資料1 学術情報委員会(第11回:平成30年7月26日)における主な意見

1. 科学技術振興機構(JST)小賀坂知識基盤情報部長による発表(オープンサイエンスに係る科学技術振興機構の取組)

【概要】
○ 近年、研究成果論文の根拠となるエビデンスデータ公開の必要性が世界的に唱えられおり、統合イノベーション戦略においても、文部科学省が主体となり、全文データベースに登載された論文と識別子を付与した研究データを紐づけ、管理・公開するシステムの開発を検討すること、とされている。
○ エビデンスデータの公開を促進するためには、ジャーナルごとにデータ公開ポリシーを定めると同時に、研究者が利用しやすいリポジトリ環境を整備することが求められる。しかし、国内のジャーナルの約半数がデータ公開ポリシーを策定しておらず、またデータを搭載するリポジトリは、海外の機関や企業が中心となって構築されている。
○ JSTは、論文エビデンスデータの公開を促進するため、論文誌プラットフォーム「J-STAGE」に公開している論文のデータを登載するリポジトリ「J-STAGE Data」を 新規に構築するとともに、データ公開ポリシーの整備についても支援することを検討している。
○ 論文の全文データは、機械可読化により分析研究対象となることから、「J-STAGE」において、論文データのXML化支援ツールの提供することにより、全文データの機械可読化を推進することを検討している。
○ JSTの研究資金配分事業では、2017年度に「オープンサイエンス方針」 を策定し、データ管理計画(DMP)の作成と、成果論文のオープンアクセスを義務化した。

2. 国立情報学研究所(NII)山地教授による発表(オープンサイエンス研究データ基盤開発アップデート)

【概要】
[研究データ基盤について]
○ 研究者が日々の研究活動において非公開の状態で、研究データを管理するツールとして、研究データ管理基盤GakuninRDMを構築している。GakuninRDMは簡単なクリック操作で外部ツールと連携することができ、データを解析ツールに送信し、処理後のデータを管理基盤に戻すという、研究の一連のプロセスを実行することができる。
○ 研究データ公開基盤WEKO3は、GakuninRDMとの連携により論文や研究データを公開する基盤である。GakuninRDMからドラック&ドロップするだけで、WEKO3にデータを登録することができる。論文だけでなく大規模な研究データを扱えるほか、外部ツールとの接続も容易に行うことができる。
○ WEKO3で公開された研究成果は、研究データ検索基盤CiNiiResearchにより検索できる。
○ 今後は、大学等が機関として採用するための仕組みづくりや、論文とエビデンスデータを組み合わせて公開するケーススタディづくりなどに取り組む。


[人材育成トレーニングコースについて]
○ オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)は図書館職員を対象として、研究データ管理のオンライン講座を開講したところ、予想を上回る2000名以上の受講者登録があった。
○ 受講者からは、研究者自身がやるべきことと、研究支援者がやるべきことが区別できる内容だとよかった、等のコメントがあった。
○ 受講者のフィードバックを受け、オンライン講座の第二弾として、研究支援者を対象者とした新教材を提供する予定。


[データマネジメントプランの作成支援ツールについて]
○ オープンサイエンスを進めるに当たって不可欠であるデータマネジメントプランの作成支援ツールを作成している。
○ 開発中の研究基盤と連携し、研究者がプロジェクト管理に活用できるツールの開発を検討している。



3. 意見交換

[JSTの取組について]
○ 日本語資料の機械可読化は日本人の取り組みにゆだねられているため、海外に比べて進捗が遅れていると言える。学協会の協力を得て論文データからの知識抽出が進展することを期待したい。
○ 機械可読化に当たっては、日本語だけでなく多言語に対応してほしい。


[NIIの取組について]
○ GakuninRDMに保存されたデータについて、異動により研究者の所属機関が変わった場合、機関の間でデータポリシーに不整合が生じないように工夫すべき。
○ WEKO3においてデータを公開する際、セミクローズドなデータの扱いについても検討していくべき。


[全体的なこと]
○ JSTのJ-STAGE DataとNIIの研究データ基盤は機能として重複している部分があるのではないか。
○ J-STAGE Dataはジャーナル専用のリポジトリとしての立ち位置で、機関リポジトリでカバーできない需要を満たすものと考えている。
○ 機関リポジトリがデータの価値を保証するために、特定の機関に認証を与える機能を持たせ、信頼性を証明してもらえばよいのではないか。
○ 産業界がフルオープンなデータを提供することは難しいため、セミクローズドな情報を扱う必要が出てくるだろう。安心してデータを預けられる研究データ基盤ができるとよい。
○ データの公開が進展することで、データをきっかけとした共同研究のマッチングが行われ、新たな知見が得られることを期待している。
○ 研究者は自分の成果を守るために研究の開始時からエビデンスデータを確保しなければならない。研究データ基盤は、アーカイブやプレプリントサーバ-と連携したうえで、研究者が利便性を損なわず、かつ主体的にデータを保存できるような仕組みを構築していくべき。
○ データのためのシステムは出来上がっていくが、機関ごとのデータポリシーが伴わないという状況。データの共有を進めるまえに、ポリシーを明確に定めるべき。
○ データポリシーについて、研究資金配分機関として主張を明確にする方がよい。
○ 研究者の間では、いまだオープンアクセスに対する意識が浸透していない。研究データは大学の資産であり、これを管理することは大学としての評価、ブランディングにも直結する。
○ 国内で研究データ基盤を構築する流れがある一方、研究者、大学等の執行部や文部科学省、内閣府、産業界等、利害関係者の間で意識に隔たりを感じている。
○ 学術情報委員会としてこのようなギャップに対し、どのように発信していくか。議論を深める必要があるのではないか。
○ 学協会は印刷会社に依存しており、また、情報産業として日本の企業が育っていない。オープンサイエンスのステークホルダーとして印刷会社やITベンダーを活性化するという観点を入れるべき。


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