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大学共同利用機関の法人化について(中間報告)

2002/07/30
科学技術・学術審議会学術分科会

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大学共同利用機関の法人化について
(中間報告)





平成14年7月30日
科学技術・学術審議会 学術分科会



目    次

はじめに
1. 大学共同利用機関の設立経緯・実績
2. 大学共同利用機関の研究機関としての特徴
(1) 研究開発法人との対比
(2) 国立大学との対比
  1)国立大学との基本的性格の同質性
  2)大学附置研究所との対比
(3) 学術研究体制における位置付け
3. 大学共同利用機関の法人制度設計の考え方
4. 法人形態の骨組み
(1) 法人形態の考え方
(2) 新機構の構成及びその理念
(3) 機関再編に期待される効果
5. 法人の制度
(1) 法人の組織・運営システム
(2) 法人の人事制度
(3) 法人の目標・計画・評価
6. 関連する課題
(1) 大学附置研究所等との連携
(2) 総合研究大学院大学との連係
(3) 財務会計上の問題
(4) その他の重要課題


大学共同利用機関の法人化について

はじめに

  「知的存在感のある国」を目指し、かつ、「科学技術創造立国」を通して豊かな国造りを目指す我が国にとって、学術研究の積極的な推進は不可欠なものであり、このような学術研究は、大学個々による研究と、それらを横断し、重点的に発展させる大学共同利用機関との不可分な協調によって推進されている。

  平成14年1月29日、「今後の大学共同利用機関の在り方等に関する懇談会」は、その報告において、「大学共同利用機関が分野を超えて連合し、多数の研究所からなる機構として総合的な学術研究の中核の一つとなることについては、今後の我が国の学術全体の発展に資するという観点から意義深いと考えられる」と述べ、そのため、同時に「そのような機構の在り方、実現可能性、大学附置研究所等との連携の在り方等について、国立大学の法人化の在り方や総合研究大学院大学との関連にも留意しつつ、大学を中心とする研究者コミュニティの意見を踏まえて、科学技術・学術審議会において検討が行われること」を要望した。
  これを受けて、そのような機構の在り方等について検討するため、同年2月14日、科学技術・学術審議会の当分科会の下に大学共同利用機関特別委員会(以下、「特別委員会」という。)を設置した。

  一方、大学共同利用機関の法人化に際しての制度設計に関しては、平成12年7月以来、「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」において、国立大学と併せて検討が行われ、平成14年3月26日に「新しい「国立大学法人」像について」(以下、「最終報告」という。)が取りまとめられた。

  同最終報告においては、大学共同利用機関が、研究者の自由な発想を源泉とする学術研究を推進する機関であり、国立大学セクターに属する機関として位置付けられていることから、基本的に国立大学と共通した制度設計を行うことが適当であるとして、組織業務、目標評価、人事制度及び財務会計制度の各論点にわたる制度設計が提言されたが、役員以外の運営組織等の一部の項目については、大学共同利用機関の連合について検討中であったことから、考え方の大枠を示した上で、連合後の機構の姿に応じて、また、法人化後の国立大学の制度設計との整合性も考慮しつつ、適切な運営組織等を検討すべき旨の提言がなされた。

  同特別委員会では、これらの経緯及び理念を踏まえ、大学共同利用機関の法人化後の制度設計の在り方や大学共同利用機関の再編の在り方について、本年3月以来9回にわたって専門的な検討を行い、これまでの検討について、以下のように考え方を取りまとめた。


1.大学共同利用機関の設立経緯・実績
  大学共同利用機関は、昭和46年に高エネルギー物理学研究所を第1号として発足し、我が国独自の方式として、各々の分野において高度な学術研究を進めることのできる中核的な研究拠点として発展してきた。その精神は、昭和44年8月の学術審議会答申に示されているとおり、「大学における研究と同様の基礎科学の研究を行い、かつ、国立大学の教員その他の者でこの研究所の目的である研究と同一の研究に従事する者に利用させるものとして設置するものとし、文部省直轄の国立研究所とする。なお、この研究所は、大学院の学生の教育に協力するものとする。」である。

  現在までに、種々の学術分野の要請に基づき、15機関18研究所に拡充されたが、これは我が国の学術研究に対する研究者コミュニティ(国内外の関連分野の研究者群)が国際水準の発展を目指して努力する過程で必須の機能として求められ、それが学術政策に反映されたものであるといえる。この趣旨は、昭和59年2月の学術審議会答申の「共同利用機関が必要かつ有効と考えられるにもかかわらず未設置である分野については、今後、研究動向等を勘案しつつ附置研究所、所轄研究所等の転換も含め計画的にその整備を図る必要がある。」との提言に示されているとおり、我が国独自の学術研究の発展を実現することにある。

  大学共同利用機関では、当該機関外の学識者による評議員会、外部の学識者も含む運営協議員会が設置され、所長の推薦、共同利用計画の立案、教員の人事等、研究者コミュニティの意向を反映した形での必要な施策が効率的に実施されており、我が国のそれぞれの学術分野の振興に必要とされる共同利用・共同研究を推進してきた。また、我が国の研究拠点としての機能を果たすことはもちろん、種々の学術協定等に基づく国際協力を推進する役割も担ってきた。

  大学共同利用機関が複数の分野で長期にわたって成果を創出し続けることができたことについては、大学共同利用機関であるが故の研究者コミュニティとの関係に着目する必要がある。大学共同利用機関は、研究者コミュニティの求めに応じて可能な限り共同研究の機会を提供してきている。その結果、大学と大学共同利用機関双方の研究者にとって、多くの成果が得られ、その分野の学術基盤が着実なものになってきたと評価できる。これは、典型的なボトムアップ的手法に基づく研究の進め方の成果である。

