学術分科会(第26回)・学術研究推進部会(第19回)合同会議 議事録

1.日時

平成20年4月8日(火曜日) 15時~17時

2.場所

KKRホテル東京 11階 「孔雀の間」

3.出席者

委員

佐々木分科会長、白井分科会長代理・学術研究推進部会長、中西部会長代理、飯野委員、井上孝美委員、上野委員、樫谷委員、鈴木委員、中西委員、西山委員、伊井委員、飯吉委員、小林委員、巽委員、塚本委員、垣生委員、水野委員

(科学官)
佐藤科学官、小山科学官、縣科学官、山内科学官、喜連川科学官、佐谷科学官、福島科学官、吉田科学官

文部科学省

林文部科学審議官、坂田官房長、藤嶋政策評価審議官、鈴木高等教育局企画官、岩瀬科学技術・学術総括官、戸渡政策課長、坪田科学技術・学術政策局企画官、德永研究振興局長、後藤主任学術調査官、伊藤振興企画課長、森学術機関課長、松永研究調整官、磯谷学術研究助成課長、袖山企画室長、匂坂研究開発局参事官、町田国語課長

4.議事録

【佐々木分科会長】

 それでは、ただいまから、科学技術学術審議会学術分科会(第26回)会合及び同分科会学術研究推進部会(第18回)会合を合同で開催いたします。
 配付資料の確認をお願いします。

【門岡学術企画室長】

 資料につきましては、お手元の議事次第の2枚目に配付資料一覧がございますが、ご確認をいただければと思います。資料1につきまして、ダブルクリップどめで一括して資料1−1、資料1−2、以下参考資料がダブルクリップどめ、それから資料2、国語に関する学術研究の推進について、1つダブルクリップどめをしております。資料3としてアルマ計画。それから、資料4−1、学士課程教育の構築に向けて。それから、冊子として資料番号は付しておりませんが、学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)という白表紙の冊子を入れております。それから、資料5といたしまして、データを少しつけております。
 以上でございます。

【佐々木分科会長】

 どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。
 きょうは幾つかの部会からのご報告等をお願いするわけでありますが、まず1番目が、「学術研究の推進体制に関する審議まとめ(案)」についてでございます。これにつきましては、私からまず簡単にご説明申し上げます。資料1−1ということでごらんいただきたいと思います。
 研究環境基盤部会では、一昨年12月より、国公私立大学を通じた学術研究機関における研究組織のあり方や、国による関与・支援のあり方等、学術研究の推進体制の今後のあり方について検討を行ってまいりました。現在は報告書(案)として取りまとめた「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ(案)」について、4月1日よりパブリックコメントを実施しておりまして、5月中をめどに最終的な報告書を取りまとめる予定としております。
 「審議のまとめ(案)」では、1、学術研究組織の整備についての大学と国の役割。2、国公私立大学を通じた共同利用・共同研究の推進。3、学術研究の大型プロジェクトの推進等について述べております。その中では、1番目として、学術研究組織の整備は、各大学が主体的に実施することが原則であり、各大学が自主的、自律的な判断により機動的、弾力的に組織編成を行うことが重要であること。2つ目として、他方、大学の枠を超えた共同利用・共同研究の拠点組織等については、国全体の学術研究の発展の観点から、国として重点的に整備を推進することが必要であること。3つ目として、その際には、これまでのように国立のみでなく、私立大学等の研究機能も活用して国公私立大学を通じて共同利用・共同研究拠点を整備していくことが必要であること。4つ目としまして、従来のような固定的な形態の組織に限らず、ネットワーク型の共同利用・共同研究の拠点形成も推進していくことが重要であること。5つ目としまして、大学に設置する共同利用・共同研究拠点の制度的位置づけを明確化するため、学校教育法施行規則等に必要な規定を整備すること。6つ目として、学術研究の大型プロジェクトは、研究者コミュニティによるボトムアップの議論と合意形成に基づき、学術研究全体の状況や国際的な動向を踏まえ、学術分科会において妥当性を審議し、国の学術政策として共同利用・共同研究体制により推進すべきであること等について、この中で述べているわけであります。
 本日は、事務局からの説明の後、お手元の資料1−1にあります審議のまとめ(案)及び、資料1−2にあります要旨をもとに、皆様からご意見をいただきたいと考えております。
 それでは、事務局より説明をお願いいたします。

