資料1 学術情報委員会(第10回:平成30年6月27日)における主な意見

1.潮見坂総合法律事務所・末吉弁護士による発表(限定提供データの保護)

〔 概要 〕
○ 未来投資戦略2017および知的財産推進計画2017において、価値あるデータの保有者、利用者が安心してデータを提供し、利用できる公正な競争秩序を確保するための制度作りについて要請されていることから、不正競争防止法の平成30年度改正により、限定提供データ(ビッグデータ)の保護を図ることとなった。
○ 限定提供データの不正取得は、権原のない外部者が、管理侵害行為によりデータを取得する行為と、それによって取得したデータを使用する行為、および第三者に提供する行為の三つの型に分けられる。
○ 限定提供データにかかる不正競争行為については、民事措置として、差止請求、損害賠償請求、信用回復措置が導入された。
○ 限定提供データの保護にかかる法律は、セキュリティ対策や契約関係について十分検討されているにもかかわらず、被害を被った場合に備え、設計されたもの。
○ オープンサイエンスに関して限定提供データの保有者となる機関は、差止請求権者になり得るが、オープンサイエンスにおける損害は認識できるのか、疑問がある。
○ 学術的なビッグデータをグローバルに展開するとき、準拠法はどうするのか。グローバルにデータを守るために、どのような工夫ができるのか、検討してく必要がある。

2.意見交換

○ データの保護は、不正競争防止法における営業秘密の保護、限定提供データの保護、および著作権法のいずれかに依ると考えられる。著作権法で保護されるデータは、データベースがほとんどである上に、例が少ない。営業秘密の保護と限定提供データの保護については、対象が重複する可能性があるが、両方の保護を求めることはできない。
○ 無償で提供しているデータを不正に使用された場合、損害の理論構築は可能と考えられるが、金銭以外のものを損害として定義するのは難しいのではないか。
○ データの提供者は、他者が無償提供のデータを使ってビジネスを始めた場合、得られた収益を要求できるようにライセンスを整備する必要があるのではないか。
○ データの権利を確認する方法として、データに不正使用されたとわかるようなトラップを入れておくことなどが考えられる。
○ 限定提供データの保護としてデータ利用成果物に権利が及ばないことは、データ提供者のインセンティブが落ちる可能性がある。ただし、営業秘密の保護の中で、刑事事件として立件することで、被害を立証できるのではないか。
○ 機関や学会など、データを管理する者がどこまで責任を負うのか、明確にしておくべき。
○ 不正競争防止法の差止請求権者や損害の概念については、広い範囲で認める意向であるものの、現在ガイドラインを検討しているところであり、そこで検討されているものと思われる。オープンサイエンスの考え方や想定される問題について、当該法律を所管する経済産業省にインプットすべき。


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