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第8期研究費部会(第4回) 議事録

1.日時

平成27年7月6日(水曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 科学研究費助成事業(科研費)改革の推進について
  2. その他

4.出席者

委員

佐藤部会長,甲斐委員,栗原委員,高橋委員,西尾委員,小安委員,白波瀬委員,鍋倉委員,西川委員,射場委員,上田委員,橋本委員

文部科学省

常盤研究振興局長,安藤大臣官房審議官,鈴木学術研究助成課長,前澤学術研究助成課企画室長,渡邊学術基盤整備室長,他関係官

オブザーバー

勝木日本学術振興会学術システム研究センター副所長,盛山日本学術振興会学術システム研究センター副所長,山本日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員

5.議事録

【佐藤部会長】
それでは,時間となりましたので,ただいまより第8期第4回の科学技術・学術審議会学術分科会研究費部会を開催したいと思います。
本日は,初めに,今般の世界的な潮流となっている学術情報のオープン化につきまして,学術情報委員会の動向などの報告を受ける予定でございます。続いて,挑戦的な研究を促進する科研費の在り方を中心に議論をお願いしたいと思います。
それでは,議事に入りたいと思います。最初は,オープンアクセスの動向についてでございます。
この件について,文部科学省では,学術分科会の学術情報委員会において,主査の西尾先生が中心となって対応の在り方を審議しておられます。科研費とも関わりの大きな問題ですので,情報の共有をしたいと思っております。同委員会の状況を含め,まず学術基盤整備室から,学術情報のオープン化の状況について御説明をお願いいたします。

【渡邊学術基盤整備室長】
失礼いたします。まず,資料1を御覧ください。オープンアクセスをめぐる動向についてでございます。
1枚めくっていただきますと,オープンアクセスの解説でございますが,基本的な考え方は,査読済み論文をインターネットから自由に入手でき,合法的な用途で利用することをあらゆる障壁なしで許可することでございます。目的としては主に3点ございますが,研究成果へのアクセス機会の確保,研究成果の可視化,あるいは商業出版による現行の学術出版システムの代替案の提案といったことがございます。手段は,御案内のとおりオープンアクセス誌での公表と,著者が自らインターネット上のリポジトリで公表するという2つの方法がございます。効果は,資料に記しているとおりでございます。
2ページを御覧ください。オープンアクセスをめぐる世界的な動きとして,近年の動きを取り上げてございます。1つはグローバル・リサーチ・カウンシルです。ファンディングエージェンシーが構成員となっているこの総会におきまして,平成25年に行動計画が採択されております。その要点は,1にございますように,公的資金の配分による研究から得られた全ての成果へのオープンアクセスを促進すること,これは特に学術雑誌の論文に関するというものでございます。また,2点目はG8の科学技術大臣及びアカデミー会長会合です。これも同じく平成25年に開催されまして,特には科学研究データのオープン化,また,政府投資による研究成果のアクセスを拡大させる方針が確認されました。
3ページは,オープンアクセスに関する我が国の考え方でございます。第4期科学技術基本計画におきましては,大学や公的研究機関における機関リポジトリの構築を推進し,オープンアクセスを促進するということが基本的方針として位置付けられております。また,科学技術・学術審議会の学術情報基盤作業部会,あるいは昨年開催されましたジャーナル問題に関する有識者の検討会におきましても,オープンアクセスの推進が報告されております。また,4ページでございますが,内閣府においても本年3月にオープンサイエンスに関する検討会の報告がまとめられております。ここでは,2ポツのところですが,論文及び論文のエビデンスとしての研究データは原則公開とするという方向性が示されております。これを受ける形で,第5期科学技術基本計画中間取りまとめの案においても,公的研究資金による研究成果のうち,論文及び論文のエビデンスとしての研究データについては原則公開ということで,第5期に向けての一定の方向性が示されているという現状がございます。
続きまして5ページは,オープンアクセスへの対応状況として,現状をまとめてございます。まずJSPSにおける主な支援施策としては,科研費の研究成果公開促進費によって,学協会のオープンアクセス誌のスタートアップを支援するという事業を平成25年度から行っております。また,助成した研究成果のオープンアクセスにつきましては,26年度の研究成果報告書から,そのオープンアクセスの状況について報告いただくというような記載を設けてございます。
次にJSTの対応でございますが,1つは学協会のオープンジャーナルを中心としたところの電子ジャーナルの構築を支援するということで,J-STAGEというプラットフォームでの支援を行っております。また,助成した研究成果のオープンアクセスにつきましては,「オープンアクセスに関するJSTの方針」を公表いたしまして,機関リポジトリを基盤とした12か月以内の公開を推奨するという形で公募要領などに明記されております。
6ページは,諸外国の取組として,アメリカのNIHと英国研究会議の例を示してございます。まずNIHにおきましては,助成の成果をOAジャーナルあるいは機関リポジトリのどちらかで公開するということがポリシーで決められております。経過を見ますと,2005年からこの取組を始めていますが,一定の期間を経て2008年から,いわゆるオープンアクセスの義務化が行われております。また,英国研究会議におきましても,助成成果をOAジャーナルに投稿することを推奨しております。この英国研究会議では,2006年当時からオープンアクセスについて取り組んでいますが,2013年にゴールドOA,いわゆるオープンアクセスジャーナルへの投稿を促進するというように方針を改定しております。
次に8ページを御覧ください。オープンアクセスと関係するところのオープンデータの流れでございますが,世界的な動向としては,先ほども御紹介いたしましたG8の科学技術大臣会合で,この科学研究データのオープン化について確認されております。海外でのオープンデータへの取組例として,1つは,アメリカでは大統領行政府の科学技術政策局の指令が2013年に出ておりまして,年間1億ドル以上の研究開発費を有する研究助成機関に対して,論文と科学データへのアクセス拡大計画を策定するということがその内容とされております。また,欧州委員会におきましても,研究データ管理ガイドラインが策定されて,2014年から発効しております。
9ページは,資源配分機関における取組例でございます。NSFの例では,2015年に包括的パブリックアクセス計画が策定されておりますが,実際には2016年以降助成を受けた査読付き論文を,公開から12か月以内に指定のリポジトリに保管するというものです。同時に,メタデータを無料で利用可能な形で公開することが決められております。なお,NSFのデータ管理計画につきましては,先行して2011年より行われております。また,政府の取組と連動する形ではありますが,オープン化推進団体の例として,9ページの下の方に,World Data SystemとResearch Data Allianceがございます。RDAにつきましては,研究者主導による研究データ流通のルールを作るといったような取組が行われております。
最後10ページでございますが,以上御説明申し上げました国際的な動向あるいは国内での位置付け等を踏まえて,学術情報委員会において学術情報のオープン化というテーマで御審議を頂いております。主な論点としては3点ございます。1点目は,研究成果のオープンアクセスに関する基本的な考え方です。研究成果と申しますのは論文と,ここでは論文のエビデンスとしての研究データに特化した形での考え方の整理でございます。2点目が研究成果の公開に当たっての基本的事項ということで,公開の原則,以下6点ほど論点として掲げてございます。3点目は,オープン化に係る基盤整備について,その支援策を含めてどのように考えるかという観点での審議をお願いしてございます。
説明は以上でございます。

【佐藤部会長】
ありがとうございました。
それでは,学術情報委員会の主査でもあります西尾先生からコメントをお願いしたいと思います。

【西尾委員】
それでは,御指名でございますので,若干の説明を加えたいと思います。
コンピュータの分野で,最近,クラウドコンピューティングが非常に発達しておりますが,その技術を背景にして学術活動を支援する過程において,海外では研究成果や評価情報を蓄積する国際的なプラットフォームが形成されております。そのような状況の下で,我が国の研究プラットフォームの現状をこのまま放置しておきますと国際的に孤立してしまい,日本の科学技術,学術そのものの衰退を招くことの危機感すら抱いております。ただいま説明がありましたように,学術情報のオープン化については,国際的な動向等を踏まえて我が国としてどのように進めるべきかということを,当方が主査を務めております学術情報委員会においてスピード感を持って現在検討しております。
まず,論文そのもののオープンアクセスについては,これまでも学術情報委員会の提言等を基に,国においても支援策を講じながら推進してきた経緯があります。第5期の科学技術基本計画の中間取りまとめの案におきましても,公的研究資金による論文は原則公開とするという方向性が示されております。我が国においても一層の取組が必要であるとの認識の下で,海外の事例も参考にしながら,具体的な推進方策について早急に取りまとめたいと考えております。
次に,非常に難しい問題ですが,論文のエビデンスとしての研究データの公開が次のステップとして重要になります。この問題に対しては,研究分野による取組の違いや非公開とすべきデータの範囲など,様々な論点があります。また,公開によるメリットやデメリット,これは分野によっても異なりまして,その考え方や取組の方向性を提示できればと考えております。現在,研究の現場におきましては,国全体としての研究データの公開に関する原則やガイドラインというものがほぼ定められておらず,公開要請が海外からあったときなどにどう対応すればよいのか非常に困っている状況です。全ての分野においてというのは非常に難しいと思いますので,分野を限定しながらでも,国としての何らかの指針を早急に提示していくことが重要かと考えております。
いずれにしても,オープンアクセスの取組は,世界的な潮流となりつつあるオープンサイエンスの一環であり,学術情報の流通と利活用を促進する観点から実行性を高めていく段階に既に来ているという強い認識を関係者が共有しながら,今後の方針,あるいは対策や対応を考えていきたいと思っています。
以上です。

【佐藤部会長】
西尾先生,どうもありがとうございました。
それでは,ただいまの学術基盤整備室からの御報告と西尾先生からのコメントにつきまして質問等,お願いしたいと思います。
では,小安先生。

【小安委員】
御説明ありがとうございました。税金を使った研究成果をオープンにするということに,恐らく総論としては誰も反対する人はいないと思います。ただ,そのやり方に関していろいろなデータを出していただいておりますが,若干これは偏りがあると私は思っていて,アメリカとイギリスの例だけ出されてもほとんど参考にならないと思います。彼らにとっては,世界中のデータを英語で出してくれれば,自国民に対して極めて有利なわけですから,進めるのは当たり前なのです。ドイツやフランスやスペイン語圏がどのように取り組んでいるかということも調べてお示しいただかないと,余り参考にならないのではないでしょうか。その辺りはどのぐらい調査されているのでしょうか。

【渡邊学術基盤整備室長】
主に,欧米で始まった取組という流れがございますので,先行事例としてはアメリカとヨーロッパ,ヨーロッパはイギリス,ドイツあたりの調査を行っております。そういう意味で,ドイツにおきましては,義務化というところまではまだ進んでいないという状況がございます。その辺りのところは把握しておりますので,先行事例だけを出して議論するのは少々偏っているのではないかということでしたら,ほかの事例も提供させていただきたいと思っております。

【小安委員】
目的をどこに置くかだと思うのですが,科学者の間でデータあるいは論文を全部共有するという考え方と,もう一つはもっと広く,恐らくアメリカやイギリスは,自国民に,例えば最新のがん研究の成果をオープンにするというところをかなり意識していると思います。日本で英語の論文をオープンにしても国民に対して直接それほどメリットがないかもしれないというようなところを少し考えておかないといけないと私は思っております。そこは西尾先生からも少しコメントを頂けないでしょうか。

