資料2 「学術情報のオープン化」に係る審議について(案)

学術情報のオープン化に関するこれまでの審議について

1.基本的考え方に関する意見
○ 研究成果への理解を促すとともに、分野を超えた新たな発見や研究概念の創出等に資するため、研究成果(論文、研究データ等)の公開※及び利活用(以下、「オープン化」という。)を促進する。
  ※研究成果の公開:研究の成果としての論文や研究データ等を、インターネット上で公表し、合法的な用途で利用することを障壁無しで許可することを意味する。

○ オープン化については、インターネットを通じて研究成果へのアクセスを自由に行えるようにすると同時に、教育現場での利活用を含む自由な利活用の拡大を促進するということを基本理念として関係者が共有することが重要である。

○ 教育における研究成果の利活用を促進することにより大学教育の充実に貢献すること、また、自然科学の分野のみならず、人文・社会科学の分野にも新たな方法論を提示するなどの効果が期待されるとともに、研究者においても情報発信力が高まり、自身の研究成果の更なる普及が期待される。

○ 研究成果のうち論文及び論文のエビデンスとしての研究データ※は原則公開とする理念を共有する一方で、国際的な動向や戦略性を踏まえて、公開するデータの範囲、データ管理(保全)や公開のあり方を規定する必要がある。
  ※論文のエビデンスとしての研究データ:学術論文の裏付けとなるデータセットなど、研究結果を立証するのに必要な科学界で共通に受け入れられるデジタル的に記録された事実に基づくデータ

 (オープンデータの取り組みに関して)
○ 研究分野によって、研究データの保存と共有方法に違いがあり、また、知的財産などの観点から研究データのオープン化が馴染まない分野もあることから、オープン化を進めるに当たっては、研究者コミュニティとしてメリットがある分野から取り組むことが必要である。

○ また、国が基盤構築等を支援する場合には、データ共有のためのルールを有し、具体的にデータの共有を推進する研究者コミュニティの取り組みに対して支援することが妥当である。

2.研究成果の公開に当たっての基本的事項
○ 論文の公開についての取組
   論文の公開の手段は、「オープンアクセスを前提としたジャーナルに論文を発表する方法」(ゴールドOA)及び「研究者が発表したジャーナルの許諾を得て自らインターネッ ト上で論文を公表する方法」(グリーンOA)がある。
      グリーンOAについては、次の対応が考えられる。
 (1)公開する論文の内容
        公開する論文は、ジャーナルに掲載されたもの(出版社版)又は出版社版に至る前の著者最終原稿等が考えられる。
 (2)公開する時期
        インターネットで公開する時期は、最初に成果を発表した時点又は出版社が定める一定期間を経過した時点が望ましい。
 (3)公開の場所
        公開する場所は、研究者の所属する機関が設置するリポジトリを活用することが望ましい。

 検討事項(案)

1.研究データの公開についての取り組み
○ 論文のエビデンスとしてのデータの公開
   論文のエビデンスとしてのデータの公開に当たっては、現在広く用いられている検索手法を使って必要とするデータを容易に見つけられるようにすべきである。
 (1)公開の時期
       公開する時期は、研究から産出されるデータセットを用いた論文の公表が認められた時点が考えられる。
 (2)研究データの形式・種類
      ・公開されるデジタル形式の研究データは、再利用可能な形式(あらゆる利用者がアクセス、検索、読み出し、分析等ができること)でなければならない。
      ・公開の対象となる研究データは、メタデータ、数値データ、テキスト、イメージ、ビジュアルデータなど多様なデータがあり、データを扱うプログラムがある場合はこれも含まれる。
  (3)公開の場所
          上記「学術情報のオープン化に関するこれまでの審議について」2(3)に準ずる。
    ただし、大容量のデータを公開することとなる場合で、所属機関等のリポジトリでの管理・運用が困難な場合、並びに研究者コミュニティにおいてあらかじめ共有に係るルールが確認されている場合は、当該分野で共有及び利活用可能な場所で保管・公開し、所属機関ではメタデータの公開を行うなど、利活用の促進に対応した方策をとることが必要である。 

2.研究データの利活用に係る許諾ルールの明示
○ 公開される研究データには、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスなどの利用ルールを付す必要がある。 

○ なお、データの集積・整理や品質管理などの点で専門的研究者の労力や高度なノウハウが入ったデータベースなど、知的生産物として著作権が発生する場合にはCC-BY※を採用することが望ましい。
   ※CC-BY:適切なクレジットを明示することにより複製、改変・翻案、配布をすることができることを表示。

3.研究データの引用及びデータ作成者の貢献アクセス可能となった研究データの利用者は、論文などの引用と同じく引用元を明らかにする義務がある。この引用により、研究データの貢献が記録され、研究者の業績として評価されることを、大学等及び研究者コミュニティにおいて共通に認識される必要がある。

4.大学等の取り組み
    研究成果の公開と利活用を促進するため、大学等に期待する取り組み事項

○ 研究成果の管理に係る規則を定めるなど、研究成果の散逸、消滅、を防止するための施策を講ずる。具体的には、研究成果に永続性のあるデジタル識別子を付与し、管理する必要。
   また、研究成果の公開に係る方針等を策定し、公表することが望ましい。

○ 技術職員、URA及び大学図書館職員等を中心としたデータ管理体制を構築するとともに、データサイエンティストなどを研究支援人材として位置づけ、その育成システムを検討し推進すること。


オープン化に係る基盤整備等について

1.オープンアクセスについて
○ オープンアクセスの推進に当たっては、各大学等における機関リポジトリをセルフアーカイブ(グリーンOA)の基盤として更に拡充するとともに、オープンアクセスジャーナルの育成に努めていく方法が妥当である。
   なお、単独ではリポジトリ等の基盤構築が困難な大学等については、国立情報学研究所(NII)の共用リポジトリ(JAIRO Cloud)で支援することが望まれる。

○ 我が国の公的支援による出版プラットフォームであるJ-STAGEについて、レビュー誌の発信などを通じて国際的な存在感の向上を図るとともに、科学研究費補助金による支援の充実を通じて、学協会等が協同して質の高いオープンアクセスジャーナルを構築することが望ましい。

○ 研究資金配分機関においては、公的研究資金による論文について、研究者の所属機関あるいは公的機関が管理・運用するリポジトリ等に保管の上で公開することを義務化するなど、公的研究資金を受けた研究成果については、オープンアクセス化が当然であるという意識を広く研究者に普及させる必要がある。

○ 学協会においては、学術論文の教育現場等での利活用を促進する観点から、刊行する学術誌に掲載される論文の著作権ポリシーを策定し、明示する必要がある。

 2.オープンデータ※について
※オープンデータ:研究の過程で生じたデータを公開し、広く利活用することを意味するが、ここでは、論文のエビデンスとしてのデータ等の公開について記す。

○ 論文のエビデンスとしてのデータの効率的かつ効果的な保管・公開の手段。(アカデミッククラウドの活用、デジタル識別子の付与など)

○ 各機関のリポジトリ等に搭載されているデータセットを、横断的に検索できるシステムの整備。

○ 学協会による日本発のデータジャーナル構築に対する支援等。

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室

佐々木、三石
電話番号:03-6734-4080
ファクシミリ番号:03-6734-4077
メールアドレス:jyogaku@mext.go.jp(コピーして利用される際には全角@マークを半角@に変えて御利用ください)

(研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室)