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学術分科会(第49回) 議事録

1.日時

平成24年10月24日(水曜日)13時~15時

2.場所

東海大学校友会館「望星の間」

3.出席者

委員

佐々木分科会長、甲斐委員、鎌田委員、佐藤委員、柘植委員、平野委員、井上委員、金田委員、瀧澤委員、谷口委員、西尾委員、宮下委員

(説明者)
久間和生 三菱電機株式会社常任顧問

文部科学省

(事務局)
田中総括審議官、藤木文部科学審議官、板東高等教育局長、吉田研究振興局長、田中科学技術・学術政策局次長、磯谷科学技術・学術総括官兼政策課長、菱山振興企画課長、下間情報課長、袖山学術研究助成課長、塩田科学技術・学術政策局政策課企画官、伊藤学術企画室長、長澤学術基盤整備室長、岸本学術研究助成課企画室長

(科学官)
池田科学官、塩見科学官、島野科学官、関科学官、高木科学官、徳宿科学官、中島科学官、羽田科学官、美濃科学官

4.議事録

【佐々木分科会長】

 それでは時間になりましたので、ただいまから第49回科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。
なお本日は過半数に達しなかったため、懇談会という形になります。御了承いただきたいと思います。また本日、報道関係者より会議の冒頭についてカメラ撮影を行いたい旨、申出がございました。許可をしておりますので、御承知おきいただきたいと思います。それでは配付資料の確認を、事務局からお願いします。

【伊藤学術企画室長】

 失礼いたします。お手元の議事次第を御覧いただければと思います。
こちらの議事次第にございますとおり、本日は先生方の御発表資料を含めまして9点、資料を配付させていただいております。欠落等ございましたら、事務局等にお申しつけいただければと思います。よろしくお願いします。

【佐々木分科会長】

 どうもありがとうございました。
では、議事に入りたいと思います。
本日は、まず前回に引き続き、大学を中心とした研究力強化の在り方について審議を行いたいと思います。本日は羽田科学官、西尾委員、三菱電機の久間常任顧問、柘植委員から、御意見を発表していただくことになっております。その後に自由討議を行いたいと思いますので、その前に事務局より、論点の確認等を簡潔にお願いしたいと思います。

【伊藤学術企画室長】

 失礼いたします。お配りしております資料1-1を御覧いただければと思います。
こちらにおきましては、前回までに御審議いただきました論点例と、主な意見をまとめております。簡単に前回の主な意見を、黒丸と下線で加筆させていただいておりますが、こちらをちょっと御確認いただきたいと思います。
1点目の要因分析に関してということで、前回御意見が出ましたのが、多様化ということ、及び世界の研究と連動というところで、日本は遅れているのではないかという御意見や、世界の研究者ネットワークへの参入に対しての課題や、また世界の研究者ネットワークに入っていくための共同研究につながるような、サバティカルというものについても問題があるのではないのかということ、こういったことをはじめとした御意見を頂戴しました。
また次の2ページ目でございますが、論点の二つ目の柱の大学等に求められる改革、取組についてという部分でございます。前回頂きました御意見といたしましては、1点目の黒丸の下線にございますような、研究者の研究時間をいかに増加・確保することが重要であるかということや、また2点目の黒丸にございますとおり、高い水準の研究を維持するためには、国際水準の研究体制、環境整備による人材確保、これが急務であるというような御意見も頂いております。また引き続き3ページ目でございますが、その研究体制の確保という観点からも、日本の大学には技術研究者が少ないというような御意見も頂いております。
また4ページ目でございますが、3番目の柱の国に求められる取組の支援の在り方という論点に関しましては、前回頂きました御意見といたしまして、1点目の黒丸の下線でございますが、世界級の研究をやっていくという部分においては、まず分厚い層の育成が必要であるということ、またそれとつながる話でございますが、二つ目の黒丸でございます、特定の部分への政策的な集中と選択のみでは課題があるというお話を頂いています。また下から3番目の白丸は、新規で頂きました御意見ですので黒丸に修正をお願いします。そしてイノベーション創出といった観点から、それを支える大きな研究費であります科研費の分科・細目に関しましても重要であるというお話などを頂いております。同じ観点の続きで5ページでございますが、1番上の白丸は前回新規に頂きました御意見ですので黒丸に修正をお願いします。いい研究を引き続き続けていくといった観点からしますと、すぐれた研究を中期的なタームでいかに継続できるようにするかということで、競争的資金の在り方を少し考える必要があるのではないかというような御意見等を頂戴しております。前回頂きました主な御意見は、以上でございます。

【袖山学術研究助成課長】

 学術研究助成課長の袖山でございます。よろしくお願いいたします。
前回の会議で科研費に関わりまして何点か御意見がございましたけれども、本日はその御意見に関連します現状につきまして、若干補足的に御説明申し上げたいと思っております。資料の1-2をまず御覧いただきたいと思います。
系・分野・分科・細目表の改正についてでございますけれども、御案内のとおり科研費におきましては、系・分野・分科・細目表の区分によりまして審査をしているところでございます。これにつきましては逐次学術の動向等をふまえて、研究者がより応募しやすくするとともに、適切な審査を行うという観点から、見直しを図ってきております。おおむね5年ごとにこの改正を行い、特に10年に一度は、その動向をふまえた大規模な見直しを行うこととされており今、既に始まっております平成25年度の公募に合わせまして、改正を行ったところでございます。この改正に当たりましては、科学技術・学術審議会の研究費部会、審査部会等における議論、それから日本学術振興会の学術システム研究センターにおける議論をふまえて行っているものでございます。
具体的にどのような改正が行われたかということでございますけれども、まずは系といたしまして「総合・新領域系」を見直し、「情報学」「環境学」「複合領域」の3つの分野で構成する「総合系」という新たな系を創設したこと、また、分野について「人文社会系」「理工系」「生物系」にそれぞれ「総合領域分野」を創設したこと。さらに、分科・細目等の新設及び統廃合ということで、これについては学問動向に照らして応募しやすいものとなるように、分科・細目の名称、各細目の内容を示すキーワードの見直し、分科・細目の新設・統廃合を行ったところでございます。これによりまして細目数については、従前の298細目から319細目へ増加しています。
また審査における運用の見直しといたしまして、「若手研究(B)」においては複数細目での審査の導入ということで、新興・融合的な研究課題への対応を図るために、研究課題が新興・融合的で、研究者が複数の分野での審査を希望する場合には、二つの応募細目を選定できる仕組みを今回より新たに導入したところでございます。
次の2ページでございますけれども、科研費の評価制度についての御意見等がございましたので、審査評価制度をはじめとする科研費の主な制度改善等について、まず整理をいたしました。
一番左が学術研究の動向等をふまえた「種目等の見直し」の状況、真ん中のところで審査の公正性、透明性を担保するということ、それからこの科研費による研究成果等について広く社会に発信をしていく、あるいは評価によってさらなる研究の向上、改善を目指していくという観点からの「審査・評価等の見直し」、さらには科研費をより使い勝手のよいものとし、効果的、効率的な研究を行っていただくという観点からの「使い勝手の向上等」といった取組を進めてきているところでございます。
特に評価についてでございますけれども、従前より大規模の種目につきましては中間評価、事後評価を実施してきたわけでございますが、平成20年度からはこれに加えまして、より積極的な説明責任を図るという観点から、全ての種目で自己点検中間評価を実施していただくことといたしました。また大規模種目における中間・事後評価については、これを一つに統一いたしまして、最終年度の前年度に研究進捗評価という形で実施することといたしまして、その評価の結果を次の研究計画や次の審査に生かすという形で、負担を軽減するとともにより効果的な評価ができるように、一本化を図ったところでございます。さらには特別推進研究において、追跡評価の試行の導入を実施したところでございます。
なお平成23年度には、この自己点検評価について、従来、実績報告とは別に自己評価報告書というものを作成していただいておりましたが、簡素化を図るために実績報告書の中で自己評価に関する項目を設け、記入の手間を省くということで、実績報告書の中で簡潔に記述をしていただく方式に改めたところでございます。
このように各科研費の種目によりましてその評価の方法等が違っておりますので、それを一覧に整理をしたのが、3ページでございます。
特に規模の大きい種目については、研究進捗評価、追跡評価、あるいは新学術領域研究においては中間評価、事後評価などを実施することになっています。また科研費による研究の計画的支援を図るための仕組みということについても御意見があったところでございますけれども、ただいま御紹介しましたように、評価の仕組みの中で、次につなげるという観点からの評価を実施しているところでございます。また一般的な基盤研究等においても、継続的に採択を希望する場合においては、その研究課題の計画調書に、これまでの実績等を記載するということになっておりますので、これを適切に評価をしていただくことによって、研究を継続的に進められることになると考えておりますけれども、より切れ目なくその方法ができるような観点から、いわゆる前年度報告というような仕組みを認めている種目もあります。こういったことを通じまして、切れ目なく支援ができるように、また評価をふまえたより発展的な研究が継続的にできるように、科研費制度の中でも配慮をしているところでございます。以上でございます。

【佐々木分科会長】

はい、ありがとうございました。
特に科研費についてはまた、もし御意見があれば、これからも伺っていきたいと思っております。
それでは予定どおりのスケジュールで、意見発表に移りたいと思います。それではまず羽田科学官、御説明をお願いします。

