、然るべき時期に計画を完了すること。ただし、斬新な研究の展開による装置の運転延長の提案は、新たな可能性を目指した研究の候補になり得る。
4 4つの重点化計画での共同利用・共同研究を活性化するとともに、独創的なアイデアによる新たな可能性への挑戦への機会を生み出せるような仕組み・研究体制の構築、そしてこれらを可能とする新たな措置が必要であること。

4.共同利用・共同研究の強化の方策

  我が国の核融合研究が新しい段階に入り、国内の共同研究重点化装置及び国際協力によるITERや核融合材料試験装置による研究への展開が行われようとしている現在、これらを軸とする研究はもちろんのこと、新たな可能性を目指した研究機会を生み出すためにも共同利用・共同研究の一層の活性化が必要となる。従って、研究者コミュニティの総力を上げた共同利用・共同研究を実りあるものにするためには、これを担保する共同利用・共同研究促進措置が必要となる。具体的には、共同研究費の拡充をはじめとして、宿舎、旅費等の充実を図る等の方策の検討が必要である。
  以下に、これらの受け皿となる核融合科学研究所、大学、日本原子力研究所の果たすべき役割と、その促進のための方策を述べる。

(1) 大学共同利用機関としての核融合科学研究所の在り方
  核融合科学研究所においては、核融合プラズマの学理とその応用の研究との創設の理念に基づき、我が国独自の方式である大型ヘリカル実験計画と理論シミュレーション研究を推進してきた。我が国の核融合分野における学術研究に資する役割の強化が一層求められている現状に鑑み、大学共同利用研究の中核機関として大学との強い連携・双方向性の強化等が必要であり、運営体制や研究の対象範囲等の見直しを行い、研究計画の一層の活性化を可能とする制度設計の充実を図る必要がある。
  LHDの一層の活用のためには、LHDの研究計画を立案するシステムの工夫、共同研究委員会の機能改革等、共同研究の推進機能を強化する方策を検討することが必要である。また、炉心プラズマに外挿可能な無電流プラズマ装置としての特徴を生かした環状プラズマの閉じ込め改善、定常プラズマ実験等の分野で、トカマク計画との連携を強める必要がある。
  提案されている高速点火(FIREX)計画を中心とするレーザー核融合研究の分野では、大阪大学等との連携を図り、関連する共同研究を積極的に推進することが必要である。さらに、大学の先駆的・萌芽的研究とも密接に連携・協力し、核融合のための学術基盤研究の拠点として、また新たな可能性への挑戦の場の一つとしての役割を担うことが期待される。
  加えて、炉工学研究の包括的・総合的な推進が今後益々重要となるため、特に、核融合材料試験装置での国際的な共同研究を初めとして、ブランケット工学、超伝導コイル技術、安全性研究、核融合炉設計等の炉工学に関連した幅広い分野における大学の炉工学研究を、大学共同利用機関として取りまとめていく役割が期待される。

(2) 法人化後の大学の役割
  大学における研究は、学術基盤に貢献することを目的に計画が進められてきており、数千名規模の研究者コミュニティを支えるための不断の人材育成において中心的な役割を果たしている。従って、今後の核融合研究の展開を図るためには、大学における研究の展望が的確に把握され、振興策を提示していくことの必要性が確認されている。しかしながら、個々の計画についての今後の方策の策定についての議論は、個々の大学の自律性と自主性を尊重し、特に法人化後の各機関における研究の方針によるところが大であることの認識が必要である。
  大学においては、学術研究の推進と学生の教育が2つの大きな柱と位置づけられており、トカマク、ヘリカル、レーザー、炉工学等と広範囲な研究の体系化と連携が必要な核融合研究分野においては、大学共同利用機関である核融合科学研究所との連携や日本原子力研究所との共同企画・共同研究を強め、大学の学術研究の基盤を維持しつつ、学生への研究指導を行う必要がある。さらに、これらの研究基盤を有効に活用するためには、双方向性を持つ共同利用・共同研究の積極的な推進が必要である。
  大学における研究としては、学内協力の推進等自主的に競争力を高める施策も実施し、研究拠点としての学術的評価を高めることが双方向性ある共同研究の受け皿となるためにも必須である。人材養成の上でも、世界的な研究ビジョンを持った新たなリーダーの育成を学生教育に並行して重視すべきである。
  そのため、核融合科学研究所や日本原子力研究所等とのより強い連携を図る等、大学における先駆的・独創的研究の積極的な支援の方策を共同利用・共同研究をベースとして進めることが必要である。

(3) 日本原子力研究所及び新法人の役割と共同研究の強化
  日本原子力研究所については、国からの付託によるITERを中心とするトカマク型核融合システムの開発研究を推進する役割が求められており、核燃料サイクル開発機構との統合による新法人においても、ITER計画、トカマク炉心プラズマ開発、炉工学開発を我が国の中核的な機関として推進し、核融合開発研究に必要な人材育成を進めることが必要である。
  現在、日本原子力研究所では、トカマク(JT-60)等による研究を大学、核融合科学研究所の研究者等との共同企画・共同研究に供する努力がなされている。この一環としてJT-60では、一部の研究テーマのリーダーを大学等の研究者とし、日本原子力研究所と大学等が一体となって研究を実施する試みがなされており成果が上がっている。今後、ITERを中心として長期的な人材の育成が必須となる状況を踏まえ、これを発展させた共同研究の運営体制を構築することは、我が国の核融合開発研究に不可欠である。このため、JT-60をトカマク国内共同研究の中核として位置づけ共同研究を推進するとともに、ITERの動向を踏まえつつ、トカマク国内重点化装置への転換を図る必要がある。
  また、炉工学分野では、核融合材料照射試験装置計画を大学等との連携の下で推進する役割、ブランケット、超伝導、加熱・電流駆動を含む所要の開発研究を、我が国の中核機関として推進する役割が求められる。
  平成17年度に予定される独立行政法人化後も、新法人に期待される核融合開発研究の中核機関として果たすべき役割は、より一層強く求められる。従って、トカマク国内重点化装置への転換の前後に関わらず、新法人に課せられる開発研究の目標の達成と継続的な人材の育成をより効果的に進めるために共同企画・共同研究の運用体制を早期に確立することが強く望まれる。