【森学術機関課長】

 それでは、資料1−1に沿いましてご説明申し上げたいと思います。
 本件につきましては、この学術分科会には6月と9月の会議で審議経過の概要案ということで説明しておりますけれども、その後、議論がさらに加わりまして、また、修正等も行っておりますので、それらも含めまして改めてご説明申し上げたいと思います。
 1の基本的考え方のところでは、学術研究の意義、そして学術研究の政策的推進ということでまとめておりますが、この学術研究につきましては、この1ページ目の2の最初の○にありますように、研究者の自由な発想に基づいて主体的に実施されるということで、国としては、こういったボトムアップによる研究活動に対して必要な支援を行っていくことが基本であるとしております。
 その際の基本的な方向といたしまして、2ページ目をごらんいただきたいと思いますが、最初にありますように、学術政策の推進の方向としては、研究の多様性の確保ということ、それと同時に、卓越した研究拠点の形成、この2つの方法を基本的に推進すべきだとしております。
 その上で、3ページのところ、学術研究組織の現状と課題というところは、これは現在の学術研究に関しますと国公私立大学等の、あるいは大学共同利用機関等の現状について記述しておりますけれども、3ページの初めのところでは、研究所でありますとか、研究センターというような研究所のミッションを特に掲げて設けられている組織の意義といいますか、そういったものの役割について記述しております。この中では、特にこういった研究所等の研究組織においては、共通のミッションのもとに一定の人的・物的資源を継続的に備えまして、さまざまな研究活動を組織的に行い、継続的に展開していくことで、そういった成果を結集、集積して、さらに継承していくことができる。それを人材養成にも役立てることができるというような特色があり役割があるとしているところでございます。
 そして、4ページから5ページのところでは、国立大学が平成16年の国立大学法人化による変化の状況、それによります学内での資源配分と国全体の学術研究の発展の調整の必要性というようなことを記述しておりますし、私立大学においては、私立大学が果たしております教育活動に対する貢献、そして学術研究におきます特色的な活動といった点について記述しているところでございます。
 そして、さらに5ページにまいりまして、最初の○のところでございますけれども、大学間の連携といったもの、国公私立大学を通じた連携というものが近年進められるようになっている。大学間協定の締結やコンソーシアムの形成といったもの、さらに、そういった国公私立大学の枠組みを超えた連携の例も増えてきていると思いますし、共同で研究組織を設置することも一つの方策として考えられるということでございます。
 こういった状況を踏まえまして、この大学全体を視野に入れて今後の学術研究の組織の整備のあり方を検討することが必要であるとしております。
 それで、こういった研究所等の研究組織の整備に関する大学と国の役割ということでございますけれども、基本的な原則といたしましては、大学における主体的な組織整備ということで、それぞれの大学が主体的判断に基づいて実施するのが原則であるということでございます。
 それを原則としながら、6ページにまいりまして、国の役割として、国全体の学術研究の発展の観点から必要な中核的拠点となるべき研究組織については、研究者コミュニティの意向を踏まえながら、国の学術政策として重点的に支援を行う必要があるとしております。
 さらに具体的には、そのような組織というものといたしましては、大学の枠を超えて研究者の知恵を結集させるような共同利用・共同研究の拠点といったものの支援をしていくというようなことが特に重要だといたしまして、こういったものについては、先ほど大学が主体的に自主的に行うことを原則としておりますけれども、これらの拠点については、個別の大学の判断により設置改廃を行うべきでなく、研究者コミュニティの意向を踏まえながら、国の政策として一定の関与を行っていくことが必要であるとしております。
 また、その下の○のところで、新たな学問分野に係る研究組織でありますとか、あるいは、比較的小規模でありましても、唯一の研究拠点となるような組織といったものについても、研究の多様性の確保の観点からこれを支援していくことが重要であるとしております。
 こういった基本的な考え方から、7ページの上にありますように、国立大学の附置研究所等に対する国の関与のあり方を見直してはどうかという提案をしております。現在、国立大学法人の附置研究所の設置改廃については、中期目標の変更の手続を行うことになっておりますことから、文部科学大臣によるそういった手続が必要になってくる。研究環境基盤部会において審議の上で、そういった手続を行うことになっておりますけれども、共同利用・共同研究拠点以外の組織については、各大学の主体的な判断によります機動的、弾力的な組織編成を可能とする観点から国の関与を廃し、次期中期目標計画期間、平成22年度からになりますけれども、国の関与を廃しすべきであるとしております。こういうことを検討するということにしております。
 あわせまして、それぞれの大学において重要な研究組織については、それぞれの大学の中でしっかりと位置づけていくべきであるという点をつけ加えております。
 3、共同利用・共同研究の推進というところでございますけれども、こういった国として重点的に支援すべき共同利用・共同研究拠点ということでございますけれども、これまで全国共同利用のシステムということで発展してきておりますが、そういった共同利用・共同研究拠点の意義について最初に記述しております。これまでの我が国の学術研究の発展への貢献がございますし、また、こういった共同利用・共同研究ということについては、全国の関連研究者が共同して研究を進めるということで、その研究の進め方も有効性が高いということ。それから、また資源の効率的な活用の観点からも非常に有用であるということで、共同利用・共同研究の充実を図っていくことが重要であるとしております。
 その下の○のところでは、より具体的に共同利用・共同研究の機能といったところを記述しておりますけれども、こういった共同利用・共同研究の今後の方向性ということで、8ページにございます。1つは、国公私立大学を通じた拠点の整備ということで、これまで全国共同利用ということにつきましては、国立大学の附置研究所、研究センター等に対して、これを共同利用の位置づけということで整備してきたわけでございます。今後の整備に当たりましては、国全体の学術研究の発展の観点から、国公私立を問わずに大学の研究ポテンシャルを活用して、公私立大学も含めて共同利用・共同研究拠点として位置づけて重点的に支援すべきであるとしております。
 その際に、制度的位置づけの明確化ということで、現在、共同利用の研究所等の位置づけというものは、国立大学として位置づけてきているということもございまして、法人化後においては、そういった中期目標、中期計画の記載の中で位置づけておりますけれども、まず、その根拠の規定といったものを整備する必要があるのではないかということで、国公私立大学を通じた共同利用・共同研究拠点について、学校教育法施行規則等に必要な規定を設けることが適当であるとしております。
 その上で、研究者コミュニティの意向を踏まえて、必要な拠点の整備を行っていくということでございます。
 その際には、9ページにありますように、ネットワーク型の拠点の形成ということで、従来のような一つの研究所というものに、共同利用としてそこにみんな集結してくる形、これも今後もあり得ますけれども、それだけでなくて、ネットワーク型の研究推進が可能となるような形態も推進すべきであるということで、複数の研究所が一体となって、いわば一つの研究所を構成しているというようてネットワーク型の研究組織がつくられて、そこに全国の研究者がぶら下がっていくというような拠点が考えられるのではないかとしております。
 3の共同利用・共同研究拠点のあり方は、これはそういった共同利用・共同研究拠点が基本的に備えるべき要件というようなものでございまして、一つは運営体制、これが一番中心となるわけでございますけれども、開かれた運営体制としていく。より具体的には、その運営に対して外部の研究者の意見を反映する仕組みを整えていく、そういった外部の意見も取り入れた形での運営を図っていくということでございます。
 それと同時に、そういった共同研究については公募をしていくということ。
 そして、10ページにまいりまして、共同研究の推進に当たっての必要な支援の体制を整えていく。人的にも法律的にも整えていくということでございます。
 さらには、11ページにまいりまして、そういった研究の拠点が人材育成にも積極的に貢献をしていきますし、国際的な視点ということで、こういった拠点、拠点が当該研究拠点の国際的なレベルの拠点として国内をリードしていく役割が求められるということでございます。
 さらに、こういった拠点におきます評価でありますとか、そういった部分についても定期的に行っていく必要があるということとしております。
 さらに、この4の共同利用・共同研究拠点の整備でありますが、これはその設置に対して国としてどう整備をしていくかということでありますけれども、特に12ページの下のところにありますような、拠点の新設から手続等ということで、これについては、こういった研究者コミュニティの要請に基づいてそれを設置しようという大学、大学共同利用機関等から案を出していただいて、それを学術分科会において審議をしていくということでございます。
 こういった拠点については、13ページにありますように、国として定期的な評価と見直しを行っていくということでございます。
 こういった共同研究拠点となっているものについての組織の改廃といったものについては、やはりその背後にある研究者コミュニティもございますので、そういった意向を踏まえながら学術分科会で妥当性を審議していくということでございます。
 その経費の負担については、この共同利用・共同研究拠点の必要な経費というのは、国全体の学術研究の発展に資する経費ということから、国において安定的な財政措置を行うことが重要であるということでございます。
 その次の、大学共同利用機関法人に期待される役割でございますが、その辺については、特に14ページにございますように、大学共同利用機関等、複数の大学、大学共同利用機関法人が、そういった大学共同利用機関を設置していることもございますので、ネットワークの中心としての役割を果たしているといったもの、関連分野全体をリードしていく中核的な機能、役割を果たすことが期待されるとしております。
 最後に、学術研究の大型プロジェクトの推進というところでございますけれども、これは学術研究の大型プロジェクトの意義というところで、特にこういった学術研究のボトムアップ型の大型プロジェクトというものの推進の意義について最初に記載しておりまして、こういった研究者の知的好奇心、探究心に基づき真理の探求を目指すものであって、その推進のための意思決定に当たっては、研究者コミュニティの自主性、自律性を確保する。そういった点でトップダウン型の大型プロジェクトとは異なる点であるとしております。
 そういった観点から、その推進に当たりましては、大型でございますので、計画的に推進することが必要であるということでありますけれども、それについては計画段階から幅広い研究者コミュニティの意向を踏まえるための工夫が必要であるということで、そういった新たなプロジェクト推進に当たりましては、推進母体となる大学共同利用機関法人等の拠点組織が計画をまとめまして、国に対してそういった提案をし、それを学術部会等で妥当性を審議していく。そういった合意形成に当たっては、当該研究分野だけでなく、幅広い分野の研究者コミュニティの合意が必要であるとしているところでございます。
 さらに、そういった大型プロジェクトについての評価ということで、16ページにございますように、これについての定期的な評価が必要であるということでございます。きょうの議題でもアルマ計画の委員会がございますけれども、そういった考え方でございます。
 以上が審議のまとめの全体でございまして、あわせて、参考資料のほうをちょっとごらんいただきたいと思います。まとめてございますけれども、参考資料3は国公私立大学を通じた共同利用・共同研究の推進ということで、先ほど申し上げたような共同利用・共同研究のシステムといったものが、この関連の研究者が拠点に参加してくるということで、こちらで共同利用・共同研究拠点のあり方ということで、特にこの真ん中の段の右側にあります、開かれた運営体制をとっていくというようなこと。外部の関連の研究者のコミュニティの意見も反映していくことによりまして、その左側にありますような関連の研究者がそこに参加していく、全国の研究者が参加していくというような形でございます。
 これについて、その次の参考資料4にございますように、ネットワーク型の共同研究の拠点を今後推進していこうというのがこの報告の一つの柱でございまして、ネットワーク型の形成というのは、左上のところにございますように、中核拠点の設置とネットワーク形成ということで、ここにA、B、C、D、Eとございますけれども、この5つの研究組織がいわば一つのネットワークを形成して、一つの研究組織のような形になって、これの運営のための仕組みを整えていて、そこにさらに全国の大学の研究者が参加してくるというような形を進めていくことができるのではないかということでございます。
 それに対して、右側のヴァーチャル拠点の設置、これも、この左側と右側とが典型的に2種類あるというわけでもなしに、いろいろな形態が考えられるとは思いますけれども、例えばの形でございますけれども、これはいわば研究組織丸ごとというよりは、それぞれのB、C、Dの大学の先生方と、そして中心となるA拠点との先生、これらが一つの研究所を組織するというような形で、そのB、C、Dの先生はそれぞれの大学にいながらというような形で、一つの研究所を組織していくというようなこと。それが共同研究拠点の位置づけとなって、他の大学の先生方も参加していくというようなイメージ。こういったような、従来の形からはより柔軟な形の研究所、研究拠点の組織も考えられるのではないかということでございます。
 こういった課題については、さらにそれぞれの研究者の方々で、よりよい適切な形を検討していっていただきたいと思っているところでございます。
 最後に、参考資料5でございますけれども、これは現在の国立大学の附置研究所等でございまして、国立大学附置研究所は60ございます。この中の赤い字であります20の研究所、これが全国共同利用の位置づけになっておりますけれども、この審議のまとめの意図しているところは、ここにありますような国の附置研究所の中でも、全国共同利用の形、共同研究拠点を目指すものについては、いろいろとそういった形を考えていただきたいと思っておりますし、国立大学に限らず、国公私立大学を通じてこういった形の共同利用・共同研究拠点の位置づけをしていこうということが、この柱でございます。
 説明は以上でございます。

