第8期研究費部会(第6回) 議事録

1.日時

平成28年2月26日(金曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省13F2・3会議室

3.議題

  1. 平成28年度予算案及び関係施策の状況について
  2. 科学研究費補助金審査部会の審議状況について
  3. 挑戦的研究への支援について
  4. その他

4.出席者

委員

佐藤部会長,甲斐委員,栗原委員,髙橋委員,西尾委員,小安委員,白波瀬委員,城山委員,西川委員,羽田委員,射場委員,上田委員,橋本委員

文部科学省

小松研究振興局長,生川大臣官房審議官,鈴木学術研究助成課長,前澤学術研究助成課企画室長,他関係官

オブザーバー

勝木日本学術振興会学術システム研究センター副所長,盛山日本学術振興会学術システム研究センター副所長,山本日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員

5.議事録

【佐藤部会長】
  ただいまより第8期第6回の研究費部会を開催したいと思います。
  本日は,第一に,平成28年度の予算案について事務局より報告を頂きます。2番目に,科学研究費補助金審査部会において検討いただきました大型研究種目の検証や審査システム改革の報告等をお願いし,これについて審議をしたいと思っております。3番目に,これまで当部会で議論してまいりました挑戦的な研究への支援について審議をお願いしたいと思っております。
それから,最後の議題として,人事にかかわる案件についてお諮りしたいと思っております。この部分につきましては非公開とさせていただきます。

 (1)平成28年度予算案及び関係施策の状況について

【佐藤部会長】
  それでは,1つ目の議事に入りまして,科研費改革の推進でございます。
まずは,平成28年度予算案や,今年度公募を開始した国際共同研究強化の内定状況をはじめ,関連分野の状況などについて事務局より御報告を頂きます。よろしくお願いします。

【鈴木学術研究助成課長】
  それでは,まずは資料1-1について御紹介いたします。研究費部会では,昨年の夏に概算要求に向けた基本的な考え方,また,科研費改革の全体の実施方針・工程表に関して御審議いただきました。それ以来,少し間が空(あ)きましたが,その間,予算の折衝がございまして,本日御紹介するような内容が取りまとまりましたので,御報告いたします。
  資料1-1をめくっていただきますと,1ページは,これまで何度か御説明させていただいた科研費改革の全体像について概略をまとめたペーパーでございます。ここにございますとおり,学術分科会でおまとめいただいた報告書や,昨年学術分科会で御了承いただいた改革の実施方針・工程表にのっとって進めていくということで,平成28年度は,諸改革の加速・全面展開を図っていこうという大事な時期に当たると認識しております。また,折しも28年度からは第5期の科学技術基本計画もスタートするということで,そういう観点からも政府全体としても重要な時期に当たっております。そして,これも本日の議事にございますが,30年度に新しい審査システムへ移行することをにらんで,いろいろな対応を進めていくということでございます。
  そこで,次の2ページが,28年度予算案の概要をまとめたものでございます。全体規模に関しましては,右上の欄にございますとおり,予算案は2,273億円弱ということで,これは本年度とほぼ同水準でございます。予算折衝においては大変厳しい議論もございましたが,大学の先生方や学術界の方々からも科研費の重要性について声を上げていただきまして,一定の理解が得られた結果,金額の確保が図られたということです。学術分科会においても,昨年11月に分科会長の佐藤先生から,日本人のノーベル賞受賞を契機として声明を発していただき,そうしたお力添えもございましてこのような水準の確保が一応できたということでございます。ただ,概算要求自体は約150億円増の要求をしておりましたが,そこは達せられなかったということですので,この予算の制約の中で新しい取組や試みをいろいろとやっていくという考え方でございます。
  ポイントとしては,去年の概算要求に向けての御議論の中では,挑戦的な研究への支援を強化することが一つの大きな柱でしたが,最終的な形としては,従来の挑戦的萌芽研究を見直し発展させて新しい種目を作ろうという内容になっております。従いまして,1)のとおり,新しい種目においては,挑戦的萌芽研究と同様に,アイディア・計画の斬新性を重視するという審査基準とし,研究費の上限としては2,000万円以内のかなり大型の研究も支援する。研究期間は6年以内で腰を据えた研究ができるようにしようということでございます。
  また,現在,議論中の総合審査という新しい審査方式についても全分野にわたって先行して実施しようという内容でございます。この新種目については,今年の秋から公募・審査を行い,実際に交付するのは29年度からを予定しております。
  右側の体系図にもございますとおり,昨年の議論の段階では挑戦的萌芽研究というものがありつつ,その上により大型の種目がもう一つ加わるというようなイメージでしたが,最終的には,挑戦的萌芽研究の発展・見直しという形でございます。
  また,2)にございますとおり,基盤研究種目,具体的には基盤研究(B)と若手研究(A)については,助成水準を確保するための補塡をすることを要求しておりましたが,今回,一応,そのことについても可能という結論になったということでございます。ただ,昨年の新規の概算要求事項として,異動直後の研究室立ち上げ等を支援しようという独立基盤形成についても盛り込んでおりましたが,そちらについては,残念ながら予算全体の制約の中で見送ることになっております。概略は以上でございます。
  次にただいま簡単に申し上げた挑戦的な研究に関する新しい支援策については,今年の秋に公募を行うべく,具体的な制度設計をこれから進めていくことになってまいります。その際には,昨年の概算要求に向けてこの問題について種々御意見を頂いた内容,例えば,「計画の斬新性重視する一方で,一定の研究遂行能力を求めるなど,質の確保とのバランスをとる」など,そのようなことをはじめとして何点か御指摘を頂いた内容を留意点として踏まえながら,また,昨年からの事情の変化として,挑戦的萌芽研究を見直し発展させるということになりましたので,そういう新たな論点を付加しながら,これから検討を急いでいく必要があるということでございます。
  それから,4ページ目は,第5期科学技術基本計画のうち科研費改革に関する部分の抜粋でございます。先ほど少し申し上げた,今回の予算では認めるには至らなかった研究者の独立基盤形成については,この基本計画の中では文言として入っておりますので,そういう意味では,今後5年間に向けてこのようなテーマが引き続き宿題であると私どもは認識しております。
  また,第4期と同様に,新規採択率30%という一種の数値目標が掲げられております。現在,科研費の応募申請が非常に増えつつあるというトレンドの中で,採択率というものをどのように考えていくのか,その対応についても今後大きな課題になってくるということでございます。
  次の5ページは,研究費全体横断的なことでございますので,後ほど御覧いただければと思います。
  最後の6ページは,この基本計画の特徴として幾つかの数値目標が挙げられているということです。科研費制度に関わりが深いという点では,「論文数/被引用数」に関する指標として「トップ10%論文数の割合が10%となることを目指す」ということが掲げられております。こういったものをどういう形で個別のいろいろな施策の中で捉えていくのか,そのあたりについてはまだ検討すべき課題が残っておりますので,この基本計画を受けて政府全体としてどうしていくかという議論の中で,私どもとしましても科研費について適切な対応を検討していきたいと考えております。
駆け足でございますが,私の方からは以上でございます。続いて,個別各論について担当から御紹介いたします。

