学術分科会(第28回)・学術研究推進部会(第21回)合同会議 議事録

1.日時

平成20年9月5日(金曜日) 15時~17時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

佐々木分科会長、白井分科会長代理・部会長、中西部会長代理、飯野委員井上孝美委員、樫谷委員、鈴木委員、土井委員、西山委員、三宅委員、伊井委員、井上一委員、岡本委員、甲斐委員、小林委員、巽委員、塚本委員、垣生委員、水野委員

(科学官)
喜連川科学官、小山科学官、佐藤科学官、山内科学官、山岡科学官、吉田科学官

文部科学省

坂田文部科学審議官、磯田研究振興局長、合田総括審議官、片山高等教育企画課長、戸渡政策課長、奈良振興企画課長、門岡学術企画室長、他関係官

4.議事録

【佐々木分科会長】

 それでは、時間になったので、第28回科学技術・学術審議会学術分科会及び第21回学術研究推進部会を合同で開催します。
 本日は合同開催であるので、分科会と部会をあわせて私のほうで議事の進行をさせていただく。
 本日の資料の確認と連絡事項を事務局からお願いします。

【門岡学術企画室長】

 資料については、お手元の議事次第の2枚目の配布資料一覧のとおり配布しております。欠落等があったらお知らせ下さい。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 それでは、議事に入ります。第1番目の議事は長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策についての審議です。この案件について簡単に申し上げると、昨年10月に文部科学大臣から諮問を受け、少子高齢化を迎える我が国の持続的発展に向けて、長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について審議を行うため、平成19年11月2日に開催した学術研究推進部会において、同部会のもとに脳科学委員会を科学技術・学術審議会研究計画評価分科会と合同で設置して審議を開始したところです。これまで4回の審議を経て、去る8月19日に委員会の審議経過報告が取りまとめられたところです。その内容について菱山ライフサイエンス課長よりご報告をいただいて、その上で皆様からご質問、ご意見等をいただきたいと思います。
 それでは、よろしくお願いします。

【菱山ライフサイエンス課長】

 ご説明申し上げます。資料は、この冊子になっている長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について審議経過報告というものです。今、佐々木先生からご紹介があったように、昨年10月18日に諮問がされ、脳科学委員会が設置されました。そこで審議をいただいたものを、審議経過報告ということでご報告いたします。
 まず、50ページを開いていただきたいと思います。この脳科学委員会の委員名簿がここにあるが、金澤一郎先生に主査を務めていただいております。また、委員の先生方を見ていただくとわかるように、大変幅広い分野の先生方に集まっていただいてご議論をいただいたところであります。
 また、60ページを開いていただきたいと思います。ここに審議経過があります。先ほどご紹介があったように、昨年11月29日に第1回脳科学委員会を開催しております。8月19日に第4回の会合を開いて、そこで審議経過報告を取りまとめていただいております。また、脳科学委員会の下に作業部会を設けており、ここまで第4回の会議を開いて、さまざまな議論をいただいたところであります。
 次の62ページを開いていただきたいと思います。この審議経過報告のサマリー、概要が記されております。全体で5章に分かれており、第1章が国内外における脳科学研究の現状と問題点について、第2章が大学・大学共同利用機関、独立行政法人等における脳科学研究の推進体制及び効果的な連携の在り方について、第3章が脳科学研究人材の在り方について、第4章が脳科学に係る研究開発ロードマップについて、第5章が今後の審議予定についてとなっております。
 まず第1章ですが、現状と問題点のところで、まず最初にこの脳科学研究の意義と重要性ということで、科学的意義と社会的意義があるということが述べられております。
 2番目にこれまでの脳科学研究の主な成果ということで、それぞれさまざまな脳科学の分野で成果を生み出していることが本文では具体的に述べられております。
 3番目に脳科学研究政策の現状ということで、過去10年を振り返って過去の政策がレビューされております。また、18年12月から脳科学に関する検討を行って、今年度より脳科学研究戦略推進プログラムというプログラムが開始されたことが紹介されております。
 4番目に今後の脳科学研究推進の在り方ということで、学際的・融合的な研究領域である脳科学研究がしっかりできるような体制組織を構築すべきであるということが書かれております。
 第2章ですが、第2章は、それぞれの機関における脳科学の推進体制と連携が書かれており、第1番目に現状が述べられております。
 2番目に基本理念ですが、まずは大学、大学共同利用機関、研究開発独立行政法人が、それぞれの特徴を生かして連携することが必要であるということが書かれております。次の○は大学共同利用機関法人についてです。大学及び大学共同利用機関の「自己組織型研究」を有機的に結びつけるようなネットワークを構築することについて、イニシアチブをとっていくべきだということが書かれております。また、研究開発独立行政法人については、大学などではなかなかやりにくい集約的・戦略的研究を行う役割を担うということと、国際的研究拠点として我が国の脳科学の研究の国際競争力の維持・強化に資することが期待されているということが書かれております。
 3番目にグローバル化への対応です。研究が国際的に展開している中で、しっかりと我が国として国際的な連携、あるいは国際的な展開を戦略として考えることが必要不可欠であることが書かれております。特に次の○では、世界トップレベルの研究拠点との戦略的なネットワークを形成することが必要だということが書いてあります。
 4番目に人材の流動化促進です。これは人材の育成と密接な関係があります。
 5番目に社会還元を目指した取り組みです。脳科学研究が研究室にとどまらず、社会の期待、関心が極めて高いということで、成果を社会に還元するということと国民理解に向けた取り組みを強化すべきだということが書かれております。
 第3章です。第3章は人材育成です。まず、1番目として人材育成の目標と理念ということで、脳科学自体が学際性・融合性を特徴としているということで、人材育成に当たっても広範な学問分野を系統的に教育するような体制が必要だということと、それから研究のみならずさまざまな分野、さまざまなキャリアパスの構築を検討すべきだということが書かれております。
 2番目に大学院教育です。これは先ほど申し上げたように、非常に学際性・融合性のある脳科学についてきちんとした大学院教育をすべきであるということで、大学院を設けたらどうかということが述べられております。
 次に3番目ですが、若手の研究人材育成とキャリアパスの多様化ということで、若手の脳科学研究人材の育成に当たって、ポスドクの支援体制の整備ということが述べられており、また研究だけではなく、多様なキャリアパスの構築をすべきだということが述べられております。
 第4章です。第4章は研究開発ロードマップであります。
 まず、1番目の基本的考え方です。基本的考え方としては、基礎研究と基盤技術開発、社会への応用という3つの軸が必要だろうということで、それに基づいて整理をすべきだということと、4番目として研究環境について、脳科学研究の推進体制や人材の育成の在り方とあわせて考える必要があるだろうということが述べられております。重点的に推進すべき研究領域、研究課題を続けて検討されております。
 まず最初の○であるが、基礎研究とそれを支えていく技術開発に力を注ぐことが必要ですが、また同時にそういった基礎研究、あるいは技術開発を社会へ応用していくことも必要であり、そういった社会還元も考えていかなければならないということが述べられております。
 2番目の○ですが、社会からの期待にこたえるためには、「重点的に推進すべき研究領域・研究課題」を具体的なものとして設定して、社会への応用を見据えた研究を戦略的に推進することが必要だということが述べられております。
 3つ目の○では、1番目として社会脳、2番目として健康脳、3番目として情報脳という3つの分野を設定し、4番目として技術開発といったものを加えて、4分野について明確な戦略目標に沿って、効果的に脳科学研究を推進していくことが必要だということが述べられております。本文において、この社会脳、健康脳、情報脳、技術開発、これらについて具体的な例が述べられております。
 今後の審議予定ですが、この秋に残りの社会との調和、あるいは人文・社会科学との融合、そういったことがまだ残っているので、そういったことを検討して、来年の1月ぐらいにこの答申の原案をまとめていきたいという予定にしております。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 それでは、ただいまのご説明を踏まえて、この審議経過報告についてご意見、ご質問等をいただきたい。いかがでしょうか。井上(孝)委員、お願いします。

【井上(孝)委員】

 2点ほどお尋ねしたい。
 まず1点は、脳科学研究の科学的意義や社会的意義はこのとおりだと思う。その場合に、我が国の脳科学の中核的研究拠点として理化学研究所脳科学総合研究センターが平成9年に設立されているが、これがグローバル化への対応で世界のトップレベルの研究拠点との戦略的な国際ネットワークを形成することが必要であるということが書いてあるが、現在のところ、理化研の脳科学総合研究センターがどういう成果を上げて、国際的にトップレベルと評価されているのかどうか、それからネットワーク形成に向けては、今どういう状況にあるのかというのをまず1点お尋ねしたい。
 それからもう一点は、学術分科会では絶えず基礎研究の重要性を強調しているわけで、そういう意味で65ページの重点的に推進すべき研究領域・研究課題の中で、特に基礎研究のところで、「いまだ明らかにされていない脳の基本的なメカニズムの解明等の基礎研究」というのが書いてある。脳科学をやる場合に、そういう基礎研究を推進することが非常に重要だと思うが、脳の基本的なメカニズムの解明は我が国においてどの程度進んでいて、グローバル化して、国際的なネットワークを形成する場合に、最先端の国ではどの程度この脳の基本的なメカニズムの解明が進んでいるのか、その2点についてお教えいただきたい。

