資料2 これまでの学術情報委員会における主な意見-大学図書館機能の強化関連部分抜粋-

1. 大学図書館機能の強化

 〔大学図書館のベースライン〕
  ○ 大学図書館の次のステップをどのように考えるのかが重要である。大学図書館のベースラインとして何を維持しつつ、新たにどのような役割を果たしていくべきかが重要で、その際、オープンサイエンスの動きにどう取り組んでいくかについて明確にしていくべきだ。
  ○ 従来のベースラインで仕事をしている多くの大学図書館職員を、新たな形にシフトしていくためには、大学図書館で認識されているベースラインそのものが妥当なのかどうかを確認する必要がある。
  ○ 大学図書館サービスの再定義や、役割が激変し新たな役割が求められている部分の議論を重点的に行うべきではないか。
  ○ 大学図書館は、ある種のコーディネーター的な役割を果たしていくことが重要となってきている。このような機能も含め次代の大学図書館の役割を議論していく必要がある。
  ○ 多くの大学図書館でコンセンサスが得られ、一定のサービスが提供できるレベルのベースラインを明確に示す必要がある。
  ○ 大学図書館も分野ごとに業務が大きく異なっている点には留意する必要がある。例えば、医学系図書館ではビブリオメトリクスを活用した論文引用の傾向調査などを行う一方で、人文学系図書館では伝統的な古典籍整理の作業を行っている。
  ○ 自然科学系を中心に、雑誌や論文の検索はネットワークを通じて行えるようになるなど、大学図書館の物理的な意味合いが変化している。
  ○ 大学図書館に期待される研究支援、教育支援、学術資料の継続的な維持管理という三つの大きな役割について、どの部分にフォーカスしていくべきか検討が必要である。

 〔資料の利用把握、分析〕
  ○ 限られた資料費の効果的・効率的な使用という観点から、図書資料の利用把握などの取組が重要である。
  ○ ジャーナルのうち、どういうものがどう活用されているか、どの雑誌に誰が投稿し、誰がどれだけ引用しているかなどを分析・評価し、どこに資源を集中させるべきか、研究の多様性確保のためにどういう雑誌が必要かというようなことを把握、共有すべきである。

 〔研究支援機能、リサーチコモンズ〕
  ○ 大学図書館における教育支援の方向感は一応定まった感があり、今後は研究に大学図書館がどう関わるべきなのかはっきりさせるべきである。
  ○ アクティブラーニングのフェーズは収束に向かっており、次は世界的に見てもリサーチコモンズ、すなわち研究に対してどのように大学図書館が貢献するのかというフェーズに移りつつある。
  ○ アクティブラーニング支援に続く大学図書館の役割として、研究に対してどのように関わっていくのかということは重要な視点である。
  ○ リサーチコモンズを検討する流れは、総論はともかく、個々の大学図書館の具体的な取組という観点からは、各大学の規模と構成分野に関係してくるのではないか。
  ○ リサーチコモンズのベースラインについて、大学の特性に応じた方策、戦略などをタイプ別に示すことができれば、大学図書館の取り組むべき目標が見えやすくなると思う。
  ○ イノベーションという観点では、違う分野の研究者同士の出会いが重要で、大学図書館がキュレーション的な役割を果たしていくことも重要ではないか。
  ○ 企業の図書館も業務自体が変化する中で、研究トピックをテーマに新たな議論の場を提供したり、関係の研究分野の人たちに話題を投げかけたりするなどの新しい取組を始めている。
  ○ 研究開発のためには情報基盤の整備が必要であり、図書館で蔵書構築をしてきたのが、今、データベースやリポジトリ構築をしていく流れになっていて、その先には、研究者にサービスを提供するプラットフォームを研究者と一緒に作っていくという形が考えられる。

2. 機関リポジトリの機能強化

 〔機関リポジトリの効果〕
  ○ 機関リポジトリの効果として、英語で作成されたコンテンツは、紙であれば見向きもされないようなものでも、リポジトリに登載されると、サーチエンジンを通じて世界中からアクセスがある。
  ○ 遺跡リポジトリのように、これまで余り流通していなかった研究資源を大学図書館がプラットフォームを提供することで広く使えるようになった例がある。このような活動例を大学図書館機能の新たな方向性として発信していくことも重要ではないか。

 〔機関リポジトリの活用〕
  ○ ジャーナル論文の掲載は少ないものの、紀要論文が多数登載されるなど、リポジトリの整備は着実に進められてきた。今後は、蓄積のみならず活用面の充実が重要である。
  ○ 機関リポジトリの利活用の方向性を大学の規模や分野構成を踏まえた幾つかの類型として示していくことが考えられる。
  ○ 公的機関のリポジトリランキングにおける評価基準が、資料の総量から、研究資料の価値など内容の充実度に変化している。このことは、リポジトリに対する要求の変化を示していると考えられる。
  ○ 機関リポジトリは、データセットが増えたとしても活用されなければ手間が掛かるばかりで意味がなく、これらを評価するための基準や指標の設定が重要ではないか。
  ○ 大学の知的資産を機関リポジトリに収集することのみならず、出口のメトリクスをどうするかというところも非常に重要で、大学ごとの方策はもとより、我が国としてどういう方向で進めばよいのかについてのフレームワークを示すべきだ。
  ○ 機関リポジトリへの論文の登載率が低いのは、インセンティブの問題もあるが、手間がかかるという理由も大きく、ある程度の強制力も必要なのではないか。

 〔分野別リポジトリ〕
  ○ リポジトリは、機関という枠組みにおいて進歩してきているが、分野ごとの特性や強みなどにも考慮した取組を検討すべきではないか。
  ○ 分野のニーズを踏まえた分野リポジトリを具現化するには、学協会や大学、大学図書館が協働していくことが重要で、その先には異なる分野同士のシナジー効果も期待されるのではないか。
  ○ 機関リポジトリが縦糸だとすると、分野リポジトリは横糸のようなもの。それらをどう統合的に進めるべきか検討すべきだ。
  ○ 大学図書館とプレプリントのデータベースを主導している学協会との関わり方についても考えていくべきだ。

 〔情報発信機能〕
  ○ 我が国の大学や基礎的な学問全体が危機にさらされている中で、大学図書館が学術全体を支えていくという視点に立てば、情報発信という切り口は非常に重要である。
  ○ 大学における広報関係業務は脆弱(ぜいじゃく)な体制にあり、研究発信能力を大学図書館の機能として定義づけられれば、大学図書館が大きく変わっていくきっかけになるのではないか。
  ○ 大学図書館のミッションの比重を学術成果の閲覧支援から、機関リポジトリを介した研究情報発信に移していくということも論点の一つではないか。
  ○ 大学図書館が、知の創出や共有を行う側にとどまらず、発信する側にあるというビジョンを持つことは重要な視点である。
  ○ 各国の機関リポジトリのコンテンツ別データを見ると、明らかにその役割が異なる。米国の大学は、経営体としての機能が強く、情報発信に力を入れている。
  ○ 情報発信に関連して、研究者識別子であるORCIDの活用により、大学間異動や姓の変更などに関わらず研究者の検索が可能となるなど、有用性が高まるのではないか。さらに、機関内の研究者同士のつながりや研究の近接性、他機関の研究者との関係性などの分析も可能となる。
  ○ 研究者の多くは機関リポジトリの存在を意識していない現状にある。機関リポジトリの情報発信能力にメリットがあるとなれば、研究室にのみ保存されている様々な学術資源が新たに登載され、リポジトリの利用が活性化されうる可能性もある。

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麻沼、齊藤
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(研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室)