【前澤企画室長】
  続きまして,資料1-2の御説明でございます。まず,国際共同研究加速基金の進捗状況について最新の御報告をいたします。
  1ページ目は事業概要ですので飛ばしまして,2ページ目を御覧ください。国際共同研究強化については1月までに審査が終わりまして,1月末に交付内定をいたしました。応募件数1,089件に対して採択課題数は358件となっております。また,帰国発展研究については,応募件数45件について現在審査中でして,3月頃に交付内定予定でございます。
  3ページ以降は,国際共同研究強化の採択状況をいろいろな角度から分析した資料でございます。3ページは,機関種別,職種別の内訳が出ております。国立大学は元々応募件数も多いのですが,採択件数が少しそれを上回るような割合になっております。それから,職種別で見ますと,教授,准教授のクラスの方が応募件数に比べて採択件数が多いというような状況になっております。
  4ページが年齢別,分野別の状況でございますので,これは後ほど御覧いただきたいと思います。
  5ページ目は,応募者が元々持っている基課題の研究種目の比較です。基盤研究(B)や若手研究(A)に元々採択されていた方がこの国際共同研究強化でも採択率が高いという状況です。
  6ページ目は省略させていただきます。
  現在,日本学術振興会において,今年の審査の過程で審査委員の方から頂いた御意見などをまとめて議論していただいておりますので,研究費部会でも御紹介する機会があろうかと思います。そういうプロセスを踏まえて,次回の公募に当たっての検討を進めてまいりたいと考えております。
  それから,7ページ目は,科研費の成果を公開しているデータベースの改善でございます。こちらについては,成果の可視化を進めるために機能を大幅に向上させていきたいと考えております。例えば,横断検索を可能にしたり,検索項目を追加したりする。それから,後ほど学術情報委員会の御議論の内容も御紹介いたしますが,オープンアクセスへの対応を強化するために,オープンアクセス対応の研究論文についてはリンクを追加して検索が可能となる機能を追加するようなことを考えております。こちらの新しい「KAKEN」は4月下旬から稼動予定でございます。
  次に,資料2-1から2-3までの御紹介です。こちらは1月22日に閣議決定された平成28年度から32年度までの5年間の第5期科学技術基本計画に関係する資料でございますが,総合科学技術・イノベーション会議での議論についてこちらの部会でも何回か御紹介しておりますので割愛いたします。
  なお,資料2-2は,第5期科学技術基本計画における指標及び目標値について,少々留意点を提示するとともに,更に指標については総合科学技術・イノベーション会議で検討し,第5期期間中にフォローアップ体制を構築するということが書かれた資料でございます。科研費との関係で申し上げますと,特に総論文数を増やすこと,それから被引用回数トップ10%論文数の割合を10%にするという目標値がございますが,資料2-3のとおり,科研費については,我が国の論文産出の総数においてもトップ10%補正論文数の割合についても大きく貢献をしているという状況でございます。指標や目標値についての総合科学技術・イノベーション会議の議論は,今後研究費部会でも注視してまいりたいと考えております。
  それから,資料2-4です。こちらは日本再興戦略に盛り込まれている指定国立大学(仮称)の制度検討のための有識者会議の取りまとめの概要でございます。指定国立大学といいますのは,世界の有力大学と伍(ご)して国際競争力を持つ国立大学を,国際的な研究・人材育成,そして知の協創拠点とするものでございます。ちょうど今朝の閣議で今国会での関連法案提出も決定されました。具体的な制度としては,例えば,文部科学大臣による指定国立大学の指定や国立大学法人の資産の有効活用について,国立大学法人法等に所要の改正を行っていく予定でございます。
  それから,資料2-5は,学術分科会学術情報委員会の審議まとめ案の概要でございます。ちょうど本日の午前中に最終取りまとめに向けた議論が行われたと承知しておりますが,概要を御紹介させていただきます。
  2.の基本的考え方においても,公的研究資金による研究成果のうち,論文及び論文のエビデンスとしての研究データは原則公開とするという考え方が示されております。その前提として,研究者によるデータの適切な保管や,どのデータをどのような様式で公開するか,又はどのような場合に非公開にするかについて,研究者コミュニティーによる検討を踏まえた対応が必要とされております。
  また,次のページの3.の基本的方策では,国,研究機関,学協会等,関係者それぞれの取組について記載されるとともに,人材育成の必要性についても述べられております。今後,最終的な取りまとめの後,ここに記された内容については学術情報委員会において継続的なフォローアップを行う予定とされております。
  私からは以上でございます。もし,よろしければ西尾先生から少し補足いただければと思います。

【佐藤部会長】
  ありがとうございました。それでは,西尾先生,お願いできますでしょうか。

【西尾委員】
  資料2-5の学術情報のオープン化の推進について補足いたします。学術情報,これは研究活動であるとか,さらに広く教育活動におけるデータも含めた学術情報に関しては,原則公開とするということですが,何でも無条件に公開をしていくということではなく,場合によっては,国益等を考えて,どうしても公にすべきではないものもあるという前提でのオープン化ということを考えております。
  また,学術分科会等において,特に人文・社会科学系の委員の方々から,研究のプロセスにおいて得られたデータを公開しようとすると結構手間がかかるとか,研究に割く時間以外のオーバーヘッドがかかるのではないかという意見を再三頂いております。国としても,そのようなデータをオープン化する上でのプラットフォームをきっちり作る必要があると考えており,それに関しては,今後,国立情報学研究所が大きな役割を果たしていくことになると思われます。
  確かに,ここに書かれていることを具体的に実行していこうとすると,多くの方々の御理解と相当な手間がかかると考えられます。そのようなことを考慮しつつも,科学技術,あるいは学術研究の国際競争力を増すために,研究データの公開を国として進めること当たって,どのように公開をしていけばよいのか,どのようなシステム実装をしていけばよいかに関して,その指針となることをこの審議まとめ案で書かせていただいております。
  また,研究データの公開等については,分野ごとで考え方が非常に異なります。現在,日本学術会議の各々の分野別委員会において,データの公開に関するポリシーについて議論が並行して進んでおります。そのような議論とも連携して今後進める必要があると考えておりますが,いずれにしても,現時点で学術情報のオープン化について書くことができる内容については,審議のまとめ(案)ですべて網羅したと考えております。審議まとめを公開した後は,それを生かして日本の学術情報のオープン化をどう進めていくのかということが今後の大きな課題であり,ただ今,御紹介がありましたように,今後のフォローアップも重要だと考えております。
  ついでに1点だけコメントさせてください。先般開催の学術分科会の折に,小安先生から,電子ジャーナル価格の高騰に関する深刻な問題が起こっていることに対して,例えば,文部科学省等での対策等がなされているのか,という御質問がありました。例えば,ナショナル・サイトライセンスという,国全体でライセンスを取るようなことの検討も過去に文部科学省を中心としていろいろなされてきました。しかし,その金額たるや莫大(ばくだい)なものですし,また,個々の大学によって,どういうジャーナルを必要としているのかという条件が相当違います。そういうことを考慮すると,国レベルでライセンスを取るというような交渉をし始めますと,さまざまな拘束条件がついてきまして,交渉のテーブルになかなか乗らないのが現状です。ただし,ご指摘いただきました深刻な状況への対策に関しましては,文部科学省の下での図書館関係の委員会をはじめ種々の委員会などで鋭意行ってきたという事実はあります。そういう努力はしてきたということだけはお伝えしたいと思います。以上です。

【佐藤部会長】
  西尾先生,どうもありがとうございました。情報がたくさんありましたので,御質問もたくさんあると思います。どなたからでも結構ですので,御意見等の発信をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

【羽田委員】
  先ほど前澤さんから御報告いただいた,国際共同研究強化の採択状況についてなのですけれども,分野別に見ると人文学と社会科学は相当たくさん応募があるし,採択されているように思います。三百数十件のうち百何十件が人文学と社会科学で,3分の1ぐらいを占めているのではないかと思います。これはどういう理由なのか,分析等はされていますでしょうか。

【前澤企画室長】
  申し訳ございません。その分析は今やっているところですので,また御報告させていただきます。ただ,人文学,社会科学はフィールド調査において海外の大学などと共同研究を行う,あるいは,海外の大学の資料を活用しながら共同研究を進める,そういう課題が割と多かったように記憶しております。

【佐藤部会長】
  いずれにしても,人文系の方が積極的に国際共同研究強化に応募することは本当に有り難いことだと思います。ほかにも御意見を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。

【小安委員】
  いろいろな議論がいろいろなところでされたと思うのですが,指定国立大学について,幾つぐらいの大学を指定するのかなど,そういうことは議論されているのでしょうか。

【前澤企画室長】
  申し訳ありません,当課は担当課ではございませんが,今のところ幾つ採択するという目標は公には示されていないと承知しております。ふさわしいものを大学からの申請によって文部科学大臣が指定するという仕組みであると理解しております。

【佐藤部会長】
  ありがとうございます。どうも指定国立大学の話は中身が今一つ読めないのです。財政の改革というようなことも少し書かれておりますが,指定されたら何がメリットなのか今一つ読めないので,そういうことをもう少し公開してほしいと思います。
  ほかにはいかがでしょうか。はい,どうぞ。

【上田委員】
  公開という観点で,素朴な質問です。論文のオープン化というのはもちろん非常にエンカレッジすべきことで,研究者もそれに対して何の抵抗もないのですが,一番の壁は海外の出版社です。オープンアクセスジャーナルが増えていて,それは投稿者の費用で行うというモデルですが,そうではないところがたくさんあります。そこは何か具体的な解決策はあるのでしょうか。