(4) 共同利用・共同研究促進について
  すでに述べたように、これまで長年にわたりプラズマ研究を担ってきた多数の実験装置を整理、重点化・効率化し、トカマク、ヘリカル、レーザー、炉工学の大型装置による展開、さらには新たな可能性への挑戦を図っていく中で、共同利用・共同研究の推進が極めて重要である。以下に具体的な2つの点を示す。

1 双方向的共同研究の促進
  各機関にある装置が整理、重点化される中で、大学や研究機関にある装置や研究環境を利用して、双方向的に共同研究を可能にすることが研究機会を増やすための重要な施策になるものと考えられる。従来の共同研究は、大学の研究者が大学共同利用機関を研究の現場として共同研究を行うことが想定されていたが、今後の核融合研究の発展のためには、その逆の研究者の動き、すなわち、共同利用研究機関の研究者が大学(講座、センター、研究所等)、研究機関等へ出向いて共同研究を実施することが両者の研究資源の相乗的な活用のために必要になる。そのため、双方向性のある共同研究を制度的に定める等新たな方策が必要になる。
  なお、具体的な課題として、大学での先駆的実験への他機関からの参加、LHD計画共同研究のようなシステム(大学—大学間の研究者派遣のサポート)、必要な研究経費等の拡充、日本原子力研究所等の研究機関への研究参加機会及び共同研究費の充実、等が挙げられる。

2 連携研究の実施
  これら共同研究の中でも特に、相当規模の人的資源、物的資源、知的資源を互いに有効利用する等の連携研究の方策については、特別な措置が必要になることが想定されるため、これを具体的に検討していくことが、共同研究の推進のために特に有意義であると考えられる。

5.重点化後の人材育成の在り方

  実現まで長期の間を要する核融合研究において、ITER計画のような国際的大型プロジェクトを成功させ、かつ我が国が主導的役割を担うためには、高度な専門教育に基づいた不断の人材育成が必須である。重点化後の人材育成においては、共同利用・共同研究の効率的な活用を踏まえ、研究及び教育が最適化されるような適正な競争的環境の設定、研究及び研究者の積極的な交流・流動化を可能とする組織・制度設計が必要となる。
  人材育成にとって、優秀な若手研究者が最先端の研究の場に身を置けるような環境整備が肝要である。具体的には、国際的レベルの大型実験装置への直接的関与、及び大学等の得意とする機動的な小規模装置での萌芽的・独創的研究への参加等を挙げることができる。人材育成においては、このような多様かつ魅力ある研究の機会を多くの研究者に提供することが重要である。
  大学以外の研究機関において行われている高度専門性養成への努力に鑑みると、大学と研究機関の連携・協力の下での人材育成の枠組みの検討が必要である。学生教育を行う上で、他の大学法人等へ学生が長期滞在することも今後増えることも予想され、対応する制度設計が必要となる。学生教育の観点からも相応しい、旅費の仕組み、受け入れ機関の身分等の整備、受入先でのリサーチアシスタント等の大学院生の経費の新設、学生宿泊施設の整備等を早急に検討し、遅滞なく実現することが期待される。従って、人材育成においても、共同利用・共同研究促進措置や、新たな可能性への挑戦への措置を十分に活用することが肝要である。

