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資料4−2

学術研究の推進体制に関するこれまでの審議経過の概要案

1  基本的考え方

  1. 学術研究の意義

 国公私立大学や大学共同利用機関を中心に行われている学術研究は、人文学・社会科学、自然科学からその複合・融合分野にまで及ぶあらゆる学問分野を対象とする知的創造活動であり、研究者の知的好奇心・探究心と自由な発想を源泉として真理の探究を目指すものである。

 学術研究は、人類特有の知的な営みであり、それ自体優れた文化的価値を有するとともに、重厚な知的資産を形成・継承し、多様な分野において優れた人材を育成することにより、いわゆる「知識基盤社会」における社会発展の基盤を形成するものである。

 学術研究の推進は、国の重要な責務であり、国として、財政的支援の充実を含め、積極的に推進することが必要である。

2. 学術研究の政策的推進

 学術研究は、個々の研究者や研究者グループ、研究組織において、自由な発想に基づいて主体的に実施されるものであり、国としては、これらのボトムアップによる多様な研究活動に必要な支援を行うことが基本である。

 他方、国全体の学術研究の発展の観点から必要とされる研究拠点の形成や、多くの人的物的資源を要する大型の学術研究プロジェクト等については、内外の研究動向や研究者コミュニティの意向を踏まえつつ、国の学術政策として重点的に推進することが必要である。

 国の学術政策の推進にあたっては、日本国憲法第23条において保障される学問の自由を尊重するとともに、教育基本法に定められた大学の役割や特性を踏まえることが大原則である。研究者の自由な発想に基づくボトムアップを基本とし、研究者コミュニティにおける議論と合意形成を踏まえ、学術政策に反映していくことが重要である。

(参考)
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
第二十三条  学問の自由は、これを保障する。
教育基本法(平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)
(大学)
第七条  大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
2  大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。

 研究者コミュニティによる合意形成のプロセスについては、検討が必要である。その際、各分野の研究者コミュニティの意向を踏まえた運営の仕組みを有する大学共同利用機関法人の機能を活用すること等も考えられる。

 学術分科会は、研究者コミュニティの意向を国の施策に反映させる役割を有しており、その機能の強化も必要である。

2  学術研究組織の整備

  1. 学術研究組織の現状と課題

 学術研究の主な担い手は、国公私立大学である。大学においては、学部や研究科のほか、大学や学部等に附置された研究所・研究施設において、研究活動が実施されている。さらに、国立大学の附置研究所や大学共同利用機関等においては、全国の関連分野の研究者による共同利用・共同研究が実施されており、我が国全体の学術研究の発展に大きく貢献している。

 従来、学術研究組織に関する国の施策としては、国立大学における附置研究所・研究施設の設置や全国共同利用化、大学共同利用機関の設置等を行っており、これらの拠点組織において、大型プロジェクト等の重点的な研究推進も行ってきた。

 平成16年に国立大学が法人化し、国立大学における研究組織の設置改廃や学内における予算配分は、基本的に各法人の判断で、自主的・自律的に行うこととなり、大学独自に新たな研究組織を設ける等の動きが見られる。一方、附置研究所・研究施設については、法人化前は、法令(国立学校設置法体系)により設置され、国立学校特別会計において研究所・施設毎に国から予算配分を受けていたが、法人化後は、大学全体の運営方針に基づく資源配分の中で位置づけられることになったことから、国全体の学術研究の発展の観点から必要な研究の推進が、大型プロジェクトも含め、困難になる可能性が指摘されている。

 私立大学は、国公私立大学全体の約7割の学生、約5割の教員を有しており、国全体の学術研究の発展のためには、その研究機能を一層活かしていくことが不可欠である。国としては、私立大学学術研究高度化推進事業等により各大学の研究組織の整備を支援するとともに、国公私立大学を通じた21世紀COEプログラム等により教育研究拠点の形成を支援しており、各大学においては、これらの支援も活用しつつ、それぞれの建学の精神に基づき特色ある研究活動を展開し、とりわけ人文学・社会科学分野において優れた研究実績を有する大学も多い。しかしながら、多くの私立大学では、先端的な研究のために必要な組織を整備したり、優秀な研究者を研究所等で研究活動に専念させたりすることが困難な状況である。他方では、優れた人的・物的資源を有していても、全国の拠点として国全体の学術研究の発展に資するような仕組みは整備されていない。

 公立大学は、地域における学術研究拠点として大きな役割を果たしており、それぞれの地域の個性や特色に応じ、研究活動を推進している。地方分権の進展等に伴い、近年その数は急増しており、国全体の学術研究の発展のために公立大学が果たす役割も大きくなっている。