  重要な点は、大学共同利用機関が共同利用・共同研究を通して、研究者コミュニティから厳しい評価に常にさらされているという点である。この点は、学会等での評価の定まり方に負うところはもちろん、制度的には、運営協議員会とその下の共同研究委員会によって担保され続けてきた大きなシステム上の特徴といえる。単なる利用者と研究拠点の関係に止まらないこの緊張感のある研究者コミュニティとの関係により、それぞれの分野の研究の健全性が維持され、国際的にも高い評価の得られる多くの研究成果の創出に結びついているといえる。


2.大学共同利用機関の研究機関としての特徴
  大学共同利用機関の基本的な特徴は次のとおりである。
1 学術研究の推進
    研究者の自由な発想を源泉とする学術研究を推進している。
2 大学の研究者にとっての中核的な研究拠点
    学術研究の拠点として、大規模な施設設備等を全国の大学等の多数  の研究者が共同で利用することにより、効果的な共同研究を実施して  いる。当該分野の研究ネットワークの中心として広く開かれた組織である。
3 大学の人材養成と一体となった研究
    大学院学生の受入れを行うなど、研究と教育を一体的に実施し、人  材育成に貢献している。
4 海外に対する発信機能
    大学共同利用機関は、共同研究を軸としたCOE(卓越した研究拠点)としての性格を有する機関でもあり、日本国内のみならず、世界の研究者に対する研究情報の提供などの研究協力を行うなど、当該分野において世界に対する日本の拠点としての役割を果たしている。
5 研究者の自主性・自律性を基本とした管理運営
    研究者の自主性・自律性を基本とした管理運営を保障した仕組みを有する。運営に当たっては、機関内部のみならず、外部の学識者の参画も得た運営組織(評議員会及び運営協議員会)により、開かれた運営を確保している。
6 国立大学と同様の制度上の位置付け
    大学共同利用機関の教員(教授、助教授等)については、国立大学の教員と同一の教育職俸給表を適用するとともに、人事上一定の自主性を保障している。また、大学共同利用機関は、国立大学と同一の法律に基づき設置され、予算・会計制度も同一の法令に依拠している。
  
  以下においては、大学共同利用機関と各種研究機関等との対比を行う中で、これらの基本的な特徴について、さらに詳しく示すこととする。

(1)研究開発法人との対比
  (研究特性)
  研究開発を行う独立行政法人(以下「研究開発法人」という。)等においては、1公共の福祉など市場の原理になじまない分野や食料、エネルギー、資源確保等の政策遂行に必要な研究開発、2高リスク、高コストで民間では対応し難い分野の研究開発、3新たな技術の創出を目指した研究開発や技術的課題の解決のために基礎に立ち返った研究開発など、所管省庁の行政目的の下、社会経済の要請等に基づく課題の解決等を目指す研究が行われている。このような研究においては、その性格上、研究により何を達成するかについて、あらかじめ目標を明確にしておくことが重要であり、研究計画の立案等に先立ち、国において明確な目標を設定する手法がとられている。

  一方、大学共同利用機関において行われる学術研究は、人文・社会科学から自然科学にまで及ぶ知的創造活動であり、新しい法則や原理の発見、分析や総合の方法論の確立、新しい技術や知識の体系化、先端的な学問領域の開拓など、研究者の自由闊達な発想と研究意欲を源泉として真理の探究を目指すものである。その成果は、人類共通の知的資産を形成するとともに、産業、経済、教育、社会などの諸活動及び制度の基盤となるものであり、また、人間の精神生活の重要な構成要素を形成し、広い意味での文化の発展や文明の構築に大きく貢献するものである。このような研究においては、真理の探究を目指し、未知の領域を開拓するという性格上、個々の研究者の自主的な発意に負うところが大きく、研究者の発意に先立ち、国があらかじめ目標を設定する手法は不適切であることから、研究者の自主性、自発性を尊重する手法がとられている。

(共同利用)
  大学共同利用機関は、国において明確に目標を設定して研究を行う研究開発法人と異なり、共同利用の機関であることから、研究者コミュニティの研究者が共同して、所長の推薦、研究の方向性、研究計画、研究者の人事等を決定することが重要である。

(2)国立大学との対比
  1)国立大学との基本的性格の同質性
  特定分野の学術研究を行うことを目的とする研究所は、従来、最も関係の深い大学に附置する形で設置されていたが、学術研究の進展に伴い、個別の大学の枠を超え、全国的観点に立った研究者の結集や研究の実施が求められるようになった。大学共同利用機関は、このような背景の下、昭和46年に、国立大学における学術研究の発展に資することを目的とし、国立大学の研究者の利用に供するとともに、研究を行い、かつ、大学院教育等への協力を行う機関として、特定の大学に附置せず、いわば、すべての国立大学に共通に附置された研究所という新しい形により制度化されたものである。

  大学共同利用機関は、「学問の自由」を基本理念とする国立大学と同様真理の探究を目的とする学術研究を行う研究機関であることから、次のような仕組みが取られている。
1   大学共同利用機関の職員の種類としては、職務の類似性から、大学と同様に教授、助教授等を置き、教育職俸給表(−)が適用されるなど、身分や処遇を大学と同じ取扱いにしており、これによって、大学の教授、助教授等と円滑な人事交流を行えるようにしている。
2   機関の長や教員の採用・昇任の選考の際や機関の長の任期及び教員の定年を定める際、評議員会や運営協議員会の議を経ることとするなど、教育研究の実際の担い手である教員等の参画の下に教員人事が実質的に決定されるような手続きが定められている。

  このように、大学共同利用機関は、国立大学と等質の学術研究を行う機関であり、大学共同利用機関の特性を踏まえた学問の自由を担保する仕組みが設けられている。行政庁の直接の関与からは一定の距離を置くべきこと等にかんがみ、国立大学と同様に、国立学校設置法で設置している。