【西尾委員】
  商業ベースのジャーナルに関しては先ほどのジャーナルの高騰の問題などがあり,それに対抗することも考えた上で,機関リポジトリというものを各機関が整備して来ました。論文誌に出すタイミング等とのいろいろな関連はあるのですが,ジャーナルに論文を出すという動きと同時に,大学等において,その成果を機関リポジトリとして公開するということが積極的に行われていて,それのような動きに関しては,日本は世界的に見てもトップランナーなのです。ですから,研究成果をよりオープン化して日本の国際競争力を高めていく上では,そういう動きをさらに強化することは重要と考えています。その際,研究成果に関連する種々の研究データも連動させてオープンにしていくという良い循環の中で,日本全体の研究成果のオープン化をうまく進めていけないか。あるいは,そのような動きの中で,日本独特の方法としてうまく展開できないのかということは,今後考えていきたいと思っています。
  なお,国内の学術機関における機関リポジトリの運用については,元々国立情報学研究所が自らの運営費の一部を投じて始めたものです。そういう観点からすると,そのための大規模なプラットフォームシステムは,今後,国立情報学研究所において構築していくのが適切だろうと私は考えております。

【佐藤部会長】
  西尾先生に質問なのですけれども,私は物理の分野ぐらいしか知らないのですが,物理学会の『PTEP』というジャーナルに関しては,これは元々湯川先生が創刊されたものですけれども,オックスフォードプレスに委託して完全にオープン化ができているものです。そのように業者に頼んだ場合でも,それほど費用の負担なくオープンアクセス化ができている場合もあるわけですが,国立情報学研究所との絡みなどについてはどういう議論になっているのでしょうか。

【西尾委員】
  例えば,ある学協会やある分野において,今おっしゃったようなモデルがうまく作られている場合は,現在のまま継続して進めていただくことで結構だと思います。どちらかというとピュア・サイエンス分野では少ないかもしれませんが,データそのものが大きな利潤を生んでいくとか,データそのものを持つということにより,その後,さまざまなビジネスなどにつながっていく分野があります。そのような分野では,研究データを何時までにどの程度公にするのか,というような議論が相当なされています。そうなりますと,出版社との問題というよりは,国益の観点からも国レベルできっちり考える必要があるということになり,さらに公開のためのプラットフォームを構築する場合には,国立情報学研究所を中心するのが順当ではないかということで議論を進めています。

【佐藤部会長】
  分野によっての違いは随分大きいということですね。どうぞ。

【栗原委員】
  研究成果のオープン化を大変広く検討していただいて,西尾先生がおっしゃるように,審議まとめにおいて幅広い話題がすべてカバーされていると思うのですが,この中で,研究室レベルでの研究成果の保管というような概念から,データベース,あるいはジャーナルに出した論文の基盤となっている研究データまでいろいろな階層があるので,これをどのように捉えて,どういうところに最初に力点を置いて国としてデータベースをそろえていくのかという点は,非常に多様であるだけに捉えるのが難しいということと,あとは,ファシリティ自体も必要だと思うので,そのあたりはどういう議論になっているのか教えていただければと思います。

【西尾委員】
  研究データを今後クラウド化していくということの意味についてお話しします。例えば,ある研究者が,大学の研究室に所属していたときに,現在は,研究室のサーバーにその研究者の研究データ等が保管されることが通常です。その場合,その研究者が異動したときにそのデータは生かされなくなってしまうことが多々起こります。そのような事態を解消する観点から所属機関,あるいは国レベルのクラウドシステムに蓄積することが重要になります。その実現のためには,今後,栗原先生がおっしゃったようなステップが必要です。まず,研究室にあるデータを,各々の大学等の研究機関のサーバー,クラウドシステムなどに蓄積いただく。その次のステップとして,国立情報学研究所に直接行くのか,あるいは,現在7大学に設置されている情報基盤センターレベルのアカデミッククラウドのサーバーに一旦蓄積して,それからさらに国立情報学研究所に向かうというような,ある種の階層性を持たせて実現していく必要があると思っています。
  今後,いわゆるスパコンで重要視されていた計算パワーという視点に加えて,データセントリックなアプローチにより科学技術を進展させることが重要になってきているときに,今申し上げたような階層的なシナリオをきっちり考え,国全体として一貫性を持った形での情報がお互いに行き交う環境を構築するためのビジョンを持つ必要があると考えています。

【栗原委員】
  データの保管の際に,こういう電子データの形にしておくのは将来的にも非常に重要なことだと思うのです。一つずつの測定機器が研究室のサーバーにつながれて,かなりアクセスもよく,保管性や安全性を考えると,いろいろなことを考えたフレームがきちっとできていくことがすごく大事だと思いますので,そういうところを検討いただけると大変いいと思います。よろしくお願いします。

【西尾委員】
  もう一方で,実験データ等を整えておくことの意味として,いわゆる研究不正を問われるようなときのために,ある種の証拠となる研究データとしてきっちり残しておくことが大事です。ですから今後,栗原先生がおっしゃった意味では,数年間に1回しかアクセスしないようなデータと,常時頻繁にアクセスされて使われているデータについて,システムとして全体的にどういう形で構築していくのかを予算的な観点からも十分に検討していく必要があります。単なるアーカイブデータであれば,データを探し出すまでに,例えば,4時間かかってもよいから安い媒体に入れておくとか,そういうようなコスト面ことも含めた適切なシステムデザインをする必要があると思っています。そのあたりのシステムアーキテクチャーについては,今後の大きな課題として考えていきたいと思っています。

【佐藤部会長】
  ありがとうございます。どうぞ。

【城山委員】
  少し細かい点の質問ですが,来年度の科研費の予算案の説明で,挑戦的萌芽研究は,最終的には見直しという形で整理されたということなのですが,当初は従来の挑戦的萌芽研究とは別の新しいプログラムを立てて,性格が違う2つの形にするという議論をした記憶があります。今の挑戦的萌芽研究は既存の業績ではなく,むしろ計画調書のアイデアのところで勝負するという形だけれども,新たに立てるプログラムは規模も大きいので,ある程度実績もちゃんと見た上で評価すべきではないかとか,かなり性格の違うものとして位置付けられていたと思うのですが,今回こういう形で一括して見直しをした場合に,その性格を一体どういうものにするのか,あるいは,その中にサブカテゴリーを作って差別化するのか,規模をどのぐらいで割り振るのか,そのあたりの検討が必要になると思うのですが,そこは何か詰めておられるのでしょうか。

【鈴木学術研究助成課長】
  実は,本日の議題の後半で,挑戦的研究について,今先生がおっしゃった提案を含めた御議論を賜りたいと思っております。まさに先生の御指摘のとおりのところが重要な検討課題でして,上限2,000万円以内としたときに,その同じ種目の中で様々な規模の研究課題の応募が出てきます。そのときにすべて同一の基準なり考え方で対処することが望ましいのかどうかということが新たな大きな課題になってまいりますので,その点も御意見を頂きながら,これから制度設計を進めていきたいと考えております。

【佐藤部会長】
  はい。本日の3番目のテーマとなっておりますので,後ほど審議したいと思います。

(2)科学研究費補助金審査部会の審議状況について

【佐藤部会長】
  次は,科学研究費補助金審査部会の審議状況についてでございます。昨年6月に研究費部会から審査部会へ検討をお願いした大規模研究種目の在り方の検証について,審査部会長であります甲斐先生から御報告をお願いしたいと思います。