【羽田科学官】

 東京大学の羽田と申します。よろしくお願いいたします。
これまでの報告が主に理系であったということで、私の場合歴史学を専攻しておりますので、文系について、私の考えるところを簡単に御報告させていただきたいと思います。
それからもう一つは、この4月から大学の経営にも若干関わっておりまして、大学全体のことについても話をするようにということでしたので、その点についても少し触れたいと考えております。
簡単な一般論なのですが、現実としては予算が減り、テニュア・ポストも減っている、ところが研究にかかる費用は増大して、新しい研究領域が続々と誕生しているというわけでありますから、限られた資金を広くばらまいていると、どこもここもみんな疲弊してしまう、あるいはどこもお金が足りないという状況にならざるを得ないと思います。したがって、一般論としては、平等主義の撤廃は、もうどうしようもない現実ではないかと私は考えております。限られた資源をどんなふうに活用していくかということは重要です。研究力について言うならば、研究力の強い大学に資金やポストを重点的に投資しないと、今まで研究力が強かった大学もだんだんうまくいかなくなっていくということは、もう明らかではないかと思います。
したがって、これは私自身、前に経験したことですけれども、同じ大学からの応募や採択は1件とかあるいは何件かに限るというふうな、競争的資金の公募方法は、いかがなものかと考えております。それから、大学内部においても、今のところ例えば私が属しております東京大学では、学内とか部局内に資金を平等に、できるだけ配分しているのですが、それができる限りはその方がよいと思いますが、今はだんだんそういうことが難しくなってきているのではないかというのを、一般論として申し上げたいと思います。
国際的な研究力強化競争についてです。前回、既にお話があったと思いますが、世界の大学ランキングが強い影響を持つようになってきております。これはまさにこの10年間ぐらいのことです。前回ドイツのことがお話にあったようですけれども、フランスにおいても、フランスの大学はみんな小さいのでこれを統合して、規模を拡大することによってランキングを上げようとしている。あるいは韓国、シンガポール、香港において、英語の授業を増やしたり、外国人教員、留学生の数を増大させるといったような施策がとられているのは、御承知のとおりだと思います。シンガポールとか香港などと比べて、日本の場合は国の成り立ちや大学が置かれた状況が違いますので、同じような施策を直ちに採用するわけにはいきませんが、それぞれの国の大学がこの大学ランキングというものを無視できない状況に陥ってきていることは事実かと思います。先週、ベルリンで、ドイツの大学の先生方とお話をする機会がございましたけれども、そこでもランキングをどういうふうに扱うかということについての議論がございました。
それからもう一つ忘れてはならないのは、今までも大学同士の国際的な学術交流の協定が結ばれてきましたが、最近は戦略的パートナーシップという言い方をして、ストラテジック・パートナーシップと言いますけれども、特定の幾つかの大学同士が飛行機会社のアライアンスのように組んで、お互いに足りないところを補い合ったり、あるいは協力し合ったりするという形で、単なる学術交流では済まないような強固なパートナーシップを結ぼうという動きが、急速に進んできています。私たちの大学の場合にも、幾つかの大学からオファーがあったり、こちらからオファーをしているという状況であります。
ここからは、人文学と社会科学という文系の話です。この三つが恐らく一番有名なものだろうと思います。一番初めに始まったのが上海交通大学のものですけれども、それ以外にTimes Higher EducationとQSという、イギリスの二つの会社が出しているランキングが有名です。ここに書きましたように東京大学は、佐々木分科会長が総長をやっていらっしゃったころと比べると、どんどんと順調に順位を落としておりまして、もう20位台、QSでは30位になっております。
これらのランキングで人文学、社会科学がどういうふうに扱われているかを見てみました。そうしますと上海の場合は、一番上にありますように、人文学は、ランキングシステムにはカウントしないと書いてあります。社会科学も、経済学とビジネスという非常に限られた分野のみ取り入れているようです。世界基準での比較のメルクマールがないということで、上海の場合は文系研究をほとんど評価の対象としていないのです。
タイムズの場合は、東大は人文学では50位以下でありまして、名前がありません。社会科学は32位であります。QSの場合は、人文学の分野には哲学から英語英文学までの分野、六つが挙げてありまして、社会科学は相当多くの分野が含まれています。人文学では、東大は哲学と歴史学では50位に入っておりません。全く名前が挙がりません。一番高いのは不思議なことに地理学でありまして、世界で7位ということになっています。しかし、人文地理をやっている先生は、東京大学にはいないのではないかと思います。なぜこれが7位になっているのか非常に不思議です。基準は必ずしもよく分かりませんが、何らかの評価の結果がこのようなランキングになっていることは確かです。これを見る限り、どうも人文系あるいは人文社会系が評価の対象となればなるほど、東大のランキングが下がっているようで、大変複雑な思いであります。
一応人文学に絞ってこれからお話をしますけれども、日本の大学における人文学が、世界的に見てそれほど高く評価されていないということは、このランキングによる限りは、明らかではないかと思います。
それはなぜかということを考えていきたいと思います。資料2-1の5ページは東京大学の大学院人文社会系研究科、文学部の学科の単位を挙げたものです。1919年の記録によると、19学科からなっています。このうち教育学は別に学部ができましたので、ここから出ましたけれども、2012年、今年どうなっているかを見ますと、1919年にあった18学科は全部残っております。そのうちの一つ、美学美術史学は美学芸術学と美術史学という二つに分かれましたので、グリーンで書いておきました。それ以外に薄い青い部分がございますけれど、ここが増えた部分であります。ほかは基本的には1919年から変わっていない、もちろん例えばイギリス文学と言っていたものが英語英米文学というふうに若干変わっておりますけれども、基本的には同じ研究室の単位でずっとやってきているということは、お分かりいただけるかと思います。その意味で東大の人文学は100年間ほとんど変わっていない。もし変わっている部分があるとすると、それは増えた部分です。少し太ってはいるけれども、もとの部分はあまり変わっていないということが言えるかと思います。
その中ではいろいろと変わっていると言われますが、20世紀初頭以来の研究の枠組みは原則としてそのままだといえると思います。それからもう一つは、研究が主として日本語で発表されているので、外国語の同種の研究との比較ができないという点があります。これが先ほど申し上げたように、上海交通大学が、人文学を評価の対象としないことの理由です。
なぜ日本語で研究を行うのかという点について、私は次のように考えています。日本語で人文学的な研究業績を出していくことによって、日本人に必要な教養、それを日本国民の教養と言っていいと思いますけれど、これを積み上げていくという必要があったのです。私たちはその結果日本語で非常に高度な世界理解、あるいは論理の構築ができるようになっているわけですけれども、これは人文学の成果だと思います。実はフランスにしろ、ドイツにしろ、あるいはイギリスでも、これまではどこでも基本的には同じ状況であったと思います。大きな国では、人文学は国語で行うものだったのです。
それでは日本語で行われている様々な人文学に、外国人の研究者は参入できないかというと、そういうことではありません。例えば6ページに名前が挙がっていますドナルド・キーンさんとか、ベルナール・フランクさんなどという人は、日本語が非常に上手で、彼らが日本語で書けば、日本研究の仲間に入れてもらえます。それどころか、世界的な学者だと日本の人たちは思うわけですね。しかし一方で、この人たちがフランスだとかドイツだとか、あるいはアフリカだとか、そういうことについて何か発言をしているかというとそうではなくて、日本についてだけ語っているということが重要な点だと思います。
逆に日本の研究者の方でも、例えばフランスについてフランス語で語り、フランスの学界で活躍している人がいないわけではありませんし、この種の交流は今までもあったと思います。しかしはっきりしていることは、日本語で他国について語っている限りは、それが世界的だと考えられることはなく、また、その研究者の属する大学のランキングが上位に位置することになるということはありえないと思います。
ではこれから人文学はどうあるべきか、研究力を上げるにはどうすればよいかということです。今日これだけグローバル化が進んできますと、「日本国民の教養」だけではもはや十分ではありません。やはり「グローバル教養」というか、いわゆる「地球市民の教養」を身につけた人材を育成していく必要があります。そのときに人文学は、非常に大きな意味を持っていると私は考えています。
実はこの新しい人文学はまだ世界中のどこにも確立したモデルはありません。いま作られていっています。そこの部分で世界の人文学の研究者たち、あるいは大学は競争をしています。具体例を挙げますと、日本語や中国語、フランス語などで書かれた文献を読んで、それを世界思想、あるいは世界文学という共通の枠組みの中で、英語で論じるということが今どんどん行われてきています。また日本史にしても、日本という一国史の枠ではなくて、世界史の文脈で過去のいろいろな出来事を解釈し、理解していく、そして、世界史を新しく作ってゆくといった研究が今盛んになってきています。そこで使用される言語は英語です。
今までの人文学の研究の多くは、一つの国、地域を単位とし、そこに集中して研究を進めてきたわけですけれども、いまや枠を「世界」に拡大し、世界の研究者と意見を交わしていくということが必要になっています。私自身も今朝、イタリア生まれで、現在フランスで今の職についていて、東アジアの歴史の研究をしている人と英語で話すということをやってきましたけれども、このような状況が現在ごく普通に行われるようになってきているということを、是非御理解いただきたいと思います。
最後のスライドになります。したがって人文学の分野で、もし何か重点的に支援する領域があるとすれば、それは間違いなく「世界」を分析の枠組みとする研究領域です。世界史とか世界文学、世界思想といった分野では、本当に世界的な競争が行われています。この分野の研究が発展すれば、恐らく人文学の分野の大学ランキングは相当上がるだろうと思います。もちろんランキングが全てではありませんが、人文学で新しい領域がこういった分野であることは間違いありません。
それから、人文学だけではなくて、社会科学ですとか自然科学等との境界に位置する分野横断的な研究、具体的には8ページに挙げているようなものですけれど、他にももっとあると思いますが、こういった研究が組織的・集中的に支援されることによって、外から見たときに日本の大学における文系研究のプレゼンスがよりくっきりと大きく見えるのではないかと思います。全体として申し上げたいことは、世界の人たちがそれぞれの違いを認めながらも互いの共通点を発見し、新たなグローバルな教養を身につけねばならない時期に、文系の分野で、そのまだはっきりしない「グローバル教養」を生み出すべく挑戦している研究分野と研究者を重点的に支援することが、世界レベルでの大学の研究力強化に直結するだろうということです。これらの分野では、研究の主要な言語は日本語ではなく英語となるでしょう。しかし、成果は日本語でも発表せねばなりません。極めて困難な道ですが、この道を進む以外に文系研究の将来はないと私は考えています。以上です。

【佐々木分科会長】

 はい、どうもありがとうございました。
この際に、特に内容的に確認しておきたいということがあれば、手短に御質問いただきますが特になければ皆さんのお話を伺った後、羽田科学官にはまた御質問があればお答えいただきたいと思います。
それでは次に、西尾委員から御説明をお願いします。

