学術情報委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成25年9月12日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省13F1・2会議室

3.出席者

委員

西尾主査、羽入主査代理、上島委員、岡部委員、加藤委員、喜連川委員、倉田委員、後藤委員、斎藤委員、竹内委員、辻委員、土方委員、美馬委員、吉田委員

文部科学省

(科学官)美濃科学官
(学術調査官)市瀬学術調査官、宇陀学術調査官
(事務局)吉田研究振興局長、下間参事官(情報担当)、長澤学術基盤整備室長、その他関係官

オブザーバー

安達国立情報学研究所副所長

4.議事録

【西尾主査】  おはようございます。時間になりましたので、ただいまより第5回の学術情報委員会を開催いたします。
 まず、学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ)でございますけれども、これにつきましては、最終的には当方に一任いただきましたが、前回までの審議を経て取りまとめ、8月中旬に大学等に向けて発信することができました。特に委員の皆様方の御協力により、良い報告書になったのではないかと考えております。どうもありがとうございました。
 本審議まとめに対しては、図書館関係者の方々を中心に高い関心が寄せられているということを聞いておりますので、大学等における学修機能の強化などに生かしていただけることを期待しております。
 また、本日、午後に中央教育審議会がありまして、そこで美馬先生から簡単に御紹介いただけるということで、非常に有り難く思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回からは、既にお伝えしておりますとおり、次期の学術情報ネットワーク、SINET5の整備を含むアカデミッククラウド・データ科学の進展を踏まえた学術情報基盤整備の在り方について審議をしてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 それでは事務局より、配付資料の確認及び傍聴登録等についての報告をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、まず配付資料でございますけれども、お手元の議事次第のとおりでございます。資料の1から3までございます。基盤整備に係る提言等、それからSINETの現状と今後についての配付資料、それから今後の学術情報委員会の日程についてでございます。あと机上資料といたしまして、お手元にファイルがございますけれども、その中に何も書いていないものでSINET4のパンフレットと活用事例集、それから26年度の科学技術関係概算要求の概要の資料、それから、これまでの審議のまとめ等の資料と、これまでの本委員会における配付資料等を閉じたものがワンセットになって用意をさせていただいております。漏れ等ございましたら、事務局までお願いできればと思います。
 また、本日の傍聴登録でございますが、25名の方においでいただいているところでございます。
 以上でございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 資料等におきまして、不足しているものがございましたら、御遠慮なく申し出ていただければと思います。
 それでは、審議に入りたいと思いますが、審議事項の背景として、関連する政策提言等について、事務局より御説明をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは本日から、先ほど御案内いただきました次期学術情報ネットワークの整備を含みます情報インフラ的な学術情報基盤整備の在り方について御審議いただくわけですが、関連する政策提言等が多数発出されておりますので、まず国における考え方等について、おおむね御紹介させていただいた上で議論を行っていただければと思い、御紹介させていただくところでございます。
 まず配付資料の1をごらんいただければと思います。これは既に御案内のとおりでございますが、科学技術基本計画におきまして、論文、観測、実験データ等の電子的な体系的収集とかオープンアクセス、それからデジタル情報資源のネットワーク化、データの標準化、コンテンツの所在を示すような情報整備という形の知識インフラのシステムの構築が重要だということで、こういった関連する計画が閣議決定されているというのがございます。
 それから次のページでございますが、教育振興基本計画におきましてはもう既に、これまでの御審議いただいた内容でございまして、ICTの活用ということ、それから大学ポートレートの積極的な活用ということで、これはデータベースを用いた教育情報の活用・公表のための共通的な仕組みということでございますので、こういったものにも情報インフラというのが関わってくると考えておるところでございます。
 それから次に、経済財政運営と改革の基本方針ということで、これは従来、骨太の方針と呼ばれているものでございまして、財政支出の上で基本的な考え方を示すものでございます。これにおきましても、日本再興戦略の基本設計ということで、科学技術イノベーションの推進等という中に再興戦略の実現にとって鍵となる科学技術イノベーション総合戦略を着実に推進するということと、その中に世界最高水準のIT利活用社会の実現を図って、ITを活用した民主導のイノベーションを活性化するということと、それから関連の人材の育成が重要だということが含まれておるところでございます。また、教育再生におきましてもICT教育ということが特化されておりまして、こういったものの重要性も、このような整備に必要な方針として含まれているところでございます。
 次の4ページでございますが、これを受けました次のフェーズで、日本再興戦略、これは成長戦略ということでございますけれども、総理の進める三つのアクションプランの中で、この4、日本産業再興プランというものの中の4.世界最高水準のIT社会の実現というところで、今後、策定されます新たなIT戦略を精力的に推進するということで、規制改革とか制度改革の徹底並びに情報通信、セキュリティ、人材面での基盤整備を進めるということが書かれておりまして、個別の事項といたしましては、こういったIT「あたりまえ」の時代にふさわしい規制・制度改革ということで、世界最高水準のオープンデータやビッグデータ利活用の推進ということ。それから3番目といたしまして、ITを利用した安全・便利な生活環境の実現ということで、こういったものを使った分野複合的な解決に取り組むというようなことが含まれております。4番目としましては世界最高レベルの通信インフラの整備とか、5番目、サイバーセキュリティ対策の推進、6番目としてハイレベルなIT人材の育成・確保ということで、この具体的な内容としましては、そのハイレベルな人材の育成・確保という観点で、21世紀型スキルの修得という観点から、1人1台の情報端末による教育の本格展開、それからデジタル教材の開発や教員の指導力向上といったことが含まれているところでございまして、これは民間の活力増進ということがメーンでございますけれども、関連して、こういった大学等におけるインフラ整備も関係すると考えているところでございます。
 次に、それを受けた世界最先端IT国家創造宣言というのが5ページにございます。このIT国家創造宣言の中にも相当な内容が含まれておりまして、基本理念といたしまして世界最高水準のIT利活用社会の実現に向けてという観点がございます。その中で情報資源の活用こそが経済成長をもたらす鍵となり、課題解決にもつながるということで、ビッグデータやオープンデータに期待されるような分野・領域を超えた情報資源の収集・蓄積・融合・解析・活用により、新たな付加価値を創造すると。それにより新たなイノベーションを可能とする社会の構築につなげる必要があるということが基本理念として掲げられているところでございます。
 また、利活用の裾野拡大を推進するための基盤の強化ということで、一つ目が人材育成・教育という観点で、こういった教育環境自体のIT化を進めるわけでございますけれども、関連する工程表として具体的な取組の中に、大学等高等教育機関における遠隔教育等を推進し、普及を図るということが含まれております。
 また2番の世界最高水準のITインフラ環境の確保ということで、この中には1番としてビッグデータ時代のトラヒック増に対応するためのITインフラ環境を確保すると。2番目として大規模災害時におけるITの利活用の観点から、バックアップ体制の整備とか、強靭かつリダンダントなITインフラ環境を確保するなどのことがありまして、具体的な関連工程表として、中期・長期にわたるものとして、大学等のクラウド環境構築やビッグデータ利活用、産業界を含む世界最高水準のスーパーコンピュータの利用に不可欠な学術情報ネットワーク(SINET)について、民間研究機関による利用を更に更新し、一層の機能の高度化を図るということは具体的に盛り込まれているところでございます。
 また、次のページは追加でございますが、更にサイバーセキュリティとか、4番目として研究開発の推進・研究開発成果との連携ということで、IT・データを利活用して社会の発展や産業の活性化につなげるためには、絶え間ない先端技術の研究開発が重要だと。それをいかに社会に実装していくかが重要だということで、関連する技術的な側面について個別の事項が列記されているということでございます。
 また、科学技術イノベーション総合戦略におきましても、次世代インフラ基盤の実現ということで、こういった基盤と、そのデータ利活用を実現するようなビッグデータ技術、セキュリティ技術等の情報通信技術の開発を推進すると。こういった取組によりデータや情報が流通・循環して、生活者のQOLが向上するとか、企業の経済活動が支援されるという形の、様々なこういったIT環境を生かして社会を豊かにするという取組が盛り込まれているところでございますので、こういったものを踏まえながら、大学等における情報インフラの整備につきまして、御審議を賜ればと思っているところでございます。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】  どうも御説明ありがとうございました。
 委員の皆様、世界最高水準のIT利活用社会であるとか、世界最高水準のITインフラ環境の確保ということで、これだけ多くの様々な政策提言等がなされてきているということを御存知でしょうか。
 そのように大学等におけるICTの利活用の重要性や関連する学術情報基盤整備について、様々な提言がなされてきておりますけれども、今後の環境整備の在り方を検討するに当たり、本日は、我が国の学術研究を支える情報ネットワークでありますSINETの現状等について、国立情報学研究所の副所長の安達先生より30分程度で御紹介いただきまして、その後、質疑応答並びに論点の整理等に向けたフリーなディスカッションを行うことを考えております。
 安達先生、どうかよろしくお願いいたします。