6.まとめ

  WGでは、核融合研究を進めるための学術・開発両面からの貢献の必要性に基づき、従来の複数の方式による炉開発路線から、重点化・効率化された路線への転換(パラダイムシフト)を進めるための検討を行い、報告書をとりまとめた。本報告書では、今後の我が国の核融合研究についてのグランドデザインを定めるとともに、これまで長期にわたり核融合研究を担ってきた多数の実験装置を整理し重点化・効率化を図ること、共同利用・共同研究を強化推進することを提言し、併せて新たな可能性を目指した研究、不断の人材育成等を可能とする方策が必要なことを述べている。
  ITER計画によって核燃焼プラズマを用いた研究機会が約10年後に実現することに鑑み、30年程度を目途に核融合炉を早期に実現すること、並びにさらに優れた核融合炉の可能性を追求するためには、その進行を制限する項目と課題(クリティカルパス)を定め、核融合研究を進める必要がある。従って、WGでは、研究者コミュニティによる既存の研究計画と提案された重点化すべき計画についての評価を行い、今後重点化すべき課題を、トカマク(トカマク国内重点化装置計画)、炉工学(核融合材料試験装置計画)、レーザー(レーザー高速点火計画)の3つに絞り込み、これに既存のヘリカル(LHD)を加えて4つの重点化の柱を策定した。
  WGでは、研究計画の中核となる国内装置(JT-60及びそれに続くトカマク国内重点化装置、LHD、GEKKO-XII及びそれに続くレーザー高速点火装置)を共同研究重点化装置として位置づけ、国際協力による炉工学分野の核融合材料試験装置(IFMIF)と併せて、共同利用・共同研究を積極的に促進することを提案するものである。その際、重点化計画の基盤となるJT-60とGEKKO-XIIに関しては、次期装置建設に合わせて計画を完了させる必要がある。また、重点化の柱となる共同研究重点化装置以外の既存装置については、然るべき時期に計画を完了することが必要になると判断した。ただし、斬新な研究への展開による装置の運転延長の提案は、新たな可能性を目指した研究の候補として、次の展開につながり得るものである。
  一方、大型の装置への重点化と併せて、萌芽的・独創的なアイデアを積極的に伸ばす方策と人材育成の方策を確保することは、大変重要な課題である。我が国の学術研究の振興のためには、研究者が新たな可能性を目指した研究の機会を得てこそ独自性の高い研究を展開し、優秀な人材を育てることのできる環境が整うものである。従って、重点化後の当該分野の研究の推進のため、研究者コミュニティへの責任を負う大学共同利用機関等の共同利用・共同研究に関わる機能を活用して、新たな可能性に挑戦できる措置の実現が是非とも必要である。
  本報告書が提言する今後の核融合研究の重点化と共同利用・共同研究の推進のためには、国の施策に反映されるべき具体的な課題の解決が必要である。そのため、今後も、研究者コミュニティ内の継続的な意思疎通を図り、併せて行政との接点を維持することを目的として、本WGのような審議の場が継続的に設置されることが望まれる。


資料1

科学技術・学術審議会学術分科会基本問題特別委員会
核融合研究ワーキング・グループ委員名簿

(敬称略)

(委員)
  飯  吉  厚  夫      中部大学長
  小  平  桂  一      総合研究大学院大学長
末  松  安  晴      国立情報学研究所長

(専門委員)
  大  引  得  弘      京都大学エネルギー理工学研究所教授
  桂  井      誠      東京大学高温プラズマ研究センター長
  菊  池      満      日本原子力研究所那珂研究所炉心プラズマ研究部次長
  関      昌  弘      日本原子力研究所那珂研究所核融合工学部長
  寺  井  隆  幸      東京大学大学院工学研究科教授
  野  田  哲  二      独立行政法人物質・材料研究機構ナノマテリアル研究所主幹研究員
  松  井  秀  樹      東北大学金属材料研究所材料試験炉利用施設長
  松  田  慎三郎      日本原子力研究所那珂研究所長
  藤  原  正  巳      核融合科学研究所長
  谷  津      潔      筑波大学プラズマ研究センター長
  山  中  龍  彦      大阪大学レーザー核融合研究センター長
  吉  田  直  亮      九州大学応用力学研究所炉心理工学研究センター長
  渡  辺  国  昭      富山大学水素同位体科学研究センター長

(科学官)
  本  島      修      核融合科学研究所大型ヘリカル研究部研究総主幹

(学術調査官)
  小  川  雄  一      東京大学高温プラズマ研究センター教授

◎は、座長



資料2

科学技術・学術審議会学術分科会基本問題特別委員会
核融合研究ワーキング・グループの審議経過

1. WGの設置
  平成13年6月7日に開催された科学技術・学術審議会学術分科会基本問題特別委員会において、大学等における核融合研究の推進を中心として、日本原子力研究所における研究開発も視野に置きつつ、文部科学省における核融合研究に関する議論を行うため、同基本問題特別委員会に「核融合研究ワーキング・グループ」の設置を決定。

2. WGの構成
  18名(座長:末松安晴国立情報学研究所長)

3. WGの開催状況
第1   平成13年 7月 23日 (月)   検討課題について討議
平成13年 11月 1日 (木) 今後の検討について討議
平成13年 11月 16日 (金) 関係機関からのヒアリング
平成13年 11月 20日 (火)               〃
平成13年 12月 10日 (月) 核融合関係者からのヒアリング
平成14年 1月 8日 (火) 核融合研究の今後の在り方について審議
平成14年 1月 25日 (金)               〃
平成14年 2月 15日 (金)               〃
平成14年 3月 8日 (金)               〃
10 平成14年 3月 25日 (月) 「核融合研究の在り方に関する議論の整理と今後の検討の進め方について」のとりまとめ
11 平成14年 7月 11日 (木) 核融合研究の今後の在り方について審議
12 平成14年 7月 29日 (月) 核融合研究WGのとりまとめへの論点整理について審議
13 平成14年 9月 26日 (木) 核融合研究の今後の在り方について審議
14 平成14年 10月 24日 (木)               〃
15 平成14年 11月 14日 (木)               〃
16 平成14年 11月 29日 (金) 報告書骨子案審議
17 平成14年 12月 18日 (水) 報告書草案審議
18 平成15年 1月 8日 (水) 報告書審議


資料3

我が国の核融合研究を支える種々の実験装置(コンピュータを含む)

(1) 磁場閉じ込め研究
CHS(核融合科学研究所)
GAMMA10(筑波大学)
Heliotron-J(京都大学)
JFT-2M(日本原子力研究所)
JT-60 (日本原子力研究所)
LHD(核融合科学研究所)
プラズマ実験設備(東京大学)
TPE-RX(産業技術総合研究所)
TRIAM-1M(九州大学)

(2) レーザー核融合研究
激光XII号(大阪大学)
Super-ASHURA(産業技術総合研究所)