【佐々木分科会長】

 それでは、よろしくお願いします。

【菱山ライフサイエンス課長】

 第1点の理化学研究所の脳科学総合研究センターですが、昨年10周年を迎えています。脳科学総合研究センターにおいてはどんな成果かと言われると、一言で言うには難しいが、この10年間で一流の科学雑誌には相当数のペーパーが掲載されております。
 また、そのレベルであるが、脳センターに限らず、理化学研究所はそれぞれのセンターにおいて外国人を入れたレビューをしていただいている。そこでも高い評価を得ており、また独法の評価委員会などでも評価としては高い評価を得ています。そういった意味で世界のトップレベルに伍していけるだけの力はあると考えているし、我が国でそれだけのセンターとして、組織として世界的にトップレベルであるといえると考えております。
 また、ネットワークですが、理化学研究所の脳センターにおいてはトップレベルの海外の研究所と行き来をしており、また共同研究などをしていると把握しております。
 2番目であるが基礎研究が重要であるということは、この審議経過報告の本文でも述べられているところであります。我が国がどのくらいのレベルかというのは、何番目かというのはともかくとして、我が国の脳研究者の力はアメリカやヨーロッパと肩を並べるくらいであると考えております。
 脳機能の解明はどうかということについて、我が国はどこまでとか、アメリカはどこまでという、脳機能の解明がどこまで進んでいるかという科学のレベルとしては、例えば記憶とか、そういったところは非常に競争をしていて、記憶のメカニズムがだんだん明らかになってきていると理解しているが、ただ、ご存じのように高次機能、いろいろな人間の思考、創造性とか、そういったことはまだまだわからないことが多いと聞いております。特に近年、分子生物学的な手法が発達してきて、そういった分子生物学を駆使した研究がいろいろ行われているのが1つ。それから、あとは霊長類、猿を使ったさまざまな行動の研究とか、そういったことが行われてきています。ただ、まだまだわからないことが多いと聞いております。なかなか一言で答えられるかどうかの知識がないので恐縮であるが、そのような現状であります。

【佐々木分科会長】

 ほかにありませんか。三宅委員、次に樫谷委員。
 それでは、三宅委員から。

【三宅委員】

 今のお返事も聞いていてちょっと思ったのですが、全体にフォーカスが大変揺れているようにも読めます。特に高次認知機能研究をやっている立場からいうと、一番最初の1.の1の2つ目の○の2行目のところに社会からの期待が大きい、そういう期待にこたえる脳科学を推進するんだという話が出てきて、64ページの5のあたりで、社会還元を目指した取組という中に「現在社会が直面するさまざまな課題の克服に向けて」というような言い方がしてあるが、先ほども説明していたような、今、基礎研究で、世界的にこの分野でほんとうにその成果が上がり出しているところで扱っている記憶、学習というものは、同じ記憶、学習という言葉を使うが、例えば教育するときに何をしたらいいんだという学習・科学などで扱う記憶、学習という言葉とは、全くディフィニションも実態も違う。実はこれ全体を見ていると、ある種の脳の科学の研究が進めば、それが実は心をつかさどっている原因なので、こちらをやっていたら社会問題が解決するというふうに読めるが、現在の脳科学がやっていることというのは、特に高次認知活動に限っていえば、高次認知活動と心というものがあって、高次認知活動が起きているときに、そのアウトカムとして脳がどう動いているかということがわかるという方向が逆な話になっている。
 ここをつなごうという話がここの例えば5のあたりに書いてあるのだとすると、例えばこういうことについて64ページの5、社会還元を目指した取組の3行目あたりに「効率良く成果を社会に還元する」という書き方がしてあって、そんなものではないのではないか。まず、さきの井上(孝)委員のご発言の中にもあったのかもしれないが、ほんとうに脳というものがどう機能していて、ある種の欠損があったらこれがないという話ではなくて、欠損があっても社会の中で人間というのは生きていく、学習していく、ファンクションしていく。そういう過程がどう起きているのかということをほんとうに長期にわたって見ていって、脳が心のどの高次機能を支えていて、心の高次機能を研究する独自の分野があって、それと脳科学がどうつながるのかという両方向で研究していくことを考えていただかないと、効率よく還元できることにはならない。そのあたりが、ちょっと今話を伺っただけで懸念できるところです。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 何かあれば課長から。

【菱山ライフサイエンス課長】

 ここは要旨で、かなり短く表現をしてしまったので、誤解を生んでしまうような表現になっているかもしれません。ただ、今、三宅先生がご指摘したようなことは、まさに脳科学委員会でも議論をされていたところであって、例えば今の脳科学の研究が直ちに教育方法、例えば数学とか英語をいつまでにとか、そういう神経神話と言われているものであるが、そういったことが社会に広まってしまってはいけないだろうと。擬似科学のようなことが広まってはいけない。脳科学をやると、すぐに頭がよくなる方法とか、脳年齢が何歳とか、そのようなことを想像されては困るので、むしろ、脳の研究が正しく社会に理解されるということも非常に重要ではないかということで、社会に簡単に応用されるというものではないだろうということは非常に議論がなされていたところです。
 基礎研究が非常に重要だというのも議論されていたが、一方でそれなりの資源が投入されて、また一方でさまざまな病気とか、いろいろな障害なりで苦しんでいる方がいらっしゃる中で、脳科学研究がどこまで貢献できるかといったことも考えていかなければならないだろうということで、そういう将来的に社会に貢献するような研究をどうやって進めていくかということも真剣に議論されております。
 それで、まだ残っているところは、社会との調和とか、そういったことがまだ議論として残っており、どのように進めていったらいいか。また一方で、脳というのは、今、心をつかさどるというお話がありましたが、研究を進めたり実用化される中で人格への影響とか、そういったこともあるかもしれないということで、つまり、倫理的な問題などもしっかりと考えていかなければいけないということも議論されており、またこれから来年に向けてそういった議論を進めていきたいと考えております。

【佐々木分科会長】

 とりあえず。

【三宅委員】

 ここはほかの先生もいらっしゃると思うので。

【佐々木分科会長】

 それでは、どうぞ。

【樫谷委員】

 素人の質問で申しわけないが、脳科学研究というのが非常に社会から期待されているというのはよくわかる。また、ここでロードマップが示されている。これも高く評価できるが、このロードマップというのは大体どのような感触というか、これは非常にスピードが速いというふうに見えるのか、これはお金と人と施設のかけ方によって違ってくると思うが、そのロードマップ、5年、10年後というので書かれたものは、内容的には私は十分理解できるわけではないが、この5年、10年という、36ページ以降のことであるが、どういうふうな感覚というか、これは非常に速いスピードなのか、それともお金がないからこの程度なんていう、そういう話なのか、素人にわかるように説明していただければ大変ありがたいと思う。

【佐々木分科会長】

 課長、どうぞ。

【菱山ライフサイエンス課長】

 このロードマップも実は非常にいろいろ議論があったところであって、例えば大変細かいテーマで、3年とか5年ごとにここまで進むとかいうものにはしていなくて、まず大ざっぱなまとめ方をしております。
 それで、このスピードについての感覚ということですが、大体このくらいで研究が進むのではないかということと、もちろんこういう目標を設定して、このくらいに向かってチャレンジしていこうというような感覚でつくられていると考えております。

【樫谷委員】

 少し追加で。

【佐々木分科会長】

 それでは、追加質問。

【樫谷委員】

 いずれにしても我々の年代が高齢化していくわけである。それで、需要が相当増えるだろうと。10年後あるいは15年後ぐらいにいろいろな課題が社会に出てくると思うので、そういう問題もターゲットにしていただかないといけないのかなと。もちろん研究なので、必ずしもそのとおりいくかどうかはわからないが、やはりターゲットはきちんと持っていただいて、それに対してこういういろいろな施設なり、必要なお金を投入していただくということで決められたのかどうかということを示したかったが、必ずしもそうではないということである。

【佐々木分科会長】

 それでは、何かありますか。

【菱山ライフサイエンス課長】

 社会のいろいろな問題を解決するというのも掲げており、例えば認知症とか自殺の方が増えているとか、そういったことを踏まえて考える必要があります。それが例えば3年たつと、この脳科学によって解決するという短絡的なことではなく、そういった社会問題に対してどうやって貢献していくかという観点でこういう目標が設定されており、また、脳科学ですべてを解決するというわけにもいかないと考えております。

【佐々木分科会長】

 それでは、次に鈴木委員から。よろしくお願いします。

【鈴木委員】

 表題で脳科学研究の基本構想及び推進方策とあるが、これを読んでいると、基本構想に関しては大体これでいくというのはわかるが、実際に、現場の大学や研究機関の先生方がやっているプロジェクトを今後、どうするか等、この構想と現場との間のつながりというか、実際に推進方策は何かというのが見えない。この構想自体はいいのだが、これをどう進めるかという、推進方策の中身については薄いような気がする。最後に今後議論を行う予定とあるので、その辺をやっていただきたい。

