資料1 学術情報委員会(第1回:平成29年4月12日)における主な意見

学術情報委員会(第1回:平成29年4月12日)における主な意見

1. 学術情報流通に係る諸課題や基盤整備

(1)オープンサイエンスへの対応

  ○ オープンということが求められる理由は、社会的責務からの必要性、研究開発における国費の二重投資の低減、他分野のアウトカムを活用したイノベーションサイクルの加速があげられる。
  ○ オープンアクセスやオープンデータは、学術情報流通のごく一部であり、教育研究の広範なリソースはそれに限定されるものではない。

〔オープンアクセス〕
  ○ オープンアクセスといっても分野によってジャーナルの状況は異なる。学会自らが取り組んでいるものや、海外の大手出版社をプラットフォームとしているものなどがあり、どのようなものがビジネスモデルとして持続可能であるのかが課題である。
  ○ オープンアクセスはいまだプロセスに乗りきれていないのではないか。ゴールドスタイルはコストが研究費を圧迫し、研究自体を阻害している現状があるが、それをサポートしていくことによってより発信力を高めるという方向性もある。
  ○ 公的資金による研究成果は原則公開であり、論文には有料、無料の違いはあるがこれまでもアクセスできる。他方、最近のオープンという話は、それを全て無料にする、データも公開するというもので、従来の公開とは異なる話であり、研究成果がこれまで公開されていなかったような印象を社会に与えていないか。

〔オープンデータ〕
  ○ ジャーナルへの論文投稿に伴い、エビデンスとしてのデータを求められることは一般化してきているようであるが、それに対応するための手間とプラットフォームが課題である。
  ○ オープンアクセスとオープンデータは異なるレベルの話。オープンアクセスは、誰が費用を負担するかという課題はあるが、原則反対はない。一方、オープンデータは、分野による研究スタイルの違いもあり、どの段階でどこまでのデータをどのように出していくのかはかなりデリケートな問題で、場合によっては研究活動を阻害するケースも心配される。各分野の研究スタイル等を踏まえて議論する必要がある。
  ○ 研究データのオープン化は産業界から強い要求がある一方で、フェアユースの仕組みが十分に確立されていない。
  ○ オープンサイエンスとオープンアクセスは異なるとの意見もあるが、オープンアクセスの論文とそれに関係するデータは分離できない現状から言えば、オープンデータがなければオープンアクセス自体が成り立たない。他方で、データ自体も公認されたものである必要があり、非常に重層的な課題である。
  ○ オープンデータに関して、具体的にどのような問題が出てくるかを把握するためには、各分野の意見をきちんと聴く必要がある。また、現在の日本の立ち位置を考えたときに、どのような方向に進むことで日本が強くなるか、国際的なプレゼンスが得られるかというような視点に立って、さらには産業界と大学が良いパートナーシップを創れるような議論が大事である。
  ○ オープンアクセスはともかく、データのオープン化に疑念を持つ研究者はかなりいるが、それはデータを公開することのインセンティブのほか、データが他人に利用され先に論文化されてしまうことを避けたいという意識が働くように思う。データ公開が個々の研究者にとってプラスに働くという面が重要である。
  ○ データは死蔵するものでなく、公開することによってより科学に寄与するとした上で、そのことがきちんと評価される仕組みが重要である。
  ○ 企業との共同研究について全て非公開の扱いにすると、社会的な視点からはやや違和感がある。国費についての議論も煮詰まっていない部分ではあるが、どのあたりから公開可能なのかの線引きも重要である。
  ○ オープンデータのオープンという言葉についてコンセンサスを得ているとは言えず、いまだその定義を考えるフェーズにあると思う。分野個別の議論を行う場合には、どういうレベルのオープンを実践していこうとしているのかというところに配慮するべきだ。
  ○ 海外の大手出版社に論文の流通権を握られている現状の中で、次のフェーズとしてデータが狙われていると思う。公共の意識はともかく、ビジネスとしてデータをどう使うかという視点があることを踏まえ、明確なポリシーを出していかないと商業主義に論文もデータもとられて何も残らないということになりかねず、データを守りながら使っていくという戦略が重要ではないか。
  ○ いろいろな情報を皆で活用して、互いに刺激し合い、研究の成果がより高度になっていくような情報流通の形が重要であり、データをポジティブに使いたい、利用したいと思わせる設計が大事である。一方で、そのこととオープンということが同じ意味なのかについては少し違和感がある。
  ○ 研究にかかったコストを回収していくという意識は重要である。研究の成果である論文やデータを何らかの形でお金に換え、それによって情報公開の仕組みを運営していくビジネスモデルを検討し、海外にアピールしていくような戦略が重要ではないか。
  ○ 行政データの情報流通については、プラットフォームのようなものができると動き始めると思う。その先に、研究に活用できるようなフェーズを構築することが重要で、何か良い例が出てくれば取組が促進されるのではないか。
  ○ オープンデータにおける本当のニーズはどこにあるのか。そのニーズを踏まえ、誰がどれだけ経費をかけて対応していくのかという部分をどのように考えるのか。個々の研究者からすれば大変な負担感となるので、オープンの概念と研究現場とのギャップについても考える必要がある。
  ○ データを公開するといったときに、生データのままでは活用できず、データ処理のソフトなども含めて公開されなければ意味がない場合もある。そのあたりの仕組みについても議論する必要がある。