  また、大学共同利用機関は、国立の学術研究機関として国立大学と一体的な運営が要求されていることから、予算・会計制度についても、国立大学と同様に、国立学校特別会計法に依拠している。

  2)大学附置研究所との対比
  このように、大学共同利用機関は、基本的に国立大学と同様の性格を有するが、特定の大学に附置していないことによる特性をも有している。この点について、特定の大学に属する研究所である大学附置研究所との対比により記述すると、以下のようになる。

(設置形態)
  大学共同利用機関は、大学の共同利用の機関であることから、大学セクターの一部ではあるが、特定の大学には附置されず、単独の組織とされている。一方、大学附置研究所は、附置された大学の教育研究活動と不可分な関係にあることから、当該大学の組織の一部として位置付けられており、基本的な位置付けが異なる。

(管理運営組織)
  大学共同利用機関は、研究者コミュニティの意向を反映させるため、共同研究計画に関する事項その他の機関の運営に関する重要事項について審議する運営協議員会(およそ半数程度が機関外の研究者)を置くとともに、機関外の学識者から事業計画その他の管理運営に関する重要事項等についての助言を得るための機関として評議員会(すべて機関外の学識者で構成)を置いている。
  一方、大学附置研究所は、大学の一部局として、研究所の教育研究に関する重要事項は、機関内部の教授会によって審議されている。なお、大学附置研究所のうち、全国共同利用型のものについては、教授会のほか、共同利用の運営に関する事項等について所長の諮問に応じる機関として、運営協議会(およそ半数程度が学外の研究者)を置いている。
    
(意思決定の過程)
  大学共同利用機関は、単独の組織であることから、予算要求等の意思決定については、大学共同利用機関内では、評議員会や運営協議員会の審議等を経て最終的に機関の長が決定するのに対し、大学附置研究所では、大学内の一組織であることから、大学附置研究所において決定した事項を、さらに大学の評議会等の審議を経て、最終的に学長が決定することになる。
    
(人事制度)
  長や教員の人事については、大学の共同利用の機関として単独の組織として設置されている大学共同利用機関と、大学の一部である附置研究所とでは以下のような差異が見られる。
1   大学共同利用機関では、機関の長の採用のための選考は、運営協議員会の意見を聴いて評議員会が推薦した者について、また、教員の採用及び昇任のための選考は、運営協議員会の議を経て機関の長が推薦した者について行われるなど、教員等の人事について、研究者コミュニティの意向が反映される仕組みとなっている。
2   大学附置研究所では、研究所長については、学長が、また、研究所の教員については、教授会の議に基づき、学長が選考することとなっている。
  
(3)学術研究体制における位置付け
  以上のように、大学共同利用機関の研究機関としての特徴は次のように位置付けられる。

  大学共同利用機関は、研究特性や共同利用の機能・運営方式等の点で研究開発法人とは異なっており、「学問の自由」を基本理念とする国立大学と同じ学術研究機関である。

  一方、大学共同利用機関は、特定の大学に附置されておらず、その運営が専ら研究者コミュニティの意向を反映して自主的に行われている点が、同じ学術研究機関である大学附置研究所と異なる点である。

  大学附置研究所は、全国共同利用型のものであっても、国立大学の組織の一部であることから、共同利用の推進という面においては一定の制約がある。大学共同利用機関は、その制約を取り払うことにより、先進諸国に伍して学術研究の振興を図るべく、我が国で独自に発明され発展してきたシステムである。このシステムは、限られた人的・物的資源を効果的・効率的に活用して、最大限の優れた学術研究上の成果を上げるなど、我が国の学術の発展に大きな足跡を残してきている。    


3.大学共同利用機関の法人制度設計の考え方
  (制度設計の基本理念)
  第1章・第2章で述べたように、大学共同利用機関は、大学の研究者の共同利用、大学の研究を集中的に行うCOEとしての性格を有し、大学と同様「学問の自由」が保障されるべき機関として、それを保障するための制度も設けられている。

  さらに、大学共同利用機関は、元々国立大学の共同利用の機関として、国立大学の教員の共同利用・共同研究の拠点となることを構想して創設されたものであり、平成元年に法律改正され、「大学の共同利用の機関」とされて以降も利用者の大半が国立大学の教員であることから、実態として、国立大学群の研究システム全体に不可分の組織として組み込まれていると言える。

  したがって、国立大学と密接な関係を有する大学共同利用機関の特性を踏まえ、法人化に当たっては、国立大学法人法(仮称)の中で規定し、基本的に国立大学法人(仮称)の組織運営システムを踏襲することが適当である。また、次のような大学共同利用機関の特色を活かした制度設計とする必要がある。

(研究者コミュニティに開かれた運営)
  大学共同利用機関は、学術研究を行うという観点において、非常に大学と密接な関係を有しているが、他方、大学の共同利用のための機関であることから、研究計画の策定や人事等に研究者コミュニティの意向が反映されるなど、大学と比較して、研究者コミュニティに開かれた運営が行われており、法人化後もこの特性を保持すべきものである。

(機構と研究所の関係)
  現在、複数の研究所が連合する形態をとる大学共同利用機関に関しては、機構に属する各研究所の運営に当該分野の研究者コミュニティの意向を反映する仕組みが法的に整備されている。すなわち、それらの研究所にも評議員会及び運営協議員会が設置されており、研究所長候補者の推薦、研究者の教員人事、研究計画の立案等について、機構における各々の研究所の自主性が確保されている。法人化と併せて新たな機能とする利点を十分に確保していくためには、こうした従来の制度設計の趣旨をも踏まえることが重要である。