【佐々木分科会長】

 それでは、ただいまの説明に関しまして、ご意見、ご質問等ございましたら、お出しいただきたいと思います。
 特にございませんでしょうか。それでは、パブリックコメントの内容も見つつ、今後の審議を進めていくようにいたしたいと思います。
 それでは、次に2つ目の議題に移ります。国語に関する学術研究の推進についてという議題でございます。本件につきましては、飯野委員からご説明をお願いします。

【飯野委員】

 それでは、ご報告申し上げます。
 国語に関する学術研究の推進に関する委員会は、社会における国語に対する関心が高まっていること、そしてまた、平成19年2月の文化審議会答申で、大学等における国語に関する調査研究の充実が提言されたことなどを踏まえまして、ことし1月に国語に関する学術研究の当面の重点研究分野や研究組織のあり方などについて検討するため、学術研究推進部会のもとに設置されました。この委員会では、これまで集中的に審議を行いまして、このたび、報告案を取りまとめましたので、ここにご報告申し上げます。
 報告案の中では、国語に関する学術研究を推進するためには、大学等に散在する学術資料を共同利用することや、関連分野の研究者による共同研究を積極的に行うことが重要であり、そのための大学共同利用機関の設置が必要であると提言しております。また、大学共同利用機関の設置に当たりましては、独立行政法人国立国語研究所を改組・転換し、この研究所が行っている言語データベースの構築などを引き続き行う一方、今後、理論研究や国語の歴史的変化の研究などの充実を図るとともに、言語学にとどまらず、文化の研究としての観点から国語をとらえる研究が求められると述べています。
 現在は広く国民の意見を聴取するため、今月4日から30日の期間で意見募集を行っているところでございます。
 報告案の概要につきましては、事務局から補足説明をお願いいたします。

【森学術機関課長】

 資料2−1をごらんいただきたいと思います。「国語に関する学術研究の推進について」報告(案)ということで、はじめにのところは、これは文化審議会の答申等を踏まえまして、その文化の基盤としての国語の重要性を踏まえて、大学等における国語の調査研究の充実を図ることが必要ということで、国語に関する学術研究の組織の必要性を最初に記述しております。
 それを受けて、2のところで我が国の国語に関する学術研究の現状と課題ということで、主に2点を上げております。1つ目は、研究資料や学術資料の共有の必要性ということで、学問の全体像が見にくくなっていくというような問題点もある。特に研究成果や学術資料が全国の研究室に散在しているのではないかという問題点。それから、2点目として、国語に関する研究者の養成ということで、国語に関する学術研究に携わる人、研究者というものが少なくなっているのではないかというような問題点も指摘があったところでございます。こういった課題を踏まえて、大学等の関係機関が一体となって国語に関する研究を推進することが必要であるとしております。
 その際の今後の特に推進すべき研究分野でありますとか、研究方法を次の3に記載しております。特に重点を置いて推進する必要のある研究分野ということで、3ページのところに4点ほどございます。1つ目は、言語資料のデータベースであるコーパスの構築等、こういった言語資料の収集・整理の推進ということでございます。2点目は、理論研究ということで、言語資料の分析結果から法則を発見して検証するなど、そういった理論研究の推進。3点目には、こういった国語の歴史的変容、あるいは地域的、社会的な変異にどういったものがあるのか。さらに4点目といたしまして、国際的な研究協力を推進しながら、他言語との対照研究を行うというようなことでございます。
 新たに展開する必要のある研究形態・方法ということで、この辺については4ページにございますように、それぞれの大学が持っている研究の知見を共有し、学問体系全体として共同研究を推進していくということ。さらに、学術情報が簡単に入手できるような基盤の整備。そして、さらには関連分野の共同研究ということで、言語情報処理研究や言語取得研究といったもの、そういったことも含めて関連分野を含めた共同研究を推進するというようなことが書かれています。
 4にまいりまして、そういった現状、課題等を踏まえて、大学共同利用機関の設置の必要性ということが書かれております。特に、こういった学術資料の収集、整理、提供といったものの共同研究の場となる中核的な機関の必要性。そして、大規模な全国的な調査研究などを推進するための中核的な機関の必要性。そして、5ページにまいりまして、外国人研究者を積極的に受け入れていくというような、海外の日本語研究者に対しても一定の方向を示すような学術研究機関ということ。さらには、文化の研究としての観点からの我が国の国語をとらえる研究。こういった研究を推進するための中核的研究機関として、大学共同利用機関を設置することが必要であるとしております。
 その際の設置のあり方でございますけれども、国立国語研究所が、現在、国語に関する調査研究機関としてございますけれども、こういった国語研究所においての大規模な調査研究、「方言文法全国地図」の作成等、そういった蓄積をしております。これらをさらに大学におきます研究に生かす観点から、この国語研究所を大学共同利用機関に改組・転換することが適当であるとしております。
 その大学共同利用機関とした場合の置く場所でございますけれども、人間文化研究機構が人間の文化活動並びに人間と社会及び自然との関係に関する学術研究を担うという大学共同利用機関でございますので、そういった人間文化研究機構に設置することが望ましい。したがいまして、新しい大学共同利用機関は、人間文化研究機構における検討を踏まえて、同機構のもとに設置されることが望ましいとしております。その際、改組・転換に関しても、その大学共同利用機関の名称については、国立国語研究所を引き継ぐことが適当であるとしております。
 なお、6ページにまいりまして、この国語研究所を改組する場合に、国語研究所においては日本語教育情報資料の作成・提供に関する事業を行ってきておりましたけれども、新しい大学共同利用機関においても、言語学の研究から得られます日本語教育の基盤となるデータ、そういったものを通じまして一定の貢献を行うことが望まれますけれども、他方、またこういった日本語教育に関しては、多くの大学において実施されているということもあります。さらには、日本語教育に関する基準の開発等についての事業というものは、政策的な必要性の観点から、これは文化庁として日本語教育の振興というものの政策でございますので、そういった観点から別途検討を行うことが望ましいとしております。
 さらには、大学共同利用機関と大学の連携の必要性、大学共同利用機関が大学の研究者のネットワークの中心となって進めていく必要があるとしているところでございます。
 最後に5としまして、大学共同利用機関の組織整備の基本的な考え方でございますけれども、基本方針として、我が国の国語である日本語の国際的な研究拠点。その対象として、現代日本語研究を中核としながら、歴史研究を含む言語研究諸領域を包括すること。それから、先ほどありましたような関連する分野との共同研究を進めるというようなことでございます。
 研究領域の設定としましては、そこにありますような4つの部門といいますか、4つの研究領域を基本としつつ、これらの領域を超えた学際的な研究でありますとか、あるいは特定の課題に機動的に取り組むようなプロジェクト研究が行われることが望ましいとしています。
 主要な事業としては、資料・文献の収集、整理、提供といったもの。そして、共同研究の推進。国際交流・連携の強化ということでございます。
 組織・運営については、これは大学共同利用機関でございますので、先ほどの基盤部会の報告にもありましたけれども、研究者コミュニティの意見を基盤とした運営を確保するために、外部の研究者が過半数を占める運営会議を中心とした運営ということになっています。そして、柔軟な組織の形成ということ。そして、最後に大学院教育への協力ということで、大学共同利用機関が総合研究大学院大学の基盤機関となっていることから、大学院に積極的に協力するとなっております。
 以上がこの報告案の概要でございまして、今後のスケジュールといたしましては、事務局としては、これらの報告等を踏まえながら、人間文化研究機構でより具体的な検討を行っていただくとともに、必要な法令改正でありますとか、予算等の検討というものを進めてまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明につきまして、ご意見、ご質問等ございましたら、お願いいたします。はい、伊井委員どうぞ。