(3) 炉工学関連研究
炉工学関連設備(東北大学金属材料研究所材料利用炉試験施設)
炉工関連装置(物質・材料研究機構)
トリチウム設備(富山大学)
(日本原子力研究所、核融合科学研究所における炉工学や、評価対象となったプラズマ実験装置と併設されているものについては対象外とした。)

(4) スーパーコンピュータ
核融合科学研究所
日本原子力研究所


資料4

既存の核融合研究計画の評価結果

1. 磁場閉じ込め核融合研究
(1) 成果と評価
CHS(核融合科学研究所)

ヘリカル系のサテライト装置として長期に渡り多くの成果を挙げた。
LHDの物理設計の最適化にも貢献。
GAMMA-10(筑波大学)

プラズマ中の電場形成に関わる物理現象を中心として成果を挙げた。
Heliotron-J(京都大学)

立体磁気軸を持つヘリカル系としての要素研究の位置づけにある。
JFT-2M(日本原子力研究所)

JT-60のサテライト装置として多くの成果を挙げた。また、フェライト鋼試験を実施し成果を挙げた。
JT-60(日本原子力研究所)

臨界プラズマ条件を達成し、ITER計画の推進に必要なデータベースと先進トカマク炉心プラズマ開発において多くの貢献。
LHD(核融合科学研究所)

超伝導・無電流プラズマ装置としての特徴を生かし、高性能環状プラズマの閉じ込めの物理の探求、定常プラズマ実験等で多くの貢献。
プラズマ実験設備(東京大学)

多様性を持つ超高ベータプラズマを中心とする学術研究として展開し成果を挙げた。
TPE-RX(産業技術総合研究所)

原理実証規模の研究には到達していないが、興味ある成果を挙げた。
TRIAM-1M(九州大学)

定常トカマク運転の実証において特徴的な成果を上げた。
(2) 今後の展開
CHS

LHDの先行実験としての役割を果たしつつ、揺動研究等の先進的研究を進め、その成果を学問的に評価すべき。
大学との連携を通じ、学術的にインパクトのある相当規模の全国的共同計画としての展開案を探るべき。
GAMMA-10

残された課題である閉じ込めのメカニズムの解明に向けてプラズマ物理に重心を置く研究の展開が必要。
大学の研究としてのあり方を探ると同時に、学術的にインパクトのある相当規模の全国的共同研究計画としての展開案を探るべき。
Heliotron-J

配位の新規性によるプラズマの特性を早く同定し、その成果を学問的に評価すべき。
大学の研究としての在り方を探ると同時に、学術的にインパクトのある相当規模の全国的共同研究計画としての展開案を探るべき。
JFT-2M

今後の展開については、材料評価(C&R)の結果と次期高ベータ・定常トカマク計画に必要なデータベースが十分得られているかに照らして判断すべき。
JT-60

大学等との共同研究を強化しつつITERへの寄与を最大化し、トカマク国内重点化装置(次期高ベータ・定常トカマク計画)への転換を図るべき。
次期計画への転換の前後を問わず、国の核融合開発計画上に占める役割を果たすとともに、先進トカマク炉心プラズマ開発の中心として国内関連研究者との共同計画、共同研究の適切な発展を図るべき。
LHD

共同利用装置として、炉心プラズマに外挿可能な高性能プラズマの生成による環状プラズマの普遍的性質の探求を進め、ヘリカル系の炉心へのビジョンを明らかにすると同時にITERを含む環状プラズマへの学問的寄与を明確にするべき。
国内関連研究グループの受け入れ態勢をさらに整えるべき。
プラズマ実験設備(東京大学)

今後とも多様性を持つ学術研究として発展を図るべき。
TPE-RX

開発型の研究ではなく学術面への貢献を目指した研究としての位置づけの確認が  必要ではないか。今後大学等とのどのような学術的な交流が可能であるかの検討が必要。
TRIAM-1M

強磁場超伝導装置としての特徴を生かし、定常トカマクプラズマを用いた学術的研究を行い、その成果を学問的に評価すべき。
大学の研究としてのあり方を探ると同時に、学術的にインパクトのある相当規模の全国的共同研究計画としての展開案を探るべき。

2. レーザー核融合研究
(1) 成果と評価
激光XII号(大阪大学)

レーザー核融合研究の中核としての実績を持ち、高温・高密度爆縮実験において多くの貢献。
高速点火概念の発明と1000万度の加熱の実証。
Super-ASHURA(産業技術総合研究所)

KrFレーザーの開発で成果あり。
(2) 今後の展開
激光XII号

高速点火方式レーザー核融合の原理実証実験計画第1期を学術研究として開始すべき。全国共同利用施設として活用していくうえで、核融合科学研究所との強い連携の方策が必要。
Super-ASHURA

ドライバーとしての将来性の判断を行った後、方針の策定が必要。
FIREX計画との連携・相互乗り入れが必要。

3. 炉工学関連研究
(1) 成果と評価
炉工学関連施設(大学関係)

大学は、炉工学分野の研究を進める上での高いポテンシャルを有しており、材料開発・ブランケット、超伝導等において多くの貢献をしている。
炉工学関連施設(物質・材料研究機構)

材料関連開発研究において成果を上げた。
トリチウム施設(富山大学)

トリチウム安全取り扱い技術開発等トリチウム研究分野で重要な役割を担っている。
(2) 今後の展開
炉工学関連施設(大学関係)