4.法人形態の骨組み
(1)法人形態の考え方
  (研究領域の考え方と機関の連合)
  今日の地球規模での貧困、人口、環境、生命倫理等の問題の顕在化は、科学技術の加速度的進展やグローバル化と無縁ではない。現在、我々が直面している文化、生命、環境、経済などに関わる極めて複雑・多様な問題の解決には、従来の学問分野を超えた新しい総合的な取り組みが必要となっている。

  また、学問の高度化によって、学術研究領域は細分化・専門化の道をたどってきたが、近年の科学やハイテク技術の発展により、科学研究分野間の境界線が不明確となり、今や従来の分野を超えた協力なくしては飛躍的発展が困難となっている。

  大学共同利用機関は、これまで特定の研究者コミュニティの研究者の共同利用・共同研究の拠点として発展してきたが、このような機能は今後も重視すべきである。他方、上記のような学問の状況にかんがみ、法人化する機会を捉えて大学共同利用機関に、新分野の創出に向けて効率的に自らを発展させる仕組みを持たせることが重要であると考えられる。

  このようなことから、大学共同利用機関の法人化に当たっては、単に既存の大学共同利用機関の自律的な運営を確保することにとどまらず、各機関が将来の学問体系を想定して分野を越えて連合し、機構を形成することによって、総合的な学術研究の中核の一つとして今後の我が国の学術全体の発展に資するという観点が重要である。

  以上のような認識に基づいて、既存の大学共同利用機関の再編を考えれば、各機関が担う学問分野を軸にしながらも、研究領域を大きく、人間文化、自然、情報・システムの3つの分野にくくることが適当である。すなわち、人間文化あるいは自然と人間の関わりを対象とする研究領域、自然界そのものを広く対象とする研究領域、及びその両者に関わりつつ複雑な現象を情報とシステムの観点から捉えようとする研究領域の3領域とし、それぞれに対応する機構を考えるものである。

  高エネルギー加速器研究機構については、上記の3分野の区別からは自然分野に分類されるべきものであると考えられるが、1加速器という大型の特殊装置を中心として構成された機構であり、実態的にも、研究手段として加速器を利用する研究者が広く集い、交流等が行われていること、2機構の規模としても、新たに構成される3機構に比して遜色のないものであることなどから、そのまま1つの機構とすることとした。

  大学共同利用機関を以上の4つの機構に再編成し、学術研究のダイナミックで総合的な発展を目指すものとし、今後、大学共同利用機関の特性と実績を活かし、大学研究者等との共同研究をさらに発展させるとともに、大学附置研究所等との連携を強化する方策を検討することが必要である。

  なお、メディア教育開発センターの在り方については、特殊法人改革などを勘案し、別途速やかに検討される必要がある。

(2)新機構の構成及びその理念
  1人間文化研究機構(仮称)
(機構の構成)
  国文学研究資料館、国際日本文化研究センター、総合地球環境学研究所、国立民族学博物館、国立歴史民俗博物館

(機構の理念)
  21世紀を迎えた今日、自然と人間の歴史的営為とが地球規模で複雑に絡み合った難問が山積している。それらに対応するために、文化に関わる大学共同利用機関が旧来の学問の枠を超えて連合し、新しいパラダイムを創出する研究拠点を形成するものである。この機構は、膨大な文化資料に基づく実証的研究、人文・社会科学の総合化をめざす理論的研究など、時間、空間の広がりを視野に入れた文化に関わる基礎的研究及び、自然科学との連携も含めた研究領域の開拓に努め、また、問題解決型の課題研究にも取り組み、文化の総合的学術研究の世界的拠点となることを目指すものである。

(機構化の利点)
  人間文化に関わる研究所が機構を構成することにより、人類の未来に向けての学術研究が効率的、かつ創造的になる可能性が大きく拓ける。そこに期待されるのは、単なる学術分野の融合や総合ではなく、機構内の研究所間での多様なプロジェクトを媒介として生まれる、新しい研究分野の創出である。機構を構成する各研究所とその研究者はそれぞれの個性を保ちつつも、その専門分野を超えた研究プロジェクトに積極的に参加することによって、この機構の創造的発展を図るものである。この機構には、博物館、資料館の文化資料のナショナルセンターとしての機能を持つ研究所が参画している。機構を構成する各研究所が既に蓄積し、これからも収集に努める「資料」と「情報」は、研究推進のみならず、機構の研究成果を広く社会に還元する上で、大きな効果を発揮するものと期待される。

2自然科学研究機構(仮称)
(機構の構成)
  国立天文台、核融合科学研究所、分子科学研究所、基礎生物学研究所、生理学研究所

(機構の理念)
  近年、宇宙、物質、エネルギー、生命等をめぐる自然科学分野における学問の進展と知識の蓄積は著しい。このような学問の高度化によって、各学問分野の境界線は不明確となり、物理学、化学、生物学、基礎医学など独自に発展してきた自然科学の「学際化」や「総合化」が図られている。また、自然科学における各分野の結びつきは、新たな学問分野を生み出し、それらの体系化により、直面する困難な諸問題を解決し、人類社会に豊かさをもたらすことが期待されている。
  この機構は、多様な自然科学分野で先端的研究を進めている大学共同利用機関が、分野を超えて連合し、広範な自然の構造、歴史、ダイナミズムと循環等の解明に総合的視野で取り組むことにより、自然科学の新たな展開に貢献しようとするものである。この機構は、自然科学研究の拠点として、大学及び大学附置研究所等との共同と連携、自然探求における新たな研究領域の開拓、育成等を積極的に推進することも目指すものである。