【甲斐委員】
  それでは,科学研究費補助金審査部会の審議状況について御報告いたします。
  昨年6月に研究費部会において大規模研究種目の在り方の検証等にかかる審議を行いましたが,その際,佐藤部会長より,審査部会での検証について要請がございました。審査部会においては,その後,約8か月にわたり特別推進研究及び新学術領域研究の検証を進めてまいりました。
  説明の便宜上,まず,資料3-2の新学術領域研究関係から御報告いたします。新学術領域研究の検証に当たっては,まず,研究を終了した約40領域の領域代表者など332名の関係研究者に対して,成果や制度改善すべき点などについてアンケート調査を実施し,その分析を通じて検証結果を取りまとめました。
  検証結果については,4ページの3の検証結果の概要を御覧ください。この中のポイントをかいつまんで御紹介いたします。
(1)新学術領域研究(研究領域提案型)の意義,効果等についてですが,5ページの3つ目の丸をごらんください。「本制度が目指す『多様な研究者グループによる有機的な連携の下に新たな視点や手法による共同研究,研究人材育成の推進により,我が国の学術水準の向上・強化につながる研究領域の創成・発展をさせる』という目的・意義の達成に一定の貢献があったと言える。」また,4つ目の丸で,「また,本制度の特徴的な要件として掲げる『異分野連携』,『共同研究』,『研究人材育成』等の取組を通じた活動も,研究者間の自発的なボトムアップを基本としつつも,こうした緩やかな方向付けが相まって一定の機能を果たしていると判断できる」というふうに整理しております。
  また,5ページの中段の(2)新学術領域(研究領域提案型)の制度等についてです。これは,太字で記載しているように,約8割強が改善・充実すべき点があると回答しています。具体的には,太字のところの1ポツの「事業期間終了後のネットワークの継続展開等のための別途の支援措置を講じるべき」,2ポツの「領域代表者の裁量権を拡大すべき」などの意見がございました。
  審査部会としては,こうした全体評価や改善意見を踏まえまして,課題を5つにまとめました。10ページの(5)改善に向けた課題にまとめてございます。この5つの課題を読ませていただきます。
  課題1,「新たな学問分野の創成」と「既存分野の深化,新展開,水準向上を目指す」という本制度の趣旨を,よりバランスの取れた形で推進・支援するための方策の必要性。課題2,若手研究者の連携や人文社会系の研究など,領域の規模や成熟度に応じた審査の必要性。課題3,公募研究を通じた若手研究者を含む多様な研究者の参画の機会や研究ネットワークの発展を推進・確保するための方策の必要性。課題4,公募研究において,領域の発展のために真(しん)に必要な最適な人材の確保や新たな視点・アプローチによる共同研究等の推進・活性化を図るための方策の必要性。課題5,新たな領域創成のための中期的な支援・持続的な発展を推進するための方策の必要性。
  審査部会としては,検証のアウトプットとして,こうした課題提起に止め,具体的な改善策について意見集約を行うには至っておりません。
  また,今回の検証作業は,10ページの(6)今後の検討の在り方のとおり,現行種目の基本的な枠組みを前提とした内容であり,科研費改革において種目体系全体を見直す場合は,別途の観点から検討を行う必要があると考えております。
  なお,本種目の実施体制を巡っては,日本学術振興会の一元化を進める旨,日本学術振興会の中期目標において定められております。そうした状況も踏まえて,早期に実施可能な改善策と中長期的に講ずべき施策等を整理しながら,更に検討を深めていくことが適当である旨,申し添えております。報告書のポイントは以上です。
  方向性について,研究費部会の了承をいただけますならば,今後の改善策等については,引き続き審査部会で多面的に検討作業を進めさせていただけれぱと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

【佐藤部会長】
  ありがとうございました。まずは続けて,特別推進研究の在り方についての御報告をお願いいたします。

【甲斐委員】
  それでは,特別推進研究の在り方の検証についての御報告をいたします。資料3-1を御覧ください
  本件については,直接審査に携わっている日本学術振興会学術システム研究センターに検討をお願いして,現行制度の改善策を含めた報告を頂きました。これを受けて,資料3-1のとおり,2月24日に審査部会としての見解をまとめたところでございます。
  検討の経緯と制度改善の詳細については,この後,事務局より資料の読み上げにより御紹介いたしますが,審査部会としては,特別推進研究により顕著な学術的研究成果が得られていると評価した上で,研究者人生で,「ここ一番」の大きなブレイクスルーを目指す研究を支援する,複数回の受給はできないものとする,応募額を尊重して支援し,研究期間は柔軟化を図るといった点を柱とする改善策を取りまとめております。では,事務局から読み上げをお願いいたします。

【事務局】
  2月24日に審査部会でおまとめいただきました科学研究費助成事業「特別推進研究」の今後の在り方について,御紹介いたします。
  1.検討の経緯。「特別推進研究」は,「国際的に高い評価を得ている研究をより一層推進するために,研究費を重点的に交付することにより,格段に優れた研究成果が期待される一人又は比較的少人数の研究者で組織する研究計画」への支援と位置づけられ,昭和54年度の創設以来,学術研究を支援する科研費の中で最も大規模な研究種目として,我が国のみならず世界の学術研究を牽引(けんいん)する優れた成果を多く輩出してきた。
  一方,学術研究の現代的要請に対応する科研費改革の方向性について取りまとめた「我が国の学術研究の振興と科研費改革について」において,種目の再整理などの基本的な構造の改革が提起され,大規模研究種目の改善に向けた検討課題も示された。その後,平成27年6月10日,同中間まとめを受けて審議を行っていた研究費部会から,当部会に対し,大規模研究種目(「特別推進研究」,「新学術領域研究」)の成果や役割,審査・評価等を検証し,改善方策を検討するよう求めがあった。
  研究費部会から当部会に対して提示された具体的な検証事項は,以下のとおりである。
  当該研究種目を創設した目的・意義が十分に達せられているか(規模にふさわしい顕著な成果が上がっているか等)。研究の発展を支援する観点から,他の研究種目との間の役割・機能分担は十分明確なものとなっているか。審査や評価は,社会の要請や変化に適切に対応したものとなっているか。応募・採択状況について,新陳代謝が十分になされているか。科研費以外の大型研究費制度との役割・機能分担は十分明確になされているか。
  「特別推進研究」については,当部会より,審査を担当している日本学術振興会に対し検討を要請した。同会の学術システム研究センターにおいては,科研費制度における「特別推進研究」の在り方と改革の方向性及び審査方法について総合的に検討が行われた。その検討結果として,別添の報告(以下,「JSPS報告」という。)がまとめられ,平成27年12月8日,同会より当部会に対して報告がなされた。
  2.検証を踏まえた制度改善について。JSPS報告においては,「特別推進研究」による支援の下,人文・社会系,理工系,生物系の各系において,トップダウン型の大型研究費に必ずしもなじまない基礎的研究が展開され,研究進捗評価(検証)の結果が示すとおり,顕著な学術的研究成果が得られていると評価している。他方,連続採択・複数回受給等をはじめ,「特別推進研究」の制度の在り方に関わる問題が少なからず顕在化していることを指摘し,様々な研究費制度の創出などの環境変化をも踏まえ,当該制度の位置付けの明確化及び審査方式の改善について,以下のような提言を行っている。
  「特別推進研究」の位置付けの明確化。「特別推進研究」は,「新しい学術を切り開く真に優れた独自性のある研究」を重点的に支援するよう明確化する。「現在の世界最先端の研究」の発展,大型化を支援するのではなく,新しい学術の展開に向けた挑戦性を重視し,研究者が研究者人生で「ここ一番」の大きなブレイクスルーを目指す研究を支援する。複数回の受給はできないものとする。(研究テーマが全く異なる場合は例外的に受給可とする。)研究費は可能な限り応募額を尊重して支援する。また,研究期間は研究の必要性に応じて柔軟に設定できるようにする。
  審査方針の改善。審査・評価第一部会での3系での審査体制は基本的に維持するが,委員の人数は適切な規模とする。また,委員の任期は最長で6年とし,審査の継続性に配慮する。最終的な採否は3系の代表者の合議で決定する。「特別推進研究」では,原則的に外国人研究者の審査への参加を求めるが,応募課題の内容によっては日本人のみを審査へ参加させることとする。また,外国人研究者による審査への参加に当たっては,現在行っている審査意見書を充実させ,研究課題の評価に踏み込んだ実質的なものにすることを検討する。
  当部会としては,JSPS報告に示された現状評価は適切なものであり,当該提言を踏まえ,「特別推進研究」を,挑戦性を重視したボトムアップ型の大型基礎研究による新しい学術の展開を期した助成制度として位置づけ直すことが適当である。厳しい財政事情を勘案するならば,新陳代謝を促進する観点から,受給回数の制限を設けることも妥当な措置であると考える。新制度の導入時期については,科研費改革の画期となる平成30年度をめどとすることが望ましい。今後,研究費部会において,JSPSにおける具体化に向けた検討作業と緊密な連携を図りつつ,種目体系・枠組みの見直し等の科研費改革全体にかかる審議が深まることを期待したい。また,文部科学省に対しては,学術政策の本旨を十分踏まえつつ,新制度への円滑な移行に向けて適切な行財政措置を講じることを求めたい。
  以上でございます。