【西尾委員】

 大阪大学の西尾でございます。実を言いますと、9月半ばに後でお話ししますように英国のことが気になりまして、英国の大学、特にオックスフォード、ケンブリッジ、インペリアル・カレッジ・ロンドンなどを訪問しましたが、その途中で、文部科学省から今日の発表の依頼を受けました。特に、私の立場としては、大学の執行部として研究力を強化するためにチャレンジしてきたことを話してください、という趣旨の発表依頼を受けました。去年の8月まで大阪大学の理事、副学長を務めておりましたので、その経験をもとに話させていただきたいと思います。また、このような発表の機会を頂きましたことに、心より感謝いたします。
近年の研究力強化に関わる状況変化ですけれども、大学における教育研究を支える基盤的経費である運営費交付金、また大きなプロジェクトを獲得した場合に、研究を推進するための運営上の大切な経費である間接経費、これらの経費に関しましては、現在では深刻な状況にあるということは言うまでもありません。そのような状況の中で、我々が一つの光を見出(いだ)すとすれば、現行の科学技術基本計画の中に、政府研究開発投資を、対GDP比1%にすることを目指すこととすると書かれておりまして、これは我々としては大事なことだと思っております。
さて大学の執行部として、研究力強化を図るに当たり、まずプリンシプルとして「基本」「ときめき」「責任」ということを挙げました。基礎研究に深く根をおろしつつ、科学の新しい地平を拓(ひら)くような先端的な研究を、社会に対する責任を果たしながら、ときめき感を持って強力に推進することを考えまして、これから申しますような五つの事業を行いました。
ます、科学研究費補助金に関する事業ですが、この補助金は、全分野を網羅して萌芽(ほうが)的な研究から大型研究まで、また国、公、私立という機関を問わないということからしますと最もオープンな研究費であり、その獲得状況は大学の研究力を計る上では大事な評価尺度であり、また、間接経費が手当てされている観点からも重要と考えます。
大阪大学のこの科研費の獲得状況をいろいろと分析してみますと、研究力は十分あるのに、例えば基盤研究(C)とか若手研究(B)というどちらかというと少額の研究種目の科研費を獲得していることが多いことが分かりました。そこで、上位研究種目にチャレンジしていただくことが、本人にとっても大学にとっても互恵の結果を生めるということを考えまして、上位種目にチャレンジして、もし、採択されなかったら大学として何とか補塡するということを考えました。このような方策の成果は出ておりまして、実際、間接経費についても以前より多く獲得することができております。ただし、このようなチャレンジへのサポート数をもっと多くしたいし、金額を増やしたいという気持ちがあります。
次に、短期的に成果が必要とされる各府省の政策主導型の競争的研究のみならず、人類社会の発展のための知の拠点として、基盤研究に継続的、長期的に取り組み、その厚みを増しておく、これは大学の使命だと思いました。そのようなことに資する45歳以下の若手研究者のグループに対して、学内COE事業、「最先端ときめき研究推進事業」を実施しました。募集に対して7倍ぐらいの倍率になりましたけれども、4グループを採択しました。この事業も、今後も継続できればよいのに、と考えております。
それと同時に、大学において将来大きな木と育っていく苗木、つまり、若手研究者を育てておくことの大切さを考えました。これは独創的、挑戦的な研究を行うことができるように研究費を支援することで、現在の研究テーマだけではなくて、それを加速させ、更に新たな研究テーマを加えるなど、大阪大学の将来を担う若手研究者を育成しておくことために、37歳以下の研究者30名を選んで支援することを考えました。10倍を超す倍率のもとでの審査をするに当たり、大阪大学の第一線級の研究者の方々に審査会のメンバーになっていただきました。この事業も、本当はもっと続けたかったというのが本音です。
さて、大学において、活性度が高くて頑張る部局ほど、疲弊するという現状があります。これは大型プロジェクトを獲得すると当事者のみならず、担当部局の事務部などに大きな負担がかかることに起因します。そうなりますと大型プロジェクト獲得へのインセンティブが低下するという深刻な問題が起きますので、その解決のために、大学として全学的に支援する体制の確立を行いました。さらに、大型プロジェクトなどを戦略的に獲得するための企画部門を設置し、外部資金獲得の増額を目指すことも考えました。特に、このような体制整備の過程で大事なのは、プロジェクトマネジャー、リサーチアドミニストレーター、技術支援職員などの、研究者と事務員との中間的な職種の人員の確保と養成ということです。その人員の確保のための経費を何とか最小限確保することは行いましたが、決して十分ではない状況です。
様々な観点から経費が削減されていく中で、今後、産業界あるいは政府関係の研究所と連携をして、学外の知を学内に呼び込む仕掛けが大事だと考えました。特に、産業界の場合、寄附講座というのはありますけれども、これはあくまでも寄附でありまして、企業としては自身が構想する研究者の陣容で大学において共同研究ができないという側面があります。そこで企業からは、イノベーションを起こしたいようなテーマに関して、その分野のエースを数年間単位で大学に送り込んでいただく。一方、大学サイドは、その分野に最も知見を持っている研究者を兼任として充当して講座を設置する、共同研究講座という制度を大阪大学として始めました。これは、企業としては寄附という行為が困難になってきている状況の中で、一歩踏み込んだ共同研究が推進できるということで、いろいろな面で注目されております。このような共同研究を推進する専用の建物も竣工(しゅんこう)しまして、共同研究講座よりも大きなユニット、つまり、企業のある一部のセクションがキャンパス内に入ってくる協働研究所、あるいは複数の企業が大阪大学と共通のある課題について共同研究を進めるというような協働ユニット制度も始めました。これは大学サイドから言えば、インターンシップなどの産学連携による人材育成の場をキャンパス内に設けることができるという大きな意義を持っております。また、例えば一つの建物内に異業種の複数企業が入りますと、その共通の場を介して、オープンなイノベーションが起こるという相乗効果もあります。このような共同研究を推進する新たな制度は、大きな成功を収めておりまして、共同研究講座は26講座も設置され、寄附講座の数に迫っております。協働研究所についても、既に4研究所が立ち上がっています。
最近の中国の情勢を見たとき、研究経費、研究者の層の厚さなどに関して、日本が優勢であるとは言えなくなってきております。そのような状況の中で日本がどのような観点で優位性を発揮できるかということを考えた場合、日本は層の厚い産業界、多くの企業を有しており、強力な産学連携活動を展開できる、このことが大きな勝ち目ではないかと思っています。そのような観点からも、以上で述べたような先進的な産学連携活動は重要です。ただし、共同講座を増やすためには、より多くのスペースを確保する必要があるなど、様々な問題があります。
このスライドは共同研究講座に関する実績ですけれども、リーマン・ショックなど景気上の深刻な問題があったにも関わらず、大阪大学としては共同研究に関わる業績が向上しております。また、最近では、共同研究に関しては、1件当たりの経費が少額のものが増えてくるという状況の中で、共同研究講座の場合は、1年間の経費が概(おおむ)ね3,000万円程度になりますので、そういう意味でも大学の研究力強化に効果を奏していると思います。
更に最近では、産業界だけでなくて官の研究所との連携も考えています。例えば情報通信研究機構であるとか、理化学研究所の研究センターを学内に誘致することが実現しました。これらの機関も運営経費のことで大変な状況の中で、大学の知を有効にシェアする、一方、大阪大学も官の研究センターにおける卓越した研究者の知をシェアする、という互恵の関係で研究力強化を図っていくという体制が確立できると思います。この事業推進に関しても、大学側からの運営経費の充当という大きな問題を解決していく必要があります。
さて、リサーチ・ユニバーシティ構想ということで、前々回のこの委員会で文部科学省の常盤高等教育局担当審議官から説明がありました。これは大学としても大きな問題です。例えば今日の私の発表の中で、こうしたかった、こういうことができたらよりよかったと言う願望をお話ししました。例えば、リサーチ・ユニバーシティ構想において、大阪大学が選抜されるとしたら、それらの願望を実現することが可能になり、大阪大学の研究力を更に強化できると確信しております。ただし、そのときに、日本全体としてどこに向けてシナリオを考えていくのかは重要であり、それは冒頭で言いましたように英国だと思っています。
それは国の大きさ、GDPの総額を人口で割った額、さらには基盤研究に対する国からの支援額の規模等を考えますと、英国は日本と類似性があります。また、国立大学法人に関するパブリック・コーポレートの概念、総合科学技術会議の改組案における顧問というような役職、これらは英国から導入したものと考えられます。そのような日本との類似性を有しながらも、オックスブリッジをはじめ英国の大学は、世界トップランクの大学として地位を維持しております。これは何故(なぜ)だろう、また、その英国の大学で最近何が起こっているのか、というようなことをいろいろと考えました。
近年、英国の大学で大きな話題になっているのはRAE(Research Assessment Exercise)という大学評価をする事業で、大学のアクティビティーを、研究、教育実績等でランキングした上で強化経費を配分するシステムです。これは、ある意味でリサーチ・ユニバーシティの構想と類似性があります。リサーチ・ユニバーシティの構想が日本の大学にとって大きなことであるのは、この構想による強化経費がRAE的な経費であって、研究力を強化するという観点から、国立大学法人の従来の中期目標、中期計画の達成度評価とは異なる評価指標を適用することです。
英国のRAE制度における反省が二つあります。一つは評価のオーバーヘッドが大きいということ。これは補助金全体の一部である約8,000万ポンドを配分し直すために、約2,700万ポンドから約3,000万ポンドのコストを要したと言われています。それと、先ほどお話がありましたが、文系については、本来、著書であるとかモノグラフなどで最終的な研究成果としてまとめ、公表していくのだと思いますが、RAE制度のもとで論文の数だけを議論し出した英国では、文系の弱体化が起こっています。
そういうことを考えますと、評価指標の精査というのは大事だと思いますし、特許の件数等のことを問題にしますと、産学連携活動はゆがんでしまいます。例えば、現在、日経新聞で「私の履歴書」に記事を出しておられます根岸先生も、特許についての記述の中で、御自身として6件の特許しか有していない、ということを書いておられます。このように特許については、その数を問題にすべきものではありません。さらに、リサーチ・ユニバーシティに申請するための書類作成の負担の軽減などを考慮していただかないと、大学がその事業のために疲れていくということが懸念されます。
最後に、研究力評価としての大学ランキングに関しての私見をこのスライドに書いています。世界の大学ランキングは無視できないですけれども、大学の研究の多様性は単一の指標では計れない。したがって、そのようなランキングを戦略的にいかに参照するか。それと同時に、研究に関しては世界に与えるインパクトの向上を目指すべきで、ペーパー数を増やすということだけを目指しても、スモール-ペーパーが増えるだけではないか。ですから、非常にすぐれた独創的な研究を推進し、その芽をいかに育てるか。しかも、このようなことを論文引用数だけで計ることができない多くの分野でいかに強化するか。その結果として海外の優秀な人材も呼び込めるようにする、というようなことが大学ランキングに関して重要だと思っています。以上です。

