資料5-2 若手研究者支援の在り方に関する委員からの御意見

(第1回・第2回研究費部会及び事前意見照会での御意見)

○ 若手の独立、チャレンジを促す研究費支援の在り方について
・若手研究者の育成・支援に係る支援体系の下、科研費の意義・役割をどう考えるか。
→研究者の自由な発想に基づく科研費のスタンスは若手研究者にとって極めて重要。特に、基礎研究への意識を高め、日本の学術を支えることは、科研費の重要な役割。

→大型の科研費において若手研究者を雇用している側面があるため、若手研究者の支援について検討する際には、「若手種目」だけではなく、大型種目なども含めて議論するべき。ただし、外部資金による雇用は研究者を不安定なポジションに置くことにつながるため、メリットとデメリットがある。

・現行「若手種目」の成果・課題についてどのように評価するか。
→研究室の一員として研究を遂行する場合の研究費として若手研究Bが活用されている。

→研究活動スタート支援の採択率が低い点が課題である。配分額が少額であり、かつ、若手研究者のチャレンジを促す目的のものであるため、採択率を高めても問題ないように考える。

・「若手種目」と他種目との役割・機能分担、バランスについてどのように評価するか。
→JSTのプロジェクトや、科研費の大型種目と比較して、一件当たりの配分額は小さくとも、多くの研究課題を採択できる点で大変重要である。前者では、審査において問題点を探すような議論になりやすいが、若手種目の場合は、良い面や可能性を探す議論がしやすい。

→若手種目は、配分額において15%程度、採択件数において25%程度を占めていることから、科研費の中でも存在感を持った支援策である。

→若手研究者の育成のためには、挑戦的萌芽研究のような、アイデアで取れる部分を拡充することも検討する必要がある。ただし、目利きの能力が選ぶ側に求められる。

・科研費種目における中長期的な改革の方向性、当面の改善策はどうあるべきか。
→初めて科研費による研究を行う研究者に対しては、申請・使用・報告の一連の流れをメンターすることも必要ではないか。

→若手支援が最も必要な時期はPIとしてスタートした時期であるが、現在、大学等からのセットアップ経費はほとんど望めない状況にあり、異動先などで研究を十分に軌道に乗せるために数年以上かかる。現行の「研究活動スタート支援」は帰国直後や研究機関に採用されたばかりの研究者を対象としており、また、配分額も十分ではない。「若手支援A」程度の研究費を支給するとともに、研究室整備などのための経費を上乗せする種目が必要ではないか。

→PIは激しい競争をしていかなければならないので、研究のスタートアップは重要である。いかに機器を揃えるか、また機器の流動性(異動先への持ち出し)についても検討が必要。

→スタートアップにかかる経費が分野によって異なること、「独立」の意味が分野によって違うことには留意すべき。

→科研費申請に当たって環境整備や支援を行っている大学等の研究機関との連携ができないか。

→若手の海外派遣に課題があるとすれば、その原因についてよく議論するべきである。単純な予算確保ではなく、少ない予算でも最大の効果を得るポイントについての議論が必要である。

→重複制限の見直しの検討など、研究費の切れ目をなくす対応が、若手に限らず必要ではないか。

→若手支援のポイントは、スタートと継続性である。一方で、若手のうちに勝ち組を作ると多様性がなくなるので、バランスが必要である。

○ 研究者のキャリアパス形成(産業界、技術支援者、URA等へのキャリアチェンジ含む)の在り方について。特に研究費サイドからできること。
・科研費を通じた取組を実行あるものとするため、整備が求められる環境・条件は何か。
→若手研究者の受皿となる常勤のポジションが減少していることが課題。

→欧米の場合は研究費を獲得することがポストに直結しているが、日本の場合はキャリアパスと研究費獲得とがつながっていない。両者の一体性を高めることが必要ではないか。

→若手研究者のキャリアパス形成につなげるため、科研費の審査において、採択・不採択に関するフィードバックを行うことが必要ではないか。

→企業研究者が参加することを条件とした共同研究をすることにより、特に若手研究者の企業へのハードルが下がり、キャリアの選択肢を増やすばかりでなく、新しい発見につながることが期待される。

→大学から産業界への派遣・出向を増やすには、受入れ可能な企業を中心に、好事例を積み重ねることが必要ではないか。

→大部分の若手研究者は国内の大学等の安定した研究教育職に就けないのが現状である。大学等のポストの数が全く不足している一方で、産業界への就職も非常に厳しい状況にある。研究者としてのキャリアを生かしたURAやサイエンスライター、弁理士などキャリアパスの多様化を進め、若手研究者に積極的に提示することが必要ではないか。

→PIとして研究を継続する若手研究者に対しては、海外の学術振興が進みつつある国(特にアジア)の研究機関もポストの選択肢として考慮する機会を与えてはどうか。また、そのような国々との学術交流・人材交流を積極的に拡大することが必要ではないか。

○ その他
→審査の内容にメリハリが必要である。挑戦的萌芽研究を除き、各種目における審査の考え方に差異が見られない。

→研究を評価する指標として、論文数、インパクトファクターが活用されているが、論文数、インパクトファクターには分野間の差異が存在するため、その差異を考慮した評価が必要ではないか。

→全体の平均的な勤務時間を見ると大学事務に使う時間は増えていないように見えるが、一部の人に事務が集中しているのではないか。

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