【西尾委員】
まさに先生がおっしゃったとおりでして,研究のグローバル化が進む中で,ローカルな日本語圏ならではの戦略を探るということをもう一方で考えていく必要があると思っています。今先生のおっしゃったことに関しましては,今後のガイドライン,あるいは原則を考える上では,きっちりと考えていきたいと思っています。どうも貴重なコメントをありがとうございます。

【佐藤部会長】
いかがでしょうか,ほかは。
はい,どうぞ。

【射場委員】
先ほど西尾先生の御説明の中で,論文のエビデンスになったデータのオープン化は大変難しいというお話がありましたが,材料工学の領域でも,データをオープン化して,統合して材料インフォマティクスを作りましょうという取組が今進んでいます。やはり論文データはすぐに集まるのですが,論文を書くために失敗した研究実験データが大変重要なのに,それがなかなか集まらないという課題もあって,そういうところをどのように取り組んでいったらいいかということが議論されていたら教えていただきたい。

【西尾委員】
例えば,今,先生のおっしゃった材料工学に関してのことですが,確かに単なるサクセスストーリーの部分だけではなくて,失敗をしたときのエビデンスとなるデータが重要であるということに関しては,私もその重要性を非常に認識しております。それで現在,国として取り組みかけている一つのアプローチというか,新たなプロジェクトがあります。それは,JSTのさきがけプロジェクトにおいて,マテリアルズインフォマティクスという概念の下で,ビッグデータ時代において,先生がおっしゃるような観点から,日本としてこの分野の研究を今後進める予定です。つまり,失敗に関わるようなデータも含めて様々なデータをどのように蓄積し,どのように共有していけばよいかに関する先駆け的な研究プロジェクトを現在立ち上げつつあります。そういうプロジェクトが,先生がおっしゃった分野を今後大きく発展させるためのプラットフォーム作りとして,いろいろな意味で寄与できるのではないかと考えております。

【射場委員】
それは多分,常行先生のさきがけですね。私も参加することになっているので,内容はよく分かっていますが,全体をやろうとしても恐らく無理だと思うので,統合してメリットのある,小さい領域でもいいからそこをまず進めて,成功事例を見せることによってだんだんと広がっていくというストラテジーで進めていくのかなと思います。

【西尾委員】
非常に貴重なコメントをありがとうございます。ちょうど明日,プログラムディレクターの会議がありますので,そこで,先生がおっしゃった貴重なコメントを必ず生かしたいと思います。さきがけプロジェクトに関しては,先生がおっしゃったように,分野を限定してでも,とにかく何らかのよい成果が出るようなストーリーを作ってもらうということをこちらからも強く申し述べたいと思います。どうもありがとうございました。

【佐藤部会長】
ほかにはいかがでございましょうか。
これは分野によって大きく違うと思いますが,例えば人文系では,この辺りは問題ありますでしょうか。

【白波瀬委員】
問題があるかと言われると,多分あるのだと思います。小安先生がおっしゃっいましたが,そもそものオープンアクセスの意味として,オープンといったら本当にユニバーサルなという意味があるのですが,やはりそこの中にローカルな市場も存在しています。特に人文系ですと,言語の問題もあります。また,例えばアメリカはアメリカの学者に,世界で一番進んでいる研究が分かるようなオープンアクセスというのもあると思いますが,日本の場合は日本の外の市場に日本での研究を知らしめるという,広報としての意味もあると思います。つまりどちらの方向のオープン性なのかということです。設計のときに,若干双方向ではないような気もするので,その辺りも少し考えていただきたいと思います。オープン化について異議はありません。

【西尾委員】
分かりました。非常に重要な視点でして,オープンにすることのメリットとデメリット,また,このような言葉で言い切れるかどうか分からないのですが,国と国の関係としても,それが互恵的になるような形での方策をきっちり考えていかないとならないとは思っております。先生から頂きました貴重な御意見として,今後考えていきたいと思います。
先ほど来の,特に論文を書く際の基になるデータについては,例えば天文学の分野等においては,日本が設置したり,設置に関与したハワイの「すばる望遠鏡」やチリの「アルマ望遠鏡」で観測したデータは,三鷹の国立天文台にSINETを通じて時々刻々蓄積されています。それらの望遠鏡の設置の経緯から,半年間は国立天文台が優先権を持ってそれを解析でき,半年を過ぎると世界に対してそのデータをオープンにすると言うことを聞いております。これは世界の該当分野における科学の進展のために,自らのコミュニティーとして,そのようなルールを作っておられるわけです。それぞれの分野においてどのようなルールを作り,それをどのように運用すれば,国費を投じたことに関するというある種の優先権も生かしながら,国際的な科学の進展のためにデータをオープンにすることを進めることになるのかということについては,そのバランスが非常に重要なところだと思います。そのことに関する考え方が,多分,コミュニティーによって違うのではないかと思います。いずれにしても国としてのガイドラインがないと,海外からデータをオープンにする強い要請があるような場合,それに対する防波堤がありません。そのようなことも考慮して,何らかの原則,ガイドラインを早く提示していく必要があると思っています。

【佐藤部会長】
ありがとうございました。
どうぞ。

【小安委員】
もう一つ,西尾先生にお伺いします。今進んでいる議論の中で,オープンアクセスのための費用を誰が持つかということも恐らく議論されていると思います。オープンアクセスジャーナルは,言葉はいいのですが,結局今のビジネスモデルでは著者が全てを支払うことになります。僕らがよく目にするネイチャー系のジャーナルで言うと,例えば『ネイチャー』では,リポジトリに出すためにも確か1,000ドル以上,日本円で十数万円払わされます。「ネイチャー・コミュニケーションズ」という全てオープンアクセスジャーナルのものだと5,200ドル,日本円にして66万円です。要するに,例えば若手が自分の科研費でやろうとすると,このお金をそこから払わなければいけないわけですよね。アメリカでは,NIHのグラントを持っていてオープンアクセスにするときは,NIHがサポートするというような仕組みもあります。こういうことを日本の場合にはどうするのかというのは,重要な議論だと思いますので,どうなっているか教えていただけないでしょうか。

【西尾委員】
この研究費部会においてこの件を議論していただいているということの背景を考えた場合に,例えば,今後科研費などの経費の中で,おっしゃったことを支援する仕組みを考え,経費的なサポートを考えていく必要があるのではないかと思っています。

【小安委員】
ただ,それを普通に進めると,今ある予算の中からその分を別に確保するという,必ずそういう話になるのですね。そうならないように,どうやって進めるか。国の施策としてやる以上は,そこは別途ちゃんと手当するのだということを言っていただかないと,なかなか皆さんが付いていかないのではないかと思います。

【西尾委員】
おっしゃるとおりです。

【佐藤部会長】
日本学術振興会では,このあたりの議論はされているのでしょうか。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
学術システム研究センターでは,基本的には今の状況というのは様々な矛盾をはらんでいるので,先ほど小安さんから御指摘のあったような問題は,下手をすると本質的な問題になりかねないですし,また,研究の現場から見ますと,今までと違って全部のデータをオープン化することには,射場さんがおっしゃったような非常にいい面もありますし,理想的にはそれはいいかと思います。しかし,現場の研究者,特に若い人の意欲を失わせるような面も多少出てくるようにも思います。基本的にはオープンアクセスはやはり,小安さんが御指摘になったように,著者が全部責任を持って支払って,しかもその利益は全員で共有することが理想的な状況ではありますが,一方で,現場の研究者,特に若い研究者たちをディスカレッジしないように何か工夫が必要ではないかという議論にはなっております。

【佐藤部会長】
今の段階では,方向性など,そういうことまではまだまだ行かない状況でございますね。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
はい。今のところ議論中でございます。

【佐藤部会長】
はい。
高橋先生。

【高橋委員】
私自身もいろいろと現場で困っていることがあります。例えば先日,個人的なことで恐縮ですが,『ディベロップメント』というジャーナルに論文を出しました。今,多くのジャーナルは6か月や12か月が経過したら自動的にオープンになりますが,諸事情により掲載後すぐにオープンにしたいという場合には,別途お金を払えばすぐにオープンにすることも可能だというオプションがあります。私は,いろいろと事情があって早くオープンにしたかったので,お金を支払ったら40万円かかりましたでも6か月間12か月間待っていたら自動的にオープンアクセスになって皆さんから見ていただけるというものを,40万円を出してすぐにオープンにすることを推奨するというビジョンなのかどうなのかというのが1点です。
次に,京都大学の場合は,今回の『ディベロップメント』の論文でもそうですが,出版された論文は全て京都大学のリポジトリに出してオープンにすることになっていまして,皆さんから見られるという目的はそこで達せられるわけですね。少しマニュスクリプトフォームになりますが,それで見られるではないかと。これは2つの違うレベルの話なのですね。京都大学のリポジトリに置いたらただです。そういうことを皆さんでやりましょうよというのであれば,その是非論はともかくとしても,そちらの方面での実現に向けて努力するのか,それとも『ディベロップメント』のように待っていたら少しの金額で掲載できるのに,すぐにオープンにしたいのであれば40万払えという方向に行くのか,これは概念として違うと思います。
でも,これは飽くまで私の分野ですから,また違う分野ではいろいろな事情があると思います。ですから,今これを見て,基本的な理念はいいのですが,現場ができるだけ混乱しないようにしないといけません。『PLOS ONE』などでも,この前40万円くらい払いました。この暴利をむさぼっているオープンアクセスは何なのだと思いました。ですから,学術の世界は,オープンアクセス誌をただ単に応援したらそれでいいではないかというものではないと思います。物すごい歴史を持って,このジャーナルに出すのが夢なのだと,それに向かって一生懸命やる研究者がたくさんいますよね。やはりそういうことをきちんと考えて,いろいろなケースを示してからもんだ方がよろしい問題だと思います。
【佐藤部会長】
ありがとうございました。これは分野の違いが余りも大きくて,私たちの宇宙物理原子核や素粒子の分野は,投稿段階でプレプリントサーバーに送れば,その人の著作権といいましょうか,プライオリティーが認められますのでね。

【高橋委員】
そうですね,違いますよね。

【佐藤部会長】
ほとんどの分はフリーで見ますから,全然事情が違いますね。
ほかにもいろいろと御意見があると思いますが,この件はやはり西尾先生の委員会で更に議論を深めていただくと同時に,日本学術振興会の方でも議論を続けていただきたいと思います。ありがとうございました。
それでは,次の議題に入っていきたいと思います。科研費改革の推進についてでございます。
本日は,特に挑戦的な研究を促進する科研費の在り方についての検討を行いたいと思っております。御承知のとおり,学術分科会では,我が国の学術をめぐる課題として,挑戦性,総合性,融合性,国際性の4つを挙げております。今期の部会では,若手研究者支援や国際化対応について取り上げて議論を行ってきましたが,その中でも「挑戦性」をめぐる課題がいろいろ示唆されていたわけでございます。ということで,本日は,この「挑戦性」に焦点を当てて御議論を頂きたいと思います。
それでは,まず事務局より,この観点から見た科研費における支援の現状や課題について御説明をお願いします。