【佐々木分科会長】

 どうもありがとうございました。
取り急ぎ、何か御確認したいというような点はございますか。よろしいでしょうか。
それでは引き続きまして、三菱電機の久間常任顧問から、御意見の発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【久間常任顧問】

 三菱電機の久間でございます。よろしくお願いします。
本日はお招きいただきまして、どうもありがとうございます。
まず、私の話の前提をお話します。大学の研究というのは未来への投資であり、知的財産の創出です。ただ、産業界と同じベクトル、社会への還元という意識を持った研究が必要です。私は産業界におりますが、大学の研究と企業の研究の役割分担が不明確で、つながりがないと感じております。それからダイナミックな連携、シナジーが必要です。大学からイノベーションの種をどんどんと量産してもらうには、産学官連携のパラダイムシフトが必要である、という話をさせていただきます。
内容は、研究開発と産業競争力、それから大学の研究力強化のための政策への期待と大学への期待についてお話しさせていただきます。
まず研究開発と産業競争力ですけれども、実は資料2-3の5ページの図は私が6年ぐらい前に、三菱電機の開発本部長のときに作成したものです。最近、いろいろ考えておりますと、一つの企業の経営と国の経営は、かなり一致していると思います。産業という視点で見ますと、国の研究開発、産業、知的財産・標準化、これを三位一体で進めなくてはいけないけれども、現状は、いろいろな省庁がバラバラであるため三位一体になっていない。
各省庁の研究開発に関する概算要求ヒアリングしてみると、ほとんど全てのテーマは正しいということになります。ただし、その研究が創出する事業の大きさ、雇用の大きさ、こういったことを未検討のまま概算要求がでてくる、したがって優先順位がつかずに、概算要求された額がそのまま予算化されるということが多いと思います。日本の基幹産業の製品力をいかに強化するかということと、新しい事業の創出、大きな事業の創出、それから雇用を拡大できるものかどうか、新しい成長産業は何か、こういったことをしっかりと考えながら、各省庁が国の研究開発を推進していかなくてはならないと思います。
それから研究開発から生産技術そして事業まで、シームレスな取り組みが必要です。私は開発本部長のとき、研究と開発、開発と生産がしっかりつながっている会社は非常に強いということを、アナリストの方から言われました。研究と開発、開発と生産が分断されいると、せっかくいい研究をしても事業につながらないということになります。
先ほど申し上げた三位一体の話と、オープンイノベーションとグローバルR&Dの推進も重要です。オープンイノベーションは、先ほど西尾委員の話にもありましたし、つくばのTIA(Tsukuba Innovation Arena)のような拠点の形は整ってきましたけれども、材料から出口の最終製品まで、いろいろな分野の人が集まって、いろいろな話をしながらイノベーションを起こしていくことがとても重要ではないかと思います。もちろん、人材育成も必要です。
図の中央に記載しているキーワードであるイノベーション、シナジー、グローバル、こういったことを考えながら、三位一体運営ということを是非考えていただきたいと思います。
二つ目は、イノベーションについてです。イノベーションと言いましても、持続的イノベーションと破壊的イノベーションがあります。6ページの図の赤い線が持続的イノベーションで、今ある製品をこつこつヒットを打ちながら、他社よりも、あるいは他国よりも一歩先を行く。もう一方の右の青い線は破壊的イノベーションです。持続的イノベーションだけを行っているだけでは不十分です。例えばブラウン管テレビがあっという間に液晶テレビになった、あるいは固定電話が携帯電話やスマホになった、これらが破壊的イノベーションです。ですから持続的イノベーションと破壊的イノベーションにバランスよく、国が投資することが重要です。大学の先生方と話をしますと、破壊的イノベーションの方だけを話す先生がいらっしゃいます。これでは、野球で言えばいつもホームランを狙っているということで、昔の阪神タイガースみたいに、当たっても1年しかもたない。やはり強いのは、昔の森時代の西武とか、巨人とか、二つのイノベーションをバランスよくやっていくチームだと思います。これは事業も全く同じです。以上が私の言いたい最も重要なポイントです。
次にお話しするのは、政策への期待についてです。イノベーションという切り口で大学の研究力を強化する場合、省庁間の連携が不可欠ですし、第4期科学技術基本計画との同期も必要です。それから、日本の産業力強化に向けた大学の基礎研究を増やしてほしいと思います。今、産業界はとても厳しい状況にあります。このまま産業界が沈んだら、大学の研究費だってなくなってしまう可能性もあるわけです。ですから日本が一体になって、産業力を強化するための基礎研究の比率をしっかりと保っていただきたい。産業力強化を狙う研究と、ピュアサイエンス・知の探求を区別していない先生が多いと私は思います。それぞれ成果のベクトルは違います。確かにピュアサイエンスの中から大きな産業があらわれることもありますけれども、一般的にはある程度分けて考えるべきです。トップダウンで、今年の予算配分は産業力強化に向けた大学の研究に何十%、ピュアサイエンスに何十%、そういった枠を設けて、テーマの優先順位をつけていく仕組みが必要ではないかと思います。
次に、大学への支援策についてです。いろいろな制度でいろいろな資金が組まれていますが、我々から見ると、目的、成果の評価基準、産業競争力への寄与が明確に見えません。何でも「成功している」で終わっているような気がしますし、支援策全体がバラバラになっているように思います。各省庁の支援策全体の鳥瞰(ちょうかん)図を作って進めていただきたいと思います。
次に、研究からイノベーション創出まで、一貫して支援する仕組みが必要です。文科省の中の施策もそうですし、府省連携、例えば文科省と経産省、文科省と総務省であるとか、こういったつながりがあれば、日本はまだまだやっていけると思います。9月にデバイスに関するSSDM(Solid State Devices and Materials)という国際会議が開催され、組織委員長として参加しました。その中で、大学や国公立研究所からの多くの発表を聞きましたけれども、他国に比べたら日本はまだまだ、ずば抜けた研究成果を出しています。けれども、それらが事業、産業に結びつかない。それはなぜかといったところをよく分析する必要があると思います。産業界が至らないのも確かですけれども、府省連携もできていないのも事実です。こういう現状を踏まえて、リサーチ・ユニバーシティであるとか、センターオブイノベーション(COI)はどうあるべきかを議論していただければと思います。
それから、研究型大学を構築、評価、運営していく仕組みと戦略ということで、2項目に赤字で書きましたように、政策決定や運営に係る責任あるシンクタンクを持つ必要があります。日本全体を見ますと、かつては電電公社、興業銀行、国鉄であるとか、電力会社になりますが、こういったセクションが、政策をつくって、産業界はその政策に沿って技術開発していくというように先導役が存在したのですけれども、これらが民営化されると先導役がなくなって、産業界はだんだんと矛先がわからなくなってきている、そういう時代ではないかと思います。文科省や経産省は、先導するシンクタンク、例えば科学技術政策研究所であるとか、研究開発戦略センターなど、レベルの高い研究センターを単なる調査、分析だけではなくて、政策立案ができるところまでやればいいのではと思います。
それから産業・社会構造改革を牽引(けんいん)する戦略ということで、日本の研究全体のポートフォリオのデザインが必要です。先ほど言いましたように、まずピュアサイエンスと目的型基礎研究、産業界等への応用を考えた研究、このバランス、配分がどうあるべきか。それから、短期、中期、長期に対して予算配分はどういうふうにするのか。分野ごとにどういう予算配分をするのか、そういったことをまずトップダウンで決めて、様々な提案の中から優先順位をつけていくべきです。それからオールマイティーな大学と特徴ある大学のバランスも必要です。
最後にPDCAを回す仕組み、評価の指標や手法の確立を進める必要があります。先ほど西尾委員がおっしゃっていたように、評価指標は、論文の数だけではないと思います。論文はやはり質が重要で、論文は1年に1通でいいと、かつてある大学のアルゴリズムの大先生がおっしゃっていました。すばらしい一流の論文、みんなが引用するような論文を書けば十分じゃないかと。逆に、一流の論文は1年に1通くらいしか出せないよということを、おっしゃっている先生もいらっしゃいました。論文の質をどのように評価するかが問題です。その切り口には、新規性もあるし、国際競争力、産業競争力への寄与度もあると思います。現在、なかなかうまくいかないのが知財・標準化です。知財も質です。知財については、量的にはうまく回り始めていますけれども、質をどう上げるかが問題です。標準化もまだ言葉が先行しているように思います。産業分野では、技術で先行しても、技術はすぐに普及してしまい、新興国がすぐに追いついてきて、結局、産業競争力の優位性が保(たも)てなくなります。ですから知財・標準化はものすごく重要なのですが、そこの教育が大学でできていないと思います。
次に、大学への期待ですけれども、研究力強化のための大学のデザインということで、優秀なリーダーによるプロジェクトの継続的マネジメントがとても重要だと思います。私はFIRSTの有識者委員として、いろいろとヒアリングをしています。FIRSTで採択された先生方は、皆さん大きな学術の成果を出されていますけれども、産業界に目を向けて、リーダーとして実に立派で、自分の構想を実現するために、どの先生に研究の分担をお願いして、どう連携させるかをよく考えているFIRSTの先生もいれば、研究仲間たちに予算のばらまきをする先生もいるように思います。ですから、筋のよいテーマは継続するリーダーに権限を与える、そのかわり責任もしっかり持っていただく、こういった厳しい仕組みを構築する必要があると思います。産業界では当たり前のことです。役割を明確にして、権限を与えて、そのかわり失敗したら責任をとるということです。
次に、研究力の指標、連携の指標、内部評価の仕組みについてです。これは先ほど申し上げたことです。その下に記載にあるように日本は産官学の人材流動化が進んでいない点を指摘したいと思います。インターンシップがなかなか進まない状況です。三菱電機でもインターンシップは早くから行っていますけれども、あまり出したがらない大学の先生が多いです。共同研究している先生は、いい学生を3か月、長ければ6か月単位で三菱電機の研究所に出してくださいますけれども、自分の研究で論文を出すために、学生を抱え込む先生もいるのではないかと思います。そうなると、その学生は視野が狭くなる。ですから、もっともっと学外で、学生時代から視野を広げる教育が必要だと思います。
オープンイノベーションの場については、先ほど申し上げました。
それから、研究力のポートフォリオ、産学官のポートフォリオ。研究課題のポートフォリオを是非考えていただきたいということと、下から二つ目に書きましたが、シーズプッシュ型とニーズプル型の研究のバランスも必要です。今のところ、どちらかというとシーズプッシュ型が多いと思います。もう少しニーズプル型の研究も必要であると、産業界は考えています。
イノベーションという言葉は、科学技術に基づいたという定義になっていますが、世界で言うイノベーションは違います。科学技術をベースにしたイノベーション、例えば中村先生の青色レーザー、これはまさに科学技術をベースにしています。けれども、例えばスマホなどはものすごく大きなイノベーションですけれど、科学技術ということからすると、技術の寄せ集めです。そこに、新しいコンセプトが入って、デファクトスタンダードを作って大きなイノベーションになった例です。イノベーションの本質をよく考えた研究開発が必要であると思います。以上です。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございました。
それでは何か、この際手短に御質問等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは引き続きまして、柘植委員から御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