(機構化の利点)
  21世紀の科学は、人類が直面する複雑・多様な問題の解決を迫られており、従来の学問分野を超えた総合的な研究の取り組みが必要になっている。それぞれの分野における研究拠点として活動している国立天文台、核融合科学研究所、分子科学研究所、基礎生物学研究所、生理学研究所は、上記の視点のもとに自然科学研究機構を構成することにより、宇宙、物質、エネルギー、生命など自然界の広範な対象を、観察、理論、実験、創造に基づいて解明する実証科学の多様な発展を目指すものである。
  この機構は、既存の分野はもとより、今後創出されるであろう新分野の育成等も含め、広範な研究分野を想定するものであり、このような機構を作ることによって、我が国の学術研究に発展的な未来像を与えることを期待する。この機構は自然科学の多様な発展を理念・目標として、個別の分野を超えて大学等との連携を図るとともに、大学院教育等の人材養成機能の強化に取り組んでいく。志を同じくする研究所等があれば、今後この機構への参加等の可能性も考えられる。
  一方、現段階で既存の5研究所が機構を作る利点は、自然に対する視点や研究手法の異なる研究者が、分野を超える学術研究の方向を、相互理解を深めつつ探っていける点にある。そこで得られる新たな知見は、試行錯誤を経て新しいパラダイムの形成を促すであろう。その際、同一の機構における組織的共同により、個別の研究所であっては不可能な学問の急展開に対応する研究組織や共通設備などの開発を機動的に推進し、さらには新たな学問分野を創成していくなどの活動も、可能になる。そのような機能を機構として、如何に効果的に発揮しうるか、今後具体的に検討していくことが必要である。

3情報・システム領域研究機構(仮称)
(機構の構成)
  国立情報学研究所、国立遺伝学研究所、統計数理研究所、国立極地研究所

(機構の理念)
  生命、環境、情報社会など、21世紀の人間社会の変容に関わる重要課題の解決には、従来の学問領域の枠にとらわれない研究への取り組みが必要となる。この機構は、生命、地球、環境、社会などに関わる複雑な問題を情報とシステムという立場から捉え、実験・観測による大量のデータの生成とデータベースの構築、情報の抽出とその活用法の開発などの課題に関して、分野の枠を越えて融合的に研究すると同時に、新分野の開拓を図ることを目指すものである。また、国際的競争と連携のもとに、その成果を広く共同利用に供するとともに、新たな研究領域に対する研究基盤を提供するものである。この機構において4研究所が連携することにより、情報とシステムの観点から分野を越えた総合的な研究を推進し、新たな研究パラダイムの構築と新分野の開拓を行うことを特長とするものである。また、システム情報研究の方法論、データベースやネットワークの高度利用に関する研究開発と事業を通して、学術研究に関わる国内外の諸機関に対して、研究の機動的、効果的展開を支援するための情報基盤を提供することも1つの特長とするものである。

(機構化の利点)
  この機構の設立により、各研究所が従来から進めてきた研究の充実に加えて、これまでの研究所の枠を越えた新しい融合的研究方法を新たな構想の下に推進しうる。例えば、進化科学及び地球システム研究(生命進化や地球環境変動などのデータの生成と解析)、推論・帰納科学研究(大量データから有用な情報を抽出する方法の研究)、学術研究基盤システム研究(情報の共同利用に必要なソフトウェアとネットワーク技術研究)などの学際的テーマを機構の共通テーマとして研究する可能性を検討する。これらは、機構長等のリーダーシップの下に、新しい時代に対応する新分野の創造を目指した研究として推進し、その成果や発展に応じて、既存の研究所の再編等も検討することとする。

4高エネルギー加速器研究機構(仮称)
(機構の構成)
  素粒子原子核研究所、物質構造科学研究所
    
(機構の理念)
  国内外の、主として大学における素粒子・原子核の研究者、及び生命体物質を含む物質構造の研究者が加速器を用いてその研究を行おうとする場合に、その機会を提供するとともに、そのための手段としての高エネルギー加速器に関する開発研究等を行うものである。機構内の研究者は、機構外の研究者と共同で上記の分野の理論的実験的研究を行うものである。

(機構の特性)
  過去における加速器科学の発展を顧みるならば、加速器は20世紀前半に物質の究極構造を探求するために人工的に原子核を破壊する装置として開発された。今日では単に素粒子物理学や原子核物理学の研究手段にとどまらず、いろいろな物質形態や生命現象をX線や中性子線、中間子線等を利用して調べる場合に必要欠くべからざる装置になっている。また、医学分野への応用に関しても目覚しいものがある。つまり物質の究極構造に一歩一歩迫っていく中で、手段としての加速器もより精密化かつ大型化し、その応用も物質生命研究の分野へと広がってきたという事情がある。加速器は本来研究の手段として位置付けられるものであるが、今日では、各分野の研究にとって不可欠の要素となっており、それゆえにこそ、加速器自身の研究開発も重要性を増している。

(3)機関再編に期待される効果
  (新規分野の開拓)
  現代の人間活動が様々な課題や困難に直面する中で、学術研究の総合化と新分野の創成は一層重要性を増している。法人化に当たり、学問的理念を共有する研究機関が協力して総合的学術研究の強力な推進と新たな学問領域の育成やパラダイムの生成を可能とする開かれた体制を構築するためには、広範な学問分野を網羅する大学共同利用機関が連合する形態をとることが有効である。上記の4機構においては、大学との適切な役割分担を踏まえつつ、具体的な共同研究等を通じて、時代が要請する新たな学問分野の創出に戦略的に取り組むことが期待される。

  新規分野の開拓については、各機構において、それぞれの目的・業務を踏まえ、関連分野の研究組織の再編等を行うことにより、新たな分野に対応する研究組織を形成するという方法や大学附置研究所等と連携して、大学内に新たな分野に対応する研究組織を作るという可能性も検討に値する。また、機構における新規分野の開拓の成果が大学に還元されることも期待される。

  新規分野の開拓は、単に研究面だけではなく、総合研究大学院大学との連係等により、通常の大学では成しえない教育、分野を超えた高度な総合的教育による、研究人材や高度の専門能力を有する人材の養成の面でも貢献することが期待される。

