学術情報委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成25年6月14日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

西尾主査、羽入主査代理、上島委員、岡部委員、加藤委員、喜連川委員、倉田委員、斎藤委員、竹内委員、辻委員、土方委員、美馬委員、吉田委員

文部科学省

(科学官)美濃科学官
(学術調査官)市瀬学術調査官、宇陀学術調査官
(事務局)下間情報課長、長澤学術基盤整備室長、その他関係官

オブザーバー

安達国立情報学研究所副所長

4.議事録

【西尾主査】  おはようございます。時間になりましたので、ただいまから第3回の学術情報委員会を開催いたします。
本日は、前回お伝えしましたとおり、学修環境充実のための学術情報基盤の整備についての取りまとめに向けまして、これまでの審議やヒアリング及び委員から別途頂きました御意見を事務局で整理した、取りまとめの案について審議をしたいと思います。これは既に電子メールで事前にお送りしています取りまとめ案がございますけれども、それをベースに審議をしたいと思います。
時間的なことで申しますと、次回の7月24日には最終的にこれを確定して、それを一般に発信していくという形になると思いますので、本日の審議が非常に重要なステップになるかと思っております。
まずは事務局より、配付資料の確認及び傍聴登録等について報告をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  はい。それでは、本日の配付資料でございますけれども、お手元の議事次第のとおりでございます。資料としましては、資料1が審議のまとめ案で、資料2は今後の委員会の日程でございます。
参考資料といたしまして、1として、最近出されました教育再生実行会議と成長戦略にも、この学修環境の充実に関する部分がございますのでその抜粋、それから参考2といたしまして、SINETに関わる部分ですけれども、学術情報ネットワークの外部諮問委員会の報告というのが出ていますので、お配りさせていただいております。
それから机上資料として、各種報告等これまでの資料をお手元に置かせていただいております。
それから、本日の傍聴の方ですけれども、22名の方に御登録いただいております。
以上でございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。資料等について足らないものとかございませんでしょうか。よろしいですか。
それでは事務局より、学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ案)を説明いただきまして、最終の取りまとめに向けた審議をその後に行いたいと思っております。それでは、長澤室長の方から、資料1に基づきまして説明をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  はい。それでは少しお時間を頂いて御説明させていただきたいと思います。前々回ぐらいにたたき台というものを御提示させていただきましたけれども、それから数多くの御意見を頂きまして、変更点等も多くございますので、見え消しのような形にはなってございません。それから、直前でお送りさせていただいたということにつきましては、大変先生方に御負担掛けまして申し訳ございませんでした。
それでは、概要につきまして御説明させていただきたいと思います。まず、このまとめとしての初めに、学術情報基盤整備の意義について、しっかりと御説明しておいた方がいいという御意見もございましたので、これまでのこの学術情報委員会としてやっていくことということで、主に研究環境としてのこういった基盤整備の在り方について審議していたんですけれども、近年の学修環境の充実ということと関係して、こういった関連性が出てきたということでございます。
まず学術情報基盤整備の意義ということでございますけれども、研究成果としての論文とか書籍、データといった様々な資料の蓄積・保存、それから流通させるための環境を構築して、普及・利活用を促すということで、こういった学術情報基盤というものは当然研究だけではなくて、すぐれた教育を展開する上でも基礎となるということを、学術情報基盤整備の意義として書いてございます。
それからもう一方ですけれども、情報技術、ICTの著しい進歩に伴いまして、授業とか教材とかをネットワークで共有する、オープンエデュケーションという流れが加速しつつございまして、こういった関連からいたしましても、学習機能の強化と学術情報基盤整備との関連性というものは非常に高まってきていること、こういった2つの状況で、今回この委員会としてこの議題を取り上げることにしたということを書いてございます。
それから、その個別の内容でございますけれども、まず、アクティブ・ラーニングという能動的な学修と、学術情報基盤整備との関係ということでございます。
背景的なものでございますけれども、大学教育の課題認識ということで、近年様々な教育再生とかという議論が行われておりますけれども、やはりこういった中で、日本の社会が競争力を失っているということ、高度な社会になっているわけですけれども、グローバルな社会で対応していくためには、物事に主体的に対応できる人材の育成が重要であるということで、学士課程教育の質的な転換とか、教育システムの改善が喫緊の課題になっているということを背景として書いてございます。
更に大学生の学修行動として、学修時間が短いということがございますけれども、大学教育部会の審議まとめによりますと、特に日本の学生の学修時間は少ないとデータで指摘をされております。それから、特にその質ですけれども、授業へは出席しているんですけれども、授業外の学修時間が極めて少ないということがあわせて指摘をされてございます。
また、その調査結果ということで、生活実態調査に基づく調査研究というのがございますけれども、この中ではやはり、単に授業に出席するという場合は、知識の獲得という点はいいんですけれども、人間形成とかという観点では、参加型の学習とか授業外における自主的な学習の方が、当然能力形成に対する影響が大きいということも示されているところでございます。
2ページのところをごらんいただければと思いますけれども、そういった関連を踏まえまして、24年8月に中教審の答申が出されたということでございますけれども、この中教審答申の内容につきましては、たたき台に書いてあるものと同じでございまして、アクティブ・ラーニングへの転換というものが必要であるということと、学生には主体的な学習に要する総学修時間の確保とか、教員には、学生の主体的な学習の確立のための努力というものが求められるということでございます。
それからあわせて、追加している記述でございますけれども、25年4月の第2期教育振興基本計画、これにおきましても同じようなところが盛り込まれているところでございます。基本的な考え方として、学士教育におけるアクティブ・ラーニングとか双方向型の授業を中心とした教育の質的転換のための取組を促進すると書かれてございます。
それから主な取組といたしまして、こういった学生の主体的な学習のベースとなる図書館の機能強化、ICTを活用した双方向型の授業・自習支援、学修環境整備への支援も連動させながら促進するとされてございます。更にその例示といたしまして、ICTの活用におきましては、大規模公開オンライン講座(MOOC)による講義の配信とか、オープンコースウェア(OCW)による教育内容の配信などの各大学の積極的な参加を促すということまで書かれておるところでございます。
こういうことを踏まえまして、学生の授業時間外における自主的な学習を増加させる、それから質を高めるということからすると、ツール・場所となる大学における学術情報基盤の整備が極めて重要だとつなげてございます。
なお、この学術情報基盤の内容につきましては、最新の教育研究成果に基づいた論文、データ、教材等のコンテンツと、それからそれを流通させるためのシステムとか情報ネットワーク、情報を利活用する際の物理的なスペースや人的サポートを提供する図書館、そういったものを含む概念として、知識インフラのための教育研究活動の根幹となるということを説明させていただいているところでございます。
具体的な情報基盤の在り方ということが2番目でございます。まずそこで考えるべき主な重要な要素といたしまして、主体的なグループ学習等を実施するスペースとしての学習空間、ラーニングコモンズと言われる部分でございます。それから効果的・効率的な自主学習を可能にするオンライン教育とか教材の充実、それらを円滑に実施するための組織運営体制の強化、構築ということが重要な要素として、3つに大きく分けさせていただいてございます。
ラーニングコモンズの整備でございますけれども、まず現状でございます。こういった整備状況につきましては、学術情報基盤実態調査を毎年行っておりますけれども、23年5月1日でアクティブ・ラーニング・スペースを整備している大学の図書館の数というのは、210館ございます。設置数の経緯を見ますと3年間で約2倍となってございまして、スペースとしての設置は整備が進んできておるということでございます。
その機能の中身についても調べておりまして、グループ学習のスペースとかプレゼンテーションのスペースとか、次のページでございますけれども、可動式什器とかということが主に用意されているのが、現状の御説明でございます。
そのラーニングコモンズの設置に当たってどういうことを考えるかということでございますけれども、これはたたき台にもございますけれども、このコンテンツと、それから人的サポートを有機的に連携させたスペースとして整備することが必要だということでございまして、その際には、やはりそういったツールを使うということもございますので、図書館を中心に設けるというのが一義的には適切だということを述べさせていただいていますけれども、やはり多くのスペースを確保することが重要だということで、サポート体制も連携させながら、部局において展開することも想定されますので、図書館に限らなくても、同義のようなスペースが用意されればいいんではないかということも書かせていただいてございます。
学習空間、物理的な空間を作る上では、やはり少人数から多人数とか、グループ学習とかプレゼンテーションの場とか、多様な学習活動に対応可能なスペース、様々なニーズに応じられるようにスペースを用意することが期待されるということを書かせていただいていまして、特にそのときに留意していただきたいのは、やはり開放性、透明性の高い空間だということでございます。その際にそういった形で活動している学生さんが、ほかの学生の学習意欲を刺激することにつながるということでございます。
それからコンテンツにつきましては、やはり学生さんのニーズというものを踏まえて、これは電子媒体でも印刷媒体でも、必要なものを迅速に利用できるような環境を構築することが理想的だということでございます。あわせてやはり、授業をサポートするという観点から、こういった資料の充実も重要だということを書かせていただいてございます。
人的サポートの必要性ということでございますけれども、やはり空間だけ用意して、あとは任せるということではなくて、大学院生によるTAの支援とか、図書館員によるレファレンスサービスとか、教員による指導助言とか、そういった学習をサポートする体制の構築が不可欠であるということと、それから学生同士がサポートするというチュータリングの促進も、教育効果として非常に重要だということを付記させていただいてございます。
関連する事例といたしまして、1件紹介してございますけれども、マサチューセッツ州立大学アマースト校というところでは、ラーニングコモンズにおきまして、ガラス張りのグループ学習室25室を設置するとともに、PCのサポートとかレファレンス、ライティング、留学支援、障害の有る学生への支援とか、様々な部署のセクションというものが一つの空間で対応できる、ワンストップの画期的な支援サービスというものを提供しているものがございましたので、紹介させていただいております。
あわせて、基礎的な考え方として、米国には5つの視点がございますということ、これはたたき台でも示させていただいたものでございますけれども、こういった視点があることも参考にしてほしいということを書かせていただいております。
オンライン教育・教材の充実に関する部分でございますけれども、これもまず現状の御説明をさせていただいてございます。特にこういった教材、授業の電子化共有・普及は意義があるという御意見は多いということを、まず書かせていただきまして、同じ学術情報基盤実態調査でございますけれども、23年5月1日現在で、講義のデジタルアーカイブ化を実施している大学は100ございます。全体としてはやはり27%にとどまっておりまして、数もそれほど増えていないということもございますので、余り進んでいない。それからリポジトリに対する教材の登載というのも、極めて少ないという状況もございますので、余り進んでいないという書き方をさせていただいてございます。
次は4ページに行っていただきまして、ただオンライン教育、教材の重要性ということでございますけれども、特にこういった保存をしますと、学生が必要に応じて何度でも予習・復習等に活用することが可能になる、学修時間の増加にも当然貢献するということで、やはり一度で分からなかったことを何度でも反復することによって分かるようになるという教育効果が非常に大きいということで、こういったものを進めるべきということを書かせていただいてございます。
特に最近、こういった授業の知識の獲得というものを事前のオンライン教育で済ませて、実際の教室で行う授業につきましては、討論形式によって双方向でアクティブな学生の参加を求める、いわゆる反転学習の導入もされつつあるということを加えさせていただいてございます。
それから、やはり電子化することに対する抵抗というものもあると思いますけれども、まず公開する、しないというのは別にして、電子的に保存して使える状態にすることが重要だということを、この部分で書かせていただいております。その上で、重要なものとか、著作権上の問題とか、公開できない部分については制限すればいいんではないかということでございます。
プレゼンいただきました奈良先端科学技術大学院大学の取組といたしまして、全ての講義を電子的に保存しておるということで、その場合の方法として、講義の開始とともに自動的に収録するシステムを構築して、作業面での負担も抑えるし、録画されるという教員の先生方の抵抗感というのも排除しているということを付けさせていただいてございます。