【安達国立情報学研究所副所長】  おはようございます。国立情報学研究所の安達と申します。本日は学術情報基盤整備の現状について御説明いたしたいと思います。先ほどもありましたように、我が国の教育研究の水準を高く保つために必要な情報基盤というものについて、私どもはこの図のように考えております。三つの層に分けて考えているわけですが、一番下のネットワーク、これはインターネットのようなもので、これが下にあり、その上にネットワークの上でいろいろな資源を活用できるような共通の仕組み、例えば利用者の認証や、大学を超えた研究コミュニティーをセキュアに作るための仕組みなどを作り、更にその上に教育や研究に必要な情報資源そのものを共有したり活用したりする仕組みを作っていき、これら全体が情報基盤として大学等の活動を強く支えるものであると考えております。
 まず、今日のお話で一番時間を割く下の方のネットワークについて、お話ししたいと思います。SINET4と呼んでおりますが、現時点で200万人以上が利用し、大学のカバー率は国立100%、公立80%、私立55%で、総計779の機関が参加しております。この日本地図にありますように、太い線や細い線で描かれていますが、40Gbpsの回線が最も太いもので、バックボーンを成しております。この丸い印を「ノード」と称しておりまして、各地にあります。そして外国とは10Gbpsの回線4本でつながっているという現状です。
 ネットワークの構造について少し御説明しますと、ノードというものにルーターと称する機械などが置いて通信をするわけですが、バックボーン、すなわち背骨を作るノードと、ユーザ(SINETの場合は実際には大学や研究機関になります)がつながってくる、各県に置かれたエッジノードの2種のノードからなるという構造になっております。
 これをどのようにして合理的に作るかということが課題なのですが、このSINETとは単純なインターネットではなく、様々なニーズを吸収できるような機能を持つ形で作られております。学術系からいろいろ多様な要求要件が出てまいります。まず非常に大量のデータを送りたいというニーズがいろいろな研究分野にございます。しかもそれを国際間で送りたいという要求も出てきます。また、大学を超えた研究のための閉じたネットワークを作りたいという要求もあります。映像通信としては遠隔授業での利用がポピュラーですが、遠隔の手術ですと非常に高精細でリアルタイムの通信をしたいという要求も出てきます。そしてデータベースです。非常に大きいデータベース、実験やシミュレーションの結果のデータもありますし、様々な学術コンテンツもあります。
 このような要求をどのようにしてうまく調和をとってサービスしていくかということがこのネットワークの課題となります。今までの歴史を少し御紹介します。1987年以来、学術情報ネットワークをずっと運営・整備してまいりました。先端的なネットワーク基盤が先端的な研究や高度な教育を支える情報インフラとして必要であるという観点から、私どもはこれを整備してまいりました。
 さらにもう一つの点は、アカデミックネットワークあるいはリサーチネットワークということであります。諸外国にもそれぞれそのようなネットワークがあり、それとつながるには、我が国にもそれに対応する研究ネットワークがないと相互につなぎにくいという状況があります。商用ネットワークとの間での接続には一定程度の制約があります。私どもが欧米の研究ネットワークと深く連携していくためには、日本に少なくともきちんとした研究ネットワークないしアカデミックネットワークが必要であるという条件がございます。
 私どもはこのようなネットワークをうまく調整しながら計画していくために、学術情報ネットワーク運営・連携本部という組織を研究所に設けまして、大学や研究所などのステークホルダーに来ていただいて議論し、どのようにリソースを配分するかなどについて議論をしながら計画を立案しております。一元的な整備、別の言い方をしますとスケールメリットを出すということによって経済的かつ効率的なネットワークを作るよう努力してきたというのが私どもの今までの活動でございます。
 この歴史を線図に表しますとこの図のようになります。SINETという言葉を使い出したのは1992年ですが、その後何回もネットワークを強化し、現時点では2011年4月に導入しましたSINET4を運用しております。これを2016年4月に更新しなければならないというのが今の大きな課題です。SINET4では情報インフラとしての安定的・経済的な運用に加え、非常に高度な機能を大学に提供するなど、いろいろな新しいことをトライしてまいりました。そのことについては、この後で少し御紹介したいと思います。
 このネットワークの上で、現在いろいろな活動が行われております。その概略を示したものがこの図です。大きな設備を共同利用するという活動があります。次に国際連携、研究の国際的な活動を支えるというもの、産学連携、大学間連携、そして教育の連携などがあり、最近、重要な課題として言われるのがクラウドであります。このようなものをネットワーク基盤の上にどのようにうまく乗せていくかがこれからの重要な課題であります。
 利用例に関しましては、お手元のこの冊子に詳しい事例が書かれておりますので、お時間のあるときに是非、御参照いただければありがたく存じます。ここでは国際連携等々についてどのようなことが行われているか簡単に御紹介したいと思います。
 まず国際連携は、一番大掛かりなものです。例えばCERNで、この間ヒッグス粒子が見つかったかと評判になりましたが、それを見つけるためのプロジェクトにより、毎日CERNの検出器から大量のデータが日本に送られてきて計算していましたが、そのためにこの国際ネットワークが使われます。欧米とは30Gbpsの回線でつながっております。アジアはシンガポールに対して10Gbpsの回線を持っております。ここに書いたネットワークが欧米の研究ネットワークでして、これらと直につながって情報をやりとりするネットワークが日本にも必要であるということでございます。
 国立天文台ではチリのアタカマ砂漠にALMAを作りまして、観測結果を延々とこのようなルートで日本に送るために使われております。また、国立天文台ではインターネットではなく、もっと大胆なネットワークの使い方をしています。L1と略記されるレイヤー1(ネットワークの最も下の階層)を直接使ってリアルタイムに情報をやりとりするというやり方で、8.4Gbpsという非常に広い帯域を使っています。これは、日曜日など余りネットワークが混んでいないときに、国立天文台のためにその帯域を切り出して用意し、日本列島全体が大きなパラボラのようになって、雑音のような電波の中からかすかに見える星の姿を探し出すという研究です。これを独自に専用線で行おうとするととても大変になります。
 次は、スパコンです。大学にはいくつかのスーパーコンピュータがあり、また京コンピュータが神戸にあります。このようなコンピュータを自在に使って計算するためにネットワークが使われております。NIIはこの中で、複数のスパコンを使うための認証システムを運用するという役割も担っております。
 また大学の連携としまして、BCP、すなわち災害等が起こったときにもきちんと活動が続けられるようにデータを保全する仕組みのためにネットワークが必要です。このL2という略記はレイヤー2のことで、比較的低いネットワーク層でセキュアな接続を実現し、安全にこのような活動ができるようにするということであります。
 また、遠隔講義や双方向授業につきましては、大学院が協力して行うプロジェクトで使われております。外国との間の遠隔授業も実際に行われております。
 それからクラウドです。大学には一部の情報サービス機能を商用クラウドにお願いするという流れができております。既に10の民間のクラウド事業者がSINETに直結しております。大学からクラウドサービスプロバイダーの提供する情報サービスを受けるために、ネットワーク的には非常に廉価に、しかも安全に使えるという環境を提供しているわけです。大学でこのような使い方が今後どのように進むかを想定しながら、ネットワークの各種機能や配置を考えていかなければなりません。データセンターは全国に分布しておりまして、大学も全国に分布している中で、どのように接続し、より良いサービスを活用できるようにしていくかが具体的に重要な課題であると思います。
 次は産学連携です。インターネットを使って企業と大学が普通に通信することはできます。しかしその機能は限定されております。民間の研究所と大学が、例えば共同研究として、セキュアな接続、例えば知財に関わるのでオープンなインターネットで通信したくないという場合には、直に企業がSINETに接続し、大学との間でセキュアなネットワークを構成して研究に使うということも実際に行われております。そのようにせずとも普通にインターネットで情報交換はできるのですが、直接に加入するということも可能になっていおります。
 先ほどから研究ネットワークと申し上げましたが、諸外国の状況について少し解説したいと思います。アメリカではInternet2という組織が今年度から100Gbpsで全国ネットワークを動かし出しました。アメリカ政府が経費的にも援助しながら、非営利団体Internet2というのを作り、ネットワークの下のレイヤーから上位レベルのソフトウェアや様々な開発プロジェクトまで含めた活動を行っております。アメリカでは民間企業も巻き込んだ形でこのような活動が現在進んでいるところです。
 ヨーロッパの状況を申し上げますと、各国にはそれぞれ研究ネットワークがございますが、EUがGEANTというEU全体をカバーする研究ネットワークを作っておりまして、昨年から500Gbps、つまり100Gbpsの回線を5本並べて通信するというやり方で、この図の緑の線をつなげて運用しております。ですから、先ほど申し上げましたヒッグス粒子を見つけるという研究では、このネットワークからデータが送られてきて、それを我が国で受け取って処理するという使い方をしているわけです。
 中国の様子については、この事業主体に関してはまだ調査中なのですが、分かっていることは2万キロにわたって100Gbpsのバックボーンを作ろうとしていることです。中国の通信機器の二つの会社に半分ずつ担当させ、国を挙げてこのようなネットワークを作ろうと進んでおります。ここに「ダークファイバー」という言葉がございます。通信事業者や鉄道の事業者などは光ファイバーをまとめて敷設するわけですが、その中に使われていないものもあり、それを廉価に提供するというビジネスをします。ダークとは暗いという意味ですが、ファイバー丸ごとを所有者と相対で話をして価格を決め、安く使うという形態の回線をこのように呼んでおります。一方、通信会社は専用線として定価表を用意し高品質のサービス形態も供しています。これは普通、非常に高い価格になります。各国の研究ネットワークではダークファイバーをいろいろな会社から入手し、自前で経済的にネットワークを構成しようという流れになっております。
 国際回線には、このダークファイバーはなく、高い専用線を使わざるをえません。日本ではまだ10Gbpsしか持てていないのですが、ヨーロッパとアメリカ間では既に100Gbpsを使い出しました。研究を進めるためにどうしてもこの帯域が必要という判断によるものと思いますが、すでにこのような時代になっております。
 さて、我が方の利用状況を申し上げます。2011年にSINET4になってからも、私立大学などの加入がじりじりと増えております。その中でも、先ほどから何度も申しましたセキュアな通信をするための機能、VPNと申しますが、その利用が急激に増えています。これは閉じたネットワークを作ることによって研究グループ内通信や大学間連携のネットワークを仮想的に作ろうという仕組みで、今後ともこのような利用は増えていくと考えております。
 2011年から運用し出したわけですが、その最初の時期に東日本大震災が起こりました。仙台、山形、弘前にノードがあります。それらはデータセンター、すなわち電話局のようなところに置かれておりまして、地震では壊れなかったものの、電源がなくなりました。自家発電でつなぐわけですが、仙台では96時間停電しました。しかしデータセンターとしては機能し続けており、SINETは止まることがありませんでした。
 SINETの構造は2本の線、すなわち予備の光ファイバー回線も用意してノード間をつないでいます。いろいろなところで回線が切れましたが、予備の回線をうまくたどると札幌までちゃんとつながるという状況でした。どこかが切れて、例えば北海道が孤立するということになると大変困ったことになったわけですが、幸い、そういうことはなく、北海道は普通にインターネットが使える状態であり続け、東北地方も電気が通じるようになればパソコンでインターネットを使えたということであり、何とか情報の流通を確保することができました。私どもはこの経験をきちんと踏まえてロバストなインフラとしてのネットワークを作っていきたいと考えております。
 次に、今までは主として通信ネットワークのお話をしてきましたが、その上の様々な基盤的な機能の中で、私どもが重点を置いておりますものについて幾つか御紹介したいと思います。
 まず第1点は学術認証フェデレーション、「学認」というものであります。大学には大学の構成員を認証するためのシステムが導入されていて、先生や学生が成績を入力したり成績を見たりということのために使われています。大学を超えて大学に共通するようなサービスを自由に使えるようにするために、認証システム同士がお互いに信頼できるものであるということを保証するようなトラストフレームワークとして、この学認があります。そうしますとシングルサインオンでいろいろな情報サービスを使えることになります。サービスプロバイダーが、このグラフにありますように着実に伸びておりますが、例えば電子ジャーナルなどを提供するのがサービスプロバイダーでして、大学に対してのサービスレベルを設定して、大学を超えて同じような形で使えるというようなビジネスをしております。大学に対するいろいろなサービスが、この認証機能により、シングルサインオンで使えるようにしようというプロジェクトでございます。これによって、より安くサービスを使うことにもつながりますし、この世界地図にありますように、諸外国の大学で使われている認証とつながることにもなるので、大学を超えた連携活動を支えることための基本的な機能であると考えております。
 次の例はVPN、バーチャルプライベートネットワークであります。商用クラウドサービスの使い方の一例です。京都教育大学は様々な基本的な情報サービスを富士通のデータセンターを使って運用しています。これは群馬県の館林にありまして、京都から群馬県まで専用線を引いてこのサービスを利用しようとすると、通信料が大変高いものになります。このレイヤー2のVPNというSINETの機能を使い、キャンパスの中から遠くにあるクラウドサービスを使って大学内の業務を行っている例です。クラウドのデータセンターを使うという例のほかに、遠く離れたキャンパス間をつなぐために、この機能を使うことも行われております。
 次はコンテンツに関わることで、機関リポジトリ、これは大学の教育・研究の成果を発信するためのシステムですが、その設置が進んでいるという事例であります。学術情報を電子的に収集し、組織化し、大学のアカウンタビリティーを示すものとしてこのようなコンテンツを社会に還元していくメカニズムの一つであります。我が国の大学でもこの機関リポジトリが数多く作られて、コンテンツも着実にたまっているところであります。
 このような機関リポジトリをできるだけ容易に作ることができるようにするために、私どもNIIでは、共用リポジトリサービスを始めております。これはIT的に言えば、この機関リポジトリというサービスを提供するクラウドであります。私どもにクラウドのリソースがありまして、大学が機関リポジトリを作ろうとして作業すると1時間ぐらいでリポジトリができてしまうというサービスであります。私どものデータセンターにクラウドがあるわけですが、リポジトリは各大学の顔としてインターネット上に個別に見えているというものです。特に今年の4月、文部科学省で学位規則の改正がございました。博士論文は、今後インターネットによる公表をしなさいという通達でありまして、より具体的に言いますと機関リポジトリを通じて博士論文を公表するということを意味しておりまして、急にこの機関リポジトリを作りたいという大学が増えました。現在のところ379大学が機関リポジトリを持っております。この共用リポジトリJAIRO Cloudには150ぐらいの申込みがありまして、その内半分ぐらいが既にリポジトリを作り公開しています。日本には学位を出す大学が400ぐらいあります。ということは、この学位規則の改正に沿えば400ぐらいの大学はリポジトリを立て、学位論文をそこから公開しなければならないということになります。そのため今、中小規模の私立大学などが、このクラウドサービスを使ってリポジトリを作るということになったのです。今後、大学ではいろいろな情報サービスがクラウドを使って提供されると思われますので、クラウドのためにどのように最適なネットワークを作っていくかというのが現在の課題の一つです。
 最後に、次期のネットワークに向けて、現在私どもが考えており、また、この委員会にお願いしたいことをまとめたいと思います。これからのスケジュールをこの図に示しました。私どもは今、平成25年度のこの位置におりまして、計画では平成28年度に次のネットワークを運用開始したいと考えております。このためには2年ぐらいにわたって一連の調達を何十も行わなければなりません。そこでネットワークの基本構想をまず固めることが必要です。その中で重要な課題の一つとして、現在、文部科学省の御指導の下でクラウドに関する調査研究が行われておりまして、その調査状況を踏まえまして、今後のネットワークに必要なリソースを見積もって計画に入れていく必要があります。各大学がいろいろな通信機器や回線を用意するために、事前になるべく早く情報提供する必要があります。そのため、なるべく早く私どもは説明会を開始したいと思っております。来年度にはアクセス回線を共同調達し、さらにそれ以外の調達もいろいろと進めながら、スムーズに次のネットワークに移りたいと思っております。
 既にアンケート調査を行っておりまして、10Gbpsから100Gbpsのアクセス回線を欲しいという機関が62件、100Gbps以上は10件ありました。一つの大きな大学は400Gbps必要だと言われています。
 このネットワークの特徴は、このような大口ユーザーが全国に分布するということです。東京に集中していますと、ネットワークの設計が随分楽なのですが、大学や研究拠点は全国にあるという点が設計を難しくしています。イメージとしましては、今と同様ですが、ダークファイバーをフルに活用しまして全国をつなぐネットワークを作りたいと考えております。もう一つの特徴は、ニーズの拡大に対してフレキシブルに対応できるネットワークにしたいということであります。全県を100Gbpsでつなげたいと考えております。基幹系は200Gbpsから1Tbpsまでいけるような設計にしたいと考えています。技術的にはこのような水準で、何とか実現できるのではないかという見通しを持っております。
 最後に、この委員会で是非御議論いただきたいというポイントをまとめました。私どもとしては、先ほどから申してまいりましたとおり、先端的な学術研究の推進のための最先端のネットワークで、かつ、大学における学術研究や教育活動全般を支える、という二つの特性を持った情報インフラとして整備を行いたいと考えております。これに関しては、少しブレークダウンしますと、最先端の研究開発で、例えば非常に太い回線が必要であるなど、いろいろな要求が出てまいります。それぞれの学問分野で5年先までの計画などを調査し、ニーズの把握に努めております。また国際連携も極めて重要です。またこの委員会で今まで議論されてきましたような教育の高度化に対応したネットワークであることも重要です。さらにクラウドやビッグデータに対応する基盤としての機能を持ちたいと考えています。 もう少し具体的な点としましては、全県にSINETノードを置くという方針は今後も維持したいと考えております。
 三つ目のポイントは、諸外国の研究ネットワークときちんと連携するということです。連携とはすなわち競争したり協調したりしながら研究・教育を進めていくということでしょうが、そのようなことができる学術研究ネットワークとして整備したいと考えております。したがって国際回線も100Gbps以上の帯域でつなげたいと希望しております。
 次の点は、各大学から近隣のノードまでつなげるためのアクセス回線の経費の在り方について方針を確定することです。定めたその方針に沿って次期ネットワークのアクセス回線接続を行っていきたいと考えております。
 更なるポイントは、先ほど申し上げましたようにアカデミッククラウドに関する調査研究の成果を盛り込んだネットワークにしていきたいということです。コンテンツや教育の高度化などの観点からも、様々な活動と連携した学術情報発信の強化ができるネットワークにしたいと考えております。
 このような点について、私どもとしましては、是非この委員会で御議論いただいて、次のネットワーク実現に向けた御示唆を頂ければありがたいと思っております。
 この後には参考資料といたしまして、昨年度行いました外部諮問委員会の報告をまとめておりますので、お時間のあるときにでもごらんいただければと思います。
 少々長くなりましたが、以上で私の御報告を終えます。どうもありがとうございました。

