資料4 論点の展開イメージ(案)

科学技術・学術審議会 学術分科会
学術の基本問題に関する特別委員会
(第7期第1回)
平成26年3月10日

論点の展開イメージ(案)


0.はじめに(危機感の共有等)

○(短期的な経済効果を重視した財政投資の方向が強まることで)学術研究の衰退により我が国の将来的な発展や国際社会への貢献が阻害されてしまう。
○学術研究は近年の厳しい財政状況の中でも一定の財政投資がなされてきたが、その投資効果について厳しい見方も強まっている。


1.国力の源としての学術研究の本来的意義について

1)意義(「国力の源」の観点から改めて意義を整理)
 
(1)知的探究活動それ自体により知的・文化的価値を創出・蓄積(人類の本質的な知的欲求に対する新たな知見の提供にも寄与)
【例】はやぶさ(天文学)、素粒子、哲学 等
     
(2)現代社会において実際的な経済的・社会的・公共的価値を創出(産業への応用・技術革新、生活の安全性・利便性向上、病気の治癒・健康増進、リスク対応、新概念の創出)
【例】青色発光ダイオード、導電性パネル、再生医療 等
  
※上記のような価値は、当初意図しないところ(研究遂行に必要な機器の開発等も含む)から創出されることも少なくない。
【例】クラゲ→緑色蛍光タンパク質の発見、素粒子研究→光電子倍増管、極域観測→地球環境問題解決への貢献、コジェネレーションシステム開発等のスピンオフ効果 等
 
(3)豊かな教養や高度な専門的知識を備えた人材の養成・輩出の基盤
(教育研究を通じて、我が国の知的・文化的背景を踏まえ世界に通用する豊かな教養や高度な専門的知識を有し、自ら課題を発見したり、未知のものへ挑戦する学術マインドを備えた人材を養成・輩出)
 
(4)上記(1)~(3)を通じた知の形成や価値の創出等による国際社会貢献・国際社会におけるプレゼンス向上 →経済・外交・文化交流等全ての礎
【例】途上国法整備支援、地震・津波研究、先端医療技術 等
  
⇒(1)~(4)は(各々個別のものではなく)相互に関連・作用しており、これらにより人類社会の持続的発展に寄与=「国力の源」
 

2)イノベーションにおける学術研究の役割等
  
○(真(しん)の)「イノベーション」の意味の確認
→イノベーションは、上記(2)(の一部)ではない。(1)(2)を包含した新たな価値の創造。(3)はそれらを担うもの。
○イノベーションのためには、
・社会の変化に応じた様々な需要に応える多様で質の高い学術研究という苗床
・学術研究と社会とのインターアクト(知の共有と還流)
  が必要
  
○(既知の出口への距離の短縮ではなく、)出口のないところに全く新たな出口を創出したり、新次元の出口を示唆する入り口を拓(ひら)くのが学術研究(新たな伸ばすべき強みの創出、真のハイリスク・ハイインパクト)
【例】分子生物学→バイオテクノロジー 等
○与えられた課題の解決ではなく、新たな課題を発見し、それに挑戦するのが学術研究(セレンディピティ(目的とは違った実験結果や失敗を新しい発見やアイディアにつなげる能力)も重要)
【例】導電性高分子 等
  
○持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究
(現在見えている出口につながる研究に絞ってしまうと早晩出口はなくなる。出口と入り口は相互補完・対流関係。(出口と入り口のバトンゾーンも必要))
 
 
3)上記意義を踏まえ、学術が「国力の源」としての役割を果たす姿勢の明確化
 ⇒学術研究は、社会からの付託に応え、
   ・新たな知に挑戦する力、新たな知を創出する力
   ・次代を担う人材を育成する力
    をより一層発揮することにより国力の源になる

 

2.「国力の源」としての役割を果たすための課題と改革の方向性

1)現状・課題
   
(1)現在の学術研究は、本当に上記のような「国力の源」として貢献しているか?
 ・十分に、新たな知に挑戦し、新たな知を創出しているか。
 ・十分に、次代を担う人材を育成しているか。
 ・そもそも、学術研究に対するこのような社会からの付託があることを現場の研究者一人一人が十分に認識しているか。
 
(2)上記(1)で本当に貢献できているならば、以下のような現状ではないはずではないか?(主な課題)
 ・分野間連携や異分野融合が進んでいない。
 ・国際的な知的コミュニティーやネットワークに積極的に参加していない。
 ・多様化・流動化が進んでいない。
 ・競争的資金を獲得することが目的化している。
 ・優秀な若手研究者が育ちにくい。
 ・学術の意義や多数の研究成果等が真(しん)に広く国民に理解されていない。
 ・その他(研究時間の減少、学術基盤の脆弱(ぜいじゃく)化 等)
 
(3)課題の根底にあるものは何か?
 ・タコツボ化
 ・(人事・研究費等の)既得権化
 ・適切な評価が行われていない(未来への可能性の観点が不十分、論文数・IF偏重 等)
 ・社会との繋(つな)がりが不十分(社会の付託を常に意識し応えていく姿勢の欠如、発信不足)
      等
 
★これらは従来から指摘されているにもかかわらず、なぜ改善できないのか?


2)改革方策
  
(1)改革の基本的な考え方
      ⇒社会の付託(ふたく)に応えるための自己改革、学術と社会とのインターアクト(対話、発信)
     
(2)課題克服のための具体的方策
 ・現場レベルにおける徹底的な意識改革
 ・組織改革、評価制度・人事制度等の改革

 

3.自己改革推進のための支援の在り方の方向性

個々の研究者や大学等研究機関が、自主的・自律的に「国力の源」としての研究活動を活発に行う自己努力を後押しする支援の在り方について

  ○財政支援
 
  ○制度改革
 
  ○その他

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研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)