【西尾主査】  時間がどんどん経っていきますので、項目的なことだけの説明をお願いします。

【長澤学術基盤整備室長】  だけでよろしいですか。かしこまりました。

【西尾主査】  今日は可能な限りディスカッションの時間を確保したく思いますので。

【長澤学術基盤整備室長】  分かりました。それでは項目的なことだけにさせていただきます。
その上で、e-learningとかOCWとかMOOCとかというものが進展しておりますので、こういったことをやっていく必要があるということに意味があると書かせていただいてございます。
それから、組織運営体制の構築ということでございますけれども、やはりこういったものでは情報技術者の関連は必要だということ、関連する組織として連携する必要があるということと、大学として取り組んでいただく必要があるということを書かせていただいてございます。
図書館の姿勢といたしましては、これまで以上に図書館が教育面で積極的に関与していくことが重要だということを書かせていただいてございます。
5ページ、次のページでございますけれども、あわせて図書館の人材の役割の変化ということで、専門職的な中間職としての人材が必要になるということでございます。
あわせて教員の意識、教員の資質とか姿勢が極めて重要だということになりますので、FDを推進していただく必要があるということでございます。
それから、情報については共通化を。どういった情報を基本的に各大学でぶれないでして、教育に使うかということが重要だということで、基本的な情報を標準化するとか、それから標準化が進めば様々なサポートをするということで、図書館の方で自主的な用意もできるということで、均質化が図れるし、その進捗状況をいつにするか、評価もややしやすくなるということでございます。
それからデータの利活用ということで、文献だけでなくデータの利活用ということも必要だということで、リポジトリとかを整備しながら、教育現場で適用していくような対応が必要だと。
あわせて、大規模データの解析・利活用ということで、こういった教育の学習データの分析、それから教育への波及効果とかと関係していく把握分析というのが重要だということで、次のページでございますけれども、こういったものに対しての学習データの活用という観点では、ラーニングマネジメントシステム導入とかも進みつつありますけれども、ビッグデータ的な解析を行えば、オーダーメイド教育とか、そういった教育の仕方も変わってくるということですが、ただこういった解析は難しいので、大学の枠を超えて取り組む必要があるということでございます。
まとめといたしましては、やはりこういった学修環境の充実において、その大学が学生さんの学習をどう高度化することを追求していただくということで、それぞれの役割を考えていただく必要がある。
それから、アクティブ・ラーニングにおきまして、そういった物理的空間と仮想空間を組み合わせて、効果的に展開するということ。それから情報ネットワークを通じた情報の利活用、機関を超えた利活用も重要でございます。
さらには、やはりこういった取組を普及させるということでモデルを提示したり、人材の流動性の必要性。大学教育におきましては多様性が大事ですので、これを皆さんで画一的に実施するのではなくて、各大学ごとに取り組んでいただきたいということを書かせていただいてございます。
それと、関連することといたしまして、3番目として、大学図書館における情報のデジタル化とか蔵書管理の在り方ということで、電子化への取組、紙媒体資料の扱いとしての蔵書管理の在り方についてという方向性で、加えさせていただいてございます。電子化とか、そういった蔵書管理を適切に行うということで、こういったアクティブ・ラーニングのためのスペースを確保することが必要ではないかということを書かせていただいてございます。
7ページのところに入っていただきますと、この具体的な取組ということで、海外における、蔵書を減少させてスペースを確保していただいている取組、慶應義塾大学の理工学部の取組もあわせて紹介させていただいております。
そういった蔵書の管理の在り方として、やはり効率的な、ニーズの低いものについて、紙媒体は適切に電子化しつつ除籍するとか、書庫については、自動書庫とか遠隔書庫とかを作りながら省スペース化を図っていくとか、それから重複保存というのが行われておりますので、シェアード・プリントを導入するとかということを、基本的な方策として書かせていただいております。
電子的利用につきましてはなかなか進んでいないんですけれども、やはりこういったニーズを踏まえて適切に実施していくことが必要だという考え方を書かせていただいてございます。
また、蔵書をデジタル化することへの対応ということで、8ページでございますけれども、現状として著作権の状況とかを踏まえつつ、蔵書の電子化も必要ではないかということ。
それから蔵書デジタル化をすれば、紙媒体に掛かっている方々の人材の転換ということも可能になるという面でも重要であるということ。
まとめとしては、こういった電子書籍とか、デジタル化とか、シェアード・プリントという合理化の推進が重要だということを書かせていただいて、そういう意味で、ラーニングコモンズへの転用とか設備投資の抑制とかで利用環境の向上につながるということで、まとめさせていただいているところでございます。
以上でございます。

【西尾主査】  どうも長澤室長、ありがとうございました。
この取りまとめの案を作るに当たりまして、委員の皆様方からいろいろ情報等提供いただいたり、また、修正点に関して御意見等を頂いたり、また追加すべき点等についても、事務局の方にお寄せいただきましたことに対して、改めてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
では、ただいま説明を頂きました資料1につきまして、本日は御質問とか追加の御意見等頂きまして、次回に最終的に取りまとめ、それを発信していくということに向けて、何とぞよろしくお願いいたします。何か御意見等ございませんでしょうか。倉田先生。