ITER、IFMIF計画等を進めていく上で、日本原子力研究所、大学等の炉工学研究相互の連携が必要。その中での役割分担を明確にする必要がある。
東北大学金属材料研究所大洗施設は今後とも照射後材料試験を実施する施設として発展を図るべき。
核融合科学研究所が果たすべき役割の策定が急務である。
炉工学関連施設(物質・材料研究機構)

ITER、日本原子力研究所、大学等の炉工学研究と連携が必要。
研究のポテンシャルを維持することの方策の検討が必要。
トリチウム施設(富山大学)

大学の研究として活動を継続すべきであり、そのための方策の策定が必要。

(注) スーパーコンピュータについては、核融合プラズマを総合的に理解し、核融合科学とプラズマ理工学を体系的に進展させるため、解析的研究や大型シミュレーション及び可視化法を駆使した理論研究がますます重要になっており、評価においてはその重要性が認識された。従って、スーパーコンピュータシステムをより一層充実させ、研究所・大学間の共同研究を推進することが極めて重要である。WGでは、主として実験装置について審議が進められたため、スーパーコンピュータシステムの具体的推進策については今後の機会に譲るものとする。


資料5

重点化計画の評価結果

(1) トカマク国内重点化装置計画
ITER計画は、核融合燃焼の実証を主目的とする実験炉であるため、ITERの次の核融合原型炉に向けて、核融合炉の経済性向上を目指して無衝突プラズマ領域の高ベータ・定常化についての研究を並行して進める必要がある。
この分野は、JT-60及びWT-3、TRIAM-1M等の大学の研究が世界のフロントランナーとしての中心的役割を果たしてきた。トカマクの高ベータ定常化研究は、今後30年程度で発電実証プラントを実現するためにクリティカルな炉心プラズマ開発研究であることから、国際協力であるITER計画と有機的に連携しつつ、国内に臨界プラズマクラスの、ITERを上回るβNを準定常的に維持できる先進的なトカマク装置を持ち、核融合エネルギーの早期実現に向けて我が国のトカマク研究のポテンシャルを引き上げて世界を牽引することが極めて重要である。
高ベータ化と定常化を目指すという点で共通である3つの提案(JT-60改修計画、球状トカマク計画、TRIAM-1M計画)を統合し、“高ベータ定常トカマク実験装置(仮称)”とし、高ベータ(βN =3.5-5.5)非誘導電流駆動プラズマを100秒程度以上保持することを目指すこととする。
高ベータ定常トカマク実験装置(仮称)は、日本原子力研究所のJT-60のプラズマ加熱装置、計測装置等の研究資産を生かすことが必要で、日本原子力研究所/統合後の原子力新法人(現、那珂研究所)に設置することが望ましい。
高ベータ・定常化研究は、環状磁場閉じ込めの物理が共有する共通の研究課題である。高ベータ定常トカマク実験装置に加えて、球状トカマクによる高ベータ研究を大学レベルでの先駆的研究と国際協力を活用して展開し、また、LHDを用いた定常化研究を共同利用・共同研究として進める等、日本原子力研究所・核融合科学研究所・大学の連携の下、その学術基盤の確立にも総力を上げることが重要である。

(2) 核融合材料試験装置計画
14MeV中性子による重照射に耐える材料及び発電ブランケットの開発の成否は、閉じ込め方式の如何によらず核融合エネルギー開発上のクリティカルパスである。
材料・ブランケット開発の設定目標は、原型炉以降の炉材料とブランケットの開発及びその建設のための工学データベースの構築にあり、そのために、その中核となる国際協力による核融合材料試験装置IFMIFの速やかな建設が必要である。
2004年からの開始が提案されている工学実証・工学設計活動(EVEDA)の遅滞ない開始が必要である。
IFMIFの建設や実施形態については、将来EVEDA活動の成果をみて判断することが適当である。
IFMIF計画の推進に並行して、材料・ブランケット開発研究のための基盤整備を行うことが重要である。

(3) レーザー計画
レーザー高速点火方式による核融合点火温度の実現を目指すFIREX第一期計画は、原理実証段階にある研究である。高速点火は我が国独自の方式であり、FIREX計画の早期遂行により、世界に先駆けて核融合点火・燃焼が実証される可能性がある。
我が国の研究は、レーザー核融合の基本原理である高密度圧縮の達成、高速点火の概念実証等世界をリードする実績を上げている。また、ペタワットレーザーを用いたプラズマ追加熱実験により、核融合会議計画推進小委員会の設定した目標(1000万度加熱)を達成した。これらの実績を踏まえて、高速点火研究を次の段階に進めることが適当であると判断される。
レーザー核融合研究は、磁場閉じ込め分野とは異なる基礎学術・産業技術へのインパクトが期待できるため、学術研究としてFIREX計画の第1期(目標:爆縮プラズマを核融合点火温度まで加熱)の原理実証を進め、その結果により点火・燃焼の実現を目指す第2期)を再構築することが適当。
レーザー核融合研究については、大阪大学レーザー核融合研究センターが中心となって推進してきたが、今後、大学の法人化に際し、FIREX計画を研究者コミュニティ全体の計画とするために大学共同利用機関との連携の方策等を、具体的に検討する必要がある。