【伊井委員】

 3点お尋ねしたいんですが、日本語に関する本格的な研究所というのはこれまでなかったものですから、非常にうれしく思っているわけなんです。と同時に、国文学研究資料館に私いますけれども、この2月に立川に移転しましたが、ちょうど隣の敷地に国立国語研究所がございまして、そこで、3点ばかりお聞きしたいのは、1つはお読みになった5ページ目の一番最後のほうでありますが、「当面、『国立国語研究所』を引き継ぐ」という言葉でありますけれども、実は、日本語を研究しているコミュニティの背景というのは、非常に大きな、一番でっかい、さまざまな学会を全部含んだ国語学会というのがあったのでありますが、国語学会というのはなくなりまして、日本語学会になってしまったと。そういったコミュニティとのかかわりというのが途切れてしまうことになるのでありますけれども、当面というのは、どういうニュアンスがあるのだろうかというのが1点でございます。
 2つ目でありますけれども、どうしても現在の国立国語研究所を念頭に置かなくちゃいけないんでしょうけれども、7ページを見ますと、研究領域とか主要事業というのがございまして、国立国語研究所にいらっしゃる方がこれをかなり担当できないということになりかねない。そのときに、こういう新しい領域ができますと、現在の国立国語研究所の方は、どのように新しい組織に入っていくんだろうかというのが2点目でございます。
 3つ目は、多分これは昨年の閣議で決まったことだと思いますが、いろいろな廃止というのがあって、大学共同利用機関に移管するということがあったと思いますが、そうすると、ことし中に組織をきちんとしなくてはいけない。予算を含めて、概算要求しなくちゃいけないんですが、これはこれからの見通し、そういう予算だとか、新しい組織だとか、人をどういうふうに張りつけるかとかというようなことは、どこでどのように進めるのか。
 ちょっとこの3点をお教えいただければと思います。

【佐々木分科会長】

 それではどうぞ。

【森学術機関課長】

 今回、国語に関する研究の大学共同利用機関の設置の方法ということで、この委員会で議論いただいたわけでございまして、この設置をするということであれば、スタートにおいて国立国語研究所ということで改組しますので、改組して大学共同利用機関にし、そして、それでスタートしましょうということでございます。
 その後については、人間文化研究機構に置かれれば、人間文化研究機構のもとに置かれて活動していくことになりますので、その後のいろいろな展開ということはあると思いますけれども、スタートにおいては国立国語研究所ということでスタートしましょうということでございます。
 最後の具体的なことについては、先ほども人員につきましても、また、予算等につきましても、先ほど私申し上げましたように、今後、この人間文化研究機構においても検討する準備をされておられると伺っておりますので、そこでの具体的な検討を踏まえまして、実際に大学共同利用機関としてスタートする場合には、その中での組織の構成、そして実際にどういう人を採用してやっていくかというようなことについての検討が必要になってきますので、そういった検討については人間文化研究機構を中心として検討がなされるというような手続。それに対して、文部科学省としてもそのご意向をお聞きして、来年度の4月のスタートになるということであれば、そのスケジュールに向けて必要な予算要求等をやっていくと。また、必要な法令改正の手続を進めていきたいというようなことで考えております。

【佐々木分科会長】

 伊井委員よろしいですか。

【伊井委員】

 はい。

【佐々木分科会長】

 では、ほかの委員から。
 どうもありがとうございました。それでは、ただいまのようなご意見につきましては、今後の審議において十分反映していただくようお願い申し上げます。
 次に、3番目として、アルマ計画評価作業部会の設置についてご審議をいただきます。この案件については、まず事務局から説明をお願いします。

【片岡参事官】

 それでは、資料3に基づきましてご説明させていただきます。アルマ計画の評価作業部会の設置につきまして、お諮りするものでございます。
 設置の趣旨につきましては、アルマ計画につきましては、銀河や惑星等の形成過程を解明することを目的にしまして、日・米・欧の三者の国際協力によりまして、南米チリのアタカマ高地において80台の高精度電波望遠鏡等の建設・運用を行うものでございます。80台のうち、日本では16台を担当しているということでございます。
 この計画につきましては、平成15年1月、当時の学術分科会のもとで基本問題特別委員会の下に天文学研究ワーキンググループをおつくりいただきまして、事前評価を行いまして、日本のアルマ計画への参加が了承されたということでございまして、平成16年度からアルマ計画に参加し、建設に着手しているということでございます。
 現在、平成23年度の本格運用を目指しまして、8年間の計画で建設計画が進んでいるということでございまして、担当しておりますアンテナの製造、受信機等の製造が進められているということでございまして、アンテナの一部、現在3台でございますけれども、これが既にチリの現地に設置されまして、初期機能確認試験を実施しているところでございます。
 このような計画の進捗状況等につきまして、前回の事前評価から3年以上が経過しておりますので、評価作業部会を設置して中間評価を実施するという趣旨でございます。
 評価の内容につきましては、事前評価における留意事項についての対応、建設計画の進捗状況、国際的運用計画、国際協力の状況につきまして専門的・技術的な観点から評価をいただくということでございます。
 設置の形態につきましては、学術研究推進部会の下に、評価作業部会としてアルマ計画評価作業部会を設置するということで、庶務につきましては、関係課室の協力のもと、研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付において行うということでございます。
 以上でございます。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございました。
 ただいまのご説明にありますように、アルマ計画評価作業部会は、学術研究推進部会のもとに設置したいということでございます。お配りした参考資料、学術分科会運営規則において、学術研究推進部会の調査審議事項として、「特定の分野における学術研究の推進のための具体的な方策及び評価に係る事項」と規定されているように、この作業部会を学術研究推進部会のもとに設置するのが適当ではないかということでございます。この件につきまして、こういう形で提案がなされているわけでありますが、これにつきまして何か質問等ございますでしょうか。
 特にないということでありますと、ただいまご提案がございましたように、アルマ計画評価作業部会を学術研究推進部会のもとにこれを設置するということでよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【佐々木分科会長】

 それでは、ありがとうございました。そのようにさせていただきます。
 今後、アルマ計画評価作業部会の審議状況につきましては、適宜、本分科会または学術研究推進部会にご報告をいただいて、中間評価については本分科会及び学術研究推進部会において審議をいたしますので、そのような手続になることをご確認いただきたいと思います。
 なお、この評価作業部会に所属する委員の人選の件でありますが、これはお配りしている参考資料、学術研究推進部会運営規則第3条第3項の規定に基づきまして、学術研究推進部会長、私の隣にいらっしゃいます白井先生が部会長をされているわけでありますが、学術研究推進部会長の指名とされておりますので、この点もよろしくお願いいたします。
 そういうことをご確認いただければ、この3までの議題は終わりということでございますが、よろしゅうございましょうか。
 そこで、その他でありますが、学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)につきまして、議論をさせていただきたいと思います。
 先日の中央教育審議会大学分科会で取りまとめられました「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」について、事務局より報告をお願いし、それを受けて皆様方からいろいろご意見等をいただければと思います。
 それでは、事務局から説明をお願いします。