【甲斐委員】
  ただいま読み上げていただいたように,審査部会としては,ただいま御紹介した内容のとおり,日本学術振興会の提言を踏まえて「特別推進研究」の見直しを行い,挑戦性を重視したボトムアップ型の大型基礎研究による新しい学術の展開を期した助成制度として位置づけることが適当であると考えております。
  今後は,新制度の平成30年度導入を目指して,研究費部会において,日本学術振興会における検討と緊密な連携を図りつつ,種目体系,枠組みの見直し等の科研費改革全体に関わる審議が深まることを期待しております。
  以上です。

【佐藤部会長】
  ありがとうございました。非常に重要な改革が提案されているわけでございます。最後に,分科細目の見直しを含めた審査システム改革についての検討状況の報告をお願いいたします。

【甲斐委員】
  では,引き続きまして,資料4-1を御覧ください。科研費審査システムの改革については,当初平成25年に分科細目表の大幅見直しを検討すべき旨を審査部会で提言し,日本学術振興会に検討を依頼しておりました。日本学術振興会においては,学術システム研究センターが中心となってこれまで精力的に検討を進め,単に分科細目表の在り方のみならず,審査方式の在り方も含めて議論を深めていただいているところです。振興会では,最終的な報告に向け検討が続いておりますが,審査部会では,これまで資料4-1にあるポイントについて報告を受けておりますので,御紹介いたします。
  まず,「科研費審査システム改革2018」と称する今回の改革構想は,冒頭にあるとおり,これまでの多様な学術研究を一層振興させるとともに,新しい学術領域を開拓し推進するために,学術の特性に配慮しつつ科研費審査方式の相互的見直しを行おうとするものです。
  改革の主なポイントは,続いて列挙するとおりです。1つ目の丸は,平成30年度公募からの審査は,「小区分・中区分・大区分」で構成される新しい審査区分で行い,「系・分野・分科・細目表」は廃止する。2つ目の丸,応募総額が比較的小規模な基盤研究(B・C),若手研究(B),及び挑戦的萌芽研究については,304区分の小区分で審査を行い,2段階の書面審査により採否を決定する。3つ目の丸,応募総額が中規模の基盤研究(A),若手研究(A)については65区分の中区分で審査を行い,書面審査と合議審査を同一の審査委員が行う総合審査により採否を決定する。4つ目の丸,基盤研究(S)については11区分の大区分で審査を行い,総合審査により採否を決定する。
  審査部会としては,この日本学術振興会の改革構想を尊重する方向で検討を進めており,当面,振興会からの最終報告を踏まえて4月のパブリックコメントに付す内容をまとめたいと考えております。パブリックコメント等の具体的な計画については,この後事務局から説明をお願いしますが,4月以降,審査部会としては,各界から寄せられた意見を踏まえて,振興会との十分な連携を図りながら検討を行った上で,年内をめどに審査システム改革の内容を最終決定したいと考えているところでございます。
  以上,御報告いたします。

  【佐藤部会長】
  ありがとうございました。それでは,事務局より説明をお願いします。

【前澤企画室長】
  はい,続きまして,資料4-2の御説明をいたします。
  「科研費改革に関する当面の普及啓発活動の実施方針(案)」でございます。今,甲斐審査部会長より御説明いただいたとおり,「審査システム改革2018」については,4月下旬に公開して,約1か月間,パブリックコメントを求める予定としております。そのパブリックコメントの様式は(参考1)のとおりです。形式としては個人ですけれども,団体としての意見提出も可能としており,寄せられた御意見については審査部会へ御報告して,最終案取りまとめに当たっての審議の参考とさせていただく予定でございます。
  また,(参考2)を御覧ください。このパブリックコメント開始後の4月26日に,東京大学において,文部科学省と日本学術振興会の主催によるシステム改革の説明会を開催したいと考えております。概要は(参考2)のとおりですが,改革案の趣旨や内容を日本学術振興会から御説明いただき,学界・産業界から「科研費改革に期待すること」というメッセージも頂く予定でございます。この説明会の内容につきましてはインターネットで公開し,参加できなかった方も後日フォローできるようにしたいと考えております。
  なお,この説明会への参加登録は,日本学術振興会のウェブサイトで3月上旬から受け付ける予定でございます。
  資料4-2の1ページに戻っていただきまして,3のその他を御覧ください。まず,科研費改革のQ&Aをウェブサイトで掲載する。また,科研費改革パンフレットの作成。また,関係機関や団体への説明や,要望を頂いた場合の対応を行い,研究現場からの疑問にも十分にこたえて,この新しい審査システムを平成30年度に円滑に導入できるようにしたいと考えております。
  それから,1点補足いたしますが,委員の皆様のお手元には,日本学術振興会で検討中の審査システム改革案の現状版を御参考までにお配りしております。ただ,こちらはまだ議論を継続しており最終確定版ではございませんので,本日は御参考にとどめていただき,まずは資料4-1に基づいて,この新しいシステムの大枠についての御意見,御議論をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【佐藤部会長】
  ありがとうございました。
  それではまず,特別推進研究の見直しについて,今の報告に関して質疑応答をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

【城山委員】
  「特別推進研究」に関する表現の確認です。資料3-1の2ページにJSPS報告の提言が引用されていますが,1つ目の丸で,『「現在の世界最先端の研究」の発展,大型化を支援するのではなく,新しい学術の展開に向けた挑戦性を重視し,研究者が研究者人生でここ一番のブレークスルーを目指す研究を支援する』という表記があります。しかし,これは表現の問題なのかもしれませんが,この話は必ずしも大型化を否定するということではないのかなと思うのです。例えば,8ページにあるJSPS報告書を見ると,下から3行目に,『基盤研究の単なる発展・大型化ではなく,研究者がその研究者人生において「ここ一番」のブレークスルーを目指す』ものだと書かれています。つまり,継続的に大型化するようなものは排除したいという趣旨だと思うのですが,他方,「ここ一番」というときには当然,大型化を行うことはあり得ます。このJSPS報告本文を見ればそのことが分かるのですが,2ページのような単純化した要約だけを見ると,大型化は一律的に駄目だというふうに見えてしまいます。そういうことではないのだろうなと思いますので,表現の仕方を確認していただいた方がいいと思いました。

【佐藤部会長】
  貴重な御意見をありがとうございます。そのとおりです。甲斐先生,何かございますか。

【甲斐委員】
  はい。言葉に関しては慎重に選んでもう一回書き直したいと思います。

【佐藤部会長】
  この文章だけ読むと,先生の御懸念は十分理解できることでありますので,文章は検討しなければならないと思います。
  ほかにはいかがでしょうか。何せ,1回だけということであり,これは今までにない大きな改革でございますので。はい,どうぞ。

【射場委員】
  今後の方策のところは,ああなるほどなと思うような内容で特に意見を言うこともないのですが,その前に現状の把握や検証のところは余り説明がなかったような気がしたのです。例えば,検証事項の最後のポツにある科研費以外の大型研究費制度との役割分担が現状はされているのかどうか。されていないから新しい方策があるのであって,そのされていない状況によって今後の方策も変わってくると思うのですが,それはどこか違う場所で既に報告があったと思っていいのでしょうか。

【甲斐委員】
  科研費の中の大型研究種目というと,1億円規模の研究費を取れるのは,もう特別推進研究だけになってしまいます。ほかにはあるのですが,例えば,AMEDや戦略基礎など,そういう大型研究費を取っている場合は,審査のときにその情報が明示化されてすべて配られるようになって,それらの研究費との重複の確認など,そういうことは行っております。ただ,制度として,特別推進研究からほかの大型研究費制度へ流れるような仕組みを作るというような議論は,この研究費部会で所掌できることではないのです。もう少し上の審議会で諮らないとできないことですので,検証としては,現場での重複を避けることはできますが,大枠についてはこれからの議論になるのかな思います。むしろ,そういう議論を是非,文科省,あるいはCSTIでやっていただきたいというふうに私たちは考えております。

【射場委員】
  だから,ある程度重複はあるということは踏まえた上で,この科研費の中では……。

【甲斐委員】
  先ほど申し上げた戦略基礎やAMEDなどとの,本当に単なる同じ研究内容での重複については,審査システムで厳しく見ているので,今はできないようにはなっています。だから,そういう重複はないのですが,重複がある,なしの問題ではなくて,何で同じ人が4回も5回も大型研究費を取るのか,例えば生物系では3課題ぐらいしか採択されないのに,何度も取っている人が常にいると,新しい芽が上がってこないです。そういうことですごく苦しんでいたのです。今回の改革において,日本学術振興会からは,もう泣く泣くとは思いますが,特別推進研究の受給は1回切りにするという御提言がありました。では,その人たちをどうするかという方策はないのです。科研費制度の中ではどうしようもないというところでありまして,これからはもう少し大きいところで議論していただかないといけません。
  これは,日本の顔なので守ろうという議論を5年ぐらいしていただいているのですが,特別推進研究だけでは解決できない問題であり,だからといってずっと許しておくと若い人の芽が出てこられないという状況で苦しんで,随分方策を考えていただいたのだと思います。