資料6

LHD研究の課題

1億度近傍の非燃焼プラズマについてヘリカル方式プラズマの物性を十分体系的に理解し、精度の高い科学的予言力を持つ物理モデルを確立すること、及びトカマクとの異同の理解を十分体系的に確立することを研究目的とする。
重点課題として以下の5項目をあげる。
1. 無衝突プラズマ領域での新古典輸送の低減の実証
2. 異常輸送機構の解明とその制御による閉じ込め改善
3. MHD平衡・安定性に関する物理モデルの確立
4. α粒子閉じ込めを想定した良好な高エネルギー粒子閉じ込め性能の実証
5. 高密度・高閉じ込めと両立するダイバータ機能による定常運転の実証
上記の研究課題を個別に達成することはもとより、ヘリカル系の炉心へのビジョンを明らかにするため、各種条件を総合して性能を検証する必要がある。
上記の研究課題はトカマク研究を補完する目的のものを含んでいる。環状プラズマの高性能化と閉じ込め特性解明に関する課題をトカマクとは異なった視点から解決し、将来の核融合炉の実現に寄与するため、トカマクと同等及びそれ以上の性能の達成を目指して、研究を遂行する必要がある。


資料7

用語解説

[2ページ]
国際熱核融合実験炉(ITER)計画
  核融合炉の科学的実証である本格的な核燃焼プラズマの達成及び長時間運転を目指したトカマク型の核融合実験炉計画。1992年から日本・米国・欧州・ロシアの国際協力として推進され、6年間の工学設計及び、主要機器の技術開発を行った。なお、現在は建設に向けた正式な政府間交渉が、日本・欧州・ロシア・カナダで行われている。

プラズマ閉じ込め方式
  プラズマは、固体・液体・気体に続く物質の第4の状態である。一般的に数千度以上では、どんな物質も原子核に捕捉されていた電子が自由に運動できるようになりプラズマ状態となる。核融合炉では一億度以上の高温プラズマを生成し、それを固体等の容器に触れることなく閉じ込める(保持する)必要がある。プラズマ閉じ込め方式は、磁場を利用した方式と短時間に高温プラズマを生成してしまう慣性(レーザー)方式に大別される。

放射化の少ない材料
  低放射化材料とも呼ばれる。核融合反応で発生した中性子は炉心プラズマを取り囲む構造材料の構成原子と各種の核反応を起こし、ある確率で新たな放射性同位元素(RI)を生成する。これを放射化といい、放射化しにくい、または生成されたRIの半減期が短いことを低放射化特性といって、特に断らない限り廃棄を想定しての特性を指すことが多い。低放射化材料とは、低放射化特性を備えた材料のことをいう。

[4ページ]
トカマク
  環状電流を有する磁場閉じ込めの一方式。強い環状磁場を有し、かつ、環状方向に電流を流すことによりプラズマを安定に閉じ込める。プラズマ電流はオーム加熱の原理により、プラズマ加熱としての役割も果たしている。旧ソビエトのクルチャトフ研究所で考案され、その優れた閉じ込め性能のために世界各国の研究所で、この形式のプラズマ実験装置が建設され研究されてきた。

炉工学
  核融合炉を概観した場合、核融合反応が起こる炉心プラズマと、プラズマを生成・保持させるための真空容器・ブランケット・超伝導コイル等から構成される。後者のような核融合炉を構成する機器類の研究・開発を炉工学と総称する。

レーザー
  慣性方式では、大出力パルスパワーを用いて、直径数mmの燃料小球を、等方的に爆縮(断熱圧縮)させ、瞬時に超高密度・高温プラズマを生成し、核融合反応を起こさせる。このような慣性方式での大出力パルスパワーとして、高強度レーザーが主に使われる。

[5ページ]
ヘリカル(LHD)
  ねじれた磁場コイルを用いた環状プラズマ閉じ込め方式をヘリカル系と称し、LHD(Large Helical Device の略)は、岐阜県土岐市の文部科学省核融合科学研究所で稼動中の世界最大規模のヘリカル実験装置。平成2年より建設が開始され、平成10年3月より実験が開始された。2本のヘリカルコイルと3対の円環コイルから構成されるヘリオトロン方式のヘリカル装置で、ヘリカルコイルの蓄積エネルギーも世界最大規模である。

高ベータ定常運転
  磁場閉じ込め方式では、プラズマ圧力と磁気圧の比を「ベータ(β)値」という。ベータ値が高いほど、高温・高密度プラズマを閉じ込めることができる。一方、現在のプラズマ実験では、高々数時間の運転であるが、将来の核融合炉では1年間にわたり定常に運転されることが望まれる。このような高ベータプラズマを定常に保持した運転の実現が、トカマク型核融合炉においては大変重要である。

臨界プラズマ
  プラズマに注入したパワーと核融合反応で発生したパワーの比をエネルギー利得Q値として定義する。臨界プラズマとはQ=1となるプラズマであり、臨界プラズマ条件はプラズマ温度、及びプラズマ密度とエネルギー閉じ込め時間の積、によって与えられる。JT-60(日本)とJET(欧州)では、臨界プラズマ条件を越えるプラズマパラメータが達成されている。

プラズマアスペクト比
  環状磁場閉じ込め方式における特徴的なパラメータは、円環の半径(主半径R)と円環の太さ(小半径a)であり、この比をプラズマアスペクト比(A=R/a)という。一般的なトカマク装置ではアスペクト比がA〜3程度であり、ヘリカル装置ではA=5〜7程度である。また、最近では、アスペクト比が極端に小さい(A<2)トカマクが着目されており、これを球状トカマクと呼ぶ。