【鈴木高等教育政策室長】

 それでは、お手元の資料4−1と白表紙の冊子がございますが、これらに基づきまして簡単にご紹介させていただければと存じます。
 資料4−1でございますが、まず、審議の経緯でございますけれども、中央教育審議会の大学分科会におきましては、学部教育——ここでは学士課程教育と称しておりますが、社会の信頼にこたえて、国際通用性を備えた学士課程教育の構築を目指すと、そのような基本姿勢に立ちまして議論を重ねてまいりましたが、昨年9月に制度・教育部会のもとに置かれております学士課程教育の在り方に関する小委員会、こちらにおきまして、「審議経過報告」というものを取りまとめて公表したところでございます。
 その後、これに関します各界のご意見を踏まえまして、制度・教育部会を中心にご議論を進めていただきまして、去ることしの3月25日に開催されました大学分科会におきまして、こちらの部会からの報告という形で、こちらの「審議のまとめ」と題するものが提出に至ったという経緯でございます。
 2番目に、この「審議経過報告」からの変更点が記載されておりますが、小委員会の「審議経過報告」につきましては、こちらの学術分科会におきまして昨年11月2日に事務局のほうから概略をご紹介、ご報告させていただいたところでございます。ご報告申し上げた内容、その構成や基本的な内容につきましては、基本的には昨年の小委員会のものをベースとして修正を行ったというようなことでございます。
 お手元の白表紙の冊子でごらんいただきますと、表紙をめくっていただきますと、目次というものがございます。こちらの目次の中で全体構成を示しておりますけれども、はじめに、おわりにを除きまして、3章だての構成となっておりますが、第1章におきましては、大学を取り巻くさまざまな諸状況、グローバル化、あるいは進学率が50%を超えるというような、いわゆるユニバーサル段階、そういった事柄等をめぐる基本的な認識というものを第1章で記しております。
 その上で、第2章で改革の基本方向、サブタイトルとして競争と協同、多様性と標準性の調和をということを掲げておりますが、全体の改革方策のエッセンスのようなものをこの第2章に集約いたしております。
 また、続く第3章で改革の具体的な方策というものを提起しておるところでございますが、こちら第3章は5つの節から構成されております。こちらは、大学、学部の出口と中身と入り口、出口、すなわちこの学位の授与、学習の評価という問題、中身、教育内容、方法、入り口、それから高等学校との接続、そういった出口と中身と入り口のそれぞれの改革の方策について一体的に進めていこうということで、それぞれ1節を設けて議論を重ねて提言をいただいたというところでございます。
 そういった出口、中身、入り口の改革を実際に運用していくに当たりまして必要な条件整備、環境整備といたしまして、この教職員の職能開発及び質保証のシステム、そういった問題について4節、5節で記述をしておるところでございます。
 このような全体の構成、考え方につきましては、先般の小委員会の報告を基本的に踏襲しているということでございます。
 ただ、その報告に加えまして、この後ろの目次にございますとおり、さまざまな参考資料、あるいは図表データ、こういったものを多く新規追加しておりますので、全体としましてはかなり分量が大部になっているところでございます。本文は50ページほどの資料でございますが、全体の骨子及び概要につきましては、巻末の237ページ以降に——237ページはごく1枚にまとめました骨子でございますが、さらにその次のページからは4枚にまとめた概要がございますので、そちらのほうをごらんいただければ概略はご理解いただけるのではないかと存じます。
 修正点に関しましては、こちらの資料4−1の枠囲いの中にもございますとおり、「審議経過報告」に対して寄せられましたさまざまなご意見、あるいは情勢変化を反映したものであるということでございます。こちらの中では、OECDの動向をはじめとする情勢変化につきましての例示をいたしておりますが、大学分科会内外の意見ということにつきましては、昨年ちょうだいいたしました、こちらの科学技術・学術審議会からのご意見ということも踏まえましての修正をさせていただいたところでございます。
 例えば、今回ご提言いただいている中身としまして、学士の能力、学士の証明する能力とは何かと。そういう意味で、出口管理というものをどう考えるかということが一つの論議の焦点になったところでございますが、この中で一つのポイントになっておりますのが、やはり欧米のいろいろな改革の状況を踏まえて、いわゆるラーニング・アウトカムと呼ばれる学習成果というものをどのようなことを目指すのかを明確にしようということで、日本の大学が授与する学位の証明する能力に関しまして一応の参考指標を示そうということが今回の提言の中にございました。この中では学士力という言い方が使用されておりますけれども、これに関しまして、昨年のこちらの学術分科会からのご意見につきましても、学士力を定義することについては一定のご理解をいただいたところでございます。しかし、その水準というものを一体どう考えるのか。それはあくまで各大学が自主的に考えて厳格に成績評価を運用していくのが本来の姿ではないかというご指摘をちょうだいしたところでございます。
 こうした点も踏まえまして、今回の学士力等の提言に関しましても、記述を充実、補足し、そちらのそういった水準というものの考え方は、あくまでそれぞれの大学が判断すべきものであるということ。また、さまざまなそういった質の保証の枠組みについても、これについて国のほうで一律にそういった水準設定をするという考え方ではなく、各大学、あるいは大学団体の役割、機能が重要であるということを強調し、さまざまな補足、修正をさせていただいているところでございます。
 そのようなことの一つのあらわれといたしまして、本文の構成上におきましては、質保証の中におきまして、大学団体の役割・機能ということを、特に小さな節を設けて記述を補っているというところが特徴としてございます。
 修正点の大まかなところは以上でございますけれども、現在、パブリックコメントを開始しておりまして、それにつきましては5月7日までの意見募集ということでございます。こちらのほう、また後日ごらんいただきまして、ご意見等ございましたら、高等教育局の事務局のほうへお申しつけいただければと存じます。最終的には、さらにこういった意見募集でいただいたご意見を踏まえながら、中教審全体としましての、夏前を目途としての答申を目指して議論をさらに重ねていきたいと考えているところでございます。
 この紙の裏をめくっていただきますと、文部科学省といたしまして、今回のこの審議のまとめを受けた取り組みに関しましての考え方についてまとめて記載いたしておるところでございます。最終的には、答申というものをいただいてからというのが本来でございますけれども、今回の審議のまとめというものの内容について、可能なものは逐次、文科省としても実行していこうということでございます。まずは、さまざまな場、機会を通じまして、今回の提言の内容というものを周知して、それぞれの大学の主体的な改善のヒントとしていただくことを考えておりますが、特にこの4月からは、新しい大学設置基準が施行されるということで、それぞれの学部・学科におきます教育研究の目的、あるいは成績評価基準というものを明示する、あるいは授業計画を策定する、あるいは教職員の研修、ファカルティ・ディベロップメントの実施などについて規定が整備されたこともございますので、そういった対応が各大学においてきちんと充実した形でなされるよう、今回の提言を参考としてお取り組みいただくと。また、それに関するフォローアップというものをさせていただきたいと考えております。
 また、予算面におきましては、昨年の学術分科会でも、こういった提言内容を実際に実行していくためには、どのようなツール、施策があるのかというお尋ねをちょうだいしたところでございますが、20年度の予算案におきましては、種々の新規の事業、あるいはこれまでの継続事業などを通じまして、さまざまな学士課程教育の改善のためのすぐれた実践、先導的な取り組みを支援していこうということを考えているところでございます。資料の中では、その中の幾つかの事業データをご紹介しておりますが、そのようなことで事業を円滑に進めてまいりたいと考えているところでございます。
 その他、4枚目以降についてはごらんいただければと存じますが、さまざまな課題、まだ今回のご提言の中では具体化に十分至っていないような論点などもございますので、質の保証、大学教育の質を一体どう考えていくのかということについては、引き続き中央教育審議会といたしましても大学分科会の中で議論を進めていく。あるいは、必要に応じて日本学術会議との連携なども図りながら、さまざまな観点からの議論を進めていきたいと、そのように考えているところでございます。
 以上でございます。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございました。
 昨年秋ですか、最初に経過報告をいただいたときに、いろいろな議論が出たように記憶しておりますけれども、いかがでしょうか。何かご質問等ございませんでしょうか。
 それでは、白井委員からどうぞ。

【白井分科会長代理・部会長】

 これは労作だともちろん思うし、大学はこういう方向で努力しなきゃいけないというのは非常に賛成というか、よりいい答申というか、検討されてきているとは思ってはいるんですが、ただ、これ全体のトーンを見ると、諸外国と比べて、一体、大学教育というのをどのぐらいの量とか質で国内に、日本の中では位置づけようとしているかということはあまりよく見えないんですよね。大学はこういうのが足りないんじゃないか、こういうのが足りないんじゃないか、これをやったほうがいい、これもやったほうがいいというのは、それはわかるけれども、それをやるのには非常にコストがかかるんですね。そのコストについては、日本はどちらかというと私学が多くて、そこら辺が父母の負担でやっているからちょっとよくないんじゃないかとか、非常に遠慮した記述しかないんですよ、この中には。もうちょっと赤裸々に書いていただけないでしょうか。要するに、正確なことを。
 一体、どのぐらいお金がかかると認識しているのかということがないと、要するに、どのぐらいやるつもりなのか、量と質と、質の保証とおっしゃるとすれば。その質の保証をやるためにはどのぐらいのコストがかかるのかということの考え方がないと、これが国のレポートとして出ていったときに、予算措置なんかに結びつかないと思う。皆さん、これに従って努力しなさいと、今の大学はね。それはよくわかっている。大学がやるのはもちろん結構で、やらなきゃいけないと思うんだけれども、それだけでできない問題を山ほど抱えているから、また問題なんだと。そうすると、OECDの標準や何かからいっても、日本の高等教育の1人頭はかかっていないんですよ。明らかにね。そうすると、それは一体どれぐらいかけるのが、まあ、大学によっていろいろな状況があったり、いろいろあるだろうけれども、そういうのを少し整理した上でどのぐらいかけるのが妥当だと思っているのか。そのうち国費は一体どのぐらい投じられるべきなんだろうかと。要するに、それはだれが高等教育の負担をするのかということについても、一定のことをちょっと書き入れてほしいというのが希望です。

