資料2 教育研究の革新的な機能強化とイノベーション創出のための学術情報基盤整備について-クラウド時代の学術情報ネットワークの在り方-(審議まとめ)【要旨】(平成26年7月 科学技術・学術審議会 学術分科会 学術情報委員会)

1. はじめに

  ○ 我が国の学術情報基盤の根幹をなす学術情報ネットワークは、SINETを基幹に大学等が接続する形で整備が行われているが、多様かつ大量の学術情報流通を支え、大学等の教育研究活動は、これなしでは成り立たない状況。
  ○ 近年、我が国の学術情報基盤の整備が滞り、欧米や中国等、諸外国に後れを取っており、格段の高度化が不可欠。

2. 知識創造社会の構築を支える学術情報基盤の整備

(1)背景

  ○ 人類の創出する情報量は21世紀に入り爆発的に増大。研究活動においては研究装置やコンピュータの高性能化、教育活動においてはオンラインによる講義配信など、ネットワークを流通する情報量はますます増大する傾向。
  ○ 近年、国内外、官民を問わず、あらゆる組織でクラウドコンピューティングを導入する動きが顕著。

(2)学術情報基盤整備に関わる政策提言等

  ○ 第4期科学技術基本計画(平成23年8月閣議決定)、教育振興基本計画(平成25年6月閣議決定)、「世界最先端IT国家創造宣言」(平成25年6月閣議決定)など。

(3)当面の学術情報基盤整備の方向性

  ○ 情報通信技術の急速な進歩や諸外国の状況を踏まえれば、我が国の学術情報基盤における基底である学術情報ネットワークの高度化は当面の喫緊の課題。

3. アカデミッククラウド環境の構築について

(1)アカデミッククラウドの必要性

 1 クラウド環境構築の意義
  ○ クラウドの意義は、「所有から利用」への転換。必要なコンピュータ資源を、必要なときに、必要な分だけ、速やかに使用することが可能。
  ○ 大学等は情報システムの設備投資が抑制でき、迅速な拡張性やデータバックアップによる安全性の確保も可能になり、コンピュータ資源を極めて効率的な運用が可能。

 2 我が国の大学等における状況
  ○ 平成25年度において、全大学の63%がクラウドを導入しており、運用していない大学についても、その約53%は運用を検討。
  ○ 導入にはデータ量の大きさに耐えられる安定した高速ネットワーク環境の構築が必要。

(2)アカデミッククラウド環境整備の方向性

 1 教育・学習基盤のためのアカデミッククラウド

 2 研究基盤のためのアカデミッククラウド

 3 管理運営基盤のためのアカデミッククラウド

(3)アカデミッククラウドの環境構築に必要な事項

 1 基本的な環境整備
  ○ ネットワークの性能強化
  ○ セキュリティ対策とプライバシー確保による高付加価値化
  ○ サービスの効率的な利活用のための認証連携の促進
  ○ データの共有・管理の適正化に必要な運用ルールの策定

 2 運用上のリスク管理
  ○ クラウドサービスの継続性の確保
  ○ クラウド基盤の多様性確保

 3 人材の育成等
  ○ アカデミッククラウドの構築・運用を支える人材の育成
  ○ アカデミッククラウドに対する理解増進

4. 次期SINETの整備について

(1)整備の方向性

  ○ SINET5の検討に当たっては、教育、学習及び研究基盤における新しい動向を踏まえ、アカデミッククラウドの構築・普及を念頭に置いた機能強化を効率的に行う必要。

(2)NIIの役割

  ○ SINETの運用に関して、大学等と協調して整備に取り組み、ネットワークの継続的な高度化とサポートを実現。
  ○ アカデミッククラウドの展開においては、更に高度な情報技術の連携が不可欠であり、NIIと大学等の更なる連携強化は必須。

(3)SINET4の現状

  ○ 整備する回線の通信帯域としては、最も強い部分でも東京-大阪間で40Gbps が2本であり、それ以外は、10Gbps若しくは2.4Gbpsという状況。
  ○ 東京―大阪間や日米間などにおいて、通信帯域がひっ迫。国際共同研究等において、大型の共有研究装置を用いた大量のデータ流通が活発になっているが、海外の類似の学術情報ネットワークとの接続において、相応の学術情報ネットワークを構築する必要。

(4)海外の学術情報ネットワークの状況

  ○ 北米、欧州、アジアのいずれも、100Gbps回線の導入が完了若しくは整備を開始。
  ○ 国際ネットワークにおいても、北米と欧州の六つの学術情報ネットワークの連携により、100Gbps国際回線の利用が開始。

(5)SINET5の整備

  ○ 大学等の教育研究活動への情報通信技術の活用やアカデミッククラウドの普及に伴い、膨大な教育研究データをSINETを介して流通させるニーズが加速。
 1 必要な回線確保
 ア)国内回線
  ○ ダークファイバー(通信事業者の余剰回線)を活用することにより、安価で高速な回線確保を実現。
  ○ 各都道府県に100Gbpsで複数接続できる高速ネットワーク環境をバックボーンとして全国に構築し、今後のネットワーク需要を踏まえて、更なる増強を図る。
 イ)国際回線
  ○ 既に諸外国の学術情報ネットワークは100Gbps規模の増強が進行。我が国においても対等な環境整備が必要。
  ○ 日本-欧州間に関しても、北米経由で流通している現状から、データ利用に遅延が生じてきており、シベリア経由の回線整備を検討する必要。

 2 クラウド環境の高度化を支える最新ネットワーク技術の導入

 3 サイバーセキュリティ対策と認証機能の提供

 4 コンテンツの流通環境整備

 5 クラウド環境の普及促進への取組

5. まとめ

  ○ ボーダーレス化や国際化が進展する社会の中で、我が国の大学等が国際競争力を保って、優れた教育研究活動を展開していくためには、セキュアで高度な教育研究環境の持続的な確保につながる学術情報基盤の整備が不可欠。
  ○ 教育研究活動の推進において、増大化するデータ処理ニーズに対して、共用するコンピュータ資源をネットワーク経由で効率的に利活用するクラウド化への動きが進展。クラウド化を含めた学術情報基盤の構築については、大学等とNIIが連携を図りながら積極的に取り組むことで大きな効果が期待。
  ○ SINET5においては、大幅な増加が見込まれる情報流通ニーズに応える帯域の確保、クラウド基盤構築のためのネットワーク技術、最新のサイバーセキュリティ対策、情報コンテンツの相互利用を可能にするプラットフォームを登載。
  ○ 大学等は、機関とSINETをつなぐアクセス回線の高性能化に努めるとともに、アカデミッククラウドの導入や情報資源の利活用を効果的に促進。

お問合せ先

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麻沼、齊藤
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メールアドレス:jyogaku@mext.go.jp(コピーして利用される際には全角@マークを半角@に変えて御利用ください)

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