(共同利用体制の推進)
  大学の附置研究所や研究施設の中には、全国共同利用を目的とするものが相当数存在するが、我が国の学術研究の発展のためには、大学セクターの共同利用の研究組織群を法人化後も十分機能させる必要がある。そのため、個別の法人とされる大学において、研究所等の全国共同利用の機能が適切に維持発展されるよう、各機構が推進役を果たすことが必要である。したがって、共同利用を推進するための経費を各機構から配分する仕組み等について、今後検討する必要がある。

(事務処理体制の効率化)
  法人化に伴って新たな事務負担が生じるが、機構を形成することによって、機構本部事務局において共通事務を一括処理することで、事務処理体制の効率化を図ることが可能となる。今後、各機構において、研究所も含めた事務局体制の在り方について、具体的な検討が必要である。

  また、機構を形成し、さらに機構間の連携を図ることにより、必要に応じた海外拠点の設置など、規模の利点を活用した取り組みが可能となる。

5.法人の制度
(1)法人の組織・運営システム
  (管理運営組織の考え方)
  国立大学と密接な関係を有する大学共同利用機関の特性にかんがみれば、運営組織の考え方及び基本構造は国立大学法人を踏襲するものとした上で、以下の点を踏まえることが必要である。
1   大学共同利用機関は、国立大学の教員の共同利用・共同研究の拠点として、実態的には国立大学群の研究システム全体に不可分の組織として組み込まれた研究所ともいうべき機関であることから、国立大学長等が大学共同利用機関法人(仮称)の運営に参画すること。
2   法人化後の研究の方向性や研究計画等の決定については、機関職員の意向のみならず、研究者コミュニティの代表者を参画させるなど、利用者である研究者コミュニティの意向が反映されるような仕組みを維持すること。

  大学共同利用機関本来の自主性・自律性に加え、法人化に伴い運営上の裁量が大幅に拡大することを考慮すれば、意思決定過程の透明性の確保、役員間の適切な責任分担による一体的な運営、さらに適正な意思決定の担保といった観点から、大学共同利用機関運営上の特に重要な案件については、大学共同利用機関法人としての意思決定に際し、役員による合議制を制度的に導入することが適当である。

(管理運営組織の構成)
  管理運営組織に関しては次のようなシステムとすることが適当である。
1   主に研究及び共同利用に関する重要事項や方針を審議する評議会(仮称)と並んで、主に経営面に関する重要事項や方針を審議する運営協議会(仮称)を設け、そこに相当程度の人数の機関外有識者の参画を得る。
2   法人の長は、主に経営面に関する運営協議会の審議と、主に研究及び共同利用に関する評議会の審議を踏まえ、最終的な意思決定を行う。
3   ただし、特定の重要事項については、法人の長の意思決定に先立ち、役員会(仮称)(監事を除く役員で構成し、機関外者を含む。)の議決を経る。

  (役員会)
  大学共同利用機関の役員の構成・名称については、法人化に当たって、4機構に再編成することとしていることから、「機構長(仮称)(=法人の長)」、「副機構長(仮称)」(複数名)、「監事」(2名)とする。

  役員の数については、国立大学法人の例を踏まえつつ、各機構の規模を勘案し、各機構ごとに適切に定める。

  機構長は、当該大学共同利用機関法人の最高責任者として、法人を代表するとともに、機構内の合意に留意しつつ、経営手腕を発揮し、研究・経営両面における最終的な意思決定を行う。

  副機構長は、機構長を補佐し、業務の一部を分担する。
  副機構長については、機構内から研究所長等を登用することなどが考えられるが、国立大学と同様に広く外部から大学共同利用機関の運営に高い識見を有する者を招聘することが必要である。

  役員会は、国立大学法人と同様に、監事を除く役員で構成し、経営及び研究の両面にわたり、中期目標・中期計画、予算、決算など特定の重要事項について、機構長の意思決定に先立ち議決を行う。

  監事は、法人の業務を監査し、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、機構長又は文部科学大臣に意見を提出することができることとする。実際の監査に当たっては、大学共同利用機関における学術研究及び共同利用の特性にかんがみ、基本的には各研究者の個々の研究内容については直接の対象とせず、研究分野ごとの研究の方向性や研究成果等について行うことが適当である。
    なお、監事のうち少なくとも1名は、大学共同利用機関の研究及び共同利用並びに機構運営に関し高い識見を有する機関外者から登用する。

(運営協議会)
  運営協議会は、機構長及び大学共同利用機関法人の経営に関する機関外の有識者及び経営に関する機構内の代表者(役員等)として機構長が任命する者で構成する。

  法人化後は、国の直接的な関与を制限する代わりに、公的な財政支出に支えられる機関として、国民や社会に対する説明責任が求められることから、納税者の代表としての民間の有識者も委員に選任し、監視する仕組みを整えることが必要である。また、大学共同利用機関は、国立大学の教員の共同利用・共同研究の拠点として、国立大学群の研究システム全体に不可分の組織として組み込まれた研究所ともいうべき機関であることにかんがみ、委員の一定数は、国立大学長等から選任することも適当と考えられる。

  運営協議会においては、主に財務会計(予算、決算、財産処分等)、組織編成、職員配置、職員給与、役員報酬など大学共同利用機関法人の経営面に関する重要事項や方針を審議する。