【倉田委員】  口火を切らせていただくという意味で、細かい点はちょっといろいろありますが、まずは大きな点なのですが、すっきりとまとめていただいたと思うのですけれども、そのために逆に、やはり3番のところが何か、そこだけちょっと違和感があると申しますか、1、2は一応アクティブ・ラーニングに向けての学術情報基盤として何ができるかというところで、それなりの流れになっていると思うのですが、最後で唐突に蔵書管理と言われてしまうと、一体これはどういう関係があるんだと思われる方が多いと思うのです。
その理由として多分、ラーニングコモンズのためのスペースを空けるためだと言われても、別にスペースはそういう意味ではどこに置いてもいいわけで、非常に弱い根拠付けにしかなっていなくて、このスペースの問題だけでこういう形を書くのは、ちょっと弱いというか、余り望ましくないのではないかという気がいたします。
もちろん蔵書管理といいますか、それ自体は重要な課題なんですけれども、書き方としてはどちらかというと、やはりラーニングコモンズだけではなくて、アクティブ・ラーニングのための必要なコンテンツをいかに展開していくかということで、現在の紙媒体中心からデジタルをもっと利活用するという書き方でやっていただいた方がいいと思います。
そうなった場合、ここにあります効果的な方策としての1番の「蔵書の活用・保存方針を明確にした上で」うんぬんというところは、主語と述語の関係なのかもしれませんけれども、「貴重書」というところや「稼働率の高い書籍」から始まりますと、その最後が「デジタル保存を図りつつ、除籍する」になってしまいます。貴重書を除籍するということはあり得ない話でして、ここはつながりが悪くなってしまったのか、何かと何かを合体させたせいなのか分かりませんけれども、ここは間違いだと思います。
デジタル保存することが目的なのではなくて、蔵書全体をデジタル化することによって活性化を図ることが課題なわけです。もう一つは、全ての大学図書館がデジタル保存をする必要は、私はやはりないと思うんです。貴重書であるとか独自のコレクションに関しては、もちろん保存して、それをデジタル化していくというのは重要ですが、それ以上に重要なのは、各大学のそういう特徴あるコレクションを連携させて、多くの大学図書館でそれを柔軟に活用できるような方策を考えていくことの方が、ずっと重要だと思います。
この書き方ですと、非常に矮小化した読み方ができてしまいます。自分のところの蔵書を部分的にデジタル保存して、ほかのものは隠してしまうというように読めてしまうというのは、非常に大きな問題なのではないかと考えました。
ですので、その次の電子的利用というのも、そうではなくて、そういう今ある紙媒体をデジタル化することと、その次の問題は、やはり学術書に関してはデジタル出版していくということを視野に入れた取組に、図書館も大学も関わっていくべきだという書き方をするべきではないかと思います。それが今日本では非常にいろいろな理由から、確実にうまくいっていないわけで、学術書に関してはまた別のルートで、デジタル刊行というのを考えてもいいのではないかと思います。
学生が勝手に自炊してしまうのを認めるように読めてしまうような文章は絶対に駄目なわけで、そうではなくて、正規の形でデジタル出版を進めていくべきだと書くべきではないかと思いました。
最後のところの蔵書のデジタル化に伴う人材活用というのは、何か現在大学図書館が紙媒体資料の整理、管理にものすごい人数を費やしているかのように読めてしまうのですが、そんなことはどこの大学図書館でももはややっていないとか、やれる状態ではないわけで、これは非常に誤解を招くことだと思います。
逆に、今後そういうふうに電子媒体や紙媒体や契約や、それから独自の資料や、そういうものがいろいろと混ざってくればくるほど、蔵書の管理やそれをいかに運営していくかというところにこそ、専門的な人材が逆に必要になってくるのだと思います。多くの人は必要ないと思います。でも、本当に蔵書のデジタル化をやろうとしたならば、その企画自体にも大変な人材が今度は、逆に必要になってしまうわけで、デジタル化すれば人が余裕ができるというような言い方は、やはりやめていただくべきだと考えました。
すみません、長くなりました。

【西尾主査】  倉田先生、本当にどうもありがとうございました。実を言うと、この第3章のところをどういう形でまとめていくのかというのは、今日の議論の大きな柱だと思っていました。今おっしゃっていただきましたことは、非常に貴重な御意見だと思います。
皆さんどうでしょう、今、倉田先生がおっしゃっていたような方向はよろしいですよね。では、美馬先生、どうぞ。

【美馬委員】  それでは私も大きな枠組みから。このようにかなりきれいにまとめていただいたんですが、こうすることによって、逆に教育方法ばかりに大きな重みがあるように見えてしまったんです。つまり、アクティブ・ラーニングでラーニングコモンズがあれば、それで何でも解決されると。つまり、普通はこういうグローバルな人材を育成するとかと書いてあることと、では、アクティブ・ラーニングと空間があればそれでできるのかということは、ちょっと飛躍があると思うんです。
そこで、提案というか、教育方法に余りにも大きく重きが置かれているので、それは教育方法と、その中で行われる教育の内容はセットで考えないといけない。そこに環境としての空間があったり、ツールがあったり、制度があったり、コンテンツの提供の仕方というのが入っていると思うんです。
つまり教育の方法だけではなくて、そこには教育の内容と環境というものがあると。この教育の内容として、何を目指すべきかというのは、ここで一度きちっと出しておいた方がいいと思うんです。グローバルな環境に対応できる人材育成とか、主体的な学習ができる人たちを育てると言っているのは、今まで例えば学士力という言葉であったりします。また、21世紀型のスキルとして、国際的な人材にかかわるようなことが、国際間組織で提言されています。その中では例えば批判的思考とか、分析思考とか、論理的思考というような思考方法であるとか、learning how to learnのような学習方法であるとか、情報リテラシーとか、ITCリテラシーとか、コミュニケーション、コラボレーションとか、あとは地域と国際性とか、市民性とか、キャリア意識とか、そういったことが21世紀型スキルとして入っています。そういう内容も意識しながらこういう環境の中で、全ての授業において意識してやっていくべきであるというようなことが入っているべきだと思うんです。
その中に、先ほど倉田委員がおっしゃったような、コンテンツの提供としてのライブラリーの在り方というのがあると思います。
以上です。

【西尾主査】  事務局の方で、今後、審議をまとめいただく大変な作業があると思いますので、意見が出ましたときに、もし事務局として、不明な点とか、御質問とかがありましたら遠慮なくおっしゃってください。

【長澤学術基盤整備室長】  はい。

【西尾主査】  美馬先生、どうもありがとうございました。竹内先生。

【竹内委員】  先ほどの倉田委員から御指摘があった、3の大学図書館における学術情報のデジタル化及び蔵書管理の在り方についてという部分ですが、全体としては倉田先生の御意見に賛成です。
多分ここで大きく抜けている部分というのは、大学間の連携ということだと思います。それが抜けてしまっているので、例えば最後にシェアード・プリントというのが出てくるわけですけれども、これがかなり唐突に見えてしまうということがあって、先ほど倉田先生から御指摘があったように、全ての大学が蔵書を電子化すればいいというわけでは決してなくて、日本全国で利用可能な学術情報基盤としての電子的なコンテンツの整備という観点が明確に示された上で、それでは具体的に何をやっていくかという方向で文章がまとめられることが必要なのではないかと思います。

【西尾主査】  私も、倉田先生、今竹内先生のお話を聞いて、やはり、そこがデジタル化することでの大きな意味もあるし、ここでの議論としては大事なことではないかと思っています。斎藤先生、どうぞ。

【斎藤委員】  私はちょっと細かいところですけれども、先ほど倉田先生が例に挙げられた7ページの効果的な方策、貴重書を除籍するという、ちょっと論理的な矛盾を指摘されたんですが、同じようにその下の学術書の電子的利用のところで、ちょっと疑問に思いましたので。プリントオンデマンド(POD)が出ておりますが、私の理解では、これは出版社が、購入したいという人が来たら印刷するというもので、図書館でするものではないと私は思うんですが、そういうことってあるんですか。

【倉田委員】  はい、あります。

【斎藤委員】  あっ、あるんですか、すいません。ただ、それは紙媒体を作るわけですから、その前の電子的利用に対するニーズが強いというのとは矛盾しますので、もちろん少数そういう学生もいるから、そのときにはということはあるんですが、何か私はやや疑問に感じたところであります。

【西尾主査】  今の点、よろしいですか。おっしゃることは分かりました。
ほかにございますでしょうか。辻委員、どうぞ。

【辻委員】  私がちょっと1点気になりましたのは、全体的に学習という観点でまとめられているわけなんですけれども、大学の大きな役割のもう一つが、学習と研究というか、そちらの方もあるんではないかなと思っておりまして、いわゆる研究者の育成、あるいは研究基盤としての学術基盤という観点が、もう少し補強できるとよいのではないかなと思った次第です。
一部5ページに、教育研究データの利活用ということで、データの利活用に関しては若干触れられてはいるんですけれども、もう少し、先ほど大学間連携という話もございましたけれども、研究面での大学間連携といったところもあろうかと思いまして、そういったときに、では、本当のあるべきところの学術情報基盤というのは、どういった要点を踏まえているべきなのかという観点が、少し補足できるとよろしいのではないかと思いました。
以上です。

【西尾主査】  今の点は明確にしておく必要がありまして、ここの審議のまとめはそうではなくて、教育における学修環境のことをまとめているということで筋を通すのか、いわゆる先進的な研究を進める上でのことも考えた基盤を考えるのかということを明確にする必要があると思います。その立場については、事務局としてどのようにお考えですか。

【長澤学術基盤整備室長】  一応研究関係のところというのは既に議論しているところと、それからこのまとめが終わった後に御審議をしていただく部分で、それが中心になってまいりますので、ここの部分は教育に特化させていただきたいと思っております。

【西尾主査】  辻委員、どうぞ。

【辻委員】  恐らくは教育的なところというのが、今回メーンであろうかと思いますけれども、その中で5ページに、教育研究データの利活用というところがございましたものですから、どこまで切り分けるのか、それともそういった視点でも考えていくんだというところを含めるのかというところは、はっきりさせておくべきではないかと思いまして申し上げました。

【長澤学術基盤整備室長】  研究データを教育にどう生かすかということで、分かるようにさせていただきます。

【辻委員】  よろしくお願いいたします。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。土方委員、どうぞ。

【土方委員】  私が気になったところは5ページで、「アクティブ・ラーニングを支援するデザインを担当する専門職」というところがあるんですが、これが自然発生的に「図書館員の中から育成されることが望ましい」という締めになっているんですが、ここはどういう専門職であって、その育成プログラムなり、あるいは育成機関、そういったものをもう少し明確にして、それを全国に広げていくというような、積極的なアプローチがあってもいいんではないかなと感じましたので、ちょっと曖昧な形でまとめられているんではないかなと考えております。