【西尾主査】  安達先生、どうもありがとうございました。
 我々が、日頃、当たり前のように使っておりますSINET、これは今、安達先生に御説明いただきましたように、国立情報学研究所で日夜を問わずいろいろな形でSINETを運営管理していただいている、そのたまものであるということでございます。
 ただし、SINETに関しまして、例えば先ほどの長澤室長の御説明のようにいろいろな政府の施策等の提言がございますけれども、世界最高水準のアカデミックなネットワークとなっていない状況です。安達先生から今後のことでもお話がありましたが、現状においては、日本では最も広帯域のところでも40Gbpsであるのに対し、ヨーロッパでは500Gbpsというオーダーであり、アメリカでも100Gbpsのオーダーであり、さらに中国でも100Gbpsのオーダーであるということです。そのような状況の中で、最近、科学の方法論としてe-サイエンスということがしばしば言われ、例えばアルマ計画ではチリに設置された天文台で時々刻々観測されているデータが、SINETの海外ネットワーク通じて三鷹の国立天文台に蓄積されてビッグデータが構築されて、全世界の研究者がそのデータにSINETの海外ネットワークを通じてアクセスして宇宙科学を進展させています。そういうときに、諸外国に比べて日本のアカデミックネットワークの整備が十分でないという現状が安達先生のお話から十分に知ることができます。
 それと経費的には、SINETの運営に関しましては毎年定常的な予算が確保されているというのではなくて、毎年概算要求事項で申請を頂き、国立情報学研究所の事務部の方々、および文部科学省の情報担当の方々が財務省と折衝していただいた上で予算が確保されているという現状は、不安定な状況と言わざるを得ません。
 そういう厳しい予算環境ながら、技術的には震災時においてもSINETはずっと生きていたことは、これはまた非常に驚くべきことだと思います。
 一方、大学関係の学内情報環境に関しては新たな動きがあります。京都教育大学の例にもありますように、様々な観点で予算削減がされていく中で、学内で情報基盤サービスをすることが人的リソースの観点からも困難になっている中で、大学外にサーバーシステムを移し、企業のクラウドシステムサービスを利用する動きが出てきております。
 以上のようなことを踏まえながら、今後、どういう形で学術情報基盤整備を行っていったらよいのか。また、アカデミッククラウドシステムをどういう形で構築していったらいいのか。これらのことについて、安達先生から論点を六つほど御提示いただいておりますことも含めて、今後この委員会で鋭意審議していかなければならないと思っております。
 そこで、本日はこの委員会で、今後、どういうことを審議していき、また、どういうまとめをしていったらよいかということに関して皆様から様々な観点から御意見頂きたいと思います。安達先生の御説明に対する御質問でも結構ですし、是非皆様方からいろいろ御意見等を頂戴できたらと思います。いかがでしょうか。
 どうぞ。