【佐々木分科会長】

 課長から。

【菱山ライフサイエンス課長】

 実は第一線で研究されている現場の先生方のご意見をかなり入れて、こういう形になっております。現場の先生方はだれかというと53ページにあります。この53ページに掲げている先生方は調査検討作業部会の先生方であり、まさに第一線で脳科学の研究をやられて、あるいは最先端のグループを率いられている先生方であり、こういった先生方がどうやったら大学院教育、ポスドクの育成ができるか、あるいはどうやったら脳の研究開発が進められるかといったことを考えていらっしゃって、それをこの報告書が反映したものだと思っていたが、今、先生のご指摘を受けて、今月また作業部会が開催されるので、今の先生のご指摘をそういった場にも投げかけていきたいと考えております。

【佐々木分科会長】

 まだご意見はあろうかと思いますが、とりあえずよろしいでしょうか。特にこの社会との関係については、科学技術・学術審議会の総会でもいろいろご要望、ないしご注意等があったように私自身も記憶しているので、一端は三宅委員がおっしゃられたこととも関係しているのではないかと思っていますが、いずれにしても来年の春、1月ごろに何かの形で、どういう形か、何かしらまたご報告があるという理解でよろしいでしょうか。

【菱山ライフサイエンス課長】

 今の予定だと、来年の1月ぐらいに案をお示しして、その後、パブリックコメントをさせていただいて、来年6月ぐらいに方針という形にまとめていきたい予定にしています。

【佐々木分科会長】

 それでは、その際にここでまたご審議いただきたい。
 それでは、大変恐縮でありますが、次の議題に移らせていただきます。各部会等の審議状況についてです。第4期の科学技術・学術審議会学術分科会は、4部会を設置していることはご存じのとおりかと思います。学術研究推進部会、研究費部会、研究環境基盤部会、科学研究費補助金審査部会がそれです。本日はこのうち、学術研究推進部会における人文学及び社会科学の振興に関する審議経過及びアルマ計画の中間評価、2つ目が研究費部会における審議のまとめ、3つ目として研究環境基盤部会における審議状況について、各部会からの報告をお願いしたい。それから、科学技術・学術審議会研究計画評価分科会原子力分野の研究開発に関する委員会核融合研究作業部会からの報告を受けることとします。
 そこで、まず学術研究推進部会の審議状況についてでございます。これについては今申したように、まず人文学、社会科学の審議状況についてご審議をいただき、その後アルマ計画の中間評価についてご審議をしていただきたい。
 それでは、人文学及び社会科学の振興に関する委員会において、8月22日に「審議経過の概要(その2)」が取りまとめられたので、門岡学術企画室長からご説明をお願いします。

【門岡学術企画室長】

 それでは、ご説明申し上げます。資料は3番です。資料3、「「人文学及び社会科学の振興について」審議経過の概要(その2)−人文学の特性を踏まえた振興の方向性について−」というものです。
 まず、この内容の説明に入る前に、人文学及び社会科学の振興に関する委員会ですが、この委員会を立ち上げて、2年近くにわたって審議を重ねてきています。
 まず、社会科学のうち、主に実証的な研究方法を用いたものの振興を中心に審議され、昨年8月に審議経過の概要として、まず「その1」をまとめています。これは社会科学を中心とした実証的な研究方法を用いたものを整理したものであります。その後、人文学の振興について哲学、歴史学、文学、日本研究、文献学、科学史などそれぞれの分野で日本の学術を先導しておられる研究者の先生方をお招きし、それぞれのご専門の研究分野から見た人文学の特性、機能、役割、振興のための施策の方向性についてご意見をいただくとともに、委員との意見交換が行われてきました。その結果として、今回の人文学を振興する上での概要というものがまとめられたところです。
 人文学についての審議の経過、有識者ヒアリングについては、資料3の34ページをごらんください。平成20年1月25日から有識者ヒアリングを6回開催し、その後、委員会で概要のまとめに入っている。樺山紘一先生、亀山郁夫先生、鷲田清一先生、村上陽一郎先生、猪木武徳先生、中野三敏先生、これらの先生方からそれぞれご意見等をいただきました。この委員会については、人文学に対して研究成果とか、あとはどういったものが人文学において明らかになっているのかとか、そういったものについてなかなかうまく正確に皆さんに伝わっていないのではないかという問題意識もあり、人文学のまず特性を俯瞰的に示すことで、より深い理解を求めて、人文学の役割、機能といった社会における人文学の意味を明らかにし、最後にその特性を踏まえた人文学の振興の方向性を提起するということで審議が進められてきております。
 なお、この委員会で取り扱った問題として、成果とか評価などを含めたいろいろな問題についてはかなり広範にわたっているので、議論が十分にできていない部分もあり、まだまだ審議を重ねる必要があるというご意見もあります。若干偏りとか矛盾をはらむような可能性も考えられるので、今後さらに審議を重ねて、最終的な報告に向けて努力が必要ではないかという認識が委員会の中でも示されています。
 それでは、本文のほうはかなり大部になるので、26ページの要旨の部分でその構成、内容についてご説明させていただきます。
 26ページをごらんください。構成としては第1章で人文学の課題、第2章で人文学の特性、めくって28ページのところからは第3章で、人文学の役割・機能、30ページから第4章として人文学の振興の方向性、大きく4つに分かれております。
 26ページに戻り人文学の課題については、その抱える主な課題として「輸入学問」という性格に伴う課題ということで、近代化の過程の中で日本の学問というものが輸入学問的なところから始まっていて、「受容」という段階を乗り越えて日本から発信するというあたり、日本独自のものをつくっていくということが期待されているのではないか。それが課題であるということと、あとは「研究の細分化」に伴う課題ということで、人文学に対する人々や社会の期待というものが、文明史的な課題に対する「認識枠組み」の創造にあるということがあるにもかかわらず、「研究の細分化」が進んだことによって、なかなかこのような取組に応えられていないのではないか。「歴史」や「文明」を俯瞰することのできる研究への取り組みが期待されると記述されております。
 第2章、人文学の特性については、研究対象の特性として、27ページに移りますが、扱っている研究対象としては、「精神的価値」「歴史的時間」「言語表現」を研究の対象としています。
 それから、「メタ知識」。諸「知識」に関する「知識」、論理や方法といったいわゆる「メタ知識」を研究対象としています。
 研究方法の特性として、人文学というものは、自分自身が「歴史」や「文化」に拘束された存在であることを自覚した上で、自らが依って立つ「価値」の相対性に気付かされることとなる。この結果、「人文学」における研究過程は、研究対象となる歴史や文化を「他者」としてとらえることを前提とした「他者」からの「学び」という性質を帯びることになると記述されております。
 「他者」からの「学び」という人文学の知的営為を踏まえると、人文学は、「他者」との「対話」を通じた自他の「認識枠組み」の共有の契機を含むものであるとともに、そのような「対話」を通じた「認識枠組み」の共有により、「共通性」としての「普遍性」を獲得できる可能性を含むものということを述べております。
 使用言語の多様性としては、人文学における使用言語は多様となることが、他者との対話という観点から想定され、また、通文化的な「普遍性」を獲得するという観点からは、英語等の国際的に通用性の高い言語を使用することが必須と考えられると述べております。
 研究成果及び評価の特性については、自然科学が研究対象に関する客観的な知識の獲得を通じた「真理の説明」を志向しているのに対して、人文学や社会科学は、「対話」を通じた「真理の(共通)理解」を志向している。しかも、人文学等には、そのような「真理の(共通)理解」という知的営為の中に、人間観や社会観などの転換を通じた歴史や社会の変革という「実践的な契機」が含まれている場合がある。また、人文学の研究成果は、社会還元に直結するというよりも、受容と拒否を繰り返しながら、歴史や社会の側で選択されていくものと言ってよいと記述されております。
 人文学における「評価」については、「評価」の問題は、いくつかの「評価」類型を混同した形でとらえられているというところに問題があるのではないかという問題意識のもとに、施策の対象としての「研究評価」を考えるに当たっては、「歴史における評価」、「社会における評価」とは異なる仕組みについて、検討を行う必要があるのではないかと記述されております。
 第3章で人文学の役割・機能として、人文学には諸学の基礎として、個別諸学の基礎付けを行うという役割・機能があり、まず理論的統合、その中で「メタ知識」の学、諸「価値」の評価、それから「人間」の研究として、人文学には個別諸学の諸知識の背後にある「人間」を高次の視点から俯瞰的に研究する「人間」の研究を担う役割・機能があるのではないかと記述されております。
 29ページにいって、役割・機能として、次に「社会的貢献」、この中で「人間」や「文化」等の文明史的な位置付けとして、現代文明における諸状況の変化に対応した「人間」や「文化」その他の諸「価値」の変革、あるいは場合によっては、文明を先導するような形での諸「価値」の創造を担うことが期待されていると記述されております。
 次に、専門家と市民とのコミュニケーション支援で、専門家である大学等の研究者が創出した知識・技術を、様々な活動を行う一般市民が理解し活用できるよう、両者を架橋する役割・機能を担うことができるのではないかと記述されております。
 さらに、「行政や医療、教育といった公益的な活動を支援することがあるのではないか」と記述されております。
 第3節に「教養」の形成ということで、文化や社会の「共通規範」としての「教養」の形成に、人文学が果たす役割がある。
 それから、「教養」の継承や、諸「教養」間の対話の促進を通じた「共通規範」としての「教養」の展開に果たす役割がある。
 それから、諸「教養」が前提としている様々な諸「価値」の間の判断を行う機能を発揮することがあるのではないか。
 と記述されております。
 これら第1章から第3章の課題、特性、役割・機能を踏まえ、今後の人文学の振興の方向性についてまとめたのが、30ページからの第4章です。
 4つの方向性を指摘していて、第一に「人文学者」の養成として、幅広い視野を前提とした上で独創的な研究成果を創出できる「人文学者」を養成するためには、幅広い視野を醸成するための基礎訓練期間の確保や、独創的な研究成果を創出した「人文学者」を評価するための「評価」の視点の確立が必要である。
 続いて第二に共同研究の推進として、国公私立大学を通じた共同研究の推進、研究者ネットワークの構築、学術資料等の共同利用促進等のために、研究体制や研究基盤を強化することが必要であること。
 それから、国際共同研究の推進として、交流にとどまらず、日本の文化と諸外国との文化との文化交流であるという意義を踏まえ、「日本研究」等を推進することが必要である。
 それから、異質な分野の「対話」型共同研究の推進として、原理・原則や方法論といった学問の存立基盤に関わるレベルでの相互作用を通じて、学問の根源的な変革や飛躍的な進化を促す契機となる可能性があるので、このような視野に立った共同研究の推進が必要であることが記述されております。
 次に、第三に研究成果の発信として、人文学を受容する「読者」の獲得、これについて社会との対話の努力が求められる。
と記述されております。
 31ページに移ると、「教養教育」を担う教員の講義や演習における学識と熱意が学生の人格や知的履歴の形成に与える影響を通じて、将来におけ「教養」の社会的拡がりを確保することにつながることが期待されると述べられております。
 それから、海外に向けた研究成果の発信であるが、これについては、すぐれた古典とか、そういったものについての英文翻訳による発信とか、あとは出版といったものについて、何か手だてはないかということについての検討が求められております。
 それから、第4に第4節で研究評価の確立です。これは人文学の学術水準の向上を目指す観点から、人文学についても、その特性を踏まえた上で「研究評価」をシステムとして確立させることが必要ではないかと記述されております。
 その観点として、「知の巨人」と言えるような「人文学者」の見識への信頼を前提とした評価システムの構築という視点、それから評価指標の設定については、定量的な評価指標を設定できるものは可能な限り設定しつつも、定性的な評価指標が評価の実質を担うべきであることを確認することが必要と記述されております。
 なお、この第4節の研究評価の確立は、冒頭でも話したが、まだ十分な審議はなされていないので、項目立てというあたりでとどまっているところです。
 少し長くなりましたが、以上です。