【前澤企画室長】
それでは,資料の2を御覧ください。科研費における挑戦的な研究への支援につきまして,関連のデータ等を御紹介いたします。
2ページから4ページまでは,科学技術・学術政策研究所,NISTEPによる研究者等への定期的な意識調査の最新結果を幾つか御紹介しております。
2ページのデータでございますが,こちらは過去10年を振り返って,社会的課題解決や経済的な価値の創出を直接的な目的とした研究や,組織ミッションに合わせた研究が増えている一方で,新しい研究領域を生み出すような挑戦的な研究や,新たな研究テーマを見いだすための探索的な研究は少なくなっているという,研究者あるいはイノベーション俯瞰(ふかん)グループという産業界等の有識者などの認識が示されているということでございます。
次の3ページでございますが,こちらでも短期的な成果が出ることを強く志向する研究者が増えているという認識が示される一方,長期的な研究戦略を重視して研究テーマにじっくりと取り組む研究者は減っているという認識が示されてございます。
次の4ページは,こちらは現在の研究活動に関する状況,特に不満足と感じる要因でございます。研究チームのメンバーが確保できない,時間が確保できないということも挙げられておりますが,赤で囲った一番上の研究テーマについて,挑戦的な研究テーマに挑むことができない,長期的な研究テーマを設定することができない,内発的な動機に基づく研究テーマが実施できないといった要因が高い不満の割合を占めているというデータが出ております。
それから,5ページ目は科研費の種目構成でございます。現在特に挑戦的,探索的なテーマを支援する趣旨を明確にした種目としては,赤囲みにしてございますが,挑戦的萌芽研究を設定しております。こちらは,挑戦的で高い目標設定を掲げた芽生え期の研究を支援するものとして,支援期間としては1年から3年,その期間内で500万円以内という支援額でございます。平成26年度の配分額は104億円となってございます。
6ページは,この挑戦的萌芽研究の種目としての変遷をまとめたものでございます。平成7年度以前は,当時の一般研究(C)において,自己申告で研究課題が萌芽的である旨を説明し,独創的な発想,特に意外性のある着想に基づく芽生え期の研究に該当するかどうかの観点から審査を行っておりました。平成8年度にはその部分を独立させて萌芽的研究とし,研究業績等によらない審査を導入しております。その後,平成14年度に萌芽研究として規模を拡大しまして,平成21年度から現在の挑戦的萌芽研究となっております。この平成21年度の変更の際に,支援対象を「独創的な発想に基づく,挑戦的で高い目標設定を掲げた芽生え期の研究計画」と変更しまして,また,1人でも審査員が上位5%と判断した課題を特に重視するという審査方法によって採択課題を決定しております。
7ページは,挑戦的萌芽研究の概要でございます。対象,応募総額,研究期間は前に御説明したとおりでございますが,応募・採択件数につきましては,平成26年度は応募が約1万5,000件,採択が約4,000件で,採択率は25.7%となっております。このページの左下と右下のグラフを御覧いただきますと,平成23年度に採択率と採択数,それから配分額が大きく伸びておりますが,これはこの年に,基金化と相まって科研費全体の予算が増強されたことによるものでございます。
8ページは,挑戦的萌芽研究の年齢別応募状況です。規模的に同レベルにある挑戦的萌芽研究と基盤研究(C)は重複申請ができなくなっておりますが,34歳以下では挑戦的萌芽研究への応募が多いのに対して,35歳以上では基盤研究(C)への応募の方が多くなっており,逆転しております。これは,挑戦的萌芽研究では研究実績をある程度考慮しない審査がされていることにも関係するのかと思われます。
9ページ目は,平成26年度の新規採択分の,挑戦的萌芽研究の系別の応募状況でございます。こちらは,中央の挑戦的萌芽研究のグラフを,左の全種目合計,それから右の基盤研究(C)のグラフと比べていただきますと,総合系,理工系では挑戦的萌芽研究への応募が比較的多くなっておりますが,一方で人社系では応募が少なくなっているという状況がございます。
10ページは,挑戦的萌芽研究の審査における特徴でございます。挑戦的萌芽研究は,基盤種目と同じく書面審査,合議審査の2段階での審査ではございますが,審査における特徴として,研究業績の記述が不要となっております。また,評定要素として,研究課題における斬新なアイデアやチャレンジ性を特に評価することとなっております。さらに,相対評価でAAやAなどの評価を行いまして,合議審査ではAAが付された研究課題を特に重視することになっております。
11ページは,萌芽研究によるステップアップの状況でございます。こちらは特別推進研究,若手研究(S),それからFIRSTの取得者についての分析データですが,挑戦的萌芽研究の採択前後で同規模以上の研究計画に進展するケースが112件中80件と,約3分の2強を占めております。
12ページから15ページには,その挑戦的萌芽研究によるステップアップの個別具体例を幾つかお示ししてございます。赤線が萌芽研究による支援期間でございますが,これらの例を見ておりますと,若手研究や基盤研究と重ねて挑戦的萌芽研究を取得するケースが多くなっておりまして,また挑戦的萌芽研究で扱った研究課題が,その後のより総合的で大きな研究課題につながっているということが言えるのではないかと考えております。
最後に16ページでございますが,こちらは御参考として,アメリカのNIHにおけるExploratory/Developmental Research Grant Awardを御紹介しております。期間は2年以内,それから予算は27万5,000ドル未満となっておりまして,申請数が約1万4,000件,採択数が約2,000件,採択率が14%となってございます。こちらの支援対象は,探索的かつ新奇性,原文ではノベルとなっておりますが,そういう新奇性があり,新たな分野を切り開くもの,また,ハイリスク・ハイリターンでの研究であり,ブレークスルーを引き起こすものであって,従来のRO1プロジェクトとは区別されるものと定義されてございます。
事務局からの説明は以上でございます。

【佐藤部会長】
どうもありがとうございました。
それでは,ただいまの説明を踏まえまして,審議に入りたいと思います。この挑戦的課題につきまして御意見をお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
どうぞ,小安先生。

【小安委員】
これは日本学術振興会に伺いたいのですが,この審査方法に関して,平成21年度に制度設計したときに,AA,Aという採点の仕方を導入し,これでいい課題を引っ張ろうというふうにしたと思います。ただ,この方法を何年かやってみて,それが一体どうだったかということを検証した上で次の審査方法を考えようという話になっていたと思うのですが,今その予定はどのようになっているのか,教えていただきたいのですが。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
私より小安さんの方が詳しいと思いますが,審査会の後,審査員の方から様々な御意見を伺っております。何といいますか,なかなか拮抗(きっこう)しておりまして,系統的に結論を得る段階には残念ながらまだ達しておりません。ほかのことで大変忙しいものですから,それもありまして。ただ,気にはしております。
NISTEPの見方が必ずしも日本学術振興会の見方と一致するかどうかというのは,検討してみなければ分かりませんし,しかもこれは研究を行う人たちではなくて,外から評価する人たちの御意見です。ですから現状では,挑戦的な研究テーマに挑むことができないとか,長期的な研究テーマを設定することができないとか,内発的な動機に基づく研究テーマが実施できないとか,この3つのことが書いてありますが,これはもうとても,挑戦的テーマというよりは,研究そのものに対して非常に恐ろしい状況になっているという感じを受けます。ですから,この場合の挑戦的というのは何を指すのかということも,当時日本学術振興会が作ったときのものと少し離れているような気もいたしますので,現場感覚で少し,もう一度検討してみたいと思います。
ただ,NIHの支援対象として,ハイリスク・ハイリターン,特定分野にブレークスルーを引き起こすもの,又は云々(うんぬん)と書いてありますが,このハイリスク・ハイリターンというのは,審査をする方の見方でありまして,応募する方は別にハイリスクやハイリターンであるということは普通にはあり得ません。ですから,それは外から見たら挑戦的になるとは思いますが,学問の場合は先端的なところまで来たときに,一気に,何かアイデアがあって挑戦しようということが出てきますが,それはその連続の上に立っているのであって,突然ハイリスク・ハイリターンというのが湧いてくるようなものではございませんので,外から見た挑戦性というものは,とても注意深く我々は研究者に届けることにしないといけないと思います。
ですから,ハイリスク・ハイリターンというのは,募集するときには,とてもこんなことは怖くて言えません。荒唐無稽のことを幾ら書いてもいいよというふうに伝わりますから。ですから,この調査結果についても,小安先生がおっしゃったように,もっと本質的なところから見直して検討したいと思っております。

【佐藤部会長】
ありがとうございました。
勝木先生に2点お伺いしたいのですが,確かに審査のやり方についてはまだ十分な議論ができていないことは分かるのですけれども,審査している者の意見として,どのような多様な意見が出ているでしょうか。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
やはり一番気になりますのは,前回,確か西尾先生と高橋先生の意見が異なっていたと思いますが,要するに業績を全く書かせないと,そのフィージビリティーが分からないではないかという意見が時々出ております。それから,AAやAという評定を付すことが本当にいいのか,なぜならば,十分な議論をする場ではなくて点数で選ぶ場でありますので,本当にブレークスルーをするような,しかし,もちろん飛躍はあるにしても,それまでの業績がかっちりしていなければ,とんでもないことばかり書かれても困るので,時々そういう応募が出てきてだまされるということもあるようですから,やはりこの問題については慎重に考える必要があると思います。
ただ一方で,確かに十分書き込めば,余り業績がなくても,全くなくては困りますけれども,なくてもきちんと読み込めるようなものは必ず存在するはずなので,ここに少しはその人の能力のフィージビリティーを示すようなものを挙げておくべきではないかという意見は度々出ております。

【佐藤部会長】
ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
どうぞ。

【盛山JSPS学術システム研究センター副所長】
一言。初めてこの会に出席させていただきまして,本日の挑戦的萌芽研究について科研費の仕組みとの関係がちょっと気になりました。もちろん科研費の仕組みでこれらを支援するというのは大変重要なことではありますが,最初に出てきたデータの意味は,基本的にそういう研究への志向そのものが減っているのではないかという感覚がかなり強く出ているように思われます。それは,よく言われますように,科研費の問題以前にキャリアの問題というのが存在します。それは,私は人文社会系なのですが,人文社会系を見ていましても,どうしても,資料にありましたように短期的研究に集中せざるを得ないというキャリア構造の問題があります。そういうキャリア構造を何とか乗り越えて,挑戦的な研究にチャレンジさせる仕組みを,当然科研費やその他の仕組みで用意していかなければいけないと思いますが,その場合に,例えば,挑戦的というのは多分1年とか3年で成果が出るはずがありません。そういう本当に長期的なものを,どういう形で,こういう外部資金で支援することができるかということは,もっといろいろな角度から検討しなければいけないと思いますので,日本学術振興会としては,もちろん長期的にはそういう可能性について検討したいと思いますが,今ある科研費の仕組みだけでは済まない問題が潜んでいるかなという感じがいたしました。

【佐藤部会長】
ありがとうございます。確かに長期的となりますと,挑戦的との兼ね合いといいましょうか,それは難しくなりますね。
ほかには。どうぞ,上田先生。

【上田委員】
今皆さんが議論されていたように,なかなかフィージビリティーがない中で,でも若手の自由な発想を伸ばそうというのは非常に重要なことなのですが,やはりそこに矛盾があって,ハイリスク・ハイリターンで,評価する方もどうしたらいいのかと。
例えば,NICTのファンドでも,割と広めにとっておいて,1年ほどたった後に類似のテーマを公開して,そこで連携をすることによって更に予算をとる,あるいは,それで駄目なものはもうシュリンクしていく。だから,長期的にやろうと思えば思うほど,オール・オア・ナッシングで最初に評価してしまうと,評価する方も非常に危険だし,フィージビリティーが見えませんから,ではお金をとった人が一体本当にやり切れるのかと。お金を無駄に使ってしまうようなことになってはいけないので,段階的に連携をしていって,いいものは長期的につなげていくというようなことは一つあるかなと。
1年後にそんなことをやらないといけないのは確かに大変なのですが,それを見て,更に連携するような計画書を作ってお金を更に取りにいくというのも,一つのやり方かなというふうに思いました。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
非常にいい案だと思いますが,今のようなことは,かつてはやはりデュアルサポートの中で,大学で行っていたことなのですね。大学が肥沃な畑で,そこを耕して,種をまいて,芽が出てきて,それで挑戦的萌芽のところに出てくるという状況であったわけなので,それも全部含めて制度設計をしないといけません。まだ芽が出るか分からないところで,この競争の場でちゃかちゃか始めると,本質的なことがずれているということも時に起こるような気がします。ですから,科研費全体がそうですが,これはデュアルサポートがあった時代の制度ですから,それにのっとってやっていますので,考えるときには,更に深く考えないといけないと思います。