【羽入主査代理】  非常に初歩的なというか基本的な質問なのですけれども、閣議決定でいろいろな重要なことが発信されておりますが、これをアカデミックな情報発信ということだけで考えてみた場合に、やはりここで議論するということは当然のことだと思いますが、ほかのところで、つまり府省を超えた議論がどこかでなされているのか、アカデミックな情報発信に関しては、ここで議論を集中してすることで済むのか、ここでの意見の取りまとめが実際に国立情報学研究所のSINETにそのまま生かされていき、それが国の施策として実現する状況にあるのかという、いわば、この委員会の到達目標は、あるいは、決定できる範囲というのはどこにあるのかということを教えていただけると、大変うれしく思います。

【西尾主査】  これはむしろ文部科学省にお伺いしたいのですけれども、羽入先生がおっしゃいましたように、非常に大きな問題であり、日本の情報通信分野全体に深く関係することなので、ここでの議論というものがどう生かされ、どういう位置付けになるのかということで御説明いただけると有り難いのですが、いかがでしょうか。

【長澤学術基盤整備室長】  先ほど御説明しましたけれども、政府全体のIT戦略という観点からしますと、これは内閣府に担当者が設けられまして、そこで省庁一括でヒアリングを受けて、何を進めるべきかという議論が行われております。この中で私どもも呼ばれまして、SINETをどうするんだということは求められて、それについての意見は述べておりまして、これはやはり省庁で連携するというのではなくて、文部科学省で単独でやるべき事柄だということの整理はなされておりまして、その理解は得ております。
 ただ、これをどのようにして今後、予算化していくかということにつきましては、やはり現状が国立情報学研究所、NIIの運営費交付金の中で行うということになっておりますので、それは学術会議もそうですけれども、大型プロジェクトをどうするかという中で、これを、ここの委員会の議論も踏まえまして、そういった共同利用機関を担当しております学術機関課なり、そういったところの運営費交付金の枠組みの中にどういうふうに生かしてその予算を拡充していくかという議論の参考として、ここでの御意見を踏まえて対応していくと考えております。

【羽入主査代理】  よろしいですか。

【西尾主査】  どうぞ。

【羽入主査代理】  ありがとうございました。それと今のお話を伺いますと、安達先生が先ほど御説明くださいましたように、一研究者の研究成果の収集から先端的な研究の収集なり連携なりまでがSINETで維持されてきていたし、これからも効率的になされるという点では、NIIのこれまでの事業をどれだけ発展させられるかということに懸かっているのではないかと思いますので、そういった観点から今後の議論にも参加したいと思います。ありがとうございました。

【西尾主査】  美馬先生、どうぞ。

【美馬委員】  今日、机上資料、私が頂いた、平成26年度の科学技術関係概算要求の概要がありますね。今回この中には、こういったこういうICT関係の情報基盤のインフラは要求の中には入っていないということでしょうか。

【長澤学術基盤整備室長】  これはあくまでも別途の参考資料ということでお配りしておりますので、SINETの概算要求の内容につきましては含まれておりません。

【美馬委員】  科学技術関係のこういう研究開発の予算ですと、フロンティアで宇宙、海洋、南極、原子力とか高エネ研とか、それからJAMSTECとか、そういう大型のものがここに入ってきますけれども、ここには情報系の基盤のものというのは並列して入ることはできなかったということでしょうか。

【長澤学術基盤整備室長】  基盤整備とプロジェクト的に行うものというところはちょっと分かれておりまして、このSINETは大学間における情報インフラということですので運営費交付金という形になっております。例えばここにありますアカデミッククラウド環境構築に係るシステム研究と、このような特別に調査研究するようなプロジェクト物につきましては、ここに書いてある科学技術予算の概要におけるように含まれている次世代IT環境構築という予算で措置をされておりますので、そういったものを適宜、機動的なプロジェクトの予算を獲得しながら基盤整備にどう生かしていくかということを反映するという仕組みになってございます。

【西尾主査】  美馬先生、よろしいですか。

【美馬委員】  はい。

【西尾主査】  どうぞ。

【倉田委員】  今、お聞きしていて、技術的な細かいことはもちろん全く分かりませんけれども、このネットワークが基盤整備として、根幹として重要であるということ自体は、もはや誰も意見を差し挟む余地がないことなのではないかとすら思うのですが。もちろん大きければ大きいほど、容量があればあるほどいいに決まっているわけですけれども、もちろんそこの制限はあるし、どこが妥当かというのは、それはちょっと確かに難しくて、そこはある種、コストの問題としか言えないわけで、コストのパフォーマンスの何かそういう、幾つかのシミュレーションの中で、決めるしかない話ではないでしょうか。その前提として、やっぱり基本的に全世界レベルとしても100Gbpsですか、というところであるということは、もうここまでの議論で私としては割合と自明ではないかと思います。よく分からないのは、何をここで論じないといけないのかが,逆にちょっとよく分からなくなりました。この前提を認めていただくことができないということなのでしょうか、そこがちょっとよく分からない点なのですけれども。

【西尾主査】  どうぞ。

【長澤学術基盤整備室長】  国際レベルで単純に100Gbps必要だというのは簡単なんですけれども、その背景として何がありますかと。では、どういう根拠でこれが要るのか。例えばいろいろなサイエンスの必要性によって、こういったネットワークを使う需要がどれぐらいありますとか、例えば人文・社会学系でもデジタルヒューマニティーが含まれていて、こういったネットワークを通常は使いますとか、理工系ではこういった国際共同研究でこういったものが増えていますとかという個別の積み上げがないと、単純に財務省に行って外国並みの回線を用意してくださいと言っても、それは通用しないわけです。これはサイエンス、社会に還元する上で、こういったネットワーク需要、それから社会を発展させる上で課題解決につながるような学術とか、そういった研究推進に必要であるから100Gbps必要ですというように持っていく必要があると。そういうネットワーク需要、それからその上の高度な学術情報基盤流通の展開ということを踏まえて、ここでコミュニティーの方々の御意見をまとめていただいて訴えていかないと、ただ単にその回線を借りるんであれば、NIIでなくても、別に業者からお金で予算をとればいいじゃないかという、そうではないということをやっぱりしっかりと理論付けて説明していかないと、これは全然アカデミックな話になっていかないので、これは財務省からも、なぜ必要かということを実績を踏まえていろいろな観点の発展とともに説明してくれということを言われておりますので、こういったことを先生方の御意見を踏まえて構築して訴えていきたいと考えております。

【西尾主査】  羽入先生、それから美馬先生、そして今は倉田先生からの御質問は、我々がこれからの議論を進める上では非常に重要なポイントだと思います。今、長澤室長がおっしゃったように、例えば、国際的なレベルからも3桁のGbpsのネットワークはどうしても必要と考えるのならば、この委員会において、それはどういう根拠がもとで必要であり、それが実現されることでどのような将来の展望が開けるのかということの議論を積み重ねて、審議のまとめをすることが重要だと考えます。そのような審議活動をすることによって、先ほどの運営経費をより拡充することができ、また緊急的に四、五年のプロジェクトでSINETの機能を大幅にアップするということがどうしても必要な場合は、それは別途大きなプロジェクト経費として申請していくことの必要性をこの委員会から発信していくという方向性でよろしいでしょうか。

【長澤学術基盤整備室長】  はい。特にネットワークだけではなくて、こういったアカデミッククラウドとか、データ中心の大容量の科学を進めるに当たって、こういう形が世の中の流れとして必要であるとか、今後こういうふうにITが進むという可能性があるので、ではそのサイエンスとしてどう取り組むかということも踏まえていただければ、併せて発信することができると思っております。

【西尾主査】  その審議の中で、吉田委員はじめ企業のエキスパートの方に本委員会に参画いただいていますので、日本のアカデミッククラウドをどういうアーキテクチャーあるいは形態で構築していったらよいのかということを本委員会から発信していくことも非常に大切であると考えます。
 どうぞ、斉藤先生。それから辻委員。