【佐々木分科会長】

 せっかくの機会なので、何かご意見、ご質問等あったらお願いします。まことにご苦労でした。今後ともひとつご審議のほどお願いします。
 それでは、次にアルマ計画中間評価報告についてご審議いただきたい。アルマ計画中間評価報告については、学術研究推進部会の下にあるアルマ計画評価作業部会において、8月25日にアルマ計画中間評価報告書が取りまとめられたので、これについて信濃研究開発局参事官よりご説明をお願いします。

【信濃研究開発局参事官】

 アルマ計画評価作業部会の事務局を務めた研究開発局からご説明します。資料4です。
 初めに18ページを開いていただきたいと思います。これは今年の4月8日、学術研究推進部会の第19回の会合で、この作業部会の設置について決めていただいた資料であります。設置の趣旨の最後の2行に書いてあるが、前回の事前評価から3年以上が経過していることから、評価作業部会を設置して中間評価を実施するという目的で開かれております。
 評価の視点であるが、その2番にあるとおり4つの視点から評価を行うようにということで、1つは事前評価における留意事項についての対応、2つ目がアルマ建設計画の進捗状況、3つ目がアルマの国際的運用計画、4つ目が国際協力の状況、こういう視点から評価をするように決められております。
 次、19ページにこの部会の委員のリストがあります。本日はご欠席であるが、飯吉臨時委員が主査を務められています。それから、本日おいでの鈴木委員、井上(一)臨時委員もこの審議に参加されていらっしゃいます。
 次の20ページであるが、審議の経緯ということで、3回の部会、1回の懇談会を開いて、この報告書をまとめております。
 それでは、最初に戻って、報告書の中身について簡単にご説明させていただきます。
 まず、1ページからごく簡単にかいつまんでご説明するが、まずそもそもアルマ計画の概要は何かということをご説明させていただきます。
 これは国立天文台とアメリカ、欧州の機関3者が国際協力をして、宇宙における銀河、惑星等の形成過程、それから生命につながる物質進化の解明を目指すプロジェクトです。具体的には南米チリの5,000メートルにあるアタカマ高原に64台の高精度アンテナ、そのほかのアンテナをあわせて全部で80台のアンテナをつくり、ミリ波・サブミリ波で観測をするものであります。これはたまたま偶然であるが、きょうの新聞に、これは企業の広告であるが、このアンテナの絵が出ている。このようなパラボラアンテナを全部で80台設置して、観測をするというプロジェクトです。
 このプロジェクト自身は、この審議会において平成15年1月に事前評価をいただいており、その結果を踏まえて平成16年度から実際に参加をして、建設を進めているところであります。
 資料の3ページ、4ページに計画の背景、意義とあるが、ここについては事前評価のときに既にご審議いただいているので、説明を割愛させていただきます。
 実際の評価は資料の5ページからになります。先ほど4つの視点があったが、その一つ一つについて整理がされております。
 まず最初はアルマ計画の進捗状況ということで、これは視点の2つ目にありました。先ほど簡単にご説明したとおり、これは全体で80台のアンテナを設け、そのアンテナそれぞれに10個の受信機を設ける。つまり80掛ける10で、800台の受信機をつけるプロジェクトであります。このうち国立天文台はアンテナを16台、受信機240台を分担して行うということで、およそ25%を全体の中から分担して、作業を進めているものであります。
 この16台のアンテナのうち、既に4台は現地に設置されており、残りの12台を現在、製造しているところであります。設置した4台のアンテナのうちの1つを使い、今年の2月に月の電波写真を撮影して、これに見事に成功しております。それから、240台の受信機については、一部をまだ製造しているところであります。
 評価そのものはまた後ほどまとめてご報告するが、続いて視点の3つ目にある運営ということで、資料の6ページに移らさせていただきます。
 この運営については、平成16年9月に大学利用機関法人である自然科学研究機構とアメリカ、欧州の機関の3者により、共同建設に関する協定書が締結されています。また、現地にアルマ観測所があるが、ここには国立天文台の教授がプロジェクト・マネジャーとして着任をしている状況であります。さらに、日米欧それぞれに「アルマ地域センター」を置くことになっています。この「アルマ地域センター」というのは研究者支援を行う運用のかなめになる機関であるが、そのうち日本に設置される「アルマ東アジア地域センター」を国立天文台が21年度に整備する状況になっています。
 7ページにいき国際協力、これは先ほどの視点の4つ目に相当します。そもそもこのプロジェクト自身は国際協力で進められておりますが、さらにその協力の輪を広げるという意味で東アジア地域、特に日本、中国、韓国、台湾、これらの国・地域の天文学研究機関の代表によって「東アジア中核天文台連合」が形成されております。そこを通じてアルマの協力について協議を進めているところであります。また、将来的には東アジアを超えて、インド、オーストラリアなどのアジア、オセアニア地域との協力の可能性も探っていく計画になっております。
 7ページの4.国民への広報普及活動、これは実は先ほどの4つの視点の中には含まれておりませんが、このプロジェクトが施設の整備だけで250億円を超える非常に多額のプロジェクトであるということもあり、委員会の場で広報が重要であるという指摘があったので、先ほどの指示のあった4つの項目に加えて、この広報普及活動についても評価を行っております。
 このようなプロジェクトのときに通常行われる、例えばホームページ、写真、ニュース、PRグッズ、こういう広報に加えて、建設現場への「バーチャルツアー」の試みが行われております。さらに、この計画で将来期待される科学的成果について説明をする一般講演会も開催されており、既に全国各地で100回以上開催され、6,000名が参加している状況にあります。
 続いて8ページにまいります。これは事前評価における留意事項についての対応ということで、先ほどの視点の1つ目に相当するものであります。
 まず、留意事項の1つ目であるが、これは平成16年に、大学共同利用機関である国立天文台が大学共同利用機関法人自然科学研究機構の国立天文台にかわるということがありました。したがって、そういう変化を踏まえて、法人組織における理解と協力を得つつ推進しなさいという留意事項がありました。これについての対応ですが、先ほどご説明した協定書、これは国立天文台ではなくて、今申し上げた大学共同利用機関法人自然科学研究機構が締結をしているということで、天文台だけではなく、機構が全体としてきちんと計画を進める体制になっております。
 留意事項の2点目であるが、我が国の参加の意義を十分に踏まえて、研究開発の進捗状況、全体の運用計画も考慮しつつ、我が国の特色を生かしていくことという指摘を受けています。これについては日本が得意とするサブミリ波技術に焦点を当て、さらに野辺山で培ったミリ波天文学の技術を基礎にして取り組んでいます。具体的には、先ほど申し上げた多くのアンテナとか受信機の中から日本が分担する部分を選択するのに当たり、こういう技術力をきちんと考慮して、適切なものを選んでいます。
 3番目の指摘事項として、将来的なアジア地域における運用、協力体制の構築に最大限の努力をするということがありました。これについては先ほどご説明したとおり、アジア地域の研究者を支援するために「アルマ東アジア地域センター」の整備を行うことにしているということ、それから協力協定を結んで協力を推進している状況にあります。
 以上ご説明したような視点での評価を踏まえて、その評価結果が10ページにまとめられています。2段落目にあるとおり、アルマ計画への参加は2年おくれたが、今回の中間評価において望遠鏡及び観測装置、運営並びに国際協力について順調に進捗し、特にアンテナや相関器の開発・製造においては計画全体をリードしていることを確認したことになっています。
 このような評価を踏まえて、結論としては本計画の進捗は妥当であり、今後も不測の事態をあらかじめ想定し、それに対する有効な対処法を検討しておくなど、さまざまなリスクへの備えを怠ることなく、引き続き計画遂行に注力されたいというふうに結んでいます。
 評価の結果は以上ですが、次、11ページにあるように、本格運用に向けた課題ということで、今後の課題を6点部会として指摘しております。1つが運用経費の確保、2つ目が幅広い学問分野への波及、3つ目が研究体制の確立、4つ目が研究成果の国民への還元、5つ目が技術・ノウハウの社会への還元、6つ目が国民理解のさらなる醸成ということで、これらの指摘については今後のフォローアップの中でされていくことになるだろうと考えております。
 事務局からの報告は以上です。