【佐藤部会長】
はい。小安先生。

【小安委員】
誰もデュアルサポートを言わないからおかしいなと思っていたら,勝木先生が言い出したので私も述べさせていただきます。勝木先生の補足となり大変失礼なのですが,私の記憶が正しければ,なぜ論文リストを外したかというと,要するに,かつては自分の持っているいろいろなアイデアをデュアルサポートのところでまず試してみて,そこで予備データを蓄積して,それを基に,場合によっては論文を書いて,基盤研究に応募することができた。ところが,今はそれができない。そこで,とりあえずアイデアの段階でも応募できるようにしておいて,この挑戦的萌芽研究をもらった人が,そこできちんとした予備データを積んで,それをもって更に基盤研究に応募するような,そういう仕組みを意識した記憶があります。ですからまさに,このアンケート結果は,簡単に言うとデュアルサポートの欠如という,そういうことを言っているにすぎないアンケート結果なのです。ですから,挑戦的萌芽研究の仕組みが本当に機能しているのかどうかのチェックを,やはり日本学術振興会や,この研究費部会でやらなければいけないのではないかなと感じています。

【佐藤部会長】
栗原先生。

【栗原委員】
今の御意見に補足する形になりますが,審査をしたり,また従来この提案をしたりする立場からすると,この挑戦的萌芽研究は,基盤研究と同時に応募できるというところが重要なポイントだと思います。基盤研究は,どちらかというと,ある程度継続的に積んできたものをより展開するというような視点がどうしても強くなるのに対して,挑戦的萌芽研究はそれぞれの方のアイデアを基に,多少のフィージビリティーは,実際には多少データを書いておられる方が多いと思うんですね。レファレンスがないから逆にそういう部分は,多少は試しているけれども,基盤研究に応募するほどはバックデータもないというようなところで,新しいアイデア,あるいは新しい分野ということで,ほかの人の常識になっていないようなものに対して出すと。どうしても基盤研究の方は皆さんの常識というものがある程度あって,どうしてもそれに対しての審査になるのに,挑戦的萌芽研究はどちらかといえば論理的で,提案が斬新であるというところが審査の視点になっていると思うので,そういう意味では非常に相補的になっていると思いますし,逆に,私は,AやAAがどうなっているのかをフォローすることが大事かなと思います。

【佐藤部会長】
はい。鍋倉先生。

【鍋倉委員】
挑戦的萌芽研究は若手の応募が多いので,そうすると,例えば若手研究(B)などは,実績はまだそれほどなくても,いいアイデアで採択されます。逆に言えば,基盤研究(C)との重複制限があるということで,そうすると基盤研究(C)というのは,ある程度の実績ができて,更にそれを飛躍させようというアイデアでは,なかなか重複制限で応募できないという,やはりこの重複制限というのを少し考える必要があるのかなと。特に中堅の研究者が更に飛躍させるときにどちらを選択するかは非常に重要で,特にAAと評価されると,ひょっとしたらもう基盤研究もとれなくなると。そういうことで,やはり重複制限を見直して,いつでも,どういう段階でも挑戦できるような形をとるべきかなと思います。
もう一つが,生物系や理工系を飛躍させるために,次の期は,額としてもう少し考える必要があるのかなと。500万円以下で,3年や2年でどのくらいなのか,それが適切なのかどうかということも考えて,もし挑戦的萌芽,挑戦的研究というのを本当に推進するのであれば,もう少しそういうサポート体制について見直す必要があるのかと思っています。

【佐藤部会長】
はい。橋本先生。

【橋本委員】
資料2の8ページ,9ページのところで,例えば9ページは応募状況のデータですが,採択率の状況がどうなっているかということを知りたいのと,同じ意味で,8ページの年齢別応募状況の方で,挑戦的萌芽研究は若手の応募が多いというのは,研究費獲得の作戦上の話で多いというような印象の説明でしたが,そういうことであるとすると,これに関しても年齢ごとに採択率がどのくらいかということを見て,結果的に,その数の問題でなくて,採択率に関しても若手が多かったということであれば,クリエーティビティーは若手の方が高いというような意味で見えると思うのだけれども,そうでないのかもしれないという,その辺りのところがよく分からないので,分析が必要かなと思います。逆に言うと,かなりシニアになってもクリエーティビティーの高い人がいるだろうと思うので,そういう人たちが応募しにくい状況にあるのかどうかということも問題かと思います。
私は,このAAとか,こういう評価が分かれるものに関して,どうやってそれをすくい上げていくかという仕組みは非常に大事だと思うので,これをやった結果の,後の制度評価をこれからしっかりやっていただければ,こういう方向の,みんなが賛成するものだけ通るというのは余り面白くない気がするので,是非そういう色がきちんと出るような種目というのは大事にしていきたいと思います。

【佐藤部会長】
ありがとうございました。山本先生,今の点はどうでしょうか。

【山本JSPS学術システム研究センター主任研究員】
恐らく採択率に関しては,種目や分野ごとにはコンスタントであるはずなので,9ページのグラフに関してはそのまま適用,第ゼロ次近似はです。それから8ページについては,調べてみないと分からないと思います。つまり若手が強いのか,シニアが強いのかというのは,事務的に調べる必要があると思います。
AAの制度評価に関しましては,今後平成30年度の見直しがございますので,それに向けてやはり検討しなければならない課題だと理解しております。

【橋本委員】
もう1点だけ申し上げます。例えばNEDOでやっているステージゲート審査など,ああいう考え方を取り入れることと,それから上限500万円というところをもう少し弾力的にするというのはありではないかなという気がするのですが。

【佐藤部会長】
西尾先生。

【西尾委員】
私もこの挑戦的萌芽の意味を,デュアルサポートの観点から大事だということを前回申し上げました。現在,大学等における基盤的経費による学術研究を行う苗床が本当に枯渇している中で,なかなか実績を生むことができなくて,論文リストはないのだけれども,斬新なアイデアと同時に実現可能性もきっちり記述した上での申請が採択されるということは大事だと思います。11ページからのデータは,挑戦的萌芽研究が終わった後にどれだけ基盤研究等に応募することに資するものであったかを示すことを目的にしたものだと思うのですが,採択される前と後を比べてあります。ただし,本来は,採択される前の課題はもう別として,挑戦的萌芽でなされたものをベースとして,その先において基盤研究に応募して採択されているものがどれだけあるかということをトレースしていただくと意義があると思います。挑戦的萌芽研究を推進したことによって研究実績が出てきて,その研究実績をベースとして基盤研究などで採択されるという流れを作れば,現在,大学等における基盤的経費が厳しい状況に対してのデュアルサポートの意味をきっちり持ってくると思います。そのような何らかの調査があると,挑戦的萌芽の役割がより明確になるのではないかなと思いました。

【佐藤部会長】
では,前澤さん。

【前澤企画室長】
西尾先生,御指摘ありがとうございます。確かに本日お示ししているデータは,決まったゴールからバックキャストで戻っているものですので,ある意味成功例だけですので,むしろ挑戦的萌芽研究で支援された研究全体がその後本当にどうなっているのかというデータは別途集めたいと思います。
それから,先ほど橋本先生からお尋ねのありました年齢別の基盤研究(C)と挑戦的萌芽研究の採択率ですが,まず,どの年齢層でも,基盤研究(C)の方が挑戦的萌芽研究より採択率はよろしいです。ですので,採択率だけを見て,若手が戦略的に挑戦的萌芽研究に応募しているということはないという気はしますが,例で申し上げますと,35歳から39歳の年齢層ですと,基盤研究(C)の採択率が47.2%,挑戦的萌芽研究が31.1%となっております。これに対して,例えば50歳から54歳の年齢層ですと,基盤研究(C)の採択率が26.9%で,挑戦的萌芽研究が27.6%と,例えばこのようになっております。

【橋本委員】
更に下の年齢層については何か分かりますか。30歳から34歳はいかがでしょうか。

【前澤企画室長】
30歳から34歳は,基盤研究(C)の採択率が43.8%,挑戦的萌芽研究が31.3%です。

【佐藤部会長】
やはり挑戦的の方が低いのですね。
どうぞ。

【射場委員】
萌芽研究によるステップアップのデータで,ステップアップしたものが76%もあるということにびっくりしました,本当に挑戦的なのかなと思って。挑戦的なら,最初の議論にもあったように,もっと失敗するものも多くて,アイデアがあって挑戦したのだけれどもうまくいかないということも,大きな成果だと思います。そういうことも評価できるような仕組みにするべきだと思います。大体うまくいかないときの方が研究者は育つと思うのです,あれこれ考えて。ステップアップして大きい研究になっていくのは,それはそれで成果なのですが,その反対方向での成果も出ているということをよく評価してもらいたいなと思います。

【佐藤部会長】
貴重なコメントをありがとうございました。この辺りは中身を見ないと,本当に挑戦性から行っているのか,同時にもらっている基盤研究(B)の成果で行っているか分かりませんし,本当に難しいところですね。

【白波瀬委員】
人文社会系の代表として申し上げる立場でもないのですが,やはり人文社会系の応募が少ないというのがすごく気になっています。申し上げたいのは,挑戦的萌芽の意味そのものの話がありましたが,やはり挑戦的萌芽として組みやすい分野と組みにくい分野があります。それで弁解をしようというつもりではないのですが。ですからこの枠組み自体は人文社会系でも非常に意味があるし,若い人たちにとっては,やはり新しいアイデアをどんどん出すことによって評価されるという,すごく強いメッセージにはなると思います。ただ,これが生物系や理工系と同じぐらいになるかどうかというのはまた別で,つまり,9ページの統計も,全体を100とした場合にどうですかという話で,基盤研究(C)と全種目を見ると,人文社会系は基盤研究(C)の方が割合が高いので,多分研究としてはこういう形での方が組みやすいという側面があります。そこの中に新規性がないわけではないと思いますので,一応一言,言いたいと思いました。

【佐藤部会長】
西川先生。

【西川委員】
文部科学省の方に伺いたいます。まず,こういう挑戦的な研究を支援するということは大賛成なのですが,今,科研費ですと挑戦的萌芽研究というシステムがあるわけですね。その中でいろいろと改革をして考えていこうという議論なのか,それとも更に枠組みを広げていろいろなことをやろうとしているのか,その辺りの見通しがあったら伺いたいと思っています。
と申しますのは,もちろん挑戦的萌芽研究で良いものが更に発展する,そういうステップがあったらいいなと思う反面,今,平成30年度に向けた科研費の大改革があります。そういう面でいろいろ,年度によって次から次へというのは研究者にとっても大変なことです。また,今私は日本学術振興会におりますので,その立場でも見ていますと,これはもう手に負えないなという感じがします。今の議論というのは,いろいろ御説明を伺うと歴史的な話などが出てきているので,これは何か次のことを考えていらっしゃるのかなとも思うのですが,その辺りのことを説明していただけますでしょうか。