(評議会)
  委員は、機構長及び研究者コミュニティを代表する者として機構長が任命する者で構成する。

  委員数は、機構の規模(研究所数等)に応じた適切なものとし、機構内部及び外部の学識者(当該機構の業務に関連する研究に従事する者)からほぼ同数を選任する。

  機構長は、委員の任命に当たって、研究所長等に対して当該分野の委員候補者の推薦を求める。

  評議会においては、主に共同研究計画、共同利用、研究組織、研究教育職員人事など、研究及び共同利用面に関する重要事項や方針を審議する。

(研究組織)
  各機構における研究組織については、各機構の自主的な判断で柔軟かつ機動的に編成することにより、学術研究の動向や社会の要請等に適切に対応するため、内部組織は原則として法令に規定せず、各機構の予算の範囲内で随時設置改廃を行うこととする。
  ただし、研究所については、各機構の業務の基本的な内容や範囲と大きく関わるものであり、固有の業務を担う研究組織としてあらかじめ存在を明確にしておく必要があること、現行制度においても機構内の研究所について、名称及び目的が政令で規定されていることから、法令(具体的には省令)等で明確化する方法を工夫する。

  なお、必要に応じて、運用上、当該研究所等の所長等候補者の推薦、研究所等の教員人事の選考、研究計画の企画等、当該研究所等に関わる重要事項を審議する運営会議(仮称)を各研究所に置く可能性を検討する。

(機構本部の機能)
  機構本部は、法人の事務全般(全体に関わる人事・予算・事業計画・評価・法務・渉外等)及びいくつかの研究所にまたがるような事業活動の企画調整(新規分野開拓・人材養成・大学附置研究所等との連携等)を行うことを主たる機能とする。

(2)法人の人事制度
  (機構長の選考方法等)
  学術研究を担う機関としての自主性・自律性を確保するためには、業務を総理する機構長及び実際に学術研究を行う研究者の人事における自主性・自律性が確保される必要がある。このため、最終責任者であり職員の任命権を有する法人化後の機構長の選考に関しては、当該機関における選考機関の選考を経た上で、主務大臣が任命することが適当である。

  機構長は、経営・研究両面の最終責任者として、機構内の合意に留意しつつ、経営手腕を発揮することが求められる。このため、機構長には、研究面での高い識見を有すると同時に、法人運営の責任者としての優れた経営能力を有している者が選任される必要がある。

  したがって、現行制度において、機関の長は、全員当該機関外の者からなる評議員会の推薦(運営協議員会の意見を聴いた上で)を受けて任命されることとなっている趣旨及び国立大学法人の学長選考方法を踏まえ、法人化後は、経営面についての審議機関である運営協議会と研究面での審議機関である評議会の双方の代表者からなる機構長選考委員会(仮称)において、機構長の選考基準、手続きを定め、機構長候補者を選考することとする。

  現行制度上、機関の長の任期は、再任の可否、再任を認める場合の任期を含め、教育公務員特例法により任命権者である文部科学大臣が機関の長の申し出に基づいて定めている。法人化後については、国立大学法人における中期目標の期間が原則として6年とされており、大学共同利用機関法人についても、国立大学法人との密接な関係から、原則として6年とすることが適当であることから、その範囲内で国立大学法人における検討を踏まえて定めることが適当である。

  法人の長としての機構長が不適任とされる場合には、国立大学法人の扱いと同様に一定の要件の下で文部科学大臣が、機構長の選考を行った機関の審査等の手続きを経て解任できるものとする。

(役員、研究所長の任免等)
  副機構長は、機構長を補佐し、その業務の一部を分担する者であることから、機構長が自らの責任において任命する。

  副機構長の任期の定め方については、機構長に任命されて、機構長を補佐し、業務の一部を分担するという職務の性格上、機構長の任期の範囲内とすべきである。

  監事は、機構の業務の適切な執行を担保するという職務の性質上、文部科学大臣が任免する。
  監事の任命に当たっては、機構の研究及び共同利用並びに機構運営に関し高い識見を有する者が選任される必要がある。

  研究所長等については、機構長が任命することになるが、その際、例えば、各機構の判断で研究所に置かれる運営会議において候補者を推薦すること等も考えられる。

  各研究所等の教員に関しても同様に、運営会議において選考すること等も考えられる。
  
  研究所等の教員の名称については、基本的には機構長の裁量に委ねられるものであるが、大学の教員との職務の類似性及び円滑な人事交流の必要性等を踏まえ、引き続き教授、助教授等の名称とし、資格要件も国立大学法人における制度を踏まえたものとすることが適当である。

  研究所等の技術職員については、研究所等の目的と実態に即した組織及び採用形態を工夫する必要がある。

(3)法人の目標・計画・評価
  (中期目標及び中期計画)
  中期目標については、研究及び共同利用の自主性・自律性を尊重する観点から、国立大学同様、あらかじめ各機構が文部科学大臣に原案を提出するとともに、文部科学大臣が、この原案を十分に尊重し、また、大学共同利用機関の研究及び共同利用の特性に配慮して定める。
    こうした基本的考え方を制度的に担保するため、例えば、
1 機構から文部科学大臣への事前の意見(原案)の提出
2 機構の意見(原案)に関する文部科学大臣の配慮義務
3 機構の研究等の特性に関する文部科学大臣の配慮義務
  などの規定を「国立大学法人法」等で明確に位置付ける必要がある。
  また、中期計画については、各機構において、あらかじめ中期目標と中期計画の原案を一体的に検討しておいた上で、最終的に確定した中期目標に基づいて作成し、文部科学大臣が認可する。

  具体的に中期目標に記載すべき事項としては、大学共同利用機関の特性を踏まえ、次のとおりとすることが適当である。
1 中期目標の期間
2 機構全体としての基本的な目標
3 機構の研究及び共同利用等の質の向上に関する目標
4 業務運営の改善及び効率化に関する目標
5 財務内容の改善に関する目標
6 社会への説明責任に関する目標
7 その他の重要目標

  具体的に中期計画に記載すべき事項としては、大学共同利用機関の特性を踏まえ、次のとおりとすることが適当である。
1 機構の研究及び共同利用等の質の向上に関する目標を達成するために  とるべき措置
2 業務運営の改善及び効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置
3 財務内容の改善に関する措置
4 社会への説明責任に関する措置
5 その他の重要目標に関する措置