【佐々木分科会長】

 それでは、何かご質問、ご意見等ありますか。よろしいでしょうか。ご苦労でした。
 それでは、次に研究費部会について審議状況の報告をお願いします。本年7月16日に研究費部会で「審議のまとめ(その2)」として、科学研究費補助金において当面講ずべき施策の方向性についてが取りまとめられた。本件について山口学術研究助成課長から説明をお願いします。

【山口学術研究助成課長】

 8月7日付で学術研究助成課長を拝命した山口でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私から、研究費部会の「審議のまとめ(その2)」について簡単にご説明申し上げます。
 資料は5−1と5−2とあるが、資料5−2のほうでご説明をさせていただきます。
 まず、1ページをお開きいただきたいと思います。これまでの審議の経過です。研究費部会においては、ここに書いてあるように、昨年8月に「審議のまとめ(その1)」ということで、「科学研究費補助金において当面構ずべき施策の方向性」をおまとめいただきました。その後も引き続きご検討いただいて、10回にわたりご検討をいただいております。審議に当たっては国公私立大学の関係者の方々、あるいは有識者の方々からのご意見を伺っております。後で出てまいりますが、特に生命科学系の3分野、がんとゲノムと脳の3分野の支援の在り方についてはこの部会の下にライフサイエンスの作業部会を設けて、別途ご検討をいただいたところです。
 簡単に中身についてご紹介をさせていただきます。
 まず、科研費等の学術研究助成の充実の方向性ということで、1ページの下のほうに1として書いてあります。これについて大きく3点ご提言をお示しいただいております。
 第1に、研究活動の裾野の拡大である。言うまでもなく我が国が研究成果を上げていくためには、基本的に大学等における研究をしっかりやっていただく必要があるわけでありますが、ここに書いてあるように、特に研究活動の裾野の拡大を図り、重厚な知的蓄積の形成を図っていくことが大変重要になっております。
 2ページであるが、この観点からいえば、特に日常的な教育活動を支える基盤的経費というものと競争的資金の2本立て、デュアルサポートシステムの強化を進めていくということ、それから「基盤研究(B)、(C)」といった研究種目を中心に予算を拡充することが重要であるということが述べられております。
 2番目の柱として、革新的技術のシーズを生み出す基礎研究の充実ということが述べられております。革新的な技術を推進することについては、多様な基礎研究を推進するという面での学術研究助成が不可欠であり、学術研究から研究資金をシフトすることがあってはならないというご指摘をいただいております。ただ、一方で、2ページの下から2つ目の○でありますが、科研費自体としても従来の常識を打ち破るようなより挑戦的で、高い目標を設定した研究課題に対して適切に資金配分をしていく取り組みが今後必要であるというご指摘をいただいております。
 2ページの下のところであるが、大学等における学術研究の振興という面では、この7月に閣議決定されている教育振興基本計画等でも盛り込まれているが、科研費等の競争的資金を拡充する、間接経費の30%の措置を早期に実現することが重要であるというご指摘をいただいております。
 3ページの大きな柱の2番目として、研究分野の特性に応じた助成の在り方についてであります。特にこの「審議のまとめ(その2)」においては、がん、ゲノム、脳といった生命科学系の3分野への支援の在り方を中心にご検討いただいたところであります。
 4ページをお開きいただきたいと思います。4ページの左側の真ん中ぐらいにあるように、このがん、ゲノム、脳の生命科学系3分野については、いわゆる「ミレニアム・プロジェクト」を受けた形で、平成16年度から6カ年の研究期間で、他の「特定領域研究」とは別に予算枠を定めて、重点的に支援されてきましたが、この3分野の「特定領域研究」については、平成21年度で終了予定となっているところであり、今後、どうするかということについてご検討いただいたところであります。
 右側で3分野の今後の支援策という括弧があります。そちらをご覧いただきたいと思います。今後ですが、3分野における「特定領域研究」においては、重点的な支援によってかなり大きな成果が上がったと言える訳ですが、そこの次の次の行ですが、今後は従来のように、領域型の研究種目において別枠で重点的に助成を行うのではなく、基本的には他の分野と同様の扱いの中で、すぐれた研究課題や領域に対して助成を行っていく方向で考えていくべきではないかということです。
 具体的には、現在対応している「特定領域研究」の予算が、20年度から新規募集を開始した「新学術領域研究」に次第にシフトしていく中で支援していくということで、この中では他の分野と同様の取り扱いの中で「新学術領域研究」の趣旨・条件に沿った応募を受け付けて、審査されていく方向で進めるべきであるというご提言をいただいております。
 ただ、5ページの下から5センチぐらいでしょうか、「一方で」というところですが、実際に3分野が長い間重点的・戦略的に支援されてきた経緯がある。これまでの成果を活用するという面でいえば、それぞれの特性にかんがみた支援する仕組みという視点も必要ではないかということで、支援のための新たな枠組みについても検討すべきであるというご提言をいただいております。
 具体的には、次の6ページの上から3分の1ぐらいのところですが、新たな枠組みについては今後検討していくということですが、おおむね平成22年度当初から5カ年程度を対象期間として評価を行った上で、その存続も検討するということで、その3分野を対象とする総括班、支援班、あるいはこれに類する活動の予算規模を参考に支援の枠組みを今後検討していくというご指摘をいただいております。
 あわせて「仕組み」の制度設計をこれから進めていくわけですが、4.の「系・分野・分科・細目表」についても見直しを進めるべきであるというご提言をいただいているところです。
 7ページ、3の研究費の「不合理な重複・過度の集中」を避けるための方策についてご説明を申し上げたいと思います。
 まず、(1)であるが、これは科研費の中で重複制限についてどう考えるべきかというものです。
 現状のところに書いてあるが、科研費においては、既に研究の目的あるいは性格、実施形態、年齢の違い等々のさまざまな観点で研究種目、審査区分を設けているが、これについても一定の考え方で重複応募、あるいは交付制限のルールを設定しています。大ざっぱな考え方は7ページの1.から6.に書いてあるので、後ほどお目通しいただければと思います。
 これに関して8ページであるが、現行の科研費内の重複制限は一定の成果を上げており、これまでも繰り返し検討が行われて、改善が図られてきているところであるので、制度としても一定のルールが確立しているのではないかというご意見をいただいております。さらに、今後も、例えば、「新学術領域研究」が今年から始まっていますが、このように新たな研究種目等が実施される場合においても、こういった考え方を踏まえて、集中しないような重複応募・交付制限のルールを考えていくべきだというご提言をいただいております。
 (2)の部分は、これは科研費の内部ではなく、科研費と他の競争的資金等との重複等に対する考え方ですが、これについても取り組みは始まっております。科研費においてもエフォートの記述を求めているところであります。8ページの下の○であるが、本年の1月から府省共通の研究開発管理システム、e−Radと言っていますが、これが動き始めています。これによって、9ページの右の上のほうでありますが、これを活用して他制度への応募、あるいは採択状況を確認することができるようになっていくということで、これについてはe−Radの運用状況等を踏まえながら、また引き続き検討していくことが必要であるというご提言をいただいているところであります。
 それから、9ページの真ん中以降、4ということで科研費において当面構ずべき制度改善方策について、多くのご提言をいただいている。簡単にご説明させていただきたいと思います。
 (1)の審査システムの国際性等の観点からの高度化ということで、1つは国内の外国人研究者への配慮をもっとすべきではないかということで、10ページですが、具体的には公募要領、あるいは研究計画調書等の英文版についても取り組むべきではないかというご提言をいただいています。これについては今年度から早速対応していきたいということで、日本学術振興会のほうで準備を進めています。
 2.の外国人研究者の審査・評価への参画という面ですが、これについては特に国際的な視野を必要とする研究種目である特別推進研究などで、学問分野の特性を踏まえつつ、審査意見書の作成者等として外国の研究機関に所属する研究者の審査・評価への参画を求める方向で今後検討していくことが必要ではないかというご提言をいただいています。
 11ページ、審査結果のフィードバックの在り方、審査結果の検証の在り方という問題です。審査結果のフィードバックの在り方については、これまでも問い合わせに対して一定の補足情報の提供を行ったり、平均点の開示等を行ったりしておりますが、11ページの一番下にあるように、本年度から「特定領域研究(公募研究)」において、審査意見の開示について一定の取組を進めています。これについて検証しつつ、他の研究種目への適用についても拡大を進めていくべきではないかというご提言をいただいています。
 12ページにおいては審査結果の検証という問題についてご提言をいただいています。これについては独立行政法人の日本学術振興会が現在も審査結果、あるいは審査過程のレビュー、検証等を進めておりますが、それについても引き続き充実を図るべきであるとされております。それから、文部科学省においても審査部会における働きというか、特にプログラム・ディレクター的な機能と実際の課題の審査・評価といったものを今両方担っているわけですが、これの在り方を見直して、明確化していくという取り組みを今後考えていくべきではないかというご提言をいただいております。
 それから、12ページの下、(3)である。学術研究を行う機関の指定についてということですが、これは例えば国や地方公共団体が設置する大学校等の教育訓練機関、あるいは病院といったものが、今、一律に科研費の指定機関から除外されており、さまざまなご要望もいただいております。これについては、一律に対象から外すのではなくて、実質的に学術研究機関の要件を満たすかどうかという検討を進めて、それを判断していくことが必要ではないか、もちろんその際には、科研費の管理体制、監査体制も整備されているということについても要件としつつ、実質を見て判断していくことではどうかというご提言をいただいております。
 13ページの下の(4)「若手研究(A・B)」における年齢制限の緩和という問題であります。年齢制限の緩和の問題についてはこれまでも進めてきているが、特に問題意識として、14ページにあるが、例えば医学系においては臨床研修制度の変更があって、研究職につく年齢が上昇してきた部分もあります。それから、出産あるいは育児といった面も考慮した年齢制限の緩和も求められているところであります。こうした面も含めて考えて、14ページの下に今後の対応方針がありますが、若手のA・Bについては現行の37歳以下から2歳引き上げて40歳未満、つまり、39歳以下にすべきであるというご提言をいただいているところであります。
 14ページの下の(5)研究計画が予定より早期に完了した場合の応募の取扱いということで、これについては研究計画が予定より早期に完了した場合について、これまでは当初の計画の範囲内で対応してきたわけでありますが、きちんと当初の目的に到達したことを評価して、それが確認できれば、当初の目的を達成したかということを評価した上ではありますが、継続研究期間を一たん完了させて、研究期間を短縮した上で新たな研究課題について応募するということも認めるべきであるというご提言をいただいたところであります。
 15ページ(6)「特別研究促進費(年複数回応募の試行)」の見直しについてであります。年複数回応募については、特別研究促進費でこれまでも対応を進めてきていますが、実際には16ページにこれまでの状況について記述しています。若手のスタートアップが同時期に審査をしています。スタートアップと再スタートアップというか、そういった面は性格的に似通っていることもありますので、今後の対応方針としては、16ページの一番下にありますが、独立行政法人日本学術振興会がやっている若手研究スタートアップの応募資格を少し広げて、それの中で一体的に応募し、審査し、交付業務を行っていくという方向で考えるべきであるというご提言をいただいています。
 最後に(7)として、研究費の効率的な使用の促進であります。これについては研究費の繰り越しを可能とする取り組み、あるいは20年度からは合算使用の制限を緩和したり、費目間の流用を30%以下から50%未満まで引き上げたりしていますが、使いやすい形での制限の緩和、ペナルティの明確化といったものも含めて、効率的な使用の促進と不正の防止について引き続き対応を進めていきたいと考えているところであります。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 何かご質問等ありますか。どうぞ。