【佐藤部会長】
鈴木課長,よろしくお願いします。

【鈴木学術研究助成課長】
失礼いたします。本日後ほど,科研費改革全体の実施方針あるいは工程表に関しての頭出しをさせていただくつもりでおりますが,先生の御指摘のとおり,今,科研費全体の改革のプライオリティーとしては,まさに平成30年度公募に向けての分科・細目全体の大くくり化,あるいは審査方式の見直し,これがやはり最大のテーマであると承知しております。ですので,それに向けてまずやれることは何か,さらにこういった種目全体の構成や体系について,これは昨年の分科会の御提言からも頂いておりますが,かなり腰を据えて,長い目でやらなければならないもの,そういったものを仕分しながら作業をしていく必要があるのかなと考えております。
その一方で,今回のこの「挑戦性」自体は,学術分科会の一番の御提案でもありますし,また挑戦的萌芽研究は,従来も試行錯誤が重ねられてきた種目ですので,今申し上げたような全体の大きな流れの優先順位の中で,どこまでのことが試行実験としてできるのか,この辺りのところは考えてみるべき時期かなということで,今回はそういった,幅広い観点からの御審議をお願いしているところでございます。

【佐藤部会長】
高橋先生。

【高橋委員】
ありがとうございます。今まさに西川先生が言われたことは私も思っていました。挑戦的萌芽研究のマイナーなチェンジをどうするかというよりも,もっと全体的に変えていけるものだったら変えるべきだというのが私の持論です。何回かいろいろな委員会で発言させていただいていますが,3つありまして,1つは,これは極論だと分かっていながら言いますが,特別推進研究,基盤研究(S),こういう種目が,恐らく挑戦的萌芽研究も含めて,新しいお金をとってきてくださるときに,ちょっと上乗りでぺたぺたとくっついているのがあるので,なかなか全体のシステムとしてうまくいっていないと。しかも運営費交付金がこういう惨状ですから,もっと現場サイドに立ったものにすべきだと私は思います。特別推進研究や基盤研究(S)をなくす,あるいは違った形にして,一番肝腎なことは,きちんと研究をやっている研究者が,きっちりと科研費がとれるシステムを一刻も早く作らなければなりません。今は太っているものがどんどん太る,それから,言葉はきついですが,労働者がたくさんいる機関はどんどん論文が出ますから,それがまた大きな研究費をとりにいくと。このようにして,地味だけれどもきっちりとやっているところがどんどんクローズドになって,倒れていくわけです。これを一刻も早く変えなければいけないというのが私の意見です。そのために科研費をどうするか。
例えばの話,雑駁(ざっぱく)ですが具体的な案を2つ出しますと,1つは,基盤研究(A)(B)(C)というものを,半分は継続し,半分は改革して,1つの研究費おいて2つあるいは3つの,複数のカテゴリーを選んでもらうというものです。これはあなたにとって非常に挑戦的なものとして申請しているのか,それとも今までやってきたものをきっちりと発展させようとしているのか。資料2の5ページの,緑色の種目について何か辛気くさいような議論をやられると,これはやはりゆがんでいるわけで,ピンク色の種目だけでいいわけではありません。ですから,私は生命科学系ですが,緑色の種目できちんとした,5年やそこらで花が咲くようなものは,言ってみればうそだという持論を持っています。ですからきっちりと長期的な展望で,科研費がとれなければ,そもそもの挑戦的なものを温めていこうということが成り立たない状況に今日本国はなっているということ,それを踏まえて,先ほど言いましたように,この研究費への申請はあなたにとって今までの実績を発展させるものか,あるいは挑戦するものかというようなカテゴリーを作ってもいいのかもしれません。
3番目に大切なことは,先ほども言いましたが,派手な『ネイチャー』や『サイエンス』に幾つ論文が出たかによって審査されるシステムを,とにかく早くやめましょう。研究費部会がやめましょうと言っても,現場は実はもう頭が固くなっているわけです。私はいろいろな審査会に出ましたが,審査書をまともに読まずに,この人は『ネイチャー』にたくさん論文を出しているからいいのではないですかとか,今でも大手を振ってそういうことを言っている審査員がたくさんいますね。ですからそこを何とかしなければ,幾らシステムを変えても,審査のレベルでうまくいかないという現状があります。ですから,我々現場の意識改革を早急にすること。何度も言いますが,長期的な展望を持って,成功もあれば失敗もあり,学生あるいは若手をきっちりと育てながらきっちりとやっている,そういう人たちを全面的に科研費でサポートする,運営費交付金も当てになりませんから科研費できちんとサポートをする,そういった大改革へ持っていきたい。そのためには,新しいものを作るのも一つだと思います。
肝腎なことは,たまたま大きな額の科研費が失敗してもゼロにならないシステムを作ることです。そういうことは今まで余りないので。何が言いたいのかというと,挑戦的萌芽研究の話に戻りますと,ネガティブなことを言うようですが,この種目だけ重複制限から外れていますので,みんなウの目タカの目で出してきます。私も出しました。このような感じですから,現場は余り字面の能書きで動いていないということです。取れるお金があれば,みんな全部申請します。それで忙しくなるわけです。たかがと言ったら失礼かもしれませんが,100万円,200万円のために申請書をたくさん書いて疲弊するというのが現場の実情ですから,そういうところも全部勘案して,いい研究者がよく育つ,そういう科研費について,是非この機会に皆さんと一緒に考えさせていただきたいというのが私からの意見です。

【佐藤部会長】
ありがとうございました。本当に現場からの発信ということでございました。ただ,最後におっしゃったことは,大分深刻に考えないといけないと思います。挑戦的萌芽研究は重複制限が掛かっていないのでたくさんの人が応募すると。実際これは審査の段階で,挑戦的でないものまで採択されている可能性が十分あるという御指摘ですよね。

【高橋委員】
むしろ逆ですね,荒唐無稽な,口八丁手八丁のものが採択されている可能性もあるのではないかというように思います。ですからやはりハイリスク・ハイリターン,先ほど勝木先生が言われたのは全くそのとおりで,特に生命科学の現場では基礎的なデータなしに,これ,面白いでしょうなんていうのは,少し勉強したら誰でも言えることなのですね。そういう人にお金をあげてはいけないというのが私の意見です。やはりきっちりとやって,基礎的なデータを出して,これをこうしたら,こういう結果が出るに違いないという,論理的な予備データは命だと思います。ただ,その予備データが,太ったラボがいっぱい業績を出していて,それをベースにしてできるだろうというのとは根本的に概念が違うということです。

【佐藤部会長】
ありがとうございました。
ほかに御意見等ありますでしょうか。日本学術振興会の方から何かおっしゃいますか。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
私も高橋さんと同じ生命系ですし,なぜか気が合うものですから,ほとんど全面的に,そのような実情であると理解しております。しかしながら,ここは多分私の本心と反して申しているのかもしれませんが,現実を踏まえると,やはりピースミールに少しずつ変えていかないと,なかなか……。

【高橋委員】
難しいというのはあります,もちろん。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
今学問をやろうと始めている人も,あるいはやっている方も,突然の環境の変化に対応するということは余り重要なエネルギーではないですので,まずは審査方式の改革など,ここにおられる方にも,スタディーセクション方式についてはいろいろとつらい思いをさせましたけれども,しかしながら改良の余地がある,いい方法だと言われておりますので,そのことによって,本当にその人を字面だけで見るのではなくて議論できるということが始まると,かなり面白くなってくるのではないかというのが現状でございます。
ただ,一番申請数の多い種目が,議論するにはとてもエネルギーが掛かり過ぎますので,その部分は今までどおり,少し改良しながらやっていこうと。さらにそのウイングを広げながらやろうということに,少し時間は掛かるかもしれませんが,高橋さんが現役の間に是非手伝っていただいて,進めたいと考えております。

【小安委員】
短く,一応反論しておきたいのですが,かつてきちんとしたデュアルサポートがあったときに,自分のアイデアでやることが一番大事だった訳で,きっちり予備データを出せたのはやはりデュアルサポートのシステムであって,それがなくなったときに,この挑戦的萌芽研究がそういうところに使われるということは僕は正しいと思っています。したがって,先ほどの高橋さんの御意見には,全面的には賛成しかねると言っておきます。

【高橋委員】
それはマイナーポイントですよ。

【佐藤部会長】
甲斐先生。

【甲斐委員】
皆さんが本質論を話し始めましたので,私も発言したいと思います。挑戦的でも萌芽でもどちらでもいいのですが,これをどう位置付けるかということを,そろそろ真面目に考えた方がいいかなと思います。これまでの十分な研究成果から,新しい分野に挑戦したいとか,新たな展開を考えて挑戦的に行ってみたいという研究であれば,もっと金額を上げるべきだと思います。それとは別に,いわゆる運営費交付金でやってきたような試し実験として,通常の競争的資金に挑戦する前段階の研究をやりたいというのであれば,少し広くとってあげれば良いと思います。運営費交付金の代わりとしてだったら,金額は小さくてもいいとは思いますが,その代わり採択率は倍以上にするべきではないかと思います。つまり,2種類の考え方があると思います。
ただ,研究費部会が科研費に対する議案に閉じているから,このような議論を迫られていると思います。本来は文科省が腹を決めて,運営費交付金の使途の内訳を全部自由に,給料と当たり校費と分けずに一緒にしてよいという考え方をやめればいいと思うのですよ。運営費交付金の削減が続き,その結果,どの大学も苦しくなって給料が払えなくなったので,当たり校費をなくしてしまいました。そうやって大学は生き残り戦略を考えた結果,研究に使える運営費交付金は,今はほとんどゼロになってしまったのです。その当たり校費分は基礎研究の糧として大学にとって必要だから,これは削ってはいけないと文科省が言えば済むのではないかと思うのですが,いかがでしょう。もちろん大学にとってそれは苦しい選択です。人件費の方に回してしまった予算を減らすのですから,しばらくは辞めた人の次のポストを採れないなど,大学が苦しい目には遭います。しかし,研究費部会が研究にとってデュアルサポート,つまり運営費交付金がこんなに大事だと声高に言っていても,その現実を変える力はないでしょう。だから私は文科省の方に腹をくくっていただくのが最初だと思うのです。そうではなく,それはもうできない,もう戻らない,だからデュアルサポートは諦めますよというのであれば,今までの我々のデュアルサポートが重要という提言を文科省の提言の中に書くのはおかしいと思うのですよ。常に我々はいろいろなところの提言でデュアルサポートが大事ですと言っているけれども,そこまでは踏み込めないよねという暗黙の了解で議論をするのはいいかげんむなしいなと思うのです。
もうデュアルサポートを諦めたというのであれば,それなら科研費等で皆さんの研究の土壌を育てるところもやりましょうと腹をくくるのであれば,議論の内容も変わります。挑戦的萌芽研究をそういう土壌を育てる研究費として据えるというのであれば,採択率は申請率の何%と決まっていくという方式をやめて,もう60%や50%は採択しますよというような。その代わり名称も変えて,萌芽も挑戦も,新しい分野への何とかでも,人社系にも考慮した言葉を入れていただいて,少し広げた言葉にしてやる。金額は低くていいと思います,100万円などその程度でいいと思います。研究費部会として,そういう種目の新設を考えるべきではないでしょうか。
16ページのNIHの支援対象を見ると,後半の方がとても出口志向ですよね。だから年間2,000万も出してあげられるのだと思います。そういったものも含めた挑戦的萌芽が実は本格的な,かなり研究実績のある人が申請するステップアップや新たな展開への挑戦的萌芽です。だから萌芽も2段階にするなど,そういうアイデアもあるのではないかなと思いますので,根本からもう一回考えてもいいのかなと思います。

