資料2-1 研究強化に向けた研究拠点の在り方について

平成29年8月23日
科学技術・学術審議会
学術分科会


研究力強化に向けた研究拠点の在り方について(概要)

我が国の研究力の現状と課題と研究拠点政策

(我が国の研究力の現状と課題)

  • 我が国の研究力の強化には、イノベーションの源である多様で卓越した知を生み出す基盤の強化が不可欠である。一方、以下のような課題がある
    ●大学等への基盤的経費の減少などによる研究環境の悪化
    ●論文指標(総論文数や高被引用度論文数)は、世界各国が伸びている状況の中、我が国 は横ばい傾向で、相対的に地位は低下
    ●国際共著論文数の低下など、我が国の存在感が後退
    ●新たに広がっていく研究領域に参画できていない。
  • アイデアを生み出す若手人材についても、その育成・確保が急務となっている。また、ポストドクター等を含む若手研究者について、そのキャリアパスの確立は未だ不十分。


(これまでの研究拠点政策の成果と課題)

  • 21世紀COEプログラムや世界トップレベル拠点形成プログラム(WPI)など個々の拠点において優れた研究成果を上げている。一方、以下のような課題がある。
    ●日本全体として見ると、事業間の連携や継続性が不十分
    ●研究者の負担の増加など、我が国全体の研究力向上につながっているかの懸念
    ●事業期間終了後の拠点継続の困難さ
    ●近年の拠点事業の支援規模の大型化・重点化と支援拠点数の減少により、採択先が結果として一部の大学に偏り、地方にある大学等が固有の強みを伸ばすことが困難。我が国全体の研究の活性化や、多様性の確保を阻害する要因となっている。

今後の研究拠点政策の在り方について

  • 以上のような課題を克服し、我が国が常に多様で卓越した知を生み出していくためには、個人に対する「研究費」や「人材育成」に関する施策の改革・強化に併せて、「研究拠点に関して、世界レベルの組織的な研究活動の厚みを質・量共に増すための強化策が不可欠。
  • 研究面で国際競争力を有する大学の層を厚くし、人材の好循環を促進し、我が国全体の研究力を強化するためにも、世界トップレベルの研究拠点に対する支援を強化するとともに、全国に存在する、特定分野において我が国の研究をリードし、優れた成果を上げている研究拠点の国際競争力の強化を図る必要。
  • その際、研究の多様性・独自性の観点、若手研究者育成の観点、国際化の観点を含めた施策の有機的な連携が重要。加えて、人材育成に関する施策、大学改革に関する施策等とも連携した運用により、各事業間での相乗効果を生んでいくことが重要。
  • また、拠点施策を機能させるためには基盤的経費の確保が必須。同時に、大学においては、IR機能の強化等を図り、それに基づく戦略等を踏まえた学内予算配分によって、優れた成果を上げている研究拠点の継続性を自ら確保し、その意義を最大化する必要。


(世界トップレベル研究拠点形成プログラム(WPI))

  • 優れた研究環境と高い研究水準を誇る世界トップレベルの研究拠点の形成を継続して推進し、最大で20拠点程度の構築を目指す。
  • 新たな枠組み「WPIアカデミー」を設け、成果の全国展開と最大化を図る。同時に、研究大学強化促進事業等、相乗効果が見込まれる事業との相互連携を図り、より効果的・効率的な成果展開が望まれる。


(学術研究の大型プロジェクト等)

  • 学術研究の大型プロジェクトについては、ノーベル賞の受賞につながる画期的な研究成果の創出により、国民、社会の学術研究に対する関心、理解、支援に寄与するなど、その意義は大きく、引き続き推進していく必要。加えて、学術研究の先端性、多様性を担保するため、より多くのコミュニティが参画する体制の構築が必要であり、プロジェクトの支援期間の明確化や評価体制の強化など、進捗管理の徹底が望まれる。


(特定の分野で世界レベルの研究拠点)

  • 特定の分野で世界レベルの研究拠点については、トップレベルの研究拠点とともに、我が国のイノベーションの源となる知の拠点として、特定の研究分野で我が国をリードし、国際競争力を有する卓越した研究拠点を形成するとともに、拠点間を通じた人材の好循環サイクルを促進し、我が国の基礎科学力の層を厚くすることが求められる。
  • 大学においても、当該分野の研究を自らの強み、特色と位置づけ、若手研究者の活躍促進を研究活性化のための重要な要素としてとらえ、組織運営に取り組んでいくことが求められる。支援の在り方に関して、以下の観点が重要。
    ●各大学からの提案に基づき、多様な基準による選定
    ●拠点の規模や分野の特性に応じた柔軟な支援
    ●拠点の運営と組織マネジメント
    ●長期間(10年程度)の支援
    ●共同利用・共同研究体制との連携と活用


研究拠点施策の推進にあたっての留意点

  • 拠点の改革の成果の大学全体への波及、各大学独自の改革の取組との連動
  • 拠点の形成・維持にあたって、既存の研究組織の改廃も検討しながら、大学全体の中で位置付け
  • 優れた取組の継続性の確保に向けた仕組みの構築
  • 関連分野の大学院教育との連携
  • 産業界を含む社会との連携
  • 情報基盤の充実

  

研究力強化に向けた研究拠点の在り方に関する懇談会について

平成28年9月14日
文部科学省研究振興局長決定

1.趣旨
これまでの関係審議会の報告書等や学術研究・基礎研究の推進に関する政府方針を踏まえ、研究面で国際競争力を有する大学の層を厚くし、我が国の研究力を強化するため、目指すべき拠点支援施策の全体像や、その実現に向けた総合的な取組の在り方について検討を行い、関係審議会における審議の参考に供する。


2.検討事項
研究力強化に向けた研究拠点の在り方について


3.構成
(1)本懇談会は、別紙の有識者により構成するものとし、文部科学省研究振興局長の指名により、主査を置くものとする。
(2)本懇談会には、必要に応じて、別紙以外の有識者を参画させることができるものとする。


4.開催期間
平成28年9月14日から平成29年3月31日まで


5.その他
本懇談会の庶務は、関係局課の協力を得つつ、研究振興局振興企画課学術企画室において処理する。

  

研究力強化に向けた研究拠点の在り方に関する懇談会 委員

    稲永 忍     長崎県公立大学法人理事長、株式会社トーエル特別顧問
    浦野 光人    ニチレイ相談役
    大垣 眞一郎  東京大学名誉教授
    大島 まり    東京大学大学院情報学環・生産技術研究所教授
    金子 元久    筑波大学特命教授
    黒木 登志夫  日本学術振興会 学術システム研究センター顧問
    小林 傳司    大阪大学理事・副学長
    小林 良彰    慶應義塾大学法学部教授
    菅  裕明    東京大学大学院理学系研究科教授
    高橋 真木子  金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授
主査 平野 眞一    上海交通大学講席教授・学長特別顧問・平野材料創新研究所長
    松浦 善治    大阪大学微生物病研究所長
    宮浦 千里    東京農工大学副学長
    結城 章夫    山形大学名誉教授(前山形大学長)


お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)