【柘植委員】

 今から15分ほど頂いてお話ししますのは、ここに書きましたように、東日本大震災を踏まえた科学技術・学術政策の基本論点をこれから実践をするわけで、今日の議題の2番目の方に、むしろウエートが置かれております。要旨に書きましたように、今年の2月にこの科学技術・学術審議会総会で、この東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の論点というものをこれから実践するわけですが、その実践は、多分一つは教育・研究の現場であって、産学連携の推進の現場でもあり、あるいはファンディングの審査の評価現場において実践されるわけですけれども、それにおいて重視して実行すべき視座を提言したいと思います。私は産学連携推進委員会の主査と科学技術人材委員会の主査でありまして、特にこういう視点で、これから申し上げたいと思います。
まず今年の2月に出しました科学技術・学術審議会の視点に、社会の要請というキーワードがあります。私が言いかえますと、社会の要請の厳しさの直視が、科学技術・学術の我々コミュニティーには必要だということが一つ。これはもう、日本はますます脆弱(ぜいじゃく)な社会経済体質から再生せねばならないという話と、二つ目は教育、科学技術分野の人材育成が、初等、中等教育から高等教育全体にわたって負のスパイラル構造になっている。これを何とか復元せねばならない。それから3番目は、御存じのとおり1兆円を超える公財政赤字の健全化に向けたイノベーション政策、しかもこれは持続可能なイノベーションでなければならないわけでありまして、そのイノベーション牽引(けんいん)エンジンの設計と、司令塔の強化が必要であり、我々、科学技術・学術審議会としても、これに対して責任があると。更に輪をかけまして、東日本大震災と原発による国難。まさに国力の減衰の危機的な様相からの、復興と復元力の強化をせねばならない。まさに危機的様相の日本と、科学技術創造立国の正念場であると。これは、我々社会のための科学、社会における科学と言っていましたので、まさに実践の場であると。これが、2月の我々の学術審議会の視点の1、社会の要請に対して、厳しさの視点を持とうということであります。
日本の新生と課題解決を支える人材育成の強化ということが、その実践の中で非常に大事でありまして、特に憂慮すべき事態は、大学を中心とした学術の知の創造を社会、経済的な価値に具現化するというイノベーションプロセスに不可欠な、専門性を持つ統合型の能力人材、この育成のメカニズムが、教育・研究の現場で、私はあえて崩壊している、という言葉を使っても仕方がないのではないかと思っています。
一方、世界の強力な科学技術と教育と、そしてそれぞれの国のナショナルイノベーション政策の一体的な推進戦略、これを見ますと、日本は非常に遅れていると思います。今日は板東高等教育局長も来られていますし、科学技術・学術について、我々は今、この場で責任を持っていますが、特に工学、科学技術の成果を社会に還元していこうという意味の、学術としての工学の社会的使命の視座に立った原点回帰が、日本の新生への喫緊の課題だと私は思います。
言いかえますと、生きた教育と研究とイノベーションの一体推進機能の強化。それは、三位一体推進の司令塔の構築と、それを教育・研究の場で実践をするという、この二つの大きな話があります。この一体推進の司令塔構築は、ここにおられます局長の皆様方にお願いしたいのは、多分それぞれ法律で決められた一人一人の局長の、職務の枠の中ではできないことだと思います。政務三役に私は申し上げています。政務三役のお三方しか、この三位一体の司令塔の構築はできない。しかし、是非とも局長にお願いしたいのは、法律で決められている枠を超えて、この生きた教育と研究とイノベーションの三位一体推進に力を向けて、コラボレーションをしていくことは、絶対に私は法律的にも許されると思いますので、それをお願いしたいと思っています。
資料2-4の4ページは、今申し上げたことを可視化したものでございます。強い公財政、強い社会保障、強い経済と、まさに政府が今、目指しているわけですけれども、ところがその正反対で、ますます公財政は赤字になって、産業の方が今弱くなっていますので国の歳入もほとんど減ってしまう、強い社会保障も、1.3兆円の自然増と。こういう負のスパイラルを何としてでもプラスのスパイラルにするというのは、まさに社会経済価値を作っていくしかないわけです。それをイノベーション創出と言います。
まさに国としては、イノベーション振興投資を今、しようとしてくれています。それから科学技術振興投資も、第4期科学技術基本計画できちっと、GDP比1%を投入するぞと数字を書いてくれたわけです。教育投資も頑張っていただいているんですが、問題はこの不可分であると。この三つが不可分であるという考え方の政策が不足していますね。まさに教育と科学技術とイノベーションを一体的に推進して、初めて持続可能なイノベーションの牽引(けんいん)エンジンができ上がるわけでありまして、ここのところが強化が必要です。改めて教育と科学技術とイノベーションの三位一体振興が不可欠だということを、4ページで可視化しています。当然、短期政策と同時に、中長期政策の推進が不可欠であるのは、言うまでもありません。
さて、科学技術・学術審議会の視点2に、課題解決のための学際研究や分野間連携が必要であると、こう言われました。これに対して、私の意見を申し上げます。
日本学術会議は「科学」を広く定義しまして、人類が共有する学術的な知識と技術の体系と、いわゆるピュアサイエンスと、技術というものも含んでいるということが、日本学術会議の憲章の中に入っています。そういう中で、この科学というのは、一つは認識科学、どちらかというと本当の学術の探究心に基づく科学、ピュアサイエンスと言ってもいいかもしれません。一方、設計科学というものを大きく分けています。これは「あるべきものの探求」ということで、社会や人間の生活に資するための、社会的、経済的価値の創造、すなわち持続可能なイノベーション創出という言葉も、この中に属していると思います。
実は、私は日本工学会の会長をしていますけれども、工学のミッションというのは、認識科学に立脚した設計科学を社会に実装していくことだ、こういう認識をうたっておりますが、課題解決のための学際研究や分野間連携、こういう命題を科学技術・学術審議会で我々が与えられたとき、ふと考えまして、この大震災からの教訓で、工学はこの認識科学に立脚した設計科学だけで、社会的使命を果たせるかということを、日本工学会は自分の課題として、命題として、設定をしております。まだ生煮えなのですけれども、6ページで今の課題設定を、少し説明します。
これでいうとX軸、これが認識科学、自然現象の探求、解明研究でありますけれども、もう一つはY軸の設計科学、先ほど申し上げた課題解決型の研究。従来はこのA点が従来の工学研究なり、教育のドメインであり、今後もそうあり続けると思うんですけれども、問題はそれだけでいいのだろうかということで、大震災以降、工学屋が自分に対する課題設定を始めています。これにはZ軸の「社会技術化科学」という言葉を、とりあえずつけております。やはり本来の工学研究、教育、社会貢献のドメインは、このB点を満たして初めて社会的な使命を果たせるのではないか、こういう見方をし始めておりまして、こういう分野のものが、先ほどおっしゃられた社会の課題の解決のための学術として、新しい学術として、切り開く必要があるのではないか。
ちなみにここで従来の工学が立脚していました設計科学と、社会技術化科学の方の重要な視点はどうかと言うと、科学者とか技術者の視点から、設計科学というのはあったと思います。一方、社会の重要な視座から社会技術化科学というものがあって、これらは両輪でないと、工学の社会に対する使命を果たせないと。まさに工学の原点ではないかという捉(とら)まえ方ですが、ここの中に当然人文科学、社会科学との協働がないと、この両輪は果たせないだろうと。
このような社会技術化科学に挑戦する研究者、技術者を支援し、奨励する学術界の革新の文化の醸成と、育成ファンドの強化ということです。先ほど科研費の総合領域分野の創設とか、工夫されたという話がありましたけれども、本当にこういう視点でしっかりと人を育てていけるような、新しい枠組みになっているかどうかが、いわゆる審査の評価基準も含めて心配であります。
さて、科学技術・学術審議会の視点4に、社会への発信と対話、丸2にリスクコミュニケーションの在り方と国民のリスク・リテラシーの向上という課題設定があります。これについて少し話をしたいと思います。
大きく分ける二つです。まさに科学技術への信頼喪失が起こってしまっています、この復元をどうするかということと、それはやはり時間がかかっても、我々国民の科学技術リベラルアーツ振興の勧めだと、こういう話を申し上げます。これは御存じのとおり、震災以前に対して震災以後、科学者の話は信頼できるかというと、「信頼できる」「どちらかというと信頼できる」というのが、震災前の83%に対して、震災後は41%になってしまった。技術者の話はというと、ほとんど変わらないですね、87%が震災以前に「信頼できる」と言っていた方々が、震災後は52%に減ってしまったわけです。もっとゆゆしき話は、右下の震災後の28%の「わからない」、信頼できるかできないかわからないと答えられた方が、著しく増えたわけですね。10%だったのが28%まで増えてしまった。科学技術創造立国と我々は口癖のごとく言っているんですけれども、まさにそれは、このままでは砂上の楼閣づくりを我々はしているのではないかと、思わねばならないと思います。
その中で、私はまず直近的には、原発事故調査・検証に求められる視点というのは、「想定していなかった」のではなくて、「何故(なぜ)想定できなかったのか」という、何段階もの「なぜ」の深掘りが不可欠であります。政府事故調あるいは国会事故調、民間事故調、あれをベースに十分な掘り下げがされているかどうかというのも、やはり我々科学技術・学術コミュニティーはこの社会的課題をベースに、もう一回研究しなければいけないのではないでしょうか。
一方、立派に大震災と津波に耐えた社会システムがあるわけでありまして、その調査と、なぜそれが耐えたのかということを見える化すべきであります。そしてそれは産業界、学術界、行政、いわゆるプロですね、プロが学ぶ教訓の一般化があります。
もっと大事な話は、市民に向けた透明性ある説明と、国民的議論の誘発。言うならば、家庭のテレビを見ながら、お父さんとお母さん、子供が「そうだったのね」、こういう会話がされるようになるまで、この教訓を生かすべきでありまして、まさに科学技術リベラルアーツの振興を、時間がかかっても何としてでもこれを進めねばなりません。これを避けては、科学技術への信頼の回復、復元もできずに、ましてリスクコミュニケーション、あるいはどんなエネルギーを選択肢に持つのか、こういう日本の将来を支配する選択肢の議論は、意味がないという覚悟が必要であると思います。
最後になります。科学技術・学術審議会の視点の1の丸3に、日本の科学技術のシステム化の必要性ということが指摘されています。研究の成果を、社会における運用、社会技術化までを考慮したシステム化が行われていない傾向にあると、こう言われています。視点2の丸1と丸2では、課題解決のための政策誘導、及び学際研究・分野間連携と教育・人材育成が必要であると述べられています。視点3では、研究開発成果の適切かつ効果的な活用、丸1で社会ニーズの把握と研究課題への反映。こういう課題設定が科学技術・学術審議会の方向としてされているわけですが、私はこれに対して、日本の強みを生かした「持続可能なイノベーション牽引(けんいん)エンジン構造」、そしてそれを実現する「オープンイノベーション・パイプラインネットワーク」の構築と強化を提唱します。
これはもう御存じのとおり、アメリカと日本の基礎研究から応用研究、その先にはイノベーションがあるわけですけれども、これに対する日米の比較をしています。言うならばアメリカの場合は基礎研究のベースを除いて、あとは全ての分野で入り口から出口まで責任を持つような仕組みになっているわけですが、日本の場合は、基礎研究を含めて上流側の方は文部科学省が責任を持っていて、社会への還元という面ではほかの省庁が持っているということで、まさに学術的な知の創造が、社会的価値に結びつきにくい構造であるという認識に立たねばなりません。
したがって、日本の強みを生かしたイノベーションの牽引(けんいん)構造の強化策ということが、14ページでありますが、ちょっとビジーなので細かくは説明しませんが、やはり大学が担っています教育・研究と、いわゆる研究独法と言われる研究開発法人が担っている目的基礎とか応用分野、それから産業が担いますイノベーション、あるいはそれを支える研究開発、ここのところが非常に、イノベーションの牽引(けんいん)構造として大事なポイントです。この大きく分けると三つの組織・機能の間の価値の受渡し、あるいは人材の受渡しという意味でのフローとインターフェースの重視、あるいはそれを奨励する仕掛けが必要であります。これがないと、先ほど申し上げた日本の科学技術振興投資が、なかなか社会にまで還元されない構造がそのままになってしまう。まさに繰り返しですけれども、大学、研究開発法人、産業がそれぞれ担う、教育と科学技術とイノベーションの一体的振興の実践が必要です。現場がそれをやる気を持って報われるような政策の実践と、やはりそれを奨励していく司令塔の構築が必要だということを、先ほど申し上げました。
結びでありますけれども、今申し上げたのは、今、まさに第三の国づくりの時期であります。言いかえると平成イノベーションというものです。社会のための科学、社会における科学の実践の重要性。これが我々、科学技術・学術審議会の大きな役目であると認識しましょう。
2番目は、学術的価値創造と社会的価値創造との橋渡し能力の強化。それを牽引(けんいん)する、汗をかいてくれる人材の育成です。それは価値創造のフローとインターフェースの重視でありまして、これは新しい社会における学術の誕生を目指すべきだというのが、今日の学術分科会の大きな命題であるということが2点目です。それを実践しようとすると、教育振興と科学技術振興とイノベーション振興を三位一体的に推進する司令塔構築と、各現場での実践の提唱であります。教育だけやるのではない、科学技術だけではない、イノベーション振興だけではないと。もちろんそれぞれの自主性を尊重しながら、相互連関重視の実践を、是非とも今日の議題の2番であります今後の在り方について、提言をした次第でございます。以上でございます。