【斉藤委員】  我々ゲノム配列の解析をしている人間の立場から言いますと、もちろんSINETに非常にお世話になっているんですが、データ生成の爆発的な伸びに、逆に幾ら増やしても取り残される可能性があるんじゃないかとちょっと危惧しております。この前我々の研究室で、1,000人ゲノムというのはもう公開されておりまして、そこのアメリカのデータベースからデータをダウンロードしたんですが1週間掛かりました。これは公共のデータベースなのでそういう方法しかなかったので仕方ないんですけれども、日本のあちこちのゲノム研究者は共同研究ではもはやネットは遅過ぎる。したがって郵便で送る。1TBでももう安い数千円でハードディスクが入りますので、もちろん研究は秘密性もありますから、そういうことでもセキュリティが守られるということで宅配便を使う。国際的にも、私の研究室はフランスと共同研究していますが、これは生物学者がUnixを余り知らないんですよね。tarアーカイブをどうするか分からない人は、もう面倒くさいからコピーして送るということで、これも国際宅配便で送っていただきました。今、ゲノム配列の第2世代になって、今、3世代のが入ってきて、4世代、5世代となってきますと、急速にたくさんの生物のゲノム配列が決定されますので、そこら辺がちょっと私は疑問に思うところです。
 もう一つ、これはコメント的なことですけれども、もう一つの御質問は、最近聞いたんですが、このネットのトラフィックの半分ぐらいは天文学の人たちのデータフローで占められているとお聞きしたんですが、そうすると天文学の人にも、ちょっとそういう宅配便を使っていただいて、もうちょっと余りネットを急速にたくさん使わないでほしいと、そういう要望があるんですが、それいかがでしょうか。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。先生からおっしゃっていただいていることは日本のもうアカデミックネットワークの帯域が、今では新たな科学の方法論に対応していく上では狭過ぎるということですね。先ほど来お話しがありますように、日本でなぜ100Gbpsが必要かというときの一つの具体的な根拠として斉藤先生がおっしゃっていただいたことが重要に生きていくのではないかと思っています。
 3桁オーダーのGbpsあるいはTbpsまでいくような世界最高レベルの環境を日本で構築することを目指すとしたら、その必要性については斉藤先生の御意見をはじめ、エビデンスベースの議論を積み重ね、その審議のまとめを行っていくことが非常に重要になってくると考えております。
 辻委員、どうぞ。

【辻委員】  今、お話があったように、研究のいろいろな分野で、現状というのはかなり限られたリソースをどううまく使うかという、ある意味、研究者側で制限しながら使っているのがところどころで見え隠れしているんじゃないかなと思っております。それに対して今回、次期SINETで、できるだけ大きな帯域のネットワークをしっかり作っていくというところがまず一つやっていくべきところなのかなという話と、もう一つ方向性として思うところは、今まで天文学であったり何であったり、その各個別の研究分野というところでの議論でいろいろとネットワークを使ってきましたと。今後、いろいろな研究の方向性として領域融合的というか、いろいろな研究分野が関係し合って新たな研究要素を見つけていくというところが情報学的にはターゲットとして見ていくべきところではないかなと思っております。そのためにもやはりネットワークでの制限というところは極力心配しなくても済むような環境を整えていくというところが必要ではないかなというところで感じております。以上です。

【西尾主査】  まさにおっしゃるとおりで、情報の分野だけの話では一切なく、全分野の科学あるいは学術を日本が世界でリードしていこうとしたときの、その基盤として今、辻委員もおっしゃったように、SINETの環境が最先端になっていないとある種の前提条件が崩れているというぐらいに言えるのではないかと思います。それと分野融合を実現しようとしましたら、一つのサイトだけのデータではなくて、いろいろなサイトのデータを連携させて新たな知を創造するということが、ネットワークを介して容易にできなければなりません。その場合にネットワーク環境が十分でなくボトルネックになってしまっていますと、大きな問題だと思います。
 美馬先生、どうぞ。

【美馬委員】  議論を始める前に確認をさせてください。今回のこの委員会でどういう形でまとめていくかということなんです。今日頂いた資料の、例えばもう既に提言として出されている、この机上資料2の中の29ページには委員の方々の名前もあって、ここにも大分重なっている方もいらっしゃいます。また、32ページにはヒアリングとして言語学会、経済学会、物理学会、化学会とか、いろいろな学会からのヒアリングを既に行っているということも書かれていますね。それから、こちらの机上資料3の報告書でも27ページを見ると、委員の方が大分重なっていらっしゃって、アカデミッククラウドの検討会の提言もあり、今日の御発表の中の参考資料の中でも最後の方に学術情報ネットワーク外部諮問委員会からの提言も入っています。そうするとここでは、こういったもう既に行われている議論はベースとして、その上にこれをきれいな形での提言として取りまとめていくということでよろしいのでしょうか。

【西尾主査】  長澤室長、どうぞ。

【長澤学術基盤整備室長】  具体的にどうやって進めていくかという段階だと考えております。

【美馬委員】  アクションプランを考えるということですか。

【長澤学術基盤整備室長】  はい。

【西尾主査】  美馬先生、それでよろしいですか。

【美馬委員】  はい。

【西尾主査】  大事な観点だと思いますので。
 土方委員、どうぞ。

【土方委員】  すみません、その議論の続きなのですが、そういった過去に積み上げられてきたもの、あるいはここで議論しているものに、更に優先順位を付けるというようなことまで、この委員会ではやっていくということなんでしょうか。

【長澤学術基盤整備室長】  近いもの、それから中長期的なもの、様々な課題があると思いますので、こういったものをどのようにしていくか。アカデミッククラウドならそれをどのように具体化していくかで、ネットワークにしてはその中でどういうふうにして整備をしていくかというものを提言としてまとめていただいて、それをフェーズごとに具体化していくということだと思っております。

【西尾主査】  今の答えでよろしいですか。つまり、いわゆる短期的なもの、中長期的なもの、あるいは将来にわたって非常に大きなビジョンとして推進すべきものとか、そういうレベルで明確にすみ分けをしてまとめていくという方針でよろしいですか。

【長澤学術基盤整備室長】  もう既にこういったアカデミッククラウドとかデータの流通をするというような必要性自体は様々なところで議論としてはなされておりますので、それをどのようにして具体化して、その中に次期SINETを組み入れていくかということを、では何が課題で、いろいろなところで認証をどう高度化するかとか、セキュリティをどうするかとかそういうことも踏まえて、また各分野の人たちのニーズはどこにあるのかとかそういったことも踏まえて、だからこのような情報インフラの整備が必要で、次期SINETにはこういったところまでの整備をきちんとやっていく必要があるという形でまとめていただければ、それを踏まえて実行に移していけるのではないかと思っております。

【西尾主査】  今のお答えからすると、先ほど長澤室長からSINETだけなのか、もう一方で商用のものもあるのではないかということがあったのですけれども、今後、いろいろなことの審議の中でSINETというものを我々が重要なものと認識して、それをより高機能、高性能にしていくかということになると考えます。議論の中で大切なことは、SINETをいかに高機能化、高性能化していくか、さらにどういう形で全国的に恩恵を被るように展開していくか、ということを議論の主体にしつつ、その中でアカデミッククラウドをどのように構築していくかも十分に議論していくことが重要であるということでよろしいですね。

【長澤学術基盤整備室長】  はい。その上位レイヤー的なイメージで、アカデミッククラウドとかそういうのが存在すると思っておりますので。

【西尾主査】  ベースはSINETにしながら、その上でアカデミッククラウドを考えるということですね。

【長澤学術基盤整備室長】  はい。先ほど具体的に、先ほどの御示唆いただいたところで参考になるかなと思ったのは、やっぱりこのゲノムとか天文学研究とかで大幅に帯域が必要となるような研究があれば、そこはやはりこの対象としては別途、先生がおっしゃったような郵便で行ってもらうことも必要でしょうけれども、ただ分野横断的なものについては支障が出ないようにするためにはこういったものが必要だと。当然、予算にも限りがございますので、そういったもの等を踏まえて、じゃあどの辺までこういったSINETの整備を進めていく必要があるのかということの妥協点とか、そういったところも踏まえて御提言いただけると大変有り難いと思っています。

【西尾主査】  ということは、美馬先生の先ほどの質問で、机上資料でオレンジとグリーンとイエローの表紙の冊子がございますけれども、これらの冊子に関連する委員会でいろいろな議論がなされているのですが、それらの議論におけるSINETに関わる事項を抽出しながら、今後、SINETをベースとしたアカデミックなクラウド環境をどのように構築していくかということがこの委員会の議論の焦点になるということでよろしいですか。

【美馬委員】  はい。

【西尾主査】  上島先生。

【上島委員】  これはNIIの安達先生の資料にも書いてありますが、今帯域が不足している、天文学、ゲノムの研究分野でも足りないと議論しているときにちょっと恐縮ですが、SINETの利用に教育も含むという観点でよろしいでしょうか。先ほど御紹介の中にヨーロッパは500Gbpsの帯域を持っているということでが、ヨーロッパでは、これは国際教育制度に関してですが、いわゆるエラスムスというような共同計画として、学生のモビリティーとして、教員のモビリティーも考慮していますが、学生が回って勉強をしたり研究をしたりするという制度があります。タイやアジアでも同様の制度を始めるということを聞いております。ヨーロッパが500Gbpsという大きな帯域を持っているというのは、その500Gbpsの上にエラスムスという教育制度的に基づくデータが実際に乗って運用されているんでしょうか。その辺りを御存じでしたらお教えいただきたいと思います。エラスムスは、EUで、イギリスを除いたような形で、米国の高度教育の自由化に対応する施策としてような大学共同体みたいなものを作っているのですけれども。

【安達国立情報学研究所副所長】  はい。EUは学術研究や工学的な研究でも人材育成などにかなりお金を投資するという予算計画をとりまして、そういう意味でサイエンスデータだけが流れるネットワークではなくて、いろいろな情報サービスあるいはデータベースの共有などのための活用も進めるという考え方であろうと思います。

【上島委員】  そうですか。同様に、いわゆるこのGEANTですか、GEANTネットワークにしろ、このSINETにしろ、研究並びに教育の両方の基盤としての役割を果たすということでございますか。