(2)機関リポジトリの機能強化

  ○ オープンアクセスへの対応として、機関リポジトリの活用は方策の一つではあるが、設置機関は多いものの中身を見ると論文掲載数は少ない現状にある。その原因はどこにあるのか。また、海外の状況はどうなっているのか。
  ○ 機関リポジトリは共有や公開のためのプラットフォームとして期待されてきたが、オープン化の流れの中ではその限界が見えつつある。機能強化を検討するにおいては、国全体の利益を考えつつ深掘りしていく必要がある。
  ○ ジャーナルの論文掲載は少ないものの、かつてはごく一部のための存在であった紀要論文が掲載され、サーチエンジンやディスカバリーサービスで検索できるようになり、授業の流れの中で学生に活用されるという効果も近年出てきている。
  ○ リポジトリというインフラ整備と運用体制はほぼ世界標準に沿って着実に進歩してきているが、蓄積するだけでなく、使えるものにする必要性は共有されていると思う。機関リポジトリは各機関においてそれぞれ進歩しているが、機関という枠組みにとらわれず、分野ごとの特性や強みなどにも考慮して取組を検討すべきではないか。
  ○ ある機関の強い分野と他の機関の強い分野が合わさったシナジー効果というのがリポジトリの先にあるのではないか。分野リポジトリとも言うべきものが当該分野のニーズを取り出して具体化するために、学協会、大学図書館、大学自体が協働していくことが重要である。
  ○ 機関リポジトリが縦糸だとすると、分野リポジトリは横糸のようなもので、それらを統合的に議論しながらどう進めるべきかについて検討すべきだ。

2. コンテンツの電子化等を背景とした大学図書館機能の強化

  ○ 大学図書館の機能そのものは、本質的に変わっていないが、今日の大学図書館は、従来のように紙の資料を集めて活用できるようにすれば良いというものではない。次のステップとして大学図書館をどのように考えるのかというところに来ているのではないか。
  ○ 大学図書館は、総体として我が国の教育研究の発展に貢献する立場を維持してきた。機能強化の検討に当たっては、多様な大学図書館が存在する中でそのベースラインとして何を維持し、どのような役割を果たしていくべきかという点と、オープンサイエンスの流れの中での先進的な機能にどう取り組んでいくべきかという二つの点について明確にすべきだ。
  ○ 多くの大学図書館職員は従来のベースラインで仕事をしており、新たな形にシフトしていくためには、このベースラインの部分をどう維持し、その上で新たな展開にどう対応していくかが課題である。その際、多くの大学図書館で認識されているベースラインそのものが本当に妥当なのかということも確認する必要がある。
  ○ IT化が進む中で大学図書館の今までのサービスの再定義や、役割が激変している部分の議論を重点的に行う必要がある。
  ○ アクティブラーニングのフェーズは収束に向かっていて、次は世界的に見てもリサーチコモンズ、すなわち研究に対してどのように大学図書館が貢献するかというフェーズに移りつつある。
  ○ 大学図書館が、ある種のコーディネーター的な役割を果たしていくことがかなり重要になってくるのではないか。このような機能も含めて大学図書館の次の時代の役割というようなものを議論してはどうか。
  ○ 一部の進んだ大学図書館だけがラーニングコモンズ、リサーチコモンズなど、先進的な取組を行うというのではなく、多くの大学図書館でコンセンサスが得られ、一定程度のサービスが提供できるレベルのベースラインを明確に示す必要があるのではないか。行政データへのアクセスのアプローチは、大学図書館であればどこでもできることで、そういう取組自体が今日の大学図書館のベースラインであると発信することも必要ではないか。
  ○ 各大学が様々な試みを行っている中で順調に機能した例としては、遺跡リポジトリのようなこれまで余り流通していなかった研究資源を大学図書館がプラットフォームを提供することで広く使えるようになったものがある。このような活動を一般化した言葉にして、これからの大学図書館機能の新しい活動の方向性として発信し、必要な資源を投入していくことが重要ではないか。
  ○ プレプリントのデータベースなどは学協会が主導していて、そこに公的あるいは私的な資金が入っている。大学図書館と学協会との関わり方についても考えるべきである。
  ○ イノベーションということで考えれば、違う分野の研究者が出会えるようにするためにデータの見せ方という点に注力する方向性も考えられ、何かキュレーション的な機能も重要ではないか。

以上

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室

麻沼、齊藤
電話番号:03-6734-4080
ファクシミリ番号:03-6734-4077
メールアドレス:jyogaku@mext.go.jp(コピーして利用される際には全角@マークを半角@に変えて御利用ください)

(研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室)