【佐々木分科会長】

 どうも柘植委員、ありがとうございました。
それでは、これから皆さんから、ただいまの御発表に対して御質問や御意見、コメントを頂きたいと思います。ところで、時間の関係で一つだけ、議論に入る前に申し上げさせていただきたいと思いますが、ちょっと時間が押していますので、2時55分をめどに質疑応答をやらせていただいて、もう一つ議題がありますので、それを残りの時間で取り上げさせていただきたいと思います。そういうことで、あと30分ということでございますので、できるだけ簡潔に、かつ要点をかいつまんで、御質問ないし御意見を頂きたいと思います。
それでは、どなたからでもどうぞ、時間がもったいないのでよろしくお願いします。それでは柘植委員から。

【柘植委員】

 西尾委員の阪大を特に中心とした改革は、非常に心強く感じておりますが、ちょっと私が先ほど申し上げたことと含めて、補足説明いただきたいのは、一番最後の共同研究講座あるいは一緒に働く研究所の設置状況の中で、これが大学院教育、何も理工系だけでなくて、経済系の教育の実質化の、非常に貴重な道場じゃないかと思うんです。その辺について、ちょっと記述が見えないもので、私がさっき言いました教育と一体化しないと駄目だというのと、何かコメントがありましたら。

【佐々木分科会長】

 それでは、西尾委員、お願いします。

【西尾委員】

 大学サイドから言いますと、共同研究講座というのは、4、5年をベースに何か技術的なブレークスルーを起こすということよりも、柘植委員がおっしゃっておられます、人材の育成の場としたいということを考えております。久間常任顧問が重要視されましたインターンシップについては、例えば大学院生ですと、インターンシップに行こうとしますと大学院の講義にはもう出られなくて、ある一定期間インターンシップに企業に行ってしまいます。ところが、共同研究講座の場合はオン・キャンパスで、そのインターンシップを受けることができますので講義などを休む必要がありません。つまり、先ほどのニーズ志向のイノベーションを起こすような資質を育むインターンシップをオン・キャンパスで実行できるという良さがあります。さらに、私の考えとしては、大学のキャンパスの中に、大学の構成員に加えて、企業からの優秀な研究者、更に国の研究所からの卓越した研究者等の外部機関からの方々が、最大瞬間的にどれだけ多く来てくださっているかが、今後大学から大きなイノベーションを起こす原動力としての鍵になっていくと考えております。
また、イノベーションに関しては、サイエンスとテクノロジーが卓越していればイノベーションが起こると考えている方が多いと思います。しかし、その考え方では十分ではありません。もちろん、第一段として際立ったサイエンスとテクノロジーがないとイノベーションは起きません。ただし、その次にはユーザーが何を欲しているのかを考えて、ユーザーを巻き込むことがイノベーション創起のために必要になってきます。そこで大きな味方を得て、今度は最終的に社会、ソーシャルなイノベーションを起こしていくことになります。イノベーションをつぶしているのは法規制であることが多く、その改定をしていくことが求められ、また、国際的な観点からのイノベーションを起こすには日本がどれだけ国際標準化をとるかということが重要になります。そういうことに立ち向かっていける高度人材をキャンパス内でどれだけ育てていけるかということを考えたとき、共同研究講座等で企業との共同研究を推進していく過程において、そのようなイノベーション・マインドを持った学生が育っていくと私は確信しております。以上です。

【佐々木分科会長】

 どうもありがとうございました。どうぞ、ほかの方から。それでは平野委員、お願いします。

【平野委員】

 どうも先生方のお話、ありがとうございます。大変参考になるとともに、これまでの私の経験を含めて、ちょっと誇張し過ぎるかもしれませんが、3点ぐらいお話をしたいと思います。
一つは、ここで触れられているように、やはり科学技術という点から見ますと、日本に司令塔がしっかりしていないといいますか、どこで、各省庁あたりでコントロールするのかというのが非常に曖昧のまま、残念ながら来ているかなと思います。これは愚痴を言ったっても仕方ありませんので、今後の改革を期待しているわけでありますが。
もう一つ、大学の現場の方々に会ってみますと、一番大きな問題はやはりあちこちで言われる疲弊の問題であります。これは昔と比べてという意味ではありませんが、支援をする人たちが非常に少なくなっているということで、研究費部会長をやっている私が言うのは、これはちょっと言いにくいんですが、科研費のところにある間接経費を、皆さん努力してつけてくださるようになりましたが、残念ながら基盤経費がこれだけ落ちているところから見ると、支援の部分にかなり強化をして充てていく必要があるのではないかと思っております。これは大学によっては留意してやっていますが、どうしてもまだ、学内で配分をするところが多過ぎるというふうに思っておりまして、大学総体としての研究環境の充実には回っていないという心配があります。大きなプログラムの申請状況を見てみますと、学内でリーダー的になる方というのは、やはり大きな大学でも限られていますので、その人にまたプログラムリーダー的な役割が集中しています。受けたくないからやめてくれという声があちこちから聞こえてきます。ここはやはりきちっと支援をする体制をとらないと、優位な人材が潰れてしまうと思っております。
それから最後に、産学連携について、私は大変これまで共同研究でも育てていただきました。欧米の企業と日本の企業との対応を一般的に見てみますと、あまりにも大手の企業の方々の決断が遅過ぎる。欧米は非常に早く、すぐ大学のところに、基礎研究を含めて決断されて、返事を持ってきます。かえって日本の場合、目には見えていないかもしれませんが、中小企業の方々と大学との連携で出てくる成果は非常に多い。このあたりは国全体としても考えていかなければいけないので、あちらが悪い、こちらが悪いというような時期でもないと思います。以上であります。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございました。それでは宮下委員、どうぞ。