【巽委員】

 科研費の助成のあり方について精力的に検討していただいき、いろいろな問題点が解消していくように見えます。その中で、生命科学系3分野への支援のあり方が、一番の重点項目になっていると思います。概要あるいは本文の最初の部分では、生命科学系3分野は基本的に新学術領域研究へ移行することになっています。にもかかわらず、「支援のための仕組み」では、例えば6ページの中に、5年間程度評価を行った上で存続を検討するという文言が入っています。これらの記述は、齟齬をきたしているような気がするが、いかがでしょうか。生命科学系3分野は強力な分野であるから、新学術領域研究の一般の土俵でも十分に他の分野と競争していけるものではないかと私は思います。この3分野を5年間さらに特別扱いする理由はどこにあるのでしょうか。

【山口学術研究助成課長】

 ご説明が十分でなくて申しわけありません。今の6ページのところですが、支援のための仕組みということです。先ほどお話があったように、これからの応募については「新学術領域研究」の中で、特別の枠組みではなくて、通常の形でアプライしていただくというルールで進めていくが、その大前提として、これまでの経緯ということで、ここにも少し書いてありますが、これまでの3分野の研究の中であった総括班あるいは支援班的な機能を直ちに切ることによって、研究に与える影響が非常に大きいのではないかということで、この総括班、支援的な分野、あるいはこれに類する活動の分野を踏まえて、そこの部分の支援について、一定期間対応しようということで考えがまとまったということであります。
 したがって、普通の研究については、他の応募と同様に「新学術領域研究」の中でアプライしていただくという仕組みであります。

【佐々木分科会長】

 巽委員、よろしいでしょうか。何か。

【巽委員】

 長くなるので、これ以上の質問はここでは差し控えますが、総括班だけとは言え、生命科学系3分野を今後も特別扱いするという理由が少しはっきりしません。

【山口学術研究助成課長】

 これについては非常に大きな議論で、これについてサブグループも含めてご議論いただいた結果であります。例えばマウスであるとか、共通に必要な部分がどうしてもあるということで、そこの部分について直ちに切るということは研究に与える影響がなかなか大きいのではないかというご議論があったと理解しております。

【佐々木分科会長】

 ほかにありますでしょうか。土居委員、どうぞ。

【土居委員】

 2点教えていただきたいと思います。1つ、何年度かの3年とか5年の長期にわたる研究ということで、通常の場合には最終年度というのは取りまとめ等々を含むので、その前の年度よりも額が減るという状況のときに、発展的にこれを継続したいときに、最終年度をかぶった、また次の研究を申請することはできるのでしょうか。

【山口学術研究助成課長】

 すべてではないが、例えば大きなものについては、これまで、事後評価という形で進めると、一たん切れてしまうおそれもあったので、それについては終わる前の年度に「研究進捗評価」というものを入れ、それから最終年度についてはそれを踏まえた上でアプライできるという方向でやっています。それから同時に、研究進捗評価については、できる限りこれからオープンにしようと思っており、それによって例えば他省庁の所管しているいろいろな資金がありますが、そういった面にも移行していくことが可能なような形で、支援の切れ目のない体制を整えていかねばならないと思っております。

【土居委員】

 続けてよろしいでしょうか。額が大きい場合には、それなりに認めていただくのが難しいような話をよく聞きますが、継続、切れ目がないのをやる必要がある場合には、特段のそういうことに関しても、成果等々の評価を当然のことながら踏まえた上で配慮していただくようなことをお考えいただく必要があるような気がしますが、よろしくお願いします。
 もう一つはe−Radですが、あれは開発、補修等はどこがやっているのでしょうか。というのは、いろいろなところから、私は当事者ではないが、たまたま専門分野ということで、とても使い勝手が悪いらしいので、ぜひ改善を図っていただきたいと思います。

【佐々木分科会長】

 何か一言あればどうぞ。

【山口学術研究助成課長】

 使い勝手についてのそういうお声も少し聞いておりますので、関係者にお伝えしたいと思います。

【佐々木分科会長】

 まだご質問はあろうかと思いますが、ご約束いただいた時間の管理の関係で、さらにあったら個別的にまたご質問等いただければと思います。大変恐縮ですが、次に進ませていただきます。
 研究環境部会の件です。これについては前回7月の学術分科会に報告をし、その審議状況についてご意見を賜ったところです。きょうは前回の学術分科会以降の審議状況について簡単な説明を、勝野学術機関課長からしていただければと思います。よろしくどうぞ。