【西尾主査】  美馬委員、どうぞ。

【美馬委員】  関連して、私も今の5ページの上から5行目、「図書館員の中から育成される」というこれは、やはりきちんとしたトレーニングをするとか、資格審査とかまでつながっていくかもしれない、そういうのもあります。それから3ページちょうど真ん中辺りにある、「人的サポートの必要性に関しては」の「学生同士がサポートするチュータリングの促進」というここも、チューターとしての質保証というのが必要だと思います。
これはアメリカの事例などを見ていても、チュータートレーニングでチューターに資格を与えることによって、アルバイトにもなり、履歴書にも書けるということで、ここは図書館員についても学生についても、資格を考慮する必要があると思います。
一方でそうするともう一つ、教員についてもありますね。5ページに、教員に対するFDの推進というのがほんのちょっとだけまとまっているんですけれども、これをもっと全体にいろいろなところで教員が変わらなければならないということを埋め込んでいくことが必要なのではないかと思います。
例えば3ページの上から2つ目の段落で、この「学習空間については」というところで、「『見る』『見られる』という空間の中で、熱心に学習している姿がほかの学生の学習意欲を刺激し」というのは、例えばうちの大学だと、これは教員にも刺激になるんです。「見る」、「見られる」という中から、自分たちの教育活動についてのリフレクションが起こる、参考になるということで、これは学生の意欲だけではなくて、教員の意欲についても学習効果があるということがあります。
そういった意味では、いろいろなところで教育の内容、方法をあわせて、教員自体が単にこういう新しい図書館のようなところから専門職が出てきたら、特定の人にお任せとか、最近では若いFDセンターの人とか、教養のところを持っている先生だけがそれをやればいいと、よくこういう制度ができるとなりがちなんですけれども、そういう特定の人にお任せにならないような形でこういうことを、さっき言った学士力なり21世紀型スキルなり、そういうもの込みで、全教員がそういうことに意識的になっていく必要があるというのを、いろいろなところに埋め込む方がいいかと思いました。
以上です。

【西尾主査】  今の点ですけど、3ページのところも含めて、やはり教員が変わらなければならないという視点、これは大事なことだと思いますので、今後、この審議のまとめを改定していく過程において、そういう記述が可能なところで追記をしていくということを考えていただければと思います。斎藤委員、どうぞ。

【斎藤委員】  別の観点ですが、著作権の問題が少し触れられておりますけれども、e-learningなどで――e-learningといっても、どなたにでもインターネットでウエブで公開する場合、あるいは電子書籍の場合も両方だと思うんですが、著作権があるから公開できない、そういう議論が非常に多いんです。私も自分のところの専攻で、バイオインフォマティクスのe-learningを作ったんですが、結局皆さんが使われる教材が、みんなほかの方の著作とか図を使っていらっしゃったので、自分たちの専攻以外には出せなかったんです。そういう問題があります。
ただ一方で、これは著作物の場合ですが、あるアメリカの出版社で出されました生物学の教科書を買ってみましたら、図については全て、現在問合せ中であると。問合せ中なのにもう出してしまっているんです。アメリカでも結構そういういいかげんといいますか、そこら辺が緩和されておりますので、できれば著作権法を厳密に適用することなく、広げないと、こういうオンライン利用というのは皆さん、非常に引いてしまうんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

【西尾主査】  斎藤先生のおっしゃったメッセージをどのように書いたらよいですかね。

【斎藤委員】  もちろんこういう著作権は重要ですので、ほかのところでやっていらっしゃったら、そこをただ引用すればいいと思うんですが、ただこれはやっぱり情報の関係ですから非常に重要だと思うんです。

【西尾主査】  倉田先生、今のご意見はどこら辺に書くとよいですか。

【倉田委員】  今、羽入先生からも手が挙がったので、多分御意見があると思うのですけれども、ちょっとどこに書くかはまた別問題としまして、確かに著作権に関してはいろいろな反映するところがあるので、書きぶりが非常に難しいと思います。今ある著作権を無視することはやはりできないわけですけれども、ただ今後ということを視野に入れて、学術的な研究教育においては、その素材となる部分に関して、よりオープンな方向性というのは、今議論が始まっているわけですから、入れてもいいのではないでしょうか。元の方が著作権を放棄する、若しくはそれは教育、研究に限っては使ってもらって構わないということを少しずつ増やしていけば、著作権とは関係ないところで十分な教育研究において、デジタルも、それからe-learningも含めてやっていく可能性は、私はあると思うのです。
それは夢物語だとか、将来のことを言われてもと言われるかもしれませんが、正しい方向性としてはやっぱりそれしかないのではないかと思います。
ただ、可能なら、今の著作権を変えるとかいう形ではなくて、著作権の中で例外規定として研究教育用なる一定の範囲のものに関しては、何らかの形で交渉を進めることで、要するに契約にすれば問題はないわけですので。ただ、契約を一々取るのではなくて、何かもっと日本全国でまとまった形で、そういう条件をクリアしていくような方向での話合いをしていくという方向を書いていただいた方が、ただ駄目だとか、委縮しちゃうとか、でも無視していいのかというそういう泥沼の話に入らないで、やはり一応報告書ですので、将来的な展望を書いていただく方が、より望ましいのではないかと思いました。

【竹内委員】  よろしいでしょうか。

【西尾主査】  竹内先生、どうぞ。

【竹内委員】  具体的に申し上げますと、項目で言うとオンライン教育・教材の充実というところの2ページ目だと思うんですけれども、その部分で、例えば教材等の公表に関して、「公開できない部分がある場合は制限するなど」という形で、今回の文書の中では書かれていますけれども、この部分は、公開できないから制限して出すという話にするのではなくて、今、倉田先生から御指摘があったように、なるべく広く使える素材を使いながら、公開できる教材を増やしていくといったような方向で、書く必要があるのではないかと思います。
それと全く同じことが、その後に出てくるMOOCsの問題などでも関わってくるはずでして、既に昨年の秋でしたでしょうか、北米の研究図書館協会が、MOOCsにおける図書館の役割といったような話の中で著作権のことについて言及しておりますので、図書館の機能としては、大学に見合った電子的な教育環境の充実ということだけではなくて、具体的に著作権に関わる処理等についても、大学ないし図書館が明確に関わるということをここではっきり言ってよいのではないかと考えます。

【西尾主査】  喜連川先生、そこらあたりについて、御意見を是非お伺いしたいところですが。

【喜連川委員】  僕もいろいろやってまいりましたけれども、著作権は文部科学省が所掌しています。文化庁です。一番の問題は、著作権を持っている人が誰かということが、多くの場合一番分からないところとなっています。これは未来志向で書くのであれば、新たなコンテンツを権利対象でないリポジトリをコースウエアについては積極的に作っていくべきとか、何かそういう言い方かと存じます。著作権の権利制限対象として付加していくことが望まれますが、相当大変でもあります。
それから今、たまたまオンライン系のお話が出まして、私も前回のときにいろいろ、MOOCも少しこういう表記上入れてはどうかという御提案をさせていただいたんですが、アメリカ並びにヨーロッパの動向を少し聞いてみますと、なかなか難しいということが分かってきております。したがいまして、ちょっとやわらかな表現にしておいた方がいいかなと感じています。
一つは、ディグリーがオンラインディグリーとノンオンラインディグリーで、完璧に分けていまして、デジタルでオンラインということはどういうことかというと、原則アンダーデベロップの国に対して教育をすることができることですが、ここのエモーションはみんなアグリズムです。ところが一番問題なのは、どんどん入ってくるということで、例えば1講座に100人であればいいんです。これが1万人になり10万になるという現象が出てきたときに、先ほどの質保証のお話と同じ、誰がそれを保証するかという課題が出てきます。
現状ヨーロッパのある大学では、その質保証は大学はしないという言い方をしています。それは第三者機関にベリファイしてもらう。相当話がややこしくなってきまして、今のところそこがうまく回るエコシステムを作るのが、模索中ということがだんだん分かってきました。つまりエモーションはいいんですけれども、現実のインプリメントは相当しんどいということもありまして、ポジティブな意味の表現を少し控えめにしておく方がいいかなという気が、個人的にもしています。
それから、ちょっと長くなって恐縮ですけれども、全体のこの文案に関しての印象感は、既に倉田先生と美馬先生が非常に的確におっしゃっていただけたかと思うんですけれども、この情報基盤というのと、教育方法と美馬先生がおっしゃったと思うんですけれども、その流れがいま一つ、ルーズリーカップリングのような気がいたしまして、最初の方はアクティブ・ラーニングで教育の質的転換をするというのが何回も書かれています。
本当にそういうことが是として受け入れられるのであれば、それでいいかもしれないんですけれども、教育というのは非常に難しい方法で、長い歴史を見ると、今アクティブ・ラーニングというのは、一つのトライアルでしかないんじゃないかなという気がするんです。
そうすると、情報系で考えることというのは、いろいろな教育というものを実現可能な基盤というものをITによって実現する、それを提供するんだということの方が、控えめな表現じゃないのかなと。つまりアクティブ・ラーニングが全てであるということが完璧に保証されているんであればそうなんですけど、そこは余りにも重い発言になるんじゃないのかなという気がしまして、しかもそこのためにスペースをどうこうします、ということと、それとその質的転換とは相当距離がありますよね。その辺に関して、やや心配なところを感じたということでございます。
以上でございます。

