資料3 学術情報委員会(第7回:平成30年2月1日)における主な意見

1. 国立情報学研究所山地教授による発表(オープンサイエンスを支える研究基盤-国際動向とNIIが開発する研究データ基盤の開発状況-)

〔意見抜粋〕
○  海外における研究データ基盤の整備状況について、イギリスではJiscにより2014年付近から三つのプロジェクト(Research at risk、Research data spring、Research data metrics for usage)が進んでおり、現在はResearch data shared serviceという、大学ごとに違ったサービスを組み合わせて利用し、グッドプラクティスを作っていくプロジェクトを進めている。本プロジェクトはサービスのほとんどが商用のものであることが特徴で、長期的な運用という意味で一つの指針になる可能性があるが、アカデミックの意見をうまく反映できているかは不明瞭。
○  ヨーロッパではHorizon2020の下で、欧州各国で個々に動いているインフラをオープンサイエンス的に構築し、使っていくための仕組みを作るEuropean Open Science Cloud(EOSC)の取り組みが進められている。EOSC-hubとOpenAIRE Advanceの二つのサービスを軸に全体的なアーキテクチャーを作る方向性。
○  オーストラリアでは、Eインフラを提供している3組織(ANDS、Nectar、RDS)が連携し、Australian Research Data Cloud(ARDC)という、EOSCのオーストラリア版を作ろうとしている。
○  アメリカでは、国やコミュニティ全体としてではなく、個々がよいサービスを作ることに取り組んでいる状況と思われ、例として、National Data Service(NDS)やCenter for Open Science(COS)といった組織がそれぞれにサービスを構築・提供している。
○  アメリカを除き、全体的には、現在インフラとして既にあるネットワーク・認証・計算リソース・データベースなどを組み合わせながら、政府レベルでこのようなインフラをつなげて、全体としてオープンサイエンスに向けた基盤を作る方向性が見える。
○  NIIで現在構築中の研究データ基盤は、管理基盤・公開基盤・研究検索基盤という三つのコンポーネントから構成されており、研究活動の検索をアシストできる検索基盤、作業量を増やさないUIとスケーラビリティを持った公開基盤、認証により機関のストレージを柔軟に利用できる管理基盤を目指している。
○  DMPを簡単に作るためのツールの開発が世界で進んでおり、NIIも積極的に関与して、日本のファンディングエージェンシーがDMPをより積極的に求めてきた際に、研究者をサポートするツールを用意する予定。
○  役割分担として、大学には、機関としてストレージを用意していただき、NIIのサービスにつないでもらうことを想定している。
○  日本にある各種研究インフラをどのようにつなげ、有機的にしていくか、コストエフェクトを高めていくかも課題である。かつ、日本においても研究におけるEインフラの位置付けが認知されるようにならないといけない。

2. 意見交換

○  日本ではEインフラの話がなかなか理解されない。大学の執行部に理解してもらう必要がある。
○  具体例を見せていくと、大学で検討が必要なことなどが肌で感じられるかもしれないので、改めて準備をしていきたい。
○  分野ごとに固有の文化やコミュニティがあるということを注目すると、それぞれ固有の分野をカバーする学協会が果たさなくてはならない役割も大きい。分野別サービス的な取り組みも重要。
○  データリポジトリとしての信頼性、安定性、日本だけではなく世界の研究者がこれを使うという、そういったものができてくれば、データが海外へ流出するのを食い止めることができるように思う。
○  データリポジトリの信頼性を高めることを考えると、従来の機関リポジトリをベースにする、あるいは分野別リポジトリをベースにするよりもナショナルデータリポジトリを作るという考え方もある。
○  アメリカのCOSは集中型で効率的にプレプリントサーバを運営しているが、資金が尽きて出版社に買われてしまう可能性がある。分散されていることが機関リポジトリの一つの大きな利点。なお、JAIRO Cloudのアーキテクチャーは、バックエンドで動いているアプリケーションは一つであるので、ナショナルリポジトリ的なものとも言える。
○  論文等のオープンアクセス、データを含むオープンサイエンスの実現における制度的・社会的基盤の整備として、一例としてID化のような整備設計が必要と考えられる。
○  研究データに関しても、アクションがないと何らかのモノポリーになる可能性があるため、国として何を守るか、守るのは誰の責任であるかというのを、きちんと共通の認識を持った上での投資をしていく必要がある。また、アカデミックとしてのサービスは何らかの形でアカデミックがコントロールできる状態に持っておく必要があると考える。
○  大学でこのシステムをどのように入れていくか、非常に重要な視点になっている。NIIが基盤を構築するところに各大学が同じように考えるサブのグループを持たないと、使い方はうまく回らないと思われる。研究公正の話ばかりでも動かなくなるし、リポジトリがそうであるように、各機関の中でこういうシステムを独自に運用できるだけのグループを作るということが重要なのではないか。
○  このシステムにハイ・インパクト・ジャーナルに載る論文を作るようなデータを乗せてほしい。そのためには、認証のあるデータサーバにしないといけない。国内的にはそれが取れれば日本では唯一のサーバになるので、そこに載せるというのが戦略になる。
○  アーカイブ・ドット・ウエブでも、プレプリントをどう押さえるか学協会と連携をとろうとしている。サーバによいデータを置くと同時に、プレプリントを置くということを連携していただきたい。
○  実際の運用については、NIIがやるのか、外出しでやるのかは重要な検討事項。
○  技術的な基盤ができたところで、今後、利用を拡大するフェーズに移る際に、学会と組むことが必要ではないか。
○  このシステムの段階を踏んで利用していくと、若手研究者向けのトレーニングにもなるということが出てくるとよいと思う。
○  内閣府が研究データ利活用ポリシー・オープン・アンド・クローズ戦略を踏まえて、各研究機関や大学でポリシーを作る方向で議論を進めているので、このデータ基盤を使うことが機関ポリシーを作ることにも役立つような運用の仕方になればよい。
○  コンテンツのオープン化とは基本的に相当のコストをかけて維持されるものであるため、ファンディングエージェンシーの役割が極めて重要である。データ管理ポリシーなどへの対応を体系的に行うことによって、ナショナルデータリポジトリのような形に持っていくなどの方向が考えられる。
○  ファンディングエージェンシーで利用するためには、誰もがそれに対応できるということが必要であり、ある程度の利用者のボトムラインをそろえるのは、大学等のレベルで進めた方がよい。
○  研究開発におけるワークフローに適合させてこの仕組みを使っていくのかとういうことを、仕組みに詳しい人がある程度設計しないと導入が難しい。具体的な体制をどうのように作っていくのかということが、これからの大きなテーマになるだろう。

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