【佐々木分科会長】

 質問というより希望だそうでありますが、希望はさることながら、何かそういうことについての議論はございましたか。何かあれば。

【鈴木高等教育政策室長】

 そういった意味で、確かに高等教育財政の問題そのものが今回の審議事項の中心であったわけではないという、そういった性格はございますが、ただ、ご指摘のとおり、ここで種々触れられております教育内容・方法の改善、やはり全体の認識として、このユニバーサル段階、進学率が50%を超える、ともすると過剰と言われる規模について、それを積極的にポジティブにとらえていこうと。ただ、そういった量的拡大を積極的にとらえながらも質の維持向上を図るということを、いわば二兎を追おうとするからには、これはやはり相当の手間暇、コストがかかるだろうということは、この審議の過程でも各先生からも強調がなされてきたところでございます。
 そういった意味合いで、何か数字的な目標のようなものはこの中でございませんけれども、財政支援をはじめとする多角的支援、そういったものを拡充していくことが大事だというようなことは総論としてはご指摘をいただいております。
 また、一方で、並行して教育振興基本計画のご議論などもありましたことから、大学分科会の中でも、安西分科会長をはじめとする先生方が、例えばアメリカ並みの教育研究環境を実現しようとするならば、やはり公財支出含め、1人当たりの教育コストをこれから将来的には倍増するぐらいのことをしないと太刀打ちできないのではないかというご意見もちょうだいいたしております。実は、そういったことにつきましても、本論ではございませんが、今回の審議まとめの報告書の参考資料の中で、そういったアメリカ並みのことを目指すとするならばどうなるのかということにつきましては、具体的にはこの参考資料の2番というものでございますけれども、触れられていると。ただ、これは本論ということではございませんので、そういった意味では、こういう試算なりシミュレーションもあるぞというレベルではございますが、参考資料の2番、75ページ以降ではそういったことについても触れられておるところでございます。
 なお、大学分科会の問題意識としましても、そういった意味では今後、中長期的なそういった問題、財政の問題を含めた将来のあり方については、さらに今後、改めて議論が必要ではないかということもなどもご指摘をいただいているところでございます。
 以上でございます。

【佐々木分科会長】

 ほかの委員からも何かございませんでしょうか。それでは、樫谷委員どうぞ。

【樫谷委員】

 十分見識を持っているわけではありませんが、例えば、この質を保とうという、卒業生の質を保とうという切り口だと思うんですが、今、大学の入学者と卒業する人の割合がどの程度になっているかわかりませんが、こういう切り口でいくと、相当選抜されるというんでしょうか、選別されるというんでしょうか、つまり、今は入学すればほとんどの子が大過なく卒業するようなことになっているのではないかと思うんですが、こういう厳しいルールになるということは、それは相当選別をしていって、このレベルに達しない人は卒業させないという、非常に出口で厳しくするというね。何となく今は入り口が厳しいけれども、出口はそれほどでもないということなんですが、出口で厳しくするというような切り口に転換しようとしているのか、それはどのような考え方なのか。
 例えば、今、財政のコストの使い方もありましたけれども、入った人が全員一定の質であるのが一番いいんですけれども、そのために落ちこぼれをなくそうなんていうとものすごくコストがかかりますよね。そうではなくて、やる気のある人だけを一生懸命サポートしようというのであれば、まあ、今よりかかるかどうかわかりませんが、コストのかかり方が大分違ってくると思うんですが、このレポートというのはどういうことを意識してまとめられたのか。私のとんちんかんな質問かもわかりませんが、お答えいただければ。

【佐々木分科会長】

 いかがでしょう。

【鈴木高等教育政策室長】

 今回の報告書の中で、先ほど、出口、中身、入り口と申し上げましたが、そういった意味で、この出口の部分をまず前面に出して議論をしているという意味におきまして、これが一つの特徴であろうかと思いますが、そういった意味で、この出口の面での質をどう管理していくのか、強化していくのかということが、確かにこの分科会の大きな問題意識でございました。
 データ的にも、こちらの資料の中で、例えば巻末の160ページには、OECD諸国との高等教育の修了率の比較というようなデータがございますけれども、この調査などからも明らかなとおり、OECD諸国の中で明らかに出口が言うなれば緩い。このデータですと、修業年限内に9割が卒業するということで、明らかに出口の面では緩いという指摘がなされておるところでございます。
 そういった意味で、しからば、どのぐらいの割合が適正かということについて、なかなか一律の数値を導き出すことは難しいわけでございますが、ただ、いずれにしましても、今現在の状況としては、入り口の部分で志願者の9割が大学に入学するという、いわゆる全入と言われるような時代を迎えている中で、このままこういった出口管理というものが非常に緩やかだという状態を放置していては非常に問題だろうということは認識としてございます。したがいまして、さまざまな成績評価を厳格化する。そのためには、極力とは言うものの、できるだけ、いわゆるドロップアウトを生じさせないようなきめ細かい指導、そういったものもセットでやらなきゃならない。そのためには、やはりご指摘のとおり、さまざまなコストというものも考えなければならない。そういった点について、先ほど申し上げたような財政支援を含めたさまざまなバックアップというものも考えていかないとならないのではないかということが審議会全体としての問題意識だったと理解いたしております。

【佐々木分科会長】

 よろしいですか。何か追加で。

【樫谷委員】

 すみません。私、今のご説明でよく理解できていないんですが、要するに、当然、一定の財政支援は必要なんですが、ある程度割り切るのか、割り切らないのか。入り口と出口の関係を割り切ろうとしているのか。それは切りがない話ですよね。ある程度ってどの程度のことを言うのかな。これは計算はできないと思うんですけれども、考え方としてはどうなんですかということを聞いているわけです。

【徳永研究振興局長】

 基本的に、いわゆる切り捨てということではないんですね。やはり、基本的には、もちろんそういう過程の中で結果的に学生自体がドロップアウトしてしまう人がいるとは思いますけれども、我がほうとしては、やはりまず何といってもきちんと——まあ、別にヨーロッパ等の場合も、日本よりも修了率といっても、それは期間内にというような意味合いが強いわけですから、いわばきちっと大学でできる限りの努力をして修得させるんだと。そういうことの努力をしていくと。そのために、まず何より必要なのは組織的な教育活動だと。今年度の20年度の概算要求におきましても、高等教育のほうでは、そういういわば組織的な活動をするためには、教員がやる個々の研究活動及びその研究活動の伝達という作業だけではなくて、やはりきちんとした大学の学科・専攻単位において、こういう人間に育てていくんだと、こういう知識・技術を身につけさせていくんだということをまず明確にすると。そのことは法令で、この20年4月から各学科・専攻ごとに公表することを義務づけたところでございますが、そういう自分のところの学科・専攻ごとにこういう知識・技術を身につけさせるんだということを明らかにした上で、そのために身につけさせるような組織的な教育活動を行う。そのためには教員のファカルティ・ディベロップメント、その他、いわば教員の指導力の向上が必要でございますから、そのことを主要な課題として20年度も大幅な増額要求したところでございますが、こういったところは基本的にあるわけでございます。
 そういう上で、できる限り学生自身がみずから、もちろん教員が手をかけるだけではなく、学生自身の参加、さまざまな教育方法、教育形態の工夫がありますが、そういったことも学生自身の向上心というか、そういうみずからの学習意欲を高めるような方法、そういったことも工夫していくんだということでございまして、スタンスとしては、むしろそちらのほうが強うございます。

【佐々木分科会長】

 それでは、中西委員どうぞ。

【中西委員】

 ちょっと学術会議との関連について伺いたいんですけれども、資料4−1の裏側のほうの4番で、まず審議をどこから着手するかということの○の2番目に書いてございますが、実は今、学術会議の春の総会が昨日、きょう、明日とございまして、この冊子を昨日配られたんですね。少し議論があったんですけれども、学術的にどういうふうなところを議論すればいいかというのがわからないという声が多くて、例えば、医学のほうですと、教育プログラムができて、それをほかの部局に、学部に広げるのではないかという憶測もあるんですけれども、どういうことを期待されているのか、どういう分野について議論を求めているのかということをちょっと教えていただければと思います。