【射場委員】
  例えば,私が審査委員をしているJSTのCRESTやNEDOのとても基盤的なプロジェクトの中には,割と特別推進研究や基盤研究(S)と重複感のあるような研究内容があるのです。だけど,それが重複しているから悪いということでもなくて,重複しているところは多分大変重要なところで,基盤から応用にハンドオーバーするために,ある程度重複も必要なのではないかと思っています。そういうところを,必ずしも重複があるか,ないかという議論にとどまらないようにしてほしいというのがあります。

【甲斐委員】
  多分,論点が逆なのです。重複があるからいけないのではなくて,むしろ重複はできないのですが,そうすると本当に基礎を助けるところがないのです。つまり,特別推進研究から漏れた人をJSTのCRESTなどでとってくれるのならいいのですが,そういう制度はないのです。今,とても厳しくて,戦略基礎などの大型研究費を取っている方の内容は全部,特別推進研究の審査会では明らかになりますから,そういう方はとても採択されにくいので,応募しません。応募する方もいらっしゃいますけれども,審査会でとてもしつこく質問されますから,採択されにくいです。だから,重複が問題なのではなくて,科研費から漏れる優れた人を救うような制度には,CRESTもNEDOも,ほかのところもなっていないのです。そこで苦しんでいたというところだと思います。
  だから,大型の本当の基礎研究応用に行かれないような,あるいは国が決めた施策には入らないような,本当に研究者の興味からボトムアップで出てきたような研究で大型になってきたものを救う制度が極めて少な過ぎるのだろうなというふうに思います。
  そこで,今後の方策として,もう苦しいけれども受給を1回こっきりにする。それを助ける方策は今のところ立っていないです。それは,文科省がJSTも含めて考えていただけるのか,あるいは,ほかの省庁も含めて,いろいろなファンディング制度で1億円規模のものは今,結構あります。しかし,本当に政策に全く関係がないような研究でも優れた研究はいっぱいあって,それを落としているというのが現状なのです。でも,新しいものも救いたいというので,とてもラディカルですが今回打ち出した制度なのです。私はそれでもまだ漏れていると思うのですが,では,その人たちをどうするのかという議論はこれからだろうとは思います。ただ,もう研究費部会ではその議論はできないのです。科研費の経費はすごく限られていて,特別推進研究の予算はすごく少なくて,これが増額していく見通しは全然聞こえてこないですし,どうするのかなと。これからは文科省,あるいは更に上の方々にも一緒に考えていただきたいことだとは思います。

【射場委員】
  もう一段上のフレームで考えないといけないということですね。

【甲斐委員】
  はい,そうだと思います。

【西川委員】
  大型のそういうプロジェクト,あるいはプログラムの重複の問題は,甲斐先生がおっしゃったとおりなのですけれども,その種類によっていろいろ違うかなと思っています。特に私が審査に加わったような理工系ですと,射場委員がおっしゃったような問題が確かに出てきているのです。JSTとJSPSを行きつ戻りつするというような,そういったことが理工系では問題になっています。そういうことは確かにあります。
  それから,もっと大局的な形でこういう大型予算を考えなければいけないというのはそのとおりだと思っています。というのは,今度は,日本学術振興会の幹事としての立場で申し上げますが,今,こういったものの割と似通った研究内容の申請が使い回しではないかという形で批判が出てくる可能性が出てきているのです。そういう意味で,もっと大局的な見地から考えて,本当に芽が出て,それが大型化して,更に発展させる,それはすごくいいことなのですけれども,それも一つ,狙われる要素になっているのだということ,いろいろな面でこういう研究費を削減される方向になっているのだということを認識しなければいけないかなと思っています。

【白波瀬委員】
  長い間御議論をされていたということはよく分かるので,若干ずれているかもしれませんが,2点あります。1点は,研究者人生で「ここ一番」のブレイクスルーというようなことを,申請文書として書けるのか,また「ここ一番」を誰が審査するのか、という違和感を覚えました。やはり,こういう形では表現しない方がいいのかなと思います。

【甲斐委員】
  「ここ一番」という表現はおかしいと。

【白波瀬委員】
  そういう気がいたします。それが1点目です。
  2点目は,状況として非常に分野特定的なところから出てきた問題を特別推進研究という大きな一つの制度において解決策を提示することのアンバランスさを少し感じております。要するに,実態というか,データはどうなのですかという議論もありましたが,全体の分野の中で,3回も4回も同じ研究者が採択されているような例が,私たちの人社系分野でも本当にあるのでしょうか。

【甲斐委員】
  5回ぐらい受給している例が1件あります。

【白波瀬委員】
  5回もですか。知りませんでした。だから,そういうものも含めて,何か根拠を提示するときに,特定分野に限定されず同事業全体の問題として共有できることを少し強調して提案していただくのはどうでしょうか。1回しか受給できないということが,いい意味も,悪い意味もあるような気もしますので,その正当性を明確にしてほしいと思います。以上です。

【甲斐委員】
  これは,審査部会のレポートに参考データを付けていると思うのですが,付いていますか。

【鈴木学術研究助成課長】
  資料3-1の15ページです。

【佐藤部会長】
  確かに生物系が,3回以上受給が7件あります。人文系も3回以上が1件ありますね。
また,「ここ一番」という言葉の問題については,日本学術振興会の報告において,意図が鮮明に伝わるように頑張って書いていただいたものだと思っておりますし,応募の書類にこれをいきなり書くようなわけではないと思いますので,大丈夫だとは思います。はい,どうぞ。

【西尾委員】
  先ほどの議論で甲斐先生がおっしゃっていたことと絡めて申し上げます。私は,つい最近まで,JSTのCREST・さきがけ・ERATOのさまざまな改革をどうしていくかという議論に参画していました。その中で,CREST・さきがけ・ERATOについては文部科学省の中で戦略目標が立てられて,その下で具体的な領域設定がなされます。科研費で大きな成果を得て,国の強みとして今後きっちり研究を推進していくべきものについては,戦略目標を検討するときに,その卓越した研究の内容を考慮すべきだという議論がありました。要は,科研費と,CREST・さきがけ・ERATOのような戦略的な経費をシームレスにつなげていくことが非常に大事だという議論がありました。特にこの特別推進研究でAプラスなどの評価を最終的に受けている研究課題については,今後,日本の科学技術を世界的にもリーダーシップを取って進めていく上で非常に重要なテーマだということで,それを有効に戦略目標につなげる仕組みを作っていくということも大事ではないかと思っています。

【佐藤部会長】
  ありがとうございました。つないでいくという話は前々から出ているのですが,余り具体化に向けた話にはなっていないと思いますね。

それでは,基本的に大筋はよろしいということでございましょうか。ただいまの報告を基に,今後,平成30年度の新規制度導入に向けて研究費部会で議論を進めていきたいと思います。また,新学術領域研究の在り方については,途中経過の報告でしたので,引き続き審査部会において議論を深めていただくということでよろしいでしょうか。

【髙橋委員】
  審査部会の場で言うべきでしたが,元々の特別推進研究は,「一人又は少人数の」という定義がありました。これから改革をしていこうというときに,そこはきっちりと継承するというコンセプトでよろしいのでしょうか。

【甲斐委員】
  そこは別に変わっていないですね。

【髙橋委員】
  となると,私は数年前に審査をやっていましたが,その定義からかなり逸脱したような申請が,3件どころか結構増えているような印象を受けましたので,きっちりルールを作る必要はありませんが,原点を堅持するのであれば,もう1回ここでリセットをかけることも大切だなと思いました。

【佐藤部会長】
  もう少し具体的に言いますと,「一人又は少人数の」という言い方では不完全だということでしょうか。

【髙橋委員】
  きっちり何人以下と定める必要はないと思うのですが,例えば,ある方の申請は10人となっていて,それが多いか少ないかと言えば,私はそのときには多いと思いました。でも,そのときには恥ずかしながら,こういう原点のことは余り知らずに審査していて,ああこんなものかなと思っていたのですが,今,そもそもこういうふうな感じで特別推進研究が設けられたというのを改めて学んで,そういうものを踏襲するのであれば,今一度意識を新たにしようということを私たちも気をつけなければいけないと思いました。余り俎上(そじょう)に乗っていなかったのでコメントいたしました。