断面形状制御
  トカマクプラズマの円環断面は縦長の非円形形状をしている。プラズマの閉じ込めや安定性において、断面形状が大きく影響する。非円形度を含めたプラズマ断面形状の最適化制御が重要となってきている。

帰還制御
  トカマクプラズマでは、プラズマ電流分布がプラズマの閉じ込めや安定性に大きく影響する。誘導方式の電流駆動ではプラズマ電流分布制御が困難であるが、非誘導電流駆動方式では、最適な電流分布への帰還(フィードバック)制御の可能性が高く、今後の重要な研究課題である。

βN
  トカマクプラズマのベータ値の上限値はプラズマ電流に比例し、環状磁場強度とプラズマ小半径に反比例することが、広範な理論計算により示されている。その比例係数を規格化ベータ値と称し、βN(normalized beta value)と記す。このβN値が高いほど、高性能・高効率な炉心プラズマが設計可能となる。

非誘導電流駆動プラズマ
  トカマクでは、プラズマ中に電流を流す必要がある。現在の多くのトカマク実験装置では、プラズマ電流を変圧器の原理(誘導方式)で駆動しており、プラズマ電流駆動時間に限界がある。核融合炉を定常運転するためには、非誘導方式による電流駆動が必要であり、具体的には、プラズマ自身がプラズマ電流を駆動させる機構を積極的に利用するとともに、中性粒子ビーム入射や高周波による電流駆動を想定している。

JT-60
  臨界プラズマ試験装置JAERI Tokamak-60の略称であり、日本原子力研究所那珂研究所で稼働している世界最大級のトカマク装置である。米国のTFTR(シャットダウン)、欧州のJET装置と併せて3大トカマクといわれた。JT-60で達成された5億度を越える世界最高温度は、ギネスブックにも登録されている。

[6ページ]
ブランケット
  核融合炉の炉心プラズマは、ブランケットと呼ばれる構造体で取り囲まれている。ブランケットの役割は、核融合炉で発生する14MeV中性子の運動エネルギーを熱に変換して取り出すこと、中性子とリチウムによる核反応を利用して燃料となるトリチウムを生産すること、ブランケットの外側にある超伝導マグネット等を保護するために炉心からの中性子を遮敞すること、である。

第一壁候補構造材料
  核融合炉心の高温高密度プラズマに直接面した容器の壁を第一壁という。第一壁は、核融合反応で発生した14 MeV中性子に直接さらされる。従って、長年の中性子照射に耐えうる材料が必要であり、しかも中性子による放射化が低い材料であることが望まれる。

中性子照射
  DT核融合炉で発生する14MeV中性子により、第一壁構造材料等が曝されることを中性子照射という。そこでは、14MeV中性子による材料中の原子弾き出し損傷に加えて、α粒子を生成する(n,a)反応によるヘリウムの蓄積が大きな問題となる。

IFMIF計画
  International Fusion Material Irradiation Facility(国際核融合材料照射施設)の略。DT核融合炉の構造材料は、核融合反応で発生した14MeV中性子での照射に曝される。このような核融合炉条件に近い環境での材料特性試験が行えるIFMIFの建設計画が、IEA協力の下で進められている。IFMIFでは、リチウムターゲットに重陽子ビームを照射し14MeV近傍の中性子を発生させる。

工学実証・工学設計活動(EVEDA)
  IFMIF計画における工学実証・工学設計段階を指す。現在の要素技術確証段階(KEP)活動に続く活動であり、IFMIFの重要なシステム要素についての工学的な実証、及びIFMIM建設に必要な工学設計を完成させることを目的として、IEAの下で国際協力により推進される。

高速点火計画FIREX
  Fast Ignition Realization EXperimentの略。中心に点火源となるホットスパークを持たない低温の超高密度プラズマを爆縮で作り、このプラズマが膨張により飛散するよりも時間よりも短時間(高速)に、短パルス(ピコ秒(10-12秒)程度)の超高強度(ペタワット(1015ワット))レーザーを照射してホットスパークを作り点火を起こす新しい点火方式。中心で点火が起こる従来方式よりも必要なレーザーのエネルギーが小さくなるばかりでなく、より高い核融合利得が得られる先進的な方法である。

超高強度レーザー
  近年のレーザー技術の進歩により可能となったテラワット(1012ワット)以上の出力を持つ、パルス幅(持続時間)がピコ秒(10-12秒)以下のレーザーのことをいう。

ヘリオトロン磁場配位
  京都大学において、我が国独自の方式として開発されたヘリカル方式のプラズマ閉じ込め用環状磁場配位。京都大学ではヘリオトロンシリーズとして複数の装置を建設・運転し、磁場配位の最適化を行ってきており、現在のLHDの基盤となった。ヘリオトロン磁場配位は、同じ方向に電流を流したヘリカルコイルにより形成される。

無電流環状プラズマ
  環状磁場閉じ込め方式では、環状磁場と、プラズマ小半径周りの磁場との重畳によるねじれた磁力線構造である必要がある。トカマクでは、プラズマ小半径周りの磁場を環状方向のプラズマ電流で発生させているが、ヘリカルでは、コイル自身をプラズマ小半径周りにねじることにより磁場を発生させている。これを無電流環状プラズマと称し、非誘導方式による電流駆動等が無い点で、定常運転の観点からは優れている。