 研究の活性化と発展のためには、複数の国公私立大学が連携協力し、それぞれの所有する人的・物的資源を活用して相互補完を図ることが有効である。近年は、大学間協定の締結やコンソーシアムの形成等により共同研究や人事交流、情報共有を行う等、国公私立大学の枠組みを越えた連携の例も増加している。また、各大学の自主的な判断により、複数の国公私立大学が共同で研究組織を設置することも可能となっている。

 このような中、国公私立大学を通じて、今後の学術研究組織の整備のあり方を検討することが必要である。

2. 学術研究組織の整備に関する大学と国の役割

 国公私立大学における研究活動は、各大学がそれぞれの研究戦略に基づいて自主的・自律的に実施するものであり、そのための研究組織の設置や改廃は、各大学の主体的判断で実施するのが原則である。各大学においては、それぞれの目指す役割・機能に応じて必要な研究組織を整備するとともに、定期的な評価と見直しを行い、活性化を図ることが求められる。

 他方、国全体の学術研究の発展のために必要な中核的研究拠点となる組織等については、内外の研究動向や研究者コミュニティの意向を踏まえ、国の学術政策として、整備を推進する必要がある。

 国の学術政策の推進の方向としては、研究の多様性の確保と卓越した拠点の形成が重要である。
 拠点の形成については、各国公私立大学においてもそれぞれの目指す役割・機能に応じて取り組んでいるところであるが、国としては、大学の枠を越えて研究者の知を結集させる、1共同利用・共同研究の拠点となる組織(国際的な拠点を含む)を支援していくことが特に重要である。
 また、研究の多様性の確保の観点からは、2学際的・学融合的分野や新たな学問領域の研究の拠点、3国内で他に当該分野の研究を行う所がなく、唯一の研究の場となる拠点についても、重点的に支援していくことが重要である。
  23の拠点についても、共同利用・共同研究を推進することが適当であるが、研究者の数が少なくコミュニティとしての広がりが必ずしも大きくない研究分野については、拠点となる組織に研究者が集結することも考えられる。

 これらの研究組織は、我が国における当該研究分野の中核的研究拠点として国際的なレベルの研究を推進し、当該分野の研究の発展をリードする役割を果たすことが求められる。
 各拠点組織が対象とする研究分野の範囲は、国際的な学問動向や関係学会の状況等を踏まえ、一定のまとまりをもった範囲とすることが考えられる。

 国公私立大学の既存の研究組織の中には、既にこのような拠点としての機能を有するものや、将来的に拠点として発展すべきものがあり、そのような研究組織は、国として重点的に支援する。
 他方、それ以外の組織については、各大学の自主的・自律的な管理運営にまかせる。

 国は、基盤的経費の確実な措置と科学研究費補助金等の競争的資金の拡充により(デュアルサポートシステム)、各大学における多様な学術研究が幅広く行われるよう支援する。各大学においては、個々の研究者や研究室レベルで行われる多様な研究活動を推進し、優れた研究や特徴的な研究等を発展させる必要がある場合には、必要な研究組織の機動的な整備等により研究を推進することが望まれる。このような大学の研究組織のうち、全国の関連研究者による共同利用・共同研究の拠点等として発展させるべきものは、研究者コミュニティの意向を踏まえ、国として支援する。

 現在、国立大学法人について、附置研究所の設置改廃を行う場合には、学術分科会研究環境基盤部会において妥当性を審議の上、文部科学大臣による中期目標の変更手続きを行うことが必要となっているが、学術政策上国として特に整備を推進する研究組織以外の組織については、各大学の自主的・自律的な判断による機動的・弾力的な設置改廃を可能にする観点から、次期中期目標・計画においては、中期目標の記載事項としないことを検討する。

3  共同利用・共同研究の推進

  1. 共同利用・共同研究の意義・役割

 個々の大学の枠を越え、全国の国公私立大学等から研究者が集まって共同利用・共同研究を行う「全国共同利用」システムは、我が国が独自に発展させてきたシステムであり、これまで国際レベルの研究成果をあげ、我が国の学術研究の発展に大きく貢献してきた。

 多くの研究分野において、多様な背景を有する全国の関連研究者が共同して研究を進める必要性と有効性は大きく、人的・物的資源の効率的な活用の観点からも、今後更に全国共同利用の充実を図っていくことが重要である。