【佐々木分科会長】

 では、お願いします。

【鈴木高等教育政策室長】

 まさにこれから学術会議との連携をどのように具体化していくかという点につきまして、今まさに学術会議の事務局を通じてさまざまご相談もさし上げながら検討しているところでございますが、こちらの冊子の本文でございますと、17ページに関係する記述がございます。一番上のほうにございますが、この中で、「将来的な分野別評価の実施を視野に入れて、大学間の連携、学協会を含む大学団体等を積極的に支援し、日本学術会議との連携を図りつつ、分野別の質保証の枠組みづくりを促進する」という記述がございまして、これを受ける形で括弧書きの中で、例えばということで、連携した枠組みづくりの一つの手法について例示がなされております。この中では、学士力と先ほど申し上げたもの、この左側の16ページにあります学士力の参考指針、これはあくまで分野横断的なものであるのに対しまして、こういった考え方をそれぞれの分野に適用した場合の出口の学習成果としてはどういうものを考えるべきなのか、あるいは到達目標というのはどうなのか。医学の話がございましたが、医学の場合でございましたらモデル・コア・カリキュラムがございますが、そういったものも考えられましょうし、教材、FDプログラム、いろいろな考えられる選択肢があるわけでございます。
 ただ、まさに分野ごとのさまざまな違いもあろうかということで、今回の大学分科会のご議論では、こういった分野別の質保証のアウトプットということについては特定の一つの手法には特化していない。まさにここで例示しておりますとおり、分野によってそういった質保証の仕組みなり物差しのつくり方というのが当然さまざまあり得るのではないかと。それ自体、これから広く研究していく必要があるのではないかということでございます。
 したがいまして、何か現時点におきまして、一律にどの分野にも押しなべてこういったもので物差しをつくろうというようなことまで吟味がなされているわけではない。むしろ、そういった点については、これから学術会議と連携した上で、そういったことをご議論いただく場をまずは設けて、その上で全体の方針をご検討いただいた上で分野ごとの議論に次のステップとしてなっていくと。おそらく、そのような手順になるのではないかと存じます。
 ただ、後ろの巻末の資料では、ご参考までにイギリスの例ということではございますが、英国では50分野余りにわたって学士に関しましてのサブジェクト・ベンチマークと称しているような一種の、到達目標というと多少語弊があるかもしれませんが、そういったベンチマークというものを分野ごとに策定している事例なども巻末のほうでご紹介いたしておりますが、こういった国情の違いもございますので、単純にひき比べることはできませんが、いろいろなそういった先進国の取り組みの例なども今後吟味しながら、よく検討を相互に、中教審と学術会議と連絡を取り合いながら検討していただくというようなことを考えているところでございます。

【佐々木分科会長】

 よろしいですか。ほかにございませんか。
 では、私から一つ。先ほどアメリカとの比較なんていう話もあったんですけれども、アジアでいろいろな、特に学士課程教育あたりでインターナショナルというのか、何かそういうプログラムというのか、プランというのか、ヨーロッパでは既にやったようなこともあるんですけれども、そういったような動きみたいなものはこれから出てくるんでしょうかね。それとも、我が国、文部科学省としては、そういうのをちょっと提案してみるというような話で、つまり内部でお金が要る云々はもう白井委員がおっしゃったとおりなんだけれども、横からとにかく勝手に当ててみるというようなことも、もう学長としてはたまらないかもしれないけれども、あるかなという。まあ、領域によって、これはできる領域、できない領域あるかもしれませんが、何かそういう話というものは、どこかの国が突然言い出して、何かばたばたしたりするようなことはあまり見たくないなという感じはちょっとするんですけれども、そういうことについては何かウォッチされていて、ああ、何かこういうのはあるかもしれないとかいう、あるいは、文部科学大臣同士の会合みたいなものがあるのかどうか僕はよくわかりませんけれども、どんなふうに見ておられますか。
 それでは、徳永局長。

【徳永研究振興局長】

 具体的にアジアの中でというのはなかなか難しいのではないかと思います。ただ、高等局にとってかなり今、もちろん、すぐ今の小学校、中学校のようなやり方でやると言っているわけではないですけれども、とにかくOECDがPISAの学力調査を、小中学校でやっているやつを大学についても拡大するというようなことを、すぐ中身があのとおりではありませんけれども、そういった動きがありますし、今後さまざま、ダブル・デグリーというようなことを、かなり各大学も個別に検討を進めていく状況がありますから、そうすると、すぐにもいわば質保証のようなことを具体的に数量化して示すというようなことが求められてくるのではないかと思っております。
 先ほどの中西先生のご質問にもありましたけれども、本来、認証評価というのは、大学全体のやつを義務づけていても、なかなか最後の年度で駆け込みでようやく終わるか終わらないかというような状況ではありますけれども、本来でありますれば、アメリカのアクレディテーションというような考え方が、基本的には分野別の学部・学科単位でのアクレディテーションがまずあって、それを大学全体とはまた別にやっていくということの中で、いわばアジアの中で具体的な政策というよりは、例えば、中国なり、インドなり、そういった大学とダブル・デグリーを出していくという中で、じゃ、お互いにどういう形でそれを確認し合って一緒に組んでいくんだと、そういう作業がすぐ出てくるだろうと思っております。そのことが、当然、中国やインドですから、アメリカやイギリスの大学と連携をしたがっているところもありますので、そういう尺度の中でアメリカ、イギリスの大学に対して我々はこうだから、こういったレベルでお互いにやりましょうと、そういうことだと思っております。
 ただ、一応、OECDとユネスコで一緒にやりました日本、アメリカ、ヨーロッパの3極の大学の公的質保証制度といいますか、やり方については、一応今のところ落ち着いておりますけれども、ヨーロッパのほうがボローニャ・プロセスがどんどん進化して進行してまいりますと、ヨーロッパと同じような一体的な文化的価値意識を共有している組織はアジアにはありませんけれども、我が国も何らかの形でそういう国際的なレベルでの質保証をやらないと、アメリカ全体、それからヨーロッパのボローニャ・プロセスに対して、じゃ、どこで何を保証するのかということはすぐに宿題として出てくるだろうと思っています。

【佐々木分科会長】

 どうもありがとうございました。
 ほかにございませんでしょうか。では、白井先生。

【白井分科会長代理・部会長】

 アジアの中で全くないわけではもちろんないと思うんだけれども、ただ、あまりどこも、むしろ日本はそんなにイニシアチブをとっていないというのが事実だと思うんです。日本の大学というのは、ほとんどそういう意味での協力を今までやってこなかったということがあると思うんです。だから、質の保証なんていうと、何の保証をするのが質の保証というのかって定義が大体全然わからないという。これを読んでも多分わからないんじゃないかと思う。というのはぼかしてあると思うんですよね。結局、この原理は何かというと、入学試験で入ってきたところでクオリティーをある程度そろえてきて、それに対して、そのばらつきの範囲で取れそうな単位を厳格に取らせて、それで卒業するところまでしっかりやろうよというぐらいに感じられるよね。だから、ちょっとEUでやっているような質の保証というものと考え方はまだ全然違うと思うんですよ。
 ですから、そろそろ文科省でこういうふうなことを議論するんだったら、世界の標準というのはやっぱりあるから、それの先を行かないまでも、やっぱり何か言っておかないとぐあいが悪いなと。ほとんどこれは世界標準の質の保証からいったら、質の保証になっていないと言われても僕は仕方がないと。また、OECDから税金だけの問題じゃなくて何か言われそうだという、このレポートだけ見たらね、というふうな気がちょっとする。
 先ほど樫谷先生が言われたところは、僕、非常に重要なポイントだと思う。卒業条件というのは一体どういうふうに考えるのか。単位を厳格化すると、そうしたら卒業できないやつがたまるんですよ。それは一体どうするのか。今までの文科省の設置基準とか定員管理の、とりわけ国立大学の定員管理のあれからいきますと、たまっちゃ困るんですよね。非常に困る。多分そういう考え方で設計されていないんですよ。予算の配分とかそういうことも全部。私学でももちろん基本的にはそうなんだけれども、たまっちゃうと補助金の関係がちょっとややこしくなる。そういうところの考え方も明確でないんですよね。
 ですから、僕はやっぱりちょっとそういうところに踏み込んで答えていただきたいというのがさっきの質問だと思うので、局長の答えは僕ははぐらかしていると思いますけれども。