炉心プラズマ
  核融合炉としての自己点火及びそれに近いパラメータ領域のプラズマを炉心プラズマと称す。

パラメータ
  物理量の総称をパラメータと称す。例えば、核融合炉心プラズマとして求められる物理量(パラメータ)として、温度、密度、閉じ込め時間等が挙げられる。

無衝突プラズマ領域
  荷電粒子の集合体であるプラズマは、クーロン散乱により相互作用を行う。クーロン散乱はプラズマ温度が高くなるほど、その散乱断面積(散乱確率)は小さくなる。例えば、核融合炉心プラズマの平均自由行程は10 kmであり、これは直径10m程度の環状磁場閉じ込め装置では、環状方向を数百回回転することに相当する。このような衝突が非常に小さい状態のプラズマを無衝突プラズマ領域と称す。

[7ページ]
GEKKO−XII
  昭和58年に大阪大学でレーザー核融合研究用に開発建設された当時世界最高出力(レーザー波長1ミクロンで出力30 kJ)の12ビームのガラスレーザー装置。世界で初めて固体の600倍の密度を持つプラズマの発生に成功し、レーザー核融合の基本原理(高密度圧縮)を実証した。

[14ページ]
立体磁気軸
  環状磁場閉じ込め装置において、プラズマ中心を磁気軸と称するが、その磁気軸が同一平面上に無く、捩れた状態になっていることを立体磁気軸と称す。環状軸対称でないヘリカル方式では、プラズマ閉じ込め最適化の観点から、立体磁気軸配位の研究が盛んになされている。

フェライト鋼
  核融合炉用の低放射化第一壁材料として有力な鉄系の候補材料。フェライト鋼は磁性を有しているのでプラズマ実験装置では閉じ込め磁場を乱す可能性があり、プラズマへの適応性試験が精力的に進められている。

超高ベータプラズマ
  ベータ値が数10%から100%にもなるようなプラズマ。核融合炉の高性能化や先進核融合炉心プラズマでは、このような超高ベータプラズマが求められている。従来型のトカマクやヘリカルが10%程度のベータ値であるのに対して、トカマクと類型の環状電流磁場閉じ込め方式である逆磁場ピンチ、スフェロマック、逆転磁場配位や、最近では球状トカマクや内部導体配位等において、新たな超高ベータプラズマの可能性が探求されている。

揺動研究
  新古典輸送、異常輸送の項を参照。

[15ページ]
KrFレーザー
  レーザー核融合方式の爆縮レーザーの一種。ガラスレーザーに比べて、吸収効率が高い紫外光(0.25ミクロン)を発生する、高効率・高繰り返し動作が可能、超均一照射や超端パルス増幅が可能、等の利点を有している。

[16ページ]
トリチウム
  原子記号3HまたはTで表示。水素の同位体で、三重水素ともいわれ、核融合炉の燃料として使用される。天然にはほとんど存在しないが、核融合炉では、核融合反応によって発生する中性子と、リチウムの反応を利用して作ることができる。

[17ページ]
球状トカマク
  通常のトカマクでは、プラズマアスペクト比AがA=3程度であるのに対して、プラズマアスペクト比が極端に小さい(A<2以下)装置を球状トカマクと称す。ベータ値が数10%のプラズマも実験的に達成されており、トカマクの高性能化の一種として期待されている。

14MeV中性子
  DT核融合反応では3.5MeVのα粒子と14MeVの高速中性子が発生する。α粒子はプラズマ加熱に供するのに対し、高速中性子はプラズマ閉じ込め容器である第一壁やブランケットに直接照射し、発電ブランケットのエネルギー源、及びリチウムと反応してトリチウム生成の役割を担う。なお14MeV中性子は、第一壁材料等の放射化も引き起こす。

ペタワットレーザー
  ペタワット(1015ワット)のパワーを有する超高強度レーザー。パルス長は非常に短い(ピコ秒(10-12秒)程度)が、高速点火方式によるレーザー核融合において、ホットスパークを持たない低温の超高密度プラズマの中心部に照射し、点火源となる高温スパークを作るのに使われる。

[19ページ]
古典輸送、異常輸送
  荷電粒子の集合体であるプラズマの輸送は、クーロン散乱によって支配される。このような輸送機構を古典輸送と称す。さらに、これに環状プラズマによる非均一磁場効果を取り入れた場合を新古典輸送と呼ぶ。一方、プラズマ自身の運動に起因した電磁場の揺動によってもプラズマ輸送が引き起こされ、これを揺動輸送という。揺動の種類や原因の同定が現在の研究では十分でないため、異常輸送とも称す。

MHD平衡
  プラズマは、マクロには電磁流体(Magneto-Hydro-Dynamics: MHD)として振舞う。流体方程式とMaxwell方程式を連動させたMHD方程式系において、力のバランスが取れた状態をMHD平衡という。

α粒子、高エネルギー粒子
  DT核融合反応では、3.5MeVのα粒子(ヘリウム原子核)が発生し、約10keVの炉心プラズマ加熱に供する。一方、プラズマを10keVレベルまで加熱する手段として、数百keV以上の高エネルギー粒子ビームが使われる。これらのα粒子や高エネルギー粒子は、プラズマを加熱するに十分な時間(約1秒程度)、プラズマ中に閉じ込められていなければならない。

ダイバータ機能
  環状磁場閉じ込め方式において、炉心プラズマから拡散してきた高温プラズマを排気する必要がある。これをダイバータ機能という。環状磁場閉じ込め装置では、プラズマと第一壁との境界領域での磁場配位を細工することにより、ダイバータ部と呼ばれる領域を形成し、プラズマの廃熱・排気の工夫をしている。