【勝野学術機関課長】

 それでは、資料2に基づいて、研究環境基盤部会の審議状況についてご説明申し上げます。
 資料2の1ページの下のほうです。前回の分科会以降、3つの作業部会において審議を進めております。
 まず1つ目ですが、国立大学運営費交付金の特別教育研究経費に関する作業部会です。これについては毎年度、次年度の概算要求前にこの作業部会において調整方針を決定していただいた上で、具体的な概算要求事項を決めていただくという審議を行っていただいております。本年度についても7月から8月にかけて3回の作業部会を開催していただいて、調整方針を決定していただいた上で、具体的な概算要求事項として国立大学法人の学術研究関係に関する特別教育研究経費に関する合計371件の概算要求事項について了承をいただいたところです。これを踏まえて、8月29日に概算要求を財務省に提出しているところです。
 2つ目は共同利用・共同研究拠点に関する作業部会についてです。これについては前回の学術分科会でもご報告したところですが、新たな国公私立を通じた共同利用・共同研究拠点の制度を設ける必要があるという5月27日の研究環境基盤部会の報告を受けて、7月31日に文部科学省において学校教育法の施行規則を改正し、具体的な制度化、制定をしたところです。また、5月のこの報告においては、文部科学大臣が共同利用・共同研究拠点の認定を行うに当たっては、審議会からの意見を聴取することが適当というご提言をいただいております。これを踏まえて、8月に共同利用・共同研究拠点に関する作業部会の第1回目を開催し、拠点の具体的な整備についての審議を行っていただいたところであります。
 3つ目は学術情報基盤作業部会であります。この部会においては、学術情報基盤の整備に関する推進方策について検討を行っていただいており、具体的には現在、情報基盤センターの在り方、学術情報ネットワークの在り方、この2つについて今後取りまとめに向けて、引き続き審議を進めていく予定になっております。
 簡単であるが、研究環境基盤部会の審議状況は以上です。

【佐々木分科会長】

 何かご質問等ございますか。よろしいでしょうか。それでは、恐縮であるが、次に進ませていただきます。
 科学技術・学術審議会研究計画評価分科会原子力分野の研究開発に関する委員会核融合研究作業部会の審議状況についてご報告をお願いします。これは大学における学術研究についても重要な検討課題が含まれており、学術分科会の学術研究推進部会と連携を図ることとされているわけであって、本日は7月に取りまとめられた核融合研究の推進に必要な人材の育成・確保についてご報告をいただきたいと思います。
 それでは、千原研究開発局戦略官から説明をお願いします。

【千原研究開発局戦略官】

 それでは、お手元の資料6−1、6−2に沿ってご説明をさせていただきます。資料6−2が本体の報告書であるが、資料6−1に沿って簡単に概要をご説明させていただきます。
 この核融合研究作業部会の報告書ですが、本分科会の臨時委員である飯吉先生を主査とした核融合研究作業部会で報告書を取りまとめていただきました。これはITER計画、あるいは幅広いアプローチ活動というのが本格化してきたことを受けて、去年の6月にこの作業部会でITER計画、幅広いアプローチをはじめとする我が国の核融合研究の推進方策を取りまとめいただいたところであります。その議論の過程において、核融合分野でも人材の育成確保が非常に大事だというご意見がたくさん出たので、そのことを受けて、本年の2月から5回にわたり審議をいただいて、このような報告書を取りまとめていただきました。
 資料6−1を見ていただくとおわかりいただけるように、全体として3章に分かれています。第1章が核融合研究の推進と人材育成ということで、全般的、基本的な考え方を述べて、第2章でその中で現状の分析と課題、第3章でその課題に対して、今後必要な施策は何かということを取りまとめていただいているところであります。
 第1章から簡単にご紹介をさせていただきたいと思いますが、冒頭、新エネルギー源の開発ということは、地球環境問題とか資源の枯渇を踏まえると喫緊の課題であって、その中で核融合エネルギーというのは資源量とか環境的要請、そういったことから恒久的エネルギー源として非常に魅力的な候補であります。それで、国際的な研究開発が展開されているということが書かれています。
 その中で我が国はITER計画、幅広いアプローチ活動に参画しつつ、また一方で、核融合研、大学を中核とした学術研究にもしっかり取り組んでいるという状況が書いてあります。
 核融合研究というのはいろいろな広範な要素科学技術から成り立っており、それが統合されてできる技術ですので、我が国が得意とするものづくりということで世界をリードするための礎になるものであろうと。したがって、知の継承と知の循環が大事だということが書かれています。
 ただ、ITER計画、あるいは幅広いアプローチ活動、そういったところはひとつ長期的なビジョン、計画として長期の研究開発が必要であるので、長期的なビジョンのもとにこういった研究開発を通して、またそこはある意味見方を変えると、人材育成の実践的な教育の場である、スクールであるというふうに考えられるので、そういった場を活用して、産学官が連携して、優秀な人材の育成と確保をしていくのが課題であろうということを書いていただいております。
 第2章では現状の分析と課題ということで、ここはその次の第3章もそうですが、1として基本的な課題、全般的な課題を書き、それから2ポツのところは特にその中でITER計画等を中心とした研究開発に係る中長期的な課題、3番目はITER計画等を中心とした研究に係る喫緊の課題というタイムフレーズで分けており、それに対応する形で下に箱が緑、黄色、ピンクでかかったように、それぞれの課題に対してどういう施策を行うべきかということが書いてあります。
 簡単にご紹介させていただくと、2章の1ポツの基本的課題ということで、核融合研究は長期間を要する総合的な科学技術であるので、長期的なビジョン、例えばITER計画というのは実験炉の計画でありますが、その先の原型炉とか、そういったところに向けてのビジョンが必要であろうと。とりわけ、その中で人材の育成・確保は非常に重要な位置を占めるということであります。そういった人材の確保に当たっては、核融合とか、原子力とか、加速器とか、そういう個別の分野だけの育成などではなくて、そういった分野をまたがった共通性、あるいは流動性を重視した幅広い人材育成をしていくことも大事だということを書いていただいております。
 あるいはまた、若手研究者にこういう分野に積極的に来ていただくために、安定的に活動できるためのキャリアパスの設計というのが課題であろうということ。あるいは教育システムの構築ということでは連携ということで、大学とか、核融合研の連携・協力によって大学院教育体制の多様化とか、高度化を図っていくことが大事ではないか。あるいはそういう大型の研究施設の教育への活用をもっと進めていくべきではないかというような課題も指摘していただいています。あるいは産業界における人材育成・確保という観点で、産業界とビッグプロジェクト及び大学、そういったところの学術界と産業界との人材交流を一層活発化する必要性、あるいは国際的な視点に立った人材育成ということで、国際的連携、特に我が国としてはアジア地域との連携が大事だろうということを書いていただいております。
 2ポツでは、ITER計画・BA活動を中心とした中長期的な課題ということで、特に研究者、技術者の拡充ということが大事ということで、ITER計画とかBA活動を十分に活用して、大学あるいは核融合研においても多様な人材を育てる、あるいはさまざまなキャリアを積み上げることができるような仕組みをつくっていくことが大事だろうということを書いていただいております。
 また、技術の継承という観点では、我が国がどういう技術を確保すべきかということをきちんと明らかにして、産業界での技術の継承を図っていくということの重要性も書いていただいております。
 3ポツの喫緊の課題ということでは、特にITER機構への派遣者数という観点で、今、我が国はITERに対しては準ホスト国という立場で参加しており、現在、専門職としては200人ほどの職員がITER機構にいるが、その中で日本人の占める割合は17人、約9%です。これは日本の貢献分を踏まえると、その倍ぐらい派遣してもよいような状況になっており、派遣数を増やしていくということが課題です。しかし、派遣するといってもなかなかそういった優秀な人材をどう確保するかとか、それを可能としていく枠組みづくりもしっかり考えていく必要があるということを書いていただいています。
 また、産業界・大学等からもITER計画への参画ということで、例えば大学から派遣していただく場合には、大学での負担とか、そういったことが課題として挙げられており、そういったところをどう解決していくかということも課題として挙げていただいています。
 そういった第2章の1、2、3に対応して、第3章であるが、同じく1ポツとして基本的な考え方ということで、2章に対応する形であるが、長期的ビジョンをつくっていくことが施策として大事です。第3章のところは後ろにかぎ括弧が書いてあって、そういった施策をだれがやるのかということも今回の報告書では指摘していただいており、例えば長期ビジョン、あるいは技術戦略ロードマップの提示というのは、国あるいはコミュニティがそういったことをきちんとつくっていくべきであるということを書いていただいております。また、人材の流動化、先ほど出てきた連携、教育システムの構築、そういったことについてもコミュニティあるいは各研究機関、そういったところで例えばいろいろな機関間の連携をさらにつなげていくような連携体制の強化を図ることが大事であるとか、大学と産業界が連携した核融合教育のプログラムを立ち上げてはどうかという施策のご提案、そういったことをやっていただいています。
 2ポツの隣の黄色のところに移っていただいて、研究者・技術者の拡充ということで、ITER計画、そういったところに行った経験者がまた日本の学界あるいは産業界に戻ってきていただいて、その経験を生かして活躍できるキャリアパスの確立とか、若手研究者をITER計画・BA活動に送り込むための仕組みづくりとか、そういったこともご指摘をしていただいているところであります。
 3ポツの喫緊の課題ということでは、先ほどのITER機構への派遣者数の増ということで、大学からITER機構へ派遣するときのサポートを核融合研のほうに期待したいということとか、送り込むための大学研究者の経費を、国の持っているお金であるが、ITER補助金で措置をするようなこと、そういった施策を展開していくべきでないかというご指摘をいただいております。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 せっかくの機会ですので、何かご質問はございませんか。それでは、中西委員、お願いします。