【佐藤部会長】
すごく分散しまして,もうこれは……。

【甲斐委員】
座長に一任。

【佐藤部会長】
採択率が6割を超すと言われると,みんな応募しますね。

【甲斐委員】
6割ではいけませんね,5割。

【佐藤部会長】
どうぞ。

【栗原委員】
私も,真面目に研究をやっている研究者の研究費がないというのは,そんな理不尽なことはないと思いますが,組織に少し責任を問うてもいいのではないかと思っています。運営費交付金が幾ら減っているといっても,そこを全部科研費だけでやれるのかどうかということはやはり課題としてあるのではないかと思います。
それで,前回の会議で課題になった間接経費などをもう少し組織にきめ細かく見て活用してもらうという視点もあるのではないかと思います。全体として何が工夫できるか,この中でももう少し気配りをしながら考えられる部分があるのではないかと思います。もちろん先ほどの挑戦的萌芽研究について,私もそんなに額は大きくなくていいと思うのです。それでしたら例えばJSTのさきがけに出すとか。ただ,あれは従来は比較的広かった分野が最近は特化してしまっているので,すごくそこは難しいところが出てきましたが,先ほどの,真面目にやっている人がきちんと続けられるようにという意味で言えば,間接経費も含めて,もう少し組織の運営について,組織に目配りしてもらうということも必要ではないかと思っています。

【佐藤部会長】
これはもう根本的な問題でございまして,もちろん学術分科会でも,昨年のレポートにまとめましたように,この点の重要性は十分承知しているわけですが,実際問題どうすればいいのか,これがやはり問題だと思います。

【高橋委員】
本当に散漫にはなりますが,私はね,甲斐さんが言われているように,科研費の問題を科研費だけにクローズして考えること自体に無理があると思うのですよ。いや,一生懸命考えますよ。考えますけれども。だから,右のものを左にやっていいよねなどというようなものから脱却しなければ,余り意味がないかなという気もします。
済みませんが,また2点言わせてください。1点は,先ほど甲斐さんが言われたようなことなのですが,私は若干違う意見を持っています。今も大学の間接経費などと言われましたが,恐らく大学はそんな余裕はないと思いますね。是非論はともかくとして,今国立大学の機能分けなどの大改革が次から次に出されているところで,大学がもう浮き足立っていますね。まともに考えることができない状態になっているときに,あなたは科研費はとれないけれども,一生懸命頑張っているから運営費交付金をあげるよなんていう大学は,もうないです。少なくとも京都大学は全然余裕がないです。いろいろな5年間のプロジェクトがありますよね,あるいは10年,WPIなど,いろいろなプロジェクトで潤った大学もあります。でも,あるところまで来るとプロジェクト期間が終了した後は大学の中のお金でやってねというものがたくさんあると,その間接経費,運営費交付金でそれを賄わないといけないわけです。だからアディショナルにいろいろなものが来て,それを賄うために一生懸命経営しているわけです。そうしたら,こういうところの余裕はないわけですよ。
このような複合的な問題があって,その中での科研費だということを考えたらむなしくなるのですが,私はそういうことは常に言っていかないといけないと思います。
また,5ページに戻りますけれども,私は前にも言いましたが,もう一度言います。生命科学では,特別推進研究,基盤研究(S),(A)というのが非常に鬼門でありまして,特別推進研究に応募しても通らないだろうなと思っている超実力者が基盤研究(S)に出します。でも,それも宝くじですから,通らないよなと思って基盤研究(A)に出します。でもそうすると,よし,次は頑張ってやろうと思って基盤研究(A)に出しても絶対に通らないから,基盤研究(B)に出します。その結果,かなりの実力者が基盤研究(B)に集中します。しかし採択率は,今何%でしたか,2割を切っていますよね。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
30%です。

【高橋委員】
失礼しました。だけど,地味という言葉がいいか悪いか,堅実に一生懸命やっている人が,この基盤研究(B)からはじかれるのです。そのときに研究費がゼロになります。そうすると,例えば40代,50代,60代の先生の研究室は実質的にクローズですよね。それでは若者が育たないです。特に大学の立場で言わせていただくと,学部生や院生が何の研究をしようかなというときに,研究費がゼロで,運営費交付金もゼロだよとなったときに,日本の学生が育つか。これも散漫と言われるかもしれませんが,全部複合になっているわけです。
ですから,私がずっと何回も言っているのは,こういう極端で頭でっかちなものをやめて,それなりのものはあってもいいかもしれませんが,がーんとやっている人は,がーんと出せばいいのですよ。でも,そこでたまたま駄目でもバックアップがあるような,それで本当にサボっていて,論文を全然書かないとなったら,それはアウトです。こういう,もっと直感で考えて分かりやすいシステムが築けるはずです,こうチョキチョキ分けなくても。それを私は実現させたいなと思います。
以上です。

【佐藤部会長】
ありがとうございます。高橋先生がおっしゃった,階層がないような審査ができればすばらしいと思うのですが,ちょっと分散し過ぎていますので,西川先生,簡単にお願いします。

【西川委員】
もっと分散させる話になるかもしれませんが,地方大学の教官だったという立場で,現状をお話ししたいと思います。
この研究費部会でも,今,教官が運営費交付金として得られるお金は平均30万円くらいだという話がよく出ていましたが,それは去年までです。今年は既にゼロが出てきています。それが現実だということを申し上げたいということ。それから,そういう人たちがやはり当てにするのは科研費を初めとする外部資金でして,このお金で何とか研究,あるいは教育までしようとしています。
それで,私たちは科研費の採択率が大体20%だ,30%だとよく議論をしましたけれども,これは非常に大きな間違いだったなと思っております。というのはどういうことかというと,科研費に応募することすらできない人たち,もう諦めてしまっている人たちがいる。そういう人たちまで含めて,科研費の応募資格を持っている人で実際に新規採択された人が何%かと,この間,高見沢さんに伺いましたが,もう10%を切っていましたよね。

【高見沢企画室長補佐】
そうですね,登録者が27万人ぐらいおりまして,大体2万7,000から3万ぐらいの新規採択ですので,10分の1ぐらいです。

【西川委員】
10分の1くらい,10%を切るくらい,それくらいでやっている。もちろん科研費以外の外部資金もありますが,そういった状況で皆さん研究あるいは教育を続けているという状況をきちんと認識した上でやらないと。やはり科研費をとれるというのはエリートなんだと思います,研究者の中で。そういう認識の上に立っての議論が必要だなと思っております。

【橋本委員】
もう1点だけ付け加えて言わせていただくと,ちょっとおずおず申し上げるのですが,私立大学の立場から言うと,デュアルサポートなんて元々縁がない話です。ですから,この科研費の改革というのはどこを向いてやるかということをきちんと決めていかないといけないと思います。国立大学が苦しいのはよく分かっていますので,国立大学が苦しいのを何とかこの制度でもって補完していこうというのも一つの考え方かもしれませんが,間接経費やこういうものは,むしろ国立,私立に関係ないところにありますよね。是非,それをターゲットに考えていっていただきたい。元々デュアルサポートがどうのこうのではない議論としてもやっていかなくてはいけないのではないか,その視点を是非入れていただきたいということを申し上げたいと思います。

【小安委員】
あと,西川先生がおっしゃった数字に補足したいのですが,私の記憶が正しければ,科研費の申請の有資格者のうち4分の3は一度も科研費をとったことがない人のはずです。

【西川委員】
4分の3ですか。

【小安委員】
ですから4分の1で科研費は成り立っている,そのような統計だったと思います。正しいですよね。

【佐藤部会長】
いろいろなコメントをありがとうございました。多様な議論がありましたが,研究費部会ではカバーできないところもたくさんございますし,そういう意味では親委員会の学術分科会で議論すべきことではあろうと思います。しかし一方,昨年,平野先生,また西尾先生の下にまとめた文書にありますように,大事なことは指摘されているわけですよね。これをどう本当に実際に生かすかが問題でありまして,今後とも私たちも努力していかなければならないことだと思います。
今日の課題は,基本的にはやはり「挑戦性」という,学術分科会でも挙げました4つの課題のうちの1つであります。それをどのように科研費の中で生かしていくかということが今日の議題であるわけでございます。西川先生より,今の挑戦的萌芽研究の制度を改革するのか,それとも新しい枠組みを考えているのかという質問がございまして,鈴木課長の方からは,そういうことも議論していってはどうかという話だったわけでございます。今の挑戦的萌芽研究でカバーできないところがあるとすれば,新しい種目も考え得るということがあると思いますが,これに関してはいかがでしょうか。むしろ今の挑戦的萌芽研究をより改革する必要もあるかと思いますが,いかがでしょうか。
どうも先ほどの議論を聞いていると,やはり実績を全く書かないで挑戦的かどうかを評価するというのは,運営費交付金がこれだけ減った状況では難しいのではないかと。やはりある程度の,本当にその実験をできる人なのかなどいろいろとあると思いますので,実績は必要かなという感じがしたのですが,これはいかがでしょうか。

【鍋倉委員】
自分のことを言うようなのですが,私も50歳のときに研究テーマを全く変えました。もう10年前です。それまで科研費以外のところでサポートしていただいていたものを,今度は科研費において,アイデアでそれをどう展開するかと。やはり,研究者には大きな転換があり,いろいろなステージがあると思うのです。そのときにどれだけきちんとサポートして,挑戦的に発展させられるか。挑戦的というのは,若い人だけではなくて,それまでずっと寝かしていた実績がある研究者すべてに関してです。
ただ,あるときには大きなお金も必要なのです。そういう意味では,やはりこの挑戦的萌芽研究は,額も含めて,採択率も低くてもいいので,そういうことをきちんと考える必要があると思います。これは審査の方式も含めてですが,やはり実績に合わせて,それをいかに飛躍するか,そのときにどう展開するかということに関して,金額も含めてもう一回練り直す必要があると思います。

【佐藤部会長】
ありがとうございます。
小安先生。

【小安委員】
実績が要らないとは言わないのですが,先ほど栗原先生がおっしゃったように,普通,申請書を書くときに,全く予備データを書かないというのは私には余り考えられない状況で,したがって,そこにどういうことが書かれているかというところで大体判断できると思っています。後ろに何も論文リストがなくても,そこで判断できると,そういうふうに私はやはり感じています。

【佐藤部会長】
実際に審査されたときに,多くの方はちゃんと自分の実績を書いているのだという趣旨ですかね。

【小安委員】
要するに,審査に通る人は,やりたいことに関してどのぐらいの背景があるのかということを,やはりきちんと書いていると思うのです。それは論文リストではないと僕は思っています。

【佐藤部会長】
では,甲斐先生。

【甲斐委員】
若い人だとそういうことを書かないで出す人もいましたよ。

【小安委員】
それは通らないでしょう。

【甲斐委員】
いや,Aを2つ付ける審査員がいると通ってしまうので,私は,大きく分野を変えてもいいので,そこに実績はなくてもいいと思うのですよ。ただ論文を書く実力があることぐらいは示すべきだと思いますね。そうでないと誰が文章がうまいかという作文の勝負になってしまうのですよ,最近の子の文章はうまいです。パワーポイントの作り方や文章の書き方など,そういうことばかりトレーニングされていて,内容がなくてもレポートがうまいという子は結構増えています。