【宮下委員】

 前回までの議論で落ちている点を今日お話ししようと思っていたのですが、先ほど柘植委員、西尾委員のお話に少し出てきましたので意を強くしています。それは、ここは大学の研究力強化に関する論議をする場ですが、独法ですね、研究開発法人が試みていること、若しくはそこでの経験、そういうことも十分視野に入れた方がいいということです。研究力強化ということについて、独法は様々な経験を蓄積しています。私は大学におりますが、大学の方から見ても、なるほど独法はこういうことも努力しているのかということが、たくさんあります。
具体的なことを申しますと、例えば国際的な競争力、ことにリサーチ・ユニバーシティの中でも更にトップレベルを強化するということになりますと、やはり独法が何をやっているかをよく見ないといけない。私は独法の中でも理研の脳科学総合研究センター(BSI)はよく知っていますが、国際的なトップの研究者を、PI(Principal Investigator)として獲得してくるということに非常な努力を払っています。外国人研究者の比率を、30%まで上げる、しかも数合わせをするだけでは駄目で、質を上げないといけない。これは至難のわざです。日本の研究環境の中に、世界の本当にトップの研究者、ポスドクではなくPI、を引っ張ってくるというのは、これは非常に難しい。例えばBSIでは、先週、利根川進先生がハーバードで、すしセミナーというのをやりました。そこで日本のトップの研究者たちに講演をしてもらって、ハーバードやMITの若手のPI候補、30歳から45歳ぐらいの人たち、とディスカッションミーティングをしました。そんなふうに、出張していって外国人のトップの研究者をPIとして獲得する努力は、私の知る限り東大でもどこの大学でもしていない。東大も、外国に事務所は作っていますが、そういう機能は持っていない。独法の方がはるかに努力している。
これは単に一つの例に過ぎませんが、そういう例を見てもわかるように、やはり独法が研究力強化のために努力していることを、是非大学の研究力強化という議論の中に持ち込んで議論を深めていただきたいと思っております。以上です。

【佐々木分科会長】

 どうもありがとうございました。それでは、まず久間常任顧問から。

【久間常任顧問】

 大手企業の決断が遅過ぎるということですけれども、それは確かです。ただし企業の方も改善が随分進んでいまして、M&Aや設備投資などはとても早く決断するようになっています。
大型の産学連携に関する決断は、確かに遅いなと思います。これは企業が遅いこともありますけれど、多くの企業が大型の共同研究を争ってするくらい魅力的な大学になってほしいという希望も、一方にあることを御理解いただきたいと思います。

【佐々木分科会長】

 どうもありがとうございます。それでは井上委員、どうぞ。

【井上委員】

 今日、お三方がお話しされたことで、シーズを生み出す研究からニーズに応えていく生産と言われるようなところまでを、どう結びつけていくかが課題だということについて非常にいい整理がされたかと思います。その際に、ニーズの側(がわ)からの拾い上げというようなことについては、いろいろな考え方が今あると思うのですけれど、逆に研究というのは、何に使えるかということを意識せず、自由な発想で、いろいろなものを生み出していくところによさがあるわけで、よく考えておくべきことは、自由な発想によってシーズを生み出すところにどれだけの投資をかけていくかという点と、そこで生まれてきたものをニーズに結びつけるシステムをいかに入れていくかというところだと思います。それぞれいろいろな考え方をお話しされたかと思うのですけれど、上の2点が非常に重要な点だと思います。
一つ質問ですが、産業界というのは多分新しい芽を拾い上げることが非常に重要な要素を持っていると思うのですけれど、久間常任顧問、そのシーズを生み出す部分へのリソース配分を、多分企業から見ると無駄も含むような部分だと思うのですが、どういう考え方でやっておられるのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

【佐々木分科会長】

 久間常任顧問。

【久間常任顧問】

 お尋ねの点はとても大切だと思います。企業においては、シーズ・オリエンテッドな研究をすると、事業に結びつく期間が長いとか、効率が悪いとかあります。ですから、ニーズ・オリエンテッドな研究と、シーズ・オリエンテッドの研究を両方やりますけれど、比率は、企業と大学によって当然異なるべきであると思います。企業は当然ニーズ・オリエンテッドのものが多い、大学はシーズが多くてもかまわないと思います。ただし、シーズといっても、目的を持ったシーズであっていただきたいと思います。

【佐々木分科会長】

 金田委員。

【金田委員】

 少し文脈の違う話をして恐縮ですが、私は文系でございますので、羽田科学官の先ほどの話に考えをプラスしてお聞かせいただけたらと思うんですけれど。
要するに基本は、それほどは人文系の研究体制は変わっていないという認識と、それからリソースの重点的配分をしないといけないということと、世界的な視野と英語による発信、議論ということができなければ駄目だし、そこに向けてやらないといけないということが趣旨だったというふうに、誤解が含まれているとまずいんですが、受けとめました。
そこでちょっと危惧するといいますか、わからないという点の一つが、研究力の強化が本日のお話ですから、それに限定すればいいんですが、大学は教育と研究の両面を常に持っていて、それで人文学の場合は一般的な基礎のボトムアップの部分と、ボトムアップというかもともと基礎学でしょうけれども、更に全体の基礎の教育の部分と、それから研究の部分と両面があるわけです。そういう観点から考えたときに、今のような議論を、重点的に考えないといけない部分が出てくるんじゃないかと思うんですが、そのあたりは羽田科学官が整理して、研究力の強化という点でおまとめになったと思うんですが、お考えがあれば、更に加えていただけたら有り難いと思います。

【佐々木分科会長】

 羽田科学官、何かコメントを、お答えをいただけますか。

【羽田科学官】

 さっき申し上げましたように、人文学がこれまで良質の日本国民を養成するために非常に努力してきて、その成果が出ているということは間違いないと思っています。ただそれだけでは十分でないと私は思っています。現在、私たちは日本国民であると同時に地球市民でもあるという意識を持つべきであり、人文学はこの新しい「人格」に必要な教養を構想してゆくべきです。構想を真摯に考えてゆく過程で、当然大学での教育の内容も変わってくるでしょう。その結果、学生が従前とは異なる新しい教養を身につけて大きく育ち、世界で活躍する人材へと成長すれば、素晴らしいと思います。

【佐々木分科会長】

 では佐藤委員、どうぞ。

【佐藤委員】

 今のお話の続きみたいになりますけれど、人文学と社会科学の場合、そもそも先ほどの柘植委員が整理されたような、認識科学と設計科学という考え方だとか、教育研究、科学技術とイノベーションを一体的にやっていくという話と、構造的に同じような考え方で振興策を考えていっていいのかどうか、ということすら、よくわからない状態にあるのではないかという危惧を持っておりまして、人文学、社会科学の振興のときにどういう構造的な対応をすればいいのかという基本的な議論を、どこかでしておく必要があるのではないかと思うわけであります。
それに関連しまして、長年私が非常に不思議に思っているのは、中国の現代社会を研究する研究所があるべきだと思いますけれど、これは長い歴史の中で、地域研究所の計画が潰れたりして実現はしておりません。中国の社会について、文学、歴史学などについては、極めて深い研究成果が蓄積されているとは思いますけれど、現代社会の隣国の状況を、まとめてきちんと研究するというような、そういう場所があるべきだと思うのです。これは大学の研究力強化の方法論とは関係がありませんけれども、長年の私の疑問ですので、この際に一つ申し上げておきたいと思います。
もう一つは、今まで、OECDはずっとイノベーション、イノベーションと言ってきましたけれども、現在は少しスキル戦略というふうに重点を置きかえてきております。世界中見ても、例えば中国でも高等学校レベルで普通科重点をやめて、少し職業教育を中心にやっていこうとしていますし、イギリスでも昔のポリテクが大学化したので、日本の高等専門学校のようなものを考えたらどうかという議論をして、スキル戦略というものを随分立ててきています。これは大学の研究とは水準が違う話ですけれども、いずれこれは一体的に考えていくべき課題だと思いますので、どこでどう議論したらいいかわかりませんけれども、スキル戦略との一体的な議論というものを望みたいと思っております。以上であります。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございました。それでは中島科学官からどうぞ。

【中島科学官】

 私、東京工業大学で一般教養を担当しているので、先ほど柘植委員の方から科学技術リベラルアーツというお話がありましたので、理工系教育においてはそういうものの一角を担っているかなと思いますが、これについて今何を感じているかということをちょっとお伝えしたいと思います。
理工系でも、大学院化されることによって研究が中心になって、リベラルアーツに対しての横断的教育に対する教員の興味が非常に落ちています。したがって、東工大はかつてリベラルアーツが強いことで有名でしたが、学内では弱体化しているということが一つ問題になっていることを、お伝えしたいと思います。
もう一つですけれども、これは羽田科学官のお話と関係があることですが、羽田科学官のお話を私なりに考えますと、従来の古典的な教養教育の現代化、もう一つ先生の資料2-1の8ページのところに、「既存の研究枠組みの境界に位置する分野横断型研究」ということが書かれており、つまり新しい教養教育及び従来型の教養教育の近代化、強化という二つの柱になっているかと思うんですが。これは私自身の話でちょっと我田引水になってしまいますけれど、私は科学技術社会論という新しい分野を創ってきまして、これから新しい教養教育として作り続けようとしているわけです。その中で生命倫理であるとかを扱おうとしている。ところが、困るのは既存の専門研究分野が非常に強いものですから、競争的な資金を競う場合、専門研究分野にお金を持っていかれてしまうということになってしまいます。ですので、このサステナビリティー、生命倫理、高齢社会、平和学のような、あるいは先ほどの中国の現代社会というような研究は、重要な課題であってもせいぜい短期的な科研費で集中的にやるとか、幾つかたまに資金が出てくるようなことになってしまって、それを定常的に担うような組織が大変つくりにくい。これをどのようにやっていけばいいのか、私はよくわからないんですけれども、この境界領域的なものを、定常的に支えていく研究システムをどうつくるか。
一つのアイデアとして、例えば生命倫理などであれば、生命研究に対しては必ず3%、ワトソンのルールですけれど、総研究予算の3%はその社会的な影響の研究に与えなさいと。3%は多過ぎると思いますが、そういうような工夫が必要ではないか。いずれにしても、現段階ではうまくいっていないような気がします。
話を最初に戻しますと、科学技術リベラルアーツという分野は非常に重要なんだけれど、やりにくいということ。これをどういうふうに克服すればいいか。この克服は自分に与えられた課題と思って、努力しようと思っているんですが、やはり先生方のお知恵を拝借できればと思って、あえてちょっと質問させていただきます。

【佐々木分科会長】

 それでは柘植委員、どうぞ。

【柘植委員】

 中島科学官と同じ問題意識を持っています。
まず科学技術リベラルアーツの語源は、日本学術会議の「日本の展望-学術からの提言2010」の中に、初めて出てきました。しかし問題は、それを実際に教育の現場でどう実装するのかという話がまだまだできていなくて、私自身も工学系の教育の学長をしていたんですけれども、そういうところで現場の実態に合わせてやり始めているんですけれども、もうちょっと先生の指摘のような形の実装を、今、日本学術会議としては科学技術の将来を担う次世代人材の育成方策を考える検討会をしていまして、その中で言いっ放しの科学技術リベラルアーツを、初等、中等教育から高等教育まで、どのようにして組んでいくかという形を議論しています。重要な課題です。是非ともまた力を合わせたいと思います。

