2.改革のための具体的方策 3.プログラムオフィサー(PO)、プログラムディレクター(PD)による一元的管理・評価体制の整備

≪現状≫

○ 我が国の競争的研究資金制度は、それぞれ外部専門家を中心とした評価システムを有し、研究課題の採択・評価を実施している。一方、米国をはじめとする諸外国の配分機関は、外部専門家に加えて、研究経歴のある多人数のPO(各制度の個々のプログラムや研究課題の選定、評価、フォローアップ等の実務を行う研究経歴のある責任者)やPD(競争的研究資金制度と運用について統括する研究経歴のある高い地位の責任者)を擁し、プログラムの計画から、最後の評価の段階まで一貫してマネジメントする体制を徹底。

(注)

  • 「米国のPO」の役割は、例えば、評価プロセスの選択、評価段階においては、評価者の選任、現地調査への参加、合議審査会議等の評価プロセスの計画・実行、どの課題にどの程度の資金提供を行うかの最初の立案、また、実施されている研究開発課題の進行状況の評価等である。POの殆どが、自然科学系の博士号を有しており、担当研究分野の知識や研究経験を持ち、その研究動向についても熟知している。
  • 例えば、米国のNSF、NIH、DARPA(国防省国防先端研究プロジェクト局)には、それぞれ約400、1100、140人が専任で配置されて、NSF、NIH、DARPAのPO1人当たりが扱う年間予算額は、それぞれ15.6億円(2002年、1$=130円)、17.6億円(2001年)、18.6億円(2001年)である。また、独国のDFG(ドイツ研究協会)においても、約125人のPOが配置されている。

○ 我が国の競争的研究資金制度についても、「科学技術基本計画」、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」において、研究経歴のある責任者を各配分機関に専任で配置し、競争的研究資金制度の一連の業務を一貫して、科学技術の側面から責任を持ち得る実施体制が整備されるよう努めるとされている。これを踏まえ、本プロジェクトの「中間まとめ」において、POやPDを配置し、POやPDを中心とする一貫したマネジメント体制の導入を決定した。

○ 各制度においては、平成15年度からPO・PD配置への取り組みを開始している。しかし、人数の面でも、また、雇用形態(非常勤、大学等からの併任等)等制度の位置付けの面からも、必ずしも十分とはいえない状況にある。
 また、PO・PDの具体像が明確でないため、制度間でPOやPDの役割に関する理解にばらつきがある。

○ 我が国には、POやPDという職務が、研究者のキャリアパスとして確立されていないため、質および量の面での確保の困難が予想される。

≪具体的方策≫

(1)PO・PDの役割の明確化

○ PO・PDに期待される機能は、課題の採択・評価等における専門性・機動性・戦略性の確保、研究費の執行を含むマネジメント等の説明責任の遂行である。その観点から、各制度においてPO・PDが以下の基本的な役割を果たすこととする。また、各制度の趣旨や目的はそれぞれ異なることを踏まえ、PO・PDの各制度における具体的な権限、責任は各制度で位置付け(評価委員会とPO・PDとの適切な役割分担)を検討する。

プログラムオフィサー(PO)の基本的役割(詳細 別紙)

  • プログラムの方針(案)(目的、目標、重点テーマ、新規テーマ設定)の作成。
  • 評価者の選任。
  • 外部評価(ピアレビュー)に基づき、採択課題候補(案)の作成(優先順位付け、研究費の査定、研究分担者の必要性、重複の排除)。
  • 評価内容や不採択理由の開示。それに対する申請者からの質問、不服申立への対応。
  • 採択課題について、研究計画の改善点の指摘。不採択の申請者にも助言。
  • 進捗状況や予算執行の状況を把握。必要に応じて、現地調査。
  • 研究計画の変更(中止・縮小・拡大を含む)の提言。
  • プログラム全体の運営見直し等の提案。

プログラムディレクター(PD)の基本的役割

  • 競争的研究資金制度におけるマネジメントシステムの向上。
  • プログラムの方針決定。新規プログラムや新規領域設定を決定。
  • 各制度内の領域間・分野間・プログラム間等の資金の配分額や配分方式(個人研究とグループ研究等)を決定。
  • プログラムオフィサー間の調整。
  • 採択課題の決定。
  • プログラムオフィサーの評価。

○ これを踏まえ、各制度は、今後、競争的研究資金の規模に見合う人数のPO・PDを配置し、その責任を果たし得るような身分、処遇を確保する。特に、非常勤や併任といった雇用形態は、過度的な措置とし、とりわけ大型の制度においては、できるだけ早期に専任へ転換を図る。

○ 本省の制度においても、適切なマネジメントシステムの確立の観点から、POのみならず、それらを統括するPDを配置することを検討する。

○ 各制度は、PO・PDの基本的な役割が十分果たし得るマネジメントシステムの構築を行い、第2期科学技術基本計画期間中(平成17年度まで)に、PO・PDの最終的な配置体制を完了する。

(2)PO・PDの確保と育成

○ 優れた人材をPO・PDとして確保していくためには、産学官が協力し、PO・PDが研究者のキャリアパスとして位置付けられるように努めていくことが必要である。

 -大学・公的研究機関は、PO・PDに優秀な人材を輩出、育成に努力する。特に、研究者の評価に際して、PO・PDとしての経験を適切に評価する。

 -産業界も研究開発マネジメント能力向上の観点から、優れた人材を競争的研究資金のPO・PDとして人材交流を図る。

 -配分機関においては、PO・PDの適切な業務遂行を可能とするための活動経費の確保等の体制を整備を図る。

○ 関係各省及び配分機関は、PO・PD育成のための研修等を実施(例えば、内外における実務研修)する。

(3)PD会議の設置

○ 総合科学技術会議のイニシアティブにより、各配分機関のPDで構成される会議を設置し、各競争的研究資金制度のマネジメントシステムの向上を図るとともに、課題の不必要な重複の排除や制度間の調整等、我が国の競争的研究資金全体の有機的な運用を図る。

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研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)

-- 登録:平成21年以前 --