【西尾主査】  非常に貴重な御意見ありがとうございます。今回の審議のまとめをしていくに当たりまして、その背景として、中教審から先般出た答申の中に、アクティブ・ラーニングの必要性が相当強調してうたわれているということで、その実装をどのようにしていくのか、というような議論が前面に出ていた感があります。ただし、学術情報に関するこの委員会として、もう少し我々としては深く考える必要があって、そのことが、今、喜連川先生がおっしゃっていただいたところなのではないか、と思います。
美馬先生も先ほどそのような観点でおっしゃったのだと思いますが、まずはアクティブ・ラーニングありき、という観点で審議をまとめるということについては、もう一度考えてみる必要はあると思います。ただし、そのアクティブ・ラーニングのことを今回の審議のまとめではそれなりの重さをもって扱うということは、求められるとは思います。下間課長、その辺りはどうですか。

【下間情報課長】  貴重な御意見ありがとうございます。アクティブ・ラーニングが全てかという点については、トライアル的な側面があるということは全く御指摘のとおりだと思いますが、中教審の答申のみならず、本日閣議決定された教育振興基本計画において、学生の主体的な学びの確立のために、大学教育を質的に転換するという観点から、これが全てかということ、そこを取り出して書いているということではあるんですけれども、学士教育においては、学生が主体的に問題を発見して解を見いだしていくようなアクティブ・ラーニング、あるいは双方向の講義、演習、そういう授業を中心とした教育に質的転換をするための取組を、国として推進するという方向性を明確に出しておりますので、それに沿ってこの審議のまとめの現在の考え方としては、アクティブ・ラーニングを更に促進するという観点で、学修支援環境を整備するとすると、こういうことが考えられるのではないかという方向でまとめさせていただいているところでございますので、少しそのアクティブ・ラーニングのみでなく、大学教育が全体としている視点をどのように今取り込んでいくかというところは、少し工夫をさせていただきたいと思うんですが、全体の基調は教育振興基本計画の実現のためにも、アクティブ・ラーニングを推進する場合に、その学修環境をどう整えていくかという文脈を維持させていただければと考えております。

【喜連川委員】  すいません、一言。そういうことが別の場所で決まっておられるのであれば、もちろんそれにアゲインストするような文章は出すべきではないと思うんですけれども、一つ今の世の中の全体感としては、個に最適化していこうということが大きいと思うんです。これがいわゆるテーラーメード・メディシンとか、薬を使ったり、治療をしたりという、個をしっかり見ましょうということ。その非常に大きな次のターゲットは教育で、一人一人の人間のケーパビリティーというのはやっぱり違うわけです。
そのときにアクティブに考えれば、この才能を伸ばすことができるのかというのは、ちょっとやっぱり大ざっぱ過ぎるような気が私は感じておりまして、何がITが貢献できるのかというのを見たときに、不十分かもしれないけど、個の特性をできる限り捉えるということも、非常に重要な今後の方向感で、余り多くの方がそれに対して反対をされるということはないんじゃないかなと。
ここにおられる方もそうだと、御同感いただけると思うんですけど、若い頃はとにかく考えないで覚えるということはものすごく重要ですよね。もう徹底的に記憶して、あるところから考えるということが重要で、何もないところから考えろと言われても考えられないというのも、入学試験を経験した人だったら、すごく理解されると思う。
アクティブ・ラーニングは別にそういうことをあれしているとは思えないんですけど、やっぱり個の個性をどう伸ばしていくか、ダイバーシティーをどう許容するかというのが、今後の大きな方向じゃないか。ただ、これは僕個人的な印象なので。

【西尾主査】  そういう意味では、アクティブ・ラーニングということと、今、喜連川先生がおっしゃったパーソナライゼーションということが、私は完全に別のことではないと思っております。個を尊重しながらも、アクティブ・ラーニングを進めていくことも可能ではないかと思います。美馬先生、どうぞ。

【美馬委員】  今の点についてですけれども、一つは、アクティブ・ラーニングと授業のスタイルという、ここで議論されていることをどうまとめていくかということについては、例えばここでは、授業そのものよりも、課外のところ、授業外のところで、学生が余りにも学習しないということもあって、そういうラーニングコモンズというのは、授業外のところを更に支援していこうということですから、そういう中で、例えば問題解決であるとか、意思決定のような話とか、批判的、分析的、論理的思考みたいなものが育まれるような環境を、授業外のところで入れていくというのは、一つあるかと思います。そういう環境を作っていく、あるいはそういう授業外の課題の出し方をしていくということです。
もう一方で、喜連川先生がおっしゃった、個別化というか、テーラーメードみたいな話ですけれども、そのときには私は一方で、やっぱりそもそも学校が存在するとか、大学に来ることの意味ということを考えれば、学習というのが、共同的にやることによって大きな気づきがあったり、社会と結び付くことによって動機付けとなるといった側面もあるので、個別化の一方で、大学の場というのが、時間外のところでは共同的な学習とか、社会とつながる課題となっていくという意味で、教育の内容、あるいは方法についても多様性を確保していくというのがいいのではないかと思います。
特に、あともう一点だけ補足させていただくと、認知心理学等では昔から、学習スタイルに関する理論というのがいろいろありまして、認知的傾向ですね。そういうものがお互いに違うのである、自分はどういう傾向があるということが分かると、チームでのコラボレーションの仕方も変わってきて、結果としてグループの生産性が上がるということもありますので、そういうのはやはり、learning how to learnのような中で、そういうものを意識させていくということはできると思います。
以上です。

【西尾主査】  美馬先生にお伺いしたいのですけど、アクティブ・ラーニングのやりようの中で、お互いに協調性を構築していく、社会との関わりも含めた、個人というか、グループでのいろいろ学習の形態を積極的に取り入れることはできますよね。

【美馬委員】  はい、できます。例えばうちはもう、7年、8年ぐらい、3年生全学必修で、教員全員必修で、プロジェクト型の学習をやっていますので、それは時間外も含めてやっております。

【西尾主査】  分かりました。上島先生、どうですか。どうぞ。

【上島委員】  ありがとうございます。今、ほかの委員の皆様がおっしゃった点は皆そうだなと思って、少し困っているんですけれども、まず、この文書は、ビジョンを書くものだと思います。ですから、学術情報基盤の在り方について、現在の例えば、法や権限に踏み込むとか、侵害するようなことは書けないと思います。 文書にはビジョンと施策を記述する形式があると思いますが、ここはビジョンを中心に書いて、学術情報基盤の在り方のビジョンについて書けばいいので、その範囲でできるような施策について少し踏み込んで書いておくという形がいいと思っています。
そう考えますと、この文書は、教育に特化するとしても、3.の置き方が、美馬先生、それから倉田先生がおっしゃったように、落ち着きが悪いというか、この部分だけ何か切り離されたように見えます。
我々は学術情報基盤の在り方について、大学の教育研究の中で議論するものと思いますが、その定義が2ページの最後に、しかも「なお」文以下、「学術情報基盤とは」というところから、「図書館を含む概念であり」、「教育研究活動の根幹となるものである」と、こういうところに唐突に出てきています。単に文書の一部と言えばそれまでですが、ここで考えるべきは、学術情報基盤の学習面での在り方ということですから、この定義をを前に置いて、現在の図書館の在り方、あるいは著作権等の法や権利の侵害に触れない形で再構成することは可能だと思います。
そのように、少しストーリーというか、順序を変えて、踏み込むレベルを余り具体的な細かい施策レベルに踏み込まないで、ビジョンを書けばいいのではないでしょうか。抽象的なことで恐縮ですが、今そう考えております。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。羽入先生、どうぞ。

【羽入主査代理】  私もただいまの意見に全面的に賛成で、今までの先生方の意見にも賛成ですが、2ページにあります、この「なお」で書かれている、学術情報基盤というのはそもそもどう考えるかというのを、まず最初に打ち出していいのではないかと思っています。
それで、これは審議のまとめですので、先ほどから御指摘がありますように、中教審答申だったり、あるいは教育振興基本計画だったりするわけですが、そういう背景があるということをまず指摘し、そして、ここで考えてきたことは、学術情報基盤の在り方ですので、それを我々は2ページにあるように考えていると。
そこで大切なことは、コンテンツとスペースと人的な資源だということだと思うんです。コンテンツについては、学術情報としてコンテンツをここではどう扱うかということを書いていくことになるだろうと思います。それで、どこがいいのかということは確定する必要はなくて、スペースと、そして大切なのはやはりもう一つ、人的な資源の問題だと思うんです。それは先ほど先生方から御指摘もありましたけれども、今いる図書館員、教員、それからもしかしたら新しい専門的な知見を持った人が必要かもしれないということになると思います。
先ほど上島先生がおっしゃいましたように、ちょっと階層付けをして、書いていくということが、必要ではないかと思います。その際に、ここでは教育理論を扱うというよりも、むしろ今の教育に求められている課題に対して、学術情報基盤として何ができるかということを書くことになると思います。
それでもう一つだけ付け加えさせていただくと、こういったコンテンツやスペースや人を集約的に持っているところは、現状では図書館なので、そういう位置付けで図書館というものもありますということを考える、そういうストーリーがあり得るかなと思って聞いていました。