【安達国立情報学研究所副所長】  はい。EUは割とサイエンティフィックとかエンジニアリングな研究でも人材育成とかそういうことにかなりお金を投資するという予算をやっておりまして、そういう意味で、何ていうんでしょうか、サイエンスデータだけが流れるネットワークではなくて、その上のいろいろな情報サービスあるいはデータベースの共有とか、そういうようなものもたくさん流れていると思います。

【上島委員】  ありがとうございました。

【西尾主査】  竹内先生、どうぞ。

【竹内委員】  今回の議論の中でSINETというのは確かに重要な要素であって、ただそれに関しては先ほど倉田委員ほかいろいろな方から御議論があったように、帯域を広げるということ自体、これは絶対に必要だろうと考えます。ただ、その上でいわゆるアプリケーションのようなものとしてどういうものが必要なのかということを議論するということは理解したんですが、それを実現していくための、例えばデータ等を扱う人材の問題ですとか、それから制度の問題とかというのはここで議論してもよろしいのでしょうか。

【西尾主査】  私は当然、議論するものだと思っています。むしろそういうことが一方の柱として重要ではないかと感じています。
 国立情報学研究所の立場から喜連川先生、何か。

【喜連川委員】  確かに、まず、どのレベルまで議論するかということについての合意をしておくことが、各論に入る前に、重要であるという気がいたします。私どもも、いわゆるヒト情報システム、本庶先生や浅島先生のやられておられるゲノムコホートシンポジウム等でいろいろ講演する機会がございましたが、そこでお伺いしましたのは、もはやストレージやネットワークの伸びよりも、シーケンサー側から出てくる量の方がコスト単価としては安くなっているという事実です。ですから、これはネットワークだけに関わるものではなくて、情報の処理系も情報の格納系もITシステム全体に関わるフェノメノンとして出てきていると我々理解しております。
 したがいましてSINETのネットワーク部分だけの議論よりももう少し広い、どちらかというとそういうITインフラ丸ごとを視野に入れたバランスのとれた議論というのも必要になってくるかなと思っております。

【西尾主査】  今日は、再三申し上げておりますように、今後の議論の進め方に関しては明確にしていきたいと思っております。先ほど来の議論のように、SINETのことに関しては、やはり審議の中心であって、そこから的を外すということはできないけれども、今、喜連川先生におっしゃっていただきましたように、それはベースであるということは前提としておきながらも、より広い視野から日本の学術の分野におけるITインフラとしてどういう形態が考えられ、今後どういう方向に持っていくのかということに関しても明確な展望を描くようにする。その中で、竹内先生がおっしゃったように、そのような展望に対応できるような体制および人材の育成についても議論していくという方向でよろしいでしょうか。異なるご意見とか、遠慮なくどんどん言っていただきたくお願いいたします。今後の議論の方向性を明確にしておきたいと思っておりますので。
 岡部先生、いかがですか。

【岡部委員】  私も実は国立情報学研究所の客員として、今回出てきた案の起草に関わった立場ですので、ここに書かれていることについては安達先生とそろってよろしくお願いしますとお願いしたいのですけれども、それを離れて、ちょっと先ほどからの議論に関連して申しますと、例えば、先ほどゲノムのデータを転送するのに1週間掛かったとか、実はネットワークが太くなって、例えば10Gbpsの帯域が確保されたとしても、特に国際回線なんかを使って長距離、しかもパケットロスが少しあるような状況ですと、10Gbpsをフルに使うというのはそんなに簡単なことではなくて、使う側で、例えばソフトウエアのチューニングをするとか専用のツールを使うとかいうことが必要になってきます。そういう技術は、いわゆるハイパフォーマンスコンピューティングをやっている人たちは持っておられるんですけれども、恐らく先ほどtarを開くのもよく分からないとおっしゃっているようなゲノムの方々ですね、十分持っておられないんだろうと想像します。天文学の方は割とその辺は昔から工夫されているんですけれども。そしてそういうことをでは誰に聞いたら教えてくれるのかというところが、今、多分、国立情報学研究所でもそういうレベルの相談に十分応じる体制になっていないのではないかと正直思いますし、人材という意味では、この新しい時代の、仮に回線を太くしても、それを十分使いこなせないという状況もあり得ますから、そこについては少し何か配慮があった方がいいんじゃないかと。
 もう一つは、今日議論になっていませんけれども、当然ネットワークに関してはセキュリティの問題もあります。大事なデータを扱うというのもそうですし、帯域が太くなった分ネットワークを使っていわゆるDDoS攻撃とかの事故が起きたときのインパクトも非常に大きくなりますから、そういうセキュリティに関してもきちんとアドバイスできる人材、それはもちろん各大学機関にも必要ですし、あるいはそれに対して、そこをNIIがでは何かカウンターパートとして相談窓口を持っているのかというと、今、私も客員でおりますから分かりますけれども、十分そこは対応できないと思いますね。
 そういう観点で、人材という観点がもしあるのだとしたら、今、私が申したような帯域を効率的に利用するというのと、セキュリティをちゃんと守るという、その2点についても少しお考えいただければと思います。以上です。

【西尾主査】  おっしゃっていることを総括しますと、SINETをベースとして世界最先端の科学あるいは学術を進展するためのITインフラ、そこにはサービス、どういうサービスが必要かということも含めて、そういうことに関してここで包括的に十分な議論をしておくということが肝要かと思いますが、セキュリティという言葉が出ましたので、後藤委員いかがですか。

【後藤委員】  後藤でございます。セキュリティは本当に大事だということを最後に申し上げたいのですが、その前に。先ほど喜連川先生から将来の情報通信基盤、学術向けの情報通信基盤を作っていくべきだという話が出ましたが、まさに賛成でございます。もうネットワークとしては既にこういう形で非常に活用させていただいており、揺るぎないというか、なくてはならないSINETでございます。まさにこれからはクラウドの時代、それに加えて情報処理の機能、蓄積の機能を総合した、そういうものを作っていかないといけないと思います。そういうものがないと、やはり先ほどのアプリケーションの研究自体も滞ってしまう時代かと思います。
 実は私ども4年ぐらい前、クラウド時代の先がどうなるか、という観点からインタークラウドというキーワードを出させていただいて、産学でGICTFというフォーラムを作って議論させていただいています。インタークラウドのような将来に向けての活動は日本は結構リードしていまして、米国のNISTで参照されたり、ITU-TやISOの標準化でも、今、動き出しているという時代でございます。
 その中で、米国のInternet2の話がさっき出ましたが、IEEEが、それらを使ってクラウド間を結んでインタークラウドのテストベッドを作ろう、と世界的な呼び掛けをしております。それに対応するFP7の方でも、EUとして呼応すると。つまり今、アカデミックの世界ではクラウド基盤を世界的規模で作って、それらを相互に結ぶ動きがあります。更に本音としては国際的なリーダーシップの取り合いという状況まで予測されております。その意味で、このSINETの将来像というのは非常に期待されているものだと思います。特にSINETでは、既にゲノムとか国立天文台というアプリケーションが動いている。そういう場でのネットワーク基盤というのは単にユーティリティーではなくてテストベッド、つまり将来の情報処理基盤を考える上での重要な実験台でもあると。そういう中で、当然ながらセキュリティの技術、それから先ほどの学認のお話がありましたけれども認証の技術、それからそれを運用するためのポリシー、そういうもの全体をテストベッド上でどう作っていって世界に貢献できるか、世界をリードできるか。これは狭い意味のSINETを超えているのかもしれませんが、先ほどのアカデミッククラウドの話まで融合した形かもしれませんけれども、非常に期待されるものだと思っています。
 更に加えると、どこかの文面で「セキュリティも配慮して」という言葉がありましたが、配慮する程度じゃ済まない時代にこれからなっていくという認識が大事です。世界的に重要な位置を占めれば占めるほど、それは攻撃者のターゲットになります。だからそういう意味で、将来像のSINETが攻撃者のターゲットになるのは見えておりますし、日本の学術機関がターゲットになり得る時代だと思います。ここはもう積極的に、最先端のものを常に導入して守っていくんだぞ、守っていくこと自体が研究なんだ、そういうセキュリティの発想で取り組んでいく必要があるんじゃないかと思っております。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。後藤先生のおっしゃることは非常に大切であり、結局は先ほどの京都教育大学の例をはじめとして、日本全体として、従来の大学の中で閉じた情報基盤ということではなくて、外部との連携あるいは民間企業のクラウドサーバーを用いたような、新たな学術情報ネットワークサービス基盤が構築されようとしている中で、アカデミアのネットワークが世界で今後新たに導入されていくであろうと思われる新たなネットワークの形態に対するテストベッドとして有効に機能できる可能性があるということです。情報通信技術の新たな展開に関して、日本がその分野をリードするために学術情報ネットワークの高度化、高性能化という過程を通じて関連技術を磨いていくことが可能だということです。このようなことを実現していくには、先ほど来の基盤経費なのか大型プロジェクト経費なのかということになりますと、大型のプロジェクトとして強力に予算を要求して、日本がアカデミアのネットワークをベースにして新たな情報通信技術に関するリーダーシップを発揮していく方向性も、もう一方で可能性があると思います。このように様々な可能性をアカデミックのネットワークが持っているということで、企業との連携も重視した産学連携のハブとしての役割を大学が果たしていくということは重要であり、そういう観点に関してもここで議論して、いろいろな提言をしていくということは大切であると思っております。
 どうぞ。

【美馬委員】  大分方向性が私自身見えてきたような気がします。前回、我々がこの委員会でまとめさせていただいた審議まとめでは3本の柱を立てましたね。コンテンツと学習空間と人的支援。それと今回議論の枠組みとしては、重なることがあると思います。例えばコンテンツに当たるところは研究利用、教育利用というアプリケーションの話であって、2番目の学習空間に当たるものが、喜連川先生もおっしゃっていたICTインフラ丸ごと、ネットワークだけではなくてICTインフラ丸ごとを、そこをどうしていくか。3番目がやはり人的な支援あるいは人材をどうするかという議論になっていくような気がします。