【中西部会長代理】

 核融合計画では実用化が30年後とか50年後とか、ここにおられる方がだれもいなくなったころに実用化のめどが見えるという、非常に長い時間がかかるプロジェクトです。しかし、先がまだそれだけ見えないところに対して企業が人材育成に協力できるかどうか、それだけ余裕を持っているのかという点には少し疑問があります。またここで特に核融合の人材育成も取り上げているが、原子力や加速器などの分野については一緒に考え、これらの人材育成の延長線上に核融合の分野があるのだというように位置づけたほうが、若い人のキャリアパスを考える上でいいのではないかと思いますがどうなのでしょうか。

【千原研究開発局戦略官】

 先生のご指摘はごもっともだと思っています。最初の産業界の参画という観点では、ITER計画のその先の長期的なビジョンが見えないということで、今回の報告書でもそういったことをコミュニティ、あるいは国としてしっかりつくっていくという指摘をいただいています。それから、人材の観点でも核融合の分野だけとか、そういうことではなくて、加速器の分野、あるいはほかの核分裂の分野、そういった分野を大くくりにしながら人材育成を図っていくことの重要性を指摘していただいておりますので、先生のご指摘はほんとうに肝に銘じたいと思っています。

【佐々木分科会長】

 では、鈴木委員、どうぞ。

【鈴木委員】

 今の件に関して、産業界も今先が見えないこともやらなければいけないが、そのチャンスが少ない。すぐ役に立つことばかりやっている。だから、産業界からもこういう計画にぜひ産業界の若い人たちを送りたいという希望がある。そういう意味でうまくまとめることができると思います。

【佐々木分科会長】

 ほかにありませんか。ご苦労でした。今後ともよろしくお願いします。
 それでは、議題の3つ目に移る。平成21年度概算要求について、奈良振興企画課長のほうからご説明をお願いします。

【奈良振興企画課長】

 奈良です。よろしくお願いします。最後のほうに資料7−1から3種類の資料が入おります。そのうちの資料7−1が総括表というか、学術研究関係予算ということでピックアップしたものが資料7−1です。それから、振ってないが、厚い冊子がある。これをパラパラめくっていただければわかるが、最初の10ページぐらいまでの間に科学技術関係予算が太枠で項目が書いてありますが、それぞれの項目ごとにまとめて、最初の10ページぐらいがまとめで、あと参考資料です。これはそれぞれ項目ごとに集めているので、項目間で若干重複があります。例えば人材であると、次世代を担うということで理数教育の充実は149億円と。そういったような資料構成になっています。中ほどからそれぞれの独法の予算、最後のほうはそれぞれ個々の参考資料がついています。
 それからもう一つが資料7−3ということで、高等教育局主管の事項であります。最初の1~2枚は総括表で、それぞれの施策ごとの予算が載っています。その後、大学教育の充実とか、私学とか、留学生30万人計画とか、そういったような流れの中で医学、私学助成といったような資料が後ろのほうについています。
 それからもう一つ資料7−4が施設関係ということで、後で出てくるが、緊急整備5か年計画の推進ということで、3本柱の内容等が載っています。
 この3つの資料から、特に学術関係の予算を集めてきたものが資料7−1であるので、先ほどの資料は横のほうに置いていただいて、資料7−1でご説明させていただきたいと思います。
 その前に今回の予算の特徴であるが、新聞報道その他でご承知かと思うが、昨年の基準からさらに2%ぐらい、私どもは深掘りと呼んでいるが、削減した上で削減したものを集め、政府全体で3,300億円ぐらいのそういう特別枠みたいなものをつくり、さらに再配分していくという考え方です。科学技術振興費は2%削減する。それぞれでまた戻していただく。それから、大学については3%削減して、それから戻していただく。そういう構造になっております。
 そういう構造を前提に今の予算をご説明させていただくが、(1)、これは大学における研究基盤の整備、基礎研究の推進ということで、最初の○であるが、運営費交付金1兆1,870億円という要求で、昨年度に比べて増額している。
 それから、私大の経常補助費、これについても3,549億円ということで、これも昨年度より増額しております。
 3番目の○であるが、これは大学・大学共同利用機関等における独創的・先端的研究ということである。先ほど説明にあったアルマ計画とか、そういったものでありますが、大学の共同利用機関等において研究者の自由な発想に基づいて世界をリードするような創造的な基礎研究を推進しようということで、そういった基礎研究を、全国の大学等からの研究者が集まる共同利用機関の施設整備であるとか、学術資料等を一緒に利用するということで、全体として我が国独自の学術研究システムである共同利用機関、こういうところの体制を使って、こういった独創的・先端的基礎研究を推進してまいりたいということで、これは1,320億円です。この間には老朽化とか陳腐化した施設とか、研究設備その他の研究環境の基盤の充実を図るということで、大型の施設整備費も入っています。
 次の○であるが、これはご案内のとおり、第3期科学技術基本計画に基づいて第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画が平成18年4月に定められています。まず最近問題になっている耐震化の整備を推進するということが4行目ぐらいに1つありますが、それとともに3つの柱、イノベーションを創出する若手研究者等の人材養成機能を重視した施設整備、それから国際競争力強化のための世界トップレベルの卓越した研究拠点の整備、もう一つは先端医療関係の大学附属病院の再開発整備ということで、全体を計画的に整備を図るということで1,355億円であります。
 それから次、2つ目の柱の競争的資金の取り組みということで、先ほど来ご説明があった科学研究費、科研費であるが、本年度目いっぱい240億円の積み増しをして、要求ベースで2,172億円ということであります。若手の研究充実とか、先ほど出ている新領域を充実させるとか、また共通的な基盤となるようなということで、いろいろな経費の中身もあるが、そういったわけで2,172億円の要求となっています。
 こういったものが先ほどの冊子の中に参考資料が入っておりますので、お時間のときに御覧になっていただきたいと思います。
 続いてグローバルCOEプログラムということで、これは高等局の予算ですが、345億円ということで、さきの21世紀COEプログラムの成果を踏まえて、さらに国内外の大学機関との連携ということで、若手研究者の育成機能の強化とか、国際的な卓越した教育研究拠点の形成といったものを進めて、重点的に支援したいということです。
 それから、世界トップレベルの研究拠点プログラムということで、これは科学技術学術政策局のほうであるが、すぐれた頭脳の獲得ということで、次のページですが、高いレベルの研究者を中核にした拠点の形成を目指すということで、これは71億円です。
 2ページ目の上のほう、人社の関係であるが、いろいろ委員会で議論いただき、そういった政策的・社会的なニーズに対応したような研究ということも含めて、豊富な学術資料のデータを有する知識のポテンシャル活用ということである。そういったようなことと、もう一つは、先ほど審議経過の中で少しご説明がありましたが、全国共同利用・共同研究拠点の整備を私立大学等にも拡大するといったことも含めて、13億円の概算要求です。
 (3)以下は日本学術振興会関係の経費ですが、まず特別研究員事業ということで、これは若手研究者、いろいろな仕組みがあるが、ポスドクターとか、例えば出産等で現場を離れた女性研究者の支援とか、そういったような枠組みがあり、170億円を要求しているところです。
 海外特別研究員制度、これも我が国の若手を中心として、国際的な視野に富む有能な研究者育成確保をしようということで、そういったみずからの研究計画をつくっていただいて、海外の学術機関に長期間(2年間)従事するということで17億円。
 それからもう一つ下は、国際研鑽機会ということであるが、これは先ほどの長期ではないが、中ほどにある若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラム(ITP)を実施するということであります。そういったようなことで9億円を要求させていただいています。
 最後に学術国際交流ということで、これも日本学術振興会の予算であるが、1つは各国の学術振興機関との連携により提案型、ボトムアップ型の国際共同研究というものを推進していこうということで、これは新しいプロジェクトであり、少し説明があるが、いろいろな各国が国際協調を実際にやるといった課題の解決に向けて、学術間の連携を図るということである。ボトムアップ型の国際共同研究ということで、新規6億円です。
 それから、外国人研究者の招へい・ネットワーク強化ということで、いろいろご説明してあるが、若手研究者とか著明な研究者、そういったような外国人を日本に招へいする。また、一たん招へいして、いろいろ経験を積んでいただいた方がそれぞれの母国に帰っていただいた後に、そういった方から研究者のコミュニティというか、ネットワークを形成していただきたいということで、そういったネットワーク強化を図るということで、60億円ということです。
   以上でございます。

【佐々木分科会長】

 学術関係の概算要求についてご説明いただきました。何かご質問はありますか。よろしいでしょうか。
 大分時間がたち、そろそろ終わりということであるので、以上で議事は終わりますが、事務局から何か連絡事項はありますでしょうか。

【門岡学術企画室長】

 次回の学術分科会の日程等については、日程調整の上、改めてご連絡させていただきたい。また、本日の資料については机上に残していただければ、郵送させていただきます。以上です。

【佐々木分科会長】

  それでは、これで終わります。

── 了 ──

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