【小安委員】
そういうときはね,今は自分でインターネットで調べるでしょう。だから気になったときは調べられるんですよ。

【甲斐委員】
だって,こんな200もの申請をコピペかどうかのスクリーニングを掛けるわけにいかないでしょう。

【小安委員】
いや,コピペのスクリーニングではなく実績です。実績を調べることは簡単にできます。

【甲斐委員】
もちろん文章に書くことが一番いいですが,それプラス実績として,自分がちゃんと論文を書いている人だということを,全然関係なくてもいいので3報ぐらいは書いてもいいのではないかなとは思いますけれども。

【佐藤部会長】
ありがとうございます。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
私は今まで言いませんでしたが,挑戦的萌芽研究の一番のポイントは鍋倉さんが言ったことだと思います。やはり今まできちんとやれた人が方向転換して新しいビジョンを作って出すというときには,今までのペーパーの実績を書けば,この人はやれるということが証明できる。やることは違うわけですけれども,それが挑戦的萌芽研究の本来の目的だとずっと思ってきましたので,やっている方がいらっしゃって安心しました。

【佐藤部会長】
ありがとうございます。
どうぞ。

【栗原委員】
今の議論で,確かに論文のリストを付けるということもいいのですが,もし方向転換として,新しいアイデアを本当にプロモーションしようと思うなら,論文リストがないというのはすごく強いメッセージだと思います。本当に気になればその研究者の論文を調べることはもちろん可能なので,慎重に議論する必要があると思いますが,目的に対して論文リストがないということ自体はやはり非常に強いメッセージになると思います。

【佐藤部会長】
ありがとうございました。この辺りは,科研費の申請書の書き方も含めて議論を深めていただきたいと思います。
ほかにはいかがでしょうか。この挑戦的萌芽研究の改革,若しくは更に違うステージの挑戦的なシステムが必要かということについて,何回か前の議論で,これでは金額的にも不満だから,もう少し額の大きいものもあっていいという話も出たことがありますが,この点に関してはいかがでしょうか。

【栗原委員】
額が大きくなったら,やはり論文リストを付けるとか。

【佐藤部会長】
それはそうですね。やはり本当に,甲斐先生がおっしゃったとおり,どんな分野でも論文をきちんと書いて,違う分野であってもそこできちんと成果を出しているということはやはり実績だと思います。一方,そう言いながらも,若い人の場合はそのような実績がありませんので,そういうことも踏まえて申請が出ていることを了解した上で審査すべきだと思います。そうでなければ,高橋先生がおっしゃったように,変なことばっかり書いていても,うっかり知らない分野の人が審査すれば通ってしまうのだから,それは避けなければなりません。

【高橋委員】
前にもどこかで言いましたが,以前,新学術領域研究の研究領域提案型という種目がありましたよね。 
これは,絶対に自分の業績が分かるように書いてはいけない,もちろん論文リストは付けてはいけないというものでした。私はその審査をやって,ペテン師が多くいるのを発見しましたが,発見できないものもいっぱいあったということなのですね。その大きなトラウマで今意見を申し上げているのですが,私は論文リストは研究者の命だと思います。問題は,それをどう審査するかというところあって,『ネイチャー』があるからいいなどというような,そういう社会になったことに問題があるという,問題のすり替えはよくないだろうと思います。
それから,今聞いていると挑戦的萌芽研究は若手のサポートであるような議論があるのですが,それは違うのではないでしょうか。それは若手研究(B)でサポートしているのであって,鍋倉先生がおっしゃったように,挑戦的萌芽研究は若くても年をとっていてもいいのです,誰もいいですよ。よし,挑戦だというときに,この人は挑戦的で,これでできるぞと,それを判断するために審査員がいるわけで,誰でもいいのであれば審査員をしたくないですよね,誰だって。物すごい数の申請が出てくるわけですから。だから,それはもっと前向きに挑戦的萌芽研究を考えた方がいいと思います。
それから,今日は挑戦的な研究への支援というのが議題ですが,私の感覚では,資料2の5ページの挑戦的萌芽研究のピンク色のところをどうするかという議題ではないような気がしますよ,やはり。先ほど鈴木課長がおっしゃったように,挑戦的萌芽研究を一つの話題にして,科研費全体としてこれでいいのかということを考えることであって,このピンク色の部分をどうするかという生易しい状況ではないということを,再確認をお願いしたいと思います。

【佐藤部会長】
西尾先生。

【西尾委員】
挑戦的萌芽研究について,今後重要な新たな研究分野であるとか融合領域などの開拓ということを考えた場合に,研究の主体としてある程度の規模のグループを構成し,異分野の研究者との共同研究が可能な枠組みを考えることは重要と考えます。また,新たな分野を共同して開拓していくという場合に,申請の上限額を現在の500万円よりももう少し大きくして,本当にブレークスルーを生むようなチャレンジをチームで推進しやすくすることも是非考えた方がよいのではないかと思います。

【佐藤部会長】
西尾先生,コメントありがとうございます。
上田先生。

【上田委員】
少し別の視点で,先ほど段階的な評価などという話もありましたが,やはりこれをどういう査定するかというのが非常に重要だと思います。ただ,システムを複雑にすると,審査する方の負担が相当増えます。私ごとですが,今,CRESTを1つと,さきがけ2つと,NEDOの課題を持っていますが,申請書には相当悩まされます。これは結構疲れますよね。
やはり思ったのは,先ほどのペテン師云々(うんぬん)ではないのですが,もういきなり口頭試問でプレゼンをさせてはどうでしょうか。もう今はこんな時代ですから,一々紙に書くような審査をするのではなくて,どうせヒアリングに呼ぶのだったら,例えば5分でも10分でもいいから,厳しい審査員の先生がぼんぼん質問したときにきちんと答えられるかどうか,そのようなやり方で,もっと審査の効率を上げないと,書類ばかり増えてしまいます。どの申請者も大体似たようなことを書いているわけですよね,だからそのようなことも考えてやれば,ペテンもなくなってくるという気もしますし,申請する方も,怖い先生からいきなりどんどん質問されるのであれば,中途半端なものを出してもどうせ駄目だなと。でも,言葉だけ,文書だけだったら,それこそインターネットなどのいろいろな情報を使えば,それなりに作文はできます。だからそこはやはり,こういう時代のプロス・アンド・コンスなので,悪いところだけをうまく利用されるのではなくて,そういうシステムをうまく作ってはどうでしょうか。例えば,もう申請書を見なくても,ヒアリングなんかやらなくても,きちんとパスワードを付けたビデオを審査員に渡せばいいわけですね。そうしたら御飯でも食べながら見られるわけですよ。だから,そういうことはもう少しITを駆使したやり方をとればいいと思います。

【佐藤部会長】
西尾先生。

【西尾委員】
今,上田委員がおっしゃったことについて,1つ参考意見なのですが,JSTのさきがけプロジェクトの審査では,領域総括の中には論文リストを参考になさらない方もおられます。そのような方針のもとで申請内容が真(しん)に萌芽的,挑戦的であるかを見定めておられます。ただし,さきがけプロジェクトの場合は,今おっしゃったようにヒアリングがありますので,実際に申請者と会ってみることによって判断がより確実になります。その観点からもヒアリングは大事なのだと思います。

【上田委員】
そうですね,だからいきなりヒアリングでいいのではないかという,一つの提案です。

【佐藤部会長】
さきがけは額が随分大きいわけですね。

【西尾委員】
そうです。その観点からもヒアリングが行われています。

【佐藤部会長】
500万円規模の種目でどこまでそれが可能か,難しい問題ですね。

【白波瀬委員】
議論を戻してしまうようですが,やはり挑戦的萌芽研究は年齢やキャリアのステージに関係なく,挑戦的萌芽があるものという意味だと思うのですね。ここに,要するに年齢に関係なく設定されるべきと考えます。キャリアとして浅い人たちのインフラ,これがデュアルサポートというところの背景にあると思うのですが,そこの部分の支援ということと,挑戦的というのは少し違う議論です。若くて頭が柔軟だったら挑戦的ということではなくて,やはり蓄積があって,そこから挑戦的なことが生まれるはずなので,挑戦ということと,若手ということを余り軽々しく一緒にしてしまうと,結局若手が育たなくなるのではないかと思います。

【佐藤部会長】
おっしゃるとおりだと思います。実際この資料を見ると,挑戦的萌芽研究で科研費をもらっている人は決して若手ではないですよ。これを見れば明らかですよ,40歳以下の人は少ないのですよね。だから,年をとろうと,定年後でも本当に挑戦的な人はいるわけで,それを書いているわけですよね。

【小安委員】
別に,挑戦的萌芽研究が若手のためだなんて誰も言っていないはずであって……。

【高橋委員】
議論の雰囲気です。

【小安委員】
もっと大きなことを言うと,やはり先ほどから高橋さんもおっしゃっていて,多くの人が感じていることは,科研費のシステムはこのままでいいのかということではないでしょうか。私は,アメリカを称賛するつもりはないのですが,NIHのRO1とR21のような2つのシステムがあれば,多分どこでもグラントは回ると思っています。この研究費部会でも前に一度議論になったと思うのですが,科研費を申請する資格というのは,私は本来はやはりPIだと思っています。まずはPIがRO1をきちんととれるか,それを今度は本当に挑戦的な新しいものにいくときにR21がとれるかと,この2つぐらいのシステムがあればそれでいいわけで,“若手”という種目,これが前から気に入らないとずっと言っています。

【甲斐委員】
私も,いいかげんにやめようと本当に思っています。

【小安委員】
やめようと言っているのですよ。もしどうしても基盤研究でやりたいのであれば,(A),(B),(C),(D)とすればいいのではないかと思う。39歳という年齢制限で,こういう区別をしているのは多分日本だけですよね。

【小安委員】
だから,もし考えるのであれば是非日本学術振興会で,その根本から新しいことを考えていただきたいなと思います。

【高橋委員】
基盤研究(A),(B),(C)もやめましょう。3つも要りません。

【小安委員】
私はそれでもいいですよ。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
日本学術振興会の名前が軽々しく出るようですが,やはり基本方針をこの研究費部会でまとめてもらわないと困ります。もちろんブラッシュアップすることはできますし,熱心にやることもできますが,きっといろいろな思わくがあってできた枠組みなので,つまり建て増しでできて,洋間があったり何か調和のとれないものになっているので,高橋さんがおっしゃるように,もう少しちゃんとした数寄屋造りにしよういう発想もあると思います。そのときに若手だけ取り上げてどうこうということもありますが,でも若手に関しておっしゃるとしても,今我々がその方針まで決めるというのは少し僭越(せんえつ)かなと思っておりまして,それを是非委員会なり文科省なりで指示をしていただきたいと思います。