【西尾主査】  どうもうまく対応でまとめていただきました。ありがとうございました。
 では竹内委員、それから倉田委員、それと吉田委員には、是非、企業のサイドからの御意見をお願いします。
 竹内委員、どうぞ。

【竹内委員】  今の美馬先生のおまとめは大変分かりやすいのですが、安達先生から御説明いただいた資料にもありますように、最も上位のレベルで我々が確保し共有していこうとしているのは、学術情報そのものです。ですからやはりその部分、つまりコンテンツというのはどうしてもきちんと入れていただかないと問題が残るのではないかと考えます。

【西尾主査】  安達先生が最後のところで書いていただいている大学図書館と連携協力した科学技術情報発信の強化のところが、本委員会で以前に議論してきたこととの関係で非常に重要な論点にはなってくるかと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。
 倉田委員。

【倉田委員】  私も今、その点はちょっと気になっておりましたので、今の竹内委員の意見に全面的に賛成でございます。もう一つは、私もやっと、ちょっと方向が見えてきたなと、今、主査や皆様のまとめで大分見えてきたなという感じがいたします。一つはやはりアカデミックなコミュニティーでこういうような基盤を形成するということの意味合いということをやはり強く言う必要があるのだろうということが少し見えたと思います。先ほどの長澤室長から、民間のものを借りればいい、購入すればいいというような意見に対抗するようなことをきちっと作り上げる必要はやはりあるということでしたが、そうしますとそれは、こういうような全ての大学が加盟できる若しくは使えるという環境を基盤として持つことがどういう意味で重要なのか。部分的に商用サービスをできる大学は使えばいいし、それは利用することを拒絶する必要は確かにない。だけども、それだけでこのアカデミックなコミュニティー全体の研究教育全てを賄うことができるのかといったときに、やはりそこに、そうではなくバックボーンとして、少なくともセキュリティという点も含めてSINETがあるということが一つ。もう一つはやはり後藤委員がおっしゃったように、テストといいますか一つの場としてそれが研究開発を推進していくことにつながるのだという点をやはり強調することが重要だと思いました。逆に言うと、そうなるとNIIだけがやっているというのはむしろやはり、何というのでしょうか、NIIを中心に基盤としてやっていただかないと困るというのと同時に、そこにおいて各大学のITの技術者や、それからその他いろいろな方たちが、それを使って逆に人材育成も含めて、このSINETを使った形で人材育成という点も含めた形で、各大学にそういう人材がきちんと行き届くような、そういう制度的な観点というのもいれるべきではないかと思います。つまり集中させてしまうとそこはすごく高度なシステムになるのですけれども、今見ていましても、各大学といった点からすると私にはちょっとICTの能力は随分落ちてしまっているのではないかという気がどうしてもいたします。昔は要するに大学が最先端だったと私は思うのですけれども、今、少なくとも文系では企業が最先端に思えてしまいます。大学の情報資源の在り方というのは、大分そういう意味では、社会全体のレベルが上がったということだろうとは思いますけれども、決してもはや大学全体がトップレベルの情報基盤を提供できているとは私にはとても思えません。ですから、そこのところをある意味ではレベルアップするといいますか、全大学的にですけれども、全てというわけにはいかなくても、もちろんそこにはレイヤーが出てくるのだと思いますが、何かそういう底上げといいますか、もうちょっとそういう面も含めて、何かうまく提言の中に盛り込んでいくことが必要な、そういう意味での人材育成なのではないかと思います。今更技術者を教育していくのが必要ですなんて話をしてもちょっと仕方がないと思うので、そういう意味で、こういうネットワークや現場というものを使いながらいかに人材育成が可能かというような話が盛り込めれば、人材育成のところまでうまく柱に盛り込めるのではないかと思います。

【西尾主査】  ありがとうございました。
 どうですか、長澤室長。今の御意見。

【長澤学術基盤整備室長】  そういうことも盛り込んでいただければ、なおさら深みのあるまとめになるんではないかと思います。

【西尾主査】  倉田先生、御意見ありがとうございました。今、日本の大学の学術情報基盤といいますか、学内の情報基盤のことで言及いただきましたけれども、日本の大学において学内ネットワークの整備も経費的になかなか容易でないことについて、その要因となるようなことはございます。国立大学だけに限っての話になって恐縮ですが、運営費交付金の算出の根拠の中には学内におけるキャンパスネットワークの経費というのは積算されておりません。これはどうしてかというと、それまでの日本の大学におけるキャンパスネットワークの整備は、これ補正予算を何段階にも重ねて行われてきたものですので、そういうような経費が積算の根拠になっておりません。学内のネットワークラインそのものは、グラスですから、これは長いこともちますけれども、その両端の、先ほど安達先生がおっしゃいましたルーターとかスイッチは長くもちませんで、4年か5年間程度で更新する必要があります。そうしますと大学では4年か5年間ごとに何億かの経費を投じて、それらを更新していく必要があるのですが、そういうことの予算的な面がもともと積算されていないので、この経費をどのように捻出して、学内におけるネットワークをアカデミックネットワークの末端として充実していくかということも非常に大きな問題です。ですから各大学の中においてそういう問題を抱えながら、トータルとして日本のアカデミアのネットワークをどのように構築していったらよいのか。これは一つの大きな論点になると思っています。
 吉田委員と、あと美濃先生も是非、科学官としていろいろ御意見を頂ければ。

【吉田委員】  ではちょっと私の方から。

【西尾主査】  どうぞ。

【吉田委員】  先ほど喜連川先生、後藤先生がおっしゃっていたように、まずICTインフラ全体として考えるというのは非常に僕も賛成です。最初の方の話を伺っていて思ったのは、まずクラウドは外の業者、我々も含めてやっている外部のクラウドと必要なときにつながればよいという前提があるように見えました。それからさっきのデータの話ですが、これもデータの処理は自分のサイトでやるというふうに形が決まっていて、データはどこか外にあり、それを転送するのにこれだけの帯域幅が要るという議論になっているように見えました。クラウドの時代になってきますと、そこら辺の感覚が変わってきて、例えば本当にデータを処理するためのコンピュータも御自身でお持ちになるのか。それが一番効率的であれば、もちろんそれでよろしいんでしょうけれども、必ずしもそうでなければ例えばクラウド上にあるコンピュータを使ってもいいんじゃないか、そもそもデータの分析サービスがクラウドの上にあったっていいじゃないかという見方ができると思います。ですから、ちょっと我田引水になるかもしれませんけれども、ネットワークのインフラの議論をもう少し広げて、基盤全体としてどういうサービスがどこにどう配置されていればいいのか、その中で、例えばここの帯域はどれだけ必要とか、データセンターはどういうふうに配置されていればいいとかという議論に持っていけると、全体として、さっき言われたように、国策として見ても非常に強固なクラウド基盤がネットワークを含めてできてくるんじゃないかと思います。そして、データをどこに配置する、データセンターをどこに配置する、あるいはネットワークをどう整備するという検討の一環で、セキュリティの話は最初から考慮していただき、少なくともセキュリティに関しては全く問題ないものが最初から構築されているといった方向に話を持っていければと思います。

【西尾主査】  おっしゃるとおりだと思います。我々がとにかく目指すところというのは一つあって、これはやはり文部科学省で議論することですから世界最先端の科学と学術を進展させるIT基盤の構築をいかに実現するかということだと思います。その上で今、吉田委員がおっしゃったように、日本という具体的な一つの国を対象としたときに、その環境に応じて全体としての学術ネットワークのアーキテクチャーはどうあるべきか。サービスをどのような形態で展開していったらいいのか。一方で、効率だけで考えられないところはどうしてもあり、各大学において、倉田先生がおっしゃるように、関連人材を今後に向けてどのように育てていくのかということもあります。その当たりをトータルに考えて、日本独自の望ましい形態が議論されるべきと思います。
 美濃先生、いかがですか。

【美濃科学官】  たくさん議論が出たので、もうほとんど言うことないんですけれども、この資料を見ていますと量的にといいますか、現状どのぐらいトラフィックがあるかという話が余り出ていません。最終的にはネットワークの構造がどうのこうのという話じゃなくて、回線を太くすべきだというような話を出していかなければなりません。いろいろな枠組みとか全体のインフラというのはもちろんそうなのですが、最後のところで数値がある程度出てこないと、このくらいの容量が要りますという説明が作りにくいなという、最近そういう文部科学省的な発想になってきています。そうすると、やはり最終的にはこれくらいの量がという量的な議論が重要じゃないかなと。もちろん質的な議論はいろいろあり、こんな方向に行かなきゃいけないという話はあると思います。必要な容量をもうちょっと明確にするような方向性というかデータとか、そんなのを出しながらやっていかないと、最後の出口としてはつらいなというような気がしています。
 そんな中で私も大学内でよくいじめられるのが、スパコン、どれだけ計算量が要るんですかってよく言われるんですね。そんなこと聞かれたって、そんなの答えられませんという話をするんですが、やはり環境がよければやはり発想も変わるわけですよね。したがってあらかじめ環境がこれくらいですというのはすごく難しいという話をして、予算がある限りその中で頑張ってやるというのは一つの道じゃないですかというような言い方をします。つまりデータもどんどん増えてきて、パワーも幾らでも要る、そういう環境になるとまた新たなアイデアが浮かんでくるというような話も一方である。けれども一方で予算の問題もありますので、無制限に入れるわけにいかないという、そんな中でどう考えていくかという話をできるだけうまく進めるためにどうすればいいか。その中で一つは、そのような質の話で、基本的には今までサイエンスというか大口ユーザーを考えていたというのがSINETの一つの方向というか大きな特色だった。それに加えて今後、多分、教育関係で本当にICTが活用され出しますと、多分、教材をどこに置いておくんだとかいうことから含めて、あるいは教材の共有なんかも含めて、今後、電子書籍なんかも含めて教材がどんどんネットワークに上がってくるという可能性があります。そうすると個々の利用はそんなに大したことはないけれども、数がすごく多くなるという視点があります。これらをどう見積もるかというのは大変だと思うんですけれども、そういう利用もかなり含まれてくる。だから回線が要るんだというような、今までの、サイエンスでもっと要ります、もっと要りますという話ではなくて、プラスアルファそんな様々な利用が広がるということで、全体としてアカデミックのアクティビティーが全部ICTを基盤に乗ってきますという話をベースに、質的な議論から量的な議論に落ちていくと有り難いと思います。
 それとビッグデータのときにサイエンスのデータは簡単なんですけれども、やはり今後、学生のデータなんかも含めて人に関するデータがこのネットワークで扱われるようになるんじゃないかと。そうすると個人情報だとかプライバシーとかいう問題も、このネットワークをデザインするときに、この頃プライバシー・バイ・デザインというような話が言われていますが、最初からそういう問題を組み込んだネットワーク設計というか、そういうものを考えられるといいのではないかという気がしますので、セキュリティだとか個人情報の扱いだとか、そんなこともネットワークを作ってから考えるのではなくて、作る前にそういうことを、設計されるときにそういうことを配慮するとかいうような話を入れていただくというか、そういう考え方が必要かなという気がしています。
 以上です。