(評価)
  大学共同利用機関の特性を踏まえ、より効率的・効果的な評価を実施するため、国立大学と同様に国立大学評価委員会(仮称)により評価を行う。
  国立大学評価委員会は、評価事項のうち、教育研究に関する事項について、評価に先立って、大学評価・学位授与機構の意見を聴き、尊重する。なお、具体の方法、手続き等については、国立大学法人と同様とする。

(注)平成14年3月26日の最終報告で既に提言されている事項についても、大学共同利用機関の法人化の制度設計の全体像を把握できるように必要な範囲で記述している。


6.関連する課題
(1)大学附置研究所等との連携
  大学附置研究所・研究施設は、学部・研究科では困難な特定領域の研究の総合的な推進や、複数領域に跨る学際的・先端的な研究の開拓、大型研究装置・機器の開発研究、先導的知的基盤整備などを行っており、それらを駆使して世界的な研究を進めている。

  その一方で、大学附置研究所・研究施設は、大学院教育に深く参画してきた。特に、大学院が重点化された大学では研究科と協力しつつ大学全体の教育・研究活動に多様性と先端性を付加することでその役割を広げてきた。実際、研究所等における大学院教育においては、学生は最先端の学問領域における実際の研究に参画できるばかりではなく、複数領域にわたる調査や研究を経験し、あるいは複数の学部や研究科に跨るような大型実験装置の開発やそれを用いた研究を経験することにより、専門的な知識を習得し、広い科学的・文化的素養を身につけ、社会が要求する課題を解決する能力を身につけることが可能となっている。このように、研究所等は学部・研究科と並んで、個々の大学が社会に対して持っている「教育と研究」の2つの責任を遂行する際の活力の源泉となっている。

  大学附置研究所・研究施設の中には、全国共同利用の特徴を有しているものがある。それらは、研究面では、国内外の研究機関との連携の中心となっており、学部・研究科などの学内組織を越えて複数の分野に跨る学融合的研究や大型共同研究を可能とし、大学を横断する研究活動の要の役割を果たしている。また、教育面では、世界をリードする先端的研究の現場で教育を実施することにより、高度な大学院教育が可能となっている。共同利用という研究交流の現場での教育も、多様な視点を持つ研究者等の育成に効果を上げている。

  大学共同利用機関法人と大学附置研究所等との連携の形態としては、例えば、次のようなことが考えられるが、具体的な連携の在り方に関しては、各機構において検討する必要がある。
1   大学共同利用機関法人が関連分野における全国共同利用の機能を総括する役割を担い、当該分野の全国共同利用型の大学附置研究所等と連携して、全体として大学における共同利用のシステムを効果的・効率的に運営する。
2   新規分野の開拓に当たって、既に研究基盤を有している大学附置研究所等に中核的拠点を形成することが効率的である場合は、連携という手法を活用する。
3   分野によっては関係する全国の大学附置研究所等をコンソーシアム的にネットワーク型の研究組織として機能させることが効果的であり、大学共同利用機関法人がその連携の中心として調整役を果たす。

(2)総合研究大学院大学との連係
  学術研究を行う大学共同利用機関は、国際レベルの優れた研究環境を有しているため、それを有効に活用して高度な専門能力を有する人材の養成を行うことが求められている。

  総合研究大学院大学は、大学共同利用機関と緊密な連係及び協力の下に教育研究を行う大学として設置され、大学共同利用機関を基盤として、その最先端の研究成果を大学院教育に活かすことにより、高い専門性と広い視野を持つ人材の養成を目指してきた。

  総合研究大学院大学が法人化後の各機構と緊密な連係及び協力の下に、これらを基盤とし、学術研究の新しい流れに先導的に対応した優れた研究者養成のための大学院教育を行うことは重要である。したがって、国立大学法人法等において所要の規定を整備し、また、大学共同利用機関法人においても、大学院教育への協力を正規の業務の一つとして明確に位置付ける必要がある。

  総合研究大学院大学と大学共同利用機関との連係及び協力が円滑に行われるためには、双方が法人化されることを踏まえ、併任教員の取扱いをはじめとする連係・協力の在り方について十分整理しておく必要がある。

  今後、基盤となる大学共同利用機関が4機構に再編され、新たな中核的機能を担おうとすることを踏まえて、研究科の構成の在り方や国際的競争力を向上する観点からの博士課程の見直し等に関する検討が望まれる。

(3)財務会計上の問題
  (運営費交付金)
  大学共同利用機関法人に対する運営費交付金は、組織規模や研究・事業活動状況を踏まえた最適な算出方法を検討する必要がある。

  大型のプロジェクト研究等特別な事業を推進するための経費についても、基本的には、運営費交付金及び施設整備費補助金により確実に措置すべきと考えられる。さらに、我が国全体の共同利用体制の整備推進を図る観点から、大学附置研究所等も対象に含めて、その他の資金がプロジェクト研究に振り向けられるための措置の可能性を検討する必要がある。

(4)その他の重要課題
  科学技術・学術審議会のもとに委員会を置き、大学共同利用機関の在り方、分野間の適切な資源配分、大学附置研究所等との連携の在り方等について、学術全体の動向を踏まえ審議することが適当である。

  大学共同利用機関の4つの新機構法人が、相互の連携を強化するため、共通する課題について協議、企画、調整する自主的組織の設立を検討することが望まれる。

  法人化後の学術研究の推進体制に関して、国内外の研究動向を的確に踏まえつつ、各分野の学術研究を一貫性をもって推進する仕組みについて、中長期的な視点で、諸外国の例も参考にしながら調査研究することは有意義と考えられる。