【西尾主査】  今の羽入先生の御意見についていかがでしょうか。倉田先生、どうぞ。

【倉田委員】  全くそのとおりだと思います。特にラーニングコモンズということだけではなくですけれども、ラーニングコモンズのところでも、コンテンツ、スペース、人的サポートという3要素で考えるという話は、もういろんな文献で出ている話で、一応そういう構成が私も望ましい、全くそのとおりだと思っておりますので、是非そういう形で階層化をしていただければ。
先ほどの喜連川先生の意見で、アクティブ・ラーニングというのがかなり前面に出てしまっておりまして、もちろんそれは重要ですし、質的な転換を図るというのは、すごく重要な背景だと思うんですけれども、それを受けて、ここはやはり学術情報基盤の在り方を考えるところですので、背景のところでアクティブ・ラーニングとは何か、質的転換とは何か、教育は一体今、どう求められているのかというのは、きちっと書き込むべきだとは思うんですけれども、その話が間、間にばらばらと入ってきて、基盤が出てきて、またちょっと部分が出てきて、またというのが、すっきりしないといいますか、教育側の方から見ても何かばらばらに出てきているし、基盤の方としても不十分な感じで、全体が構造化されていないという印象がやはり出てきているのではないかと考えます。

【西尾主査】  事務局の方はどうですか。今、いろいろとまとめ方についての意見が出ていますが、事務局の方でこれに対応していただける可能性についてはどうですか。

【長澤学術基盤整備室長】  本日御意見頂いているところも踏まえまして、もう一度しっかりと後で議事録を確認しながら、できるところは先生方にも御意見を伺いながらやりますが、基本的には、こういったアクティブ・ラーニングが必要だと言われていることに対して、学術情報基盤としてはどうあるべきなのかということを、大学の図書館とか大学の関係者の方々に示唆を与えることが、この委員会の役割ですので、こういったものもできるだけ、視野が狭くということは考えておりませんけれども、その方向性というのはやっぱり持っておいていただく。
それ以外のいろいろなことも当然配慮すべきですけれども、今回このお話については、教育振興基本計画、成長戦略、それから教育再生実行会議、こういったところでアクティブ・ラーニングへの転換が必要だと言われていることに対して、学術情報基盤整備においてどう答えるのかということを中心に据えながら、近視眼的にそれだけにとらわれることなくまとめることができれば、大学の図書館の関係者の方は、こう言われていますけれどもどうやっていいか分からないというところが非常に多いわけです。こうやらないと絶対駄目なのか、どうやったらいいんですかということに対して、この委員会として後押しすることが必要ですので、その辺はぶれないようにしたいと思っております。

【西尾主査】  羽入先生、どうでしょうか。

【羽入主査代理】  皆さんがおっしゃっていたのも同じではないかと思います。
もう一つ、できれば何か夢を持っていたいので、先ほど喜連川先生がおっしゃったような、あっ、違うかもしれないんですけど、新しいリポジトリを作っていくとか、そういう何か方向性のようなものもそこに示して、問題点も少しその辺に入れられるかもしれないという気もいたします。

【西尾主査】  ということは、今、長澤室長の方からおっしゃっていただいた点に関しては、この委員会としても全面的にバックアップしますという方向で今後も進めていただければと考えます。吉田委員どうですか。

【吉田委員】  IT視点だけでずっと見ていたんですけれども、本当に諸先生方がおっしゃること、まさにそのとおりだと思うんですけれども、いろんな切り口からアクティブ・ラーニングの話が出てきたり、図書館の話が出てきたり、教育としていろんな視点から入ってきています。これらをIT視点で見ると、それほど違うことを言っていないといいますか、何か底流に一貫したものが流れているなと思うんです。
それは何かというと、最初例えば講義を電子化する、それを共有して発信し、社会で共有する、そういう話が書かれていると思うんです。それから今度、いろんな学習データの、これは多分ビッグデータの話になると思うんですけど、利活用の話がある。それから次に図書館の話。でもこれもよく考えてみると、コンテンツを電子化して共有していこうという話で、そうしてみると、これは非常に乱暴、大ざっぱかもしれませんが、IT視点でまとめちゃうと、結局コンテンツを電子化してきちっと共有していく。しかもそれをネットワークでみんなが共有できる形にしていく。次に、それにまつわっていろいろなデータが発生してくるわけですから、そういったものを利活用するということですよね。
何かこの2つのことを根底として、IT基盤の話としては言っておられるのかなと思います。そうしてみると、これはいろんな教育の切り口から入ってこられるのは、もちろん実際のユースケースとして分かりやすいからいいと思うんですけれども、何か根底にはそういう共通のIT基盤があるというのを全体の底流に書かれると、非常にまとめやすくなるんじゃないかなと、そう思いました。

【西尾主査】  どうぞ。

【羽入主査代理】  それもおっしゃるとおりですが、もう一つは、教育機関ということがありますので、人材育成とか人的資源の視点というのは、やはり同じようにあってしかるべきではないかと思いました。

【西尾主査】  どうぞ、斎藤委員。

【斎藤委員】  私は別の言い方で、吉田先生がおっしゃったことと同じようなことを考えていたんですが、図書館とネット環境を比較すると、もう残念ながら図書館は、消えつつある存在です。これは何か図書館を守ろうとして一生懸命やっていらっしゃるように、ちょっと私は感じられるんです。私も図書館大好きなので、学生時代に図書館の委員もやりましたけれども、やっぱりネット環境というのが、人類文明を今大きく変えようとしていますので、残念ながら図書館というのは守旧勢力である。
だから何とかしていろいろやり繰りしようと思っているんですが、もう僕らは図書館に行きませんよ。だってもう、デジタルでありますから。少なくとも雑誌に関しましては、現在オープンアクセスで、もう出版社そのものが消えつつあると、長期的には思います。エルゼビアとか、いろいろな巨大な出版社ができてはおりますけれども。
そういうことを考えると、やっぱりネットの方を普及させて、図書館は悪いけどどうでもいいと。今有るから使いましょうとは、ちょっと私は何か、後ろ向きのように思いました。いかがでしょうか。

【西尾主査】  多分、今の御意見に対してはいろいろとコメントがあると思います。どうぞ。

【羽入主査代理】  図書館をどうするかということはさておき、ここで議論することは、教育の質的転換に対して学術情報基盤がどうあるべきかということを考えるのであって、その場所として大学の場合には図書館が適当か、あるいはそうでないところが適当か、あるいは空間が必要ないかというようなことになっていくのかなと思います。

【西尾主査】  羽入先生、今までの我々の議論の中で、図書館がそういう空間として大事であるということを強調してきたということで、よろしゅうございますよね。

【羽入主査代理】  というか、一番その機能をこれまで果たしてきたし、今後その核にはなるだろうと。

【斎藤委員】  ですから私はそうは思わないんです。もうディスツリビューテッドで、雑誌も出版社でなくていろんなところがどんどんオープンアクセスさせれば、もうそれでいいので、特定の一杯本を蓄えている図書館というのは、もう意味がなくなる。サーバーが大事であって図書館ではない。むしろサーバーを図書館と言えばそれでいいんですけれども。

【西尾主査】  斎藤先生のおっしゃっておられる図書館というのは、従来型の大量な本が置かれているという意味での図書館であって、その図書館が今、様々な意味での教育の質的転換おける重要なハブになっていくのだということで議論が進んでいるのだと私は思います。美馬先生、どうぞ。

【美馬委員】  もう一つすっかり忘れていたことがあって、この学術情報基盤整備の在り方といったときに、皆さんが思い描く状況が、学生は自分のパソコンを一人一人持ってきているんです。学生がどういう状態で、大学の中にどういうふうにコンピューターとか端末が設置されていて、それからワイヤレスの環境がどこまで行き渡っているか。その上でのこういう活動だったり、基盤の整備だったりすると思うんですけど、そういうことを全く触れられていないのは何かあった方がいいかなと。

【西尾主査】  美濃先生、美馬先生がおっしゃたことについてはどうですか

【美濃科学官】  学術情報基盤って何だというような話なんですけど、ネットワークだとかハードだけじゃなくて、多分その利用方法も含めて、利用者がどう使うか。どちらかというとサービス提供という話にまで、学術情報基盤として踏み込んで考えるべきではないかと。視点はそういう視点だと思うんです。
そうすると、こういう教育サービスだとか、研究サービスだとかいうことも含めて学術情報基盤であると、利用法も含めてある程度考えないと、システムを作りました、では、使ってくださいというのでは、使えるような状況ではなくなっているというのが大学の中の現状です。したがいまして、その辺まで含めて基盤と考える。そうすると、それをどう使うかという議論も、学術情報基盤の中で考えていく必要があるというので、このような議論をしていると私は理解しているんです。

【西尾主査】  美馬先生のお話については図書館と限ってよいのですか。また、図書館と限定した場合も、現在、その情報環境がどうなっているかということも、審議のまとめにある程度書くべきじゃないかとおっしゃっているのでは。

【美馬委員】  図書館含めて、ここでは関係ないのかもしれないんですけど、大学そのものですよね。例えば先日、都内の私立大学がとても新しい図書館を整備なさったんです。そこを見学に行ってきたんですけれど、そこではコンピューターが据え付けられている閲覧室があって、そこからもうどんどん人が埋まっていくというんです。それからあと、コンピューターも学内で使えるものを貸し出して、そこで整備していくと。それはすごい手間で、そんな私学の学生は、みんな持っていないんですかと言ったら、持っていませんと。そういう状況の中で図書館はそこまでしなくてはいけないのかと、私なんか思ったわけです。うちはもう最初から、入学と同時に全員必ず買うようにというので、スペックを合わせてやっているので。
だから、今後こういう基盤整備で図書館の話が入っていましたので、具体的にはイメージがどうなのかなと思いました。