【佐々木分科会長】

 それでは次に、谷口委員からお願いします。

【谷口委員】

 産業界の方から大学に対する期待、学術に対する期待ということをお伺いするチャンスというのは滅多(めった)にないものですから、大変興味深くというか、いろいろ勉強させていただいたと思います。
今日お話になった皆さんのお話を拝聴しますと、やはり大震災の後、日本が復興しなくてはいけない、そして経済的にかなり低迷している一方で、大きな国際的長潮流の中で、日本が大きな曲がり角に来ているんだと。それは恐らく皆さんが共通した認識だと思うんですね。同時に、大学にいようと、産業界にいようと、無論文部科学省の方々をも含め、どの分野にいようと国を思う気持ちというのは一緒だと思うんですよ。何とかして日本をよくしたい、ということで。ですからお互いにそこで力を合わせて、これから日本をどうやって発展させていくか、そのような認識こそが重要だと思うんです。
そこで大切なのは、やはり一方向性に何かの政策を押しつけるといったような形でものが進むと、本当の日本の改革にはならないのではないかと。やはり産業界には産業界のミッションがあり、大学には大学のミッションがある。釈迦(しゃか)に説法のようなことで恐縮ですけれども、教育基本法では、やはり大学には大学の特性を重んじて、自律性、自主性、学問の自由といったものを重んじることにこそ、大学の存在の価値があるといった趣旨のことが述べられているわけです。
その中で、もちろん社会のための大学、社会とともに歩む大学であるということを、大学人が忘れてはならないと思います。その努力が非常に重要であるということは、我々肝に銘じているところでございますけれども、一方で、一方的に政策が立てられて、そして産業育成により役立つような学問に、より投資すべきだといったような一方向性の改革というのは、必ずしも大学本来の在り方にとって、ひいては日本全体の在り方にとって、適切ではないのではないか。そこにやはり、お互いに国を思う立場は違っても、その共通の理解に基づいて、やはりお互いの立場やミッションを尊重し合うべきではないか、と思います。
私に誤解があったらお許しいただきたいんですが、ピュアサイエンスと久間常任顧問がおっしゃるのは、これはやはりOECDのフラスカティーマニュアルが定義している、知りたいという願望に基づく基礎研究になるわけですね。そして、ここで久間常任顧問がおっしゃっている産業力強化に向けた基礎研究というのは、むしろマニュアルに沿って定義すれば応用研究でありまして、例えば私のような医学関係ですと、病気を治したい、だから原理を解明したいという、これも重要な学術研究だと思っています。そういう基礎と応用研究が一体となって発展させていくということが、大学のよさではないでしょうか。そのような視点から大学の在り方について、お考えなど、お聞かせいただくと有り難いと思います。

【佐々木分科会長】

 久間常任顧問、何かございましょうか。

【久間常任顧問】

 おっしゃるとおりですけれど、産業界から大学へ希望しますのは、私の説明にありましたように、知の探求や真理を追究することもやるべきだけれども、例えば工学部などですと、多くは出口を考えた研究であるべきだと思うんですね。出口というのは、産業界への出口。それがやはりエンジニアリングだと思います。
それから、自主性というのは当然考えるべきだけれども、自由度とか自主というものを悪利用してはいけないと思います。ファンドの方から見ますと、それぞれの省庁がどの日本の産業をグローバルで強くしていくかということを戦略的に考えて、大学もその領域領域である一定以上の比率で研究をやっていくことが必要ではないかと思います。例えばアメリカは日本よりも何倍も研究者の数が多くて、リソースも多いです。アメリカがやっているから、この研究は日本でも必要だといって、すぐ飛びついてやった研究も随分あったと思いますが、同じスペクトルの広さで勝負したら、ほとんど負けてしまいます。ですから、アメリカと同じ広いスペクトルではなくて、日本はここと、ここと、ここが重点ですと、ほかのところはある一定のリソースは配分するけれども、というメリハリをつけたファンディングが必要だと思います。
回答になっていないかもわかりませんけれど、大学の先生全員に産業界のことをやれと言っているわけではないです。

【谷口委員】

 いや、それはよくわかります。ポイントは、やはり双方向性といいますか、行政側、産業界、大学、それぞれが一方的に何かというわけではなくて、お互いが力を合わせるということが重要ではないかということです。それにはやはり大学からの発信といったもの、大学自らが改革していくという方向性、そういうのがあるからこそ大学の自立性、独立性になるんだ、学問の自由が保障されるんだと思います。長期的な視点に立てばこれらが国の発展の真の原動力になる、そういうことを申し上げたかったということです。

【久間常任顧問】

 はい。産業界は産業界のニーズを発信して、大学もそれを理解していただいて、お互いに発信が必要だと思います。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございました。大体時間が来ましたが、今日は大変チャレンジングで、かつ刺激的なお話がたくさんあったものですから、ちょっといっぱいいっぱいになっちゃって、まだお話足りない人もたくさんいるのではないかと思っておりますが。
そういうときに私が余計なことを言っても何ですけれども。私も文系なものですから、羽田科学官の問題提起は極めて重大、かつ重要であると思いました。社会科学はちょっと違うかもしれませんが、特に人文学を中心にして、やはり学問の在り方がかなり、基本から再検討してみる時期が来ているような感じはしておりますので、こういった提言が、これからもいろいろなところで議論になることを祈っております。
あと私が今、こういうところで言うのも何かもしれませんけれども、法曹養成のための検討会の座長というのをやっているんですけれど、それで法科大学院の問題をやっているんですが、ここなどは疲弊の世界が典型的に起こっておりまして、その上評価されないという、誠に困ったような事態もありまして、領域ごとに少し細かく対策を施していくというような視点も、是非お願いしたいものです。鎌田委員がいれば、もっと詳しいことをおっしゃったんですけれども。
いずれにしてもまだまだ具体的にはいろいろ、皆さんも言い足りない点、あるいは是非取り入れてくれというお話があろうかと思いますので、これにつきましてはこの場でできなくても、御意見をどんどんお寄せいただくということを是非お願いしたいと思っております。
またこれは私と事務局で相談したことなんですけれども、せっかく今、大学の研究力強化は社会的に大きなスポットとなっておりますので、科学官の先生方を中心にしまして更に具体的な提案、あるいは問題提起につなげるような、ちょっと詰めた議論をお願いしたいなと思っております。これは事務局の方から改めてお願い申し上げますので、ひとつ御協力のほど、よろしくお願いしたいと思います。

それでは残りの時間が大変少なくなりましたが、東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方についてという件でございます。
8月1日の総会におきまして、東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について、中間まとめが取りまとめられましたが、各分科会におきましてこの中間まとめをふまえた審議が引き続き求められているわけであります。そこで事務局より、簡潔に説明をお願いします。

【伊藤学術企画室長】

 失礼いたします。お手元の資料の3-1及び3-2を御覧いただければと思います。
まず総会の方でまとめられました中間まとめ本体は、3-2でございます。それを学術分科会のこれまでの議論、及びまた所掌として関係の深いようなものを整理しましたものが、3-1という形になっておりますので、簡単に3-1を御説明申し上げたいと思います。
3-1の左端の部分が、申し上げた中間まとめのうち、当学術分科会の議論等に関連する事項ということで、整理させていただいております。全体の構成は、時間もございませんので、詳細は割愛させていただきますが、この資料の作成趣旨と、先生方にお伺いしたいポイントだけ申し上げたいと思います。
こちらの作成趣旨につきましては、左端に中間まとめを整理させていただいておりまして、これまで学術分科会及びその下の部会等で関連議論がされてきたものを、真ん中のセルに書かせていただきまして、これらをふまえて、更に今後、総会に対してこの中間まとめをふまえて学術分科会の中で更に議論を深める点、というのが1点目、またそれまでの議論をふまえて、更に事務局が施策で取り組むべき観点が2点目、こういった二つの観点を踏まえた、右端の今後の取り組み方針(案)とございますけれども、ここの分の議論を更に充実した上で、総会等に報告する必要があります。
この資料に関しましては、それぞれ事務局の方でこれまでの部会の意見等をふまえて、今後の方針案ということで左端に今後の当学術分科会、及び部会で議論を深める点、及び事務局等で施策に実現化していくべき点ということを、案として整理させていただきました。時間も限られておりますので、また先生方には大変恐縮ですが、御覧いただきまして、現時点で御質問だけ頂戴いたしまして、もし可能であればお持ち帰りいただきまして、またメール等で御意見を頂戴できればと思います。できますれば、10月29日の月曜日までに、事務局まで、お気づきの点、特に右端の部分の充実ということで御意見を頂戴できればと思います。よろしくお願いします。

【佐々木分科会長】

 時間が足りなくなったので、大変申し訳ございませんが、ただいまの事務局からの御要請、できればお答えいただきたいと思います。
それでは最後に、事務局より連絡事項をお願いします。

【伊藤学術企画室長】

 次回以降の予定につきまして、資料4にまとめておりますので御覧いただければと思います。
次回の予定といたしましては、12月4日に第50回、本日は第49回が成立しませんでしたので、次回、学術分科会としては49回目になりますが、12月4日火曜日16時15分ということで、文部科学省の方のビルの13階の会議室において、開催させていただきたいと思っております。
こちらの会議に先立ちまして、先ほど分科会長からも御発言がございましたけれども、科学官の先生方には、更にこれまでの分科会で出た議論を深めていただく、論点の整理であるとか、今後の方向性の試案の議論にお力添えいただければと思っておりますので、11月中旬をめどにお集まりいただきたいと思っております。日程調整に関しましては、また追って御連絡申し上げたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
また本日配付の資料に関しましては、机上にお名前をお書きいただいて置いていただけば、郵送申し上げますので、そのような方法も活用いただければと思います。以上です。

【佐々木分科会長】

 どうもありがとうございました。
それでは本日の会議は、これで終了いたします。

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

中澤
電話番号:03-5253-4111(内線4228)

(研究振興局振興企画課学術企画室)

-- 登録:平成24年11月 --