【西尾主査】  おっしゃることは全てごもっともだと思いますが、安達先生、何かコメントはございますか。

【安達国立情報学研究所副所長】  ネットワークがどのぐらい使われているかということに関する詳細な情報は持っております。しかしそれは、個人情報というほどではないでしょうが、大学がいつどれぐらい使っているかという細かい情報ですので、それをどのようにこの場で出していくかは、次回以降、ネットワークの全体の伸びなどとともに、工夫しまして紹介し、御議論の材料とさせていただきたいと思っております。今日はこれからの計画の詳細に余り深く入らずに、私どもの考えている論点をまず提示するということを主眼にお話をさせていただきました。
 さて、美濃先生他どなたかの委員が言われたことについて補足させていただきます。この最後の論点に図書館という言葉が唐突に出ているような感じに見えますが、この上の各点は、いわゆる情報基盤センターの方々と常日頃お話ししている際の論点です。人材育成が一つの重要な課題として御意見がいろいろ出ていたと思います。私どもは情報基盤センターとフォーラムを持っており、かなり頻繁に情報交換して意見を吸い上げるという活動をしております。その中でもやはり専門的な話題になりますと、計画立案や運用の課題を解決していけるような人材が年々少なくなっているという気がしております。
 次の点としましては、吉田委員の御意見は大変ごもっともなのですが、大学の情報基盤の問題の面白いところは、一つの企業体ではないという点にあります。各大学が独自にお考えになり多様な方向性がある中で、全体としてある程度までを充足する最適解を見つけるというような問題であります。セキュリティについてもそうです。先ほどゲノムの分野でのデータの使い方について別の例を紹介しますと、天文学の人たちは20年ぐらい前に磁気テープで似たようなことをやっていまして、その経験を踏まえて今はネットワークを活用するに至っているという例もあります。このようにいろいろな分野の方々がそれぞれ異なる要求をいうのに対して、いかにフレキシブルなネットワークを提供するかということが今回最も重要な課題だと思っております。しかも適切な、余り大きくない予算でうまく解決するのが課題です。
 ちょっとプロボカティブになりますが、一番上の課題については、例えば先端研究だけのためのネットワークを作ればよいというように問題を縮退させることができれば、解くのは随分楽になります。教育研究などのプライオリティーを下げ、ビッグサイエンスだけをサポートするというものです。そうすると簡単にはなるのですが、私どもとしては、そうではなくもっと広い観点でIT基盤としてより理想的なものに持っていくという観点から考えていきたいと思っています。その意味でクラウドを大学でどのように使うかという点が一番重要な課題だと思っておりまして、これについてはいろいろな御意見がありますので、それを先ほど申し上げたようなスケジュールの中でうまく取り込んでいくのが極めて重要だと思っております。是非いろいろな御意見を頂戴できればと思っております。
 以上です。

【西尾主査】  どうもありがとうございます。
 そろそろ時間が来ているのですが、加藤委員が、まだ御発言なさっていないようですので是非お願いいたします。

【加藤委員】  ではちょっと。

【西尾主査】  JSTの立場からでも何でも結構です。

【加藤委員】  SINETの運用その他含めて大変な仕事だなという話と、調達ということで28年度に移行されるんですけれども、現状でもこの調達を考えただけでも非常に大変な作業ではないかなと思います。先ほど出ましたけれども、一括して移行するという方法もございますが、毎年調達をして拡大をしていくというような調達方法もあってもいいんじゃないかなという印象をちょっと持っているんですけれども、そういう調達の考え方を含めて、何か柔軟に対応できる方法はないものかなというようなことをちょっと感想として思っております。ありがとうございます。

【斉藤委員】  一つよろしいですか。

【西尾主査】  はい。どうぞ。

【斉藤委員】  今、39ページの論点を出されているんですが、その前の38ページの整備イメージというところでちょっとあれっと思ったので、沖縄のところだけ検討中となっていらっしゃいますね。恐らく海底ケーブルが必要なので、お金がかなり高いからということじゃないかと思うんですが、沖縄は、文部科学省の管轄ではないですが、内閣府がOIST、沖縄科学技術大学院大学を既に設立されましたし、やはりここは是非、検討中ではなくて同じように扱ったらいいんじゃないかということが一つと、もう一つは、私よくSINETの守備範囲が分からないんですが、国際的な連携といいますと、既にアメリカとかヨーロッパのお話は出ましたけれども、すぐ九州・中国地方の対岸の朝鮮半島、それから沖縄のすぐ南の台湾、あるいは沖縄本島からちょっと行けば上海がありますから、そういう東アジアの国々とのネットワーク整備ということはSINETでは入ってらっしゃらないんですが。ちょっと私、そこが分からないのですが、それは希望として是非やっていただきたいなと思っております。

【西尾主査】  安達先生、どうぞ。

【安達国立情報学研究所副所長】  今の点について簡単にお答えします。先生が言われたとおり、ここはケーブルがどのように入手できるか、今検討中となっています。その意味は、ダークファイバーとして廉価に光ファイバーを入手したいと考えていますが、この沖縄だけはそういうことができず、専用線、すなわち高い回線を使わざるを得ないと見ているということです。私どもはこの沖縄をつなげるための回線については高くてもそれを予算の中にちゃんと入れて全国ネットワークを作りたいと考えております。

【西尾主査】  検討中というのがスライド資料のグリーンかオレンジ色で記されているとのことですので、現在は検討中であるということでよろしいですか。

【安達国立情報学研究所副所長】  ちょっと説明不足ですみませんでした。
 さらに国際回線については、頭の痛い話でありまして、現在、東アジアに関してはヨーロッパが中心となり、東アジア各国が協議する組織としてTEINという組織がありまして、各国がネットワークを拠出するという形でネットワークが構成されております。日本は、NIIはシンガポールまで10Gbps回線という現物の拠出をし、NICTも回線を提供しております。さらに農林水産省が農業方面の国際支援という目的で回線を出しているわけです。そのほかの国も回線を用意して、この東アジア地域の接続をよりよくしようという形で動いております。当然のことながら日本は先進国ですので、もっと出してほしいという要望が強く出てくるわけでして、私どもとしても努力できればと思っております。しかし、これも専用線ですので、大変金額としては高いものになります。
 更に申し添えますと、ワシントンDCに行っている10Gbpsの回線は、これはそのままヨーロッパからのトラフィックを運ぶということに使われています。もう一つのやり方としましては、シベリア回線でダイレクトにつなげますと遅延も大変少なくなってよいのですが、これがまた大変金額が高く、可能ならばそのようにできればよいと思います。国際ネットワークを構成するために日本としても応分の役割を果たしたいと思っています。ただ、これは非常に金額もかさみますので、いろいろと議論が巻き起こると思います。
 以上です。

【西尾主査】  今、御説明いただいたことを踏まえて、国際共同研究を進めたり、国際的な観点でリーダーシップを発揮する上で、それを容易に可能にする回線が非常に重要であるということですね。そのための性能向上等が必須の課題であるということをこの委員会から強く発信していくことが重要であり、そういうところでうまくフィードバックできればというところかと思いますが。
 斉藤先生、そういう状況のようですのでよろしいですか。
 そうしましたら、本日は、多くの貴重な御議論いただきまして、誠にありがとうございました。皆様方から御意見を頂いたことによりまして、ある種の方向性等が明確になってきたかと感謝いたしております。事務局で意見を整理していただいて、今後の審議に生かしていければと思っております。
 安達先生、今日は御説明いただきまして、本当にありがとうございました。
 次回は、今後の審議に資する有識者のヒアリングを行った上で、本日の内容も踏まえ、引き続き審議を行うこととしたいと思いますが、この委員会の大きな方向付けとしては、今日御議論を頂いたような方向で今後進めていきたいと考えております。どうもありがとうございました。
 事務局より連絡事項等ありましたらお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  机上の参考資料でお配りしてありますSINET4のパンフレットと活用事例と概算要求の概要につきましては、お持ち帰りいただくことが可能でございます。
 また、本日の議事録につきましては、先生方に御確認いただいて公開させていただきます。
 それから次回の日程ですが、10月25日金曜日10時から12時まで、場所は3F2特別会議室を予定してございます。また今後の会議日程については資料3のとおりでございますので、日程の確保をよろしくお願いいたします。

【西尾主査】  では、本日はどうもありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。それでは、これにて本委員会を終わりたいと思います。


―― 了 ――

 

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