 全国共同利用の機能は、1関連研究者で大型の研究装置を共同で開発し(改良・機能向上を含む)利用すること、2個々の大学では収集・保管等が困難な大量の研究資料やデータを収集・整備し関連研究者で共同利用すること、3関連研究分野の発展に資する共同研究や研究集会を組織し研究者の交流を図ること等、研究分野の性格等に応じ多様であるが、研究者の知を結集させ、研究者コミュニティの意向を踏まえて共同で研究を推進するという点が重要である。「共同利用」という用語については、設備や資料の共同利用のみを想起させ、共同研究の拠点としてのイメージが薄いことから、再検討が必要である。

2. 共同利用・共同研究の課題と今後の方向性

(国公私立大学を通じた共同利用・共同研究拠点の整備)
 これまでの「全国共同利用」は、国立大学の附置研究所や大学共同利用機関等を拠点として推進されてきた。平成16年に国立大学が法人化される以前は、全国共同利用の拠点は法令(国立学校設置法体系)によって設置され、全国共同利用に必要な経費は国立学校特別会計の中で国が措置しており、国立のシステムの中で、国の学術政策上必要な体制を整備してきたとも言える。今後は、国全体の学術研究の発展のため、国公私立を問わず大学の研究ポテンシャルを活用し国として最善の研究体制を整備する観点から、公私立大学についても、共同利用・共同研究の拠点としてふさわしい研究環境や特色ある設備・資料等を有する場合には、拠点として位置づけ、重点的に支援すべきである。

(共同利用・共同研究拠点の制度的位置づけの明確化)
 他方、国立大学におかれる全国共同利用拠点については、大学の内部組織として大学全体の運営方針に基づく資源配分に左右されることから、研究者コミュニティの意向との調整が困難な場合が生じている。同様の問題は、公私立大学に拠点を整備する場合にも起こりうることであり、国として重点的に支援するものとして、共同利用・共同研究拠点の法令等における制度的位置づけとこれに対する支援のあり方を明確にする必要がある。

3. 共同利用・共同研究のあり方

(運営体制等)
 共同利用・共同研究の効果的な推進のためには、研究者コミュニティの自主性・自律性に基づいた運営を確保することが極めて重要であり、開かれた運営体制を整備し、運営に外部研究者の意見を反映する仕組みを整える必要がある。その際、国際的な共同研究拠点にあっては、海外の研究者の意見の反映にも配慮することが必要である。また、研究者コミュニティによる運営を確保するためには、拠点組織の研究者の人事に関しても外部の意見を取り入れる等の配慮が望ましい。

 共同利用・共同研究の実施にあたっては、国公私立大学等の研究者に対して広く公募を行い、関連研究分野の動向を踏まえ、外部研究者を含む合議体により公正な採択を行うことが必要である。

 共同利用・共同研究の拠点組織においては、共同利用・共同研究に参加する外部の研究者(共同利用研究者)への支援を適切に行うため、必要な事務職員や技術職員を配置するなど、体制を整備することが必要である。

 また、共同利用・共同研究の形態に応じて、共同利用研究者が研究を実施するために必要なスペースや情報基盤へのアクセス等を確保することが必要となる。さらに、共同利用・共同研究の形態によっては、国内外の共同利用研究者のための宿泊施設が確保されるようにすることも望ましい。

(人材の流動性)
 研究の活性化のためには、国公私立大学を通じ、優秀な研究者の共同利用・共同研究への参加を促進することが重要である。優秀な研究者が拠点における研究活動に専念できるよう、所属大学における代替教員の確保に必要な経費の支援を行うための方策の検討も必要である。また、拠点組織とその他の国公私立大学との間での人事の流動性を高めることも重要である。

(人材養成)
 共同利用・共同研究の拠点においては、国内外の優れた研究者が結集し、最先端の研究環境の下で独創的・先端的な研究活動を展開している。大学院学生等の若手研究者がこのような環境の中に入ることは、高度な人材養成の観点からも、研究の活性化の観点からも有効であり、拠点においては、全国の若手研究者を積極的に受け入れることが望ましい。

(情報提供・研究成果の発信)
 全国の多様な研究者の参加を促進するため、共同利用・共同研究に関する情報提供を充実させることが重要である。とりわけ、研究成果に係る情報発信については、研究者コミュニティの発展に資するとともに、社会に対する説明責任を果たす観点からも、積極的な取組が求められる。

(評価)
 共同利用・共同研究の拠点組織においては、拠点としての役割・機能を十分に果たしているか、不断の評価を行うことが必要である。共同利用・共同研究の評価においては、研究者コミュニティの要請に応えているか否かという観点が重要であり、開かれた運営体制による日常的な評価機能に加え、定期的にコミュニティの外部評価を受けることが必要である。また、分野の特性に応じ、国際的な評価を実施することも必要である。