【西尾主査】  分かりました。そういう意味ですね。安達先生、何かございませんか。

【安達国立情報学研究所副所長】  私ども国立情報学研究所としましては、このような審議のまとめをいただきまして、それをベースにブレークダウンして、リアルな学術情報基盤の上で具体的に何をやっていくかというプログラムやプロジェクトを作っていくということになりますので、ここで頂く御意見は大変重要なわけです。
先ほどの斎藤先生の御意見と似てきますが、私どもはネットワークとデジタルコンテンツしか持っていないので、建物としての図書館の中でラーニングコモンズがどのように機能するかというところまで、私どもの仕事としてなかなか手が届かないわけですが、基本的には私どもの視点から申しますと、デジタルコンテンツとしてできたものをどのように使っていくのか、さらにもう一つの点は、竹内先生が言われた大学間の連携、すなわち一つの大学だけの活動ではなく、横に連携した共通というところまで行けるかどうか分からないのですが、連携するためのものをどのように提供し、しかも多様性を持った大学の活動を支援できるかというところが、主たる関心事です。
そのような意味で、今回のまとめの中で私どもにとって大きな意義は、従来から教育と研究と二つ言われる場合には、私どもはその両方ともやりたいというのが真意です。しかしながら、いろいろなところでお話しをするときには研究を先に言ってきました。その方が先端性を主張して攻め込んでいけるわけで、お話ししやすいからです。従来そのようにしてきましたが、ここで今回、教育に非常に大きくスポットライトを当てるということになりまして、私どもの仕事をもっと別の視点から、ネットワークを含めて見直さないといけないのではないか、そのくらいのインパクトがあると受け止めています。文部科学省全体でそのような方向で情報基盤を作っていくことについて、是非積極的に応援していただければありがたいと思っております。
私どもはこのような審議のまとめを頂きましたら、図書館の方々等と先行的にプロジェクトを作る際などに、プライオリティーを付けて進めていくことが必要になります。ですから、この御議論の中に時間的な感覚と、プライオリティー付けはなかなか難しいのかもしれませんが、そのような観点があると大変進めやすくなります。
さらにもう一つ、ビジョンを書いていただくというのは大前提でありまして、そのビジョンの下で、我々は具体的活動にブレークダウンしていくわけです。一方、例えば著作権の議論が先ほどありましたが、オープンアクセスという観点から言いますと、欧米の流れではクリエイティブ・コモンズを適用するというのが一つの方向性となっていますので、デジタルコンテンツを共有していくという観点からは、クリエイティブ・コモンズでやっていきましょうという方向性を出していただくというのも、一つの観点であるかと思います。
オープンアクセスに関しては、日本は、欧米で言うところのマンデート制定が非常に弱く、今回の学位規則の改定で我が国も随分大きく踏み出して動き出したとは思いますが、このように国としての大きな方針を打ち出していただくと大変有り難いという気がいたします。
以上です。

【西尾主査】  非常に貴重な御意見ありがとうございました。安達先生がおっしゃった意味で、例えば教育に関するコンテンツに関して、先ほど喜連川先生、倉田先生のおっしゃったように、今までに蓄積されているコンテンツについて、それは誰のものかということを明確にしようとしますと、大変なサーチになってしまいます。そこで、今後作成する教育用のコンテンツに関しては、どんどんオープンにする方向を我々の審議のまとめの中で明確に記しておく。そのことが日本の教育の改革につながっていくという観点からも、私としてはそのような記述をしたく思います。
岡部先生、どうぞ。

【岡部委員】  皆さんおっしゃるとおりと思いますので、重ねては申しません。一点だけ、5ページの3番目のパラグラフ、活用する学術情報の共通化ということで、大学教育としての質を保証する観点から、各分野においてあふれる学術情報を一定の教育効果が得られるかについて検討して、標準化するという、ここに書かれていることは非常にごもっともだと思いますし、例えば法律学では判例なんかを標準化して、それを普及するということまで書いてあるんですけど、ただ、これは各分野で行うべきことで、これに関して、では、学術情報基盤として何をすべきかということが、このパラグラフで明確にされていないのはちょっと残念だと思います。
一番最後に、この標準化が進めば、例えば「図書館が自主的に資料を用意・提供することも可能になる」と、ちょっと受け身な書かれ方になっていて、もう少し積極的に、こういう方向を目指して、学術情報基盤としては何をするのかということが、踏み込んで書かれるべきではないかなという気がいたしました。
例えばここで言うと、この共通化された情報が、直前の議論にありましたように、著作権に関して、例えばクリエイト・コモンズのような形でオープンなもので使えるというところまで踏み込んで、そういうものを積極的に支援していく、あるいは、今緊急情報に関して、NIIがResearchmapというものを用意していますけど、こういう教育に関する情報を共通で扱うようなプラットフォームがもしあれば、こういう施策が有効に生きるんであればそういうことを考えるとか、情報基盤として何をすべきかということについて、もう一歩踏み込むべきではないかなということを、ここに関しては思いました。
以上です。

【西尾主査】  岡部先生としては、今おっしゃったことで何か具体的な事項はありますか。

【岡部委員】  少なくとも著作権というんですか、オープン化ということについては明確にしておくべきだろうと思います。

【西尾主査】  加藤委員、どうですか。

【加藤委員】  皆さん方の御意見に大体賛成なんですが、アクティブ・ラーニング、あるいは学術情報基盤の中核に今後大学図書館がなっていくんだという方向をきちんともっと、私は出した方がいいのではないかと思っております。
ですからその前段としましては、先ほど安達先生がおっしゃったような、オープンアクセスの流れだとか、基本的な情報の標準化だとか、ネットワークにおいて各機関ごとに、デジタル情報については連携が取れるような状況になってきているということは前提に置いていただいて、あとは図書館についても、大学一つの図書館で何かをするということはなく、あるいは大学一つでやるんではなくて、中核の図書館を活用することも十分可能ですし、そういった情報化については促進していくために、どこか中核で共同でやるという考え方も必要かもしれませんけれども、そういう流れの中で、私は全体を見ておりまして、やっぱり今後の中核として図書館がそういう形で変わっていく必要があるんだろうなと。
そのためにはこういう対処を図書館の中で、明確にこういう施策を打つべきだという方が、何か分かりやすいなという感じはします。

【西尾主査】  おっしゃるとおりですね。先ほど長澤室長がおっしゃっていたように、そのようなメッセージを発することによって、図書館を後ろから押してやるということだと思います。

【斎藤委員】  よろしいですか。

【西尾主査】  はい、どうぞ。

【斎藤委員】  私は先ほど図書館は消えると言いましたけれども、これはもちろん発展的解消ということでよろしく。

【西尾主査】  斎藤委員のおっしゃっていることは十分分かっています。美馬先生、どうぞ。その後、最後に美濃先生、どうぞ。

【美馬委員】  すいません、では、私の発言は最後にしたいと思います。
少し別の見方をすると、教育とか教室とか学習のスタイルの多様性をいかに確保するかという話だと思うんです。つまり、今までの授業のスタイル、あるいは教室というのが、一斉型、いわゆる小学校からずっと変わらない、黒板の方を見て、みんなが先生の方を見てやる、講義を聴くというスタイルであったものを、例えばグループでディスカッションするようなグループ活動ができる教室というのは、なかなか大学の中には実はなかった。そういうスタイルのものをどこに持ち込むかといったときに、このアクティブ・ラーニングということをやるにはどういうスペースがどこに必要かという話で、一つは出てきたと。
一方で図書館は、今まで静かに一人でやる場所でしたよね。だから、時間外のところで勉強しようとすると、学生にとっては図書館しかなかったわけです。グループで集まって学習したかったときには、カフェテリアに行くとか、それからあとは空き教室。この頃空き教室も使わせてもらえませんけど。空き教室かカフェテリアしかなくて、なかなかそういうグループでやる居場所がなかったというのがあって、そういういろんなスタイルがあるということを確保するためにも、このラーニングコモンズというものが必要だと。そのときに、では、そこには学術情報基盤としてどういう情報基盤があればよいのかということだと思います。
もう一つ、図書館で静かにというのは、実はうちの大学は、全体がラーニングコモンズみたいになっているので、実は図書館が静かに一人でやる場所として確保されているんです。だからうちの場合は図書館はそれにはならないので、多様性を確保するという意味では、やっぱりそれぞれ大学に合った場所を見付けるのが良いと思います。

【西尾主査】  分かりました。美馬先生のお話の中で、グループでディスカッションを行うというようなときに、単にハードウェア的な問題だけじゃなくて、そのようなインターラクティブなプロセスをサポートする共通的なコンテンツとか、ソフトウェアが一方では大切ですよね。
そこで、そのようなコンテンツ、ソフトウェアを学術情報基盤として、どのように扱うべきなのでしょうか。
それはやっぱり学術情報基盤の範疇として扱うべきことなのか、教育的な問題として扱うべきなのか、そこら辺どうなんですか。