【佐藤部会長】
  はい,先生の意図は分かりましたが,分野によってはその発想が違うところもあります。最先端の大型研究を集中的にやりたいときに,ある程度,複数の人数が必要な分野もありますし。

【髙橋委員】
  ふだんはそれでいいのですよ。先ほどどこかに記述があったのです,「一人又は少人数」と書かないと。

【甲斐委員】
  これはあくまでも個人研究ですから,「一人又は少人数」は基本的には正しいのです。ただ,例えば,人社系で政策アンケートを実施するなどという場合,それは大人数でやるしかないのです。そういうところが人社系の大型研究でよく出てくるところでもありまして,そのような分野の特性は審査委員がよく分かっていらっしゃいます。生物系は新学術領域研究のグループ研究があるので,あたかもグループ研究を特別推進研究に出てくる場合も間違っていらっしゃる,そういうのは審査委員が分かっているので大丈夫だと思います。ただ,精神としては,特別推進研究は個人研究のトップであるということでございます。

【髙橋委員】
  はい,分かりました。

【佐藤部会長】
  ありがとうございました。それでは,後半の審査システムの改革に関して,日本学術振興会及び審査部会における検討内容についての御質問,また,バブコメに向けた御意見等をこの場でお伺いしたいと思います。また,分科細目見直しの具体的な内容などは現在調整中ですので,この場では資料4-1にお示ししている骨子に基づいて御発言をいただければ有り難いと思っております。また,事務局から提案があった普及啓発活動についても御意見等がございましたら併せてお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

【西尾委員】
  これまでの「系・分野・分科・細目表」から,「小区分・中区分・大区分」に変わるということですが,今回,変更される際の考え方のベースになっているもので何か大きく違うことがあるのかどうか,そういうところを知りたいのですけれども。

【山本JSPS学術システム研究センター主任研究員】
  基本的には,小区分というのは,現在の細目相当になります。それで,これは多様な学術を尊重するという観点から,それらに配慮した仕組みになっています。中区分は,基本である小区分を総合審査が可能な範囲で幾つか束ねる形になっています。それから,大区分は,同じように中区分を幾つか束ねる形にしてあります。そういう意味では,「分野・分科」というような名称ではなくて,あくまでも審査区分というものでございます。そういう意味では大きく変わりますけれども,実際のところ,それほど物すごい大変革というか,めちゃくちゃになってしまうというものではありません。当然,ある程度,連続性も考慮して作らせていただいております。

【城山委員】
  小区分はそういう考え方だとすると,中区分の考え方は,要するに,個別の分野・細目的なレベルではなくてもう少し関連する分野を広く見て,そういう観点から審査をしたいということだと思うのですが,そのときにどこを関連分野として入れるかというのは,いろいろな場合がありそうな感じがします。最後はエイヤッだと思うのですが,その辺りはどのような形でくくられるのでしょうか。

【山本JSPS学術システム研究センター主任研究員】
  それは,学術システム研究センターにおいてもかなり喧々諤々の議論で,現場で活躍されている先生方が,周辺の方々のいろいろな意見も踏まえて最終的に決められております。それで,大事なことは,これはあくまでも審査区分ですので,自分が所属する分野にこだわらず,どこに出すこともできるし,どこに出したときに審査しなければいけないということになっています。なので,区分の作り方のポイントは,そういう意味で,相互に審査可能であるということ,それからもう一つは,競争的な環境で選べるということ,例えば,数件だけの申請しかないような区分は作らないということです。中区分の境界は必ずしも明確にしない,実際はそういう表現になっています。何とか関連という形で,あるいは関連分野という形にして,境界に関しては明示しない。具体的には机上参考資料1の別紙2。「中区分・大区分一覧」を御覧ください。
  これはまだ検討中ですので,御参考までということです。

【佐藤部会長】
  具体的な諸区分のデータも出ておりますね。
  ほかにはいかがでしょうか。バブコメに対する意見等はございませんか。これは本当に大事な改革ですので。はい,どうぞ。

【射場委員】
  科研費申請の物書きの負担がとても多くて,なかなか実験する時間が取れないという声を先生方からよく聞きます。評価疲れ,調査疲れというようなことを漠然と感じることはあるのですが,例えば,科研費の審査会ですごく膨大な資料を机の上に置いて進めているのだけれども,その資料を1個1個全部チェックすることもないような印象も受けます。そういった申請の負担をもう少し軽減していくとか,その辺りはどういうお考えなのでしょうか。

【甲斐委員】
  個人的に言いますと,自分の個人研究の研究費を獲得するのは我々の本来業務なので,ずっとやってきました。最終的に特別推進研究のように,書かなければいけない申請書はどんどん厚くなりますが,そうはいっても自分の研究の申請ですので,世界中の研究者が必死に書いて,読む人も必死に読んでくれると思ってやっていると思います。
  評価疲れ,審査疲れというのは,それ以外のものが膨大にあるのです。例えば,大学単位で取るものが幾つもあります。運営費交付金が減っているので,あらゆるものに申請させられるのです。概算要求と称していろいろなものがあります。そういうものも全部申請書を書かなければいけないし,たまに申請が通ってしまうと,今度はその評価が毎年あって,その評価書も書かなければいけません。申請者,獲得者はそれぞれ書くのですけれども,それを評価するのも我々なのです。自分も申請するのだけれども,他大学の評価もしなければいけないというのが,法人化のころと比べて何倍になったか分からないほどあるのです。それがまた物によって申請内容が違うのです。えらく細かいことを書かされたり,自分の研究に関係のない,大学院生の進路とか,大学院生をどのぐらい採ったとか,細かい情報を全部集めたりしなければいけない,図もきれいに書かなければいけないとか,そういう研究と教育に余り関係のないことが本当に増えています。それで我々に時間がないという文句だと思います。科研費の申請に関しては本来業務なので,これは簡単にしなくてもいいと私は思います。

【射場委員】
  研究の中身はパワーポイントの内容ぐらいで評価をしているのに,すごく詳細な項目をチェックするためだけに膨大な申請書があるようなケースが多いです,JSTなどの審査を見ていると。そういうのは共通化をしてデジタルで軽減できていくような仕組みがあるといいかなと思うのです。

【佐藤部会長】
  はい,審査のシステムについては考えることがまだまだあると思います。

【上田委員】
  審査における専門性について,JSTの場合ですと,委員会の中で,これは君は向いているよねというふうにネゴシエートしながらマッチングをとっていきます。

【佐藤部会長】
  しかし,科研費の場合についても,大くくり化などを行いますので,違う分野の書類を見る必要はございます。そのとき,その審査の段階で本当の専門家の先生方とそうでない方々とのウエートを変えるなどのアイデアもあるかもしれません。

【上田委員】
  そうですね。

【佐藤部会長】
  そこは何とも申し上げられないのですけれども,これは具体的にお決めいただくことだと思いますね。栗原先生,どうぞ。

【栗原委員】
  今,一生懸命に共感しながら伺っていたのですが,研究計画については,なるべく丁寧に検討することが研究者の側は求められています。それから,大くくり化の一つの精神は,余り細かいことよりは大事な,本当に本質的なことによりチャレンジするべきだということで,そういう方向性が出ていると思います。今の研究者にとって,そういう内容をなるべく幅広い人に分かるように表現するということ,社会に認められる研究をするというのは,必ずしもテーマによってはそぐわない場合もあると思うのですけれども,そういうことを踏まえつつ,いろいろな視点から審査していくことが,コミュニティーに求められていると私は理解しています。

【佐藤部会長】
  はい,ありがとうございます。はい,どうぞ。

【髙橋委員】
  今回の改革で,重複申請の議論はこれからでしょうか。基盤研究(S),(A),(B)という枠はこのまま維持されるという前提で今,聞いていたのですが,重複制限については,また新しいあるべき姿を探していこうということでよろしいのですか。

【山本JSPS学術システム研究センター主任研究員】
  はい。

【佐藤部会長】
  それでは,ただいまいろいろな御意見を頂きましたが,参考としつつ,審査部会においてパブリックコメントに向けての検討を,また,普及啓発活動については事務局において適切に対応をお願いしたいと思います。