(経費の負担)
 共同利用・共同研究に必要な経費は、個々の国公私立大学を越え、国全体の学術研究の発展に資する経費であり、国において一定の財政措置を行うことが重要であり、そのための支援スキームが必要である。その際、共同利用に供する施設・設備等に係る経費についても、その負担のあり方について新たな視点で検討する必要がある。

 共同利用・共同研究に必要な経費に係る国に対する予算要求の手続きや会計処理上の取り扱いについては、研究者コミュニティや社会に対する説明責任が果たせるような仕組みを検討する必要がある。

4. 共同利用・共同研究拠点等の整備

(拠点の設置形態等)
 共同利用・共同研究の拠点の設置形態としては、研究分野の特性、研究者の状況や必要とされる研究基盤の性格等により、特定の国公私立大学の中に設置したり、複数の国公私立大学が共同で設置することが適当な場合と、独立の大学共同利用機関とすることが適当な場合がある。

 大学内の研究組織は、多様な学問が存在する場で特定分野の研究が行えるというメリットや、多様な大学院学生の研究指導を身近に行える等の人材養成面のメリットがある。また、大学側にとっても、特徴的な研究活動を実施するとともに、最先端の研究環境における教育活動を可能とし、大学に個性を付与するというメリットがある。

 研究分野によっては、共同利用・共同研究の拠点は、必ずしも全国に一箇所である必要はなく、分野の特性等に応じ、複数の拠点を設けて相互に連携を図るような方法も考えられる。また、一定の地域においてその地域の研究者が集結する共同利用・共同研究もありうる。

 さらに、分野の特性等に応じ、従来のような固定的な組織ではなく、ネットワーク型の研究推進が可能となるような形態も推進すべきである。例えば、
1 特定の国公私立大学の研究所等が中心となって、他の研究組織とネットワークを形成する形態
2 大学共同利用機関法人に特定のテーマの研究を推進する存続時限付きのヴァーチャルな研究組織を設置し、国公私立大学の関連の研究者が参加する形態
等が考えられる。

(拠点の新設に係る手続き等)
 従来共同利用・共同研究の拠点のなかった研究分野についても、研究者コミュニティの意向を踏まえ、必要な場合には拠点を形成することが必要である。

 新たな共同利用・共同研究の拠点を形成する際には、研究者コミュニティの意向を十分に踏まえたものであるかどうか等について、学術分科会等で審議する必要がある。

 既存の拠点組織についても、研究者コミュニティの意向を踏まえ、共同利用・共同研究が適切に行われているか等について、国として定期的な評価と見直しを行う必要がある。

 共同利用・共同研究の拠点となる組織の改廃等は、大学等の独自の判断のみで行うことは適当でなく、研究者コミュニティの意向を踏まえ、学術分科会等で国全体の学術研究の推進の観点から妥当性を判断することが必要である。

 このような拠点組織の整備等に関する考え方は、新領域の研究の拠点となる組織や、国内唯一の研究を行う拠点となる組織についても、同様と考えられる。

5. 大学共同利用機関法人に期待される役割
 大学共同利用機関法人は、関連分野の大学共同利用機関の設置主体であり、拠点としてのノウハウを有するとともに、各分野の意向を踏まえた運営の仕組みを有している。大学共同利用機関法人が、国公私立大学の研究組織との連携を強化してネットワークの中心としての役割を果たしたり、国公私立大学におかれる他の拠点組織に対する支援を行ったりして、関連分野全体をリードする中核としての機能を果たすことが期待される。

 また、大学共同利用機関法人が、幅広い関係者の議論の場となり、学際的分野や新たな学問領域のコミュニティを育成し、研究拠点を形成する役割も期待される。

 大学共同利用機関法人が、このように学術コミュニティの中核としての役割を果たすためには、例えば教育研究評議会をより幅広い関係者から構成するようにする等、その運営体制等の強化を図ることが必要である。

4  学術研究の大型プロジェクトの推進

   学術研究の大型プロジェクトについても、国の学術政策として、研究者コミュニティの意向を踏まえ、大学共同利用機関法人と国公私立大学の連携の下に推進していく必要がある。

 大型プロジェクトは、従来、学術審議会の審議等を踏まえ、大学共同利用機関等を中心として、国立学校特別会計によって国の学術政策として推進されてきたが、現在は、新たなプロジェクトを推進するための手続きが定まっておらず、意思決定プロセスを検討する必要がある。

 大型プロジェクトの推進のための意思決定にあたっては、学問の自由を最大限尊重し、研究者集団による自主性・自律性の確保と権力的な関与の排除に十分留意することが重要である。なお、このような意思決定を経て、国としてプロジェクトを推進する段階においては、公財政支出の妥当性について適切な評価を受ける必要がある。


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