資料4-3 国際共同研究の促進に向けた科研費の在り方について(論点)

科研費制度における国際化の推進について(論点メモ)

1.これまでの議論の経緯

○ 「我が国の学術研究の新興と科研費改革について(第7期研究費部会における審議の報告)(中間まとめ)」(平成26年8月27日科学技術・学術審議会学術分科会)において、国際共同研究の推進や国際学術ネットワークの形成について、以下の通りの指摘がされた。

○ これを踏まえ、平成27年度より科研費に「国際共同研究加速基金」を設置して、科研費に採択された研究者が一定期間海外の大学や研究機関で行う国際研究を強化するとともに、「新学術領域研究」において、我が国が強い研究領域をベースとした国際共同研究の推進や海外ネットワークの形成を図ることとしている。

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(国際共同研究の推進と国際学術ネットワークの形成)
○ 第三は、我が国が強い学問分野を中心に国際共同研究の推進や優秀な若手研究者の相互派遣などによる国際的な研究者コミュニティにおける長期にわたる確かなネットワークの形成の観点からの見直しと体制整備である。
 科研費は個人の独創的な研究を支援するものであるが、その学術的な妥当性は常に他者との交流・対峙から客観的に検証することが求められるという観点から、また一方では、個人の研究の発展やそこから必然的に発展する学際・融合分野の推進のためにも、交流と連携のネットワーク構築は欠かせないものと言える。

○ この国際ネットワーク形成については、チームとしての集合知や既存ネットワークを生かし、広い視野を持って若手研究者を育成しながら多様な学術基盤に触れることによる人的交流を通しての学術の総合性や融合性を強めていくものと、これらの基盤となる徹底した批判を経て初めて採択される個人の自由な発想において行うものの、それぞれの重要性がある。

○ そのため、第一において、大規模科研費のグローバル化を踏まえた審査や評価の改善の検討の必要性を指摘したが、これらの科研費種目においては、卓越した研究者を中心とする国際共同研究のためのユニットを設けて海外に研究者を派遣したり、海外研究者を招聘したりすることなどを促し、成熟社会である我が国の学術研究が国際的な研究者コミュニティをリードし、国際社会における我が国の存在感を維持・向上することが求められる。

○ また、一方で、個人が小規模な科研費で進める独創的な研究に対しては、例えば現行の基盤研究(B)や若手研究(A)といった種目を取得し、今後の研究展開が期待できる実績を積んでいる研究者に対し、その必然性から発展する海外研究者との共同研究への支援を行い、個人ベースの多様で柔軟な交流関係を形成することも肝要である。

○ なお、人文学、社会科学の場合は、日本語・日本文化を基礎とし、またそれを研究対象としている特殊性もあり、その分析と経験を踏まえ、国際的な学術情報流通にも資する電子書籍等の出版支援への転換や、学術雑誌の国際共同出版に向けた研究者交流の推進など、海外発信への支援も不可欠である。

○ これらの国際学術ネットワーク形成に向けた科研費制度を検討する際には、科研費以外の国際学術交流事業や研究者海外派遣・招聘事業のそれぞれの目的・役割・対象などを踏まえつつ、前述の目的を達するため、全体として相乗効果が期待できるような制度設計が求められる。
 なお、このような国際ネットワークの海外ハブとしての役割が期待される海外の日本人研究者をどのように支援、活用するかについては、補助金である科研費の資金管理や知財管理の点も含めて引き続き議論が必要である。

2.今後のさらなる検討の視点

○ 「国際化」は「学術研究への現代的要請」のひとつであり、諸外国に比べて我が国に遅れが見られると考えられる国際共同研究の促進(また、その結果としての国際共著論文の増加)に向け、科研費としても取り組んでいくことが必要である。

○ また、我が国の学術の国際ネットワーク強化という観点からは、特に大型種目を中心として、国際ピアレビューの活用を、そのメリット・デメリットに十分留意しながら、さらに検討することや、国内の研究機関に所属する外国人研究者の科研費審査への参画を促すことが重要であると考えられる。

○ なお、学術情報のオープンアクセスなど学術研究を取り巻く国際的な動向にも留意し、学術助成機関における検討状況も踏まえながら、必要に応じた対応をしていくことが望まれる。

【具体的な検討論点例】
→ 国際化の更なる促進に向けた国際共同研究加速基金のさらなる活用方策(国内研究機関に所属して研究活動を行うことを予定している海外の卓越した外国人研究者に対する予約採択の拡大や、平成28年度以降の制度改革)について
→ メリット・デメリットを踏まえた、国際ピアレビューの活用方策や期待される効果について
→ 国内の研究機関に所属する外国人研究者の科研費審査への参画の方策や、そのための科研費の英語審査の円滑化について

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