参考資料1 イノベーション創出のための研究開発環境の再構築に向けて

平成26年3月25日
フォローアップ分科会(科学技術)橋本 和仁

 大学や公的研究機関において生み出される革新的な技術シーズの創出力を強化し、民間企業による迅速な事業化につなげていく「橋渡し」を進めるためには、これらの3者間で知識と人材が大きく循環するシステムの構築が重要。そのため、フラウンフォーファー、マックスプランク、ヘルムホルツ等の海外の例を参考にして、日本の現在の立ち位置を踏まえた周到な国際戦略のもとで、国家的な見地からの産学官連携に係る仕組みと人材育成活用の抜本的な強化をめざし、以下の課題等について、具体的な検討を進めていくことが必要。

1.研究開発法人を核とした産学連携プラットフォーム

○ 大学や公的研究機関における優れた研究成果を迅速に実用化させるため、「橋渡し」について高い能力を有する研究開発法人を中核的アリーナとして、産学官によるコンソーシアムを形成することにより、大学の研究者や産業界の研究者を集結させて、いわゆる持ち帰り研究からの転換を行うべき。
○ 優れた研究者には現在国立大学改革で推進されているクロスアポイントメント方式を活用し、大学教授と公的研究機関研究者の両方を兼ねることができるようにするとともに、大学院生やポスドクの積極的な参加を促進。また、研究業績の評価においては、学術的な卓越さとそれをイノベーション創出に展開できるセンスや経験をあわせもった研究者がより積極的に評価されるように、学術的な論文だけではなく、国際特許や民間資金による共同研究実績についても評価ポイントとなることを明確化すべき。
○ 高い資質を持つ産学官のあらゆる世代の人材の再活性化を促し、イノベーション創出に参加できるようにすることが重要。このため、大学院制度の柔軟化を含めた人材システムの見直しを進め、国内外の優秀な若者を産学連携プラットフォームに集結させるとともに、産業界の研究者等に博士号の取得を促すことにより、産業界の人材の資質向上を図るべき。
○ 研究開発法人を中核とした産学官連携プラットフォームの実装については、イノベーション創出の基礎となる高いレベルの技術シーズを生み出すマックスプランク型、民間の事業ニーズに基づく課題解決型研究開発を実施するフラウンフォーファー型、民間のみでは獲得できないコア技術を、研究開発法人を中核機関として実施するヘルムホルツ型のそれぞれについて効果的に進めるべき。

2.研究開発マネジメント人材の育成によるファンディング機関の機能強化

○ これまでのファンディング機関は、ややもすれば、予算別に分かれたロジ回し専門家が中心であったが、今後は、研究分野に係る専門的な知見を持ち、研究成果の管理及び移転を行うノウハウ、スキルを持った専門家を育成すべき。
○ 具体的には、産業分野及び学術分野の両者から情報収集を行うリサーチャー、研究者と管理部門の間をつなぐリサーチ・アドミニストレーター、プロジェクトを自ら提案し、チームを自ら編成してプロジェクトを遂行するプログラムマネージャーといった三種類の人材が必要。
○ 上記3種類の人材を育成するためには、人材スペックを明確にして育成プランを作成するとともに、当該法人内部のみならず、大学や研究開発法人、民間企業、関係府省などの外部のポストを多角的に経験するといったキャリアパスの形成を支援するべき。これにより、大学や研究開発法人等のマネジメントの強化、適材適所の人材配置による合理的な運営も期待できる。
○ ファンディング機関は、これら研究開発人材の強化を行った上で、公的研究機関を核とした「橋渡し」を支援するのみならず、中小企業・中堅企業、ベンチャー企業を「橋渡し」として参画させることや、大学・公的研究機関と民間企業が産学共同研究プロジェクトを介して直接「橋渡し」を行うことを拡大すべき。
○ さらに、新たに創出される技術(エマージング・テクノロジー)に関する知財戦略、法制度、リスクマネーの管理に対応できる人材の配置も重要。総合科学技術会議と知財戦略本部はより一層連携を密にし、専門家の育成やファンディング機関・全国の産学連携プラットフォームに隈なく人材を配置する等の中・長期的な対策を講じることが必要。

3.技術シーズ創出力の強化

○ 論文数が減少している等、我が国の技術シーズ創出力の低下が見られる。創造的な研究を振興し、多様な技術シーズ創出力の強化を図るため、競争的資金制度をより一層活用して、若手研究者や女性研究者等の多様な個人の能力を積極的に引き出すとともに、他方で、豊富な実績を持つ研究者が集う研究拠点をベースとした組織的な研究活動を支援するべき。
○ また、我が国の研究資源を総動員して、イノベーションの芽を生み出していくためには、高い潜在可能性を持つものの、埋もれてしまっている技術シーズを掘り起し、引き伸ばしていくことが必要。このため、基礎的な研究資金の配分において、高い潜在力を持つ優秀な研究者のより多種多様な研究テーマにチャンスを与えるよう変えていくべき。
○ このため、技術シーズ創出に関する資金全体にわたる見直し・改善を行い、(1)国内外を問わず優秀な研究者による多種多様な独創的研究を支援・活性化し、(2)それを基盤として、イノベーションに向けた研究拠点ベースの研究開発の加速化やあらゆる世代の研究者チームによる世界水準の卓越した研究を推進し、(3)これらのイノベーションや研究成果、研究人材がさらに次の独創的研究を刺激する、といった「卓越知を基盤としたイノベーション循環」の確立が重要。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

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