【佐々木分科会長】

 まあ、ここは中教審じゃございませんので、そっちのほうでまたいろいろやっていただいて。

【白井分科会長代理・部会長】

 いやいや、これはあまりまじめにここでやっちゃいけないんです。要するに、ここ学術分科会じゃないですか。そうすると、これまじめにこういう質保証をやられますと、学術分科会としては非常に深刻な影響を受ける。要するに、大学の人間はもうちょっと研究をやりたいわけね。それは一体どうしてくれるんだっていう、深刻なコンフリクトを起こすんですよ。だから、これは僕はちょっとここにはそういうことは書く必要はないんだろうと思います。
 そういうことからいっても、教育の全体の設計が必要だと。さっき僕はお金の問題を言ったけれども、初等・中等とか、そういうところをもう少しまじめにやっておいてくれれば、大学はもっといいんですよ。研究できるんですよ。そういう状況をつくったほうが、僕は投資としてもいいんじゃないかという気がする。やっぱり中学校とか高等学校とか、そういうところの教育を最高によく、まあ、小学校でもいいんだけれども、そういうことをやってくださると、大学はここまで質の保証で卒業のときのキャリアセンターだとか、変なことをいろいろたくさんやらなくても、しっかりしたのが出てきますよ、というふうに僕は、やっぱりそこをねらわないとね。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございました。

【白井分科会長代理・部会長】

 学術分科会としては。

【佐々木分科会長】

 それは学術分科会の立場からの発言という面もあったんですけれども、そういう考えも十分あり得ると思います。ありがとうございました。
 それでは、今のこの件については、またいろいろご意見おありかと思います。もしご意見おありでしたら、高等局のほうへお寄せいただくということにしていただいてどうでしょうかね。よろしゅうございますか。
 それでは、ありがとうございました。高等局、どうもご苦労さまでした。今後ともよろしくお願いします。
 次に、「大学・学術関係データ」というものがお手元にございますが、事務局のほうから何かご説明いただけますか。

【門岡学術企画室長】

 若干、本日時間がございますので、簡単にポイントだけ、学術の現場であります大学の状況について、客観的な現状でございますけれども、ご説明を少しさせていただきたいと思います。
 資料5でございまして、まず、めくっていただきますと、ここは大学の入学者数についてまとめております。これは国公私全体でございますが、平成18年度で学部の入学者総数は国公私全体で約60万人。そのうち、これを学部等の関係で分けますと、社会科学系が36%、工学系が16%、人文科学系が15%、以下小さいほうに並んでおるという形になります。これは国公私全体ですので、国公私で見ますと、私学のほうが人文社会系が多いので、全体としてはこういう形になるということかと思います。
 2ページにまいりますと、10年間の入学定員と入学者数の推移でございますけれども、大学のところで見ますと、4年生大学の入学定員は約10年で12%ほど増加していると。入学者数につきましても4.6%増加してきております。
 それから、下の志願倍率を見ますと、これは漸減といいましょうか、倍率は減ってきているということでございます。
 続きまして、3ページ、大学院のほうの入学者数にまいりますけれども、左上の1の博士課程でございますが、これは入学者総数は1.7万人、そのうち33%が保健となっておりますけれども、これは医師・薬学系ということで、これが33%。それから、19%が工学。人文・社会科学系がそれぞれ9%ずつという数字でございます。それから、修士課程のほうは約7万8,000人でございまして、うち40%が工学系で占めれて、11%が社会科学、9%が理学、7%が人文科学系という形でございます。
 それから、4ページのほうにまいりますと、これは大学院の博士課程、修士課程につきまして、国公私別、あと学科別で充足率等についてあらわした表でございますけれども、4ページの上の博士課程の定員充足率は国立が81、公立が75、私立が58。分野別で見ますと、社会科学、理学、工学が60%前後で、人文科学が75%となっております。
 それから、下の修士課程のほうになりますと、定員充足率は国立が114、公立101、私立85。分野別で見ますと、自然科学系はほぼ100%を超えているのに対して、人文科学、社会科学系が約75%となっているということでございます。
 それから、5ページに進みまして、専攻分野別の学生数等、その在学者について棒グラフで経年を出しておりますけれども、これは社会科学系が約38%、自然科学系が約31%、人文科学系が約16%ほど、それが修士課程、博士課程と並んでおりますけれども、おおむねその傾向は変わらないんですが、学生数の伸び自体は、16年の間に修士課程は倍以上に伸びているとか、博士課程についても2.5倍ほど伸びてきている。その大きな要因としては、自然科学系のほうの伸びのほうが大きいということが言えるかと思います。
 それから、6ページ、7ページは飛ばしまして、8ページをごらんいただきたいと思いますが、学位授与状況を見ますと、平成7年度と比較いたしまして、上の修士のほうで見ますと約1.7倍に増加しております。それから、博士のほうでいきますと約1.3倍増加しているという数字でございます。
 続きまして9ページ、留学生の状況につきまして、グラフ等を並べておりますが、主要国における留学生受入れの人数の推移、この上のほうの折れ線グラフにつきましては、日本が今のところ一番下のところに2007年あたりでなっておりまして、11万8,500人程度。これが下の表のほうでいきますと、日本は高等教育機関在学者数に対して約3.3%という数字でございます。左のほうにアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、中国と並んでいるということでございます。
 10ページに、その約12万人の留学生につきまして、地域別と、あとは専攻分野別に表とグラフが載っておりますけれども、一番上の全留学生数のところで見ますと、地域別に見ますと中国が圧倒的に多く、約60%、6割を占めているということでございます。以下、大学院と修士課程の中での割合を見ますと、博士課程のほうでいきますと工学が約30%、社会科学は14%、人文科学は11%。修士のほうですと、社会科学が38%、工学が22%、人文科学が13%というふうな割合になっております。
 続きまして11ページ、これは大学におきます教員の状況につきましてまとめたものでございまして、かなり大ざっぱにくくった形にしておりますけれども、11ページの上で見ますと、本務教員数の内訳といった場合に、国公私合わせまして約16万人の本務教員数がいる。その中で、自然科学系が約6割、9万7,000人、人文科学系が15%、社会科学系が14%を占めるという全体の構造になっているということでございます。
 それにあわせまして、その右側に19年度の科研費の状況を見比べていただくことになりますけれども、科学研給費補助金の応募状況を見ますと、応募総数が約11万件、上の円グラフですね。人文学が約6%、社会科学が9%、自然科学系で約66%。それで、大学の本務教員の比率と応募の関係を分野ごとに比較いたしますと、人文科学分野の応募率というのが他の分野と比べて少ないほうになるのかなというあたりが見えてくると思います。
 それから、下の円グラフになりますと、採択総数は約4万5,000件で、その占める割合は、人文学が8%、社会科学が11%、自然化学系が約63%ということで、採択率自体は自然科学系に比べますと人文・社会科学のほうが高くなるという構造になっております。
 続きまして、13ページのポストドクターに関しまして、ポスドクに関しましては、雇用機関別内訳を見ますと、大学が約60%、あとは独立行政法人等で約35%を占めている。それ以下、大学共同利用機関等々に属している形になります。
 14ページにまいりますと、雇用する場合の財源を見ますと、競争的資金において約30%、運営費交付金等で約30%、奨学寄附金、その他外部資金等で16%という構造になっております。
 おめくりいただきまして、15ページ、ポスドクの外国人比率が上にありますが、全体としては24%程度。それから、ポスドクの分野別の比率といった場合に、理学が31%、工学が約30%で多くなっているというものでございます。
 それから、16ページにまいりますと、ティーチング・アシスタント、あとリサーチ・アシスタントについてでございますけれども、一番上のところで、1.でございますが、ティーチング・アシスタントの採用状況を見ますと、修士課程の学生で約35%、博士課程の学生で約21%でございます。それから、2.雇用の財源別でいきますと、98%は基盤的経費等で賄われている。それから、3.リサーチ・アシスタントの採用状況を見ますと、博士課程の学生のうち13.5%が採用されている。めくりまして、17ページにリサーチ・アシスタントの雇用財源について載せておりますが、これは競争的資金において45%、基盤的経費で約54%が賄われているという実態でございます。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 どうもありがとうございました。
 何かご質問等ありますか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。以上、きょう予定いたしました案件及びその他も含めましてすべて終了いたしました。貴重なご意見ありがとうございました。もしよろしければ、この辺できょうの会議を終わらせていただきたいと思います。
 何か連絡事項がございましたら、事務局からお願いします。

【門岡学術企画室長】

 次回の学術分科会の日程等につきましては、日程調整の上、改めてご連絡させていただきます。
 また、本日の資料につきましては、机上にお残しいただければ郵送させていただきます。
 以上です。

【佐々木分科会長】

 ありがとうございました。本日の会議はこれで終了いたします。

—— 了 ——

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