【高橋委員】
それに関してはおっしゃるとおりです。でも私が,学術システム研究センターの研究員をやったときに,一生懸命議論して,そして主任研究員の方々が日本学術振興会から文科省に話を持っていったら駄目だと言われたそうで,文科省の委員というのはけしからんやつだなと思っていました,それがこの委員会なのですよね。だから私は一生懸命発言しているわけです。私はどちらもあってもいいと思いますが,この委員会が構成を決めると高圧的になるので,やはり現場サイドの日本学術振興会の方から上げていただくと。学術システム研究センターは専門研究員が一生懸命議論するところだと,今でもそうだと私は信じているので,そこで,こういう案はどうか,ああいう案はどうかというのを上げていただくと。済みません,上から目線で。それで,この研究費部会でいろいろと議論するという,もう少し密なものがあるというのが第一かと思います。勝木先生がおっしゃるのはよく分かります,日本学術振興会としては,もうこれ以上改革を行う時間がなくて,大変だから,最小で済ませてほしいという気持ちもよく分かるのだけれども……。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
そんなことは言っていません。

【高橋委員】
でも,いろいろな問題提起があって,その生の声が一番ではないかと思います。恐らくこういう生の声がいっぱい出てくるはずなのです。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
短く申します。やはりその大枠でもいいから路線を作ってください。

【佐藤部会長】
どうもありがとうございます。
大変司会がまずくて話が分散してしまいましたが,こういう議論が必要であることは確かですし,本当に運営費交付金の話からずっと,強く関係していることは明らかでございまして,こういう意見がこの場で出ることもいいことだと思っています。ただ,今日は挑戦的な研究への支援についての議論をすることになっておりましたので,多様な意見の中にも挑戦的なことに関しての改革の意見もありましたし,また,西尾先生がおっしゃったように,複数の方が提案して新しい分野を探査するなど,そういう課題もあると思います。そういうことを踏まえまして,文科省の方でもまた支援策を具体的に検討していただければと思っております。
既にもう5分前ですが,その他の議題に入らせていただきたいと思います。
政府等の政策動向の紹介でございますが,前澤さん,よろしくお願いします。

【前澤企画室長】
そちらは,時間の関係もございますので,後ほどの事務連絡と一緒に御紹介させていただきまして,まず科研費改革の全体像を,課長の鈴木から御説明申し上げたいと思います。

【佐藤部会長】
分かりました。
それでは,今後の審議の取りまとめでございますが,今期の部会の運営につきましては,夏までの間,科研費改革の実施方針,工程表の策定,また,平成28年度の概算要求など速やかな対応が求められている事項について審議をすることになっておりました。これまでの会議で,若手研究者支援や国際共同研究の促進という論点につきましては,既に検討を重ねてきたところでございます。次回以降は,そうした議論を踏まえて,科研費改革の実施方針や工程表などの在り方について審議を進めていきたいと思っております。
本日は,議論のたたき台として,事務局に科研費改革の実施の骨子案を用意していただいていますので,その概要と今後の審議の進め方について御説明をしていただきます。大分時間が超過しているところで申し訳ございませんが,よろしくお願いします。

【鈴木学術研究助成課長】
失礼いたします。それでは,時間に限りがございますので,かいつまんで,資料4を御覧いただければと存じます。
科研費改革の実施方針の策定ということが,今回第8期の研究費部会の夏に向けての一つの仕事ということで整理いただいておりましたが,本日御用意しましたのは,飽くまで非常に粗々の骨子でございます。文書の性格につきましては,昨年,学術分科会の方で包括的な中間まとめを頂いておりますので,学術分科会からの提言というものというよりは,行政としての施策の進め方に関する,ある種の実践的な方針というような位置付けとして考えてございます。そういったものとして行政の方針を,本部会,さらには学術分科会での御了承を得るような手続をイメージして,たたき台を御用意いたしました。また,内容につきましては,基本的には昨年の学術分科会で御提言いただいたものをベースとしながら,その後の情勢変化,及び今回の第8期の先生方の御意見をできるだけ反映させるような形で,基本的な考え方等を確認することと,あとはこの改革の実際の工程,進め方をどうするかということについて,俯瞰(ふかん)できるような形で整理しようという考え方に立つものでございます。
内容でございますが,冒頭にございますとおり,スパンとしては,来年度から始まる第5期の科学技術基本計画の計画期間である平成32年度まで,この辺りのところを一応射程に入れながら,学術分科会での御提言を踏まえたものをまとめられればというイメージでございます。その他,1番として改革の基本的な考え方を幾つか列挙してございますが,まずは,本日の議題でございました挑戦性など,4つの現代的要請というもの,これを受け止めて改革をしていくという基本的な構え。2つ目の丸には,科研費改革の不易と流行(りゅうこう)を踏まえて,ピアレビューのしっかりとした維持,堅持を図っていくということ。3点目は,まさに今回の改革の大きな目玉でもございます審査単位の大くくり化や,あるいは総合審査方式の導入などの審査システムの改革がございます。別紙1として,以前この研究費部会の中で日本学術振興会の方から検討状況を御紹介いただいた資料を添付しております。次の丸につきましても,本日の御議論の中にもまさにございましたが,研究種目の構成の在り方でございます。これは当然ながら,まだ方向性についての明確な御議論がございませんので,飽くまでここでは,それぞれの種目の役割,機能分担を一層明確化していくという非常にざっくりとした表現ではございますが,見直しの観点として掲げているところでございます。
2ページに掛けての次の丸は,本日の議題,あるいは前回までの御議論と関わるところとしまして,非常に抽象的,定性的な表現でございますが,挑戦に対する支援を強める,あるいは研究者の流動,独立の促進,若手への適切な配慮等について記述をしているものでございます。また,次の丸は,本日冒頭の御議論のオープンサイエンスのような状況もございますが,研究成果及び評価結果の可視化についても触れておるところでございます。さらにその次の丸でございますが,これは基金化の促進,あるいは競争的研究費の改革でも言われているような研究費の使途の柔軟化や研究設備の共用促進等についての対応について触れているものでございます。
それから,次の丸は,これは公的研究費全体における科研費の位置付けや重さということにもなりますが,別紙2のとおり,後ほど御紹介いたします競争的研究費改革の中間取りまとめにおいて競争的な研究費のマップが策定されており,その中で科研費の相対的な位置付けが整理されているということで,それを踏まえての充実を図るということでございます。
2番目が改革の工程の進め方という柱でございます。大きくは,平成30年度に向けた対応を円滑に進めることを第一に考えてやっていくと。それぞれの研究種目の現況についての点検,評価,本日御議論もあった特別推進研究も含めて,今,審査部会で検証の着手がなされておりますが,そういった全体の点検,評価の上で,やるべきことを順次やっていこうということがエッセンスでございます。
別紙3として工程表を,飽くまでイメージ図として本日は御用意しております。最後のページでございますが,課題として,1つは審査システムの見直し,2つは研究種目・枠組みの見直し,3つは柔軟かつ適正な研究費使用の促進という大きな3つの柱で,よりブレークダウンした課題を列挙しております。もちろんこの課題そのものについて,どういう課題設定をするかということ自体も御議論いただくべきところと思いますし,本日のところは昨年の審議会の御提言の内容を網羅する形で表記するとどのような感じになるかということで,イメージとしてお示しさせていただいているものでございます。
タイムスパンとして第5期の科学技術基本計画の末期である平成32年度までということを視野に入れますと,目の前にある程度見えている平成27年度をどうするかということ,それから,ちょうど第5期の科学技術基本計画の真ん中頃である平成30年度の公募に向けてどういうことをやるのか,さらにその先ではどうかということについて,現在はこの矢印の記述は空欄の状態でありますが,それぞれの課題に応じてどういう対応方針でいくのかということを記述できればというふうに考えているところでございます。当然ながら,ある程度ロードマップが見えているものもあれば,未着手のものもありますので,全ての課題について一律の密度で記述,検討するということは難しいことかと思いますが,現時点の考え方として,できる範囲のことをまとめていただくということが一つ,全体の議論を整理していく上でもよろしいのではないかなというふうに考えております。
資料4の本紙の3ページに戻っていただきまして,3番目のその他でございますが,先ほど申し上げたとおり,全体改革の見取図をある程度作るということが,いろいろな各論の議論をする上でも必要だと思いますので,そういう意味で,この夏にできる範囲で作っていくと。ただ,当然ながら,その後の情勢変化や改革の進捗,議論の進展がございますから,それはまた適当な時期に改定をさせていただきます。その際には改定手続として,この研究費部会及び学術分科会の議を経る形で,日本学術振興会も含め緊密な連携をとりながら作業を進めていくのはいかがかということで,本日たたき台として御用意させていただいております。
夏となりますと,概算要求についての大枠の考え方も詰めていく時期にもなってまいりますので,本日御覧いただいたものについては,本日はもう時間がございませんので,書面等で,お気付きの点について御意見を頂いて,できるだけこの工程表の,例えば矢印のようなところの記述を埋めた形で,可能な範囲で次回の研究費部会で御提案をすることができればと思っております。また,概算要求についての,その時点での可能な範囲でのイメージについての御相談をさせていただければというふうに考えているところでございます。
駆け足で恐縮でございますが,以上でございます。

【佐藤部会長】
ありがとうございました。基本的な方針は,昨年度まとめました研究費部会の報告と学術分科会の最終報告,この2つの冊子にもあることを具体化するためのことをうまくまとめていただいているのではないかと思います。
何か御質問等ございましたらお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。次回議論することになりますけれども。
では,時間も過ぎておりますので,次回の会議に向けて,この骨子案を御覧になりまして御意見がありましたら,事務局の方にメール等でお知らせいただきたいと思っております。委員の皆様から頂いた御意見を踏まえて,事務局において実施方針の原案を作成して,次回の研究費部会に示すように準備をお願いいたします。また,最後に鈴木課長がおっしゃいましたが,概算要求への対応なども併せて次回の会議で大筋の合意形成ができればと思っておりますので,御協力をお願いいたします。
それでは最後に,事務局より連絡事項をお願いいたします。

【前澤企画室長】
それでは,簡単に資料3-1から3-3までの御説明を申し上げたいと思います。
資料3-1が,6月にちょうど,日本再興戦略や,経済財政運営と改革の基本方針,いわゆる骨太の方針や,科学技術イノベーション総合戦略がまとまりましたので,それらから学術研究及び科研費に関する箇所を抜き出したものでございます。全てにおいて,学術研究の推進が重要であり,また科研費の改革と強化が必要であるときっちり書いてあります。
それから,資料3-2,3-3は,6月24日に取りまとめられました,競争的研究費改革に関する検討会の中間まとめでございます。内容につきましては,前回の研究費部会で,松尾研究振興企画課長から御説明申し上げておりまして,それが取りまとめの1つ前の段階でございましたが,最終取りまとめに内容的な変化はございませんので,説明は割愛させていただきます。なお,先ほど鈴木課長から言及のありました研究費のマップは,資料3-3の19ページにお示ししてございます。これも飽くまで文部科学省の,この検討会で作っていただいた参考ということで,今後これを総合科学技術・イノベーション会議の方にお示ししまして,全体的にまた検討していただくことになっております。
こちらの中間取りまとめを受けまして,そのCSTIとの関係,それから,省内でも,例えば高等教育担当部局などと,どう進めていくかというのは現在調整しておりますので,またしかるべきタイミングで,この競争的研究費改革の方向性を科研費としてどう扱っていくのかという御議論は,こちらの研究費部会でもしていただくことになろうかと思いますが,少しそれは先の議論かと思います。
以上でございます。

【佐藤部会長】
ありがとうございました。
本日はお疲れさまでございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課企画室企画係

工藤、井出
電話番号:03-5253-4111(内線4092)
メールアドレス:gakjokik@mext.go.jp

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-- 登録:平成28年01月 --