(3)挑戦的研究への支援について

【佐藤部会長】
  それでは,挑戦的研究支援についてでございます。冒頭の議事において事務局から説明がありましたとおり,今年の秋に挑戦的萌芽研究を発展的に見直した新しい研究種目の公募を開始することになっております。このため,具体的な制度設計については早急に検討を進めていく必要がございます。
  また,先ほどの特別推進研究においては,挑戦性を一層重視する方向で見直すというも方針が組まれておりますが,新しい制度を平成30年度に導入するまでに,こちらの検討も急がなければなりません。
  そのほか,昨年も御審議いただいたことでございますが,若手研究種目の在り方を含め,挑戦的な研究への支援を巡ってはいろいろな課題があります。限られた時間の中でこれらを一体的・集中的に検討していくためには,研究費部会の下に作業部会を設けて議論していくことが適当ではないかと思っております。
  この作業部会の設置については,原案を用意いたしましたので,事務局より御説明をお願いします。

【前澤企画室長】
  それでは,資料5-1が作業部会の設置(案)でございます。研究費部会運営規則第2条の規定に基づいて,この研究費部会の下に「挑戦的研究に対する支援強化に関する作業部会」を設置いたします。
  趣旨としては,学術研究をめぐる現代的な要請や大学等の教育研究環境の実情を踏まえて,科研費改革の一環として新たな知の開拓に向けた挑戦的研究に対する支援を強化する方策を検討するということでございます。
  挑戦的研究については,昨年の研究費部会でも御議論いただいたところですが,さらに具体的な検討をこの作業部会で集中的にお願いしたいと考えております。
  主な調査事項は(1)から(3)までございまして,また,資料5-2は,それをもう少しブレークダウンした検討論点例でございます。
  本日の研究費部会では,この資料5-2にお示ししている検討論点例への御意見,またほかにももし論点などがございましたら,この場で挙げていただき,作業部会での議論の参考にさせていただきたいと思います。
  それから,作業部会の構成員については,資料5-1の2ページに記載しております。研究費部会長と御相談しまして,このとおりとしました。なお,日本学術振興会からのオブザーバー参加を加えて,資金配分機関,また学術コミュニティーを代表する方々とのきめ細やかな議論をお願いしたいと考えてございます。
  それから,資料5-3が,本日のこの議題への参考資料として様々なデータを取りまとめたものでございます。昨年の御議論の際にもお示ししたものもありますので,少しかいつまんで申し上げます。
  資料5-3に入っているデータは,大きく分けて,まず,挑戦的萌芽研究についての様々な現状認識,それから,現在の挑戦的萌芽研究種目の概要などでございます。
  それでは,23ページを御覧ください。諸外国の例ですが,NSFにおいてTransformative Researchという研究への強化というものが現在実施されております。これは,既存の科学的・工学的概念に対する理解を劇的に変える,あるいは新たな科学・工学のパラダイムや分野・領域の創造を導く潜在性を持つ発想により実施される研究と定義されており,それに対応するようなグラントも運用されております。
  24ページでございますが,NIHにおいても,Exploratory/Developmental Research Grant Award(R21)というものがございまして,探索的かつ新奇性のある研究であり,新たな分野を切り開く,あるいは既存の発見を新たな方向に拡張するものなどに対して支援が行われております。このような諸外国の動向も見ながら,本日の議論,それから作業部会での議論を深めていただければと思います。
  もう1点,この作業部会で御議論いただくことになる若手研究者の支援についてですが,こちらについては,この資料5-3の26ページ以降にいろいろな参考資料をまとめております。27ページのとおり,平成22年の研究費部会において若手研究の見直しの方向性が示されていることから,去年の御議論でも,この方向性を踏まえて,独立する若手研究者のスタートアップ支援等の重要性に留意しつつ,具体的な検討を進めるとされていたところでございます。
  その下に平成22年の研究費部会での方向性を掲載しております。例えば,若手研究(B)については,今後とも他の研究種目よりも高い採択率を維持することが必要であるとか,若手研究(A)については,基盤研究の中に位置付けられるべきであり,その際に優遇措置を講じる必要があるとか,このような一定の方向性は出していただいておりますので,これに基づいて,また科研費の研究種目全体の中でどういう位置付けにするかなども御議論を賜れればと思います。
  以上でございます。

【佐藤部会長】
  ありがとうございました。それでは,皆様の御意見等を伺いたいと思います。いかがでしょうか。はい,どうぞ。

【城山委員】
  挑戦的萌芽研究の見直しの点なのですけれども,元々は既存の研究種目を変えるというよりは,新しいものを足すという議論だったので,多分,従来の萌芽研究から現在の挑戦的萌芽研究になったものがどういう実績があり,どういう課題があるかという,既存の種目についての総括が必ずしも十分されていなかったと思うのです。今回,種目全体を見直すということであると,既存の枠組みがどうだったのか,あるいは,どのような問題があるのかということをきちっと整理していただく作業が必要です。そうしないと,問題はなかったのだけれども一緒になったから変えてしまいますということで,よかった面がなくなってしまうとまずいので,作業としてワンクッション丁寧に入れていただけたらなというのが一つです。
  もう一つ,結局,この新たな種目にどのぐらいの規模のリソースを投入するのかというのが一番大きな意思決定だと思うので,それも作業部会で検討していただくのか,それとも,それは全体の共通の基盤研究等との関係も出てくるので,むしろ親委員会で検討するという整理なのか,そこを明確にしていただければと思います。
  配付していただいた概要資料を見ると,正確には分かりませんが,萌芽研究から挑戦的萌芽研究になったときに,もちろんミッションの立て方も変わったのだと思いますが,規模で言うと30億円規模だったものを60億円規模ぐらいに倍にして,それで採択率もある程度上がってきたということがあると思います。そのことについての評価も前者の方にも入ってくると思います。それから,今回,一緒にしたときに,これをどれぐらいの規模に増やすのかということが実質的な大きな議論だと思います。それをどこで議論するのかということだけ確認させていただければと思います。

【鈴木学術研究助成課長】
  恐らく概算要求に向けた昨年の議論もそうでしたが,今回,作業部会を立ち上げていただきましたら,まさにおっしゃるとおり,次の29年度予算においていかなる規模で考えるべきかということも当然出てまいりますので,それに関して作業部会での御意見を踏まえて,もちろん,具体的に幾らというようなところは行政サイドの仕事になりますが,少なくとも,挑戦的萌芽研究で応えてきたニーズ,さらに新たに設ける大型種目に対するニーズ,これをどうバランスよく応えていくのか。そのためには採択件数をはじめ,最低どのぐらいの予算が要るだろうかということは,当然,規模感として御指摘が出てくると思いますので,それを受けて私どもとしても概算要求に対処していくと。作業部会での成案を頂きましたら,まずは夏前に研究費部会に御報告いただいて,また,諸先生の御意見を賜って最終的に夏の要求に臨むという段取りで行きたいというふうに考えております。

【佐藤部会長】
  ありがとうございました。作業部会を設置することについては,御賛同いただいたということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【佐藤部会長】
  ありがとうございます。資料5-1には既に委員のリストもございますが,作業部会の委員は研究費部会長が指名することとなっておりまして,ここにありますように,小安委員,鍋倉委員,羽田委員,上田委員,橋本委員にお願いする,そして,小安委員には主査をお願いしたいということでございます。
  それでは,今後,作業部会で具体的な検討を進め,夏までに一定の取りまとめを行い,報告を受けるようにしたいと思います。本日は挑戦的な研究の支援について,昨年の議論の経緯を振り返りながら自由に討議をしていただいておりますが,これは今後,当然ですけれども,発足する作業部会での議論を参考にさせていただくということでございます。
  さらに加えて,資料5-2に書いてある論点例では不足だとか,いろいろ御意見がありましたら賜りたいと思いますが,いかがでしょうか。作業部会で精力的にやっていただくわけでございますが,あえてまだもう一つ加えることがあるかということでございます。よろしいでしょうか。もし,よろしければ,この3番目の議論は終わりにしたいと思います。

(4)その他

  佐藤部会長が平成27年3月末日で部会長を退任される御意向を示された。その後,委員の互選により,平成28年4月1日以降の部会長として西尾委員が選出された。
  最後に事務局より,連絡事項が伝えられ,会議は終了した。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課企画室企画係

工藤、藤田
電話番号:03-5253-4111(内線4092)
メールアドレス:gakjokik@mext.go.jp

(研究振興局学術研究助成課企画室企画係)