【美馬委員】  やっぱり大学それぞれの事情もあるので、基盤というのはある意味での本当にこの全国的な基盤としてありつつも、そこに何かローカライズできるような、教員とかスタッフがうまく乗せていけるようなものが、本当にインフラとしてあるとよろしいかと。

【西尾主査】  最後に、美濃先生お願いします。

【美濃科学官】  余りプライバシー、個人情報の議論がなかったので、それをちょっと書いてもらわないと、と思って手を挙げたのですが、最後になるとちょっと困るんですけど。プライバシーというか、やはり情報基盤にデータを載せるということは、基本的には情報を共有しましょうということなんですよね。そうすると、その共有するときに問題になるのは、先ほどから議論に出ています著作権の問題と、もう一つは、個人データが集まってくるというか、学修環境で学生の情報が集まってくるという話なんです。
これを、ここに書いてあるようにプライバシーに配慮しつつ解析を行いますというレベルで止めちゃいますと、実際やろうとすると、また、個人情報を厳密に守らなければいかんという話になるので、もう一言踏み込んでもらう必要があります。これは教育効果があるんだ、学生のためなんだ、だからもちろん個人情報には配慮するけれども、もっと積極的に利用して、個人適用というか、パーソナライズしたことへ踏み込みましょうというような話をちょっと入れておいてもらいたいなというのが、一つ大きなポイントです、というのが一つ意見です。
それで、図書館の話がいろいろ出ていますが、大学に図書館があるという意味が、やはり文献を共有しましょうということになってくると、だんだんなくなってくるんです。したがって図書館の役割を大学内でどうしましょうかという議論と、学術情報基盤という話がごちゃっとなっていまして、ここでは学術情報基盤の話。図書館としてはどうするんだという話が、最終的に同じ方向を向けばいいという議論だと思うので、そこがごちゃっと書いてあるのが、何か分かりにくくなっているなと、そういう印象を私は持ちました。最後は感想を言わせていただきました。

【西尾主査】  美濃先生がプライバシーのことをおっしゃった背景は十分に分かっていまして、本日議論したようなことを大学の中で進めようとすると、プライバシーに関する議論が出ると、そこでストップしてしまうことがしばしばあります。ですから美濃先生のおっしゃることは、プライバシーのことに関して、もう少し大学が柔軟に考えていくべきだというようなことを、この審議のまとめの中で一言書いてあると、各々の大学は非常にやりやすくなるということだと思います。
このことに関しては、美濃先生には、どう入れ込むかということを今後、是非、事務局の方と話し合っていただけるようにお願いします。本当に苦労なさっているのだと思いますので。
二つ目のことは、図書館の今後の形態については、美馬先生が先ほどおっしゃいましたように、バラエティーがあり、大学によってさまざまな考えがありますので、図書館をどういう方向に持っていくかべきかという一般的な議論はなかなか難しいと思います。そのような状況のなかで、アクティブ・ラーニングのことをはじめ、図書館が、今後、どういう形態での新たな役割を果たしていくべきかということは、いろいろ書けるのではないかと私は思っています。
ほかによろしいでしょうか。どうしてもこれだけは言っておきたいということはないですか。
それでは、事務局には大変な宿題をお願いすることになりましたけれども、最初の倉田先生がおっしゃったことで、本当に救われた気がしました。3章のところの書きぶりをどうするのかということについて、きょうこの会議に来るまでにいろいろ悩んでいましたもので。そのところに対して貴重な御意見とか御示唆を頂いたことによって方向が見えてきたと思いますし、今日、本当に様々な観点から貴重な御意見を頂きましたことで、この審議のまとめが内容的に豊かで相当良いものになることを確信しております。
あとは事務局には大変だと思いますけど、何とかそのような審議のまとめにしていただいて、7月24日に最終の確認をする版をお出しいただき、速やかに情報発信をしたいと思っていますので、どうかよろしくお願いいたします。
そこでお願いがあるのですけれども、追加の御意見とかがありましたら、6月21日、来週の金曜日までに事務局にお知らせいただければと思います。本日の議論はこの辺りで終了させていただきたく思っております。次回は、先ほど来申しているとおりで進めたいと思います。
次に、事務局より参考資料としてお配りをしております、「学術情報ネットワーク外部諮問委員会」の報告について、説明をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  はい。これはあくまでも参考資料でございます。今後、SINETの整備等踏まえまして、こういった学術情報ネットワークの在り方について御審議いただくわけでございますけれども、このたび、学術分科会研究環境基盤部会国立大学法人等の運営費交付金(学術研究関係)に係る作業部会におきまして、SINETの評価に当たりまして、大震災に関わらず運用に一切支障がなかったけれども、このことを踏まえ、停止しなかったことによる成果の実例を明らかにするなど、インフラとしての重要性とか震災時の役割について検証し、公表することが必要だという意見が付されておりまして、このことを踏まえて、NIIの方で外部諮問委員会を設置しまして、意見を取りまとめ、今後の次期SINETの在り方も踏まえて、幅広く意見を頂いたということでございますので、若干御紹介をしたいと思っております。
1枚めくっていただきますと、国立情報学研究所として公表している経緯でございまして、これは単純に今申し上げましたようなことが書いてあるところでございますが、個別の内容をまとめたものは、その更に1枚めくっていただきました報告書のエグゼクティブサマリーというところがございますけれども、なぜSINETが東日本大震災で支障が出なかったのかということにつきましては、やはり阪神・淡路大震災という過去の教訓を生かして、データセンター等の整備を積極的に行ったということで、ループの構造等とかも踏まえて対応した成果であるということを評価できるということ。
それから、次期のネットワークの構想に当たりましては、やはりネットワークだけではなくて、クラウド、ビッグデータ、スパコン連携とか、そういった研究動向を考慮に入れた設計というのが重要ですし、圧倒的なデータ量に対応とか高速化を備えることが必要であろうということと、新しい大学間の連携とか教育連携も視野に入れて、又はセキュリティ面も配慮しながら進めないといけないということで、ネットワークの重要性というものが更に高まっていくという御意見。
それから、PC、コンピューターの役割が変化するといった変化を予測したネットワーク設計が必要だ。更に整備としましては、各都道府県へのノードの配備とかを考えながらも、経済的な視点の整備も考えていただきたいという注記。
さらには国際連携というものが非常に重要で、特にアジア諸国との連携ということを考えながら、また、リアルタイムで共同研究するとかいうときも、こういったネットワークが重要だという観点も考えながら対応してほしい。
国立情報学研究所におきましては、こういったネットワークだけではなくて、やはりコンテンツとか、そういったほかの関わるような基盤整備も担当しておりますので、こういった情報環境を提供していくことは、国立情報学研究所の強みとして、世界を先導してほしいというまとめになっておりますので、個別の意見はその後に加えておりますけれども、御参照いただければと思います。
最後のところは委員の名簿で、委員長は有川先生で、外3名の委員の先生方が御意見をお寄せいただいたということでまとめたものになっているというところで、御紹介だけさせていただきます。
以上でございます。

【西尾主査】  どうも御説明ありがとうございました。安達先生、喜連川先生、何かありますか。報告書でも記されているように、ますますNIIが重要な役割を果たしていただきたいということですね。

【安達国立情報学研究所副所長】  若干補足致しますと、この諮問委員会では震災のこと以外に、この秋からこの委員会でいろいろ御議論いただきたいと思っている、次のネットワークに向けた展望も含めて、御議論いただきました。公表する報告書は、このように簡潔なものですが、御議論いただくために外部の調査会社に依頼し東北地方の大学への聞き取りなどを含む調査資料をお示しして、諮問委員の先生方に御議論していただいた結果を簡潔にまとめたものです。

【西尾主査】  安達先生にお話しいただきましたけれども、7月24日で今までの議論の一まとめをして、それから次のステップで議論するところで、諮問委員会で指摘されているところが重要になるかと思います。どうもありがとうございました。
吉田局長、下間課長、何かございませんでしょうか。では下間課長の方から。

【下間情報課長】  本日は本当に御議論いただきましてありがとうございました。
まとめの部分では、先ほど御議論いただいたようなこと、6ページの辺りのまとめでは、各大学における取組、その中での大学間での共有、利活用、更に大学図書館を中心とした対応ということについて書かせていただいているつもりでございますけれども、その辺りがより明確になりますように、本日の御議論を踏まえて修正させていただきたいと思いますし、更に御意見ございましたら、是非来週中に頂ければ、より良いものにして、こうしたものを大学の側に発信いたしまして、今後の対応をとっていただければと考えてございます。非常に貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。

【西尾主査】  今日はいろいろ意見が出ましたけど、取りまとめに関しましては大変な作業かと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。
それでは、事務局の方にバトンタッチをいたしますので、どうかよろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  本日はどうもありがとうございます。会合の議事録につきましては、各委員の先生方に御確認をいただいた上で公開をさせていただきたいと考えております。
次回につきましては、7月24日水曜日、時間は1時半から3時半までの2時間を予定しております。場所は3F2特別会議室ということでございます。
また、今後の会議日程につきましても資料2のとおり御提示させていただいておりますので、日程の確保等よろしくお願いいたします。
連絡事項は以上でございます。ありがとうございました。

【西尾主査】  それでは、本日はどうもありがとうございました。これで終わりとしたいと思います。

―― 了 ――

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